JPH06150418A - 光磁気記録媒体および記録再生方法 - Google Patents

光磁気記録媒体および記録再生方法

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JPH06150418A
JPH06150418A JP4297423A JP29742392A JPH06150418A JP H06150418 A JPH06150418 A JP H06150418A JP 4297423 A JP4297423 A JP 4297423A JP 29742392 A JP29742392 A JP 29742392A JP H06150418 A JPH06150418 A JP H06150418A
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layer
recording
magneto
magnetization
substrate
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JP4297423A
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Inventor
Yoshiteru Murakami
善照 村上
Junji Hirokane
順司 広兼
Junichiro Nakayama
純一郎 中山
Junsaku Nakajima
淳策 中嶋
Akira Takahashi
明 高橋
Kenji Ota
賢司 太田
Naoyasu Iketani
直泰 池谷
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Original Assignee
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 透光性のある基板1と、基板1上に形成さ
れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、
情報を光磁気記録する記録層4とを有しており、上記読
み出し層3がGdFeCoである光磁気記録媒体。 【効果】 従来より小さい記録ビットの再生を行うこと
が可能になり、記録密度が著しく向上する。しかも、G
dFeCoを採用することにより、再生時の雑音が小さ
くなるため、より高密度な記録を行うことが可能な光磁
気ディスクを提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光磁気記録装置に適用
される光磁気ディスク、光磁気テープ、光磁気カード等
の光磁気記録媒体及び、光磁気記録媒体の記録再生方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光磁気ディスクは、書き換え可能な光デ
ィスクとして研究開発が進められており、その一部は既
に、コンピューター用の外部メモリーとして実用化がな
されている。
【0003】光磁気ディスクは、記録媒体として垂直磁
化膜を用い、光を利用して記録再生を行うため、面内磁
化膜を用いたフロッピーディスクあるいはハードディス
クに比べて、大記録容量を実現できる。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記
従来の構成では、光磁気ディスクの記録密度が、記録再
生に使用される光ビームの記録媒体上での大きさに依存
するため、今まで以上に記憶容量を大きくできないとい
う問題点を有している。
【0005】つまり、記録ビットの大きさ及び記録ビッ
トの間隔が光ビームスポット径に比べて小さくなってく
ると、光ビームスポットの中に、隣接する記録ビットを
含めた複数の記録ビットが入ってくるため、雑音が増加
し、一つ一つの記録ビットを分離して再生することがで
きなくなってしまうという問題点を有している。
【0006】記録密度を上げるために、光ビームスポッ
ト径を小さくする手段としては、光源であるレーザーの
波長を短くすること、対物レンズの開口数(NA) を大
きくし、光の絞り込みの角度を大きくすること等が上げ
られる。
【0007】レーザーの短波長化については、短波長用
半導体レーザーの開発が精力的に行われている。しか
し、未だ出射強度が弱く、光磁気ディスクの記録再生用
の光源として用いることができない。
【0008】また、NAを大きくした場合、光ビームを
光ビームスポットに収斂させる対物レンズと光磁気ディ
スクの面との傾きをできるだけ小さくする必要がある。
さもないと、記録媒体上の光ビームスポット径が逆に大
きくなってしまう。つまり、NAを大きくすると、光磁
気ディスク装置の光学系の組立精度、あるいは、光磁気
ディスクの反り量を従来以上に厳しく管理しなければ、
光ビームスポット径が大きくなってしまうという新たな
問題が発生する。
【0009】このため、現状の光磁気ディスクで用いら
れる半導体レーザーの波長は780〜830nmになっ
ており、対物レンズのNAは0.45〜0.55になってい
る。したがって、記録媒体上の光ビームスポット径は
1.7〜2.0μmとなる。
【0010】この光ビームスポット径との兼ね合いで、
光磁気ディスクのトラックピッチ、すなわち、光磁気デ
ィスクの半径方向の記録ビット間隔が1.4〜1.6μmに
設定されている。
【0011】トラックピッチをこれより小さくすると、
再生時、隣接トラックに記録された情報が漏れるクロス
トークを押さえる必要がある。このために特別な波形処
理を行う補償回路を設けなればならず、光磁気ディスク
装置が複雑化するという問題が発生する。
【0012】次に、光磁気ディスクに磁界変調オーバー
ライトを行う場合、十分な大きさの磁界を得るために、
磁界発生機構を光磁気ディスクに近接させなくてはなら
ないという問題点を有していると共に、高速で磁界を変
調することができないという問題点を有している。
【0013】そこで、これらを解決するために、特開昭
62−175948号公報では、垂直磁化膜を使用した
記録層と記録補助層からなる2層構造の光磁気記録媒体
を用い、レーザーパワーのみを変調してオーバーライト
を行う、光変調オーバーライト方法が提案されている。
【0014】ところが、この光変調オーバーライト方法
では、オーバーライトを行う際、記録補助層の磁化方向
も変わってしまうため、オーバーライト前に、毎回、記
録補助層の磁化方向を揃える必要がある。このため、記
録磁界発生機構に加え、初期化磁界発生機構も必要とな
るので、光磁気ディスク装置の大型化を招くとともに、
コストアップにもつながるという問題点を有している。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る光
磁気記録媒体は、上記の課題を解決するために、透光性
のある基体と、基体上に形成され、室温で面内磁気異方
性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁
気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出し層と、読
み出し層上に形成され、情報を光磁気記録する記録層と
を有しており、上記読み出し層がGdFeCoであるこ
とを特徴としている。
【0016】請求項2の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、請求項1の記録層がDy
FeCoであることを特徴としている。
【0017】請求項3の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、請求項1または2のいず
れかの光磁気記録媒体であって、基体と読み出し層との
間に透明誘電体層が形成されており、上記記録層上に保
護層が形成されており、透明誘電体層または保護層の少
なくともいずれか一方はAlNであることを特徴として
いる。
【0018】請求項4の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、透光性のある基体と、基
体上に形成された透明誘電体層と、透明誘電体層上に形
成され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す
一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化
に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情
報を光磁気記録する記録層と、記録層上に形成された保
護層とを有しており、上記透明誘電体層または保護層の
少なくともいずれか一方は、酸素を含まない透明誘電体
材料からなることを特徴としている。
【0019】請求項5の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、請求項4の酸素を含まな
い透明誘電体材料は、SiN、AlSiN、AlTa
N、TiN、BN、ZnSのいずれかであることを特徴
としている。
【0020】請求項6の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、透光性のある基体と、基
体上に形成された透明誘電体層と、透明誘電体層上に形
成され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す
一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化
に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情
報を光磁気記録する記録層と、記録層上に形成された保
護層とを有しており、上記透明誘電体層または保護層の
少なくともいずれか一方は、窒素を含む透明誘電体材料
からなることを特徴としている。
【0021】請求項7の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、請求項6の窒素を含む透
明誘電体材料は、SiN、AlSiN、AlTaN、T
iN、BN、SiAlON、TiONのいずれかである
ことを特徴としている。
【0022】請求項8の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、透光性のある基体と、基
体上に形成された透明誘電体層と、透明誘電体層上に形
成され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す
一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化
に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情
報を光磁気記録する記録層と、記録層上に形成された保
護層とを有しており、上記透明誘電体層または保護層の
少なくともいずれか一方は、屈折率が2.2以上である
透明誘電体材料からなることを特徴としている。
【0023】請求項9の発明に係る光磁気記録媒体は、
上記の課題を解決するために、請求項8の屈折率が2.
2以上である透明誘電体材料は、TiN、ZnS、Ti
ON、TiO2 、BaTiO3 、SrTiO3 のいずれ
かであることを特徴としている。
【0024】請求項10の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、請求項1のGdFe
Coからなる読み出し層に、Nd、Pr、Pt、Pdの
中の少なくともいずれか一種類の元素が添加されている
ことを特徴としている。
【0025】請求項11の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、請求項1のGdFe
Coからなる読み出し層または上記記録層の少なくとも
いずれか一方に、Cr、Ni、Mn、Be、V、Nbの
中の少なくともいずれか一種類の元素が添加されている
ことを特徴としている。
【0026】請求項12の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、透光性のある基体
と、基体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な
面内磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が
優位な垂直磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上
に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを有してお
り、上記記録層がTbFeCoであることを特徴として
いる。
【0027】請求項13の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、透光性のある基体
と、基体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な
面内磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が
優位な垂直磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上
に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを有してお
り、上記読み出し層は、フェリ磁性を有する希土類遷移
金属非晶質合金からなっており、その補償温度が125
℃以上になるように組成が設定され、かつ、膜厚が10
nm以上に設定されていることを特徴としている。
【0028】請求項14の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、透光性のある基体
と、基体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な
面内磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が
優位な垂直磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上
に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを有してお
り、上記読み出し層は、フェリ磁性を有する希土類遷移
金属非晶質合金からなっており、補償温度を持たないで
キュリー温度が130℃以上になるように組成が設定さ
れ、かつ、膜厚が10nm以上に設定されていることを
特徴としている。
【0029】請求項15の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、透光性のある基体
と、基体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な
面内磁化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が
優位な垂直磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上
に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを有してお
り、上記の基体の読み出し層側の面には、光ビームを案
内するためのグルーブが設けられており、グルーブの幅
がグルーブ間のランドの幅にほぼ等しくなるように設定
されていることを特徴としている。
【0030】請求項16の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、請求項15のグルー
ブ上の記録層およびランド上の記録層に情報が光磁気記
録されることを特徴としている。
【0031】請求項17の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、透光性のある基体
と、基体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な
面内磁化状態を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方
性が優位な垂直磁化状態に移行する読み出し層と、読み
出し層上に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを
有しており、上記読み出し層は、希土類遷移金属合金か
らなっており、その補償温度が室温とキュリー温度の間
にないように設定され、かつ、希土類金属の含有量が補
償組成に対応する最大含有量よりも多くなるように設定
されていることを特徴としている。
【0032】請求項18の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、請求項17の読み出
し層と記録層の間には、面内磁化膜からなる中間層が設
けられていることを特徴としている。
【0033】請求項19の発明に係る記録再生方法は、
上記の課題を解決するために、透光性のある基体と、基
体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁
化状態を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優
位な垂直磁化状態に移行する読み出し層と、読み出し層
上に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを有して
おり、上記読み出し層は、希土類遷移金属合金からなっ
ており、その補償温度が室温とキュリー温度の間にない
ように設定され、かつ、希土類金属の含有量が補償組成
に対応する最大含有量よりも多くなるように設定されて
いる光磁気記録媒体を使用し、情報の記録再生を行う記
録再生方法であって、読み出し層を磁化する一定磁界を
印加しながら、記録信号に応じて比較的低い第1のレー
ザーパワーと比較的高い第2のレーザーパワーとに切り
換えたレーザー光を照射することにより記録層の磁化の
向きを反転させて記録を行い、第1のレーザーパワーよ
りもさらに低いレーザーパワーのレーザー光を照射する
ことにより、読み出し層のレーザースポット径より小さ
い領域を垂直磁化状態に移行させ、かつ、読み出し層の
垂直磁化状態となった領域の副格子磁化を記録層の副格
子磁化に対して安定な方向に揃え、読み出し層の垂直磁
化状態となった領域より情報の再生を行うことを特徴と
している。
【0034】請求項20の発明に係る光磁気記録媒体
は、上記の課題を解決するために、透光性のある基体
と、基体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な
面内磁化状態を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方
性が優位な垂直磁化状態に移行する読み出し層と、読み
出し層上に形成され、情報を光磁気記録する記録層とを
有しており、上記読み出し層と記録層の間には、非磁性
膜からなる中間層が設けられていることを特徴としてい
る。
【0035】請求項21の発明に係る記録再生方法は、
上記の課題を解決するために、透光性のある基体と、基
体上に形成され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁
化を示す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な
垂直磁化に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成
され、情報を光磁気記録する記録層とを有しており、上
記の基体の読み出し層側の面には、光ビームを案内する
ためのグルーブが設けられており、グルーブの幅がグル
ーブ間のランドの幅にほぼ等しくなるように設定されて
いる光磁気記録媒体を使用する記録再生方法であって、
上記のグルーブ上の記録層およびランド上の記録層を情
報の記録再生に用いることを特徴としている。
【0036】
【作用】請求項1の構成によれば、再生動作時に、読み
出し層に光ビームが照射されると、照射された部位の温
度分布は、ほぼガウス分布になるので、光ビームの径よ
り小さい中心近傍領域のみの温度が上昇する。
【0037】この温度上昇に伴って、温度上昇部位の磁
化は、面内磁化から垂直磁化に移行する。この時、読み
出し層及び記録層の2層間の交換結合力により、記録層
の磁化の向きに読み出し層の磁化の向きが従う。
【0038】温度上昇部位が面内磁化から垂直磁化に移
行すると、温度上昇部位のみが極カー効果を示すように
なり、該部位からの反射光に基づいて情報が再生され
る。
【0039】そして、光ビームが移動して次の記録ビッ
トを再生するときは、先の再生部位の温度は低下し、垂
直磁化から面内磁化に移行するため、極カー効果を示さ
なくなる。このことは、記録層に記録された磁化が読み
出し層の面内磁化によりマスクされて読み出されないと
いうことを意味している。これにより、雑音の原因とな
り、再生の分解能を低下させる隣接記録ビットからの信
号混入がなくなる。
【0040】以上のように、所定温度以上に昇温された
領域のみを再生に関与させるので、従来より小さい記録
ビットの再生を行うことが可能になり、記録密度が著し
く向上する。
【0041】読み出し層の材料として、希土類遷移金属
合金であるGdFeCoを採用することにより、面内磁
化から垂直磁化へ、磁化方向が非常に急峻に移行する読
み出し層を実現できる。これにより、再生時の雑音が小
さくなるため、より高密度な記録を行うことが可能な光
磁気記録媒体を提供できる。
【0042】請求項2の構成によれば、請求項1の作用
に加え、記録層の材料として、DyFeCoを採用する
ことにより、垂直磁気異方性が小さくなる。これによ
り、記録時の外部磁界を小さくすることができる。
【0043】請求項3の構成によれば、請求項1または
2の作用に加え、上記基体と読み出し層との間に透明誘
電体層を形成し、上記記録層上に保護層を形成し、透明
誘電体層または保護層の少なくともいずれか一方をAl
Nにしたので、耐湿性に優れた光磁気記録媒体が提供で
きる。
【0044】請求項4の構成によれば、透明誘電体層ま
たは保護層の少なくともいずれか一方を、酸素を含まな
い透明誘電体材料にしたので、優れた光磁気記録媒体を
提供できる。
【0045】請求項5の構成によれば、請求項4の作用
に加え、上記酸素を含まない透明誘電体材料を、Si
N、AlSiN、AlTaN、TiN、BN、ZnSの
いずれかにしたので、長期信頼性に優れた光磁気記録媒
体を提供できる。
【0046】請求項6の構成によれば、透明誘電体層ま
たは保護層の少なくともいずれか一方を、窒素を含む透
明誘電体材料にしたので、優れた光磁気記録媒体を提供
できる。
【0047】請求項7の構成によれば、請求項6の作用
に加え、上記窒素を含む透明誘電体材料を、SiN、A
lSiN、AlTaN、TiN、BN、SiAlON、
TiONのいずれかにしたので、長期信頼性に優れた光
磁気記録媒体を提供できる。
【0048】請求項8の構成によれば、透明誘電体層ま
たは保護層の少なくともいずれか一方を、屈折率が2.
