JPH0637782Y2 - 電気加熱式断熱調理器具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本考案は、蓋体を有する断熱容器とその内部に収納され
る内部容器とを具備してなる電気加熱式断熱調理器具に
関する。

「従来の技術」 従来、食物を断熱容器に収納して調理する道具として、
実開昭62-86130号などが知られているようにいくつかの
考案と発明が公開されている。それらの概要は、断熱外
蓋を着脱自在に設けた断熱容器と、この断熱容器の内部
に出し入れ自在に設けた調理鍋とからなり、調理材料を
適量の水などと共に一旦加熱した後、これらを所要時間
断熱容器の内部で保温することにより煮炊などの調理を
行うものである。また、調理鍋の使用方法としては、単
なる内容器として使用する方法と、調理材料の加熱時に
鍋として使用する方法の２種類が提案されている。

ところがこれらの方法は、いずれにしろ、断熱容器の外
部で加熱されて調理材料で充たされた調理鍋を断熱容器
に収納する等、移動することになり手間がかかり、そし
て、断熱容器の収納移動時に火傷などの危険を喚起する
ことがあった。

また、従来の調理器具は、調理鍋と断熱容器の組み合わ
せからなる調理器とは別に、ガスコンロなどの加熱器具
を用意する必要があり、極めて不便なものであった。

そこで、従来から、電気鍋、炊飯器などのように、調理
鍋と加熱手段を併せ持つ調理器が知られている。即ち、
第３図と第４図に示す構造（実公昭63-24821号に開示さ
れている構造）に示すように、保温用ヒータ１の発熱量
を低減する目的で断熱容器２とその内部に収納される調
理鍋３と加熱手段（炊飯ヒータ）４の組み合わせよる調
理器具５が提案されている。

しかしながら、第３図に示す調理器具５にあっては、調
理鍋３の上縁部3aが断熱容器２の上縁部2aよりも上方に
位置し、しかも、断熱容器２の内壁体６の口元径より大
径とされ、更に上方に折り曲げられているので、内蓋７
との組み合わせで密閉構造を構成するとともに、調理鍋
３の着脱が容易になるという長所を有する半面、調理鍋
３の上縁部3aを伝導して調理器具５の外方に逃避する熱
損失（熱伝導）が大きいという欠点を有している。

また、第５図に、本出願人が実願平1-42088号として既
に出願した断熱調理器具の上部開口部分の拡大図を示
し、第６図と第７図に前記出願の断熱調理器具の全体構
造を示す。

この断熱調理器具10は、断熱容器11の内部に金属製の内
鍋13を出入自在に挿入するとともに、断熱材14を設けた
２重構造の蓋体15を断熱容器11の開口部に着脱自在に装
着してなる構造になっている。なお、前記断熱容器11は
外容器11aと内容器11bを真空層16を介して接合一体化し
てなるものである。更に、内鍋13の両側には、内鍋13の
側壁の一部を延長させて把手部17,17が形成され、この
把手部17,17が断熱容器11の外部まで延出され、この把
手部17,17を支持することで内鍋13を断熱容器11から出
し入れできるようになっている。

前記構成の断熱調理器具10において、断熱調理容器11の
熱損失は、開口部壁面による熱伝導が最も大きな割合で
あるので、この熱損失を減少させるためには、開口部の
口径と材質が同一であると仮定した場合、第５図に示す
伝導距離Ａを大きくするか、断面積を小さくするために
第５図に示す板厚Ｂを薄くすることが有効である。

第３図と第４図に示す構成の調理器具５と、第５図ない
し第７図に示す構成の断熱調理器具10を比較すると、板
厚は口元部の径と、必要とする機械的強度によりその下
限値が決定されるので、調理器具５においては、内鍋13
の壁厚と内壁体６板厚には差がないので、内鍋13と内壁
体６との関係により前記熱伝導距離がどの程度の大きさ
となるかによって保温効力が決定される。

結果として第３図と第４図に示す調理器具５の構造より
も、第５図ないし第７図に示す構造の断熱調理器具10の
方が、高い保温力を得やすい構造となっている。

「考案が解決しようとする課題」 ここで、第５図ないし第７図に示す構造の断熱調理容器
10に加熱手段を付加した構造の電気加熱式断熱調理器具
を第８図に示す。

第８図に示す構造の調理器具においては、断熱容器11の
内底部に電気ヒータ12を設けてなる構成であり、このヒ
ータ12により調理材料の入った内鍋13を蓋体15を取り外
して加熱する場合、“ゆでる”（煮る）と、“焼く”
（炒める）といった２つが主な使用形態である。

