JPH07252967A - 振動防止構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ２つの建物を１つの単位として、これら建物
全体が振動、転倒することを防止し、これによって制振
のためのコストを低減させることが可能な振動防止構造
の提供を目的とする。 【構成】 既設建屋１の近接位置に、上層階部３と下層
階部４とに分離した新設建屋２を設け、新設建屋２の上
層階部３と下層階部４との間に免振装置５を設けるとと
もに、該新設建屋２の下層階部４の側部と、既設建屋１
との間を連結梁６により連結する。これにより、地震が
発生した場合に、連結梁６により互いの建物が転倒する
ことを防止し、免振装置５を介して設けられた新設建屋
２の上層階部３を、地震の振動に応じて共振するチュー
ンド・マス・ダンパーとして機能させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、地震、風、鉄道、高速
道路といった外的要因に対して建物が振動することを防
止できる振動防止構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より免振装置、制振装置を備えた建
物が多く建設され、地震等により建物が振動することを
防止している。具体的には、免振装置として、建物の底
部と地盤との間に積層ゴム、振動減衰装置などを設ける
構成が採用され、また、制振装置として、建物の上部位
置に一定量の水を貯留したタンク、水平方向に移動自在
な重錘を設け、振動に合わせて水、重錘を共振させるこ
とにより、該建物の動きを止める構成が採用されてい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
な免振装置、制振装置は、一般に建物毎に個々に設けら
れるものであり、よってその設置には多大なコストがか
かるという問題があり、この点において新たな技術の提
供が期待されていた。

【０００４】この発明は上記の事情に鑑みてなされたも
のであって、２つの建物を１つの単位として、これら建
物全体が振動、転倒することを防止し、これによって制
振のためのコストを低減させることが可能な振動防止構
造の提供を目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に第１の発明では、近接位置に設けられた一対の建物の
振動を防止する振動防止構造であって、これら建物のい
ずれか一方を上層階部と下層階部とに分離し、これら上
層階部と下層階部との間に免振装置を設けるとともに、
該建物の下層階部と他方の建物との間を水平な連結梁に
より連結したことを特徴とする。

【０００６】第２の発明では前記連結梁を軸剛性の大き
い梁により構成したことを特徴とする。

【０００７】

【作用】本発明は、近接位置に設けられた２つの建物の
いずれか一方を上層階部と下層階部とに分離し、これら
上層階部と下層階部との間に免振装置を設けるととも
に、該建物の下層階部と他方の建物との間を水平な連結
梁により連結した構成であるので、例えば地震が発生し
た場合であっても、連結梁により互いの建物が転倒する
ことを防止できるとともに、免振装置を介して設けられ
た一方の建物の上層階部が、地震の振動に応じて共振す
るチューンド・マス・ダンパーとして働くことにより、
該建物の下層階部、及び連結梁で連結された他方の建物
の振動を抑制することができる。

【０００８】第２の発明では、一方の建物の下層階部と
他方の建物との間の連結梁として、軸剛性の大きい梁を
使用したので、地震等が発生して、免振装置を介して設
けられた一方の建物の上層階部が、地震の振動に応じて
共振するチューンド・マス・ダンパーとして機能した場
合に、地震の振動を打ち消す力が該連結梁を介して他方
の建物に有効に伝達される。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図１に基づいて説
明する。この図において符号１・２で示すものは互いに
近接する位置に設けられた建物であって、これらの中
で、建物１は先に建設済の既設建屋、建物２は建物１よ
り後に建設された新設建屋である。新設建屋２は上層階
部３と下層階部４とに分離されたものであって、上層階
部３は下層階部４の上面に免振装置５を介して設けら
れ、また、下層階部４の側部と既設建屋１の側部とは複
数の連結梁６により連結されている。

【００１０】なお、新設建屋２において、上層階部３の
重量は全体重量の１５％程度に設定することが好まし
い。例えば、各階毎の重量が同じであると過程すれば、
新設建屋２が２０階建の建物であるときには上層階部３
は３階程度とし、新設建屋２が４０階建の建物であると
きには上層階部３は６階程度とすると良い。また、この
ような上層階部３の階数設定は全体の設計内容に応じて
適宜変更することは言うまでも無い。また、免振装置５
は、上層階部３を支える積層ゴム７と油圧シリンダ等の
減衰装置８とにより構成されるものであって、これら積
層ゴム７、減衰装置８によって下層階部４の振動が上層
階部３に伝達されることを防止している。また、連結梁
６は、新設建屋２の下層階部４と既設建屋１との間に水
平に設けられたものであって、軸方向に対して剛性の高
い材料により形成されている。

