JPH06271968A - しごき加工性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

しごき加工性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法

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JPH06271968A
JPH06271968A JP8521793A JP8521793A JPH06271968A JP H06271968 A JPH06271968 A JP H06271968A JP 8521793 A JP8521793 A JP 8521793A JP 8521793 A JP8521793 A JP 8521793A JP H06271968 A JPH06271968 A JP H06271968A
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JP
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aluminum alloy
annealing
rolling
alloy sheet
cold rolling
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JP8521793A
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English (en)
Inventor
Akira Tajiri
彰 田尻
Shinji Teruda
伸二 照田
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Sky Aluminium Co Ltd
Original Assignee
Sky Aluminium Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Mg:0.5〜2.0%、Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.7%、S
i:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%と、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0
001〜0.05%と、Cr:0.01〜0.3%、Zn:0.05〜0.5%の1種以上
からなるアルミニウム合金を250℃以上で焼鈍し10〜50%
の冷間圧延を行い到達温度500℃以上、400℃以上の時間
が10分以内の焼鈍をし40%以上の冷間圧延を施し合金板
表面の5μm以上の晶出物が500個/mm2 以上存在し、結晶
粒短径の最大径が30〜200μm、Raが0.1〜0.50μm、油性
皮膜が50〜500mg/m2、引張強さと耐力の平均値(TS+YS)/
2≦305N/mm2 であるアルミニウム合金板。 【効果】 強度があり、成形性が良好で、しかもゴーリ
ング等の表面欠陥が無く、かつ缶切れの発生しないDI
缶胴材に適するしごき加工性に優れたアルミニウム合金
板を容易にかつ安定して提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2ピースアルミニウム
缶の缶胴材すなわちDI缶胴材として用いられるAl−
Mn系アルミニウム合金硬質板に係り、DI成形時のし
ごき成形性に優れたアルミニウム合金板およびその製法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にDI缶胴材のようにしごき加工が
加わる場合、エマルジョンタイプの潤滑剤を用いて加工
を行うが、それだけでは潤滑能が不足してゴーリングと
呼ばれる擦り疵や焼付きなどの外観不良が発生すること
がある。しごき加工時のゴーリングの発生に対しては、
DI成形の前段階でリオイルのようにDIクーラントの
原液を塗布して潤滑性を良くしたり、DI成形加工時に
用いるエマルジョンタイプの潤滑油の種類・配合を種々
変えて改善を図っており、またその他の方法として材料
表面の粗度を変更して保油性を向上させることも提案さ
れている。また素材の特性においても、アルミニウム合
金板表面に比較的粗大な晶出化合物を存在させることに
より、固体潤滑性能を持たせ、また晶出化合物近傍の空
隙での保油性を向上し、さらにはしごきダイスのセルフ
クリーニング効果等によりゴーリング性を向上させる効
果がある。特にJIS3004アルミニウム合金は比較
的強度が高く成形性にも優れているとともにしごき加工
時の加工硬化が比較的小さくまたAl−Mn−Fe系晶
