JPH07135969A - ナチュラルキラー細胞の前駆細胞及びその分化増殖法 - Google Patents

ナチュラルキラー細胞の前駆細胞及びその分化増殖法

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JPH07135969A
JPH07135969A JP5312573A JP31257393A JPH07135969A JP H07135969 A JPH07135969 A JP H07135969A JP 5312573 A JP5312573 A JP 5312573A JP 31257393 A JP31257393 A JP 31257393A JP H07135969 A JPH07135969 A JP H07135969A
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cells
human
cell
antibody
differentiation
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JP5312573A
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Hiromitsu Nakauchi
啓光 中内
Akira Shibuya
彰 渋谷
Kozo Nakamura
光三 中村
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Fujisawa Pharmaceutical Co Ltd
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
Fujisawa Pharmaceutical Co Ltd
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 NK(ナチュラルキラー)細胞の前駆細胞及
びその製造方法の提供。NK細胞の前駆細胞の分化増殖
剤及びNK細胞の前駆細胞の分化増殖方法の提供。 【構成】 ヒト骨髄由来の細胞より得られるNK細胞の
前駆細胞。例えば、抗ヒトCD33抗体陰性でかつ抗ヒ
トCD34抗体陽性であるNK細胞の前駆細胞。抗ヒト
CD33抗体陽性でかつ抗ヒトCD34抗体陽性である
NK細胞の前駆細胞。ヒト骨髄由来の細胞から抗ヒトC
D34抗体陽性を指標としてNK細胞の前駆細胞を分離
するNK細胞の前駆細胞の製造方法。インターロイキン
2及び幹細胞増殖因子を含むNK細胞の前駆細胞の分化
増殖剤。インターロイキン3及び幹細胞増殖因子を含む
NK細胞の前駆細胞の分化増殖剤。インターロイキン
2、インターロイキン3及び幹細胞増殖因子を含むNK
細胞の前駆細胞の分化増殖剤。前記分化増殖剤を用いた
NK細胞の前駆細胞の分化増殖方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ナチュラルキラー細胞
(以下、NK細胞と呼ぶことがある)の前駆細胞、NK
細胞の前駆細胞の製造方法、NK細胞の前駆細胞の分化
増殖剤、及びNK細胞の前駆細胞の分化増殖方法に関す
る。さらに詳しくは、本発明の分化増殖剤及び分化増殖
方法は、インターロイキン2、インターロイキン3及び
幹細胞増殖因子(以下、SCFと称することがある)を
利用したものである。
【0002】
【背景技術及び発明が解決しようとする課題】NK細胞
は免疫担当細胞の一種であり、初期の抗癌作用に重要な
働きを果たすことが知られている。従って、癌患者の抹
消血からNK細胞を分離して増やし、元の患者に戻すこ
とができれば癌治療の有力な方法になり得る。しかる
に、後述するように、NK細胞等の特定の血液細胞を分
離、増殖することは非常に難しいことも知られている。
【0003】特に、NK細胞はこれまで増殖させる手段
がなく、単に血液から分離することのみ可能であった。
NK細胞の分離は、適当な蛍光色素を結合させた抗ヒト
NK1.11抗体等のNK細胞に特異的な表面抗原に対
する抗体と白血球を混合して氷水中で結合させた後、蛍
光自動細胞分離装置に流し、抗体が結合した細胞を選り
分けることにより行われている〔Shibuya A. et.al. "I
nhibitory effect ofgranurocyte-macrophage colony-s
timulating factor therapy on the generation of nat
ural killer cells" Blood 12(1991)p3124-3247または