2以上である透明誘電体材料にしたので、優れた光磁気
記録媒体を提供できる。
【0049】請求項9の構成によれば、請求項8の作用
に加え、上記屈折率が2.2以上である透明誘電体材料
を、TiN、ZnS、TiON、TiO2 、BaTiO
3 、SrTiO3 のいずれかにしたので、優れた光磁気
記録媒体を提供できる。
【0050】請求項10の構成によれば、請求項1の作
用に加え、上記GdFeCoからなる読み出し層に、N
d、Pr、Pt、Pdの中の少なくともいずれか一種類
の元素を添加したので、光源として短波長レーザーを使
用したときの、再生信号が大きくなる。
【0051】請求項11の構成によれば、請求項1の作
用に加え、上記GdFeCoからなる読み出し層または
上記記録層の少なくともいずれか一方に、Cr、Ni、
Mn、Be、V、Nbの中の少なくともいずれか一種類
の元素を添加したので、長期信頼性が向上する。
【0052】請求項12の構成によれば、請求項1の作
用に加え、上記記録層をTbFeCoにしたので、垂直
磁気異方性が大きくなる。これにより、再生信号品質の
高い光磁気記録媒体を提供できる。
【0053】請求項13の構成によれば、読み出し層
は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属非晶質合金から
なっており、その補償温度が125℃以上になるように
組成が設定され、かつ、膜厚が10nm以上に設定され
ているので、高密度記録された情報を読み出す際の再生
信号品質が向上する。
【0054】請求項14の構成によれば、読み出し層
は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属非晶質合金から
なっており、補償温度を持たないでキュリー温度が13
0℃以上になるように組成が設定され、かつ、膜厚が1
0nm以上に設定されているので、高密度記録された情
報を読み出す際の再生信号品質が向上する。
【0055】請求項15の構成によれば、基体の読み出
し層側の面には、光ビームを案内するためのグルーブが
設けられており、グルーブの幅がグルーブ間のランドの
幅にほぼ等しくなるように設定されているので、グルー
ブ上の記録層およびランド上の記録層に記録された情報
を読み出す際の再生信号品質が同じになる。
【0056】請求項16の構成によれば、請求項15の
作用に加え、グルーブ上の記録層およびランド上の記録
層に情報を光磁気記録するので、記録密度が2倍にな
る。
【0057】請求項17の構成によれば、読み出し層
は、希土類遷移金属合金からなっており、その補償温度
が室温とキュリー温度の間にないように設定され、か
つ、希土類金属の含有量が補償組成に対応する最大含有
量よりも多くなるように設定されているので、高密度記
録再生の可能な光磁気記録媒体を提供できる。
【0058】請求項18の構成によれば、請求項17の
作用に加え、読み出し層と記録層の間には、面内磁化膜
からなる中間層が設けられているので、読み出し層と記
録層の交換結合力を制御することが可能になる。これに
より、読み出し層用および記録層用の材料の選択範囲が
増える。
【0059】請求項19の構成によれば、請求項17の
光磁気記録媒体を使用して、高密度記録再生を行うこと
ができる。
【0060】請求項20の構成によれば、読み出し層と
記録層の間には、非磁性膜からなる中間層が設けられて
いるので、読み出し層と記録層との間の交換結合が弱め
られる。これにより、安定に高密度記録を行える光磁気
記録媒体を提供できる。
【0061】請求項21の構成によれば、グルーブ上の
記録層およびランド上の記録層を情報の記録再生に用い
るので、記録密度が2倍になる。
【0062】
【実施例】本発明の第1実施例を図1ないし図38に基
づいて説明すれば、以下の通りである。
【0063】本実施例の光磁気ディスク(光磁気記録媒
体)は、図1に示すように、基板1(基体)、透明誘電
体層2、読み出し層3、記録層4、保護層5、オーバー
コート層6がこの順に積層された構成を有している。
【0064】読み出し層3として使用される希土類遷移
金属合金は、図2の磁気状態図に示すように、垂直磁化
を示す組成範囲(図中、Aで示す)は非常に狭い。これ
は、希土類金属と遷移金属のモーメントがつりあう補償
組成(図中、Pで示す)の近辺でしか垂直磁化が現れな
いからである。
【0065】希土類金属と遷移金属の磁気モーメント
は、それぞれの温度特性が異なり、高温では遷移金属の
磁気モーメントが希土類金属に比べて大きくなる。この
ため、室温の補償組成よりも希土類金属の含有量を多く
しておき、室温では垂直磁化を示さずに面内磁化を示す
ようにしておく。この場合、光ビームが照射されること
により、照射部位の温度が上昇すると、遷移金属の磁気
モーメントが相対的に大きくなって、希土類金属の磁気
モーメントとつりあうようになり、垂直磁化を示すよう
になる。
【0066】図3ないし図6は、読み出し層3のヒステ
リシス特性の一例を示しており、横軸は、読み出し層3
の膜面に垂直方向に印加される外部磁界(Hex )であ
り、縦軸は、同じく膜面に垂直な方向から光を入射させ
た場合の極カー回転角(θk )である。
【0067】図3は、図2の磁気状態図における組成P
の読み出し層3の、室温から温度T1 までの間のヒステ
リシス特性を示しており、図4ないし図6は、それぞ
れ、温度T1 から温度T2 までのヒステリシス特性、温
度T2 から温度T3 までのヒステリシス特性、及び温度
3 からキュリー温度Tc までのヒステリシス特性を示
している。
【0068】温度T1 から温度T3 の温度範囲では、外
部磁界に対して極カー回転角の立ち上がりが急峻なヒス
テリシス特性を示すが、それ以外の温度範囲では極カー
回転角はほとんど0である。
【0069】上記の特性を備えた希土類遷移金属を読み
出し層3に使用することで、光磁気ディスクの記録密度
を高くなる。すなわち、光ビームの大きさよりも小さな
記録ビットの再生が可能になる。これについて、以下に
説明する。
【0070】再生動作時に、基板1(図1)の側から集
光レンズ8を介して再生光ビーム7が読み出し層3に照
射される。再生光ビーム7が照射された読み出し層3の
部位は、その中心部近傍が最も温度が上昇し、周辺の部
位の温度よりも高くなる。これは、再生光ビーム7が、
集光レンズ8により回折限界まで絞り込まれているた
め、その光強度分布がガウス分布になり、光磁気ディス
ク上の再生部位の温度分布もほぼガウス分布になるから
である。
【0071】中心近傍の温度がT1 以上に達し、周辺部
位の温度がT1 以下になるように再生光ビーム7の強度
が設定されている場合、T1 以上の温度を有する領域の
みを再生に関与させるので、再生光ビーム7の径よりも
小さな記録ビットの再生が行え、記録密度は著しく向上
することになる。
【0072】つまり、T1 以上の温度を有する領域の磁
化は、面内磁化から垂直磁化に移行する(極カー回転角
のヒステリシス特性は図3から図4もしくは図5に移行
する)。この時、読み出し層3及び記録層4の2層間の
交換結合力により、記録層4の磁化の向きが読み出し層
3に転写される。一方、再生光ビーム7の中心近傍に対
応した領域以外の、周辺部位では温度がT1 以下である
ため、面内磁化の状態(図3)が保持される。この結
果、膜面に垂直方向から照射された再生光ビーム7に対
しては、極カー効果を示さない。
【0073】このようにして、温度上昇部位が面内磁化
から垂直磁化に移行すると、再生光ビーム7の中心近傍
のみが極カー効果を示すようになり、該部位からの反射
光に基づいて、記録層4に記録された情報が再生され
る。
【0074】再生光ビーム7が移動して(実際には光磁
気ディスクが回転して)、次の記録ビットを再生する時
は、先の再生部位の温度はT1 以下に下がり、垂直磁化
から面内磁化に移行する。これに伴い、この温度が低下
した部位は極カー効果を示さなくなる。従って、該温度
の低下した部位からは情報が再生されなくなり、雑音の
原因である隣接記録ビットからの信号混入がなくなる。
【0075】以上のように、本発明の光磁気ディスクを
用いれば、再生光ビーム7の径よりも小さい記録ビット
の再生が確実に行え、隣接する記録ビットの影響を受け
ないため、記録密度を著しく高めることが可能である。
【0076】次に、本実施例の光磁気ディスクの具体例
を示す。
【0077】基板1は、直径86mm、内径15mm、厚さ
1.2mmの円盤状のガラスからなっている。基板1の片
側の表面には、図示していないが、光ビーム案内用の凹
凸状のガイドトラックが、ピッチが1.6μm、グルー
ブ(凹部)の幅が0.8μm、ランド(凸部)の幅が
0.8μmで形成されている。すなわち、グルーブの幅
とランドの幅が1:1になるように形成されている。
【0078】基板1のガイドトラックが形成されている
側の面に、透明誘電体層2として、A1Nが厚さ80n
mで形成されている。
【0079】透明誘電体層2上に、係る読み出し層3と
して、希土類遷移金属合金薄膜であるGdFeCoが、
厚さ50nmで形成されている。GdFeCoの組成
は、Gd0.26(Fe0.82Co0.180.74であり、そのキ
ュリー温度は約300℃である。
【0080】読み出し層3上に、記録層4として、希土
類遷移金属合金薄膜であるDyFeCoが、厚さ50n
mで形成されている。DyFeCoの組成は、Dy0.23
(Fe0.78Co0.220.77であり、そのキュリー温度は
約200℃である。
【0081】上記の読み出し層3と記録層4の組み合わ
せにより、読み出し層3の磁化の方向は、室温ではほぼ
面内(つまり、読み出し層3の層方向)にあり、100
〜125℃程度の温度で面内方向から垂直方向に移行す
る。
【0082】記録層4上には、保護層5として、A1N
が厚さ20nmで形成されている。
【0083】保護層5上には、オーバーコート層6とし
て、ポリウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂
が、厚さ5μmで形成されている。
【0084】上記の光磁気ディスクは、以下の手順で製
造された。
【0085】ガラスの基板1の表面のガイドトラック
は、反応性イオンエッチング法により形成された。
【0086】透明誘電体層2、読み出し層3、記録層4
及び保護層5は、いずれもスパッター法により、同一ス
パッター装置内で、真空を破らずに形成された。透明誘
電体層2及び保護層5のA1Nは、A1ターゲットをN
2 ガス雰囲気中でスパッターする反応性スパッター法に
より形成された。読み出し層3及び記録層4は、FeC
o合金ターゲット上にGdあるいはDyのチップを並べ
た、いわゆる複合ターゲット、若しくはGdFeCo及
びDyFeCoの3元合金ターゲットを用いて、Arガ
スでスパッターすることにより形成された。
【0087】オーバーコート層6は、スピンコーターに
よりポリウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂を
塗布した後、紫外線照射装置で紫外線を当て、硬化させ
ることにより形成された。
【0088】次に、上記の光磁気ディスクを用いて行っ
た、動作確認結果を説明する。
【0089】上記の読み出し層3と記録層4の組み合わ
せにより、読み出し層3の磁化の方向は、室温ではほぼ
面内にあり、100〜125℃程度の温度で面内方向か
ら垂直方向に移行する。
【0090】図7及び図8は、実際に極カー回転角のヒ
ステリシス特性を、温度を変えて測定した結果を表す図
である。図7は、室温(25℃)でのヒステリシス特性
であり、外部磁界(Hex )がゼロのときの極カー回転角
は、ほとんどゼロである。これは、磁化の方向が膜面に
垂直な方向にはほとんどなく、面内方向にあることを示
している。図8は、120℃でのヒステリシス特性であ
る。外部磁化がゼロのときでも、0.5deg程度の極
カー回転角があり、垂直磁化に移行していることがわか
る。
【0091】以上が、静的特性の確認であるが、次に、
光ピックアップを用いて動的な測定を行った結果を説明
する。尚、測定に使用した光ピックアップの半導体レー
ザーの波長は780nm、対物レンズの開口数(N.
A.)は0.55である。
【0092】まず、上記の光磁気ディスクの半径26.
5mmの位置のランド部に、回転数1800rpm (線速5
m/sec )の下で、0.765μmの長さの単一周波数
記録ビットを予め記録した。記録は、まず、記録層4の
磁化の方向を一方向に揃えて(消去状態)から、記録用
外部磁界の方向を消去方向とは逆方向に固定しておい
て、0.765μmの長さに相当する記録周波数(この
場合は、約3.3MHz )でレーザーを変調することで行
った。記録レーザーパワーは、8mW程度であった。
【0093】この記録ビット列を再生レーザーパワーを
変えて再生して、再生信号波形の振幅を調べた結果を図
9に示す。横軸が再生レーザーパワーであり、0.5m
Wから3mWの範囲で測定した。縦軸が再生信号振幅を
示しており、再生レーザーパワーが0.5mWの時の振
幅で規格化して示している。
【0094】図中、Aと記した曲線が本発明の光磁気デ
ィスクでの結果であり、図中、Bの曲線は、比較のため
に作製し測定を行った従来の光磁気ディスクの結果であ
る。従来の光磁気ディスクは、上記と同じガラスの基板
1上に、A1Nを80nm、DyFeCoを20nm、
A1Nを25nm、A1Niを30nmをこの順に積層
し、A1Ni上に上記と同じオーバーコート層を設けた
構成になっている。
【0095】この従来の光磁気ディスクの構成は、希土
類遷移金属合金であるDyFeCo磁性層が1層だけあ
り、その両側を透明誘電体層であるA1Nでサンドイッ
チし、最後に反射膜であるA1Niを設けた構造であ
る。この構造は、反射膜構造と呼ばれ、既に市販がなさ
れている3.5インチサイズ単板仕様の光磁気ディスク
の代表的な構成である。また、周知の如く、従来の光磁
気ディスクにおけるDyFeCoからなる記録層は、室
温から高温まで垂直磁化を有している。
【0096】図9において、図中の破線で示されている
直線は、0点(原点)と0.5mWでの振幅規格値を結
んだ直線であり、光磁気信号の再生信号振幅と再生レー
ザーパワーとの関係を表す直線である。
【0097】 再生信号振幅 ∝ 媒体反射光量 × 極カー回転角 この式で、媒体反射光量は、再生レーザーパワーに比例
して増加するものであるから、再生レーザーパワーで置
き換えることができる。
【0098】従来の光磁気ディスクの測定結果曲線
(B)が、この直線より下にあるのは次の理由による。
すなわち、再生レーザーパワーを上げると媒体反射光量
はそれにつれて増加するが、一方で記録媒体の温度が上
昇する。磁性体の磁化は、一般には温度が上がるにつれ
減少し、キュリー温度でゼロになる性質を持っている。
したがって、従来の光磁気ディスクにおいては、温度が
上昇するにつれ極カー回転角が小さくなるため、図中の
直線には乗らず、下側になる。
【0099】一方、本発明の光磁気ディスクの測定結果
曲線(A)は、再生レーザーパワーが上がるにつれ、急
激に信号振幅が上昇し、2 〜2.25mW程度で振幅が最大
になっている。また、3mWでの値以外は、全て上記直
線より上側にあり、再生レーザーパワーの増加分以上の
振幅の増加が得られていることがわかる。この結果は、
温度が低い時には極カー回転角がほとんど無く、温度上
昇に伴い急激に面内磁化から垂直磁化に移行してくると
いう、本発明の読み出し層3の特性を反映しており、そ
の動作を裏付けるものである。
【0100】上記の測定結果はランド部に対して得られ
たが、同様の測定をグルーブ部に対しても行ったとこ
ろ、同様の結果が得られた。
【0101】次に、記録ビットをより小さくしていった
場合の再生信号品質を調べた結果について説明する。よ
り小さな記録ビットの再生が可能になるということは、
記録密度の向上を意味する。
【0102】図10は、記録ビット長さに対する再生信
号品質(C/N)を測定した結果を示すグラフである。
光磁気ディスクの線速は先の実験と同じく5m/secにし
ておいて、記録周波数を変えて記録を行い、そのC/N
を測定した。光ピックアップ及び記録方法は、先の実験
と同じである。
【0103】図中、Aと記した曲線は本発明の光磁気デ
ィスクの測定結果であり、再生レーザーパワーは2.25m
Wとした。図中、Bと記した曲線は、先の実験と同じく
従来の光磁気ディスクの測定結果であり、再生レーザー
パワーは1mWとした。
【0104】記録ビット長さが0.6 μm以上の長い記録
ビットにおいては、両者のC/Nにほとんど差はない
が、0.6 μm以下になると、従来の光磁気ディスクでは
急激にC/Nが低下してくる。これは、記録ビット長さ
が小さくなるにつれ、光ビームの照射径の中に存在する
記録ビットの数(面積)が増え、ひとつひとつの記録ビ
ットを識別できなくなるからである。
【0105】光ピックアップの光学的分解能を表す一つ
の指標として、カットオフ空間周波数があり、これは、
光源であるレーザーの波長と対物レンズの開口数により
定まる。本実験に用いた光ピックアップにおけるレーザ
ーの波長と対物レンズの開口数(それぞれ780nm、
0.55) を用いて、カットオフ周波数を求め、これを
記録ビット長さに換算すると、 780nm/(2*0.55)/2 = 0.355μm になる。言い換えると、本実験に用いた光ピックアップ
の光学的分解能の限界は、記録ピット長さで0.355 μm
である。上記の従来の光磁気ディスクの結果はこのこと
を反映して、0.35μm でのC/Nがほぼゼロになってい
る。
【0106】一方、本発明の光磁気ディスクでは、記録
ビット長さが短くなるにつれてC/Nは減少するもの
の、光学的分解能である0.355 μm よりも短い記録ビッ
トにおいても30dB近いC/Nが得られている。
【0107】なお、測定は、ランド、グルーブの双方に
対して行い、C/Nの値、傾向共にほぼ同じ結果であっ
た。
【0108】以上の結果から、本発明の光磁気ディスク
を用いることで、光学的解析限界より小さな記録ビット
の再生が行なえることが確認された。これにより、従来
の光磁気ディスクに比べて記録ビット密度を大きく向上
させることが可能である。
【0109】次に、上記実験で確かめられた本発明に加
えて、もうひとつの重要な効果であるクロストーク量に
ついて調べた結果について説明する。
【0110】光磁気ディスクにおいては、一般には、例
えば、ランド仕様であれば、ランドの幅をできるだけ広
く取り、グルーブを狭くしたガイドトラックを形成し
て、ランド部のみを記録、再生に用いる。したがって、
ランド仕様の光磁気ディスクでのクロストークとは、任
意のランドを再生している場合に、両隣のランドに書か
れた記録ビットからの漏れのことである。グルーブ仕様
の光磁気ディスクでのクロストークとは、任意のグルー
ブを再生している場合に、両隣のグルーブに書かれた記
録ビットからの漏れのことである。
【0111】例えば、IS10089 規格(ISO の5.25書き換
え型光ディスクについて定めた規格)おいては、1.6 μ
m ピッチのガイドトラックにおいて、最短記録ビット
(0.765μm)に対するクロストーク量が−26dB以下であ
るように定められている。
【0112】本実施例では、このIS10089 規格に定めら
れたクロストーク測定法に基づき、0.765 μm の記録ビ
ットに対するクロストーク量を測定した。ただし、本発
明の光磁気ディスクの効果を確かめるため、トラックピ
ッチ1.6 μm 、ランド幅とグルーブ幅が同じ0.8 μm で
ある前述のガラスの基板1において、ランド部を再生し
たときの両隣接グルーブからのクロストーク量と、グル
ーブ部を再生したときの両隣接ランドからのクロストー
ク量とをそれぞれ測定した。
【0113】図11にランド部を再生したときの測定結
果を示す。横軸は再生レーザーパワーであり、縦軸がク
ロストーク量である。図中、Aと記した曲線は、本発明
の光磁気ディスクの測定結果であり、Bと記した曲線
は、上記の従来の光磁気ディスクの測定結果である。
【0114】従来の光磁気ディスク(B)では、クロス
トーク量が−15dB程度と大きいのに対して、本発明の
光磁気ディスク(A)では、−30dB程度と上記ISO 規
格で定められた−26dBをクリアする値が得られた。
【0115】また、グルーブ部を再生したときのクロス
トークについても、同様の結果が得られた。
【0116】このような結果が得られた理由を、図12
を基づいて説明する。