出化合物が多数晶出することから、晶出化合物の適当な
分散量と大きさが得られればゴーリングの発生を少なく
することができ、このため従来よりDI缶胴材として多
く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したごとく、従来
の缶胴材にはAl−Mg−Mn系合金であるJIS30
04合金硬質板が広く用いられており、DI工程の深絞
り、再絞り、しごき成形等においては晶出化合物の適正
な分散、リオイルの塗布さらに表面粗度等を適当な状態
にすることでゴーリング等の表面欠陥の問題は少なくな
っているが、しかしながらDI成形時にPPMオーダー
ではあるが缶切れがおこる。特に近年は缶胴材の軽量化
のために薄肉化が進められており、このため缶側壁部も
薄くなり缶切れに対する感受性はますます高まってお
り、よりしごき加工性に優れたアルミニウム合金板が求
められている。
【0004】本発明は、以上の事情を背景としてなされ
たもので、強度があり、成形性が良好で、しかもゴーリ
ング等の表面欠陥が無く、かつ缶切れの発生しないDI
缶胴材に適するしごき加工性に優れたアルミニウム合金
板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明者らは化学成分組成、組織等の特性並びに製
造条件等について総合的に研究を重ね鋭意検討した結
果、本発明を成すに至った。すなわち本発明は、
【0006】重量%でMg:0.5〜2.0%、Mn:
0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.7%、Si:
0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%を含有
し、かつTi:0.005〜0.20%を単独でもしく
はB:0.0001〜0.05%と組み合わせて含有
し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、合金板
表面に5μm以上の晶出物が500個/mm2 以上存在
し、結晶粒短径の最大径が30〜200μm、表面粗度
(Ra)が0.1〜0.50μm、油性皮膜が50〜5
00mg/m2 、引張強さと耐力の平均値(TS+Y
S)/2≦305N/mm2 であることを特徴とするし
ごき加工性に優れたアルミニウム合金板であり、
【0007】重量%で、Mg:0.5〜2.0%、M
n:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.7%、S
i:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%を
含有し、かつTi:0.005〜0.20%を単独でも
しくはB:0.0001〜0.05%と組み合わせて含
有し、更にCr:0.01〜0.3%、Zn:0.05
〜0.5%のうちの1種または2種以上を含み、残部が
Alおよび不可避的不純物からなり、合金板表面に5μ
m以上の晶出物が500個/mm2 以上存在し、結晶粒
短径の最大径が30〜200μm、表面粗度(Ra)が
0.1〜0.50μm、油性皮膜が50〜500mg/
2 、引張強さと耐力の平均値(TS+YS)/2≦3
05N/mm2 であることを特徴とするしごき加工性に
優れたアルミニウム合金板であり、
【0008】上記の化学成分を有するアルミニウム合金
を、常法により鋳造し、加熱および熱間圧延後、必要に
応じて冷間圧延を施し、250℃以上の温度で焼鈍し、
その後10〜50%の圧延率で冷間圧延を行い、次いで
到達温度500℃以上、400℃以上に曝される時間が
10分以内とする焼鈍を行い、その後圧延率40%以上
の冷間圧延を施し、最終合金板において合金板表面の5
μm以上の晶出物が500個/mm2 以上存在し、結晶
粒短径の最大径が30〜200μm、表面粗度(Ra)
が0.1〜0.50μm、油性皮膜が50〜500mg
/m2 、引張強さと耐力の平均値(TS+YS)/2≦
305N/mm2 であることを特徴とするしごき加工性
に優れたアルミニウム合金板の製造方法である。
【0009】
【作用】以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0010】まず、本発明における化学成分の限定理由
について説明する。
【0011】◆Mg:MgはSi・Cuとの共存により
Mg2SiあるいはAl−Cu−Mgの時効析出により
強度向上に寄与し、またMg単独でも固溶体強化により
強度向上に効果がある。このように強度向上には不可欠
な元素であるが、Mg量が0.5%未満ではその効果が
少なく十分な強度が得られず、2.0%を超えて添加し
た場合には絞り成形性の点では問題がないが加工硬化し