星野孝夫 セル・ソーティング−細胞分離の原理と実際
−FACS− 太田和雄監修「フローサイトメトリー」蟹書
房 147−155参照〕。しかし、この方法により得
られる細胞数は非常に少ない。しかも、血液細胞からN
K細胞のような特定の種類の細胞を取り出すことは、技
術的に高度な熟練を要する。そのため、血液細胞からN
K細胞の分離は、日本国内でも数箇所でしかできないの
が現状である。
【0004】前記のように、従来の技術では、NK細胞
を分離することはできても、得られる細胞数は限られて
いる。一方、NK細胞の利用に際しては、分離した細胞
数より多くのNK細胞が必要となる。そのため、何らか
の方法でNK細胞を増殖させる必要がある。未熟な段階
の細胞を分離し、かつ分化増殖させればよいのである
が、NK細胞がどのような前駆細胞から分化成熟するか
についてはまったく知られていない。同様にNK細胞の
前駆細胞を試験官内で分化増殖させる方法も未知であっ
た。
【0005】そこで、本発明の目的は、NK細胞の前駆
細胞及びその製造方法を提供することにある。
【0006】さらに本発明の目的は、NK細胞の前駆細
胞の分化増殖剤及びNK細胞の前駆細胞の分化増殖方法
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意研究
した結果、骨髄由来の細胞中にNK細胞の前駆細胞が存
在すること、及び該前駆細胞は、インターロイキン2及
びSCF又はインターロイキン2、インターロイキン3
及びSCFの存在下で分化増殖させることができること
を見出して本発明を完成した。
【0008】以下、本発明について順次説明する。NK細胞の前駆細胞 本発明は、ヒト骨髄由来の細胞より得られるNK細胞の
前駆細胞に関する。本発明の前駆細胞の具体例として
は、抗ヒトCD33抗体陰性(以下、CD33-と略記
することがある)でかつ抗ヒトCD34陽性(以下、C
D34+ と略記することがある)であるNK細胞の前駆
細胞(以下、CD33- CD34+ と略記することがあ
る)を挙げることかできる。
【0009】また、別の具体例として、抗ヒトCD33
抗体陽性(以下、CD33+ と略記することがある)で
かつ抗ヒトCD34抗体陽性(CD34+ )であるNK
細胞の前駆細胞(以下、CD33+ CD34+ と略記す
ることがある)を挙げることができる。
【0010】CD33- CD34+ であるNK細胞の前
駆細胞は、図1中の図A(縦軸:CD34−APC、横
軸:CD34−FITC)中のaで示される骨髄細胞中
表面抗原としてCD34を持つ細胞群の中で、同図中b
で示されるCD33抗原を有しない細胞群である。ま
た、CD33+ CD34+ であるNK細胞の前駆細胞
は、図1中の図A中のaで示される骨髄細胞中表面抗原
としてCD34を持つ細胞群の中で、同図中cで示され
るCD33抗原を有する細胞群である。
【0011】尚、図2に示すように、CD33- CD3
+ であるNK細胞の前駆細胞は、未熟な段階の細胞で
あり、CD33+ CD34+ であるNK細胞の前駆細胞
は、やや分化した細胞であると考えられる(Ema H. et.
al."target cells for granulocyte colony-stimulatin
g factor, Interleukin-3, and Interleukin-5 in diff
erentiation pathways of neutrophils and eosinophil
s" Blood 76(1990)1956-1961 )。
【0012】本発明のNK細胞の前駆細胞は、ヒト骨髄
由来の細胞から抗ヒトCD34抗体陽性を指標として分
離することにより製造することができる。特に、CD3
-CD34+ であるNK細胞の前駆細胞は、ヒト骨髄
由来の細胞から抗ヒトCD34抗体陽性を指標として抗
ヒトCD34抗体陽性の前駆細胞を分離し、さらに分離
された前駆細胞を抗ヒトCD33抗体陰性を指標として
分離することで製造できる。また、CD33+ CD34
+ であるNK細胞の前駆細胞は、ヒト骨髄由来の細胞か
ら抗ヒトCD34抗体陽性を指標として抗ヒトCD34
抗体陽性の前駆細胞を分離し、さらに分離された前駆細
胞を抗ヒトCD33抗体陽性を指標として分離すること
で製造できる。
【0013】これら本発明のNK細胞の前駆細胞は、ヒ
ト骨髄由来の細胞、例えば骨髄細胞又は末梢血を含む胎
盤血、を常法(Shibuya A. et.al. "Inhibitory effect
