JPH0626163A - 電波吸収壁体及び電波吸収壁体用ユニット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 電波吸収体としてのフェライト板を壁本体に
固着するとともにタイル等表面化粧材を壁本体表面に張
付固定して電波吸収壁体を構築する場合において、平形
の表面化粧材を用いた場合にも充分な接着力で壁本体に
固着でき、タイルとして様々な種類のものを用いて自由
にタイル壁面を形成できるようにする。 【構成】 所定の電波吸収体１２を壁本体１０に固着す
るとともに、タイル等表面化粧材１４を該壁本体１０表
面に張付固定して成る電波吸収壁体において、表面化粧
材１４裏面の上記電波吸収体１２との非接触部分Ｓの占
める面積割合が全裏面面積に対して５０％以上となるよ
うに該表面化粧材１４を張付固定する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は電波吸収壁体及び電波
吸収壁体用ユニットに関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
高層建築物によるテレビ電波の反射障害、即ち高層建築
物の外壁によるテレビ電波の反射波とテレビ放送塔から
の直接波とが重合し、画面にゴーストを生ぜしめる問題
がクローズアップされており、その対策として高層建築
物の外壁体を電波吸収壁体として構成することが行われ
ている。

【０００３】かかる電波吸収壁体の構造については現在
まで様々なものが提案されている。図７はその一例を示
したものである。この構造例の場合、コンクリート製壁
本体１００の表層に電波吸収体としてのフェライト板１
０２を上下方向（厳密には磁界方向）に連続する状態
に、且つ横方向に所定の間隔を形成する状態で配列し、
固着している。

【０００４】ところで電波吸収体としてのフェライト板
１０２は比重が５程度と重く、しかもフェライト板１０
２はコンクリート等建築材とのなじみ性が悪いのに加え
て、熱膨張係数が建築材と異なっていることから、上記
構造のように単にフェライト板１０２を壁本体１００表
層に配列・固定しただけであると、フェライト板１０２
が壁本体１００から脱落する危険がある。

【０００５】またこの構造の場合、黒色のフェライト板
１０２が露出する状態となって壁面の美観が損なわれる
問題もある。

【０００６】このため、一般的には表面化粧材を壁本体
表面に張付固定し、この表面化粧材によってフェライト
板１０２を壁本体に押えつけるようにする。

【０００７】しかしながらこのようにした場合、表面化
粧材（例えば表面化粧タイル）のフェライト板との接触
部分がコンクリート等建築材（壁本体）と非接触状態と
なることから、例えば表面化粧材として平形状のタイル
を用いた場合、かかるタイルと壁本体との接触面積が少
なくなり（一般に１０〜２０％程度）、タイルの壁本体
への接着力が不足するといった問題が生ずる。

【０００８】そこで図７（Ｂ）に示しているように、左
右両端部に長い脚１０４を有する形態のタイル１０６を
用い、そのタイル１０６の脚１０４間の凹部１０８内に
フェライト板１０２を抱かせるようにして、タイル１０
６の脚１０４を壁本体１００内部に埋め込み、以てタイ
ル１０６の固定と同時にフェライト板１０２を壁本体１
００に固定するといった壁体構造が考えられている。

【０００９】しかしながらこの場合、タイルとして特殊
な形状のものが必要で、タイルの製造コスト，壁体の施
工コストが高いものとなる他、使用可能なタイルの形状
等が自ずと限定されてしまい、様々なバリエーションで
タイル壁面を自由に形成するといったことができなくな
る問題がある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本願の発明はこのような
課題を解決するためになされたものである。而して本願
の発明は、所定の電波吸収体を壁本体に固着するととも
にタイル等表面化粧材を該壁本体表面に張付固定して成
る電波吸収壁体において、前記表面化粧材裏面の前記電
波吸収体との非接触部分の占める面積割合が全裏面面積
に対して５０％以上となる状態で該表面化粧材を張付固
定したことを特徴とする（請求項１）。

【００１１】本願の別の発明は、壁本体に固着される電
波吸収体と該壁本体の表面に張付固定されるタイル等表
面化粧材とを一体のユニットと成し、且つ該表面化粧材
裏面の該電波吸収体との非接触部分の占める面積割合を
全裏面面積に対して５０％以上と成したことを特徴とす
る（請求項２）。