【0117】図12は、光磁気ディスクを真上からみた
ときの概略平面図であり、真ん中のランド部と両隣のグ
ループ部の円形(点線)で示された記録ビットが記録さ
れている。図中の大きい円(実線)が集光された再生光
ビーム7の光スポットであり、光スポットがランドに追
従するようにサーボがかけられている。図において、ラ
ンド幅及びグループ幅は0.8 μm 、光スポット径(光ビ
ーム直径)は1.73μm(=エアリーディスク径= 1.22*7
80nm/0.55)、記録ビット直径は説明の便宜上、0.335
μm の大きさで示している。
【0118】同図において、再生光ビーム7の中には7
個の記録ビットが入って来ている。従来の光磁気ディス
クであれば、それぞれが垂直磁化(例えば記録ビット部
の磁化の向きが紙面に垂直上向きで、記録ビット以外の
領域で(消去部)の磁化は同下向き)を示し、極カー効
果を示すので、光ビーム内のそれぞれの信号を分離する
ことはできなくなる。このことが、前述の実験結果で従
来の光磁気ディスクの0.35μm でのC/Nが小さかった
理由及び隣接トラックからのクロストークが大きかった
理由である。
【0119】一方、本発明の光磁気ディスクであれば、
再生光ビーム7の中心近傍の、周囲より温度の高い領域
では読み出し層3の磁化が垂直になり、それ以外の領域
では面内磁化のままである。従って、同図のように再生
光ビーム7の中に7個の記録ビットがあっても、再生に
寄与するのは再生光ビーム7の中心に位置する一つのみ
であるので、0.335 μm と非常に小さな記録ビットであ
っても、C/Nが約30dBも得られる。さらに、両隣接
トラックからのクロストークも非常に小さくなる。
【0120】以上、説明した通り、上記の読み出し層3
および記録層4を、ピッチが1.6μmでランドとグル
ーブの幅の比を1:1としたトラック形状を有する基板
1の上に形成した光磁気ディスクにおいて、C/Nの値
がランド上でもグルーブ上でも変わらず、両方とも記録
再生に用いることができることと、ランド上およびグル
ーブ上の記録層4に情報を記録した場合においてもクロ
ストークは充分小さいことが実験により確認された。
【0121】これにより、トラック長手方向の記録密度
およびトラック密度を上げることができ、かつ、ラン
ド、グルーブの両方を記録再生に用いるため、従来の光
磁気ディスクに比べて記録密度を大幅に増大させること
が可能になる。
【0122】上記の読み出し層3のGdFeCoの組成は、Gd
0.26(Fe0.82Co0.18)0.74に限定されるものではない。読
み出し層3は、室温でほぼ面内磁化を有し、室温以上の
温度で面内磁化から垂直磁化に移行すれば良い。希土類
遷移金属合金においては、希土類と遷移金属の比率を変
えれば、希土類と遷移金属の磁化が釣り合う補償温度が
変わる。GdFeCoはこの補償温度付近で垂直磁化を示す材
料系であることからGdとFeCoの比率を変えて補償温度を
変えてやれば、面内磁化から垂直磁化に移行する温度も
これにつれて変わる。
【0123】図13は、GdX (Fe0.82Co0.18)1-X の系に
おいてX、すなわちGdの組成を変えた場合の補償温度及
びキュリー温度を調べた結果である。
【0124】補償温度が室温(25℃)以上にある組成
範囲は、同図からあきらかなようにXが0.18以上であ
る。このうち、好ましくは、0.19<X<0.29の範囲であ
る。この範囲であれば、読み出し層3上に記録層4を積
層した実使用構成において、面内から垂直方向に磁化の
向きが移動する温度が室温〜200℃程度の範囲とな
る。この温度があまり高すぎると、再生用のレーザーパ
ワーが記録用のレーザーパワーと同じくらい高くなって
しまうので、記録層4に記録が行われて記録情報が乱さ
れる恐れがある。
【0125】次に、上記のGdFeCo系において、FeとCoの
比率を変えた場合、すなわち、GdX(Fe1-YCoY )1-Xにお
いて、Yを変えた場合における、特性(補償温度及びキ
ュリー温度)の変化について説明する。
【0126】図14は、Yが0の場合、すなわち、GdX
Fe1-X の特性を示す図である。同図において、例えば、
Gd組成がX=0.3 の場合、補償温度は約120℃で、キュ
リー温度は約200℃である。
【0127】図15は、Yが1の場合、すなわち、GdX
Co1-X の特性を示す図である。同図において、例えば、
Gd組成がX=0.3 の場合、補償温度は約220℃で、キュ
リー温度は約400℃である。
【0128】以上のことから、Gd組成が同じであって
も、Co量が増えると、補償温度及びキュリー温度が上昇
することがわかる。
【0129】再生時の極カー回転角ができるだけ大きい
ほうが高いC/Nを得られるので、読み出し層3のキュ
リー温度は、高い方が有利である。ただし、あまりCo量
を増やし過ぎると、面内から垂直に磁化方向が移行する
温度も高くなるので注意が必要である。
【0130】これらの点を考慮して、Gdx (Fe1-YCoY )
1-XにおけるYの値は、0.1 <Y<0.5 の範囲が良い。
【0131】上記の読み出し層3において、面内磁化か
ら垂直磁化に移行する温度等の特性は、当然のことなが
ら、記録層4の組成、膜厚等の影響を受ける。これは、
両層の間に磁気的な交換結合力が働くからである。した
がって、記録層4の材料、組成、膜厚により、読み出し
層3の最適な組成、膜厚が変わる。
【0132】以上説明した通り、本発明の光磁気ディス
クの読み出し層3の材料としては、面内磁化から垂直磁
化への急峻であるGdFeCoが最適であるが、以下に述べる
希土類遷移金属合金でも、同様の効果が得られる。
【0133】Gdx Fe1-X は、図14に示すような特性を
有しており、0.24<X<0.35の範囲で室温以上に補償温
度を有する。
【0134】Gdx Co1-X は、図15に示すような特性を
有しており、0.20<X<0.35の範囲で室温以上に補償温
度を有する。
【0135】遷移金属としてFeCo合金を用いている場
合、TbX (FeY Co1-Y )1-Xは、0.20<X<0.30(このと
き、Yは任意)の範囲で室温以上で補償温度を有する。
DyX (FeY Co1-Y )1-Xは、0.24<X<0.33(このとき、
Yは任意)の範囲で室温以上で補償温度を有する。HoX
(FeY Co1-Y )1-Xは、0.25<X<0.45(このとき、Yは
任意)の範囲で室温以上で補償温度を有する。
【0136】以上の材料に加えて、光ピックアップの光
源である半導体レーザーの波長が、前述の780nm より短
くなった場合に、その波長での極カー回転角が大きな材
料も、本発明の読み出し層3の材料として好適である。
【0137】既に、説明した通り、光磁気ディスク等の
光ディスクにおいて、その記録密度を制限するのは光ビ
ームの大きさであり、これはレーザー波長と対物レンズ
の開口数により決まるものである。従って、今よりも波
長の短い半導体レーザーが出現すれば、それだけで光磁
気ディスクの記録密度は向上する。現在では、既に670
〜680nm の波長の半導体レーザーがほぼ実用化レベルに
あり、波長400nm 以下のSHG レーザーも精力的に研究が
進められている。
【0138】希土類遷移金属合金の極カー回転角は、波
長依存性を有しており、一般には、波長が短くなると、
極カー回転角は減少してしまう。短波長で極カー回転角
の大きい膜を用いると、信号強度が大きくなり高品質の
再生信号が得られることになる。
【0139】上述の読み出し層3の材料にNd,Pt,Pr,Pd
のうち少なくとも1種類の元素を微量添加することで、
読み出し層3として要求される特性をほとんど損なわず
に、短波長での極カー回転角を増加することができ、短
波長レーザーを用いた場合でも高品質な再生信号が得ら
れる光磁気ディスクを提供できる。
【0140】上記元素を添加した読み出し層3として
は、具体的には、例えば、Nd0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95、Pt0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95、Pr0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95、Pd0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95がある。
【0141】上記の光磁気ディスクの読み出し層3の材
料をGd0.26(Fe0.82Co0.180.74からNd
0.05〔Gd0.26(Fe0.82Co0.180.740.95に代え
て上記と同一の動作確認を行ったところ、ほぼ同じ結果
が得られた。
【0142】更に、上述の読み出し層3の材料に、微量
のCr,V,Nb,Mn,Be,Niのうち少なくとも1種類の元素を添
加することで、読み出し層3自体の耐環境性が向上す
る。すなわち、水分、酸素侵入による読み出し層3の材
料の酸化による特性の劣化を少なくし、長期信頼性に優
れた光磁気ディスクを提供できる。
【0143】上記元素を添加した読み出し層3として
は、具体的には、例えば、Cr0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95、V0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0. 180.740.95、Nb0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95、Mn0. 05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95、Be0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95、Ni0.05〔Gd0.26(Fe
0.82Co0.180.740.95がある。
【0144】ここで、読み出し層3の材料に上記元素を
添加したときのカー回転角の増大効果を調べるために行
った実験について説明する。
【0145】実験で用いたサンプルの構成を、図30に
示す。
【0146】サンプルは、ガラスの基板1上に透明誘導
体層2であるAlNを80nm形成し、その上に読み出し層
3としてX0.1 Gd0.28(Fe0.8Co0.2)0.72 0.9 の組成の膜
を50nm堆積し、次に、記録層4としてDy0.23Fe0.82Co
0.18)0.77 を50nm堆積して、さらに全体を20nmのAlN
の保護層5でコーティングすることにより、作製され
た。ここで、Xは添加元素であり、Nd,Pr,Pt,Pd のいず
れかである。
【0147】ガラスの基板1側から測定したθK (カー
回転角)の波長依存性を図31に示す。比較例として、
読み出し層3に上記添加物を含まないサンプルについて
の結果も同図に併せて示す。
【0148】添加物を含まないサンプルでは、θK は長
波長域で大きいが、短波長域で小さくなる。一方、Nd,P
r,Pt,Pd を加えると短波長域でθK が大きくなる。
【0149】一般に、短波長レーザーを用いて光磁気デ
ィスクを再生すると、長波長レーザーを用いて光磁気デ
ィスクを再生する場合に比べてレーザー光を小さく絞り
込むことができるので、高密度に記録された記録ビット
を再生することができる。このとき、短波長でθK の大
きい材料からなる読み出し層3を用いると、再生信号強
度が大きくなり、高品質の再生信号が得られる。
【0150】したがって、上記の実験結果によれば、短
波長レーザーを用いた記録再生には上記の添加元素を加
えることが有効な手段となる。なお、添加元素の添加量
を増やすほど、短波長域でθK が増加する効果は顕著と
なる。
【0151】X0.1 Gd0.28(Fe0.8Co0.2)0.72 0.9 の組成
では、600nm 以下の波長域でのθKの大きさは、θK (P
tを添加)≒θK (Ndを添加)>θK ( Pd を添加)≒
θK(Prを添加)なる関係がある(図31参照)。した
がって、少量のPt、Ndを添加すれば、θK を大きくでき
る。さらに、Pt添加は読み出し層3の耐湿性を向上させ
る効果がある。つまり、Pt添加は短波長域でのθK を大
きくするとともに、耐湿性を向上させる効果も合わせ持
つ。
【0152】Xa Gd0.28(Fe0.8Co0.2)0.72 1-a の組成
の材料が非晶質から結晶質へと変化する添加量を表1に
示す。
【0153】
【表1】
【0154】表1から、NdはPtよりも多量に添加可能な
ことが分かる。即ち、Ptを多量に添加すると、その材料
は非晶質から結晶質になり、このために、結晶粒界によ
るノイズが増えるが、Ndを多量に添加しても、その材料
は非晶質のままであり、組織は均一である。したがっ
て、Ndを多量に添加することが可能である。
【0155】Pd添加は、読み出し層3の耐湿性を向上さ
せる効果があり、しかも、Ptよりも埋蔵量が多いため、
安価である。PrはNdと同様に多量に添加しても、その材
料は非晶質のままであり、多量に添加することが可能で
ある。しかも、Ndよりも読み出し層3の耐湿性を向上さ
せる効果がある。
【0156】次に、読み出し層3の材料に上記元素を添
加したときの耐湿性の改善効果を調べるために行った実
験について説明する。
【0157】実験で用いたサンプルの構成を、図32に
示す。
【0158】サンプルは、3.5インチ直径のグループ
付きのガラスの基板1上に透明誘導体層2であるAlN
を80nm形成し、その上に読み出し層3としてX0.1 Gd
0.28(Fe0.8Co0.2)0.72 0.9 の組成の膜を50nm堆積し、
次に、記録層4としてDy0.23Fe0. 82Co0.18)0.77 を50nm
堆積して、さらに20nmのAlNの保護層5でコーティン
グし、5μmのオーバーコート層6でコーティングする
ことにより、作製された。
【0159】ここで、Xは添加元素であり、Pt,Pd,Nd,P
r,Ni,Mn,Be,V,Nb,Crのいずれかである。
【0160】上記光磁気ディスクのサンプルを120
℃、2気圧(湿度100%)の恒温槽に放置し、再生信
号のC/N比の時間変化を調べた。780nmの光を用
い、0.76μm長の記録ビットを記録再生した際のC
/N比の時間変化を図33に示す。C/N比は、初期値
を0dBとして、プロットされている。比較例として、
読み出し層3に上記添加物を含まないサンプルについて
の結果も同図に併せて示す。
【0161】図から明らかなように、Cr,V,Nb,Mn,Be,N
i,Pt,Pdを添加した場合、耐湿性が向上する。Cr添加は
耐湿性向上に最も効果がある。
【0162】表2は、上記の光磁気ディスクのサンプル
のカー回転角(単位は度)であり、波長780nmの光
で測定された。比較例として、読み出し層3に添加物を
含まない光磁気ディスクのサンプルのカー回転角も併せ
て示す。
【0163】
【表2】
【0164】表から明らかなように、Ni添加は、耐湿性
向上に対して効果は少ないが、カー回転角を大きくする
効果がある。
【0165】表3は、 Xa Gd0.28(Fe0.8Co0.2)0.72
1-a の組成の材料が非晶質から結晶質へと変化する添加
量aを示す。
【0166】
【表3】
【0167】表から明らかなように、Vを多量に添加し
ても非晶質のままであり、結晶粒界によるノイズを抑え
ることができ、しかも耐湿性を向上させることができ
る。
【0168】表4は、X0.05 Gd0.28(Fe0.8Co0.2)0.72
0.95の組成の材料の結晶化温度Tcr yst (非晶質が結晶
質へと変化する温度、単位は℃)を示す。
【0169】
【表4】
【0170】表から明らかなように、Nb添加は結晶化温
度を上げる作用がある。このため、繰り返し記録再生を
行っても読み出し層3の劣化を抑えることができ、しか
も、耐湿性を向上させることができる。Mnは土中の埋蔵
量が多く安価である。
【0171】表5は、上記の光磁気ディスクのサンプル
のノイズレベル(単位はdB)を示す。比較例として、
読み出し層3に添加物を含まない光磁気ディスクのサン
プルのノイズレベルも併せて示す。なお、比較例のサン
プルのノイズレベルを0dBとした。
【0172】
【表5】
【0173】Be,Ni 添加によりノイズレベルが下がる。
Be添加はNi添加より耐湿性を向上させることができる。
【0174】次に、上記の光磁気ディスクのサンプルを
用いて繰り返し記録再生を行った際の信号品質の劣化を
調べた。
【0175】表6は、室温で100万回繰り返し記録再
生後のC/N比(単位はdB)を示す。比較例として、
読み出し層3に添加物を含まない光磁気ディスクのサン
プルのC/N比も併せて示す。なお、比較例のサンプル
のC/N比を0dBとした。
【0176】
【表6】
【0177】次に、本実施例においては、読み出し層3
の膜厚を50nmとしたが、膜厚はこれに限定されるもの
ではない。情報の記録再生は、図1の通り、読み出し層
3側からなされるが、読み出し層3の膜厚が薄すぎる
と、記録層4の情報が透けてしまう。すなわち、読み出
し層3の面内磁化によるマスク効果が小さくなる。
【0178】前述の通り、読み出し層3の磁気特性は記
録層4の影響を受けるため、各々の材料、組成によって
読み出し層3の膜厚は変わってくるが、読み出し層3の
厚みとしては、20nm以上が必要である。また、好適に
は50nm以上であれば良く、あまり厚すぎると記録層の
情報が転写されなくなるので100 nm程度以下の膜厚が
好適である。
【0179】読み出し層3の膜厚が20nm、30n
m、40nm、50nmの光磁気ディスク(図1)を作
製し、基板1側から測定した室温での極カー・ヒステリ
シス・ループを図34(a)〜(d)にそれぞれ示す。
【0180】記録層4の組成は室温で補償組成に近い値
に調整されているため室温での記録層4の保磁力は非常
に大きいが、充分大きな磁界を印加すると記録層4の磁
化方向は反転する。このため、読み出し層3が記録層4
の磁化方向に交換結合力による影響を受け、図のような
極カー・ヒステリシス・ループを示す。どの場合も交換
結合力が働いているが、読み出し層3の膜厚が薄い場合
(図34(a)および(b))、印加磁界がゼロのとき
読み出し層3の磁化が完全に記録層4の磁化と同じ方向
に向き、記録層4の情報が読み出し層3によりマスクさ
れていないことが分かる。これに対し、読み出し層3の
膜厚が厚くなると(同図(c))、マスク効果が次第に
現れ、読み出し層3の膜厚が50nmである同図(d)
では、記録層4の情報が読み出し層3によりほぼ完全に
マスクされていることが分かる。
【0181】次に、読み出し層3のGdFeCoの組成
を変えて補償温度を変化させ、同時に膜厚も変化させた
ときのマスク効果の度合いを調べるために、図1の構成
の光磁気ディスクを作製し、基板1側から測定した室温
での極カー・ヒステリシス・ループより、角形比を求め
た。結果を図35に示す。図中の温度は、補償温度を示
している。
【0182】なお、角形比は、図36に示すように、角
形比=θ k r (磁場ゼロでのカー回転角)/θ k s (磁
場15kOeでのカー回転角)より計算した。角形比=
1のとき、マスク効果が全くないことを表しており、角
形比=0のとき、完全に情報がマスクされていることを
表している。
【0183】図より、補償温度が高いほど、また、読み
出し層3の膜厚が厚いほどマスク効果が大きいことが分
かる。読み出し層3の膜厚が100nm以下の場合、補
償温度が100℃以下では全くマスク効果はない。マス
ク効果を得るためには、補償温度が125℃以上である
必要があり、好ましくは150℃以上の補償温度が必要
である。同様に、マスク効果を得るためには、読み出し
層3の膜厚を10nm以上にする必要があることが分か
り、好ましくは20nm以上が必要である。
【0184】次に、読み出し層3のGdFeCoの組成
を変えて、その磁気的な特性が室温からキュリー温度に
至る温度域で希土類副格子の磁化が過多となるようにし
て、すなわち、補償温度を持たない組成にして、膜厚を
変化させたときのマスク効果の度合いを調べるために、
角形比を求めた。結果を図37に示す。図中の温度は、
キュリー温度を示している。
【0185】図より、キュリー温度が高いほど、また、
読み出し層3の膜厚が厚いほどマスク効果が大きいこと
が分かる。読み出し層3の膜厚が100nm以下の場
合、キュリー温度が100℃以下では全くマスク効果は
ない。マスク効果を得るためには、キュリー温度が13