やすくなるために再絞り性やしごき性を悪くしDI時の
缶切れの発生確率が高くなる。したがって、Mg量は
0.5〜2.0%の範囲とする。
【0012】◆Mn:Mnは強度向上に寄与するととも
に成形性向上に有効な元素である。特に本発明が目指す
用途である缶胴材では、粗大なMn系晶出物による固体
潤滑的効果によりDI成形時にしごき成形性が向上する
ためにとりわけ重要となる。また本発明材のようなN値
の小さい材料においては、積層欠陥エネルギーが高い状
態では粗大な晶出物近傍において加工時に転位が集中し
やすく、このため加工が進むと転位が整理される現象い
わゆる加工軟化現象が起り、このためにもMn添加は重
要である。Mn量が0.5%未満では、Mn晶出物の晶
出量が少なく、分布もまばらなため固体潤滑的な効果が
得られず、1.8%を超えて添加されるとMnAl6
初晶巨大金属間化合物が晶出し、成形性を著しく損う。
したがって、Mn量は0.5〜1.8%とする。
【0013】◆Fe:FeはMnの晶出や析出を促進
し、アルミニウムマトリックス中のMnの固溶量やMn
系不溶性化合物の分散状態を制御するために必要な元素
である。適正状態を得る必要条件はMn添加量に応じた
Feの添加であり、本発明のMn量に対してはFe量が
0.1%未満では適正な化合物分散状態を得ることが難
しく、一方Fe量が0.7%を超えて添加されると、M
nとともに初晶巨大化合物を生成しやすくなり成形性を
著しく損う。したがって、Fe量は0.1〜0.7%と
する。
【0014】◆Si:SiはFeと同様にMnの晶出や
析出を促進し、アルミニウムマトリックス中の固溶量や
Mn−Fe系不溶性化合物の分散状態を制御するために
必要な元素である。適正な化合物分散状態を得るために
はMn、Fe添加量に応じてSiを添加することが必要
である。またMgと共に存在する場合は中間焼鈍を施し
て溶体化効果をもたらすことによりMg2 Si系化合物
の析出に基づく時効硬化による強度向上を望むことがで
きる。Si量が0.05%未満ではその効果が得られ
ず、0.5%を超えて添加すると不溶性化合物の分散状
態を制御する効果は飽和してしまい、さらに本発明のよ
うにMgとSiが共存する場合には時効硬化は容易に得
られるものの材料が硬くなりすぎてしまい成形性を阻害
する。したがってSi量は0.05〜0.5%の範囲と
する。
【0015】◆Cu:Cuは塗装焼付処理時のAl−C
u−Mg系析出物の析出過程で起る時効硬化を利用して
強度向上に寄与する元素である。Cu量が0.05%未
満ではその効果は得られず、一方0.5%を超えて添加
した場合は時効硬化は容易に得られるものの硬くなりす
ぎて成形性を阻害する。したがって、Cu量は0.05
〜0.5%の範囲とする。
【0016】◆Ti、B:通常のアルミニウム合金にお
いては、鋳塊結晶粒の微細化・安定化のためにTi及び
Bを微量添加することが行われており、本発明において
もTiを単独であるいはBとともに添加する。Ti量が
0.005%未満ではその効果が得られず、また0.2
0%を超えると初晶TiAl3が晶出して成形性を阻害
する。したがってTi量は0.005〜0.20%の範
囲とする。またTiと共にBを添加するとこの効果が向
上する。ただしBを添加する場合、0.0001%未満
ではその効果がなく、0.05%を超えてはTiB2
粗大粒子が混入して成形性を害する。したがって、B量
は0.0001〜0.05%の範囲とする。
【0017】◆Cr,Znはいずれも強度向上に寄与す
る元素であり、必要に応じてこれらのうちから選ばれた
1種または2種以上が添加される。これらの元素につい
てさらに説明する。
【0018】◆Cr:Crの添加は強度向上及び結晶粒
微細化に大きな効果を示す。しかしCr量が0.01%
未満ではその効果が少なく、0.3%を超えて過多に添
加されると巨大晶出物の生成および晶出物数の増大が起
こり曲げ性の低下を招くため好ましくない。したがっ
て、Cr量は0.01〜0.3%の範囲とする。
【0019】◆Zn:Znの添加はMgの添加とともに
Mg2Zn3Al2 の時効析出により強度向上に寄与し、
また単独でも若干の固溶強化も望める。添加する場合に
はZn量が0.05%未満ではその効果はなく、0.5
%を超えて添加されると強度への寄与については問題な
いが耐食性を劣化させるため、この値以下に規制する必
要がある。したがって、Zn量は0.05〜0.5%の
範囲とする。
【0020】◆本発明においては上記成分を必須成分な
らびに選択成分とし残部はAlとすれば足りるが、本発
明の効果を損なわない限度において他の合金成分を必要
に応じて添加し、あるいは不可避不純物として含有する
ことが許容される。例えば、
【0021】◆Zrは組織を微細安定化させるために有