【００１２】本願の更に別の発明は、前記電波吸収体と
前記表面化粧材とをコンクリート基板にて連結一体化し
てパネル状化するとともに、該表面化粧材を裏面におい
て該コンクリート基板に張付固定したことを特徴とする
（請求項３）。

【００１３】

【作用及び発明の効果】上記のように請求項１の発明
は、タイル等表面化粧材を壁本体表面に張付固定するに
際して、電波吸収体との非接触部分の面積割合が全裏面
面積に対して５０％以上（望ましくは７０％以上）とな
る状態で張付固定するものである。

【００１４】一般にタイル等表面化粧材を壁本体表面に
張付固定したとき、表面化粧材と壁本体との接着強度は
６ｋｇｆ／ｃｍ²程度必要とされている。そこで本発明
者は表面化粧材を壁本体に張付固定した場合において、
表面化粧材裏面と壁本体との接触面積（接着面積）と接
着強度との関係を調べるべく、大きさ４５×９０ｍｍの
タイルを用い、その裏面の開放面積（フェライト板との
非接触部分の面積）が種々異なる様にフェライト板を配
置してタイル裏面にコンクリート打設を行い、壁体を構
築して、その壁体におけるタイルの接着強度を測定した
ところ表１の如き結果が得られた。

【００１５】

【表１】

【００１６】即ち表面化粧材裏面の電波吸収体との非接
触部分の面積を５０％以上とするならば、充分な接着強
度が得られることが判明した。換言すれば、この条件を
満たすようにすれば平形状のタイル等表面化粧材を用い
ても充分な接着強度が得られるのであり、而してこのよ
うな平形状タイルを用いることができれば、電波吸収壁
体の構築に際して特殊なタイルを使用しなくても良くな
り、タイル製造コスト，電波吸収壁体の施工コストを安
価となし得るとともに、様々なバリエーションでタイル
壁面を自由に形成できるようになる。

【００１７】請求項２の発明は、電波吸収体と表面化粧
材とを一体のユニットと成すようにしたもので、このよ
うにすると電波吸収壁体の施工が容易となるとともに、
ユニットの工場生産段階で表面化粧材と電波吸収体との
相対位置を予め正確に定め、固定しておくことが可能と
なり、ひいては表面化粧材裏面の電波吸収体に対する非
接触部分の面積を設定面積に正確に一致させておくこと
ができる。

【００１８】請求項３の発明は、表面化粧材と電波吸収
体とをコンクリート基板にて連結一体化してパネル状の
ユニットと成したものである。このコンクリート基板
は、壁体構成時に壁本体の一部と成すことができ、この
場合ユニットの工場生産段階で予め表面化粧材を実際の
電波吸収壁体の構築時と同じ状態に配列し、固定してお
くことができる利点が得られる。

【００１９】

【実施例】次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく
説明する。図１は電波吸収壁体の一例を示したもので、
図に示しているようにこの電波吸収壁体は、コンクリー
トから成る壁本体１０の表面側に電波吸収体としてのフ
ェライト板１２を埋込状態に固着した上、壁本体１０の
表面に表面化粧材としての平形状のタイル１４を張付固
定して構築したものである。

【００２０】１６は壁本体１０の内部に埋設された配筋
で、ここでは配筋１６が電波反射体を兼ねている。但し
配筋とは別に電波反射体を設けることも勿論可能であ
る。

【００２１】この例では、タイル１４がその裏面の一部
をフェライト板１２に接触させる状態で壁本体１０に固
定されており、そしてフェライト板１２との非接触部分
Ｓにおいて壁本体１０と接着されている。この例におい
て、タイル１４裏面のフェライト板１２との非接触部分
Ｓの面積は、タイル１４の全裏面面積に対して７５％以
上（フェライト板１２をタイル１４裏面に投影したとき
の投影面積が２５％未満）とされている。このためタイ
ル１４は充分な接着強度でもって壁本体１０に固定さ
れ、壁本体１０から脱落する恐れがない。

【００２２】本例によれば平形状のタイル１４を通常の
タイル張付けの場合と同様の方法で壁本体１０に張付施
工でき、しかも様々なバリエーションでタイル壁面を構
成することができる。

【００２３】図２は電波吸収壁体用ユニットの一例を示
している。この例のユニット１８は、大型タイル（大き
さ６００ｍｍ角のタイル）２０の裏面にフェライト板１
２を配列した上、所定厚み（厚み２０ｍｍ程度）のコン
クリート基板２２にてこれらタイル２０，フェライト板
１２を連結一体化し、更にそれらの後側に電波反射体２
４を配置して、これをフェライト板１２の各後端部に固
定したものである。

