JPH07180038A - 高硬度薄膜及びその製造方法 - Google Patents

高硬度薄膜及びその製造方法

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JPH07180038A
JPH07180038A JP6821494A JP6821494A JPH07180038A JP H07180038 A JPH07180038 A JP H07180038A JP 6821494 A JP6821494 A JP 6821494A JP 6821494 A JP6821494 A JP 6821494A JP H07180038 A JPH07180038 A JP H07180038A
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Takeshi Masumoto
健 増本
Akihisa Inoue
明久 井上
Hiroshi Yamagata
寛 山形
Jiyunichi Nagahora
純一 永洞
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基材に対する密着性及び耐圧壊性に優れた高
硬度の緻密な耐摩耗性薄膜及びその製造方法を提供す
る。 【構成】 物理的気相蒸着法により基材上に成膜を行う
に際して反応ガス分圧に応じて非晶質膜又は結晶質微粒
子が析出・分散した非晶質膜を形成できる一般式:Al
ab (M=Ti,Ta,V,Cr,Zr,Nb,M
o,Hf,W,Fe,Co,Ni,Cu,Mn、60a
t%≦a≦98.5at%、1.5at%≦b≦40a
t%、但し、a+b=100at%)の組成の材料を用
い、また硬質膜の形成を(A)非晶質膜又は結晶質微粒
子が析出・分散した非晶質膜の成膜と(B)この非晶質
膜の熱処理の二工程により行う。この方法により、実質
的に非晶質もしくは結晶質の金属母相中に均一にセラミ
ックス微粒子が分散している膜又は膜表面に向ってセラ
ミックス微粒子の分散割合が増加して結晶質セラミック
ス相に組成及び構造が傾斜的に変化した膜が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属母相中に結晶質セ
ラミックス微粒子を分散した高硬度薄膜及びその製造方
法に関し、さらに詳しくは、基材に対する密着性が良好
で、耐圧壊性に優れ、しかも高硬度の硬質セラミックス
表面を有し、高強度材料、耐摩耗材料、耐高温材料など
として産業上の種々の用途に有用な耐摩耗性硬質膜に関
する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】機械部品
や工具などの摩耗や擦り傷を防ぐための耐摩耗コーティ
ング材料としては、従来、TiN,TiC,WC,Al
−Ti−N系等の材料が用いられている。そして、これ
らの膜は、一般に反応性スパッタ法やイオンプレーティ
ング法などの物理的気相蒸着法により成膜され、耐摩耗
膜として利用されているが、高い硬度を得るためには膜
中の窒素濃度又は炭素濃度をある程度高くする必要があ
る。しかしながら、このことによって、膜には処理後に
残留応力が発生することがある。また、成膜条件によっ
ては柱状構造の結晶粒子となるため、硬質膜内部で発生
した破壊がその周辺の正常部にまで悪影響を及ぼすこと
があり、機械的に脆くなるという問題がある。
【0003】また、形成された膜は緻密でなければなら
ず、しかも基材との密着性に優れたものでなければなら
ない。一般に、これらの膜を基材上に成膜するに当って
は、基材に脱脂、エッチング等の前処理を施した後、所
望の硬質膜が基材上に直に形成されている。このように
形成された膜は、基材と膜の物性値が場合によっては極
端に異なるため、基材と膜との密着性が不充分なものと
なる。そのために、一般に基材を予熱してから成膜する
方法がとられている。しかしながら、このような処理を
施しても膜は柱状構造を示しており、機械的に脆くなる
という問題がある。
【0004】したがって、本発明の目的は、膜中に高硬
度を有する微粒子を均一に分散させることで、基材に対
する密着性に優れ、膜全体としてはセラミックス材料の
欠点である脆性が緩和された、高い硬度を示す複合硬質
膜を提供しようとするものである。さらに本発明の目的
は、金属母相中のセラミックス微粒子の分散割合が膜厚
方向に増加した機能的に傾斜した構造を有する膜を形成
するようにセラミックス微粒子が分散し、それによって
基材に対する密着性及び耐圧壊性に優れ、高い硬度を示
す緻密な耐摩耗性硬質膜を提供することにある。本発明
の別の目的は、上記のような優れた性質を有する高硬度
の耐摩耗性薄膜を、物理的気相蒸着法及び熱処理法を利
用して比較的簡単な工程で基材上に形成できる方法を提
供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明によれば、一般式:Alab (ここで、M
はTi,Ta,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,
W,Fe,Co,Ni,Cu及びMnよりなる群から選
ばれた少なくとも1種の元素、a及びbはそれぞれ原子
%を示し、60at%≦a≦98.5at%、1.5a
t%≦b≦40at%、但し、a+b=100at%)
で表わされる組成を有する金属母相中に結晶質微粒子が
分散していることを特徴とする高硬度薄膜が提供され
る。好適には、金属母相に分散している結晶質微粒子が
500nm以下、好ましくは100nm以下のセラミッ
クス粒子である高硬度薄膜が提供される。金属母相は実
質的に非晶質相であってもあるいは結晶質相であっても
よい。高硬度薄膜は、金属母相中に膜全体にわたって均