ofgranurocyte-macrophage colony-stimulating facto
r therapy on the generation of natural killer cell
s" Blood 12(1991)p3124-3247参照)により採取した
後、フローサイトメトリー法(Shibuya A. et.al. "Inh
ibitory effect of granurocyte-macrophage colony-st
imulating factor therapy on the generation of natu
ral killer cells" Blood 12(1991)p3124-3247または星
野孝夫 セル・ソーティング−細胞分離の原理と実際−
FACS− 太田和雄監修「フローサイトメトリー」蟹書房
147−155参照)、免疫磁気ビーズ細胞分離法
(GaudernackG et.al. "Isolation of pure functional
ly active CD8+T Cells. Positive selection w
ith monoclonal antibodies directly conjugated to m
onosized magnetic microspheres" J. Immunol. meetho
ds 90(1986)179-87参照)等を用いることにより分画す
ることができる。例えばヒト骨髄細胞より得られるCD
34+ でかつCD33- である分画(CD33- CD3
+ )は、ヒト骨髄細胞を常法により採取した後、フロ
ーサイトメトリー法、免疫磁気ビーズ細胞分離法などを
用いることにより分画することができる。また、同様に
してCD33+ CD34+ である分画もヒト骨髄細胞よ
り得ることができる。尚、一般にCD33- CD34+
細胞群の方が、CD33+ CD34+ 細胞群より試験官
内での増殖能が盛んである。
【0014】前駆細胞の分化増殖 また、前記の本発明のNK細胞の前駆細胞は、図2に示
すように、前駆細胞の種類により、インターロイキン3
(IL−3)、インターロイキン2(IL−2)および
SCFを適当な組み合せで、適当量添加した培地にて、
適当な期間培養することにより、NK細胞に分化増殖さ
せることができる。
【0015】前駆体細胞の分化増殖のための培養は、動
物細胞の一般的な培養条件である、例えば37℃、5%
炭酸ガス、100%湿度で行うことができる。培養期間
は、例えば1日から50日間であるが、分化の度合を測
定しながら適宜決定することができる。
【0016】分化増殖に用いられるインターロイキン
3、インターロイキン2およびSCFは天然または遺伝
子組み換え技術により製造したものであることができ
る。また、その製造方法や製造に用いられる細胞や宿主
は特に限定されるものではない。さらに、これらのイン
ターロイキン3、インターロイキン2およびSCFは、
これらの活性をもつ天然または遺伝子工学により製造さ
れる変異体も含まれる。
【0017】分化増殖には、一般的に骨髄由来細胞を培
養するために用いられる培地をそのまま用いることがで
きる。例えば、RPMI1640培地〔Morton H.J.In
virto 6 (1970) 89 Moore G.E. et.al. J.Natl.Cancer
Insitute 36(1966)519(大日本製薬 RPMI1640 製品番号
110-601-20 参照)〕、DMEM培地、完全培地等が挙
げられる。これらの培地に含まれるインターロイキン
3、インターロイキン2およびSCFの濃度は、例え
ば、インターロイキン3が5〜500U/mlの範囲で
あり、インターロイキン2が50〜5000U/mlの
範囲であり、SCFが5〜500ng/mlの範囲とす
ることが適当である。
【0018】より具体的には、例えばCD33+ CD3
+ 分画細胞においては、インターロイキン2およびS
CFを添加した培地、例えば10%牛胎児血清、500
U/mlインターロイキン2および50mg/mlのS
CFを含むRPMI1640培地内で、37℃5%炭酸
ガス100%湿度の条件で20〜40日間培養すること
により、抗CD56抗体陽性(CD56+ )で特徴づけ
られるNK細胞が得られる。
【0019】また、例えばCD33- CD34+ 分画細
胞においては、インターロイキン3、インターロイキン
2およびSCFを含む培地、例えば10%牛胎児血清、
500U/mlインターロイキン3、500U/mlイ
ンターロイキン2、および50mg/mlのSCFを含
