JPH07252481A - 等方性ピッチの製造方法 - Google Patents

等方性ピッチの製造方法

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JPH07252481A
JPH07252481A JP7140894A JP7140894A JPH07252481A JP H07252481 A JPH07252481 A JP H07252481A JP 7140894 A JP7140894 A JP 7140894A JP 7140894 A JP7140894 A JP 7140894A JP H07252481 A JPH07252481 A JP H07252481A
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heat
weight
heavy oil
isotropic pitch
less
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JP7140894A
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Masatoshi Tsuchitani
正俊 槌谷
Sakae Naito
栄 内藤
Seiki Suzuki
清貴 鈴木
Ryoichi Nakajima
亮一 中島
Tomohiko Sato
智彦 佐藤
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Maruzen Petrochemical Co Ltd
Original Assignee
Maruzen Petrochemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 石炭系重質油を、キシレン不溶分が1重量%
以上増加し、かつキノリン不溶分が1重量%以上増加し
ないように管式加熱炉を用い連続的に加熱処理し、得ら
れた加熱処理重質油を単環の芳香族系炭化水素溶剤に溶
解させ、該溶剤に不溶な成分を分離除去し、得られた可
溶成分を含む溶液から溶剤を除去して精製加熱処理重質
油を得、該精製加熱処理重質油を加熱処理する等方性ピ
ッチの製造方法。 【効果】 本発明方法によれば、汎用炭素繊維製造用紡
糸ピッチとして好適な等方性ピッチを高収率で製造する
ことができる。しかも、連続的製造法であるから、一定
の品質の等方性ピッチを大量に、安定して、低廉に製造
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、種々の炭素製品製造に
用い得る、特に汎用炭素繊維製造用紡糸ピッチとして適
した、メソフェーズを含まず、光学的に等方性である、
ピッチの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は、一般にその機械的強度の面
から、高性能炭素繊維と汎用炭素繊維に大別されてい
る。すなわち、一般に、強度200〜350Kg/mm2
弾性率10〜40ton /mm2 程度のものが高性能炭素繊
維といわれ、例えばロケットや航空機等の特殊な材料、
ゴルフクラブ、テニスラケット、あるいは釣竿等の用途
に供されている。また、強度70〜140Kg/mm2 、弾
性率3〜10ton /mm2 程度のものが汎用炭素繊維とい
われ、例えば土木建築分野、断熱材、摺動材、あるいは
パッキング類等の用途に供されている。
【0003】高性能炭素繊維は、その用途の拡大、ある
いはその用途面の技術の高度化に伴い、機械的強度の一
層の向上が望まれ、例えば強度350〜600Kg/mm2
というような超高性能炭素繊維というものが望まれるよ
うになってきている。
【0004】一方、汎用炭素繊維については、その性能
に応じた種々の用途、中でも土木建築分野の炭素繊維補
強コンクリート(CFRC)等で大量に使用される等、
近年その需要増に対して、より一層低廉に製造すること
が望まれている。
【0005】従来、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル
(PAN)を紡糸し、これを酸化雰囲気中で不融化し、
その後不活性雰囲気中で炭化もしくは黒鉛化することに
より製造されるPAN系炭素繊維が主流であった。しか
しながら、PAN系炭素繊維は、原料が高価であり、炭
化収率が低く、毒性物質が発生する等の問題があり、近
年、原料として安価なピッチからもPAN系の炭素繊維
と同等もしくはそれ以上の性能を持ち、また、PAN系
におけるような問題なしに炭素繊維を製造できることが
見出されている。
【0006】このピッチ系炭素繊維製造用紡糸ピッチの
内、高性能炭素繊維製造用紡糸ピッチは、一般にメソフ
ェーズと言われる光学的異方性成分からなっている。こ
れは、コールタール等の石炭系重質油を加熱処理する際
に、熱分解や熱重合等の反応によって、芳香族分子があ
る程度の広がりを持った縮合芳香族環平面分子となり、
それが積層、配向して形成され、偏光顕微鏡下に観察し
たとき、光学的異方性を示す成分である。一方、汎用炭
素繊維製造用紡糸ピッチは、上記のようなメソフェーズ
を全く含まない光学的等方性成分からなるピッチであ
る。以下、この光学的に等方性成分からなるピッチを単
に「等方性ピッチ」という。
【0007】これらの炭素繊維製造用紡糸ピッチの出発
原料である石炭系重質油、例えばコールタールは、石炭
を高温で乾留する際に副生する重質油であるため、0.
