JPH0713102Y2 - 磁気テープカセット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は磁気テープカセットに関し、更に詳しくは磁気
テープカセットを構成する部品点数、作業工数の削減を
可能にする上下ハーフカセットの構造、並びに製造性に
優れた磁気テープカセットに関するものである。

［従来の技術］ 磁気テープレコーダの如きオーディオ機器、更にVTRの
如きビデオ機器では、記録・再生用の媒体として磁気テ
ープカセットが広く用いられている。そして、オーディ
オ系の磁気テープカセットにあっては、上下ハーフカセ
ットで形成されたケースボディ内に磁気テープを巻回し
た一対のフランジレスタイプのハブを回動自在に内臓保
持した構造が採用されている。

前記磁気テープカセットの使用時においては、テープレ
コーダのモード選択によって、磁気テープは記録・再生
モードから停止モード、更に高速走行から停止モード
等、頻繁に走行・停止を繰り返す。このため、フランジ
レスタイプのカセットにおいては、良好なテープ走行を
維持するべく表面性がよく且つ走行時に適度のテープテ
ンションを付与することもでき、停止モード時にテープ
たわみ等が発生しないように、フリクションシートが設
けられている。

前記フリクションシートは、薄いシート状の軟性合成樹
脂を上下ハーフカセットの内壁面に配置されるものであ
り、例えば表面にエンボス状の加工が施されたり、適度
にカールするように加工されたり、さらに帯電防止等の
加工が施された非常薄い部材である。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかし、前記フリクションシートについて、下記のよう
な問題点があった。

即ち、前記フリクションシートは、上下ハーフカセット
の各内壁面に設けられ、磁気テープをサンドイッチ状に
挟むようにするために、一個の磁気テープカセットには
当然のことながら２枚のフリクションシートが必要にな
り、部品点数が増加する一因になっていた。しかも、フ
リクションシートの装着に際しては、特に、上ハーフカ
セットを被せる前の上側のものに関してはフリクション
シートがほとんど固定されていない状態であり、また、
上カセットハーフの内面に半固定状態に取り付けられる
ものにおいても極めて不安定な状態である。このような
作業は手作業あるいは組立機械の何れによって行われる
場合でも、フリクションシートを半固定する作業或は単
に装填する作業、これらを位置ずれしないように上下カ
セットハーフを一体化しなければならないために、作業
工数が増加してしまうだけでなく、組立不良の発生を増
大させる原因でもあった。

そして、部品点数、作業工数の増加が相まって、コスト
高の一因になっていた。

本考案は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、そ
の目的はフリクションシートを用いることなく、しかも
簡単な構造で磁気テープに所望のテープテンションを付
与することもできテープ走行性を良好に維持できるよう
に構成した磁気テープカセットを提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 本考案に係る前記目的は、一対の上下ハーフカセットに
より形成された中空内部に回動自在に支持された一対の
ハブと、該一対のハブ間に走行自在に巻回された磁気テ
ープとを有する磁気テープカセットにおいて、前記上下
ハーフカセットの各内壁面に、前記磁気テープの端縁に
接触する低摩擦性の樹脂が少なくともテープ巻径に対応
する範囲で二色成形により凸状に一体に形成されたこと
を特徴とする磁気テープカセットにより達成することが
できる。

前記構成の磁気テープカセットによれば、前記凸部が磁
気テープの端縁に接触するので、前記凸部の高さ、及び
磁気テープとの接触面積や材質を適宜選択することによ
り、磁気テープに走行性能を維持し且つ所望のテープテ
ンションを付与することができる。故に、従来から用い
られてきたフリクションシートを用いることなく良好な
記録・再生を行わしめるとともに、部品点数、作業工数
の削減を図ることができる。

［実施態様］ 以下、図面を参照して本考案を適用した磁気テープカセ
ットの一実施態様を説明する。なお、第１図は上下ハー
フカセットの概略斜視図、第２図は磁気テープカセット
の平面図、第３図は凸部と磁気テープの端縁との接触状
態を示すカセット厚み方向に沿った要部の断面図、第４
図は２色成形を示す金型の断面図である。