まず、前者の“ゆでる”（煮る）といった使用形態で
は、“ふきこぼれ”と呼ばれる現象により、特に、湯、
だし汁などの調理材料が内鍋13からあふれ出ることがあ
り、真空断熱容器11の内部側へ溜まってしまうばかり
か、汁などの導電性のある液体がヒータ12に接触するこ
とになるので電気系統の故障の原因にもなる問題があっ
た。

また、後者の“焼く”（炒める）といった使用形態で
は、油がはね飛んで内容器11bを汚すといった問題があ
り、油がはねた部分の掃除は極めて難しい問題がある。

ところが、以上２つの点における問題点に関しては、加
熱手段を持たない第３図に示す従来構造の調理器具５で
は問題にならない。

以上の問題点を要約すると、加熱手段を備えた第８図に
示す断熱器具を提供しようとする場合、保温効力を高め
るために、内鍋13の上端より更に上方まで断熱容器を延
設し、断熱製の蓋体15を落としこんだ構造とすれば、加
熱時に“ふきこぼれ”と“油はね”といった問題が発生
する。

また、加熱時の問題を解決するために、第３図に示す調
理器具５などに見られるように調理鍋３の上端を断熱容
器上端より上方でその外径を断熱容器２の内径より大径
に形成すると、高い保温効力が得られにくいという問題
があり、加熱時の使い勝手と保温効力を両立させること
が困難であった。

本考案は前記事情に鑑みてなされたもので、高い保温効
力を有するとともに、加熱時の使い勝手を良好にした電
気加熱式断熱調理器具を提供することを目的とする。

「課題を解決するための手段」 前記課題を解決するために本考案は、断熱容器と、この
断熱容器の内部に出入自在に収納されるガラスなどのセ
ラミック製等低熱伝導度の材料よりなる内部容器と、断
熱構造の蓋体と、断熱容器の内底部に設けられた電気ヒ
ータとを具備してなり、前記内部容器の上縁部に、前記
断熱容器に対する内部容器の収納状態で断熱容器の開口
部上縁で外方に延出するフランジ片を形成し、内部容器
の底面に熱伝導性の良好な金属製の底板を固着するとと
もに、前記蓋体を、内部容器の開口部に嵌め込まれる本
体部と、内部容器のフランジ片の上面に被着されるフラ
ンジ部と、本体部および周縁部の内部に充填された断熱
材とから構成したものである。

「作用」 断熱容器の内部に収納した内部容器の上縁部に断熱容器
の開口部まで延びるフランジ片を設け、このフランジ片
の上に蓋体を被着して内部容器を塞ぐので、内部容器を
介して外部に逃避する際の熱の伝達経路が長くなる。従
って蓋体を内部容器の開口部に被せることで電気ヒータ
で加熱した内容物は効率良く保温される。

また、内部容器のフランジ片が、断熱容器の開口部と内
部容器との間の間隙を塞ぐので、内部容器で内容物を加
熱した場合ふきこぼれなどを生じても断熱容器の外部に
導かれて内側に侵入しない。

更に、内部容器の底面に金属製の底板を固着しているの
で、内部容器を電気ヒータで底から加熱した場合、底板
全体に速やかに熱が伝わり、加熱効率を向上できるとと
もに、内部容器自体はセラミック製の如き材料であるの
で底板よりも熱伝導率が低いので、内部容器の壁を伝導
して開口部より外部へ熱の逃避量を低減しえる。

「実施例」 第１図と第２図は、本考案の一実施例を示すもので、本
実施例の電気加熱式断熱調理器具20は、断熱容器21と、
この断熱容器21の内底部に固定された電気ヒータ19と、
断熱容器21内に出し入れ自在に収納された内部容器（内
鍋）22と、蓋体24と、底体29から概略構成されてなるも
のである。