【００１１】そして、以上のように構成された振動防止
構造では、既設建屋１の近接位置に、上層階部３と下層
階部４とに分離した新設建屋２を設け、新設建屋２の上
層階部３と下層階部４との間に免振装置５を設けるとと
もに、該新設建屋２の下層階部４の側部と、既設建屋１
との間を水平な連結梁６により連結したものであるの
で、例えば、地震が発生した場合であっても、連結梁６
により互いの建物が転倒することを防止できるととも
に、免振装置５を介して設けられた新設建屋２の上層階
部３が、地震の振動に応じて共振するチューンド・マス
・ダンパーとして働くことにより、該建物の下層階部
４、及び連結梁６で連結された既設建屋１の振動を抑制
することができる。すなわち、本実施例の振動防止構造
では、免振装置５及び連結梁６により２つの既設建屋
１、新設建屋２を共に制振、転倒防止可能な構成である
ので、個々の建物について制振対策を施していた従来の
振動防止構造と比較してコストの点でも有利であるとい
う効果が得られる。

【００１２】また、上記振動防止構造では、新設建屋２
の下層階部４と、既設建屋１との間を軸剛性の大きい水
平な連結梁６により連結したので、地震等が発生して、
免振装置５を介して設けられた新設建屋２の上層階部３
が、地震の振動に応じて共振するチューンド・マス・ダ
ンパーとして機能した場合に、地震の振動を打ち消す水
平方向の力が、該連結梁６を介して既設建屋１にも有効
に伝達され、これにより建物全体を有効に制振させるこ
とが可能となる。また、上記振動防止構造では、２つの
建物の中で、新設建屋２に連結される既設建屋１は既存
の建物を利用するものであり、これによって既設建物１
を新設建屋２とともに制振構造とすることが可能とな
り、個々の建物に制振対策を施した場合と比較して制振
対策にかかる費用の削減が可能となる。

【００１３】なお、上記実施例では、先に建設されてい
る既設建屋１に新設建屋２を連結させたものであるが、
更に、新設建屋２を建設する場合、この新設建屋２を既
設建屋１に対して更に連結させても良い。すなわち、既
設建屋１を囲むように複数の新設建屋２を建設しても良
い。

【００１４】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明に
よれば、地震等が発生した場合であっても、連結梁によ
り互いの建物が転倒することを防止できるとともに、免
振装置を介して設けられた一方の建物の上層階部が、地
震の振動に応じて共振するチューンド・マス・ダンパー
として働くことにより、該建物の下層階部及び、連結梁
で連結された他方の建物の振動を抑制することができ
る。すなわち、本発明の振動防止構造では、免振装置及
び連結梁により２つの建物を共に制振、転倒防止可能な
構成であるので、従来と比較してコストの点でも有利で
あるという効果が得られる。

【００１５】第２の発明では、一方の建物の下層階部と
他方の建物との間の連結梁として、軸剛性の大きい梁を
使用したので、地震等が発生して、免振装置を介して設
けられた一方の建物の上層階部が、地震の振動に応じて
共振するチューンド・マス・ダンパーとして機能した場
合に、地震の振動を打ち消す力が該連結梁を介して他方
の建物に有効に伝達される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す概略構成図。

【符号の説明】

１ 既設建屋（他方の建物） ２ 新設建屋（一方の建物） ３ 上層階部 ４ 下層階部 ５ 免振装置 ６ 連結梁

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 近接位置に設けられた一対の建物の振動
   を防止する振動防止構造であって、 これら建物のいずれか一方を上層階部と下層階部とに分
   離し、これら上層階部と下層階部との間に免振装置を設
   けるとともに、該建物の下層階部と他方の建物との間を
   水平な連結梁により連結したことを特徴とする振動防止
   構造。
2. 【請求項２】 前記連結梁は軸剛性の大きい梁により構
   成されることを特徴とする請求項１記載の振動防止構
   造。