一に結晶質微粒子が分散している均一組成膜であっても
よく、あるいは金属母相中の結晶質微粒子の分散割合が
膜厚方向に連続的に又は段階的に増加している機能的に
傾斜した構造の膜であってもよい。一つの好適な態様に
よれば、上記組成を有する実質的に結晶の金属相から膜
表面に向ってセラミックス微粒子の分散割合が増加して
結晶質セラミックス相に組成及び構造が傾斜的に変化し
ている高硬度薄膜が提供される。
【0006】さらに本発明によれば、前記高硬度薄膜の
製造方法も提供される。本発明の一つの態様によれば、
(A)物理的気相蒸着法により、一般式:Alab
(ここで、M,a及びbは前記した意味と同じである)
で表わされる組成を有する蒸発源材料を用い、かつ窒
素、酸素又は炭素を含む反応ガスを用い、反応ガスの供
給量を、用いた蒸発源材料に応じて非晶質相を形成する
反応ガス分圧の範囲内で、分圧一定に、又は連続的もし
くは段階的に変化するように制御しながら、所定量の反
応ガスを含む不活性ガス雰囲気中で基材上に非晶質膜を
形成する工程、及び(B)前記工程により得られた膜を
不活性ガス雰囲気中で熱処理することによって金属母相
中に結晶質微粒子が分散している膜を形成することを特
徴とする高硬度薄膜の製造方法が提供される。さらに本
発明の他の態様によれば、(A)物理的気相蒸着法によ
り、一般式:Alab (ここで、M,a及びbは前記
した意味と同じである)で表わされる組成を有する蒸発
源材料を用い、窒素、酸素又は炭素を含む反応ガスの供
給量を、用いた蒸発源材料に応じて非晶質相を形成する
反応ガス分圧から結晶質相を形成する反応ガス分圧まで
連続的又は段階的に変化するように制御しながら、所定
量の反応ガスを含む不活性ガス雰囲気中で基材上に成膜
を行い、基材上の実質的に非晶質の金属相から膜表面に
向って反応ガス成分量が連続的又は段階的に増加して結
晶質セラミックス相に変化してなる構造傾斜膜を作成す
る工程、及び(B)前記工程により得られた構造傾斜膜
を不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うことにより、実質
的に結晶の金属相から膜表面に向ってセラミックス微粒
子の分散割合が増加して結晶質セラミックス相に組成及
び構造が傾斜的に変化してなる膜を得る工程からなるこ
とを特徴とする高硬度薄膜の製造方法が提供される。前
記いずれの方法においても、好適には、基材上への成膜
はスパッタ法又はイオンプレーティング法により行わ
れ、また前記熱処理は、所与の組成において、非晶質の
膜が得られる最高窒素分圧における結晶化温度以上の温
度に30分以上保持して行われる。
【0007】
【発明の作用及び態様】本発明は、物理的気相蒸着法、
特にスパッタ法又はイオンプレーティング法により基材
上に成膜を行うに際して、ターゲット(蒸発材料)とし
て、不活性ガス雰囲気中の反応ガス分圧に応じて非晶質
膜又は非晶質膜中に結晶質セラミックス微粒子が析出・
分散した膜を形成できる組成の材料を用い、また、硬質
膜の形成を、(A)非晶質膜あるいは結晶質微粒子が析
出・分散した非晶質膜の成膜と、(B)前記工程により
得られた非晶質膜の熱処理の二つの工程により行うもの
である。
【0008】前記(A)工程における非晶質膜の成膜
は、基材と、一般式:Alab (ここで、MはTi,
Ta,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,W,Fe,
Co,Ni,Cu及びMnよりなる群から選ばれた少な
くとも1種の元素、a及びbはそれぞれ原子%を示し、
60at%≦a≦98.5at%、1.5at%≦b≦
40at%、但し、a+b=100at%)で表わされ
る組成を有する蒸発源材料を蒸着室内にセットし、窒
素、酸素又は炭素を含む反応ガスの供給量を、雰囲気中
の反応ガス分圧を非晶質膜を形成し得る範囲内で分圧一
定に、又は連続的にもしくは段階的に変化するように制
御しながら、物理的気相蒸着法により反応ガスを含む不
活性ガス雰囲気中で基材上に成膜を行い、非晶質膜を形
成する。例えば、Ar,He,Ne,Xe,Kr等の不
活性ガスを導入してガス圧(全圧)を0.6〜1.2P
aの低圧に保った蒸着装置内に、窒素ガス、アンモニア
ガス、メタンガス等の反応ガスの供給量を分圧一定に制
御して成膜することにより、膜中の反応ガス成分の量が
膜全体にわたって実質的に均一な非晶質膜が得られる。
一方、反応ガスの供給量をその雰囲気中の分圧が連続的
もしくは段階的に増加するように制御することにより、
膜中の反応ガス成分の量が基板−膜界面から膜表面部で
最大となるように傾斜して増大した非晶質膜が得られ
る。
【0009】本発明の他の態様によれば、蒸着室への反
応ガスの供給量は、雰囲気中の反応ガスの分圧が用いる
蒸発源材料に応じて非晶質膜を形成し得るレベルから結
晶質セラミックス粒子の析出を生じ得るレベルまで連続
的に又は段階的に変化するように制御される。この場
合、膜中の反応ガス成分の量が膜表面に向って増大して
おり、膜の組成及び構造が基材との接触部の実質的に非
晶質の金属相から膜表層部の結晶質セラミックス相へ変
化している構造傾斜膜もしくは傾斜機能膜が得られる。
【0010】前記工程(A)で得られた非晶質膜又は構
造傾斜膜は、次いで不活性ガス雰囲気中での熱処理に付
される(工程B)。非晶質膜を熱処理すると、金属母相
中に結晶質セラミックス微粒子が析出・分散した硬質膜
が得られる。このようにして得られる硬質膜は、結晶質
微粒子が母相中に実質的に膜全体にわたって均一に析出
・分散した構造を有する膜、あるいは基材と接する膜の
組成、構造と膜最表部の組成、構造に違いがあり、膜厚
方向に連続的にもしくは段階的に変化している組成及び
構造を有する膜である。例えば、膜中の反応ガス成分の