1〜0.3μm のフリーカーボンや遊離炭素と呼ばれる
非常に微細なすす状物や、また高温で乾留するときに生
成する著しく高分子量化した成分や、加熱処理時に容易
にメソフェーズ化する熱反応性の高い成分等を含有して
おり、これらは石炭系重質油から汎用炭素繊維製造用の
等方性ピッチを製造する際、紡糸時に悪影響をおよぼす
不良成分である。すなわち、等方性ピッチを紡糸し、汎
用炭素繊維を製造する際、これらの不良成分の内、フリ
ーカーボンや遊離炭素および著しく高分子量化した成分
は、等方性ピッチを加熱溶融して紡糸する際に固体状態
であるため、紡糸時の糸切れや得られる炭素繊維の繊維
強度の低下をもたらす。また、熱反応性の高い成分は、
等方性ピッチを製造する際の加熱処理時にメソフェーズ
化するため、得られる等方性ピッチがメソフェーズを含
有する原因となるものであって、かかるメソフェーズを
含有する等方性ピッチを加熱溶融して紡糸しようとする
と、等方性ピッチ成分が紡糸に適した粘度となっても、
メソフェーズの粘度はまだ紡糸に適さない高い粘度を有
しているため、安定した紡糸が困難である。
【0008】したがって、石炭系重質油を原料として汎
用炭素繊維製造用の等方性ピッチを製造しようとする場
合、原料である石炭系重質油からフリーカーボン等の固
形分、石炭を高温で乾留したときに生成する著しく高分
子量化した成分、そして加熱処理により容易にメソフェ
ーズ化する熱反応性の高い成分をいかに効率良く除去す
るかということ、およびその製造工程中においてメソフ
ェーズをいかに生成させないようにするかということが
重要な問題となる。
【0009】このような問題を解決するための方法とし
て、例えば特公昭61−21589号公報には、原料コ
ールタール軟ピッチを350〜500℃に加熱してメソ
フェーズを生成させ、原料中のフリーカーボンを、生成
したメソフェーズ球体の周囲に付着させて、芳香族系炭
化水素溶剤の不溶分として除去する方法が示されてお
り、その実施例では、コールタール軟ピッチを430〜
450℃、60分間加熱処理し、メソフェーズを10〜
25重量%発生させ、メソフェーズにフリーカーボンを
付着させて、それらをタール油不溶分として同時に除去
している。また、特公昭61−2712号公報にも、上
記と同様の方法が示されており、その実施例には、コー
ルタール軟ピッチを400〜490℃、10〜130分
間加熱処理しメソフェーズを15〜28重量%発生さ
せ、メソフェーズにフリーカーボンを付着させて、それ
らをタール油不溶分として除去している。すなわち、こ
れらの方法は、いずれも、前記不良成分の内、芳香族系
炭化水素溶剤に可溶な成分である熱反応性の高い不良成
分を、加熱処理によりメソフェーズ化し、芳香族系炭化
水素溶剤に不溶な成分とし、元来芳香族系炭化水素溶剤
に不溶な成分であるフリーカーボン等の固形分および著
しく高分子量化した成分と同時に除去するものである。
【0010】しかし、上記方法のようにメソフェーズを
10〜28重量%も発生させるような加熱処理の条件で
は、元来芳香族系炭化水素溶剤に可溶であって、また、
汎用炭素繊維製造用紡糸ピッチとして好適な等方性ピッ
チとなり得る有用な成分の一部までも、熱反応性の高い
成分と共にメソフェーズ化もしくはメソフェーズ化しな
いまでも芳香族系炭化水素溶剤に不溶な成分となり、該
溶剤不溶分として除去されるため、得られる等方性ピッ
チの収率が低くなるから、上記のような方法は経済的と
は言いにくい。また、上記のようにメソフェーズを生成
させる苛酷な加熱条件では、加熱処理に当たり、管式加
熱炉のような連続加熱処理法を採用すると、メソフェー
ズ等による管の閉塞の問題が発生するから、効率が悪く
かつ品質の安定性に欠けるバッチ式の加熱処理法を採用
せざるを得ないという問題もある。
【0011】また、例えば、特開昭52−78201号
公報には、芳香族系炭化水素溶剤と脂肪族系炭化水素溶