効な元素であるものの、その添加量が多いと巨大化合物
を生成し曲げ加工性等の成形性を低下させるが0.2%
以下であるならば許容される。
【0022】◆Vは多くなると成形性が劣るため0.2
%以下であるならば許容される。
【0023】◆Be,Na,Kは各々0.001%以下
であれば支障が無い。
【0024】次に本発明における組織等の限定理由につ
いて説明する。
【0025】◆缶切れはゴーリングや潤滑不良さらに変
形抵抗の大きな材料の場合におきやすいが、アルミニウ
ム合金板中に比較的粗大な晶出化合物が存在することに
より、固体潤滑性の付与、晶出化合物近傍の空隙による
保油性の向上、さらには晶出物粒子によるシゴキダイス
のセルフクリーニング等の効果が得られ、缶切れを防止
することができる。特にこれらの特性のうち、セルフク
リーニング効果が缶切れ防止に大きく影響しており、そ
の効果を最も良く引き出すためには粒子サイズが5μm
以上で、かつその分散は500個/mm2 以上存在する
ことが必要である。
【0026】◆結晶粒が粗大化すると深絞り成形時に肌
荒れが生じてしごき成形時に潤滑油のなじみを良くす
る。しかしながら板表面での結晶粒短径の最大径が30
μm以上ないとこの効果がなく、また200μmを超え
ると肌荒れが大きくなりすぎてしまいDI成形缶におい
て外観を損ねる。従って結晶粒の大きさとしては結晶粒
短径の最大径が30〜200μmとする。
【0027】◆また缶胴材のように冷間圧延により仕上
げられる材料ではDI成形用の潤滑油をあらかじめ板表
面に塗油してなじませておくこと(リオイル)によりD
I成形時の潤滑性が向上する。油性皮膜の量が50mg
/m2 未満ではその効果が少なく、また500mg/m
2 を超えて塗油すると油が垂れ流れて板表面に均一に保
油させておくことが難しくなる。従って油性皮膜の量と
しては50〜500mg/m2 が適正である。
【0028】◆表面粗度については、油性皮膜を板表面
に保持しておくために必要であり、Raが0.1μm未
満ではその効果がなく、0.5μmを超えるとDI成形
時のしごき加工において保油性は向上するが表面の凹凸
が深くなりすぎて加工後にも消去できず成形後に圧延方
向に沿った外観不良を起こすことがある。従って表面粗
度はRa=0.1〜0.5μmとする。
【0029】◆次に元板強度については、0.3mm板
厚の缶胴材について深絞り(カッピング)、再絞り、2
5%しごき成形をした後、さらに54.4%のしごき成
形する限界のしごき率近傍での成形時の成功率と変形抵
抗を示す(TS+YS)/2の値との関係を図1に示
す。この結果、ばらつきはあるものの(TS+YS)/
2の値が305N/mm2 より大きくなるとDI成形の
成功率は下がってくる。従って(TS+YS)/2≦3
05N/mm2 であることが必要である。
【0030】次に本発明における製造プロセスについて
説明する。
【0031】◆鋳造:鋳造法としては鋳造厚20mm以
上で凝固界面の移動速度が0.02〜0.5m/min
以下の条件であれば本発明の合金成分において所望の晶
出物分布が得られるが、特にこの条件に限定されるもの
では無く上述した組織要件等を満たすものであれば良
く、またその方法としてはDC鋳造でも連続鋳造圧延で
も良い。
【0032】◆均熱・加熱:500〜620℃の到達温
度保持とすれば次工程の圧延性に支障は無く、さらにM
n等の遷移元素のアルミニウムマトリックス中への固溶
量やMn−Fe系不溶性化合物の分散状態を制御するこ
とができる。なお保持時間は2〜20時間が好ましい
が、特にこれに限定されるものではない。
【0033】◆熱間圧延:圧延性、コイルアップ性その
他を考慮すると熱間圧延温度は200〜600℃で行う
ことが望ましく、また上り板厚は巻取性等を考慮すると
6mm以下が好ましい。
【0034】◆冷間圧延:必要に応じて、熱間圧延上り
板厚から所要の板厚となるまで冷間圧延を施す。
【0035】◆中間焼鈍1:ここで行う中間焼鈍は圧延
組織の再結晶化を進行させて、続く軽圧下の冷間圧延と
それに続く焼鈍とによって完全再結晶をさせることによ
り結晶粒を粗大化することができる。それにより前述し
たようにしごき成形時の潤滑油のなじみを良くして成形
性を向上させることができる。またこの焼鈍によりアル
ミニウム合金板表面にMgの薄い酸化膜を生成させ、そ
の結果、潤滑性を向上させる効果がある。到達温度が2
50℃未満では再結晶化が不充分であり、また酸化膜の
生成も不均一となる。したがって、到達温度250℃以
上の温度で焼鈍することが必要である。具体的な焼鈍方
法は箱型焼鈍炉によるバッチタイプの焼鈍でも良いし、
CAL(連続焼鈍炉)のように加熱冷却速度の速い炉で
焼鈍しても良い。バッチタイプの場合には250℃以上
