JPH066701B2 - 石油回収用圧入流体組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は石油の増回収法に使用する水性圧入流体組成物
に関し、更に詳しくは、少量の界面活性剤使用量で石油
回収率を向上させる安定化された水性圧入流体組成物に
関する。

（従来の技術） 従来既存の油田から未回収石油を人工的に回収する方法
として各種の石油増回収技術が提案され実施されてお
り、特に界面活性剤、アルカリ性物質又は高分子物質等
を単独で使用するかあるいはそれらを組合せて使用する
石油の回収法が回収率を向上させる有望な方法として提
案されている。

界面活性剤を使用する方法の中に、界面活性剤、炭化水
素、界面活性助剤及び水を主成分とするいわゆるミセル
溶液を使用するミセラー攻法として一般に知られている
石油の回収法がある。ミセル溶液が石油の置換効率に優
れているため、ミセラー攻法は通常石油の回収率は高い
が、コストが高く経済性は低いという問題がある。

一方アルカリ性物質単独の水溶液或いはアルカリ性物質
を水溶性高分子物質と混合した水溶液を使用する石油の
回収方法も提案されている。この方法はアルカリ攻法又
はアルカリ・ポリマー攻法として一般に知られている。
この方法は使用する薬剤のコストは安価であるが、石油
の回収率は低いという問題点がある。

このように石油の回収方法及び石油の回収に使用する薬
剤としては、コスト的に安価で経済性が高く、同時に石
油の回収率の高いものが強く望まれている。

その方法の一つとしてアルカリ性物質と高分子物質の混
合水溶液にエトキシ化高級アルコールの硫酸エステルの
ような界面活性剤を添加した水溶液を使用する方法がア
ール．シー．ネルソン（Ｒ．Ｃ．Nelson）等によって提
案されている。〔エス．ピー．イー／ディー．オー．イ
ー ペーパー（SPE/DOE Paper)NO.12672〕。

また、エム．ジェー．ピッツ（Ｍ．Ｊ．Pitts）等の研
究〔ペトロリアム ソサエティー オブ エス．アイ．
エム．ペーパー〕（Petroleum Society of SIM Papae
r）NO.86-37-53〕には、水酸化ナトリウム0.8重量％を
含む水溶液に石油スルホネート0.1重量％を加えた水溶
液がグランド フォークス(Grand Forks)石油の界面張
力を10^-3ダイン/cmのオーダーまで低下させ、上記組成にポ
リアクリルアミド系の高分子物質を配合した水溶液を用
いることにより高い石油回収率を示したことが述べられ
ている。

（発明が解決しようとする問題点） ところが本発明者等が石油の回収に通常使用される石油
スルホネート、アルカリ性物質及び易動度調整用水溶性
高分子物質を塩水溶液として配合したところ、その組成
は不安定であり沈殿を形成することが判明した。この沈
殿の防止については、ネルソン等及びピッツ等は何も提
案していない。

ピッツ等の報告などに示されている石油回収用に用いる
界面活性剤−アルカリ性物質−高分子物質−水からなる
組成物、例えば石油スルホネート0.3重量%(活性成分基
準)、水酸化ナトリウム0.5重量％、ポリアクリルアミド
ポリマー0.2重量％及び水99重量％からなる組成物に於
いて、水基準で0.1重量％の塩を含んでいても系は不安
定であり沈殿を形成する。

同様な組成で石油スルホネートの代りにアルキルアリー
ルスルホネートを用いた場合、あるいはポリアクリルア
ミドポリマーにおいて加水分解率及び／又は分子量を変
化させた場合及びポリアクリルアミドポリマーの代りに
一般にキサンタンガムとして知られている水溶性高分子
物質を使用した場合においても同様に満足な結果は得ら
れない。

（問題を解決する手段） これに対し本発明が提供する石油回収用圧入流体組成物
は、後述の実施例に於いて幾つかの例を示すが、本質的
に安定で均一である。

本発明者等は前述の様ないくつかの問題点を考慮して鋭
意検討を重ねた結果、石油の界面張力低下能に優れ、安
定で、易動度調整能力を持った石油回収用圧入流体組成
物を発明するに至った。

即ち本発明は、石油を回収するにあたり使用する、界面
活性剤、アルカリ性物質、無機塩を含んでいてもよい水
及び易動度調整用の水溶性高分子物質を含む液体組成物
に、該組成物を沈殿を生じないように安定化するに十分
な量の助剤を添加した、界面張力低下能に優れ、安定
で、易動度調整作用をもった石油回収用圧入流体組成物
に関するものである。

本発明を実施する際に用いられる界面活性剤は、任意の
種類のものでよく、対象とする油田の油田水及び／又は
使用する水の塩分及び石油の性質等を考慮して望ましい
水性圧入流体組成物を得るように選択する。なかでも平
均当量約350〜約550の石油スルホネート又はアルキルア
リールスルホネートの少なくとも１種を用いるのが最も
好ましい。これらの石油スルホネート及びアルキルアリ
ールスルホネートは、例えば特開昭55-500119号あるい
は特開昭61-264082号等に記載されている公知の方法で
製造された石油スルホネート及びアルキルアリールスル
ホネートであり得、主としてアルカリ金属塩あるいはア
ンモニウム塩が好ましく、主要成分であるモノスルホン
化生成物のほかにポリスルホン化生成物、無機塩及び未
反応の炭化水素を含んでいてもよい。