剤をある特定の比率で混合した溶剤を用いて、これに不
溶なフリーカーボンや高分子量成分を濾過により除去す
る方法が示されている。
【0012】しかし、上記のような混合溶剤を用いる方
法においては、フリーカーボンや著しく高分子量化した
成分は除去できても、加熱処理により容易にメソフェー
ズ化する熱反応性の高い成分は、混合溶剤に可溶である
ため、該混合溶剤による処理では除去されず、次の溶剤
不溶分の除去されたコールタール軟ピッチを、紡糸に適
したピッチとするための加熱処理工程においてメソフェ
ーズが発生し易く、全くメソフェーズを含まない紡糸用
等方性ピッチの製造法としては不十分である。また、特
定の混合溶剤を用いるため、溶剤の回収、混合比率の調
整等、操作上の煩雑さもある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、石炭系
重質油を原料として汎用炭素繊維製造用紡糸ピッチとし
て好適な等方性ピッチを製造するに当たり、原料である
石炭系重質油から、フリーカーボン等の固形分、著しく
高分子量化した成分、そして加熱処理により容易にメソ
フェーズ化する熱反応性の高い成分等の不良成分の除去
方法は、該等方性ピッチの工業的製造の経済性に大きく
影響することが明白であるが、今のところ、これらの不
良成分を効率良く経済的に除去できる方法は確立されて
おらず、結局、固形分、著しく高分子量化した成分およ
びメソフェーズを含まず、紡糸性、不融化性に優れた等
方性ピッチを高収率でかつ経済的に製造できる方法は確
立されていない。
【0014】したがって、本発明の目的は、石炭系重質
油から上記不良成分を効率良く経済的に除去し得る方法
を与え、石炭系重質油から高収率で経済的に汎用炭素繊
維製造用紡糸ピッチとして好適な等方性ピッチを製造で
きる方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記本発
明の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、次のこと
を見出して本発明を完成した。
【0016】 一定の性状を有する石炭系重質油を原
料として用い、該石炭系重質油をキシレン不溶分が1重
量%以上増加し、かつキノリン不溶分が1重量%以上増
加しないように加熱処理すれば、単環の芳香族系炭化水
素溶剤に可溶性であって等方性ピッチになり得る有用な
成分が、従来方法のように単環の芳香族系炭化水素溶剤
に不溶な成分に転化されることが抑制されて、主として
単環の芳香族系炭化水素溶剤に可溶で加熱により容易に
メソフェーズ化する熱反応性の高い成分のみが単環の芳
香族系炭化水素溶剤に不溶な成分に転化され、斯く加熱
処理した石炭系重質油を単環の芳香族系炭化水素溶剤で
処理すれば、加熱により容易にメソフェーズ化する熱反
応性の高い成分を等方性ピッチになり得る有用な成分の
損失を抑制して、フリーカーボン等の固形分および高分
子量化した成分と共に、効率良く除去することができ、
従来方法によるよりも高収率で経済的に等方性ピッチを
製造できること。
【0017】 上記のキシレン不溶分が1重量%以上
増加し、かつキノリン不溶分が1重量%以上増加しない
ように加熱処理するための加熱処理手段としては、例え
ばオートクレーブを用いるバッチ式手段は適当でなく、
管式加熱炉を用いる連続式手段が適当であること。
【0018】 一定の性状を有する石炭系重質油か
ら、上記のような加熱処理とそれに次ぐ単環の芳香族系
炭化水素溶剤処理により、等方性ピッチになり得る有用
な成分の損失を抑制して高収率で得られた等方性ピッチ
が、従来方法で得られた等方性ピッチと比べて、同等な
いしそれ以上に優れた紡糸性を有し、汎用炭素繊維製造
用紡糸ピッチとして好適であること。
【0019】したがって、本発明の要旨は、100℃で
の粘度が1,000cSt 以下であり、沸点が250℃以
下の成分が25重量%以下、沸点が250〜350℃の