むRPMI1640培地内で、37℃5%炭酸ガス10
0%湿度の条件で20〜40日間培養することにより、
抗CD56抗体陽性で特徴づけられるNK細胞が得られ
る。または、インターロイキン3およびSCFを含むR
PMI1640培地内で同様の条件で5〜10日間培養
した後、さらにインターロイキン2、インターロイキン
3およびSCFを含むRPMI1640培地内で同様の
条件で15〜30日間培養することによっても、同様に
NK細胞を得ることができる。
【0020】分化増殖剤 さらに本発明は、ナチュラルキラー細胞の前駆細胞の分
化増殖剤に関し、インターロイキン3、インターロイキ
ン2およびSCFから選ばれた少なくとも1つを含む。
より具体的には、第1の態様は、インターロイキン2及
び幹細胞増殖因子を含むナチュラルキラー細胞の前駆細
胞の分化増殖剤である。この分化増殖剤は、ナチュラル
キラー細胞の前駆細胞が、CD33- CD34+ である
前駆細胞又はCD33+ CD34+ である前駆細胞であ
る場合に、有用である。
【0021】第2の態様は、インターロイキン3及び幹
細胞増殖因子を含むナチュラルキラー細胞の前駆細胞の
分化増殖剤である。この分化増殖剤は、ナチュラルキラ
ー細胞の前駆細胞が、CD33- CD34+ である前駆
細胞である場合に有用である。
【0022】第3の態様は、インターロイキン2、イン
ターロイキン3及び幹細胞増殖因子を含むナチュラルキ
ラー細胞の前駆細胞の分化増殖剤である。この分化増殖
剤は、ナチュラルキラー細胞の前駆細胞がCD33-
D34+ である前駆細胞である場合に有用である。
【0023】本発明の分化増殖剤は、例えば、前述のよ
うな培養細胞の培地に添加して利用することができる。
本発明の分化増殖剤の培地への添加量は、ナチュラルキ
ラー細胞の前駆細胞の種類や培養条件等により異なる
が、例えばインターロイキン3は5〜500U/ml、
SCFは5〜500ng/ml、インターロイキン2は
50〜5000U/mlの範囲とすることが適当であ
る。
【0024】さらに、また、本発明の分化増殖剤は、ヒ
ト等のほ乳動物に直接非経口的(例えば静注)および経
口的に投与することにより、ほ乳動物のNK細胞の分化
増殖を促進させることもできる。本発明の分化増殖剤の
投与量は、患者の症状、体重等を考慮して決められる
が、例えば1日あたり、インターロイキン3は5〜50
0kU、SCFは5〜500μg、インターロイキン2
は50〜5000kUの投与量とし、例えば1〜3日に
分けて投与することができる。
【0025】尚、本発明の分化増殖剤は、インターロイ
キン2、インターロイキン3及び/又は幹細胞増殖因子
以外に、必要により、種々の成分を含むことができる。
例えば、有効成分であるインターロイキン2、インター
ロイキン3及び/又は幹細胞増殖因子に対する賦形剤
(例えば、生理食塩水)、安定化剤(例えば、アルブミ
ン、糖類)等をさらに含むことができる。
【0026】
【実施例】以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明
する。 実施例1 CD33+ CD34+ 細胞の分画 健康なヒトの胸骨から骨髄(BM)4mlを採取し、即
座にヘパリン含有HBSS(Hank's balanced salt sol
ution; Hanks J.H. et.al. Proc.Soc.Exp.Biol.Med.71
(1949)196-200(大日本製薬 HBS 製品番号 17-10
1))15ml中に希釈した。得られた細胞懸濁液を3
%牛胎児血清および0.02%アジ化ナトリウム加リン
酸緩衛生理食塩水(染色培地;以下SMと記す)で約3
倍に希釈したのち3mlのフィコールコンレイをあらか
じめ入れた15ml遠心管に重層する。これを18℃1
500回転30分遠心分離して単核球の層を分離し、B
M単核細胞(MNC)を得た。
【0027】このようにして得られたBM単核細胞は、
アロフィコサイアニン(allophycocyani
n;APC)結合抗ヒトCD34抗体(4A1(1
6);IgG1)、リネージマーカー(すでにNK細胞
に分化した細胞が持つ表面抗原)としてフィコエリスリ
ン(phycoerythrin;PE)を結合したC
D3(Leu4;IgG1)、CD16(Leu11
c;IgG1)及びCD56(NKH−1;IgG
1)、並びにフルオレッセイン(fluorescei
n;FITC)結合抗ヒトCD33抗体(My9;Ig
G2b)と4℃で30分間インキュベートし、次いで2
回洗浄した。
