JPH0724264A - 中空糸膜モジュールを用いた濾過方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【構成】 シート状の平型中空糸膜モジュール２の下方
から、散気管４を通してエアーによるスクラビングを連
続的若しくは断続的に行いながらろ過するに際し、シー
ト面が垂直となるように該モジュールを配置してろ過を
行う。 【効果】 本発明の平型中空糸膜モジュールを用いたろ
過方法は、高汚濁性水のろ過方法に於て、洗浄効率を向
上し、膜面の目詰りを抑制することで、高いろ過流量を
長時間保つことが可能である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は中空糸膜モジュールを用
いた濾過方法に関し、特に汚濁性の高い液体を中空糸膜
モジュールで濾過するのに適した濾過方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、中空糸膜モジュールは、無菌水、
飲料水、高純度水の製造や、空気の浄化といったいわゆ
る精密濾過の分野において多く使用されてきたが、近
年、下水処理場における二次処理、三次処理や浄化槽に
おける固液分離等の高汚濁性水処理用途に用いる検討が
様々な形で行われている。

【０００３】このような用途に用いる中空糸膜モジュー
ルは、濾過処理時における中空糸膜の目詰まりが大きい
ために、一定時間濾過処理後、空気を送って中空糸膜を
振動させて膜表面を洗浄したり、濾過処理と逆方向に処
理水を通水するなどの膜面洗浄を繰り返し行っている。

【０００４】しかしながら、これらの分野で用いられて
いる中空糸膜モジュールは、従来の精密濾過の分野にお
いて用いられてきた円形状や同心円状に中空糸膜を集束
して配置した円筒形タイプのものが殆んどであった。
又、改良が施されるとしても、中空糸膜の充填率や充填
形態を変えるだけのものが多かった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このような従来の中空
糸膜モジュールを用いて高汚濁性水（例えば、ｓｓ≧５
０ｐｐｍ，ＴＯＣ≧１００ｐｐｍ）の濾過処理を行った
場合には、使用に伴い中空糸膜表面に付着した有機物等
の堆積物を介して、中空糸膜同士が固着（接着）して一
体化されることにより、モジュール内の中空糸膜の有効
膜面積が減少し、濾過流量の急激な低下がみられた。

【０００６】又このようにして中空糸膜同士が固着して
一体化した中空糸膜モジュールを定期的に膜面洗浄や逆
洗を行う場合も、一旦固着一体化したモジュールの機能
回復は容易ではなく、洗浄効率の低下がみられた。

【０００７】この問題の解決策として、集束型の中空糸
膜モジュールに換えて、中空糸膜をシート状に配置し、
中空糸膜の片端部あるいは両端部が、一つ或は異なる二
つのハウジング内の固定部材でそれぞれ開口状態を保ち
つつ固定されてなる中空糸膜モジュールであって、固定
部材の中空糸膜に垂直な断面の形状がいずれも細長いほ
ぼ矩形である中空糸膜モジュールが提案されている。

【０００８】このようなシート状の平型の中空糸膜モジ
ュールは、中空糸膜を層間隔を設けて内外層に均等に配
置させることが可能となり、膜面洗浄の際、中空糸膜表
面を均等に洗浄することが極めて容易となるので、これ
までのような濾過効率の低下を抑えることができるな
ど、高汚濁性水の濾過に適したモジュールである。

【０００９】平型の中空糸膜モジュールの膜面洗浄はエ
アースクラビングで糸を振動させる等の方法で行うが、
シート面を水平にして複数のモジュールを上下に積層し
て固定し、モジュールの下方からエアーを送り、スクラ
ビング洗浄を行う場合、下から１個ないし３個までのモ
ジュールにはエアーバブルが当たっているが、それより
も上方のモジュールに対してはエアーバブルが中空糸間
を通過し難く、モジュールの外側、即ち中空糸膜の無い
部分をエアーバブルが通過するため上方のモジュールで
は膜面洗浄が効率良く行われていないことがある。

【００１０】そこで、それぞれのモジュールに均等にエ
アースクラビングを行うためにモジュールを積層せず、
シート面を水平にした状態で、横に並列した場合、缶体
や槽が必要以上に大きくなる。

【００１１】又エアーバブルが通過していない箇所で
は、懸濁物質がシート面に沈降、堆積、あるいは付着し
て、有効膜面積の減少および目詰まりを進行させる等の
問題がある。

