JPH0636242Y2 - 内燃機関用セラミツクス製タペツト - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は内燃機関用セラミックス製タペット、とくに
使用中にクラックが発生しないタペットに関する。

（従来の技術） 内燃機関用のタペットは有底円筒体で、その底部の上面
にプッシュロッドの一端が下面に動弁カムが当接して摺
動することから、とくに耐摩耗性に対して厳しい要請が
ある。そこでタペットの材質として、機械的強さ及び耐
摩耗性に優れかつ軽量であることから、セラミックスが
有望視されている。

セラミックス製のタペットとして実開昭61-137806号公
報には、上面にプッシュロッドの一端を収容する摺動球
面をそなえかつ下面に動弁カムが当接する摺動面をそな
えると共に、上記上面及び下面間の外周面に、断面形状
がなだらかな曲線状をなす環状溝をそなえたセラミック
ス製の底部材と、上記底部材を鋳包んで形成され上端が
開口したアルミニウム合金製の筒体とから構成されたも
のについて開示されている。

（考案が解決しようとする問題点） ところが該セラミックス製のタペットを内燃機関に適用
するに当り、その使用中に環状溝からプッシュロッドを
収容する摺動球面に又は環状溝間にわたってクラックが
発生することがあり、その改善が要望されていた。

そこでこの考案の目的は、使用中にクラックの発生しな
いセラミックス製タペットを提供することにある。

（問題点を解決するための手段） 考案者らは、使用中に環状溝と摺動球面との間で発生し
たクラックによって破壊に至ったセラミックス製タペッ
トの該クラックが、環状溝より発生していることを見い
出した。

この考案は上記知見に由来するものである。

すなわちこの考案は、上面にプッシュロッドの一端が収
容される摺動球面を、および下面に動弁カムが当接する
摺動面を有する円柱体に、その外周面から径方向外側に
突出する環状突起を周方向に形成したセラミックス製の
タペット本体と、上記環状突起に係合する金属筒体とか
らなることを特徴とする内燃機関用セラミックス製タペ
ットである。

（作用） セラミックス製のタペット本体と金属筒体の固着におい
てタペット本体の係止構造が凹状の環状溝である場合
は、環状溝のタペットの軸方向に引張応力が集中しかつ
カムやプッシュロッドの動作時にさらに環状溝に引張応
力が集中する。そこでこの考案に従うセラミックス製タ
ペットでは、タペット本体と金属筒体との係止構造を凸
状の環状突起にする事により環状突起に圧縮応力がかか
り、カムやプッシュロッドの動作時に発生する引張応力
を緩和させ、クラックの発生を回避する。

（実施例） 以下に、本考案の詳細な説明について、図面を参照して
行う。

第１図は、この考案に従うセラミックス製のタペットの
一具体例で、図中１はセラミックスの円柱からなるタペ
ット本体、２はプッシュロッドの下端部を受けとめる摺
動球面、３は動弁カムが当接する摺動面、４はタペット
本体１の胴周面に沿って形成した環状突起、５はタペッ
ト本体１に装着される金属筒体、６は環状突起４がはま
る環状溝、そして７は摺動球面２に装着されるプッシュ
ロッドである。

環状突起４は曲面で構成された凸部を所定の突出量でタ
ペット本体１の外周面にその円周方向へ連設してなり、
該環状突起４に金属筒体５の環状溝６をはめ込むことに
よってタペット本体１に金属筒体５を装着する。なおタ
ペット本体１の摺動面３は金属筒体５の底面より下方に
配置し、動弁カムと金属筒体５との接触を回避してい
る。

ここで環状突起４の突出量Ｌは、該環状突起４に係止さ
れる金属筒体５の肉厚ｔとの関係で、 0.05t≦Ｌ≦0.95t の範囲にすることが好ましい。

なぜなら環状突起の形成によってタペット本体における
クラックの発生は回避することができたが、突出量Ｌが
0.05tに満たないと使用中にタペット本体が金属筒体か
ら脱落し、一方0.95tをこえると金属筒体の環状溝にク
ラックが発生するからである。

又第２図、第３図及び第４図は本考案による他の具体例
である。

第２及び３図に示すタペットは環状突起４をタペット本
体１の軸方向に間隔をあけて２又は３段で形成してな
る。もちろんそれぞれの環状突起４の間隔が狭くてもと
くに環状突起４の基部における曲面は維持する必要があ
り、したがってタペット本体１の高さによって環状突起
４の形成段数は制約される。また第４図に示すように環
状突起の外周形状は連続曲線としたり、切欠きを備えた
非連続面としてもよい。

なお上記したセラミックス製タペットを内燃機関に適用
するに当り、タペット本体の材質としては窒化珪素、炭
化珪素、ジルコニアセラミックスが、又金属筒体の材質
としてはアルミニウム合金がそれぞれ有利に適合する。

次に第１図に示す形状のタペット本体を窒化珪素で作製
し、アルミニウム合金で鋳込みセラミックス製タペット
とした後、下記の要領でエンジン模擬テストを行った結
果について第１表に示す。なおタペット本体の大きさは
30mmφ、高さ10mmとし、環状突起量は0.2〜4.9mmの６種
類準備した。又アルミ合金筒体の肉厚は5mmとした。

試験方法 １）試験装置：リグ試験機（実機エンジンを模擬した試
験機） ２）試験条件:1700rpm（モーター駆動）プッシュロッド
荷重350kgf耐久時間200Hrまでとした 第１表に示す通り、セラミックス製のタペット本体の係
止部を環状突起にする事によりクラックの発生は全く認
められなかった。

（考案の効果） この考案によれば、使用中にクラックの発生しない優れ
た耐久性をそなえるセラミックス製タペットを提供で
き、よって内燃機関へのセラミックス製タペットの適用
を実現し得る。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第４図はセラミックス製タペットの説明図
である。 １…タペット本体、２…摺動球面 ３…摺動面、４…環状突起 ５…金属筒体、６…環状溝 ７…プッシュロッド、ｔ…金属筒体の肉厚

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】上面にプッシュロッドの一端が収容される
   摺動球面を、および下面に動弁カムが当接する摺動面を
   有する円柱体に、その外周面から径方向外側に突出する
   環状突起を周方向に形成したセラミックス製のタペット
   本体と、上記環状突起に係合する金属筒体とからなるこ
   とを特徴とする内燃機関用セラミックス製タペット。