量が膜全体にわたって実質的に均一な非晶質膜を熱処理
すると、結晶質微粒子が金属母相中に膜全体にわたって
均一に分散している均一組成の膜が得られる。他方、膜
中の反応ガス成分の量が基板−膜界面から膜表面部で最
大となるように傾斜して増大した非晶質膜を熱処理する
と、金属母相中に分散している結晶質微粒子の割合が膜
表面に向って増大しており、膜の組成及び構造が膜厚方
向に実質的に非晶質の金属から結晶質セラミックスへ連
続的又は段階的に変化している機能的に傾斜した構造の
膜が得られる。この場合、非晶質膜の熱処理は、形成さ
れた非晶質膜を一般に350℃以上の温度、好ましくは
膜の結晶化温度以上の温度に30分以上保持して行うこ
とが望ましい。金属母相は実質的に非晶質相であっても
よく、あるいは結晶質相であってもよく、熱処理の温
度、時間など熱処理条件を適当に選定することにより制
御できる。
【0011】例えば、Al80Ti20合金を蒸発源材料と
して用い、窒素ガスを反応ガスとして用いると、窒素分
圧0.005〜0.087Paにおいて非晶質膜を形成
できる。この非晶質膜の結晶化温度は、成膜時の窒素分
圧の増大と共に389℃(0.021Paで)から45
5℃(0.072Paで)へと変化するが、不活性ガス
雰囲気中で結晶化温度以上の温度で熱処理を行うと、硬
度の高い膜が得られる。この膜を透過電子顕微鏡で観察
したところ、金属母相中に数nm〜十数nm程度の粒径
を持つ極めて微細な粒子が析出しており、この微粒子
は、通常の薄膜中に観察される柱状構造の微粒子とは異
なり、粒界等に方向性がないことが判った。従って、従
来技術のような問題がなく、極めて緻密で基材との密着
性に優れると共に、セラミックス材料の欠点である脆性
を示さない硬度の高い膜を作製できる。
【0012】本発明の別の態様においては、蒸着室への
反応ガスの供給量を、成膜中、蒸着室内の窒素分圧が前
記したように非晶質膜を生成し得る低レベルから窒化物
セラミックス微粒子を析出し得る高レベル、すなわち窒
素分圧0.087Pa以上に連続的又は段階的に増加す
るように制御することにより、金属の非晶質相を主体と
し、窒素量が膜表面に向って連続的又は段階的に増加
し、膜表層部において窒化物微粒子が析出して実質的に
結晶質セラミックス相とした構造傾斜膜が得られる。こ
の構造傾斜膜をさらに熱処理することによって結晶化さ
せることにより、セラミックス微粒子の分散割合が増厚
方向に増大して実質的に結晶質金属相から結晶質セラミ
ックス相に膜の組成及び構造が傾斜的に変化した硬質膜
が得られる。
【0013】この傾斜膜の態様(構造)としては、
(1)基材接触部が金属相(マトリックス相のみ、又は
マトリックス相とその他の化合物相)であり、膜厚途中
より窒化物微粒子が析出し、これより膜表面に向って増
大し、膜表面部で(Al,M)N系結晶質セラミックス
相になる構造のもの、(2)基材接触部から窒化物微粒
子が膜表面部に向って増大し、膜表面部で(Al,M)
N系結晶質セラミックス相になる構造のものなどが含ま
れる。
【0014】このように、基材からその上に形成された
硬質層にかけての物性値を連続的に変化させ、基材と膜
との界面での急激な物性値の差をなくしたことにより、
基材に対する膜の密着性が向上する。また本発明によれ
ば、柱状構造の結晶生成を避けるため、一旦非晶質相を
形成し、これを熱処理することによって結晶化を行う。
これによって、構造傾斜膜内部には100nm以下の微
細な結晶質粒子(金属、金属間化合物及び窒化物)が生
じ、緻密化された高硬度の膜が得られる。また、生成す
る結晶質粒子は数十nm以下の微細な結晶を主体として
いるため、膜内部で破壊が生じても、被破壊部分が周辺
の正常部分に悪影響を及ぼし難くなり、耐圧壊性が向上
する。
【0015】本発明で用いる蒸発源材料の他方の成分、
すなわちTi,Ta,V,Cr,Zr,Nb,Mo,H
f,W,Fe,Co,Ni,Cu及びMnなどの耐火金
属は、Alマトリックス中の拡散能が小さい元素であ
り、種々の準安定又は安定な金属間化合物を形成し、微
細結晶組織の高温での安定化に貢献する。これらの金属
はまた、窒化物等として導電性を有すること、もしくは
耐食性に優れる材料としても知られている。上記蒸着手
段としては、スパッタリング法やイオンプレーティング
法などを挙げることができる。また、蒸発源としては一
つの蒸発源に必要組成を含む化合物、混合物であっても
よいし、複数の蒸発源を同時に用いることによって個々
の蒸発源が単一組成であってもよいし、また前記蒸発源
の組合せであっても良い。
【0016】以下、前記各工程及びその技術的な意義に
ついて、具体的なデータを示しながら説明する。 (A)非晶質膜又は構造傾斜膜の作成工程: 一般式:Alab (ここで、M,a及bは前記した意
味と同じである)で表わされる組成を有する蒸発源材料
(ターゲット)を用い、物理的気相蒸着法、特にスパッ
タ法又はイオンプレーティング法により所定量の窒素ガ
スを含む不活性ガス雰囲気中で基材上に成膜を行うと、
蒸着室内の窒素分圧あるいは窒素ガス供給量の制御態様
に応じて、均一な窒素量を有する非晶質膜、窒素量が膜
表面に向って連続的又は段階的に増加した非晶質膜、又
は基材接触部の実質的に非晶質の金属相から(Al,
M)N系結晶質セラミックス相に膜の組成及び構造が変
化した構造傾斜膜が形成される。
【0017】このことを図1及び図2を参照しながら説
明する。図1は、ターゲットに80at%Al−20%
at%Ti合金を用いて得られた膜について、膜断面に
おける各組成の変化を示すEDX(エネルギー分散型X
線分光法)による線分析結果を示している。ガラス基板
への成膜は後述する実施例1と同様にして行った。但
し、反応ガスとしての窒素ガスの分圧は0Paから0.