先ず、第１図を参照して上下ハーフカセットの構造につ
いて説明する。上ハーフカセット1aの平板部2aには、規
格に基づいて一対のハブ穴3a、4aが設けられている。そ
して、平板部2aの内壁面に前記ハブ穴3aから所定間隔を
おいて、且つ放射状にハブ穴3aに近いカセット角方向に
向かって延びる凸状部5a、6aが上ハーフカセット1aと一
体に形成されている。また、前記ハブ穴4aから所定間隔
をおいて、反対側のカセット角方向へ放射状に凸状部7
a、8aが上ハーフケース1aと一体に形成されている。

一方、下ハーフケース1bの平板部2aにも、規格に基づい
て一対のハブ穴3b、4bが設けられている。そして、一対
のハブ穴3b、4bから所定間隔をもって、且つ下ハーフケ
ース1bの長手方向に沿うようにして、３個の凸状部5b、
6b、7bが下ハーフケース1bと一体に形成されており、前
記凸状部5b、6b、7bは前記凸状部5a、6a、7a、8aに対向
しないように形成されている。なお、上ハーフケース1a
と下ハーフケース1bとに形成された台形部10a、10bは、
記録再生領域であり磁気テープカセット組立時におい
て、磁気ヘッド等を挿入するための前面開口部となるも
のである。

次ぎに、第２図を参照して組み立てた状態の磁気テープ
カセット１について説明する。一対のハブ11a、11bは、
従来と同様に前記ハブ穴3a、3b、4a、4bを構成している
環状突起部分によって回動自在に支持され、磁気テープ
Ｔが前記再生領域を通って走行自在に巻回されている。
そして、巻回された磁気テープＴの下端縁（下側面）
は、点線で示す前記凸状部5b〜7bに接触するようにな
り、上端縁（上側面）は一点鎖線で示す放射状の前記凸
状部5a〜8aに対向している。この状態は第２図における
A-A線に沿った断面矢視図ぜある第３図にて示すと、磁
気テープＴが巻装された部分が、前記凸状部6a、7aと前
記凸状部7bとによって、互い違いに保持されるようなサ
ンドイッチ状態とも言える状態となっている。

前記各凸状部は磁気テープに対して上下からの交互に対
応するので、前記各凸状部の各々が規格内いっぱいに高
く張出した構成にできる。従って、磁気テープＴが走行
する場合、或は停止中であっても磁気テープＴはその端
縁が前記各凸状部によって適宜保持ならびに走行案内が
行われるので、従来のようなフリクションシートが無く
とも磁気テープＴの走行安定性が確保されると共に磁気
テープＴに適度のバックテンションが付与され、テープ
弛みの発生防止や良好なテープ巻姿の維持ができる。

次ぎに、第４図を参照して前記凸状部の形成について説
明する。なお、前記各凸状部は同時に形成されるもので
あるが、図示と説明の便宜のため前記凸状部7bと下ハー
フカセット1bとの形成を説明する。

前記各凸状部を有する上下ハーフカセット1a、1bの形成
は、当業者間でいう２色成形法が好適である。この成形
法は、例えば第４図に示すように軸Ｘを中心に回転する
下金型21、上下に移動可能な上金型22により成形を行う
回転型の成形金型を用いることができる。

そして、前記下金型21の一部に凸状部6bを形成するため
の型空間23が設けられ、該型空間23には合成樹脂を注入
するためのゲート24が連結して設けられている。

前記凸状部6bを形成する場合は、Ｘ軸から左側に示すよ
うに前記型空間23に、ゲート24から耐摩耗性が高く低摩
擦の性質を備えた合成樹脂を注入する。そして、一定量
の樹脂注入が終了した後、前記上金型22を上方に移動
し、引き続いて前記下金型21を回動（180度）させて第
４図の右側に移動させる。