【0028】しかる後、これらの細胞の分類(セルソー
ト)を488nmアルゴンレーザーと599nm色素レ
ーザー付き蛍光自動細胞分離装置(FACStarPLUS
(ベックマンディキンソン))を用いて行った。CD3
+ 細胞のCD33分画については、ソートゲートはA
−a(全CD34+ 細胞)、A−b(ネガティブ30
%)、(ブライテスト50%)であった。パーセンテー
ジは3回の独立した実験における結果から得た概算値で
ある。このようにして、フィコエリスリン(phyco
erythrin;PE)陰性、フルオレッセイン(F
luorescein;FITC)陰性、アロフィコサ
イアニン(allophycocyan;APC)陽性
の細胞集団(Lin- (=CD3- 、CD16- 、CD
56- )CD33+ CD34+ 分画)を得た。
【0029】実施例2 CD33+ CD34+ 細胞の分
化増殖 500U/mlのリコビナントヒトIL−2、50ng
/mlのリコビナントヒトSCFを含む完全培地200
μlを96穴丸底マイクロプレートに入れた。500個
の実施例1で得たLin- CD33+ CD34+ 分画細
胞を、各ウエルに添加し、37℃5%炭酸ガス100%
湿度の条件下で28日間培養し、出現したNK細胞の表
面抗原であるCD56陽性細胞の数を計測した(実験
3)。
【0030】比較のために、IL−2を含まない(実験
2)か、または培養期間の一部にのみ添加した場合(実
験6及び7)、及びSCFを含まない(実験1)か、ま
たは培養期間の一部にのみ添加した場合(実験4及び
5)についても同様に培養を行い、CD56陽性細胞の
数を計測した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】表1に示すように、IL−2及びSCFの
いずれか一方のみを含む培地中ではCD56陽性細胞は
得られず(実験1及び2)、CD33+ CD34+ 細胞
の分化増殖には、IL−2及びSCFの両者が必要であ
ることが分かる(実験3)。さらに、SCFは、培養開
始から一定時期に存在することが、CD33+ CD34
+ 細胞の分化増殖に必要であり、培養の後期には必ずし
もなくても分化増殖は可能であることが分かる(実験4
及び5)。また、IL−2は培養開始から一定期間存在
しなくても、CD33+ CD34+ 細胞の分化増殖は進
行し、むしろ培養の後期には存在しないと分化増殖が進
行しにくいことが分かる(実験6及び7)。
【0033】実施例3 NK細胞の活性検定 実施例2で得られたCD56陽性細胞がNK細胞として
の性質を有することを以下の方法により検定した。
【0034】NK様細胞の活性について、K562細胞
をターゲットとするNK活性測定法で検定した。即ち、
K562細胞を5%FCS含むRPMI1640倍地に
懸濁した。K562ターゲット細胞を37℃で2時間か
けて50μCiの51Crでラベルし、使用前に充分洗浄
した。10μlの培地中に懸濁したターゲット細胞(5
×103 )と10μlの培地中に懸濁した前記CD56
陽性細胞とを、種々の比率(20:1、10:1、5:
1または2.5:1)でマイクロタイターウエル中で混
合した。37℃で4時間培養した後、上澄み液を回収
し、ガンマカウンタで放射能を計測した。溶解されたタ
ーゲット細胞により放出された51Crの量から細胞毒性
を決定した。51Crの放出量は、以下の式:100×
(〔実験ウエル中のcpm〕−〔ターゲット細胞単独の
ウエル中のcpm〕)/(ターゲット細胞に含ませたc
pm)から求めた。
【0035】1分解単位(LU)は、5×103 個のタ
ーゲット細胞から15%の51Cr放出が起こるNK活性
と定義した。105 細胞当たりのLUは、細胞溶解パー
セントの回帰曲線から各サンプルついて決定した。ウエ
ル当たりのNK活性は、以下のように計算した。LU/
105 細胞×(1/105 )×全生存細胞カウント/ウ
エル。NK活性の分析は、分類細胞の開始培養後14、
21及び28日に行った。NK活性の結果を図3に示
す。図3から、実施例2の実験3で得た細胞は、相応の
NK活性を示すことが分かる。
【0036】実施例4 CD33- CD34+ 細胞の分
画 実施例1と同様にしてフィコエリスリン陰性、フルオレ
ッセイン陰性及びアロフィコサイアニン陽性の細胞集団
(Lin- CD33- CD34+ 分画)を得た。
【0037】実施例5 CD33- CD34+ 細胞の分
化増殖 500U/mlのリコビナントヒトIL−2、100U
/mlのリコビナントヒトIL−3、50ng/mlの