129Paまで180分間にわたって連続的に変化させ
た。このようにして得られた膜は、全体で5μmの厚さ
であり、その断面は緻密で柱状構造を示さないことが電
子顕微鏡観察によって確認された。また、図1から明ら
かなように、膜中の窒素量は、ガラス基板上から膜表面
にかけて連続的に増加している。
【0018】図2は、窒素分圧を一定に保持して作製し
た種々の均一組成膜のX線回折による分析結果を示す。
なお、各均一組成膜のX線回折図は、解り易いように縦
座標軸の強さ方向に分圧順にシフトしてまとめて示し
た。図2から明らかなように、窒素ガスを導入しないで
得られた金属膜はアルミの結晶を示すデータであるが、
これは非晶質金属中にアルミ結晶が分散した状態であ
り、上記「実質的に非晶質の金属」とはこのような構造
を包含する用語と理解されるべきである。窒素分圧を上
げると、0.021〜0.087Paの範囲で非晶質構
造となり、さらに窒素分圧を上げると、0.102Pa
でTiを固溶したAlNの結晶からなる最終セラミック
ス結晶質相に変化する。
【0019】従って、成膜時に、蒸着室への窒素ガスの
供給量を、用いた蒸発源材料に応じて非晶質膜を形成す
る範囲内で窒素分圧を一定に、又は連続的もしくは段階
的に変化するように制御することにより、膜中の窒素量
が一定又は膜表面に向かって連続的又は段階的に増加し
た非晶質膜が得られる。あるいはまた、用いた蒸発源材
料に応じて非晶質相を形成する分圧から結晶質相を形成
する分圧まで窒素分圧が連続的又は段階的に変化するよ
うに窒素ガス供給量を制御することにより、金属の非晶
質相を主体とし、窒素量が膜表面に向って連続的又は段
階的に増加し、膜表層部が窒化物微粒子が析出して実質
的に結晶質セラミックス相となっている構造傾斜膜を形
成することができる。
【0020】窒素分圧を一定に保持して作製した各均一
組成膜について、窒素分圧と示差走査熱量計(DSC)
によって測定した結晶化温度(Tx)との関係を図3に
示す。また、窒素分圧と微小硬度計によって測定したヌ
ープ硬さとの関係を図4に示す。図3及び図4から明ら
かなように、非晶質相からなる膜の結晶化温度は窒素分
圧の増大とともに661K(0.021Pa)から72
7K(0.072Pa)に、また膜のヌープ硬さも33
0Hk(0Pa)から2310Hk(0.11Pa)に
大きく増大した。
【0021】(B)前記工程により得られた非晶質膜又
は構造傾斜膜の熱処理工程:窒素分圧を一定に保持して
作製した各均一組成の非晶質膜を527℃で4時間熱処
理して得られた膜のX線回折による分析結果を図5に示
す。図5に示す結果から、非晶質膜を熱処理することに
より、低い窒素分圧で成膜された膜では金属(Al)及
び金属間化合物(Al5 Ti2 )の結晶粒子が生成する
が、高い窒素分圧で成膜された膜ではこれらに加えて窒
化物(AlN)のセラミックス粒子が生成することがわ
かる。これらの膜を透過電子顕微鏡で観察したところ、
金属母相中に数nm〜数十nm程度の粒径を持つ極めて
微細な粒子が析出しており、これらの微粒子は、通常の
薄膜中に観察される柱状構造とは異なり、粒界等に方向
性がないことが判った。従って、熱処理によって、極め
て緻密で基材との密着性に優れると共に、セラミックス
材料の欠点である脆性を示さない硬度の高い膜を作製で
きる。
【0022】基材接触部の実質的に非晶質の金属相から
膜表層部の結晶質セラミックス相へ膜の組成及び構造が
膜表面に向って変化している構造傾斜膜の場合は、非晶
質の膜が得られる最高窒素分圧(上記Al80Ti20合金
をターゲットに用いた例では0.087Pa)で作製さ
れる非晶質膜の結晶化温度(Tx)以上の温度で熱処理
を行う。この熱処理によって、構造傾斜膜内部には微細
な結晶質粒子(金属、金属間化合物及び窒化物)が生
じ、最も低い窒素分圧で成膜された部分の実質的に結晶
質の金属相から、膜表面に向って徐々に窒化物セラミッ
クス微粒子の析出・分散割合が増加して、最も高い窒素
分圧で成膜された膜表層部の(Al,M)N系結晶質セ
ラミックス相に膜の組成及び構造が傾斜的に変化した緻
密な構造傾斜膜が得られる。得られた膜は、基材側から
膜表面にかけてヌープ硬さも傾斜的に増大し、また基材
に対する密着性も向上した。
【0023】上記熱処理条件としては、熱処理温度は前
記した結晶化温度(Tx)以上の温度とし、また熱処理
時間は非晶質相の結晶化が生じるに充分な時間とするこ
とが望ましい。一般に熱処理は所与の試料を上記温度で
30分以上保持して行う。熱処理温度が前記結晶化温度
以下の場合又は熱処理時間が不十分な場合には熱処理に
よって結晶質粒子が析出しないが、前記したように結晶
化温度は非晶質膜形成時の窒素分圧により変化するの
で、成膜条件に応じた熱処理条件に設定しておく必要が
ある。また、昇温速度は好ましくは15℃/分以下とす
る。昇温速度が15℃/分を越えて速くなると、基材と
膜の熱膨張率の相違による剥離の原因となるので好まし
くない。なお、この熱処理によって析出する結晶質粒子
の粒径は1000nm以下とする必要がある。過度の熱
処理によって結晶質粒子の粒径がこれより大きくなる
と、膜の強度低下を招くので好ましくない。
【0024】
【実施例】以下、実施例を示して本発明についてさらに
具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定される
ものでないことはもとよりである。
【0025】実施例1 (A)非晶質膜の形成:(80at%Al−20at%
Ti)からなるターゲットをマグネトロンスパッタ蒸着