の到達温度で30分以上保持する。CALタイプの場合
には300℃以上の到達温度とし保持は無くても又設備
能力の許す範囲で保持しても良い。
【0036】◆冷間圧延:上記焼鈍後、10〜50%の
圧延率の軽圧下冷間圧延を施して軽い加工歪を導入し、
続く焼鈍工程で少ない結晶核を成長させて粗大な結晶粒
を得る。圧延率が10%未満では次工程の焼鈍での結晶
粒の粗大化の効果がなく、また1回目の焼鈍により得ら
れたMgの酸化皮膜の分断効果も無い。一方50%を超
えると加工歪が多く入りこのため結晶核が多くなり成長
速度も速くなりその結果小さな結晶粒が多数となり結晶
粒の粗大化が起こらず、また酸化皮膜が分断されすぎて
次工程の焼鈍時に適正な酸化皮膜が得られない。
【0037】◆中間焼鈍2:次いで、到達温度500℃
以上、400℃以上に曝される時間が10分以内の焼鈍
を行う。中間焼鈍1により得られた酸化皮膜を上記の冷
間圧延により分断することにより、ここでの中間焼鈍で
はそれを核として比較的粗大なサイズのMg酸化物を得
ることができ、この粗大酸化物がMn晶出物とともに相
俟って固体潤滑剤として作用し、しごき性をさらに向上
するものと考えられる。そのためには500℃以上の高
温に加熱処理することが必要である。ただし600℃を
超える温度では共晶融解による軟化・部分溶融等に基づ
き製造上の不都合が生じ、あるいは製品の外観を損なう
おそれがあるため、到達温度の上限は600℃とする。
また、400℃以上の温度範囲にある時間が10分以内
となるように保持を行う。これより長時間になると表面
の酸化皮膜の形成が板表面全体におよび、潤滑能は良く
なるが焼鈍終了後の冷間圧延性や製品の外観を損なう。
また、この条件による中間焼鈍ではCu・Mg・Si等
の合金元素の固溶が進み、溶体化効果による強度向上を
期待することができる。
【0038】◆冷間圧延:上記焼鈍後冷間圧延を施す
が、圧延率は40%以上ないと必要な強度が得られない
とともに、粗大に成長したMg酸化物の適切な分散状態
を得ることができない。従って圧延率40%以上で冷間
圧延を施す。
【0039】◆最終焼鈍:なお、上記冷間圧延後に必要
に応じて90〜250℃の範囲内の温度で最終焼鈍を施
しても良く、これにより絞り性、しごき性を向上させる
ことができる。
【0040】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。
【0041】表1に示す化学成分を有するアルミニウム
合金を用いて表2に示す製造方法により圧延、熱処理等
を行い試料を作成した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】表1に示す合金Aは本願発明の合金成分組
成を満たす発明合金である。一方合金Bは本願発明の合
金成分組成からはずれるものであり、従来より用いられ
ている5000系合金に相当するものである。
【0045】表2に製造条件を示してあるが、鋳造は全
てDC鋳造で行い、また均熱は全て600℃10時間で
行った。なお熱延、冷延の欄の温度の単位は℃、板厚の
単位はmm、冷延率の単位は%、焼鈍の欄は方法及び温
度×保持時間を示し、BAFはバッチ炉、CALは連続
焼鈍炉、また保持時間が0sとなっているのは温度到達
後直ちに(保持無しで)冷却に移ったことを示す。また
CALの加熱・冷却速度は約20℃/s、バッチ炉の加
熱・冷却速度は約35℃/hであった。
【0046】得られた試料について元板と塗装ベーキン
グ相当の熱処理後各々の引張強さ(TS:N/mm
2 )、耐力(YS:N/mm2 )、伸び(EL:%)を
調べ、組織観察で結晶粒短径の最大径(μm)と5μm
以上の晶出物の個数(個/mm2)、表面粗度Ra(μ
m)を調べた。また板表面の油性皮膜量(mg/m2
も測定した。また実際に深絞り、再絞り、25%しごき
成形をした後、さらに54.4%のしごき成形する限界
のしごき率近傍でしごき成形した時の成功率を調べ、ま
た成形後の外観についても目視で調べた。その結果を表
3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】No1は焼鈍をバッチ炉で1回しか行わ
ず、また(TS+YS)/2の値が本願発明の範囲から
はずれている比較例であり、DI成功率が極めて低く悪
い結果と成っている。
【0049】No2は同様に焼鈍をCALで1回しか行
わず、また結晶粒の大きさが 本願発明の範囲からはず
れている比較例であり、DI成功率が低く悪い結果と成
っている。
【0050】No3は1段目の中間焼鈍をバッチ炉で行
った発明例であり、DI成形の成功率は100%であ
り、かつ成形後の外観も良好であった。
【0051】No4は1段目の中間焼鈍をCALで行っ
た発明例であり、DI成形の成功率は100%であり、