【００２４】電波反射体２４は、フェライト板１２の連
続方向（図Ａ中上下方向）と直角方向に延びる導電性金
属棒２６とこれと直角方向に延びる断面コ字形状の導電
金属製の固定バー２８とから成るメッシュ状のもので、
固定バー２８のコ字形状の溝の内部に各フェライト板１
２の後端部が嵌まり込んでいる。

【００２５】この例において、大型タイル２０における
裏面のフェライト板１２との非接触部分Ｓの面積は、全
裏面の面積の７０％以上とされており、かかる大型タイ
ル２０がコンクリート基板２２に強固に接着されてい
る。

【００２６】図３はこのユニット１８を用いて電波吸収
壁体を構築した場合の例を示している。この電波吸収壁
体は、上記ユニット１８の後側に配筋１６を施した状態
でコンクリートを打設することにより容易に構築するこ
とができる。

【００２７】図４は小型のタイル（例えば大きさが５０
ｍｍ角）３０とフェライト板１２とをコンクリート基板
２２にて連結一体化して成るユニット３２を用いて電波
吸収壁体を構築した場合の例を示したもので、この例に
おいても電波吸収壁体を容易に構築することができる。

【００２８】ここでタイル３０における裏面のフェライ
ト板１２との非接触部分Ｓの面積、つまりコンクリート
基板２２との接着面積は、全裏面面積に対して８０％以
上とされており、タイル３０が強固にコンクリート基板
２２に固着されている。

【００２９】図５及び図６は上記ユニット１８，３２を
用いて電波吸収壁体を乾式施工した場合の例を示したも
ので、図示の様にこれらの例では、各ユニット１８，３
２をアンカーボルト３４，連結金具３６，３８，締結ボ
ルト４０にて躯体４２に固定し、また位置決ピン４４に
て各タイル２０，３０の位置出しを行い、電波吸収壁体
を構築している。

【００３０】以上本発明の実施例を詳述したがこれらは
あくまで一例示であり、本発明は表面化粧材として石材
その他材質のものを用いることも可能であるし、表面化
粧材と電波吸収体とが若干離れた状態に電波吸収壁体を
構築する場合にも本発明の適用が可能である。

【００３１】更に表面化粧材として大型のタイル等建材
を用い、これを乾式工法で躯体に固定して電波吸収壁体
を構築するに際し、場合により建材裏面を壁本体に接着
しない場合にも適用可能である等、本発明はその主旨を
逸脱しない範囲において、当業者の知識に基づき様々な
変更を加えた形態で構成可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の電波吸収壁体の一実施例の図である。

【図２】本発明の電波吸収壁体用ユニットの一実施例の
図である。

【図３】図２のユニットを用いて構築した電波吸収壁体
の図である。

【図４】図２とは異なったユニットを用いて構築した電
波吸収壁体の図である。

【図５】図２のユニットを用いて電波吸収壁体を乾式工
法で構築した場合の図である。

【図６】図３のユニットを用いて電波吸収壁体を乾式工
法で構築した場合の図である。

【図７】本発明の背景説明のための説明図である。

【符号の説明】

１０ 壁本体 １２ フェライト板 １４，２０，３０ タイル １８，３２ ユニット ２２ コンクリート基板

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 所定の電波吸収体を壁本体に固着すると
   ともにタイル等表面化粧材を該壁本体表面に張付固定し
   て成る電波吸収壁体において、 前記表面化粧材裏面の前記電波吸収体との非接触部分の
   占める面積割合が全裏面面積に対して５０％以上となる
   状態で該表面化粧材を張付固定したことを特徴とする電
   波吸収壁体。
2. 【請求項２】 壁本体に固着される電波吸収体と該壁本
   体の表面に張付固定されるタイル等表面化粧材とを一体
   のユニットと成し、且つ該表面化粧材裏面の該電波吸収
   体との非接触部分の占める面積割合を全裏面面積に対し
   て５０％以上と成したことを特徴とする電波吸収壁体用
   ユニット。
3. 【請求項３】 前記電波吸収体と前記表面化粧材とをコ
   ンクリート基板にて連結一体化してパネル状化するとと
   もに、該表面化粧材を裏面において該コンクリート基板
   に張付固定したことを特徴とする請求項２に記載の電波
   吸収壁体用ユニット。