成分が5〜40重量%の範囲にある石炭系重質油を、キ
シレン不溶分が1重量%以上増加し、かつキノリン不溶
分が1重量%以上増加しないように管式加熱炉を用い連
続的に加熱処理し、得られた加熱処理重質油を単環の芳
香族系炭化水素溶剤に溶解させ、該溶剤に不溶な成分を
分離除去し、得られた可溶成分を含む溶液から溶剤を除
去して精製加熱処理重質油を得、該精製加熱処理重質油
を加熱処理することを特徴とする等方性ピッチの製造方
法に存する。
【0020】本発明で原料として用いられる石炭系重質
油としては、100℃における粘度が1,000cSt 以
下、好ましくは300cSt 以下、沸点250℃以下の成
分が25重量%以下、好ましくは20重量%以下、沸点
250〜350℃の成分が5〜40重量%、好ましくは
10〜40重量%の範囲にあるものであれば、コールタ
ール、コールタールピッチあるいは石炭液化油等、種々
のものを用い得る。
【0021】原料の石炭系重質油の加熱処理の条件は、
目的物である汎用炭素繊維製造用紡糸ピッチとして適し
た等方性ピッチの特性、収率、ひいては該等方性ピッチ
から誘導される炭素繊維の特性にまで影響を及ぼすため
重要である。本発明の実施に当たっては、原料の石炭系
重質油を、該石炭系重質油中のキシレン不溶分が1重量
%以上、好ましくは3重量%以上増加し、かつキノリン
不溶分が1重量%以上増加しない条件で加熱処理するこ
とが必要であり、かかる加熱処理条件は、一般に、温度
380〜520℃、圧力2〜100Kg/cm2G、滞留時間
10〜2,000秒、好ましくは、温度400〜520
℃、圧力5〜50Kg/cm2G、滞留時間30〜1,000
秒の範囲から選ばれる。
【0022】本発明で採用する上記原料の石炭系重質油
の加熱処理条件、特に温度および滞留時間の条件は、単
環の芳香族系炭化水素溶剤に可溶で容易にメソフェーズ
化する熱反応性の高い成分が、単環の芳香族系炭化水素
溶剤に不溶な成分に転化されるが、メソフェーズまでに
は転化されない程度の加熱処理条件である。原料の石炭
系重質油の加熱処理が、温度が低すぎたり、滞留時間が
短すぎて、原料の石炭系重質油中のキシレン不溶分の増
加が1重量%以下であるような加熱処理では、単環の芳
香族系炭化水素溶剤に可溶で加熱により容易にメソフェ
ーズ化する熱反応性の高い成分が単環の芳香族系炭化水
素溶剤に不溶な成分に転化される反応が不十分となり、
芳香族系炭化水素溶剤による上記熱反応性の高い成分の
除去が不十分となる。また、かかる加熱処理では、当該
加熱処理における単環の芳香族系炭化水素溶剤に可溶な
成分の重質化が不十分であって、加熱処理後の単環の芳
香族系炭化水素溶剤に可溶な成分の分子量が低すぎるた
め、本発明方法の最終工程である精製加熱処理重質油を
目的物の等方性ピッチとするための加熱処理において、
成分の熱重合反応による重質化を一層促進させる必要が
生じ、その処理条件を厳しくする必要が生じる。この加
熱処理の条件をあまり厳しくすると、当該加熱処理にお
いてメソフェーズが生成し、得られる等方性ピッチが汎
用炭素繊維製造用紡糸ピッチに適さなくなる。一方、原
料の石炭系重質油の加熱処理が、温度が高すぎたり、滞
留時間が長すぎて、キノリン不溶分の増加が1重量%以
上であるような加熱処理では、成分の過度の熱重合が起
こり、汎用炭素繊維製造用紡糸ピッチに適した等方性ピ
ッチとなり得る成分までが、多量に単環の芳香族系炭化
水素溶剤に不溶な成分に転化されて、得られる等方性ピ
ッチの収率が低下し、また加熱手段として管式加熱炉を
採用する場合、コークスの生成による管式加熱炉の管の
閉塞をまねく。
【0023】また、圧力が低すぎる場合、原料重質油の
軽質分が気化し、気液の分離が起こり、液相部が著しく
重合し易くなりキノリン不溶分の生成と管の閉塞が起こ
り易くなる。一方、圧力が極端に高い場合は装置上不経
済である。必要とされる圧力は加熱処理される石炭系重