界面活性剤の使用量は、石油の種類にもよるが、圧入流
体と石油との界面張力を約100ミリダイン／cm以下にす
るためにはその活性成分濃度0.01重量％以上を含むもの
にする。また界面活性剤活性成分2.0重量％を越える量
を使用しても効果に余り差はない。

このように本発明の提供する組成物は界面活性剤として
公知の石油スルホネート及びアルキルアリールスルホネ
ートが使用できる。

本発明において用いられるアルカリ性物質は水に溶解し
てアルカリ性を呈することができる公知の任意の化合物
であることができる。例えば、ＮａＯＨ，ＮＨ_４ＯＨ，
ＫＯＨ，Ｎａ_２ＣＯ_３，Ｋ_２ＣＯ_３，Ｎａ_４ＳｉＯ_４又
はそれらの混合物がある。アルカリ性物質は対象とする
油田の油田水及び／又は使用する水の塩分濃度及び石油
の性質を考慮して本発明に従って望ましい石油回収用圧
入流体組成物を得るように少なくとも１種類選択するこ
とができる。

本発明の提供する石油回収用圧入流体組成物は、該組成
物を用いて効率よく地下含油層全体から石油を均一に押
し出し回収するために水溶性の高分子物質を成分として
含んでいる。

水溶性高分子物質は公知のものでよい。例えば部分的に
加水分解されていてもよいポリアクリルアミド、キサン
タンガム等の微生物により生産されるヘテロポリサッカ
ライド、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチ
ルセルロースなどが挙げられる。水溶性高分子物質の分
子量及び使用する量は圧入流体としての適当な粘度を与
えるように選択する。

本発明の石油回収用圧入流体組成物において、溶液安定
用助剤は該組成物を沈殿を生じることなく安定化させる
役割をする。本発明で用いる助剤はポリエチレングリコ
ールエーテル、α−オレフィンスルホネート及びアルキ
ルアリールスルホネートよりなる群の中から少なくとも
１種選択されたものである。

前記のポリエチレングリコールエーテルは、分子中に少
なくとも１個のポリエチレングリコール鎖が付加した有
機種（エトキシレート類）であり、好ましくはポリエチ
レングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコ
ールアルニケルエーテル、ポリエチレングリコールアル
キルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルのポ
リエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコー
ルポリプロピレングリコールブロック共重合体などであ
る。

これらのエトキシレート類としては、例えばポリエチレ
ングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコー
ルセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリル
エーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、
ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリ
エチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエ
チレングリコールドデシルフェニルエーテル、ポリエチ
レングリコールソルビタンモノラウレート、ポリエチレ
ングリコールソルビタンモノステアレート、ポリエチレ
ングリコールソルビタンモノパルミテート、ポリエチレ
ングリコールソルビタンモノオレエート、ポリエチレン
グリコールソルビタントリオレエート、ポリエチレング
リコールポリプロピレングリコールブロック共重合体な
どが挙げられる。

また上記のα−オレフィンスルホネート及びアルキルア
リールスルホネートは平均当量約350以下の公知のスル
ホネートである。

本発明において助剤はアルカリ性物質、界面活性剤、及
び水溶性高分子物質を含有する組成物を沈殿を生じるこ
となく安定化するに十分な量で添加することが必要であ
り、添加量は該組成物中の界面活性剤の種類及び使用す
る水の塩濃度及びアルカリ性物質の種類及び濃度によ
り、また助剤自体の種類等により異なるが、通常該組成
物中の界面活性剤の活性成分100重量部当り助剤の活性
成分100重量部以下の量が使用される。

助剤の添加は本発明の提供する水溶性高分子物質、アル
カリ性物質及び界面活性剤を含有する安定な圧入流体組
成物を得る為に必要であるが、一方助剤の使用は該組成
物のコストを上昇させ経済性を低下させる。従って助剤
の添加量は該組成物中に配合された界面活性剤の活性成
分100重量部当り助剤の活性成分50重量部以下であるこ
とが好ましい。

（本発明の効果） 本発明の石油回収用圧入流体組成物は本質的に安定であ
る為に 工業的規模により石油回収プロセスの安定的実施が可能
である、 界面活性剤の使用量が低くコストが安いため経済性に優
れている、 界面張力低下能に優れている、 石油回収率が高い、 等の効果をうることが出来る。

（実施例） 以下に本発明の詳細な実施例を示すが、これらの実施例
は本発明の範囲を限定するものではない。また本発明の
趣旨に反しない範囲で行われる種々の改変は本発明の範
囲に含まれる。実施例中の界面活性剤及び助剤の濃度は
その活性成分量を基準にしたものである。