0℃以上である必要があり、好ましくは200℃以上の
キュリー温度が必要である。同様に、マスク効果を得る
ためには、読み出し層3の膜厚を10nm以上にする必
要があることが分かり、好ましくは20nm以上が必要
である。
【0186】上記においては、読み出し層3の膜厚が1
00nm以下の場合について説明したが、読み出し層3
の膜厚を200nmした場合も、良好なマスク効果が得
られる。しかしながら、読み出し層3および記録層4を
昇温するために、非常に大きなレーザーパワーが必要と
なる。半導体レーザーの性能を考えると、読み出し層3
の膜厚は200nm以下が好ましく、150nm以下が
より好ましい。また、半導体レーザーの性能から読み出
し層3の補償温度、キュリー温度は500℃以下が好ま
しく、450℃以下がより好ましい。
【0187】記録層4 の材料は、室温からキュリー温度
まで垂直磁化を示す材料で、そのキュリー温度が記録に
適した温度範囲、すなわち 150〜250 ℃程度であれば良
い。上記実施例では、記録層4としてDyFeCoを採用した
が、DyFeCoは、その垂直磁気異方性が小さい材料であ
り、そのため、記録の際に必要な外部磁界が低くても記
録が行える。これは、特に、後述する磁界変調オーバー
ライト記録方式においては、非常に有利な点となり、記
録用外部磁界発生装置の小型化、低消費電力化が可能と
なる。
【0188】DyFeCo以外では、TbFeCo, GdTbFe, NdDyFe
Co, GdDyFeCo, GdTbFeCoが記録層4に好適である。一例
を挙げれば、TbX (FeY Co1-Y 1-X において、
任意のYに対し、0.10≦X≦0.30を満足してお
れば良い。より具体的には、例えば、Tb0.18(Fe
0.88Co0.120.82がある。
【0189】上記の光磁気ディスクの記録層4の材料を
Dy0.23(Fe0.78Co0.220.77からTb0.18(Fe
0.88Co0.120.82に代えて上記と同一の動作確認を行
ったところ、ほぼ同じ結果が得られた。
【0190】TbFeCoは、その垂直磁気異方性Ku
が約3〜4×106 erg/ccと大きい材料であり、
高温でのカーループの角形が崩れず、再生信号品質が非
常に高い光磁気記録媒体を供給することができる。
【0191】参考までに、上記TbFeCoを記録層4
として用いた光磁気ディスクで得られたカーループを図
38(a)に示し、垂直磁気異方性Kuが約1×106
erg/ccであるDyFeCoを記録層4として用い
た光磁気ディスクで得られたカーループを図38(b)
に示す。なお、カーループは、180℃の下で、光磁気
ディスクの基板1に対して記録層4側から測定された。
【0192】DyFeCoでは角形が悪くなっているの
に対し、TbFeCoの角形は垂直磁気異方性Kuが大
きいことを示している。このため、記録ビットはきれい
なエッジ形状となり、再生信号品質が高くなる。
【0193】また、上記の記録層4の材料に、Cr, V, N
b, Mn, Be, Ni のうち少なくとも1種類の元素を添加す
ると、より長期信頼性を向上させることができる。ま
た、記録層4の膜厚は、読み出し層3の材料、組成、膜
厚との兼ね合いで決まるものであるが、20nm程度以上
で 100nm以下が好適である。
【0194】透明誘電体2のAlNの膜厚は、80nmに
限定されるものではない。
【0195】透明誘電体層2の膜厚は、光磁気ディスク
を再生する際、読み出し層3からの極カー回転角を光の
干渉効果を利用して増大させる、いわゆるカー効果エン
ハンスメントを考慮して決定される。再生時の信号品質
(C/N)をできるだけ大きくさせるには、極カー回転
角を大きくさせることが必要であり、このため、透明誘
電体層2の膜厚は、極カー回転角が最も大きくなるよう
に設定される。
【0196】この膜厚は、再生光の波長、透明誘電体層
2の屈折率により変化する。本実施例の場合は、 780n
mの再生光波長に対して、屈折率 2.0のAlNを用いて
いるので、透明誘電体層2のAlNの膜厚を30〜 120n
m程度にすると、カー効果エンハンスメントの効果が大
きくなる。尚、好ましくは、透明誘電体層2のAlNの
膜厚は、70〜 100nmであり、この範囲であれば極カー
回転角がほぼ最大になる。
【0197】上記の説明は、波長が 780nmの再生光に
対するものであったが、例えば波長が半分の 400nmの
再生光に対しては、透明誘電体層2の膜厚もほぼ半分に
すれば良い。
【0198】更に、透明誘電体層2の材料の違いあるい
は製法により透明誘電体層2の屈折率が変わった場合
は、屈折率と膜厚を乗じた値(光路長)が同じになるよ
うに、透明誘電体層2の膜厚を設定すれば良い。
【0199】すなわち、本実施例においては、透明誘電
体層2のAlNの屈折率2と膜厚80nmを乗じた、 160
nmが透明誘電体層2の光路長となるが、このAlNの
屈折率が2から 2.5に変わった場合は、160 nm/2.5=6
4 nm程度に膜厚を設定すれば良いことになる。
【0200】上記の説明からわかるように、透明誘電体
層2の屈折率は大きいほど、その膜厚は少なくて済む。
また、屈折率が大きいほど、極カー回転角のエンハンス
効果も大きくなる。
【0201】AlNは、スパッター時のスパッターガス
であるArとN2の比率、ガス圧力等を変えることにより、
その屈折率が変わるが、おおむね 1.8〜 2.1程度と比較
的屈折率が大きな材料であり、透明誘電体層2の材料と
して好適である。
【0202】また、透明誘電体層2は、上記のカー効果
エンハンスメントだけでなく、保護層5とともに読み出
し層3と記録層4の希土類遷移金属合金磁性層の酸化を
防止する役割がある。
【0203】希土類遷移金属からなる磁性膜は、非常に
酸化されやすく、特に希土類が酸化されやすい。このた
め外部からの酸素、水分侵入を極力防止しなければ、酸
化によりその特性が著しく劣化してしまう。
【0204】そのため、本実施例においては、読み出し
層3と記録層4の両側をAlNで挟み込む形の構成を取
っている。AlNは、その成分に酸素を含まない窒化膜
であり、非常に耐湿性に優れた材料である。
【0205】更に、AlNは、屈折率が2前後と比較的
大きく、かつ透明であり、その酸素をその成分に含まな
いので、長期安定性に優れた光磁気ディスクを提供でき
る。加えて、A1ターゲットを用いて、N2ガスもしくは
ArとN2の混合ガスを導入して反応性DC(直流電流)ス
パッタリングを行うことが可能であり、RF(高周波)
スパッターに比べて成膜速度が大きいこと点でも有利で
ある。
【0206】AlN以外の透明誘電体層2としては、比
較的屈折率が大きいSiN、AlSiN、AlTaN、
SiAlON、TiN、TiON、BN、ZnS、Ti
2、BaTiO3 、SrTiO3 等が好適である。こ
のうち特にSiN、AlSiN、AlTiN、TiN、
BN、ZnSは、その成分に酸素を含まず、耐湿性に優
れた光磁気ディスクを提供することができる。
【0207】SiN、AlSiN、AlTaN、SiA
lON、TiN、TiON、BN、ZnS、TiO2
BaTiO3 、SrTiO3 は、スパッタリングにより
形成される。AlSiN、AlTaN、TiN、TiO
2 は、反応性DCスパッタリングを行うことが可能であ
り、RF(高周波)スパッターに比べて成膜速度が大き
いこと点でも有利である。なお、SiN、AlSiN、
AlTaN、BN、SiAlONの屈折率は、1.8〜
2.1、TiNの屈折率は、2〜2.4、ZnS、Ti
ONの屈折率は、2〜2.5、TiO2 、BaTi
3 、SrTiO3の屈折率は、2.2〜2.8であ
り、これらの屈折率はスパッタリング条件により変わ
る。
【0208】SiN、AlSiNは、熱伝導率が比較的
小さいため、高記録感度光磁気ディスクに適している。
AlTaN、TiNはそれぞれTa、Tiが含まれてい
るため、耐食性(孔食性)に優れた光磁気ディスクが得
られる。BNは非常に硬く、摩耗に強いので、傷の発生
を防ぎ、長期安定性に優れた光磁気ディスクが得られ
る。ZnS、SiAlON、TiONは、ターゲットが
安価である。TiO2 、BaTiO3 、SrTiO
3 は、屈折率が非常に大きいので、再生信号品質に優れ
た光磁気ディスクが得られる。
【0209】上記の光磁気ディスクの透明誘電体層2の
材料をAlNからSiNに代えて上記と同一の動作確認
を行ったところ、ほぼ同じ結果が得られた。
【0210】保護層5のAlNの膜厚は、本実施例では
20nmとしたが、これに限定するものでは無い。保護層
5の膜厚の範囲としては、1 〜200 nmが好適である。
【0211】本実施例においては、読み出し層3と記録
層4の両磁性層あわせた膜厚は100nmであり、この膜
厚になると光ピックアップから入射された光はほとんど
磁性層を透過しない。したがって、保護層5の膜厚に特
に制限はなく、磁性層の酸化を長期に渡って防止するに
必要な膜厚であれば良い。酸化防止能力が低い材料であ
れば膜厚を厚く、高ければ薄くすれば良い。
【0212】保護層5は、透明誘導体層2ととものその
熱伝導率が、光磁気ディスクの記録感度特性に影響を及
ぼす。記録感度特性とは、記録、あるいは消去に必要な
レーザーパワーがどの程度必要かを意味する。光磁気デ
ィスクに入射された光はそのほとんどが、透明誘導体層
2 を通過し、吸収膜である読み出し層3・記録層4に吸
収されて、熱に変わる。このとき、読み出し層3・記録
層4の熱が透明誘導体層2 、保護層5に熱伝導により移
動する。したがって、透明誘導体層2 、保護層5 の熱伝
導率および熱容量(比熱) が記録感度に影響を及ぼす。
【0213】このことは、光磁気ディスクの記録感度を
保護層5 の膜厚である程度制御できるということを意味
し、例えば、記録感度を上げる( 低いレーザーパワーで
記録消去を行える) 目的であれば保護層5 の膜厚を薄く
すれば良い。通常は、レーザー寿命を延ばすため、記録
感度はある程度高い方が有利であり、保護層5の膜厚は
薄い方が良い。
【0214】AlNはこの意味でも好適で、耐湿性に優
れるので、保護層5として用いた場合、膜厚を薄くする
ことができ、記録感度の高い光磁気ディスクを提供する
ことができる。
【0215】本実施例では、保護層5を透明誘導体層2
と同じAlNとすることで、耐湿性に優れた光磁気ディ
スクを提供でき、かつ保護層5と透明誘導体層2 を同じ
材料で形成することで、生産性も向上させることができ
る。AlNは、前述の通り、非常に耐湿性に優れた材料
であるので、比較的薄い膜厚である20nmに設定するこ
とができる。生産性を考慮しても薄いほうが有利であ
る。 また、保護層5の材料としては、AlN以外に、
前述の目的、効果を考慮すれば、上述の透明誘導体層2
の材料として用いられる、SiN、AlSiN、AlT
aN、SiAlON、TiN、TiON、BN、Zn
S、TiO2 、BaTiO3 、SrTiO3 が好適であ
る。
【0216】また、透明誘導体層2 と同じ材料を用いれ
ば生産性の点でも有利である。
【0217】このうち特に、SiN、AlSiN、Al
TaN、TiN、BN、ZnSは、その成分に酸素を含
まず、耐湿性に優れた光磁気ディスクを提供することが
できる。
【0218】基板1の材料としては、上記のガラス以外
に、化学強化されたガラス、これらのガラス基板上に紫
外線硬化型樹脂層を形成した、いわゆる2P層付きガラ
ス基板、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタク
リレート(PMMA)、アモルファスポリオレフィン
(APO)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビフェニ
ール(PVC)、エポキシ等の基板1を使用することが
可能である。
【0219】基板1に化学強化されたガラスを採用した
場合、機械特性(光磁気ディスクの場合、面振れ、偏
心、反り、傾き等)に優れていること、硬度が大きく、
砂や埃により傷が付きにくいこと、化学的に安定なた
め、各種溶剤に溶けないこと、プラスチックに比べ帯電
しにくいので埃や塵が付着しにくいこと、化学的に強化
されているので割れにくいこと、耐湿性、耐酸化性、耐
熱性に優れているので、光磁気記録媒体の長期信頼性が
向上すること、光学特性に優れており、高い信号品質が
得られること等が利点として挙げられる。
【0220】尚、基板1として、上記のガラス、化学強
化ガラスを用いた場合に、光ビーム案内用のガイドトラ
ック、及びアドレス信号等の情報を得るために予め基板
に形成されるプリピットと呼ばれる凹凸信号を基板上に
形成する方法としては、これらガラス基板表面を反応性
ドライエッチングすることにより形成される。また、2
P層と呼ばれる紫外線硬化型樹脂を照射して樹脂を硬化
させた後、スタンパーをはがして樹脂層上に上記のガイ
ドトラック、プリピット等を形成する方法がある。
【0221】基板1にPCを採用した場合、射出成型が
できるため、同一の基板1を大量に、安価に供給できる
こと、ほかのプラスチックに比べ、吸水率が低いので、
光磁気記録媒体の長期信頼性が向上すること、耐熱性、
耐衝撃性に優れていることなどが利点として挙げられ
る。なお、この材料も含め、以下に述べる射出成型が可
能な材料については、ガイドトラック、プリピット等
は、射出成型時にスタンパーを成型金型表面に取り付け
ておけば、成型と同時に基板1の表面に形成される。
【0222】基板1にPMMAを採用した場合、射出成
型ができるため、同一の基板1を大量に、安価に供給で
きること、他のプラスチックに比べ、複屈折が小さいの
で、光学特性に優れており、高い信号品質が得られるこ
と、耐久性に優れていること等が利点として挙げられ
る。
【0223】基板1にAPOを採用した場合、射出成型
ができるため、同一の基板1を大量に、安価に供給でき
ること、他のプラスチックに比べ、吸水率が低いので、
光磁気記録媒体の長期信頼性が向上すること、複屈折が
小さいので、光学特性に優れており、高い信号品質が得
られること、耐熱性、耐衝撃性に優れていること等が利
点として挙げられる。
【0224】基板1にPSを採用した場合、射出成型が
できるため、同一の基板1を大量に、安価に供給できる
こと、他のプラスチックに比べ、吸水率が低いので、光
磁気記録媒体の長期信頼性が向上すること等が利点とし
て挙げられる。
【0225】基板1にPVCを採用した場合、射出成型
ができるため、同一の基板1を大量に、安価に供給でき
ること、他のプラスチックに比べ、吸水率が低いので、
光磁気記録媒体の長期信頼性が向上すること、難燃性で
あること等が利点として挙げられる。
【0226】基板1にエポキシを採用した場合、他のプ
ラスチックに比べ、吸水率が低いので、光磁気記録媒体
の長期信頼性が向上すること、熱硬化性樹脂であるた
め、耐熱性に非常に優れていること等が利点として挙げ
られる。
【0227】以上のように基板1として、各種材料を使
用することが可能であるが、それらの材料を光磁気ディ
スクの基板1として使用する場合、以下の光学特性、機
械特性を満足していることが望ましい。
【0228】屈折率 :1.44〜1.62 復屈折 :100nm以下(平行光で測定された往
復複屈折) 透過率 :90%以上 厚さ変動 :±0.1mm チルト :10mrad以下 面振れ加速度:10m/s2 以下 径方向加速度:3m/s2 以下 記録層4にレーザー光を集光するための光ピックアップ
は、基板1の屈折率に合わせて設計されるため、基板1
の屈折率の変動が大きくなるとレーザー光を十分に集光
することができなくなる。レーザー光の集光状態が変わ
ってくると記録媒体(つまり、読み出し層3と記録層
4)の温度分布が変化することになり、記録再生に影響
を及ぼす。本発明においては、再生時の記録媒体の温度
分布が特に重要となってくるため、使用する基板1の屈
折率を1.44〜1.62の範囲内に抑えることが望ま
しい。
【0229】また、基板1を通してレーザー光を入射さ
せるため、基板1に複屈折が存在すると、レーザー光が
基板1を通過する際、その偏光状態が変わってしまう。
本発明は読み出し層3の磁化状態の変化をカー効果を利
用して偏光状態の変化として再生するため、基板1を通
過する際に偏光状態が変わってしまうと再生することが
できなくなってしまう。そのため、平行光で測定した際
の基板1の往復複屈折は100 nm以下であることが望ま
しい。
【0230】また、基板1の透過率が低くなると、例え
ば記録時において、光ピックアップからの光ビームが基
板1を通過する際、その光量が減少してしまう。そのた
め、記録に必要である光量を記録媒体で得ようとする
と、より高出力なレーザー光源が必要となる。特に本発
明においては、記録媒体が記録層4と読み出し層3の2
層からなっており、従来の単層の(読み出し層3のな
い)記録媒体に比べて、記録媒体を昇温するためには、
より多くの光量を必要とするため、基板1の透過率は9
0%以上であることが望ましい。
【0231】また、記録媒体にレーザー光を集光するた
めの光ピックアップは、基板1の厚さに合わせて設計さ
れるため、基板1の厚さの変動が大きくなるとレーザー
光を十分に集光することができなくなる。レーザー光の
集光状態が変わってくると記録媒体の温度分布が変化す
ることになり、記録再生に悪影響を及ぼす。本発明にお
いては、再生時の記録媒体の温度分布が特に重要となっ
てくるため、使用する基板1の厚さ変動を±0.1mm の範
囲内に抑えることが望ましい。
【0232】また、基板1にチルトが存在すると光ピッ
クアップからのレーザー光は、傾いた記録媒体面に集光
されることになり、チルトの状態に応じて集光状態が変
化することになり、基板1の厚さが変動した場合と同様
に、記録再生に悪影響を及ぼす。そのため、本発明にお
いては、基板1のチルトを10mrad以下、もっと好ましく
は5mrad 以下とすることが望ましい。
【0233】また、基板1が光ピックアップに対して上
下に移動した場合、光ピックアップはその上下動を補償
し記録媒体面にレーザー光を集光すべく動作するが、上
下動が大きくなり過ぎると光ピックアップの補償動作が
不完全なものとなり、記録媒体面でのレーザー光の集光
状態は不完全なものとなる。レーザー光の集光状態が不
完全なものとなると記録媒体の温度分布が変化すること
になり、記録再生に悪影響を及ぼす。本発明において
は、再生時の記録媒体の温度分布が特に重要となってく
るため、使用する基板の回転時の上下動については、そ
の面振れ加速度を10m/s2 以下に抑えることが望ま
しい。
【0234】また、基板1にはあらかじめ1.0〜1.
6μmピッチで光ビーム案内用のガイドトラックが設け
られているが、ガイドトラックに偏心が存在すると、回
転時にガイドトラックは光ピックアップに対して半径方
向に移動することになる。この時、光ピックアップはそ
の半径方向の移動を補償しガイドトラックと一定の関係
を保つべくレーザー光を集光させるが、ガイドトラック
の半径方向への移動が大きくなり過ぎると光ピックアッ
プの補償動作が不完全なものとなり、ガイドトラックと
一定の関係を保った状態でレーザー光を集光させること
ができなくなる。本発明においては、再生時の記録媒体
の温度分布が特に重要となってくるため、使用する基板
の回転時の半径方向への移動については、その径方向加
速度を3m/s2 以下に抑えることが望ましい。
【0235】集光されたレーザー光を光磁気ディスクの
所定の位置に導く方法として、スパイラル状、または、
同心円状のガイドトラックを利用した連続サーボ方式
と、スパイラル状、または、同心円状のピット列を利用
したサンプルサーボ方式が考えられる。
【0236】連続サーボ方式の場合、図16に示すよう
に、1.2〜1.6μmピッチで、0.2〜0.6μm
幅のグループが、λ/(8n)程度の深さで形成され、
ランド部分で情報の記録再生が行われるのが一般的であ
る。これはランド仕様の光磁気ディスクと呼ばれる。こ
こで、λはレーザビームの波長であり、nは使用される
基板の屈折率である。
【0237】このような、一般的な方式に本発明を適用
することは十分に可能である。本発明においては、隣接
トラックの記録ビットのよるクロストークが大幅に低減
されることにより、例えば、ランド仕様の光磁気ディス
クにおいては、0.5〜1.2μmピッチで、0.1〜
0.4μm幅のグループを形成した場合でも、隣接記録
ビットからのクロストークに影響されることなく、記録
再生を行うことが可能になり、記録密度は大幅に向上す
る。
【0238】更に、図17に示すように、0.8〜1.