かつ成形後の外観も良好であった。
【0052】No5は2段目の中間焼鈍温度が低い比較
例であり、適量のMg酸化物が得られないためにDI成
功率が低く、しかも外観も不良となっている。
【0053】No6は2段目の中間焼鈍が長時間とした
比較例であり、DI成功率は良いものの表面酸化物の量
が多くなりすぎてしまい外観不良が生じている。
【0054】No7は中間冷延を行っていない比較例で
あり、板表面のMg酸化物の分断が行われていないため
にDI成功率がやや低いものとなっている。
【0055】No8は中間冷延率が本願発明の範囲を超
える比較例であり、結晶粒径が小さくなりすぎてしまい
DI成功率が劣るものとなっている。
【0056】No9は焼鈍条件等はNo4と同じだが粗
度を本願発明の範囲より小さいものとした比較例であ
り、その結果DI成功率は極めて低くまたDI成形後の
外観も劣るものとなっている。
【0057】No10は焼鈍条件等はNo4と同じだが
粗度を本願発明の範囲より大きいものとした比較例であ
り、その結果DI成功率は極めて低くまたDI成形後の
外観も劣るものとなっている。
【0058】No11は焼鈍条件等はNo4と同じだが
油性皮膜量を本願発明の範囲から外れて0とした比較例
であり、その結果DI成功率は極めて低くまたDI成形
後の外観も劣るものとなっている。
【0059】No12は合金Bを用いて中間焼鈍を1回
とした比較例であり、その結果DI成形は成功せず成功
率は0であった。
【0060】以上の詳述した通り、発明例はいずれもD
I成功率が優れており、またDI成形後の外観も問題が
ないのに対して、比較例はいずれもDI成功率、DI成
形後の外観品質において劣った性能を示している。
【0061】
【効果】以上詳述したように本発明は次のような効果が
ある。
【0062】重量%でMg:0.5〜2.0%、Mn:
0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.7%、Si:
0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%を含有
し、かつTi:0.005〜0.20%を単独でもしく
はB:0.0001〜0.05%と組み合わせて含有
し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、合金板
表面に5μm以上の晶出物が500個/mm2 以上存在
し、結晶粒短径の最大径が30〜200μm、表面粗度
(Ra)が0.1〜0.50μm、油性皮膜が50〜5
00mg/m2 、引張強さと耐力の平均値(TS+Y
S)/2≦305N/mm2 であることを特徴とするこ
とにより、強度があり、成形性が良好で、しかもゴーリ
ング等の表面欠陥が無く、かつ缶切れの発生しないDI
缶胴材に適するしごき加工性に優れたアルミニウム合金
板を得ることができ、よって2ピースアルミニウム缶の
缶胴材すなわちDI缶胴材として用いるに好適なAl−
Mn系アルミニウム合金硬質板を提供することができ
る。
【0063】また重量%で、Mg:0.5〜2.0%、
Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜0.7%、S
i:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%を
含有し、かつTi:0.005〜0.20%を単独でも
しくはB:0.0001〜0.05%と組み合わせて含
有し、更にCr:0.01〜0.3%、Zn:0.05
〜0.5%のうちの1種または2種以上を含み、残部が
Alおよび不可避的不純物からなり、合金板表面に5μ
m以上の晶出物が500個/mm2 以上存在し、結晶粒
短径の最大径が30〜200μm、表面粗度(Ra)が
0.1〜0.50μm、油性皮膜が50〜500mg/
2 、引張強さと耐力の平均値(TS+YS)/2≦3
05N/mm2 であることを特徴とすることにより、強
度があり、成形性が良好で、しかもゴーリング等の表面
欠陥が無く、かつ缶切れの発生しないDI缶胴材に適す
るしごき加工性に優れたアルミニウム合金板を得ること
ができ、よって2ピースアルミニウム缶の缶胴材すなわ
ちDI缶胴材として用いるに好適なAl−Mn系アルミ
ニウム合金硬質板を提供することができる。
【0064】また上記の化学成分を有するアルミニウム
合金を、常法により鋳造し、加熱および熱間圧延後、必
要に応じて冷間圧延を施し、250℃以上の温度で焼鈍
し、その後10〜50%の圧延率で冷間圧延を行い、次
いで到達温度500℃以上、400℃以上に曝される時
間が10分以内とする焼鈍を行い、その後圧延率40%
以上の冷間圧延を施し、最終合金板において合金板表面