質油を実質的に液相に保つに足りる圧力であればよい。
【0024】また、一般に用いられているオートクレー
ブのようなバッチ式の加圧加熱処理装置では、10〜
2,000秒という短い滞留時間や、加熱処理される石
炭系重質油の装置内での均一な温度分布を調整するのは
困難であり、このような条件を調整するためには管式の
加熱炉を用いる必要がある。
【0025】また、上記加熱処理で得られた加熱処理重
質油は沸点250℃以下の成分が25重量%以下、好ま
しくは10重量%以下、沸点250〜350℃の成分が
5〜40重量%、好ましくは10〜40重量%、100
℃における粘度が1,000cSt 以下、好ましくは50
0cSt 以下となるようにするのが望ましい。沸点250
℃以下の軽質分を多量に含んでいると、その後の単環の
芳香族系炭化水素溶剤に不溶な成分を除去する際、濾過
速度が著しく低下し、効率が悪くなるため、その前に、
蒸留等により軽質分を除去することが望ましい。
【0026】該軽質分を除去するための蒸留は、沸点2
50℃以下の成分を25重量%以下、好ましくは10重
量%以下にするのに足りれば良く、減圧下もしくは常圧
下で、250℃以下の温度で行われる。
【0027】上記加熱処理で得られた加熱処理重質油
は、必要に応じ蒸留により、沸点250℃以下の軽質分
を除去した後、単環の芳香族系炭化水素溶剤に溶解さ
れ、その中の該溶剤に不溶な成分が除去される。
【0028】この単環の芳香族系炭化水素溶剤として
は、ベンゼン、トルエン、キシレンあるいはエチルベン
ゼン等があげられ、これらは単独で用いても良いし、2
種類以上を混合して用いても良い。これらの溶剤は溶解
性が適度であるばかりでなく、その後の溶剤回収におい
ても、沸点が低く、しかも蒸留が容易であり経済的であ
る。
【0029】単環の芳香族系炭化水素溶剤の使用量は、
処理しようとする加熱処理重質油に対して1〜5重量倍
量、好ましくは1〜3重量倍量が適当である。溶剤量が
少ないと、混合液の粘度が高くなり不溶分の分離効率が
悪くなる。逆に、溶剤量を多くすると処理量の増大をま
ねき不経済である。
【0030】この溶液から溶剤に不溶な不良成分の分離
方法は、沈降分離、遠心分離、あるいは濾過等の任意の
方法が用いられるが、フリーカーボン等の微細な固形分
を含んでいるため、これらの固形分を完全に除去するた
めには、濾過の方法を採用することが好ましい。また、
必要に応じ、溶液を溶剤の沸点以下、好ましくは室温〜
60℃に加温しておくことが望ましい。
【0031】上記のようにして得られた、溶剤に不溶な
成分の除去された溶液から、溶剤を蒸留除去することに
より精製加熱処理重質油が得られ、該精製加熱処理重質
油は、最終加熱処理することにより重質化し、汎用炭素
繊維製造用紡糸ピッチに好適な、メソフェーズを含まな
い等方性ピッチとなる。
【0032】該最終加熱処理は、公知の方法を採用する
ことができ、一般に減圧下もしくは不活性ガス等の吹き
込み下に350〜500℃の温度範囲で10〜300分
間、好ましくは、380〜480℃で10〜180分間
で行われる。加熱処理の方法は、例えばオートクレーブ
等によるバッチ式でも良いが、減圧下あるいは常圧下に
不活性ガス等の流通下に、薄膜蒸留装置、流下膜式熱処
理装置等を用いて連続的に行っても良い。用いられる不
活性ガス等としては、窒素、ヘリウムあるいはアルゴン
等の不活性ガス、過熱水蒸気あるいは処理温度において
不活性な低沸点有機化合物、低沸点油等を加熱して高温
の過熱蒸気としたもの等があげられる。
【0033】該最終加熱処理で注意しなければならない
ことは、メソフェーズもしくはコークスのような固形分
を生成しないような条件を選択することである。これら
を含んだピッチは、これを溶融紡糸して繊維化しようと
するときに、紡糸用ノズルの閉塞等の問題を生じる。一
方、これらの固形分を発生させないために、加熱処理の