断熱容器21は、有底円筒状の金属製の内容器25と、内容
器25よりも大径で、内容器25と略同形状の金属製の外容
器26とからなり、内容器25と外容器26とは、それぞれ口
部において気密に接合されて二重構造となしている。内
容器25と外容器26との間の空隙は、真空もしくは断熱材
を充填した断熱部27とされている。

また、断熱容器21の底部中央には、内容器25の底部中央
と外容器26の底部中央を貫通して連通管28が設けられて
いる。更に、断熱容器21の底部側には、底体29が固定さ
れ、この底体29に電気スイッチ30が取り付けられるとと
もに、電気スイッチ30から前記連通管28を介して電気ヒ
ータ19に配線31が接続されている。なお、断熱容器21の
上端部外周には、肩部材32が固着されるとともに、肩部
材32には容器把手32aが延設されている。

蓋体24は、略円盤状の上蓋体35と、有底筒状の下蓋体36
とから概略構成されている。上蓋体35と下蓋体36とは、
上蓋体35の外周部に突出して形成されたリング状の上部
嵌合体37と、下蓋体36の外周部に突出して設けられたリ
ング状の下部嵌合体38とが嵌合することにより接合一体
化されており、上蓋体35と下蓋体36とから形成される空
隙にはグラスウールなどの断熱材39が収納されている。

前記下蓋体36は、内鍋22の開口部に嵌め込まれる筒状の
本体部33と、この本体部33の上縁部を外側に延設して形
成したフランジと、このフランジの先端部に形成された
下部嵌合体38とから構成されている。なお、下蓋体36の
フランジと上蓋体35の外周部、および、これらの間に介
在された断熱材39とによってフランジ部34が構成され
る。

なお、第１図に符号40で示すものは、上蓋体35の中央部
に２つの凹部41を形成することによって形成した把持部
である。

下蓋体36を構成する材料は、耐熱性と耐蒸気性が良好で
臭気などを出さない樹脂材料を用いることが好ましい。
具体的には、フィラー入りのポリプロピレンやナイロン
などを用いる。

断熱容器21の上端部内周側には、内鍋22を断熱容器21か
ら外に出すための隙間部が形成されている。この隙間部
は、下蓋体36の外径を内容器25の口部内径より若干小径
に形成することで設けられたものである。

内鍋（内部容器）22は、ガラスなどのセラミック製等の
低熱伝導度の材料よりなる有底筒状のもので、その上縁
部には、内鍋22を前記断熱容器21内に収納した状態で断
熱容器21の開口部の側方まで延出するフランジ片23が形
成されている。そして、フランジ片23の両側部が延出さ
れて握部23aが形成されている。また、内鍋22の底部に
は、銅などの熱伝導性の良好な金属からなる底板22aは
固着されている。

次に前記構成の電気加熱式調理器具の使用方法につい
て、最も一般的な家庭料理であるカレーを例にとって説
明する。

初めは、蓋体24を取り外した状態で電気スイッチ30を操
作して電気ヒータ19に通電して内鍋22を加熱し、玉ね
ぎ、人参、豚肉などを炒める。次に水あるいは熱湯を加
え、カレールウを割って入れ、蓋体24を被せ、更に電気
ヒータ19の電力を上げて強火で加熱を続ける。内容物は
沸騰したならば、電気ヒータ19の電力を下げて中火とし
て10分間程度加熱を続行する。

前述のように内鍋22を加熱する場合、底部に金属製の底
板22aを固着しているので、電気ヒータ19の熱が底板22a
の全体に素早く伝達される結果、内鍋22の底部全体が均
一にしかも速く効率良く加熱される。また、内鍋22の全
体は金属に比較すると熱伝導率の低いセラミック製であ
るので、内鍋22の上部側から逃避する熱量は少なくする
ことができる。更に、内鍋22の開口部に断熱構造の蓋体
24を被着し、内鍋22のフランジ片23を断熱容器21の開口
部周縁と蓋体24で挾んでいるので、内鍋22の壁を伝導し
て口部側から逃散する熱量を少なくすることができる。

その後、電気ヒータ19への通電を止めて保温を開始す
る。ここで内鍋22に入れられた料理は、断熱容器21に収
納されて高い温度に維持されるために、電気ヒータ19に
より加熱を続行した場合と同様に料理が進む。具体的に
は、材料が柔らかくなり、味が染み込む。