の5μm以上の晶出物が500個/mm2 以上存在し、
結晶粒短径の最大径が30〜200μm、表面粗度(R
a)が0.1〜0.50μm、油性皮膜が50〜500
mg/m2 、引張強さと耐力の平均値(TS+YS)/
2≦305N/mm2 であることを特徴とすることによ
り、強度があり、成形性が良好で、しかもゴーリング等
の表面欠陥が無く、かつ缶切れの発生しないDI缶胴材
に適するしごき加工性に優れたアルミニウム合金板を容
易にかつ安定して製造することができ、よって2ピース
アルミニウム缶の缶胴材すなわちDI缶胴材として用い
るに好適なAl−Mn系アルミニウム合金硬質板を提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (TS+YS)/2とDI成形成功率の実験
結果を示すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で(以下、同じ)、Mg:0.5
    〜2.0%、Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜
    0.7%、Si:0.05〜0.5%、Cu:0.05
    〜0.5%を含有し、かつTi:0.005〜0.20
    %を単独でもしくはB:0.0001〜0.05%と組
    み合わせて含有し、残部がAlおよび不可避的不純物か
    らなり、合金板表面に5μm以上の晶出物が500個/
    mm2以上存在し、結晶粒短径の最大径が30〜200
    μm、表面粗度(Ra)が0.1〜0.50μm、油性
    皮膜が50〜500mg/m2 、引張強さと耐力の平均
    値(TS+YS)/2≦305N/mm2 であることを
    特徴とするしごき加工性に優れたアルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 重量%で(以下、同じ)、Mg:0.5
    〜2.0%、Mn:0.5〜1.8%、Fe:0.1〜
    0.7%、Si:0.05〜0.5%、Cu:0.05
    〜0.5%を含有し、かつTi:0.005〜0.20
    %を単独でもしくはB:0.0001〜0.05%と組
    み合わせて含有し、更にCr:0.01〜0.3%、Z
    n:0.05〜0.5%のうちの1種または2種以上を
    含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、合金
    板表面に5μm以上の晶出物が500個/mm2 以上存
    在し、結晶粒短径の最大径が30〜200μm、表面粗
    度(Ra)が0.1〜0.50μm、油性皮膜が50〜
    500mg/m2 、引張強さと耐力の平均値(TS+Y
    S)/2≦305N/mm2 であることを特徴とするし
    ごき加工性に優れたアルミニウム合金板。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の化学成分
    を有するアルミニウム合金を、常法により鋳造し、加熱
    および熱間圧延後、必要に応じて冷間圧延を施し、25
    0℃以上の温度で焼鈍し、その後10〜50%の圧延率
    で冷間圧延を行い、次いで到達温度500℃以上、40
    0℃以上に曝される時間が10分以内とする焼鈍を行
    い、その後圧延率40%以上の冷間圧延を施し、最終合
    金板において合金板表面の5μm以上の晶出物が500
    個/mm2 以上存在し、結晶粒短径の最大径が30〜2
    00μm、表面粗度(Ra)が0.1〜0.50μm、
    油性皮膜が50〜500mg/m2 、引張強さと耐力の
    平均値(TS+YS)/2≦305N/mm2 であるこ
    とを特徴とするしごき加工性に優れたアルミニウム合金
    板の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006299330A (ja) * 2005-04-19 2006-11-02 Sumitomo Light Metal Ind Ltd ボトル缶胴用アルミニウム合金板
JP2012172192A (ja) * 2011-02-21 2012-09-10 Mitsubishi Alum Co Ltd 耳率が低い缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法および耳率が低いボトル型飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法

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