【００１２】本発明は、シート状の平型中空糸膜モジュ
ールを用いた液体、特に高汚濁性水の濾過に於るこのよ
うな問題点を解決したものであり、シート状の平型中空
糸膜モジュールを用いた濾過方法に於て、モジュール全
体が効率良く膜面洗浄でき、有効膜面積の減少や膜面の
目詰まりの進行を抑えるような、濾過方法を提供するこ
とをその目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】即ち本発明の要旨は、シ
ート状の平型中空糸膜モジュールの下方からエアーによ
るスクラビングを連続的若しくは断続的に行いながら液
体を濾過するに際し、シート面が垂直となるように該モ
ジュールを配置して濾過することにある。

【００１４】以下に本発明を図面に従い詳細に説明す
る。図１は、本発明におけるシート状の平型中空糸膜モ
ジュールを用いた濾過方法における中空糸膜モジュール
の支持方法の一例を示した図で、缶体内あるいは槽内に
おいて、シート面を垂直にし、中空糸膜の長手方向を水
平にしてモジュールを固定し、３個のモジュールを横に
並列して配置させたときの斜視図である。１は集水管、
２は中空糸膜、３は中空糸膜集束端部、４は散気板をそ
れぞれ示している。

【００１５】本発明で用いる平型中空糸膜モジュール
は、シート状に配列された中空糸膜がその両端あるいは
片端を開口状に保った状態でポッティング用樹脂によっ
て固定され、中空糸膜の開口部は集水管に通じている。

【００１６】中空糸膜の片端のみが開口状で集水管に接
続されているものに限らず、中空糸膜の両端が開口状を
保った状態で固定され、両端に集水管を有するものであ
っても差し支えない。即ち、それぞれの図において中空
糸集束端部３が集水管であっても構わない。

【００１７】モジュールの固定に際して、中空糸膜２は
適当な弛緩が必要であるが、弛緩を採りすぎると、中空
糸膜は浮力を受け弓状になり、且つ中空糸膜の振動する
幅が増大することで、中空糸集束端部を固定するポッテ
ィング樹脂硬化部と個々の中空糸膜の基部における座屈
による応力が大きくなり、界面部分の強度の低下が生ず
るため、樹脂硬化部と中空糸膜の間で中空糸膜の亀裂や
切損が生じることがある。固定した時の弛緩率は、３％
以内より好しくは１％以内が望ましい。

【００１８】モジュールの固定方法は、槽内や缶体内で
スタンドやクランプで固定する方法や専用の治具を用い
て固定するなど任意の方法が用いられるが、エアースク
ラビング等の際にモジュールが動くことのないような固
定方法であれば構わない。

【００１９】散気板４は、エアースクラビングするため
のものであるが、モジュール全体にエアーバブルが当た
るようなものであればどのようなものでも構わない。

【００２０】従って図では散気板になっているが、パイ
プに孔を開けたものや多孔性の材料で構成された散気管
を用いても差し支えない。散気板あるいは散気管にブロ
アーを接続し、濾過運転中連続的或は断続的にブロアー
から送風することでバブリングを行い、膜面洗浄を行
う。

【００２１】図１のように、複数のモジュールを横方向
に並列に配置して固定する場合には、缶体や処理槽をコ
ンパクトにするため、並びにエアースクラビングを効率
良く行うことを考慮すると隣接するモジュールの間隔は
小さい方が好ましいが、間隔を狭めすぎるとモジュール
間にエアーバルブが通り難くなることが考えられる。

【００２２】従って、モジュール間の間隔は適切な間隔
が要求され、その間隔は３０〜１００ｍｍの範囲が適当
である。実際にはモジュールの大きさ、モジュール本
数、エアースクラビング等の逆洗条件を考慮してモジュ
ール間の間隔を選択することができる。

【００２３】中空糸膜２としては、例えばセルロース
系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、ＰＭ
ＭＡ系、ポリスルフォン系等の各種材料からなるものが
使用でき、特にはポリエチレン、ポリプロピレン等の強
伸度の高い材質のものが好ましい。

【００２４】尚濾過膜として使用可能なものであれば、
孔径、空孔率、膜厚、外径等には特に制限はないが、除
去対象物や容積当たりの膜面積の確保および中空糸膜の
強度等を考えると、好ましい例としては、孔径０．０１
〜１μｍ、空孔率２０〜９０％、膜厚５〜３００μｍ、
外径２０〜２０００μｍの範囲を挙げることができる。

【００２５】又、バクテリアの除去を目的とする場合の
孔径は０．２μｍ以下であることが必須となり、有機物
やウイルスの除去を目的とする場合には分画分子量数万
から数十万の限外濾過膜を用いる場合もある。