6μmピッチで、同一幅のグループとランドを形成し、
グループ部分とランド部分の両方で記録再生を行った場
合においても隣接トラックの記録ビットからのクロスト
ークに影響されることなく、グループ部分とランド部分
の両方で記録再生を行うことが可能となり、記録密度は
大幅に向上する。
【0239】一方、サンプルサーボ方式の場合は、図1
8に示すように、1.2〜1.6μmピッチでもってウ
ォブルピットが(λ/(4n))程度の深さで形成さ
れ、レーザビームが常にウォブルピットの中心を走査す
るように情報の記録再生が行われるのが一般的である。
このような一般的な方式に本発明を適用することは十分
に可能である。本発明においては、隣接する記録ビット
からのクロストークが大幅に低減されることにより、
0.5〜1.2μmピッチで、ウォブルピットを形成し
た場合でも、隣接する記録ビットからのクロストークに
影響される事なく、記録再生を行うことが可能となり、
記録密度は大幅に向上する。
【0240】さらに、図19に示すように、0.8〜
1.6μmピッチで、ウォブルピットを形成し、ウォブ
ルピットが逆極性で存在する位置に情報の記録再生を行
った場合において隣接記録ビットからのクロストークに
影響される事なく記録再生を行うことが可能となり、記
録密度は大幅に向上する。
【0241】また、図20に示すように、連続サーボ方
式において、グルーブをウォブリングさせることにより
光磁気ディスクの位置情報を得る場合は、ウォブリング
状態が逆位相となった部分において、隣接グルーブに存
在する記録ビットからのクロストークが大きくなるとい
う問題が存在したが、本発明を適用することによりウォ
ブリング状態が逆位相となった部分においても、隣接グ
ルーブに存在する記録ビットからのクロストークが発生
する事なく、良好な記録再生を行うことが可能となる。
【0242】本実施例の光磁気ディスクは、また、以下
に説明するような種々の記録再生用光ピックアップにも
好適である。
【0243】例えば、複数の光ビームを使用したマルチ
ビーム方式の光ピックアップを採用する場合、図21に
示すように、複数の光ビームの両端の光ビームがガイド
トラック上を走査するように位置決めし、その間に位置
する複数の光ビームで記録再生を行う方法が一般的であ
るが、本発明の光磁気ヘッドディスクを用いることによ
り、光ビームの間隔を狭くしても隣接記録ビットからの
クロストークの影響を受けることなく再生することが可
能となり、ガイドトラックのピッチを短くすることが可
能となるか、又は、一対のガイドトラックの間により多
くのレーザビームで記録再生することが可能となり、記
録密度は大幅に向上する。
【0244】以上の説明では、使用する光ピックアップ
の対物レンズの開口数(N.A.)が一般的な値である
0.4〜0.6を有するとし、また、レーザー光の波長
が670nm〜840nmであるとして、ガイドトラッ
クのピッチ等について議論しているが、N.A.を更に
大きく0.6〜0.95とすることで、レーザー光を更
に小さく絞り込み、本発明の光磁気ディスクを適用する
ことにより、ガイドトラックのピッチ及び幅を更に狭く
することが可能となり、更に高密度な記録再生が可能と
なる。
【0245】また、波長480nmのアルゴンレーザー
光やSHG素子を利用した335nm〜600nmの波
長のレーザ光を使用することにより、レーザー光を更に
小さく絞り込み、本発明を適用することにより、ガイド
トラックのピッチ及び幅を更に狭くすることが可能とな
り、更に高密度な記録再生が可能となる。
【0246】a/wに関しては、0.3〜1.0のもの
が使える。ここで、aはレンズの光学的に有効な直径、
wはレンズに入る光束の直径でガウス分布している場合
は中心強度の1/e2 の強度になる半径である。
【0247】次に、本実施例の光磁気ディスクに適用す
る際のディスクフォーマットについて記述する。
【0248】一般に、光磁気ディスクにおいては、異な
るメーカー間、あるいは、異なる光磁気ディスク間の互
換性を維持するために、それぞれの半径位置での記録、
消去パワーをどのような値あるいは、デューティーに設
定するかを、内外周の一部に(λ/(4n))程度の深
さのプリピット列であらかじめ記録されている。また、
読み取ったそれらの値を元に、実際に記録再生を行える
テスト領域が内外周に設けられている(例えば、IS1008
9 規格を参照)。
【0249】一方、再生パワーについても、特定の再生
パワーとするための情報が、内外周の一部にプリピット
列であらかじめ記録されている。
【0250】本発明の光磁気ディスクにおいては、再生
時の記録媒体の温度分布が再生特性に大きな影響を及ぼ
すため、再生パワーの設定方法が非常に重要である。
【0251】再生パワーの設定方法として、例えば、再
生パワーについても記録パワーと同様に、内外周に再生
パワーを設定するためのテスト領域を設け、テスト領域
において得られた再生パワーからそれぞれの半径位置で
の再生パワーを最適化するための情報を、内外周の一部
にピット列で予め記録しておく方が望ましい。
【0252】特に光磁気ディスクの回転数が常に一定で
あるCAV方式を用いる光磁気ディスク・ドライブにお
いては、半径位置に応じて光磁気ディスクの線速が変わ
るため、半径位置に応じて再生レーザーパワーを変えた
ほうがより好ましい。したがって、できるだけ多くの半
径方向領域に区切った情報をプリピット列として記録し
ておいたほうが良い。
【0253】また、同じく、各半径位置でより最適な再
生レーザーパワーを設定する方法として、記録領域を半
径位置により複数のゾーンに分けて、ゾーンとゾーンの
境界部分にそれぞれのゾーンごとに記録パワー及び再生
パワーをテスト領域において最適化することにより、再
生時の記録媒体の温度分布をより正確に制御することが
可能となり、良好な記録再生が可能となる。
【0254】次に、本実施例の光磁気ディスクは、以下
に説明する種々の記録方式に適応するものである点につ
いて説明する。
【0255】まず、オーバーライトができない第1世代
の光磁気ディスクの記録方法について説明する。
【0256】第1世代の光磁気ディスクは、IS10089
規格(ISOの5.25”書き換え型光ディスクについ
て定めた規格)に準拠して、既に多く市販されており、
オーバーライトができないため、すでに情報が記録され
ている所に、新たに情報を記録する場合には、一旦その
部分の消去を行い、次に記録を行うという動作が必要に
なる。そのため、最低2回の光磁気ディスクの回転が必
要になり、データ転送速度が遅いという欠陥がある。
【0257】しかしながら、磁性膜に要求される性能
は、次に説明するオーバーライト可能な光磁気ディスク
に比べて、それほど高くないという利点はある。
【0258】オーバーライトができない欠点を無くすた
めに、例えば複数個の光学ヘッドを配して、回転待ちの
ロスを無くし、データ転送速度を向上させる方法は一部
の装置で採用されている。
【0259】例えば、2個の光学ヘッドを用いて、先行
する光学ヘッドで既に記録されている情報を消去し、後
から追いかける光学ヘッドで新しい情報を記録する方法
である。再生の際は、どちらか一方の光学ヘッドを用い
て再生する。
【0260】また、3個の光学ヘッドを用いて記録する
場合は、先行する光学ヘッドが既に記録されている情報
を消去し、次の光学ヘッドで新しい情報を記録し、残り
の光学ヘッドでベリファイ(新しい情報が正しく記録さ
れているかを確認)する。
【0261】また、複数の光学ヘッドを用いる代わり
に、1個の光学ヘッドをビームスプリッターを用いて複
数のビームを作り出し、これを上記複数の光学ヘッドと
同じように用いても良い。
【0262】これにより、既に記録されている情報の消
去過程を経ることなく、新たな情報の記録が行え、第1
世代の光磁気ディスクを用いての疑似オーバーライトが
実現できる。
【0263】本実施例の光磁気ディスクは、既に実験結
果説明の所で示した通り、記録、再生、消去が行える事
が確認できており、本記録方式に適用できる光磁気ディ
スクとなっている。
【0264】次に、磁界変調オーバーライト記録方式に
ついて説明をする。
【0265】磁界変調オーバーライト記録方式とは、光
磁気記録媒体に一定のパワーのレーザーを照射しなが
ら、情報に応じて磁界強度を変調して記録する方法であ
り、図22に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0266】図22は、光磁気ディスクに磁界変調オー
バーライトを行う光磁気ディスク装置の一例を示す模式
図であり、記録及び再生時にレーザー光を照射するレー
ザー光源(図示されていない)、及び記録及び再生時に
光磁気ディスクからの反射光を受光する受光素子(図示
されていない)等を内蔵した光学ヘッド11と、光学ヘ
ッド11と機械的、もしくは電気的に連結された浮上型
磁気ヘッド12を備えている。
【0267】浮上型磁気ヘッド12は浮上スライダー1
2aとMnZnフェライト等からなるコアにコイルが巻
回された磁気ヘッド12bから構成され、浮上型磁気ヘ
ッド12はサスペンション13により光磁気ディスク1
4に押圧され、数μm〜数10μm程度の一定の間隙で
浮上している。
【0268】この状態で浮上型磁気ヘッド12および光
学ヘッド11を光磁気ディスク14の記録領域内の所望
の半径位置に移動させ、光学ヘッド11から光磁気ディ
スク14の記録層に2〜10mW程度のレーザー光を集
光して照射し、記録層4をキュリー温度(又は保磁力が
ほぼ“0”になる温度)近傍まで昇温させた上で、記録
すべき情報に応じて上向きと下向きとに反転する磁界を
磁気ヘッド12bにより印加する。これにより、既に記
録されている情報の消去過程を経ることなく、オーバー
ライト記録方式で情報の記録を行うことができる。
【0269】尚、本実施例では、磁界変調オーバーライ
ト時に、レーザーパワーを一定としたが、磁界の極性が
切り替わる時にレーザーパワーを記録されないパワーま
で下げて、記録がなされないようにすると、記録される
記録ビット形状がよりきれいになり、再生信号品質が向
上する。
【0270】磁界変調オーバーライトにおいては、高速
記録を行おうとする場合には、高速で磁界を変調する必
要があるが、磁気ヘッド12bの消費電力、大きさの点
で制約があり、あまり大きな磁界を、発生させることは
困難である。従って、光磁気ディスク14には、比較的
小さな磁界で記録できることが要求される。
【0271】本実施例の光磁気ディスクにおいては、記
録層4のキュリー温度を150〜250℃と比較的低く
押さえ、記録がなされやすくするとともに、垂直磁気異
方性の小さい材料であるDyFeCoを採用することで、記録
時の磁界をより低く押さえることができ、磁界変調オー
バーライト方式に非常に適した構成となっている。
【0272】次に、光変調オーバーライト記録方式につ
いて説明する。
【0273】光変調オーバーライト記録方式とは、磁界
変調オーバーライト記録方式とは全く逆であり、光磁気
記録媒体に一定の磁界強度を印加し、情報に応じてレー
ザーパワーを変調して記録する方法である。これについ
て、図23ないし図27に基づいて説明すれば、以下の
通りである。
【0274】図24は、以下に説明する光変調オーバー
ライト記録方式に適した、読み出し層3及び記録層4の
膜面に垂直方向の保磁力の温度依存性および記録磁場H
W を示している。
【0275】記録は、記録磁場HW を印加しながら、高
低、2レベルに強度変調されたレーザー光を照射するこ
とにより行う。すなわち、図25に示すように、高レベ
ルIのレーザー光が照射されると、読み出し層3及び記
録層4がともにキュリー点TC1、TC2付近またはそれ以
上となる温度TH まで昇温し、低レベルIIのレーザー光
が照射されると、記録層4のみがキュリー点TC2以上と
なる温度TL まで昇温するように設定されている。
【0276】したがって、低レベルIIのレーザー光が照
射されると、読み出し層3の保磁力H1 は十分小さいの
で、磁化は記録磁場HW の向きに従い、さらに冷却の過
程で記録層4に転写される。すなわち、図23に示すよ
うに、磁化は上向きになる。次に、高レベルIのレーザ
ー光が照射されると、補償温度を越えているので、読み
出し層3の磁化の向きは記録磁場HW により、低レベル
IIのレーザー光の場合とは逆向き、すなわち、下向きと
なる。冷却の過程では低レベルIIのレーザー光と同じ温
度迄下がるが、読み出し層3と記録層4の冷却過程が異
なる(記録層4の方が速く冷却される)ため、まず記録
層4のみ低レベルIIのレーザー光が照射された温度TL
となり読み出し層3の磁化の向きが記録層4に転写さ
れ、下向きとなる。その後、読み出し層3が低レベルII
ののレーザー光と同じ温度迄下がり、記録磁場HW の向
きに従い、上向きとなる。この時、記録層4の磁化の向
きはその保磁力H2 が記録磁場HW より十分大きいの
で、記録磁場HW の向きには従わない。
【0277】再生時、レーザー光の強度が図25のレベ
ルIII のレーザー光が照射されると、読み出し層3の温
度はTR (図24)となり、読み出し層3の磁化が面内
磁化から垂直磁化に移行し、記録層4及び読み出し層3
の両層とも垂直磁気異方性を示す。この時、記録磁場H
W は印加されないか、または、印加されても記録層4の
保磁力H2 より十分小さいので、再生時には読み出し層
3の磁化の向きは記録層4との界面に作用する交換力に
より記録層4の向きと一致する。
【0278】これにより、既に記録されている情報の消
去過程を経ることなく、オーバーライト記録方式で情報
の記録を行うことができる。
【0279】尚、記録は、記録磁場HW を印加しなが
ら、図26または、図27に示すような変調された2タ
イプのレーザー光を照射して行ってもよい。
【0280】すなわち、タイプIの高レベルのレーザー
光が照射されると、読み出し層3及び記録層4がともに
キュリー点TC1、TC2付近またはそれ以上となる温度T
H まで昇温し、タイプIIの低レベルのレーザー光が照射
されると、記録層4のみがキュリー点TC2以上となる温
度TL まで昇温するように設定されている。このように
すると、特にタイプIの高レベルのレーザー光が照射さ
れた時の読み出し層3と記録層4の冷却過程を大きく相
違させることができる。すなわち、記録層4の方が速く
冷却される。このため、より容易に重ね書きを行うこと
ができる。
【0281】但し、タイプIの高レベルのレーザー光が
照射された後、しばらく照射されるレーザー光の強度
は、高レベル以下であればよい。
【0282】以上の記録方式によれば、光変調オーバー
ライト時に、一般には必要となる初期化用磁界を印加す
る必要がなくなる利点がある。
【0283】上記光磁気ディスク(図1)は、一般には
片面タイプと呼ばれる。この光磁気ディスクは、透明誘
電体層2、読み出し層3、記録層4、保護層5の薄膜部
分を総じて記録媒体層と称することにすると、図28に
示すように、基板1、記録媒体層9、オーバーコート層
6の構造となる。
【0284】これに対して、図29に示すように、基板
1の上に記録媒体層9を形成したものを2枚、記録媒体
層9・9が対向するように接着層10で接着した光磁気
ディスクは、両面タイプと呼ばれている。
【0285】尚、接着層10の材料はポリウレタンアク
リレート系接着剤が特に良い。この接着剤は紫外線、熱
及び嫌気性の3タイプの硬化機能が組み合わされたもの
であり、紫外線が透過しない記録媒体層9の影になる部
分の硬化が熱及び嫌気性硬化機能により硬化されるとい
う利点を持っており、極めて高い耐湿性を有し、長期安
定性に極めて優れた両面タイプの光磁気ディスクを提供
することができる。
【0286】片面タイプは、両面タイプと比べて光磁気
ディスクの厚みが半分で済むため、例えば小型化が要求
される記録再生装置に有利である。
【0287】両面タイプは、両面再生が可能なため、例
えば大容量を要求される記録再生装置に有利である。
【0288】片面タイプ、両面タイプのいずれを採用す
るかは上記のような光磁気ディスクの厚さ、容量を考慮
する以外に、以下に説明するように、記録方式にも大き
く依存する。
【0289】光磁気ディスクへの情報の記録には、周知
のごとく、光ビームと磁界が用いられる。図22に示す
ように、光磁気ディスク装置においては、半導体レーザ
ー等の光源からの光ビームを集光レンズ8で基板1を通
して記録媒体層9上に集光させて照射し、これと対峙し
た位置に設けられた磁石、電磁石等の磁界発生装置(例
えば、浮上型磁気ヘッド12)により磁界が記録媒体層
9に印加されるようになっている。記録の際には光ビー
ム強度を再生時よりも高くすることで、集光された部分
の記録媒体層9の温度が上昇し、その部分の磁性膜の保
磁力が小さくなる。この時に外部から保磁力以上の大き
さの磁界を印加すると、印加された磁界の方向に磁性膜
の磁化がならい、記録が完了する。
【0290】例えば、情報に応じて記録用磁界を変調す
る磁界変調オーバーライト方式では、磁界発生装置(多
くは電磁石)を極力記録媒体層9に近づける必要があ
る。これは、電磁石のコイルの発熱、装置消費電力、大
きさ等の制限により、記録に必要な周波数(一般には数
百kHz〜数十MHz)で変調し、記録に必要な磁界(一般
的には500e〜数百Oe程度)を発生させようとする
と、記録媒体に0.2mm以下程度、多くの場合は50μ
m程度まで近づける必要が生じる。このため、両面タイ
プの光磁気ディスクでは、基板1の厚さが一般に1.2
mm前後であり薄くても0.5mm程度必要なため、光ビー
ムを対峙させて電磁石を配した場合、記録磁界強度が不
足してしまい、記録を行えない。従って、記録変調オー
バーライト方式に適した記録媒体層9を採用した場合
は、片面タイプの光磁気ディスクが多く用いられる。
【0291】これに対して、情報に応じて光ビームを変
調する光変調オーバーライト方式では、記録用の磁界が
一方向を向いたまま、あるいは記録用磁界が不要であ
る。よって、発生磁界の強い、例えば永久磁石を用いる
ことができ、磁界変調オーバーライト方式の場合のよう
に記録媒体層9に極力近づけて配置せずとも、記録媒体
層9から数mm程度離して配置できる。従って、片面タイ
プだけでなく、両面タイプも採用できる。
【0292】本実施例の光磁気ディスクを片面ディスク
として用いる場合、構造上、以下に説明するようなバリ
エーションが可能である。
【0293】第1のバリエーションは、オーバーコート
層6上にハードコート層(図示されていない)を形成し
た光磁気ディスクであり、基板1/記録媒体層9/オー
バーコート層6/ハードコート層の構造を有している。
ハードコート層として、例えばアクリレート系の紫外線
硬化型ハードコート樹脂膜を、例えばポリウレタンアク
リレート系の紫外線硬化型樹脂からなり膜厚が約6μm
のオーバーコート層6の上に形成する。ハードコート層
の膜厚は、例えば3μmである。
【0294】オーバーコート層6を形成することで、記
録媒体層9の酸化による特性劣化を防ぎ、長期信頼性を
確保することができる。これに加えて、ハードコート膜
を設けることで、例えば記録用の磁石がディスクに接触
してしまっても、硬度の高い、耐摩耗性にすぐれたハー
ドコート膜の作用で、傷を付きにくくし、また傷が発生
しても、それが記録媒体層9にまで達することを防ぐこ
とができる。
【0295】また、当然のことながら、オーバーコート
層6にハードコート層の機能を付加させてオーバーコー
ト層6だけで済ませても良い。
【0296】第2のバリエーションは、オーバーコート
層6上にハードコート層を形成すると共に、基板1の記
録媒体層9とは反対側の面にハードコート層(図示され
ていない)を形成した光磁気ディスクであり、ハードコ
ート層/基板1/記録媒体層9/オーバーコート層6/
ハードコート層の構造を有している。
【0297】光磁気ディスク用の基板1の材料として、
PCをはじめとするプラスチックが多く用いられるが、
これらの材料はガラスに比べて、非常に柔らかく、爪で
こすっただけでも傷が入ってしまう。この傷は、光ビー
ムで記録再生を行う際にひどい場合には、サーボ飛びを
生じさせ、情報の記録再生が不可能になる場合もある。
【0298】本実施例の光磁気ディスクにおいては、光
ビームの中心近傍だけを利用して再生を行うので、基板
1の表面の傷等の欠陥が再生に及ぼす影響が従来の光磁
気ディスクよりも大きくなってしまう。このため、ハー
ドコート層を基板1の記録媒体層9とは反対側の面に設
けることで、傷発生が防ぐことができる本構成は非常に
有効である。
【0299】また、両面タイプにおいても、光磁気ディ
スクのそれぞれの基板1・1の表面にハードコート層を
設ければ、同様の効果があることは明らかである。
【0300】第3のバリエーションは、上記第1、第2
のバリエーションのオーバーコート層6上、あるいは、
ハードコート層上に更に、帯電防止コート層(図示され
ていない)、あるいは、帯電防止機能を付加させた層を
形成した光磁気ディスクである。
【0301】基板1の表面にゴミ、ほこりが付くと、傷
と同様に情報の記録再生が不可能となる場合がある。ま
た、オーバーコート膜6上にほこりが付くと、磁界変調
オーバーライト方式の場合に、磁石を浮上型磁気ヘッド
12(図22)として、オーバーコート膜6上を数μm
のギャップで配置しているような場合には、ゴミ、ほこ
りが浮上型磁気ヘッド12、記録媒体層9の損傷を生じ
させてしまう。
【0302】本構成のように、基板1側の表面または記
録媒体層9側表面に帯電防止機能を有する層が設けられ
た構成を取れば、空気中のゴミ、ほこり等が基板1の表
面あるいはオーバーコート層6上に付着するのを防止す
ることができる。
【0303】本実施例の光磁気ディスクにおいては、光
ビームの中心近傍だけを利用して再生を行うので、基板
1の表面のゴミ、ほこり等の欠陥が再生に及ぼす影響が
従来の光磁気ディスクよりも大きいので、本構成は極め
て有効である。
【0304】帯電防止層としては、例えば、導電性フィ
ラーを混入したアクリル系ハードコート樹脂を使用する
ことができ、その膜厚は約2〜3μmが適当である。
【0305】また、帯電防止層は、プラスチックの基板
1、ガラスの基板1を問わず、表面抵抗率を下げ、ゴ
ミ、ほこり等を付きにくくする目的で設けられる。
【0306】また、当然のことながら、オーバーコート
層6またはハードコート層に帯電防止効果を付加させて
も良い。
【0307】また、両面タイプにおいても、光磁気ディ
スクのそれぞれの基板1・1の表面に対して、本構成を
適用できることは明らかである。
【0308】第4のバリエーションは、オーバーコート
層6上に潤滑層(図示されていない)を形成した光磁気
ディスクであり、基板1/記録媒体層9/オーバーコー
ト層6/潤滑層の構造を有している。潤滑層としては、
例えば、フッ素系樹脂を使用することができ、その膜厚
は約2が適当である。
【0309】潤滑層を設けることで、磁界変調オーバー
ライト方式で浮上型磁気ヘッド12を用いた場合、浮上
型磁気ヘッド12と光磁気ディスクとの間の潤滑性を向
上させることができる。
【0310】すなわち、浮上型磁気ヘッド12は記録媒
体層9上に数μmから数十μmのギャップを保ちながら
情報の記録を行うために配置されるものであり、浮上型
磁気ヘッド12を記録媒体層9に押し付けるよう働くサ
スペンション13による押圧と、光磁気ディスクの高速
回転による空気流により発生して浮上型磁気ヘッド12
を記録媒体層9から離すように働く浮上力をバランスし
て、上記ギャップが保たれる。
【0311】このような浮上型磁気ヘッド12を用い
て、光磁気ディスクの回転開始時、所定回転数に達する
までの時間、及び、回転終了時、所定回転数より停止に
至るまでの間、浮上型磁気ヘッド12と光磁気ディスク
とが接するCSS(Contact-Start-Stop)方式を採用す
る場合には、浮上型磁気ヘッド12と光磁気ディスクと
が吸着すると、光磁気ディスクの回転開始時、浮上型磁
気ヘッド12が破損されることがある。しかしながら、
本実施例の光磁気ディスクによれば、オーバーコート層
6上に潤滑膜を設けたので、浮上型磁気ヘッド12と光
磁気ディスクとの間の潤滑性が向上し、吸着による浮上
型磁気ヘッド12の破損を防止できる。
【0312】当然のことながら、記録媒体層9の劣化を
防ぐ、耐湿保護性能も兼ね備えた材料であれば、オーバ
ーコート層6と潤滑層を別々に設ける必要はない。
【0313】第5のバリエーションは、基板1の記録媒
体層9とは反対側の面に透湿防止層(図示されていな
い)と第2のオーバーコート層(図示されていない)と
を積層した光磁気ディスクであり、オーバコート層/透
湿防止層/基板1/記録媒体層9/オーバコート層6の
構造を有している。
【0314】透湿防止層には、例えば、A1N, A1SiN, Si
N, A1TaN, SiO, ZnS, TiO2等の透明誘電体材料を使用で
き、その膜厚は5nm程度が適当である。第2のオーバ
コート層は、特に基板1としてPC等の吸湿性の高いプ
ラスチックを基板1に用いた場合に有効である。
【0315】透湿防止層は、環境湿度変化に対する光磁
気ディスクの反り変化を低く押さえる効果を有してい
る。これについて、以下に説明する。
【0316】基板1の光入射側にこの透湿防止膜がない
場合は、例えば環境湿度が大きく変化した場合に、記録
媒体層9のない側、すなわち基板1の入射光側からのみ
プラスチックの基板1に水分が吸湿されたり放湿された
りする。この吸湿、放湿によりプラスチックの基板1に
は局部的な体積変化が生じ、プラスチックの基板1に反
りが生じてしまう。
【0317】この光磁気ディスクの反りは、情報の再
生、記録等に用いられる光ビームの光軸に対して基板1
が傾いた状態になるため、サーボがずれて信号品質が劣
化したり、ひどい場合にはサーボ飛びが生じたりしてし
まう。
【0318】また、基板1にチルトが存在すると光学ヘ
ッド11(図22)からのレーザー光は、傾いた記録媒
体層9の面に集光されることになり、チルトの状態に応
じて集光状態が変化することになり、記録再生に悪影響
を及ぼす。
【0319】更に、基板1が光学ヘッド11に対して上
下に移動した場合、光学ヘッド11はその上下動を補償
し記録媒体層9の面にレーザー光を集光すべく動作する
が、上下動が大きくなり過ぎると光学ヘッド11の補償
動作が不完全なものとなり、記録媒体層9の面でのレー
ザー光の集光状態は不完全なものとなる。レーザー光の
集光状態が不完全なものとなると記録媒体層9の温度分
布が変化することになり、記録再生に影響を及ぼす。本
実施例においては、再生時の記録媒体層9の温度分布が
特に重要となってくるため、極力基板1の反り、環境に
よる反り変化を押さえることが必要となってくる。
【0320】本構成の光磁気ディスクであれば、透湿防
止層があることにより基板1の表面側における水分の吸
湿、放出がなくなるため、環境変化時の基板1の反りを
大幅に押さえることができ、上記説明の通り、本発明の
光磁気ディスクに特に適した構成となる。
【0321】尚、透湿防止層上の第2のオーバコート層
は、透湿防止層への傷発生の防止、基板1の表面の保護
等の目的で設けられており、その材料は、記録媒体層9
上のオーバコート層6と同じでも良い。
【0322】更に、本構成に加えて前述の、例えば、ハ
ードコート層あるいは帯電防止層を第2のオーバコート
層の代わりに、あるいはその上に設けても良い。
【0323】以上の実施例では、基板1にピッチが1.