条件を著しく温和にすることも考えられるが、この場
合、得られるピッチの軟化点が低く、またピッチ中の軽
質分が十分除去されていないものとなり、紡糸時に多量
のガスが発生するなどの問題が起こり、これを酸化雰囲
気中で加熱して不融化することが困難になる。
【0034】本発明によって得られた等方性ピッチは、
光学的に等方性で、メソフェーズが実質的に存在せず、
一般に、キシレン不溶分が50〜80重量%でかつキノ
リン不溶分が1重量%以下、灰分が100ppm 以下、軟
化点が200〜280℃の範囲のものである。
【0035】なお、ここで言うメソフェーズを含まない
とは、ピッチを樹脂に埋め込み後ピッチ面を研磨し、偏
光顕微鏡500倍率で10視野中に1μm 以上のメソフ
ェーズが1個以下であるものを言う。
【0036】
【実施例】以下実施例及び比較例によって本発明の方法
をさらに詳細に説明する。
【0037】実施例1 100℃の粘度が109cSt 、沸点が250℃以下の成
分が0重量%、250〜350℃の成分が18重量%、
キシレン不溶分が8.3重量%、キノリン不溶分が0.
4重量%のコールタールを温度440℃、圧力20Kg/
cm2G、滞留時間230秒で管式加熱炉を用い連続的に加
熱処理し、100℃の粘度が67cSt 、沸点が250℃
以下の成分が3重量%、250〜350℃の成分が20
重量%、キシレン不溶分が12重量%、キノリン不溶分
が0.4重量%の加熱処理重質油を得た。次にこの加熱
処理重質油を2倍量のキシレンに溶解し、濾過により溶
剤不溶分を除去し、濾液から蒸留によりキシレンを回収
し、精製加熱処理重質油を得た。この精製加熱処理重質
油を窒素ガスを吹き込みながら温度450℃、30分間
最終加熱処理し、軟化点243℃、キシレン不溶分6
6.0重量%、キノリン不溶分0.1重量%以下、灰分
30ppm で、偏光顕微鏡500倍で1μm 以上のメソフ
ェーズが確認されない、全面光学的等方性のピッチを得
た。原料コールタールからの該等方性ピッチの収率は1
7%であった。
【0038】得られた等方性ピッチを径0.25mm、長
さ0.75mmのノズル孔を持つ単孔紡糸機において、温
度263℃、捲取速度800 m/min で紡糸し、空気中
1℃/min の昇温速度で320℃まで昇温し、この温度
で20分間加熱することにより不融化し、続いて窒素雰
囲気中で1,000℃にて炭化して炭素繊維とした。こ
の炭素繊維の物性は、引張強度106Kg/mm2 、引張弾
性率5.1 ton/mm2であった。
【0039】実施例2 実施例1と同様のコールタールおよび管式加熱炉を用い
て、温度520℃、圧力20Kg/cm2G、滞留時間230
秒で連続的に加熱処理し、粘度が208cSt 、沸点が2
50℃以下の成分が3重量%、250〜350℃の成分
が18重量%、キシレン不溶分が19重量%、キノリン
不溶分が1.2重量%の加熱処理重質油を得た。この加
熱処理重質油から実施例1と同様に精製加熱処理重質油
を得、窒素ガスを吹き込みながら温度450℃、60分
間最終加熱処理し、軟化点258℃、キシレン不溶分6
5.3重量%、キノリン不溶分0.1重量%以下、灰分
28ppm で、偏光顕微鏡500倍で1μm 以上のメソフ
ェーズが確認されない、全面光学的等方性のピッチを得
た。原料コールタールからの該等方性ピッチの収率は1
5%であった。図1に得られたピッチのGPCプロファ
イルを示す。
【0040】また、得られた等方性ピッチを実施例1と
同じ紡糸機を用い、温度278℃、捲取速度800 m/
min で紡糸し、実施例1と同じ条件で不融化および炭化
を行い炭素繊維を得た。この炭素繊維の物性は、引張強
度112Kg/mm2 、引張弾性率5.8 ton/mm2 であっ
た。
【0041】比較例1 実施例1と同様のコールタールを加熱処理を実施せずに
実施例1と同様にキシレン抽出し、得られた溶剤可溶成
分を実施例1と同様に、温度450℃、25分間最終加