リコンビナントヒトSCFを含む完全培地200μlを
96穴丸底マイクロプレートに入れた。500個の実施
例4で得たLin- CD33- CD34+ 分画細胞を、
各ウエルに添加し、37℃5%炭酸ガス100%湿度の
条件下で28日間培養し、出現したNK細胞の表面抗原
であるCD56陽性細胞の数を計測した(実験6)。結
果を表2に示す。
【0038】比較のために、IL−2を含まない(実験
2及び3)か、または培養期間の一部にのみ添加した場
合(実験7)、IL−3を含まない(実験1、2及び
4)か、または培養期間の一部にのみ添加した場合(実
験6、7及び8)、及びSCFを含まない(実験1、
3、5及び8)か、または培養期間の一部にのみ添加し
た場合(実験7)についても同様に培養を行い、CD5
6陽性細胞の数を計測した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】表2に示すように、IL−2、IL−3及
びSCFのいずれか1つ又は2つのみを含む培地中では
CD56陽性細胞は得られず(実験1〜5及び8)、C
D33- CD34+ 細胞の分化増殖には、IL−2、I
L−3及びSCFの3つが必要であることが分かる(実
験6)。さらに、IL−3は、培養開始から一定時期に
存在することが、CD33- CD34+ 細胞の分化増殖
に必要であり、培養の後期には必ずしもなくても分化増
殖は可能であることが分かる(実験6及び7)。また、
SCFは、培養開始から一定時期に存在することが、C
D33- CD34+ 細胞の分化増殖に必要であり、培養
の後期には必ずしもなくても分化増殖は可能であること
が分かる(実験6及び7)。
【0041】実施例6 形態的特性の検討 実施例1で得られたCD33+ CD34+ 細胞(200
μlの培地中、0.5〜1×103 個)を800rpm
で3分間顕微鏡スライド上で遠心分離した。遠心分離
後、即座に風乾し、ライト染色した。ライト染色した細
胞を撮影した図4の写真に示す。実施例4で得られたC
D33- CD34+ 細胞も上記と同様にライト染色した
細胞を撮影して図5の写真に示す。図4の写真から、C
D33+ CD34+ 細胞はサイズが大きく細胞質に細か
い顆粒を有する。一方、図5の写真からCD33- CD
34+ 細胞は小から中サイズの好塩基性細胞質(basoph
iliccytoplasm) を伴うリンパ芽球様細胞であった。こ
れらのことは、CD33- CD34+ 細胞は、CD33
+ CD34+ 細胞より原始的であることを示唆する。
【0042】実施例2の実験3で得た細胞(0.5〜1
×105 個)についても、上記と同様にしてライト染色
した細胞を撮影し、図6の写真に示す。図6の写真に示
す細胞は、大型で顆粒を有するリンパ球様を示した。こ
の形態は、NK細胞の形態と類似している。尚、これ以
外に顆粒球、貧食大細胞、肥満細胞も共存していた。
【0043】
【発明の効果】本発明により、NK細胞の前駆細胞及び
その製造方法を提供することができる。さらに本発明に
より、NK細胞の前駆細胞の分化増殖剤及びNK細胞の
前駆細胞の分化増殖方法を提供することができ、多数の
NK細胞を得ることが可能になった。また本発明の方法
を用いることにより、癌患者からNK前駆細胞を分離し
て試験官内で増殖させてのち、患者体内に移植して癌の
治療を行う方法の開発を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で行ったセルソート(細胞分類)結果を
示す。Lin- の分画(a)の内、図A中の(b)がC
D33- CD34+ 分画であり、(c)がCD33+
D34+ 分画である。
【図2】本発明のNK細胞の前駆細胞(CD33- CD
34+ 及びCD33+ CD34+ )のNK細胞(CD5
+ )への分化のステップを示すスキームである。
【図3】NK活性の検定結果を示す。図Aはカウントさ
れた全細胞数、図BはCD56+ の細胞数、図CはNK
活性をそれぞれ示す。尚、実線は、CD33+ CD34
+ Lin- の分画についての結果であり、破線は、CD
33- CD34+ Lin - の分画についての結果であ
る。
【図4】CD33+ CD34+ 細胞をライト染色した細
胞(生物)の形態を示す図面に代わる写真である。
【図5】CD33- CD34+ 細胞をライト染色した細
胞(生物)の形態を示す図面に代わる写真である。
【図6】CD33- CD34+ 細胞を分化増殖させた細
胞をライト染色した細胞(生物)の形態を示す図面に代