6μmのグルーブを形成したが、1.2μmのグルーブ
にしても、実用上問題のない記録再生特性が得られるこ
とを確認した。
【0324】したがって、例えば、レーザー波長が78
0nmよりも短い短波長レーザーを用い、N.A.が
0.55より大きな集光レンズ8を用いて、再生光ビー
ム7のスポット径を小さくすれば、1.2μm以下のピ
ッチ(例えば、0.8μmのピッチ)のグルーブにして
も、実用上問題のない記録再生が可能になる。
【0325】なお、ランドの幅およびグルーブの幅に
は、製造上、少なくとも±0.05μmの誤差を考慮す
る必要がある。
【0326】また、ランドの幅とグルーブの幅の比は、
ランド上でのC/Nとグルーブ上でのC/Nがほぼ同じ
なるように設定することが好ましい。したがって、グル
ーブの深さとの兼ね合いで、その比を1:1から若干ず
らしてもかまわない。
【0327】1本の光ビームで記録再生を行う光磁気デ
ィスク装置では、トラッキング・サーボをランド上のト
ラックからグルーブ上のトラックに切り換えるには、ト
ラッキング・サーボの極性を切り換える必要がある。
【0328】記録方法としては、まず、ランド上のトラ
ックに記録を行い、すべてのランド上のトラックに記録
が行われた後、トラッキング・サーボの極性を切り換
え、グルーブ上のトラックに記録を行う。また、トラッ
クを光磁気ディスクの半径方向に論理的領域に分割し、
まず、ある論理分割領域のランド上のトラックに記録を
行い、その論理分割領域のすべてのランド上のトラック
に記録が行われた後、その論理分割領域のグルーブ上の
トラックに記録を行うようにすれば、アクセス速度が向
上する。
【0329】2本以上の光ビームを用い、それぞれの光
ビームをランド上のトラックとグルーブ上のトラックと
にトラッキング・サーボをかける光磁気ディスク装置で
は、トラッキング・サーボの極性を切り換える必要はな
く、しかも、データの高速転送が可能になる。なお、記
録の際の熱干渉により記録ビットの形状が乱れることが
ないように、複数の光ビームをある程度離すことが必要
である。
【0330】本発明の第2実施例を図39に基づいて説
明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前
記の実施例の図面に示した部材と同一の機能を有する部
材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0331】本実施例の光磁気ディスクは、図39に示
すように、基板1、透明誘電体層2、読み出し層3、記
録層4、放熱層20、オーバコート層6がこの順に積層
された構成を有している。
【0332】放熱層20には、例えば、Alを使用で
き、その膜厚は、約100nmが適当である。基板1、
透明誘電体層2、読み出し層3、記録層4、オーバコー
ト層6には、前記実施例と同一の材料を使用できる。
【0333】記録層4上に放熱層20を設けたので、記
録の際に、記録ビット形状をよりシャープにする効果が
ある。これは、次の理由による。
【0334】入射面側から入射された光ビームは、その
ほとんどが読み出し層3及び記録層4に吸収され熱に変
わる。この時、熱は読み出し層3及び記録層4の厚さ方
向に伝導するとともに、層内方向、つまり横方向にも伝
導する。この横方向への熱伝導量が多く、かつ、熱伝導
する速度が遅いと、例えば、より高速に、高い記録密度
で記録を行おうとする場合、次に記録しようとする記録
ビットに対して熱的な悪影響を及ぼす。このため、既定
の長さよりも長い記録ビットになってしまったり、ある
いはガイドトラックに対して横方向に広がった記録ビッ
トが形成されたりする。横方向に記録ビットが広がって
しまうと、クロストーク量の増加につながり、良好な記
録再生が行えなくなる。
【0335】本実施例では、熱伝導の高いAlからなる
放熱層20を記録層4上に形成しているので、横方向へ
の熱の広がりを放熱層20側、つまり厚さ方向へ逃がす
ことができ、上記のような横方向への熱の広がりを低減
させることができる。したがって、より密度の高い、よ
り高速な記録条件下で、熱干渉のない記録を行うことが
可能になる。
【0336】また、放熱層20を設けると、以下に説明
するように、光変調オーバーライト記録の際にも、有利
となる。
【0337】放熱層20があることにより、記録の過程
で、光ビーム照射により一旦昇温した領域が冷えると
き、読み出し層3と記録層4のそれぞれの層の温度変化
に、よりはっきりとした差をもたせることができる。こ
の効果は、特に高レベルのレーザー光が照射された時の
読み出し層3と記録層4の冷却過程を大きく相違させる
ことができるため(記録層4の方が速く冷却される)、
より容易に重ね書きを行うことができる。
【0338】放熱層20の材料であるAlは、読み出し
層3、記録層4に用いられる希土類遷移金属合金膜より
もその熱伝導率が高く、放熱層20に適した材料であ
る。加えて、透明誘電体層2にAlNを用いる場合、こ
のAlNは、AlターゲットをArおよびN2ガスで反応性
スパッターすることにより形成されるので、同じAlタ
ーゲットをArガスでスパッターすることで放熱層20を
容易に形成できる。また、Alは非常に安価な材料でも
ある。
【0339】放熱層20の材料は、Al以外にAu,A
g,Cu,SUS,Ta,Cr等のように、読み出し層
3、記録層4より熱伝導率が大きい材料であればよい。
【0340】放熱層にAu,Ag,Cuを採用した場
合、耐酸化性、耐湿性、耐孔食性に優れているので、長
期信頼性が向上する。
【0341】放熱層にSUS,Ta,Crを採用した場
合、耐酸化性、耐湿性、耐孔食性に極めて優れているの
で、長期信頼性が向上する。
【0342】尚、本実施例では、放熱層20の膜厚を10
0nm としたが、厚くするほど放熱効果は高くなり、加え
て、長期信頼性も向上する。しかしながら、既に説明し
た通り、光磁気ディスクの記録感度にも影響を及ぼすの
で、材料の熱伝導率、比熱に応じた膜厚の設定が必要で
あり、5 〜200nm の範囲が良い。とりわけ、10〜100nm
が好適である。熱伝導率が比較的高く、耐食性に優れた
材料であれば、膜厚は10〜100nm 程度と薄くて済み、製
造時の膜形成に要する時間も短縮することができる。
【0343】また、記録層4と放熱層20の間に誘電体
層(図示されていない)を挿入してもかまわない。誘電
体層には、透明誘電体層2と同じ材料を用いれば良く、
A1N,SiN, A1SiN 等第1実施例で説明した材料を使用で
きる。特に、A1N, SiN, A1SiN 、TiN 、A1TaN, ZnS, BN
等の成分に酸素を含まない窒化膜を用いれば、長期信頼
性により優れた光磁気ディスクを提供することができ
る。誘電体層の膜厚は、10〜100nm の範囲が良い。
【0344】本発明の第3実施例を図40に基づいて説
明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前
記の実施例の図面に示した部材と同一の機能を有する部
材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0345】本実施例の光磁気ディスクは、図40に示
すように、基板1、透明誘電体層2、読み出し層3、記
録層4、透明誘電体層21、反射層22、オーバコート
層6がこの順に積層された構成を有している。
【0346】透明誘電体層21には、例えば、AlNを
使用でき、その膜厚は、約30nmが適当である。反射
層22には、例えば、Alを使用でき、その膜厚は、約
30nmが適当である。基板1、透明誘電体層2、読み
出し層3、記録層4、オーバコート層6には、前記実施
例と同一の材料を使用できる。ただし、読み出し層3の
膜厚を前記第1実施例の半分の15nm、記録層4の膜
厚を前記第1実施例の半分の15nmにしており、両層
合わせて30nmと非常に薄い膜厚にしている。
【0347】つまり、本実施例の光磁気ディスクにおい
ては、入射した光ビームの一部が、読み出し層3及び記
録層4を透過して、透明誘電体層21を透過し、反射層
22で反射されるようになっている。
【0348】これにより、読み出し層3の表面で反射し
た光と、反射層22により反射され再び記録層4及び読
み出し層3を透過した光とが干渉して、磁気光学効果が
エンハンスされて極カー回転角が大きくなる。このた
め、より高精度に情報の再生が行え、再生信号の品質が
向上する。
【0349】本構成においては、エンハンス効果を上げ
るためには、透明誘電体層2の膜厚は、70〜100nm が最
適で、この時、透明誘電体層21の膜厚は15〜50nmが好
適である。
【0350】透明誘電体層2の膜厚を70〜100nm とすれ
ば良い理由は、第1実施例において既に説明したよう
に、最も極カー回転角のエンハンス効果が大きくなるか
らである。
【0351】透明誘電体層21の膜厚は、膜厚を厚くす
ればするほど、極カー回転角が大きくなるが、反射率が
小さくなる。反射率をあまり小さくし過ぎると、ガイド
トラックにサーボをかけるための信号が小さくなり、安
定したサーボがかけられなくなってしまう。このため、
透明誘電体層21の膜厚は15〜50nm程度が適している。
【0352】また、透明誘電体層2の屈折率よりも透明
誘電体層21の屈折率を大きくすれば、よりエンハンス
効果を高めることができる。
【0353】また、読み出し層3及び記録層4は、どち
らも希土類遷移金属合金からなる光吸収率の高い層であ
るので、これらを合わせた膜厚が、50nm以上になるとほ
とんど光が透過せず、エンハンス効果が得られなくな
る。従って、これら2層を合わせた膜厚は、10〜50nmが
好適である。
【0354】また、反射層22の膜厚は、あまり薄すぎ
ると反射層22を光が透過してしまい、エンハンス効果
が低下するので、最低でも20nm程度は必要である。ま
た、あまり厚すぎると記録、再生等に必要なレーザパワ
ーが高くなり、光磁気ディスクの記録感度を低下させて
しまうので、100nm 以下程度が好ましい。従って、反射
層22に好適な膜厚は20〜100nm の範囲である。
【0355】反射層22の材料として、Alを採用した
理由は、半導体レーザーの波長範囲で反射率が約80% と
大きいこと、スパッタリングによる形成の際に、透明誘
電体層2のAlNと共通のAlターゲットを使用するこ
とが可能となること等が挙げられる。前述の通り、Al
Nを成膜するときには、ArとN2の混合ガスあるいはN2
スにより反応性スパッタリングを行い、反射層22のA
1を成膜するときには、Arガスを導入してスパッタリン
グを行う。
【0356】A1以外の反射層としては、Au,Pt,
Co,Ni,Ag,Cu,SUS,Ta,Cr等のよう
に、光ビームの波長での反射率が50%以上の材料であ
れば良い。
【0357】反射層22にAu,Pt,Cu,Coを採
用した場合、耐酸化性、耐湿性、耐孔食性に優れている
ので、長期信頼性が向上する。
【0358】反射層22にNiを採用した場合、熱伝導
率が小さいので、光磁気ディスクが高記録感度になり、
耐酸化性、耐湿性、耐孔食性に優れているので、長期信
頼性が向上する。
【0359】反射層22にAgを採用した場合、耐酸化
性、耐湿性、耐孔食性に優れているので、長期信頼性が
向上する。しかも、Agターゲットは廉価である。
【0360】反射層22にSUS,Ta,Crを採用し
た場合、耐酸化性、耐湿性、耐孔食性に極めて優れてい
るので、より長期信頼性に優れた光磁気ディスクを提供
することができる。
【0361】本発明の第4実施例を図41および42に
基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の
便宜上、前記の実施例の図面に示した部材と同一の機能
を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省
略する。
【0362】本実施例の光磁気ディスクは、図41に示
すように、基板1、透明誘電体層2、読み出し層3、記
録層4、保護層5、オーバコート層6がこの順に積層さ
れた構成を有している。前記第1実施例の光磁気ディス
クの構造と類似しているが、以下に詳述するように、読
み出し層3の磁気特性が異なっている。
【0363】読み出し層3は希土類遷移金属合金からな
っており、希土類金属の副格子磁気モーメントと遷移金
属の副格子磁気モーメントが互いに逆方向を向いている
フェリ磁性体である。これらの副格子磁気モーメントの
温度特性は互いに異なっており、高温では遷移金属の磁
気モーメントが希土類金属の磁気モーメントに比べ相対
的に大きくなる。
【0364】読み出し層3は室温では面内磁化状態とな
るように、室温において補償組成より希土類金属の含有
量を多くしておく。光ビームが照射されると、その部分
の温度が上昇し、遷移金属の副格子磁気モーメントが相
対的に大きくなる。したがって、全体としての磁化が小
さくなり、垂直磁化を示すようになる。
【0365】すなわち、図42の保磁力の温度特性に示
すように、読み出し層3は室温(TROOM)において磁化
が膜面内方向を向いている面内磁化状態であり、TP1
上の温度で磁化が膜面に垂直な方向を向いている垂直磁
化状態となり、読み出し温度(TREAD)において垂直磁
化膜となる。
【0366】そこで、本実施例の読み出し層3は、室温
において補償組成より希土類金属の含有量が多いREリ
ッチな組成にしている。さらに、読み出し層3が室温か
らキュリー温度まで、常にREリッチな組成である必要
がある。ここで、REリッチとは、補償組成より希土類
金属の含有量が多い組成のことであり、後述するTMリ
ッチとは、補償組成より遷移金属の含有量が多い組成の
ことである。
【0367】記録層4は、垂直磁化膜からなる希土類遷
移金属合金からなっており、室温において、磁化方向と
して記録された情報を安定して保存するため、保磁力H
C2(図42参照)が十分に高い必要がある。外部磁界等
の外乱を考えた場合、100kA/m程度の保磁力で十分で
あるが、できれば400kA/m以上の保磁力を有すること
が望ましい。
【0368】次に、上記の光磁気ディスクにおける光変
調オーバーライトについて説明する。
【0369】光ビームが照射され、記録が行われるキュ
リー温度TC2近傍まで記録層4の温度が上昇した時、記
録層4の磁化方向は、記録磁界の方向に記録層4の磁化
方向を揃えようとする静磁結合力と、読み出し層3と記
録層4の副格子磁気モーメントの方向を揃えようとする
交換結合力との釣り合いにより決定される。そのため、
記録が行われるキュリー温度TC2近傍において、上記静
磁結合力と交換結合力とが記録層4に及ぼす力の方向は
逆方向である必要がある。すなわち、記録層4のキュリ
ー温度TC2近傍において、読み出し層3がREリッチで
あるため、記録層4はTMリッチとなる必要がある。
【0370】光磁気ディスクに比較的低い第1のパワー
の光ビームを照射することにより、記録層4の温度がそ
のキュリー温度TC2近傍(図42のTL )まで上昇した
場合、記録層4の磁化は非常に小さくなるか又はなくな
るため、読み出し層3の磁化方向は、記録磁界の方向を
向く。また、光入射側の読み出し層3の温度が記録層4
の温度より高く成るように、すなわち、T11(読み出し
層3の平均的な温度)>T22(記録層4の平均的な温
度)になるように、読み出し層3の膜厚と記録層4の膜
厚を設定しておくと、読み出し層3から記録層4に働く
交換結合力と記録磁界が記録層4に及ぼす静磁結合力と
を比較した場合、記録磁界が記録層4に及ぼす静磁結合
力が相対的に強くなる。その結果、記録層4の磁化方向
を、記録磁界が記録層4に及ぼす静磁結合力により決定
される方向に向けることが可能となる。
【0371】次に、光磁気ディスクに比較的高い第2の
パワーの光ビームを照射することにより、記録層4の温
度がそのキュリー温度TC2以上(図42のTH )に上昇
した場合、同様の過程を経て温度上昇するが、温度下降
過程において膜厚方向の温度差は解消され、記録層4の
キュリー温度近傍まで温度が降下した時点において、T
11=T22の状態を実現することが可能である。この時、
記録層4の磁化は非常に小さくなるか又はなくなるた
め、読み出し層3の磁化方向は、記録磁界の方向を向
く。
【0372】この場合、上記比較的低い第1のパワーの
光ビームが照射された場合と比較して、読み出し層3か
ら記録層4に働く交換結合力が相対的に強くなる。その
結果、記録層4の磁化方向を、読み出し層3からの交換
結合力により決定される方向に向けることが可能とな
る。
【0373】このようにして、比較的低い第1のパワー
の光ビームが照射された場合と比較的高い第2のパワー
の光ビームが照射された場合とで、記録層4の磁化方向
を変えることが可能となる。つまり、光変調オーバーラ
イトが可能になる。
【0374】記録された記録層4の磁化方向を読み出す
場合、第1のパワーよりさらに低いパワーの光ビームを
照射する。照射される光ビームの強度は、一般的にガウ
ス分布になっているため、読み出し層3の温度分布もガ
ウス分布となる。このため、光ビーム径よりも小さい中
心部分のみの読み出し層3を垂直磁化状態とすることが
可能である。
【0375】読み出し層3の磁化方向は、記録層4との
交換結合により、読み出し層3と記録層4の副格子磁気
モーメントの方向を揃えるように決定される。したがっ
て、光ビームの中心部分の光ビーム径より小さい範囲の
みの記録層4の磁化方向を読み出すことが可能となる。
【0376】なお、記録層4がキュリー温度TC2近傍に
おいてREリッチである場合、光変調オーバーライトを
行うことはできなくなるが、磁界変調オーバーライト等
の記録方法で記録された情報を読み出すことは可能であ
る。
【0377】以上において、読み出し層3は、室温(T
ROOM)において磁化が膜面内方向を向いている面内磁化
状態であり、温度上昇に伴いTP1以上の温度で磁化が膜
面に垂直な方向を向いている垂直磁化状態となる必要が
あり、読み出し温度(TREAD)において垂直磁化膜とな
る必要があるとした。しかしながら、読み出し時の再生
出力は、読み出し層3の磁化の傾きに依存するため、読
み出し層3は、室温において完全な面内磁化状態とな
り、読み出し温度において完全な垂直磁化状態となる必
要はない。
【0378】すなわち、室温と読み出し温度において、
読み出し層3の磁化の傾きの状態が異なれば、読み出し
時に、光ビームの中心部分の光ビーム径より小さい範囲
のみの記録層4の磁化方向を読み出す効果が得られる。
【0379】次に、上記光磁気ディスクの具体例および
その製造方法、この光磁気ディスクを用いた光変調オー
バーライトおよびその再生試験について説明する。
【0380】A1,Gd,Dy,Fe,Coからなる5
元のターゲットをそなえたスパッター装置内に、プリグ
ルーブ及びプリピットを有するポリカーボネート製の基
板1をターゲットに対向して配置し、スパッター装置内
を1×10-6Torrまで真空排気した後、アルゴンと窒素
の混合ガスを導入し、A1のターゲットに電力を供給し
て、4×10-3Torrのガス圧、12nm/minのスパ
ッター速度にて、A1Nからなる80nmの膜厚の透明
誘電体層2を形成した。
【0381】次に、再度、1×10-6Torrまで真空排気
した後、アルゴンガスを導入し、Gd,Fe,Coのタ
ーゲットに電力を供給して、4×10-3Torrのガス圧、
15nm/minのスパッタ速度ーにて、GdFeCo
からなる50nmの膜厚の読み出し層3を形成した。読
み出し層3は、REリッチであり、補償温度を有さず、
そのキュリー温度TC1は300℃であった。GdFeC
oの組成は、Gd0.26(Fe0.82Co0.180.74であっ
た。
【0382】次に、Gdに供給していた電力を停止し、
Dyのターゲットに電力を供給し、同様にしてDyFe
Coからなる50nmの膜厚の記録層4を形成した。記
録層4は、室温でTMリッチであり、保磁力HC2を80
0kA/mとし、補償温度が存在しないものとし、キュ
リー温度TC2を150℃とした。また、DyFeCoの
組成はDy0.23(Fe0.82Co0.180.77であった。
【0383】次に、アルゴンと窒素の混合ガスを導入
し、A1のターゲットに電力を供給して、ガス圧4×1
-3Torrのガス圧、12nm/minのスパッター速度
にて、A1Nからなる20nmの膜厚の保護層5を形成
した。保護層5は、読み出し層3および記録層4を酸化
等の腐食から保護することが可能であるように、その膜
厚を決定すれば良い。
【0384】次に、紫外線硬化樹脂をスピンコートによ
り塗布して、紫外線を照射することによりオーバーコー
ト層6を形成した。
【0385】ここで、読み出し層3、記録層4の膜厚を
それぞれ50nmとしたが、読み出し層3及び記録層4
を100nmとすることにより、膜厚方向の温度差をよ
り有効的に利用することが可能であった。
【0386】上記の光磁気ディスクを光磁気ディスク装
置に取り付け、レーザービーム照射位置において光磁気
ディスクの線速度が10m/sとなるように回転させ、
25kA/mの記録磁界を印加した状態で、第1のレー
ザーパワーを6mWとし、第2のレーザーパワーを10
mWとして、5MHzの周波数でレーザーパワーを変調
して記録を行ったところ、記録層4に2μm周期で、1
μmの長さの反転磁区を形成することができた。
【0387】また、レーザパワーを2mWとして、情報
の再生を行ったところ、読み出し層3に形成された反転
磁区にしたがって、5MHzの光磁気信号を読み出し層
3から得ることができた。
【0388】次に、5MHzで形成されている反転磁区
上に、10MHzの周波数でレーザーパワーを変調して
オーバーライトを行ったところ、5MHzで形成されて
いた反転磁区はなくなり、記録層4には、新たに1μm
周期で、0.5μmの長さの反転磁区を形成することが
できた。
【0389】再び、レーザーパワーを2mWとして、情
報の再生を行ったところ、記録層4に形成された反転磁
区にしたがって、5MHzの光磁気信号と同程度の大き
さの10MHzの光磁気信号のみを読み出し層3から得
ることができた。このことは、読み出し層3において、
温度上昇して垂直磁化状態となった部分のみの読み出し
層3の磁化状態を再生していることを意味している。
【0390】本発明の第5実施例を図43に基づいて説
明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前
記の実施例の図面に示した部材と同一の機能を有する部
材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0391】本実施例の光磁気ディスクは、図43に示
すように、基板1、透明誘電体層2、読み出し層3、面
内磁化膜からなる中間層29、記録層4、保護膜5、オ
ーバーコート層6がこの順に積層された構成を有してい
る。すなわち、前記第4実施例の光磁気ディスクの読み
出し層3と記録層4との間に面内磁化膜からなる中間層
29を設けた構成になっている。
【0392】光変調オーバーライト及び再生は、前記第
4実施例と同様にして行われるが、面内磁化膜からなる
中間層29を設けることにより、読み出し層3と記録層