熱処理し、軟化点249℃、キシレン不溶分65.7重
量%、キノリン不溶分0.1重量%、灰分50ppm のピ
ッチを得た。メソフェーズは実施例1と同様の方法で観
察したところ、粒径1〜2μm のメソフェーズが確認さ
れた。原料コールタールからの該ピッチの収率は20%
であった。図1に得られたピッチのGPCプロファイル
を示す。
【0042】得られたピッチを実施例1と同じ紡糸機を
用い、温度270℃、捲取速度を200〜800 m/mi
n に変化させたが、糸切れが多く紡糸は困難であった。
得られた生糸を走査電子顕微鏡で観察したところ、生糸
表面に1〜2μm の異物(メソフェーズ)が多数観察さ
れた。
【0043】図1のGPCプロファイルより、該比較例
で製造されたピッチは、熱反応性の高い成分が除去され
ていないため、高分子量成分が多量に含まれ分子量分布
が広いことがわかる。一方、実施例2で得られたピッチ
は、熱反応性の高い成分が十分除去され、分子量分布が
シャープであり、均質で紡糸性の優れたピッチであるこ
とがわかる。
【0044】比較例2 実施例1と同様のコールタールおよび管式加熱炉を用い
て、温度540℃、圧力20Kg/cm2G、滞留時間230
秒で連続的に加熱処理したところ、実験開始後約2時間
で管式加熱炉の管が閉塞した。管が閉塞するまでに得ら
れた加熱処理重質油は、キシレン不溶分26重量%、キ
ノリン不溶分2.5重量%で、キノリン不溶分が非常に
多いものであった。
【0045】比較例3 実施例1と同様のコールタールをオートクレーブ反応装
置を用い、温度450℃、圧力20Kg/cm2G、反応時間
90分で加熱処理した。オートクレーブ内部は、コーク
ス状物質が多量に付着し、得られた加熱処理重質物は不
均一であった。コークス状物質を含めた加熱処理物は、
沸点が250℃以下の成分が5重量%、250〜350
℃の成分が13重量%、キシレン不溶分が52.1重量
%、キノリン不溶分が27.4重量%であった。粘度は
コークス状物質が混入しているため測定できなかった。
この加熱処理重質油をキシレンに溶解させ、不良成分で
ある溶剤不溶分を濾過により除去し、濾液から蒸留によ
り、溶剤および軽質分を除去し、精製加熱処理重質油を
得た。この精製加熱処理重質油を実施例1と同様に最終
加熱処理し、軟化点250℃、キシレン不溶分58.5
重量%、キノリン不溶分0.1重量%以下、灰分26pp
m で、偏光顕微鏡500倍で1μm 以上のメソフェーズ
が確認されない、全面光学的等方性のピッチを得た。原
料コールタールからの該等方性ピッチの収率は6%であ
った。
【0046】
【発明の効果】本発明方法によれば、等方性ピッチを高
収率で製造することができる。しかも、連続的製造法で
あるから、一定の品質の等方性ピッチを大量に、安定し
て、低廉に製造することができる。また、本発明方法で
得られる等方性ピッチは、メソフェーズを実質的に含有
せず、優れた紡糸性を有しており、汎用炭素繊維製造用
紡糸ピッチとして好適なものである。また、紡糸ピッチ
として用いた場合、紡糸機のフィルターや紡糸ノズルの
閉塞の問題もなく、低温紡糸、高速捲取りが可能であ
り、また不融化性も優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2および比較例1で得られたピッチのG
PCプロファイルであり、横軸は分子量、縦軸は重量濃
度である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 智彦 千葉県市原市加茂439番地 丸善石油化学 国分寺台寮123号室

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 100℃での粘度が1,000cSt 以下
    であり、沸点が250℃以下の成分が25重量%以下、
    沸点が250〜350℃の成分が5〜40重量%の範囲