実施例１ 水を基準にＮａＯＨ 0.5重量％及びＮａＣｌ 0.5重量
％を含む水を用い、平均当量約395のアルキルアリール
スルホネート 0.3重量％及び平均分子量約1000万のポ
リアクリルアミド（以下PAM-Aと記す）を組成物の粘度
が約50cpとなる量配合したところ、その液体組成物は不
安定で沈殿を生じた。これに対し本発明に従い助剤を配
合することにより該組成物は安定化し、沈殿の形成は起
こらなかった。その例を以下に示す。尚粘度はブルック
フィールド粘度計を用い45℃で測定した。

比較例１ 前記と同じ系において、界面活性剤濃度を変化させても
助剤を添加しない場合は安定な組成物は得られなかっ
た。

界面活性剤濃度 助剤 安定性 0.1重量％ なし 沈殿形成 0.3重量％ なし 沈殿形成 1.0重量％ なし 沈殿形成 比較例２ 前記と同じ系において、界面活性剤濃度を0.3重量％に
固定して高分子物質の種類を変化させても助剤を添加し
ない場合は安定な組成物は得られなかった。高分子物質
の濃度は粘度が45℃において50cpになるように選択し
た。

実施例２ 実施例１に記載の系において、界面活性剤に他の種類の
ものを使用した場合でも、本発明に従って助剤を添加す
ることにより安定な組成物を得ることが出来た。結果を
以下に示す。

実施例３ 実施例１に記載のアルキルアリールスルホネートを種々
濃度で使用し、本発明に従ってポリエチレングリコール
ノニルフェニルエーテル（エチレングリコール平均付加
モル数約95）を助剤として添加した場合の例を示すと、
0.075重量％の助剤添加量でも沈殿のない安定な液体組
成物を得ることができた。結果を下表に示す。尚、高分
子物質の濃度は組成物の粘度が45℃において約50cpとな
るように選択した。

試料 界面活性剤 助剤 実施例４ 実施例１に記載の系で助剤を平均当量約320のアルキル
アリールスルホネートに変えた場合の例を示すが、本発
明に従い助剤を添加した場合のみ安定な組成物を得るこ
とができた。結果を下表に示す。

試料番号 界面活性剤濃度 助剤添加量 安定性 １１ 0.15重量％ なし 沈殿 １２ 0.15重量％ 0.15重量％ 安定 実施例５ 本発明に従えば安定な組成物が得られることを実施例１
から実施例４において例示したが、本発明の提供する安
定な石油回収用圧入流体組成物は石油との界面張力を効
率的に低下させることができる。一例としてAPI比重約3
3°のパラフィン基原油を用い、スピニングドロップ法
により測定した界面張力値を下表に示す。

尚、高分子物質の濃度は、組成物の粘度が約45℃におい
て約50cpとなるように選択した。

実施例６ 実施例１〜５に例示した本発明の石油回収用圧入流体組
成物は本質的に安定であり、かつ石油との界面張力を効
率的に低下させることができる。従って本発明の提供す
る安定化された石油回収用圧入流体組成物を石油の回収
プロセスに使用した場合は高い石油回収率を得ることが
出来る。石油油回収試験の一例を示す。

浸透率約200md、孔隙率約20％のベレア砂岩コアを油回
収試験に用いた。試験は十分にブラインを飽和させたコ
アをホルダーに装填し、API比重約33°のパラフィン基
原油を10フィート／日の速度でブラインが流出しなくな
るまで圧入した。続いて0.5フィート／日の速度でブラ
インを圧入して水攻を行い石油を回収した。水攻終了時
において流出液中の石油量は痕跡量であった。

引続き本発明の原理による組成物を100％孔隙容積圧入
し、その後ブラインを約150％孔隙容積圧入した。尚圧
入速度は0.5フィート／日で行った。

回収した油量の評価を実施したところ油回収率は水攻後
の残油に対し63％であった。尚、溶液安定用助剤を含ま
ない同様の組成では油回収率は43％にすぎなかった。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ポリエチレングリコールエーテル、平均当
   量約350以下のα−オレフィンスルホネート及び平均当
   量約350以下のアルキルアリールスルホネートからなる
   群から選ばれる少なくとも１種の溶液安定用助剤、界面
   活性剤、アルカリ性物質、無機塩を含んでいてもよい
   水、及び易動度調整用の水溶性高分子物質を含む石油回
   収用圧入流体組成物。
2. 【請求項２】前記ポリエチレングリコールエーテルが、
   ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレ
   ングリコールアルケニルエーテル、及びポリエチレング
   リコールアルキルフェニルエーテルから選ばれる特許請
   求の範囲第１項に記載の組成物。
3. 【請求項３】前記ポリエチレングリコールエーテルがソ
   ルビタン脂肪酸エステルのポリエチレングリコールエー
   テルである特許請求の範囲第１項に記載の組成物。
4. 【請求項４】前記ポリエチレングリコールエーテルがポ
   リエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロ
   ック共重合体である特許請求の範囲第１項に記載の組成
   物。
5. 【請求項５】前記界面活性剤がアルキルアリールスルホ
   ネート及び石油スルホネートである特許請求の範囲第１
   項乃至第４項に記載の組成物。