わる写真である。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト骨髄由来の細胞より得られるナチュ
    ラルキラー細胞の前駆細胞。
  2. 【請求項2】 抗ヒトCD33抗体陰性でかつ抗ヒトC
    D34抗体陽性である請求項1記載の前駆細胞。
  3. 【請求項3】 抗ヒトCD33抗体陽性でかつ抗ヒトC
    D34抗体陽性である請求項1記載の前駆細胞。
  4. 【請求項4】 ヒト骨髄由来の細胞から抗ヒトCD34
    抗体陽性を指標としてナチュラルキラー細胞の前駆細胞
    を分離するナチュラルキラー細胞の前駆細胞の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 ヒト骨髄由来の細胞から抗ヒトCD33
    抗体陰性を指標としてナチュラルキラー細胞の前駆細胞
    を分離する請求項4記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 ヒト骨髄由来の細胞から抗ヒトCD33
    抗体陽性を指標としてナチュラルキラー細胞の前駆細胞
    を分離する請求項4記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 インターロイキン2及び幹細胞増殖因子
    を含むナチュラルキラー細胞の前駆細胞の分化増殖剤。
  8. 【請求項8】 ナチュラルキラー細胞の前駆細胞が、抗
    ヒトCD33抗体陰性でかつ抗ヒトCD34抗体陽性で
    ある前駆細胞又は抗ヒトCD33抗体陽性でかつ抗ヒト
    CD34抗体陽性である前駆細胞である請求項7記載の
    分化増殖剤。
  9. 【請求項9】 インターロイキン3及び幹細胞増殖因子
    を含むナチュラルキラー細胞の前駆細胞の分化増殖剤。
  10. 【請求項10】 ナチュラルキラー細胞の前駆細胞が抗
    ヒトCD33抗体陰性でかつ抗ヒトCD34抗体陽性で
    ある前駆細胞である請求項9記載の分化増殖剤。
  11. 【請求項11】 インターロイキン2、インターロイキ
    ン3及び幹細胞増殖因子を含むナチュラルキラー細胞の
    前駆細胞の分化増殖剤。殖剤。
  12. 【請求項12】 ナチュラルキラー細胞の前駆細胞が抗
    ヒトCD33抗体陰性でかつ抗ヒトCD34抗体陽性で
    ある前駆細胞である請求項11記載の分化増殖剤。
  13. 【請求項13】 抗ヒトCD33抗体陽性でかつ抗ヒト
    CD34抗体陽性であるナチュラルキラー細胞の前駆細
    胞を、インターロイキン2及び幹細胞増殖因子を含む培
    地中で培養することを特徴とするナチュラルキラー細胞
    の前駆細胞を分化増殖させる方法。
  14. 【請求項14】 抗ヒトCD33抗体陰性でかつ抗ヒト
    CD34抗体陽性であるナチュラルキラー細胞の前駆細
    胞を、インターロイキン2、インターロイキン3及び幹
    細胞増殖因子を含む培地中で培養することを特徴とする
    ナチュラルキラー細胞の前駆細胞を分化増殖させる方
    法。
  15. 【請求項15】 抗ヒトCD33抗体陰性でかつ抗ヒト
    CD34抗体陽性であるナチュラルキラー細胞の前駆細
    胞を、インターロイキン3及び幹細胞増殖因子を含む培
    地中で培養し、次いでインターロイキン2、インターロ
    イキン3及び幹細胞増殖因子を含む培地中で培養するこ
    とを特徴とするナチュラルキラー細胞の前駆細胞を分化
    増殖させる方法。
JP5312573A 1993-11-18 1993-11-18 ナチュラルキラー細胞の前駆細胞及びその分化増殖法 Pending JPH07135969A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007526246A (ja) * 2004-01-20 2007-09-13 コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー 幹細胞からナチュラルキラー細胞(nk細胞)への分化調節用遺伝子を有効成分として含む分化調節剤
JP2019519486A (ja) * 2016-05-07 2019-07-11 セルラリティ インコーポレイテッド ナチュラルキラー細胞を使用して急性骨髄性白血病および多発性骨髄腫を処置する方法

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