約30分程度保温を続けるとカレーは出来上がるが、更に
保温を続けることもできる。おでん、シチューなども同
様であるが、保温を続けることでより一段と味が染み込
む。なお、断熱容器による調理では、料理が柔らかくな
り過ぎることはないので、圧力鍋による調理のように細
かな時間管理は不要である。

ところで、前記構成の断熱調理器具20を単に、加熱手段
の付いた鍋で外側が熱くならない調理器具として使用
し、天ぷら、すき焼きなどを作る場合に用いても良いの
は勿論であり、特に夏期においては断熱調理器具20の周
りが熱くなりにくい長所がある。

また、内鍋22の上端のフランジ部34は、断熱容器21の上
端で外方に向けて延出されている。このような構成を採
用することで、“ふきこぼれ”と“油のはね”に対し、
断熱容器21の内部を汚さないといった効果が得られる。
なおここで、内鍋22と断熱容器21の間には、若干の間隙
が必要である上、寸法のばらつきも考えられるから、フ
ランジ部34の周縁部を断熱容器21の上端部の部分よりも
若干大きな径に形成しておくことが好ましい。

「考案の効果」 以上説明したように本考案は、断熱容器の内側に収納さ
れる内部容器に断熱容器の開口部で外方に延出するフラ
ンジ片を形成したので、内部容器を断熱容器内に収納
し、蓋体を被せることで内部容器内の内容物を断熱容器
で保温することができる。この場合、内部容器からの熱
の逃避経路は、フランジ片となるが、フランジ片は十分
に長く設計可能であり、その上には蓋体が被せられるの
で、フランジ片を介する熱の逃避を十分に少なくするこ
とができる。

また、内部容器の底面に金属製の底板を固着しているの
で、電気ヒータが発生させた熱を底板を介して内部容器
の底面全体に効率良く速やかに伝達することができる。
そして、内部容器の側壁は金属よりも熱電導率の低いセ
ラミック製であるので、側壁を介して内部容器の壁を伝
って上部側から外部に逃避する熱を少なくすることがで
き、保温効率を向上させることができる。

更に、断熱容器に内部容器を挿入した状態において内部
容器の内容物が沸騰してふきこぼれがあっても、内部容
器のフランジ片が断熱容器の上端で外方に延びて断熱容
器との間の間隙を閉じているので、ふきこぼれはフラン
ジ片で断熱容器の外に導かれ内容物が断熱容器の内側に
侵入することもない。

更にまた、断熱容器の内底部に電気ヒータを設けること
で、断熱容器の内部で内部容器を加熱できるとともに、
この場合に内部容器の内容物が断熱容器の内側に侵入す
ることがない。従って断熱容器の内底部に設けたヒータ
に内容物が付着することがなくなり、ヒータが故障する
おそれもなくなる。

【図面の簡単な説明】

第１図と第２図は本考案の第１実施例を示すもので、第
１図は断面図、第２図は平面略図、第３図は従来の調理
器具の一例を示す断面図、第４図は同調理器具の一部拡
大断面図、第５図ないし第７図は、従来の調理器具の他
の例を示すもので、第５図は要部拡大図、第６図は平面
図、第７図は断面図、第８図は従来の調理器具の第３の
例を示す断面図である。 19……電気ヒータ、20……断熱調理器具、21……断熱容
器、22……内部容器（内鍋）、22a……底板、23……フ
ランジ片、24……蓋体、25……内容器、26……外容器、
27……断熱部、33……本体部、34……フランジ部、39…
…断熱材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】断熱容器と、この断熱容器の内部に出入自
   在に収納されるガラスなどのセラミック製等の低熱伝導
   度の材料よりなる内部容器と、断熱構造の蓋体と、断熱
   容器の内底部に設けられた電気ヒータとを具備してな
   り、前記内部容器の上縁部に、前記断熱容器に対する内
   部容器の収納状態で断熱容器の開口部上縁で外方に延出
   するフランジ片を形成し、内部容器の底面に熱伝導性の
   良好な金属製の底板を固着するとともに、前記蓋体が、
   内部容器の開口部に嵌め込まれる本体部と、内部容器の
   フランジ片の上面に被着されるフランジ部と、本体部お
   よび周縁部の内部に充填された断熱材を具備してなるこ
   とを特徴とする電気加熱式断熱調理器具。