装置内の電極(接地電位)に対向させて配置し、電極と
ターゲットの間に、ガラス板又はアルミ板を被蒸着基板
として配置した。前記スパッタ装置内を真空ポンプにて
排気した後、アルゴンガスを供給し、装置内のガス圧
(全圧)を1Paとした。コーティングに先立ち、ガラ
ス基板又はアルミ基板を固定している治具に高周波電源
をつなぎ、ガラス基板又はアルミ基板をそれぞれ10分
間スパッタエッチングした。ついで、ターゲットに直流
電源をつなぎ、予備放電を行なった。なおこの時、予備
放電によるガラス基板又はアルミ基板へのコーティング
がなされないようにした。この予備放電は、ターゲット
表面に吸着したガスや湿気を取りのぞくことが目的であ
る。上記予備放電の後、シャッターを移動させ、ガラス
基板又はアルミ基板に対するコーティングを開始した。
コーティング中、反応ガスである窒素ガスは、電気的に
制御できる流量調節計によって、装置内の窒素分圧が0
Paから0.129Paの範囲内の所定の分圧となるよ
うに制御した。装置内の圧力変化は、排気ポンプと装置
の間に配設されたバルブによって圧力1Paとなるよう
に調整した。
【0026】(B)熱処理:熱処理は、試料を炉内に設
置し、炉内を真空ポンプによって排気した後、排気をや
めてアルゴンガスを導入し、大気圧として行なった。熱
処理中は、炉内にアルゴンガスを常時導入し、ガス置換
を行なった。昇温は2時間かけて室温から540℃まで
連続的に上げ、熱処理温度540℃に達してからその温
度に2時間保持した。熱処理後、試料の冷却は、ヒータ
ー電源を切って自然に冷えるのを待った。
【0027】図2は、窒素分圧を一定に保持して作製し
た各均一組成膜のX線回折による分析結果である。な
お、各膜のX線回折図は、解り易いように縦座標軸の強
さ方向に分圧順にシフトしてまとめて示した。図2から
明らかなように、窒素ガスを導入しないで得られた金属
膜はアルミニウム結晶となったが、窒素分圧0.021
Pa、0.038Pa、0.055Pa、0.072P
a、0.087Paで非晶質膜を得ることができた。ま
た、これらの非晶質膜を熱処理して得られた各膜の微小
硬度計によって測定したヌープ硬さを下記表1及び図4
に示す。
【表1】 上記表1及び図4から明らかなように、非晶質膜の熱処
理によって硬度は増大し、また成膜時の窒素分圧の増加
と共に硬度は増大する。しかし、ある程度窒素分圧が高
くなると硬度の減少傾向が認められる。これは成膜時に
発生した膜中の残留応力の影響によるものと考えられ
る。
【0028】図6乃至図8は、窒素分圧0.052Pa
で形成した非晶質膜を実施例1と同様にして熱処理して
得られたAl−Ti−N系薄膜の膜断面のTEM(透過
電子顕微鏡)写真である。図6は倍率10万倍の明視野
像であり、図7は図6と同じ試料の電子線回折像であ
る。図8は図6と同じ試料の倍率10万倍の暗視野像で
あり、微細な結晶の分散状態がわかる。また、図9乃至
図11は、窒素分圧0.07Paで形成した非晶質膜を
実施例1と同様にして熱処理して得られたAl−Ti−
N系薄膜の膜断面の透過電子顕微鏡写真である。図9は
倍率10万倍の明視野像であり、図10は図9と同じ試
料の電子線回折像である。図11は図9と同じ試料の倍
率10万倍の暗視野像であり、微細な結晶の分散状態が
わかる。これらのTEM写真から明らかなように、本発
明の方法によれば、非晶質金属母相中に均一にセラミッ
クス粒子を分散させた薄膜を得ることができた。
【0029】実施例2 (A)構造傾斜膜の形成:(80at%Al−20at
%Ti)からなるターゲットをマグネトロンスパッタ蒸
着装置内の電極(接地電位)に対向させて配置し、電極
とターゲットの間に、ガラス板からなる被蒸着基板を配
置し、以下の手順により成膜を行った。基板は予め清浄
(エッチング)し、エッチング終了後、予備放電を行な
った(プリスパッタ)。プリスパッタの後、ターゲット
と基板を対向して配置した。基板に対してコーティング
している間、反応ガスである窒素ガスの供給量は電気的
制御によって連続的に一定量づつ増加させ、その間、窒
素分圧は0Paから0.13Paへと変化した。なお、
このときの真空チャンバー内の圧力はアルゴンガスの供
給量を電気的制御によって連続的に減少させることによ
って一定の圧力(1Pa)となるようにした。
【0030】(B)熱処理:上記のように成膜された試
料を熱処理炉に入れ、炉内を排気した後、アルゴンガス
を導入し、大気圧とした。引き続き炉内をアルゴンガス
で置換しながら熱処理を開始した。加熱に際し、炉のヒ
ーターへの電力供給量は電流によって制御し、所定温度
にはおよそ2時間で達するようにした。熱処理温度は5
50℃とし、4時間保持した。温度は、炉内部に熱電対
を挿入して測定し、ヒーターへの投与電流の切入によっ
て調整した。加熱終了後、炉内の温度が100℃以下に
なるまでアルゴンガスを導入し続けた。炉内部が室温と
なった後、試料を取りだし、分析、評価に供した。
【0031】図12乃至図14は、上記のように熱処理
して得られた(Al、Ti)N系構造傾斜薄膜の膜断面
の透過電子顕微鏡写真である。図12は倍率65000
倍の明視野像であり、図13は図12と同じ試料の倍率
65000倍の暗視野像であり、微細な結晶の分散状態
がわかる。図14は図12と同じ試料の電子線回折像で
ある。これらのTEM写真から明らかなように、本発明
の方法によれば、実質的に結晶質の金属相から膜表面に
向って窒化物セラミックス微粒子の分散割合が増加して
(Al,M)N系結晶質セラミックス相に組成及び構造
が傾斜的に変化した膜を得ることができた。膜内部には
