JPH0634583Y2 - 直噴式ディ−ゼルエンジンの燃焼室 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室に係り、
特に主燃焼室に連通される予燃焼室をピストン頂部に設
けた直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室に関する。

［従来の技術］ ピストンの頂部を窪ませて、直噴式ディーゼルエンジン
の燃焼室を形成したものとして、Man−Ｍ型、トロイタ
ル型、リエントラント型等が知られているが、スワー
ル，スキッシュなどの燃焼室内の空気流動の安定化ある
いはデッドスペースの解消のために、燃焼室内に突起部
を設けた提案（実開昭55-73518号公報）がある。

第５図に示すように、この提案は、燃焼室ａ内の略中央
に棒状を呈する突起部ｂを立設させ、この燃焼室ａを区
画する壁面のうち、底面ｃの外周端部ｄから側面ｅまで
を適宜な曲率半径Ｒを有する円弧面で形成すると共に、
この側面ｅの上部を、その円弧に接する接線から成る面
で形成させたものである。

このように構成することによって、噴霧と空気との混合
が促進され、スモーク,HCの発生のない燃焼が得られる
こととなる。

一方、燃料を直接燃焼室に噴射せず、副燃焼室（予燃焼
室）に噴射する予燃焼室式ディーゼルエンジンも広く使
用されている。

第６図に示すように、従来この種のエンジンは、シリン
ダヘッドｆに、シリンダｇと小さな通路ｈにより連絡す
る予燃焼室ｉを形成し、燃焼噴射ノズルｊを予燃焼室ｉ
内に突出させて、燃料を噴射するようになっている。こ
の方式は、着火遅れがほとんどないので、急激な燃焼
（燃焼騒音）を防止させる等の特徴がある。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、上記提案にあっては、高速運転条件の下
（高負荷時）では、所望の空気混合が得られるが、低速
時またはアイドル時（低負荷時）においては、噴霧の貫
徹力（ペネトレーション）が悪く、空気との混合が不充
分となり、スモーク,HCを多量に排出する燃焼となって
しまうという問題があった。

これに対し、予燃焼室式においては、低速時にあって
も、噴霧は予燃焼室ｉ内で燃焼されてから、連絡孔ｈを
通ってシリンダｇ内に至るので、上記問題は発生しな
い。ただし、高速運転時における両方式を比較すると、
直噴式の有する高出力、低燃費の利点は大きく、これを
生かすような構成の燃焼室が望まれていた。

そこで、本考案は、上記事情に鑑み、低速運転時にあっ
てもスモーク,HCの発生が抑えられる直噴式ディーゼル
エンジンの燃焼室を提供すべく創案されたものである。

［問題点を解決するための手段］ 本考案は、ピストン頂部を窪ませて形成した主燃焼室の
略中央に突起部を設け、突起部に燃焼噴射ノズルに臨む
予燃焼室を形成し、予燃焼室と主燃焼室との間に、高速
運転時の燃料噴射ノズルの噴射方向に一致するピストン
半径方向の連絡孔を設けたものである。

［作用］ 高速運転（高負荷）時において、連絡孔は、燃料噴射ノ
ズルからの噴霧を主燃焼室へ導く。主燃焼室はこの噴霧
を着火させ燃焼させる。この時、突起部は所定の空気流
動を発生させて、空気との混合を促進させる。低速運転
（低負荷）時においては、噴霧は予燃焼室へ噴霧され、
着火される。

その後火炎およびガスは連絡孔を通って主燃焼室へ入
り、燃焼が完了される。

［実施例］ 以下、本考案の実施例を添付図面に従って説明する。

第１図および第２図は、本考案に係る直噴式ディーゼル
エンジンの燃焼室の一実施例を示したものであり、ピス
トン１の頂部２を窪ませて形成された主燃焼室３に、公
知の突起部４を設け、この突起部４に予燃焼室５を形成
してある。そして予燃焼室５と主燃焼室３との間には、
これらを連絡すべくピストン半径方向に形成された連絡
孔６が設けられている。

主燃焼室３は、その底面７および外側面８が、噴霧Ａを
所定の状態に拡散させ得るような曲線を呈していると共
に、その略中央に立設されている突起部４によりその内
側が区画され、上方からみて円環状に形成されている。

予燃焼室５は、突起部４の上方に設けられた燃料噴射ノ
ズル９に臨んで、略球形を呈して設けられているととも
に、その上部開口部10が、スキッシュの発生を促進させ
るように、且つ噴射ノズル９の先端側が予燃焼室５内に
進入し得るように、適宜絞られて形成されている。ま
た、予燃焼室５は、低速運転時にあって、従来の予燃焼
室式デイーゼルエンジンの副室と同様に、燃料噴射ノズ
ル９からの噴霧Ａを受けてこれを燃焼させるような形状
と容積を有している。