【００２６】中空糸膜の表面特性としては、エチレン−
酢酸ビニル共重合体の鹸化物の如き重合体を保持して表
面に親水性基等を持ついわゆる恒久親水化膜であること
が望ましい。表面が疎水性の中空糸膜であると、被処理
水中の有機物と中空糸膜表面との間に疎水性相互作用が
働き膜面への有機物吸着が発生し、それが膜面閉塞につ
ながり濾過寿命が短くなる。

【００２７】又、吸着由来の目詰まりは膜面洗浄による
濾過性能回復も一般には難しい。恒久親水化膜を用いる
ことにより有機物と中空糸膜表面との疎水性相互作用を
減少させることができ、有機物の吸着を抑えることがで
きる。

【００２８】

【作用】シート状の平型中空糸膜モジュールのシート面
を垂直にしてモジュールを固定することで、特に、複数
のモジュールで濾過を行う場合、モジュールを水平方向
に並列させて配置することで、全てのモジュールに対し
て均等にエアースクラビングを行うことができる。又、
シート面が垂直になっていることで、シート面上への懸
濁物質の沈降、堆積を防ぐことができる。

【００２９】

【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明す
る。 〔実施例１、比較例１〕エチレン−酢酸ビニル共重合体
の鹸化物を表面に保持したポリエチレン中空糸膜からな
る膜面積２ｍ² の平型中空糸膜モジュールを用いて、モ
ジュールの固定方法の違いによる濾過運転時の差圧上昇
の比較を行った。

【００３０】モジュールの固定並びに配置の方法として
は、タンク内でモジュールのシート面が水平になるよう
に固定し、５個のモジュールを上下に積層する方法（以
下方法Ｉ）と、もう一つはモジュールのシート面を垂直
にして、且つ中空糸膜の長手方向を水平にして固定し、
５個のモジュールを横に並列して配置する方法（以下方
法II）で行った。

【００３１】方法Ｉ並びに方法IIとも、隣接するモジュ
ールの間隔は６０ｍｍに設定した。タンク内に２００ｐ
ｐｍの酵母を懸濁させた水を満たし、この水を原水とし
て濾過を行った。

【００３２】濾過方法は、モジュールを原水に完全に浸
漬した状態にし、集水管とポンプの入り口側をつなぎ、
ポンプで吸引することによって濾過を行った。濾過流量
は一定で、３３０ｍｌ／ｍｉｎ（ＬＶ＝０．００９９ｍ
／ｈ）に設定し、５分間濾過、５分間停止（ポンプ停
止）を１サイクルとして運転を行った。

【００３３】尚運転中（濾過時、停止時両方共）はモジ
ュールに対して、方法Ｉでは最下部のモジュールのシー
ト面下方から、また、方法IIではそれぞれ５個のモジュ
ールの下方から、双方共に連続的に３５Ｎｌ／ｍｉｎの
エアーでスクラビングを行った。

【００３４】方法Ｉでは、下から１個目と２個目のモジ
ュールは、十分にエアースクラビング洗浄が行われ安定
な濾過（３０日間）ができたが、下から３個目では１５
日間、４個目と最上部でのモジュールでは共に８日間で
目詰まりが起こり濾液が得られなくなった。

【００３５】一方方法IIにおけるモジュールでは５個の
モジュール全てにおいて差圧の上昇が少なく４０日間に
わたって安定運転が行われた。

【００３６】従って、方法IIにおける濾過方法のほうが
方法Ｉより差圧の上昇が抑えられ、安定した濾過が持続
できることがわかる。

【００３７】

【発明の効果】本発明の平型中空糸膜モジュールを用い
た濾過方法は、濾過運転中の連続的あるいは断続的なエ
アースクラビングによる膜面洗浄の際に、モジュールの
中空糸膜全体にエアーが当たり、洗浄効率が向上する。
又シート面が垂直になっていることで、シート面上への
懸濁物質の沈降、堆積を防ぐことができる。

【００３８】従って、膜面の目詰まりの進行を抑えるこ
とができる。特に高汚濁性水の濾過に於て、洗浄効率が
向上し、膜面の目詰まりが抑制されることで高い濾過流
量を長期間保つことが可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のシート状の平型中空糸膜モジュールを
用いた濾過方法における中空糸膜モジュールの支持方法
の一例を示した斜視図である。

【符号の説明】

１ 集水管 ２ 中空糸膜 ３ 中空糸膜集束端部 ４ 散気板

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シート状の平型中空糸膜モジュールの下
   方からエアーによるスクラビングを連続的若しくは断続
   的に行いながら液体を濾過するに際し、シート面が垂直
   となるように該モジュールを配置することを特徴とする
   中空糸膜モジュールを用いた濾過方法。