粒径50nm以下の微細結晶粒の生成が観察され、その
粒径は膜作製時の窒素分圧の増大とともに小さくなるこ
とがわかる。
【0032】また、熱処理して得られた薄膜の微小硬度
計によって測定したヌープ硬さを図15に、またスクラ
ッチ試験法(走査型スクラッチテスター、島津製作所
製、SST・101を使用)による膜の密着性の試験結
果を図16に示す。前記実施例で作製した傾斜機能膜
(FGM)の他に、比較例として熱処理前の膜について
の試験結果も示してある。膜の密着性は、荷重の増加と
共に変化するカートリッジ出力によって示され、出力が
急激に増加している時点で膜が剥離したことを示す。図
15から明らかなように、熱処理後の傾斜機能膜内部の
ヌープ硬さについては、全体的な硬度は増大し、特に基
材側で約300Hk向上したが、均一組成膜で得られた
硬度増加の状態とは異なり、基材側から膜表面にかけて
の変化の仕方に偏りが認められた。これは熱処理後の膜
内部の組成分布の偏りと一致しており、加熱拡散による
成分変化が主な原因と考えられる。また、図16から明
らかなように、熱処理後の基材に対する膜の密着性にお
いてその圧壊荷重が熱処理前に比べ約10%改善された
ことより、高温での耐摩耗膜としての用途も期待でき
る。
【0033】実施例3 (A)非晶質膜の形成:基板2上への成膜のために図1
7に示すように傾斜した電極系を持つ装置を使用した。
2個のターゲット、即ち円板状の高純度アルミニウム及
び高純度マンガンのターゲット5,6を用い、同時にス
パッタさせることにより合金組成を調整し、スパッタに
は2つの高周波電源9,10を用いた。それぞれ支持台
7,8に取り付けられた2個のターゲット5,6は、こ
れら2個のターゲットの中心を通る法線が、モータ4に
より回転されるホルダ3に取り付けられている基板2の
表面で交差するように、スパッタチャンバー1内に傾斜
して設置された。なお、それぞれの合金組成割合は、タ
ーゲットに印加する電力量を調整することにより制御
し、アルミニウム及びマンガンの相対的な割合は80a
t%Al−20at%Mnとした。成膜される膜内の変
調成分である窒素量は、チャンバー内部への窒素ガス導
入量をマス・フロー・コントローラーにより調整するこ
とにより制御した。この時、チャンバー内の窒素ガス分
圧は0Paから0.065Paの範囲で変化した。コー
ティングは、チャンバー内の予備排気及びターゲット表
面の清浄化のためのプリスパッタリング後に行い、コー
ティング処理後、ターゲット及び基板の温度が下がって
から空気を導入してチャンバー内を大気圧とし、試料を
取り出した。
【0034】図18は各窒素分圧を一定に保って作製し
た均一組成膜のX線回折の結果を示す。図18から明ら
かなように、窒素ガスを導入しないで(窒素分圧0P
a)作製した金属膜は非晶質相を示し、窒素分圧の増大
とともに非晶質合金構造から結晶質セラミックス構造へ
と変化し、窒素分圧0.056Pa以上では結晶質セラ
ミックス相となった。各窒素分圧で作製した非晶質膜の
結晶化温度は、図19に示す通りで300℃以上であっ
た。また、各窒素分圧で作製した膜のヌープ硬さは図2
0に示す通りで、窒素分圧0.056Paでは1370
Hkであった。
【0035】(B)熱処理:熱処理はガラス基板上に成
膜した1μm厚さの膜及びアルミ基板上に成膜した33
μm厚さの膜について行った。なお、それぞれの膜にお
いてはその厚さが異なるだけで、膜厚は成膜処理時間に
よって制御した。成膜時の窒素分圧は前記したように0
Paから0.065Paまで連続的に変化させた。従っ
て、膜内部の窒素濃度は基板側が低く、表面にいくに従
って高くなっている。熱処理は、各試料を熱処理炉に入
れ、炉内を排気した後、アルゴンガスの導入によって大
気圧とし、引き続きアルゴンガスによって炉内を置換し
ながら試料の加熱を行った。昇温は2時間かけて550
℃まで連続的に上げ、試料をこの温度で2時間保持し
た。その後炉内を室温まで冷やした後、試料を炉内から
取り出した。
【0036】アルミ基板上に成膜した膜について硬さ試
験を行い、またガラス基板上に成膜した膜についてはス
クラッチ試験を行った。これらの試験結果をそれぞれ図
21及び図22に示す。図21に示す結果から明らかな
ように、熱処理後の膜内部の硬さは厚さ方向全域にわた
って熱処理前の硬度より高くなり、ヌープ硬さで105
8Hkから2169Hkへと変化する部位が認められ
た。また図22に示す結果から明らかなように、熱処理
後の膜は熱処理前の膜に比べてスクラッチ試験における
引掻き針の膜への押込み量が17%減少した。これは熱
処理によって膜の硬度が高くなったためであり、膜破壊
強度の改善を図ることができた。なお、引掻き痕は熱処
理前後の試料において差異は認められなかった。
【0037】
【発明の効果】以上詳述した如く、本発明の方法によれ
ば、基材に対する密着性及び耐圧壊性に優れ、高い硬度
を有する緻密な耐摩耗性膜を、比較的簡単な工程により
製造することができる。また、本発明で得られる膜は、
金属母相中に微粒子が析出・分散している構造の複合硬
質膜、あるいは実質的に結晶の金属相から膜表面に向っ
てセラミックス微粒子の分散割合が増加して結晶質セラ
ミックス相に組成及び構造が傾斜的に変化している構造
の緻密な複合硬質膜であり、基材に対する密着性や耐圧
壊性に優れ、折り曲げに強く、高い硬度を有するなど、
優れた特性を示し、耐摩耗性として使用できる他、高い
硬度と導電性を有することから、耐摩耗性を有する電気
接点などにも応用することができる。その他、本発明の
複合硬質膜は、機械的、電気的に優れた特性を示すとと