    にある石炭系重質油を、キシレン不溶分が1重量%以上
    増加し、かつキノリン不溶分が1重量%以上増加しない
    ように管式加熱炉を用い連続的に加熱処理し、得られた
    加熱処理重質油を単環の芳香族系炭化水素溶剤に溶解さ
    せ、該溶剤に不溶な成分を分離除去し、得られた可溶成
    分を含む溶液から溶剤を除去して精製加熱処理重質油を
    得、該精製加熱処理重質油を加熱処理することを特徴と
    する等方性ピッチの製造方法。
  2. 【請求項2】 石炭系重質油を加熱処理して得られた加
    熱処理重質油を、蒸留により軽質分を除去した後、単環
    の芳香族系炭化水素溶剤に溶解させる請求項1記載の等
    方性ピッチの製造方法。
  3. 【請求項3】 石炭系重質油の加熱処理が、温度が38
    0〜520℃、圧力が2〜100Kg/cm2G、滞留時間が
    10〜2,000秒の範囲内の条件で行われる請求項1
    または2記載の等方性ピッチの製造方法。
  4. 【請求項4】 単環の芳香族系炭化水素溶剤が、ベンゼ
    ン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンから選ば
    れる少なくとも1種類からなり、加熱処理重質油に対し
    1〜5重量倍加えられる請求項1ないし3のいずれかの
    一つの請求項記載の等方性ピッチの製造方法。
  5. 【請求項5】 得られる等方性ピッチが、メソフェーズ
    が実質的に存在せず、キシレン不溶分が50〜80重量
    %でかつキノリン不溶分が1重量%以下、灰分が100
    ppm 以下、軟化点が200〜280℃の範囲である請求
    項1または2記載の等方性ピッチの製造方法。
  6. 【請求項6】 得られる等方性ピッチが、汎用炭素繊維
    製造用紡糸ピッチである請求項1または2記載の等方性
    ピッチの製造方法。
  7. 【請求項7】 100℃での粘度が1,000cSt 以下
    であり、沸点が250℃以下の成分が25重量%以下、
    250〜350℃の成分が5〜40重量%の範囲にある
    石炭系重質油を、キシレン不溶分が1重量%以上増加
    し、かつキノリン不溶分が1重量%以上増加しないよう
    に、温度380〜520℃、圧力2〜100Kg/cm2G、
    滞留時間10〜2,000秒の範囲で、管式加熱炉を用
    い連続的に加熱処理し、得られた加熱処理重質油をベン
    ゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンから選
    ばれる少なくとも1種類からなる単環の芳香族系炭化水
    素溶剤の1〜5重量倍量に溶解させ、該溶剤に不溶な成
    分を分離除去し、得られた可溶成分を含む溶液から溶剤
    を除去して精製加熱処理重質油を得、該精製加熱処理重
    質油を加熱処理することを特徴とする、メソフェーズが
    実質的に存在せず、キシレン不溶分が50〜80重量%
    でかつキノリン不溶分が1重量%以下、灰分が100pp
    m 以下、軟化点が200〜280℃の範囲である等方性
    ピッチの製造方法。
  8. 【請求項8】 石炭系重質油を加熱処理して得られた加
    熱処理重質油を、蒸留により軽質分を除去した後、単環
    の芳香族系炭化水素溶剤に溶解させる請求項7記載の等
    方性ピッチの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20230005503A (ko) * 2021-07-01 2023-01-10 한국화학연구원 고수율 메조페이스 피치 제조방법 및 이로부터 제조된 고수율 메조페이스 피치

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