連絡孔６は、本実施例にあっては、燃料噴射ノズル９に
備えられた噴孔11の数に一致する４個形成されており、
上方からみて中央から放射状に、噴孔11に臨んで位置さ
れている。またその鉛直方向位置は、実質的に予燃焼室
５と主燃焼室３とを隔てる突起部４の隔壁12の中位から
高位にかけて形成されている。この位置は、高速運転時
にあって、所定タイミングで、即ちピストン１が復動上
死点Ｌ直前まで上昇してきた時に噴射されるようになっ
ている噴霧Ａを、主燃焼室３の外側面８まで導くよう
に、その噴射中の噴孔移動範囲に合致されている。従っ
て連絡孔６は、側方からみて適宜な巾を有する縦長状を
呈して成されている。さらに、連絡孔６の下端は、低速
運転時の噴射タイミングであるピストン１の上死点Ｌ到
達時に、噴霧Ａが連絡孔６内に入らないように、その噴
射位置より上方に位置されている。

次に本実施例の作用を説明する。

エンジンの高速運転時にあっては、燃料の噴射ノズル９
は、ピストン１が上死点Ｌに到達する前に、燃料を噴射
する。噴射された燃料は、霧状となって連絡孔６を通
り、主燃焼室３の外側面８に当り、適宜拡散されて圧縮
された空気と混合し、燃焼される。このとき突起部４
は、安定なスワール，スキッシュを発生させて、混合を
促進する。

第３図に示すように、低速運転時にあっては、燃料噴射
ノズル９はピストン１がほぼ上死点Ｌに至ったときに、
燃料を噴射する。噴霧Ａは、予燃焼室５内に噴射され、
着火される。そして予燃焼室５内の圧力が、燃焼により
上昇すると、第４図に示すように、火炎および燃焼ガス
は、連絡孔６から主燃焼室３へ矢印Ｂで示すように流入
し、燃焼が完了される。即ち、従来の予燃焼室式ディー
ゼルエンジンと同様に作用する。

このように、低速運転時には予燃焼室内で着火されるの
で、公知の低騒音および低HC、低スモークの燃焼が得ら
れる。また、高速運転時には、主燃焼室内に直接噴射さ
れるので、低燃費，高出力が得られる。さらに本考案の
予燃焼室は、ピストン頂部に設けられているので、シリ
ンダヘッドの冷却水による熱損失がなく、始動性が悪く
なることはない。

なお、本実施例にあっては、予燃焼室は球形状に成され
ているが、低速時に噴霧を適宜着火させ得るものであれ
ば他の形状であっても構わない。そして第１図あるいは
第３図中、燃料噴射ノズルからの噴射方向は、略水平と
なっているが、低速的において確実に予燃焼室内へ噴射
されるように、その時の噴射方向をやや下向きに形成し
てもよい。また、この時の噴射量は、予燃焼室の容積に
応じて調整し、燃焼過剰供給によるHC発生等に対処する
ことも考案えられる。

［考案の効果］ 以上要するに本考案によれば、次のような優れた効果を
発揮する。

主燃焼室に設けた突起部に高速運転（高負荷）時にのみ
噴霧を主燃焼室へ導く連絡孔を有した予燃焼室を形成し
たので、高速時に直噴式の、また低速時には予燃焼室式
の燃焼室として機能することにより、運転条件にかかわ
りなく低スモーク，低HC,低騒音の燃焼となる直噴式デ
ィーゼルエンジンを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案に係る直噴式ディーゼルエンジンの燃
焼室の一実施例を示した縦断面図、第２図はその平面
図、第３図および第４図はその作用を示した縦断面図、
第５図は従来の直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室を示
した縦断面図、第６図は従来の予燃焼室式ディーゼルエ
ンジンの燃焼室を示した縦断面図である。 図中、２はピストン頂部、３は主燃焼室、４は突起部、
５は予燃焼室、６は連絡孔、９は燃料噴射ノズルであ
る。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ピストン頂部を窪ませて形成した主燃焼室
   の略中央に突起部を設け、該突起部に燃料噴射ノズルに
   臨む予燃焼室を形成し、該予燃焼室と上記主燃焼室との
   間に、高速運転時の上記燃料噴射ノズルの噴射方向に一
   致するピストン半径方向の連絡孔を設けたことを特徴と
   する直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室。
2. 【請求項２】上記予燃焼室が、略球形に成形された上記
   実用新案登録請求の範囲第１項に記載の直噴式ディーゼ
   ルエンジンの燃焼室。