もにセラミックス材料の欠点である脆性が緩和されてい
るので、電気電子材料、高強度材料、耐摩耗材料、耐高
温材料などとして使用でき、産業上の種々の用途に供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】80at%Al−20%at%Ti合金を用い
て作製した、(Al80Ti20100-xx の組成の構造
傾斜膜の膜断面における各組成の変化を示すEDX(エ
ネルギー分散型X線分光法)による線分析図である。
【図2】窒素分圧を一定に保持して作製した各(Al80
Ti20100-xx 均一組成薄膜のX線回折図であり、
各X線回折図を縦座標軸の強さ方向に窒素分圧順にシフ
トして示す。
【図3】窒素分圧を一定に保持して作製した各(Al80
Ti20100-xx 均一組成薄膜の窒素分圧と結晶化温
度(Tx)との関係を示すグラフである。
【図4】窒素分圧を一定に保持して作製した各(Al80
Ti20100-xx 均一組成薄膜及び該膜を熱処理して
得られた膜の窒素分圧とヌープ硬さとの関係を示すグラ
フである。
【図5】窒素分圧を一定に保持して作製した各(Al80
Ti20100-xx 均一組成薄膜を熱処理して得られた
膜のX線回折図であり、各X線回折図を縦座標軸の強さ
方向に窒素分圧順にシフトして示す。
【図6】実施例1において窒素分圧0.052Paで作
製した(Al80Ti20100-xx 組成非晶質膜を熱処
理して得られたAl−Ti−N系硬質薄膜の倍率10万
倍の明視野像を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図7】図6と同じ試料のAl−Ti−N系硬質薄膜の
電子線回折像を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図8】図6と同じ試料のAl−Ti−N系硬質薄膜の
倍率10万倍の暗視野像を示す透過電子顕微鏡写真であ
る。
【図9】実施例1において窒素分圧0.07Paで作製
した(Al80Ti20100-xx 組成非晶質膜を熱処理
して得られたAl−Ti−N系硬質薄膜の倍率10万倍
の明視野像を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図10】図9と同じ試料のAl−Ti−N系硬質薄膜
の電子線回折像を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図11】図9と同じ試料のAl−Ti−N系硬質薄膜
の倍率10万倍の暗視野像を示す透過電子顕微鏡写真で
ある。
【図12】実施例2で作製した(Al80Ti20100-x
x の組成の構造傾斜膜を熱処理して得られたAl−T
i−N系硬質薄膜の倍率65000倍の明視野像を示す
透過電子顕微鏡写真である。
【図13】図12と同じ試料のAl−Ti−N系硬質薄
膜の倍率65000倍の暗視野像を示す透過電子顕微鏡
写真である。
【図14】図12と同じ試料のAl−Ti−N系硬質薄
膜の電子線回折像を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図15】実施例2で作製した(Al80Ti20100-x
x の組成の構造傾斜膜及び該膜を熱処理して得られた
Al−Ti−N系硬質薄膜の厚さ方向のヌープ硬さを示
すグラフである。
【図16】図15と同じ試料のAl−Ti−N系硬質薄
膜のスクラッチ試験法による膜の密着性の試験結果を示
すグラフである。
【図17】実施例3で用いたスパッタ蒸着装置の概略構
成図である。
【図18】実施例3において窒素分圧を一定に保持して
作製した各(Al80Mn20100- xx 均一組成薄膜の
X線回折図であり、各X線回折図を縦座標軸の強さ方向
に窒素分圧順にシフトして示す。
【図19】実施例3において窒素分圧を一定に保持して
作製した各(Al80Mn20100- xx 均一組成薄膜の
窒素分圧と結晶化温度(Tx)との関係を示すグラフで
ある。
【図20】実施例3において窒素分圧を一定に保持して
作製した各(Al80Mn20100- xx 均一組成薄膜の
窒素分圧とヌープ硬さとの関係を示すグラフである。
【図21】実施例3で作製した(Al80Mn20100-x
x の組成の構造傾斜膜及び該膜を熱処理して得られた
Al−Mn−N系硬質薄膜の厚さ方向のヌープ硬さを示
すグラフである。
【図22】図21と同じ試料のAl−Mn−N系硬質薄
膜のスクラッチ試験の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 スパッタチャンバー、 2 基板、 3 ホルダ、
4 モータ、 5,6 ターゲット、 7,8 支持
台、 9,10 高周波電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 明久 宮城県仙台市青葉区川内無番地 川内住宅 11−806 (72)発明者 山形 寛 富山県中新川郡立山町道源寺1008 (72)発明者 永洞 純一 神奈川県横浜市緑区すみよし台14−6

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式:Alab (ここで、MはT
    i,Ta,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,W,F
    e,Co,Ni,Cu及びMnよりなる群から選ばれた
    少なくとも1種の元素、a及びbはそれぞれ原子%を示
    し、60at%≦a≦98.5at%、1.5at%≦