次ぎに、前記上金型22を下降させて、該上金型22に形成
されていた前記下ハーフカセット1bの成形のための型空
間25が凸状部6bと一体になるように位置決めする。そし
て、前記型空間25に連結して設けられているゲート26か
ら従来のケースに用いられているABS樹脂等の合成樹脂
を注入し、前記下ハーフカセット1bと前記凸状部6bとを
一体になす。なお、便宜上説明を省いたが、他の凸状部
5b、7bも以上に説明した工程で同時に形成され、同時に
下ハーフカセット1bに一体化される。

このように２色成形法を適用すると、各凸状部と前記上
下ハーフカセット1a、1bとを異なった機能を有する異な
った合成樹脂を極めて容易に一体に成形することができ
る。従って、前記各凸状部を前記上下ハーフカセット1
a、1bと異なった材質、例えば硬質の合成樹脂で形成し
たい場合に好都合である。

即ち、前記各凸状部の上部平面部、換言すれば磁気テー
プＴとの接触面は、頻繁に磁気テープＴの端縁が接触し
ていると考えてよい。従って、前記各凸状部の上部平面
部は摩擦により削られるようになり、凸状部が軟性であ
れば削り粉が発生し安く、この削り粉が磁気テープＴの
記録・再生面に付着すると信号のドロップアウトが発生
するので好ましくない。しかし、本実施態様の如く、２
色成形法により各凸状部を低摩擦で硬質の合成樹脂で形
成すれば、従来のフリクションシートがなくとも前記不
都合の発生を未然に防止することができ、製品の信頼性
向上を図り得る。

以上に本考案の実施態様を説明したが、本考案は前記に
限定されるものではなく、種々の変形が可能である。

例えば、前記各凸状部5a〜8aの形成位置、更に前記各凸
状部5b〜7bの形成位置は前記に限定されず、より径小の
凸状体を密に形成してもよい。

また、前記各凸状部の磁気テープとの接触面は、ゆるや
かな円弧状に形成してもよい。

更に、前記各凸状部の平面形状は、文字、図形を表す形
状であってよく、近年において多く見られる透明の磁気
テープカセットにあっては前記凸状部を用いてデザイン
効果を得ることもでき、特に凸状部5b〜7bについては、
磁気テープの巻回量を示す目盛りと援用し得るように形
成してもよい。

［考案の効果］ 以上に説明したように、本考案は上下ハーフカセットの
各内壁面に、磁気テープの端縁に接触する低摩擦性の樹
脂が少なくともテープ巻径に対応する範囲で二色成形に
より凸状に一体に形成された構成であるので、前記低摩
擦性の樹脂が従来のフリクションシートと同じ機能を発
揮することができ、フリクションシートが不要になり、
部品点数、作業工数の削減を図ることができ、極めて顕
著な効果を奏することができ、ひいては製品のコストダ
ウンを図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案を適用したハーフカセットの概略斜視
図、第２図は磁気テープカセットの概略平面図、第３図
は第２図のA-A断面矢視図、第４図は２色成形を示す金
型の断面図である。 （図中の符号） １……磁気テープカセット、1a、1b……上下ハーフカセ
ット、2a、2b……平板部、3a〜4b……ハブ穴、5a〜8a、
5b〜7b……凸状部、11a、11b……ハブ、21……下金型、
22……上金型、23、25……型空間、24、26……ゲート、
Ｔ……磁気テープ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】一対の上下ハーフカセットにより形成され
   た中空内部に回動自在に支持された一対のハブと、該一
   対のハブ間に走行自在に巻回された磁気テープとを有す
   る磁気テープカセットにおいて、前記上下ハーフカセッ
   トの各内壁面に、前記磁気テープの端縁に接触する低摩
   擦性の樹脂が少なくともテープ巻径に対応する範囲で二
   色成形により凸状に一体に形成されたことを特徴とする
   磁気テープカセット。