    b≦40at%、但し、a+b=100at%)で表わ
    される組成を有する金属母相中に結晶質微粒子が分散し
    ていることを特徴とする高硬度薄膜。
  2. 【請求項2】 金属母相が非晶質であり、結晶質微粒子
    が500nm以下のセラミックス微粒子である請求項1
    に記載の高硬度薄膜。
  3. 【請求項3】 実質的に非晶質の金属母相中にセラミッ
    クス微粒子が均一に分散している請求項1又は2に記載
    の高硬度薄膜。
  4. 【請求項4】 実質的に非結晶の金属母相から膜表面に
    向ってセラミックス微粒子の分散割合が増加して結晶質
    セラミックス相に組成及び構造が傾斜的に変化している
    請求項1又は2に記載の高硬度薄膜。
  5. 【請求項5】 実質的に結晶の金属母相から膜表面に向
    ってセラミックス微粒子の分散割合が増加して結晶質セ
    ラミックス相に組成及び構造が傾斜的に変化している請
    求項1に記載の高硬度薄膜。
  6. 【請求項6】 膜内部に100nm以下の微細な窒化物
    セラミックス微粒子が分散している請求項2乃至5のい
    ずれか一項に記載の高硬度薄膜。
  7. 【請求項7】 前記窒化物セラミックス微粒子は、膜表
    面に向ってその粒子直径が小さくなると共に粒子の数が
    増加している請求項6に記載の高硬度薄膜。
  8. 【請求項8】 前記セラミックス微粒子が窒化アルミニ
    ウム微粒子であり、該窒化アルミニウム微粒子の他にさ
    らに金属アルミニウムの結晶微粒子及び/又はAl5
    2 金属間化合物の結晶微粒子が膜中に分散している請
    求項2乃至7のいずれか一項に記載の高硬度薄膜。
  9. 【請求項9】 (A)物理的気相蒸着法により、一般
    式:Alab (ここで、MはTi,Ta,V,Cr,
    Zr,Nb,Mo,Hf,W,Fe,Co,Ni,Cu
    及びMnよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元
    素、a及びbはそれぞれ原子%を示し、60at%≦a
    ≦98.5at%、1.5at%≦b≦40at%、但
    し、a+b=100at%)で表わされる組成を有する
    蒸発源材料を用い、かつ窒素、酸素又は炭素を含む反応
    ガスを用い、反応ガスの供給量を、用いた蒸発源材料に
    応じて非晶質相を形成する反応ガス分圧の範囲内で、分
    圧一定に、又は連続的もしくは段階的に変化するように
    制御しながら、所定量の反応ガスを含む不活性ガス雰囲
    気中で基材上に非晶質膜を形成する工程、及び(B)前
    記工程により得られた膜を不活性ガス雰囲気中で熱処理
    することによって金属母相中に結晶質微粒子が分散して
    いる膜を形成することを特徴とする高硬度薄膜の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 非晶質膜の熱処理を、作製した非晶質
    膜の結晶化温度以上の温度に30分以上保持して行う請
    求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 反応ガスとして窒素ガス又はNH3
    スを用い、窒素分圧として0.005〜0.087Pa
    の範囲において非晶質膜を生成させる請求項9又は10
    に記載の方法。
  12. 【請求項12】 (A)物理的気相蒸着法により、一般
    式:Alab (ここで、MはTi,Ta,V,Cr,
    Zr,Nb,Mo,Hf,W,Fe,Co,Ni,Cu
    及びMnよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元
    素、a及びbはそれぞれ原子%を示し、60at%≦a
    ≦98.5at%、1.5at%≦b≦40at%、但
    し、a+b=100at%)で表わされる組成を有する
    蒸発源材料を用い、窒素、酸素又は炭素を含む反応ガス
    の供給量を、用いた蒸発源材料に応じて非晶質相を形成
    する反応ガス分圧から結晶質相を形成する反応ガス分圧
    まで連続的又は段階的に変化するように制御しながら、
    所定量の反応ガスを含む不活性ガス雰囲気中で基材上に
    成膜を行い、基材上の実質的に非晶質の金属相から膜表
    面に向って反応ガス成分量が連続的又は段階的に増加し
    て結晶質セラミックス相に変化してなる構造傾斜膜を作
    成する工程、及び(B)前記工程により得られた構造傾
    斜膜を不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うことにより、
    実質的に結晶の金属相から膜表面に向ってセラミックス
    微粒子の分散割合が増加して結晶質セラミックス相に組
    成及び構造が傾斜的に変化してなる膜を得る工程からな
    る高硬度薄膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記熱処理を、非晶質の膜が得られる
    最高反応ガス分圧における結晶化温度以上の温度で行う
    請求項10に記載の方法。
  14. 【請求項14】 反応ガスとして窒素ガス又はNH3
    スを用いる請求項12又は13に記載の方法。
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