4の交換結合力を制御することが可能となり、膜設計の
自由度が改善される。
【0393】中間層29は、中間層29のキュリー温度
まで常に面内磁化状態であればよい。しかしながら、中
間層29がそのキュリー温度以上になると、読み出し層
3と記録層4の交換結合が解除されるため、より確実な
光変調オーバーライトを実現するためには、中間層29
のキュリー温度が記録層4のキュリー温度TC2と同程
度、すなわち、150〜250℃であることが望まし
い。
【0394】中間層29には、具体的には例えば、Dy
FeCoからなる面内磁化膜が使用される。DyFeC
o以外では、TbFeCo、GdTbFe、NdDyF
eCoが好適である。また、これらの材料にCr、V、
Nb、Mn、Be、Niの内、少なくとも1種類の元素
を添加すれば、長期信頼性を改善できる。中間層29の
膜厚は、読み出し層3の材料、組成、膜厚との兼ね合い
で決定されるが、1〜50nmが適当である。中間層2
9は、読み出し層3および記録層4と共に、同一スパッ
ター装置内で連続して形成される。
【0395】前記実施例と同一のスパッター装置で、D
yFeCoからなる中間層29を設けた光磁気ディスク
を試作した。その他の、構成は前記実施例と同一であ
る。中間層29のキュリー温度は、記録層4と同じ15
0℃とした。
【0396】この光磁気ディスクを光磁気ディスク装置
に取り付け、前記実施例と同じ記録再生テストを行った
ところ、良好なオーバーライト特性と再生特性が得られ
た。ただし、本実施例においては、中間層9が読み出し
層3と記録層4との交換結合を制御し、交換結合力が弱
くなっている。そのため、最適な記録磁界の大きさは、
前記実施例とは異なり、22kA/mとなった。
【0397】本発明の第6実施例を図44ないし図46
に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明
の便宜上、前記の実施例の図面に示した部材と同一の機
能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を
省略する。
【0398】本実施例の光磁気ディスクは、図44に示
すように、基板1、透明誘電体層2、読み出し層3、非
磁性膜からなる中間層30、記録層4、保護膜5、オー
バーコート層6がこの順に積層された構成を有してい
る。
【0399】記録時、非磁性膜からなる中間層30が存
在しないと、読み出し層3から記録層4へ強い交換結合
力が働き、記録特性の劣化を招く。そこで、本実施例の
非磁性膜からなる中間層30を設け、交換結合を解除し
ておくことにより安定な記録が可能となる。
【0400】中間層30としては、具体的には例えば、
5nmの膜厚のAlNが使用される。中間層30は、記
録層4と読み出し層3の交換結合が働かないように形成
されているので、AlNが記録層4と読み出し層3の間
に単分子層以上形成されておればよい。中間層30があ
まり厚くなり過ぎると、記録層4から発生し読み出し層
3の磁化を揃えるための磁界が弱くなる。このため、中
間層30の膜厚は50nm以下が適当である。
【0401】本実施例の光磁気ディスクでは、具体的に
は、基板1は、直径86mm、内径15mm、厚さ1.2mm
の円盤状のガラスからなっている。基板1の片側の表面
には、図示していないが、光ビーム案内用の凹凸状のガ
イドトラックが、ピッチが1.6μm、グルーブ(凹
部)の幅が0.8μm、ランド(凸部)の幅が0.8μ
mで形成されている。すなわち、グルーブの幅とランド
の幅が1:1になるように形成されている。
【0402】基板1のガイドトラックが形成されている
側の面に、透明誘電体層2として、A1Nが厚さ80n
mで形成されている。
【0403】透明誘電体層2上に、読み出し層3とし
て、希土類遷移金属合金薄膜であるGdFeCoが、厚
さ50nmで形成されている。GdFeCoの組成は、
Gd0. 26(Fe0.82Co0.180.74であり、そのキュリ
ー温度は約300℃である。
【0404】上記の読み出し層3と記録層4の組み合わ
せにより、読み出し層3の磁化の方向は、室温ではほぼ
面内(つまり、読み出し層3の層方向)にあり、100
〜125℃程度の温度で面内方向から垂直方向に移行す
る。
【0405】読み出し層3上に、中間層30として、A
1Nが厚さ5nmで形成されている。
【0406】中間層30上に、記録層4として、希土類
遷移金属合金薄膜であるDyFeCoが、厚さ50nm
で形成されている。DyFeCoの組成は、Dy
0.23(Fe0.78Co0.220.77であり、そのキュリー温
度は約200℃である。
【0407】記録層4上には、保護層5として、A1N
が厚さ20nmで形成されている。
【0408】保護層5上には、オーバーコート層6とし
て、ポリウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂
が、厚さ5μmで形成されている。
【0409】この光磁気ディスクは、前記第1実施例で
具体例として示した光磁気ディスクの読み出し層3と記
録層4の間に中間層30を設けたものであり、前記第1
実施例と同一の動作確認を行ったところ、ほぼ同様の結
果が得られた。
【0410】AlN以外の中間層30の材料としては、
SiN、AlSiN、AlTaN、SiAlON、Ti
N、TiON、BN、ZnS、TiO2 、BaTi
3 、SrTiO3 等の誘電体材料を使用できる。
【0411】また、Al、Si、Ta、Ti、Cu、A
u、Ag、Pt等の非磁性金属材料、または、それらの
合金材料を使用することができる。
【0412】上記の光磁気ディスクのバリエーションと
して、図45に示すように、基板1、透明誘電体層2、
読み出し層3、非磁性膜からなる中間層30、記録層
4、放熱層20、オーバーコート層6がこの順に積層さ
れた光磁気ディスクがある。放熱層20については、前
記第1実施例で詳述した通りである。
【0413】上記の光磁気ディスクの他のバリエーショ
ンとして、図46に示すように、基板1、透明誘電体層
2、読み出し層3、非磁性膜からなる中間層30、記録
層4、第2透明誘電体層21、反射層22、オーバーコ
ート層6がこの順に積層された光磁気ディスクがある。
この光磁気ディスクは、上記光磁気ディスクの記録層4
とオーバーコート層6の間に第2透明誘電体層21およ
び反射層22を設けたものであり、第2透明誘電体層2
1および反射層22については、前記第1実施例で詳述
した通りである。
【0414】上述の第1〜第6実施例では、光磁気記録
媒体として光磁気ディスクを挙げて説明したが、光磁気
カード、光磁気テープにも本発明を応用できる。なお、
光磁気テープの場合、リジッドな基板1の代わりに、可
撓性のあるテープベース(基体)、例えば、ポリエチレ
ンテレフタレートからなるテープベースを用いればよ
い。
【0415】請求項1の発明に対応する光磁気ディスク
は、透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室温
で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上
昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読
み出し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光磁
気記録する記録層4とを有しており、上記読み出し層3
がGdFeCoである構成である。
【0416】したがって、従来より小さい記録ビットの
再生を行うことが可能になり、記録密度が著しく向上す
る。しかも、GdFeCoを採用することにより、面内
磁化から垂直磁化へ、磁化方向が非常に急峻に移行する
読み出し層3を実現できる。これにより、再生時の雑音
が小さくなるため、より高密度な記録を行うことが可能
な光磁気ディスクを提供できる。
【0417】請求項2の発明に対応する光磁気ディスク
は、上記の記録層4がDyFeCoであるので、上記の
作用効果に加え、記録層4の材料として、DyFeCo
を採用することにより、垂直磁気異方向が小さくなる。
これにより、記録時の外部磁界を小さくすることができ
る。
【0418】請求項3の発明に対応する光磁気ディスク
は、上記の基板1と読み出し層3との間に透明誘電体層
2が形成されており、上記記録層4上に保護層5が形成
されており、透明誘電体層2または保護層5の少なくと
もいずれか一方はAlNである構成である。したがっ
て、耐湿性に優れた光磁気ディスクが提供できる。
【0419】請求項4の発明に対応する光磁気ディスク
は、透光性のある基板1と、基板1上に形成された透明
誘電体層2と、透明誘電体層2上に形成され、室温で面
内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に
伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出
し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光磁気記
録する記録層4と、記録層4上に形成された保護層5と
を有しており、上記透明誘電体層2または保護層5の少
なくともいずれか一方は、酸素を含まない透明誘電体材
料からなるので、優れた光磁気ディスクを提供できる。
【0420】請求項5の発明に対応する光磁気ディスク
は、上記の酸素を含まない透明誘電体材料は、SiN、
AlSiN、AlTaN、TiN、BN、ZnSのいず
れかであるので、請求項4の効果に加え、長期信頼性に
優れた光磁気ディスクを提供できる。
【0421】請求項6の発明に対応する光磁気ディスク
は、透光性のある基板1と、基板1上に形成された透明
誘電体層2と、透明誘電体層2上に形成され、室温で面
内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に
伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出
し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光磁気記
録する記録層4と、記録層4上に形成された保護層5と
を有しており、上記透明誘電体層2または保護層5の少
なくともいずれか一方は、窒素を含む透明誘電体材料か
らなるので、優れた光磁気ディスクを提供できる。
【0422】請求項7の発明に対応する光磁気ディスク
は、上記の窒素を含む透明誘電体材料は、SiN、Al
SiN、AlTaN、TiN、BN、SiAlON、T
iONのいずれかであるので、請求項6の効果に加え、
長期信頼性に優れた光磁気ディスクを提供できる。
【0423】請求項8の発明に対応する光磁気ディスク
は、透光性のある基板1と、基板1上に形成された透明
誘電体層2と、透明誘電体層2上に形成され、室温で面
内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に
伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出
し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光磁気記
録する記録層4と、記録層4上に形成された保護層5と
を有しており、上記透明誘電体層2または保護層5の少
なくともいずれか一方は、屈折率が2.2以上である透
明誘電体材料からなるので、優れた光磁気ディスクを提
供できる。
【0424】請求項9の発明に対応する光磁気ディスク
は、上記の屈折率が2.2以上である透明誘電体材料
は、TiN、ZnS、TiON、TiO2 、BaTiO
3 、SrTiO3 のいずれかであるので、上記の作用効
果に加え、優れた光磁気ディスクを提供できる。
【0425】請求項10の発明に対応する光磁気ディス
クは、上記のGdFeCoからなる読み出し層3に、N
d、Pr、Pt、Pdの中の少なくともいずれか一種類
の元素が添加されているので、上記の作用効果に加え、
光源として短波長レーザーを使用したときの再生信号が
大きくなる。
【0426】請求項11の発明に対応する光磁気ディス
クは、上記のGdFeCoからなる読み出し層3または
上記記録層4の少なくともいずれか一方に、Cr、N
i、Mn、Be、V、Nbの中の少なくともいずれか一
種類の元素が添加されているので、上記の作用効果に加
え、長期信頼性が向上する。
【0427】請求項12の発明に対応する光磁気ディス
クは、透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室
温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度
上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する
読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光
磁気記録する記録層4とを有しており、上記記録層4が
TbFeCoであるので、請求項1の効果に加え、垂直
磁気異方向が大きくなる。これにより、再生信号品質の
高い光磁気ディスクを提供できる。
【0428】請求項13の発明に対応する光磁気ディス
クは、透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室
温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度
上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する
読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光
磁気記録する記録層4とを有しており、上記読み出し層
3は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属非晶質合金か
らなっており、その補償温度が125℃以上になるよう
に組成が設定され、かつ、膜厚が10nm以上に設定さ
れているので、高密度記録された情報を読み出す際の再
生信号品質が向上する。
【0429】請求項14の発明に対応する光磁気ディス
クは、透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室
温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度
上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する
読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光
磁気記録する記録層4とを有しており、上記読み出し層
3は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属非晶質合金か
らなっており、補償温度を持たないでキュリー温度が1
30℃以上になるように組成が設定され、かつ、膜厚が
10nm以上に設定されているので、高密度記録された
情報を読み出す際の再生信号品質が向上する。
【0430】請求項15の発明に対応する光磁気ディス
クは、透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室
温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度
上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する
読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を光
磁気記録する記録層4とを有しており、上記の基板1の
読み出し層3側の面には、光ビームを案内するためのグ
ルーブが設けられており、グルーブの幅がグルーブ間の
ランドの幅にほぼ等しくなるように設定されているの
で、グルーブ上の記録層4およびランド上の記録層4に
記録された情報を読み出す際の再生信号品質が同じにな
る。
【0431】請求項16の発明に対応する光磁気ディス
クは、上記のグルーブ上の記録層4およびランド上の記
録層4に情報が光磁気記録されるので、上記の作用効果
に加え、グルーブ上の記録層4およびランド上の記録層
4に情報を光磁気記録するので、記録密度が2倍にな
る。
【0432】請求項17の発明に対応する光磁気ディス
クは、透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室
温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示す一方、
温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化状態に
移行する読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、
情報を光磁気記録する記録層4とを有しており、上記読
み出し層3は、希土類遷移金属合金からなっており、そ
の補償温度が室温とキュリー温度の間にないように設定
され、かつ、希土類金属の含有量が補償組成に対応する
最大含有量よりも多くなるように設定されているので、
高密度記録再生の可能な光磁気ディスクを提供できる。
【0433】請求項18の発明に対応する光磁気ディス
クは、上記の読み出し層3と記録層4の間には、面内磁
化膜からなる中間層が設けられているので、上記の作用
効果に加え、読み出し層3と記録層4の交換結合力を制
御することが可能になる。これにより、読み出し層3用
および記録層4用の材料の選択範囲が増える。
【0434】請求項19の発明に係る記録再生方法は、
透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室温で面
内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示す一方、温度上
昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化状態に移行す
る読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、情報を
光磁気記録する記録層4とを有しており、上記読み出し
層3は、希土類遷移金属合金からなっており、その補償
温度が室温とキュリー温度の間にないように設定され、
かつ、希土類金属の含有量が補償組成に対応する最大含
有量よりも多くなるように設定されている光磁気ディス
クを使用し、情報の記録再生を行う記録再生方法であっ
て、読み出し層3を磁化する一定磁界を印加しながら、
記録信号に応じて比較的低い第1のレーザーパワーと比
較的高い第2のレーザーパワーとに切り換えたレーザー
光を照射することにより記録層4の磁化の向きを反転さ
せて記録を行い、第1のレーザーパワーよりもさらに低
いレーザーパワーのレーザー光を照射することにより、
読み出し層3のレーザースポット径より小さい領域を垂
直磁化状態に移行させ、かつ、読み出し層3の垂直磁化
状態となった領域の副格子磁化を記録層4の副格子磁化
に対して安定な方向に揃え、読み出し層3の垂直磁化状
態となった領域より情報の再生を行う構成である。
【0435】したがって、請求項17の発明に対応する
光磁気ディスクを使用して、高密度記録再生を行うこと
ができる。
【0436】請求項20の発明に対応する光磁気ディス
クは、透光性のある基板1と、基板1上に形成され、室
温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示す一方、
温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化状態に
移行する読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、
情報を光磁気記録する記録層4とを有しており、上記読
み出し層3と記録層4の間には、非磁性膜からなる中間
層が設けられているので、読み出し層3と記録層4との
間の交換結合が弱められる。これにより、安定に高密度
記録を行える光磁気ディスクを提供できる。
【0437】請求項21の発明に係る記録再生方法は、
以上のように、透光性のある基体1と、基体1上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層3と、読み出し層3上に形成され、
情報を光磁気記録する記録層4とを有しており、上記の
基体1の読み出し層3側の面には、光ビームを案内する
ためのグルーブが設けられており、グルーブの幅がグル
ーブ間のランドの幅にほぼ等しくなるように設定されて
いる光磁気ディスクを使用する記録再生方法であって、
上記のグルーブ上の記録層4およびランド上の記録層4
を情報の記録再生に用いるので、記録密度が2倍になる
という効果を奏する。
【0438】
【発明の効果】請求項1の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
を光磁気記録する記録層とを有しており、上記読み出し
層がGdFeCoであるので、従来より小さい記録ビッ
トの再生を行うことが可能になり、記録密度が著しく向
上する。しかも、GdFeCoを採用することにより、
面内磁化から垂直磁化へ、磁化方向が非常に急峻に移行
する読み出し層を実現できる。これにより、再生時の雑
音が小さくなるため、より高密度な記録を行うことが可
能な光磁気記録媒体を提供できるという効果を奏する。
【0439】請求項2の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、請求項1の記録層がDyFeCoである
ので、請求項1の効果に加え、記録層の材料として、D
yFeCoを採用することにより、垂直磁気異方向が小
さくなる。これにより、記録時の外部磁界を小さくする
ことができるという効果を奏する。
【0440】請求項3の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、請求項1または2のいずれかの光磁気記
録媒体であって、基体と読み出し層との間に透明誘電体
層が形成されており、上記記録層上に保護層が形成され
ており、透明誘電体層または保護層の少なくともいずれ
か一方はAlNであるので、請求項1または2の効果に
加え、上記基体と読み出し層との間に透明誘電体層を形
成し、上記記録層上に保護層を形成し、透明誘電体層ま
たは保護層の少なくともいずれか一方をAlNにしたの
で、耐湿性に優れた光磁気記録媒体が提供できるという
効果を奏する。
【0441】請求項4の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成され
た透明誘電体層と、透明誘電体層上に形成され、室温で
面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇
に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み
出し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁気記録
する記録層と、記録層上に形成された保護層とを有して
おり、上記透明誘電体層または保護層の少なくともいず
れか一方は、酸素を含まない透明誘電体材料からなるの
で、優れた光磁気記録媒体を提供できるという効果を奏
する。
【0442】請求項5の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、請求項4の酸素を含まない透明誘電体材
料は、SiN、AlSiN、AlTaN、TiN、B
N、ZnSのいずれかであるので、請求項4の効果に加
え、長期信頼性に優れた光磁気記録媒体を提供できると
いう効果を奏する。
【0443】請求項6の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成され
た透明誘電体層と、透明誘電体層上に形成され、室温で
面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇
に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み
出し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁気記録
する記録層と、記録層上に形成された保護層とを有して
おり、上記透明誘電体層または保護層の少なくともいず
れか一方は、窒素を含む透明誘電体材料からなるので、
優れた光磁気記録媒体を提供できるという効果を奏す
る。
【0444】請求項7の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、請求項6の窒素を含む透明誘電体材料
は、SiN、AlSiN、AlTaN、TiN、BN、
SiAlON、TiONのいずれかであるので、請求項
6の効果に加え、長期信頼性に優れた光磁気記録媒体を
提供できるという効果を奏する。
【0445】請求項8の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成され
た透明誘電体層と、透明誘電体層上に形成され、室温で
面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇
に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み
出し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁気記録
する記録層と、記録層上に形成された保護層とを有して
おり、上記透明誘電体層または保護層の少なくともいず
れか一方は、屈折率が2.2以上である透明誘電体材料
からなるので、優れた光磁気記録媒体を提供できるとい
う効果を奏する。
【0446】請求項9の発明に係る光磁気記録媒体は、
以上のように、請求項8の屈折率が2.2以上である透
明誘電体材料は、TiN、ZnS、TiON、Ti
2 、BaTiO3 、SrTiO3 のいずれかであるの
で、請求項8の効果に加え、優れた光磁気記録媒体を提
供できるという効果を奏する。
【0447】請求項10の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、請求項1のGdFeCoからなる読
み出し層に、Nd、Pr、Pt、Pdの中の少なくとも
いずれか一種類の元素が添加されているので、請求項1
の効果に加え、光源として短波長レーザーを使用したと
きの再生信号が大きくなるという効果を奏する。
【0448】請求項11の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、請求項1のGdFeCoからなる読
み出し層または上記記録層の少なくともいずれか一方
に、Cr、Ni、Mn、Be、V、Nbの中の少なくと
もいずれか一種類の元素が添加されているので、請求項
1の効果に加え、長期信頼性が向上するという効果を奏
する。
【0449】請求項12の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
を光磁気記録する記録層とを有しており、上記記録層が
TbFeCoであるので、請求項1の効果に加え、垂直
磁気異方向が大きくなる。これにより、再生信号品質の
高い光磁気記録媒体を提供できるという効果を奏する。
【0450】請求項13の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
を光磁気記録する記録層とを有しており、上記読み出し
層は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属非晶質合金か
らなっており、その補償温度が125℃以上になるよう
に組成が設定され、かつ、膜厚が10nm以上に設定さ
れているので、高密度記録された情報を読み出す際の再
生信号品質が向上するという効果を奏する。
【0451】請求項14の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
を光磁気記録する記録層とを有しており、上記読み出し
層は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属非晶質合金か
らなっており、補償温度を持たないでキュリー温度が1
30℃以上になるように組成が設定され、かつ、膜厚が
10nm以上に設定されているので、高密度記録された
情報を読み出す際の再生信号品質が向上するという効果
を奏する。
【0452】請求項15の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
を光磁気記録する記録層とを有しており、上記の基体の
読み出し層側の面には、光ビームを案内するためのグル
ーブが設けられており、グルーブの幅がグルーブ間のラ
ンドの幅にほぼ等しくなるように設定されているので、
グルーブ上の記録層およびランド上の記録層に記録され
た情報を読み出す際の再生信号品質が同じになるという
効果を奏する。
【0453】請求項16の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、請求項15のグルーブ上の記録層お
よびランド上の記録層に情報が光磁気記録されるので、
請求項15の効果に加え、グルーブ上の記録層およびラ
ンド上の記録層に情報を光磁気記録するので、記録密度
が2倍になるという効果を奏する。
【0454】請求項17の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示
す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁
化状態に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
れ、情報を光磁気記録する記録層とを有しており、上記
読み出し層は、希土類遷移金属合金からなっており、そ
の補償温度が室温とキュリー温度の間にないように設定
され、かつ、希土類金属の含有量が補償組成に対応する
最大含有量よりも多くなるように設定されているので、
高密度記録再生の可能な光磁気記録媒体を提供できると
いう効果を奏する。
【0455】請求項18の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、請求項17の読み出し層と記録層の
間には、面内磁化膜からなる中間層が設けられているの
で、請求項17の効果に加え、読み出し層と記録層の交
換結合力を制御することが可能になる。これにより、読
み出し層用および記録層用の材料の選択範囲が増えると
いう効果を奏する。
【0456】請求項19の発明に係る記録再生方法は、
以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成さ
れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示す
一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化
状態に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
れ、情報を光磁気記録する記録層とを有しており、上記
読み出し層は、希土類遷移金属合金からなっており、そ
の補償温度が室温とキュリー温度の間にないように設定
され、かつ、希土類金属の含有量が補償組成に対応する
最大含有量よりも多くなるように設定されている光磁気
記録媒体を使用し、情報の記録再生を行う記録再生方法
であって、読み出し層を磁化する一定磁界を印加しなが
ら、記録信号に応じて比較的低い第1のレーザーパワー
と比較的高い第2のレーザーパワーとに切り換えたレー
ザー光を照射することにより記録層の磁化の向きを反転
させて記録を行い、第1のレーザーパワーよりもさらに
低いレーザーパワーのレーザー光を照射することによ
り、読み出し層のレーザースポット径より小さい領域を
垂直磁化状態に移行させ、かつ、読み出し層の垂直磁化
状態となった領域の副格子磁化を記録層の副格子磁化に
対して安定な方向に揃え、読み出し層の垂直磁化状態と
なった領域より情報の再生を行うので、請求項17の光
磁気記録媒体を使用して、高密度記録再生を行うことが
できる。
【0457】請求項20の発明に係る光磁気記録媒体
は、以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成
され、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示
す一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁
化状態に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
れ、情報を光磁気記録する記録層とを有しており、上記
読み出し層と記録層の間には、非磁性膜からなる中間層
が設けられているので、読み出し層と記録層との間の交
換結合が弱められる。これにより、安定に高密度記録を
行える光磁気記録媒体を提供できるという効果を奏す
る。
【0458】請求項21の発明に係る記録再生方法は、
以上のように、透光性のある基体と、基体上に形成さ
れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
を光磁気記録する記録層とを有しており、上記の基体の
読み出し層側の面には、光ビームを案内するためのグル
ーブが設けられており、グルーブの幅がグルーブ間のラ
ンドの幅にほぼ等しくなるように設定されている光磁気
記録媒体を使用する記録再生方法であって、上記のグル
ーブ上の記録層およびランド上の記録層を情報の記録再
生に用いるので、グルーブ上の記録層およびランド上の
記録層を情報の記録再生に用いるので、記録密度が2倍
になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すものであり、光磁気
ディスクの概略構成及び再生動作を示す説明図である。
【図2】図1の光磁気ディスクの読み出し層の磁気特性
を示す磁気状態の説明図である。
【図3】図2の室温から温度T1において、読み出し層に
印加される外部印加磁界と極カー回転角との関係を示す
説明図である。
【図4】図2の温度T1から温度T2において、読み出し層
に印加される外部印加磁界と極カー回転角との関係を示
す説明図である。
【図5】図2の温度T2から温度T3において、の読み出し
層に印加される外部印加磁界と極カー回転角との関係を
示す説明図である。
【図6】図2の温度T3キュリー温度Tcにおいて、読み出
し層に印加される外部印加磁界と極カー回転角との関係
を示す説明図である。
【図7】図1の光磁気ディスクの読み出し層の室温での
極カー回転角の外部印加磁界依存性を実測した結果を示
すグラフである。
【図8】図1の光磁気ディスクの読み出し層の120℃
での極カー回転角の外部印加磁界依存性を実測した結果
を示すグラフである。
【図9】図1の光磁気ディスクの再生信号振幅を再生レ
ーザパワーに対してプロットしたグラフである。
【図10】図1の光磁気ディスクの再生信号品質(C/N)
を記録ビット長さに対してプロットしたグラフである。
【図11】図1の光磁気ディスクのクロストークを測定
した結果を示すグラフである。
【図12】図1の光磁気ディスクの効果を示す説明図で
ある。
【図13】GdX (Fe0.82Co0.18)1-X のキュリー温度(Tc)
と補償温度(Tcomp) の組成依存性を示したグラフであ
る。
【図14】GdX Fe1-X のキュリー温度(Tc)と補償温度(T
comp) の組成依存性を示したグラフである。
【図15】GdX Co1-X のキュリー温度(Tc)と補償温度(T
comp) の組成依存性を示したグラフである。
【図16】図1の光磁気ディスクの基板上に形成された
ランド、グループ形状の一例を示す説明図である。
【図17】図1の光磁気ディスクの基板上に形成された
ランド、グループ形状の他の例を示す説明図である。
【図18】図1の光磁気ディスクの基板上に形成された
ウォブルピットの配置の一例を示す説明図である。
【図19】図1の光磁気ディスクの基板上に形成された
ウォブルピットの配置の他の例を示す説明図である。
【図20】図1の光磁気ディスクの基板上に形成された
ウォブルリンググルーブの一例を示す説明図である。
【図21】図1の光磁気ディスクにおける、複数の光ビ
ームを用いた場合の記録再生方法を示す説明図である。
【図22】図1の光磁気ディスクを用いた磁界変調オー
バーライト記録方法を示す説明図である。
【図23】図1の光磁気ディスクを用いた光変調オーバ
ーライト記録方法を示すと共に、読み出し層及び記録層
の磁化方法を示す説明図である。
【図24】図1の光磁気ディスクを用いた光変調オーバ
ーライト記録方法を示すと共に、読み出し層及び記録層
の保持力の温度依存性を示す説明図である。
【図25】図1の光磁気ディスクに対して、光変調オー
バーライト時、および、再生時に照射される光ビームの
強度の一例を表す説明図である。
【図26】図1の光磁気ディスクに対して、光変調オー
バーライト時、および、再生時に照射される光ビームの
強度の他の例を表す説明図である。
【図27】図1の光磁気ディスクに対して、光変調オー
バーライト時、および、再生時に照射される光ビームの
強度のその他の例を表す説明図である。
【図28】図1の光磁気ディスクの片面タイプを示す説
明図である。
【図29】図1の光磁気ディスクの両面タイプを示す説
明図である。
【図30】図1の光磁気ディスクの読み出し層に元素を
添加したときにおける、カー回転角の増大効果を調べる
ためのサンプルの概略の構成を示す説明図である。
【図31】図30のサンプルのカー回転角の波長依存性
を示すグラフである。
【図32】図1の光磁気ディスクの読み出し層に元素を
添加したときにおける、耐湿性の改善効果を調べるため
のサンプルの概略の構成を示す説明図である。
【図33】図32のサンプルのC/N比の時間変化を示
すグラフである。
【図34】図1の光磁気ディスクの読み出し層の膜厚を
変えて測定したカー・ヒステリシス・ループを示すグラ
フであり、(a)〜(d)は、それぞれ、膜厚が20、
30、40、50nmで得られたカー・ヒステリシス・
ループを示すグラフである。
【図35】図1の光磁気ディスクの読み出し層の角形比
を補償温度毎に膜厚に対してプロットしたグラフであ
る。
【図36】図29から角形比を求めるための計算方法を
示す説明図である。
【図37】図1の光磁気ディスクの読み出し層の角形比
をキュリー温度毎に膜厚に対してプロットしたグラフで
ある。
【図38】図1の光磁気ディスクで得られたカーループ
を示すグラフであり、(a)、(b)は、それぞれ、記
録層にTbFeCo、DyFeCoを用いた光磁気ディ
スクで得られたカーループである。
【図39】本発明の第2実施例を示すものであり、光磁
気ディスクの概略の構成図である。
【図40】本発明の第3実施例を示すものであり、光磁
気ディスクの概略の構成図である。
【図41】本発明の第4実施例を示すものであり、光磁
気ディスクの概略の構成図である。
【図42】図41の読み出し層および記録層の保磁力の
温度特性を示す説明図である。
【図43】本発明の第5実施例を示すものであり、光磁
気ディスクの概略の構成図である。
【図44】本発明の第6実施例を示すものであり、光磁
気ディスクの概略の構成図である。
【図45】図44の光磁気ディスクのバリエーションを
示すものであり、放熱層を有する光磁気ディスクの概略
の構成図である。
【図46】図44の光磁気ディスクのバリエーションを
示すものであり、反射層を有する光磁気ディスクの概略
の構成図である。
【符号の説明】
1 基板1(基体) 2 透明誘電体層 3 読み出し層 4 記録層 5 保護層 6 オーバーコート層 9 記録媒体層 10 接着層 20 放熱層 21 透明誘電体層(第2透明誘電体層) 22 反射層 29 中間層 30 中間層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中嶋 淳策 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 高橋 明 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 太田 賢司 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 池谷 直泰 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透光性のある基体と、基体上に形成され、
    室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温
    度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行す
    る読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁
    気記録する記録層とを有しており、 上記読み出し層がGdFeCoであることを特徴とする
    光磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】上記記録層がDyFeCoであることを特
    徴とする請求項1記載の光磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】上記基体と読み出し層との間に透明誘電体
    層が形成されており、上記記録層上に保護層が形成され
    ており、透明誘電体層または保護層の少なくともいずれ
    か一方はAlNであることを特徴とする請求項1または
    2のいずれかに記載の光磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】透光性のある基体と、基体上に形成された
    透明誘電体層と、透明誘電体層上に形成され、室温で面
    内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に
    伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出
    し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁気記録す
    る記録層と、記録層上に形成された保護層とを有してお
    り、 上記透明誘電体層または保護層の少なくともいずれか一
    方は、酸素を含まない透明誘電体材料からなることを特
    徴とする光磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】上記酸素を含まない透明誘電体材料は、S
    iN、AlSiN、AlTaN、TiN、BN、ZnS
    のいずれかであることを特徴とする請求項4記載の光磁
    気記録媒体。
  6. 【請求項6】透光性のある基体と、基体上に形成された
    透明誘電体層と、透明誘電体層上に形成され、室温で面
    内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に
    伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出
    し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁気記録す
    る記録層と、記録層上に形成された保護層とを有してお
    り、 上記透明誘電体層または保護層の少なくともいずれか一
    方は、窒素を含む透明誘電体材料からなることを特徴と
    する光磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】上記窒素を含む透明誘電体材料は、Si
    N、AlSiN、AlTaN、TiN、BN、SiAl
    ON、TiONのいずれかであることを特徴とする請求
    項6記載の光磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】透光性のある基体と、基体上に形成された
    透明誘電体層と、透明誘電体層上に形成され、室温で面
    内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一方、温度上昇に
    伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に移行する読み出
    し層と、読み出し層上に形成され、情報を光磁気記録す
    る記録層と、記録層上に形成された保護層とを有してお
    り、 上記透明誘電体層または保護層の少なくともいずれか一
    方は、屈折率が2.2以上である透明誘電体材料からな
    ることを特徴とする光磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】上記屈折率が2.2以上である透明誘電体
    材料は、TiN、ZnS、TiON、TiO2 、BaT
    iO3 、SrTiO3 のいずれかであることを特徴とす
    る請求項8記載の光磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】上記GdFeCoからなる読み出し層
    に、Nd、Pr、Pt、Pdの中の少なくともいずれか
    一種類の元素が添加されていることを特徴とする請求項
    1記載の光磁気記録媒体。
  11. 【請求項11】上記GdFeCoからなる読み出し層ま
    たは上記記録層の少なくともいずれか一方に、Cr、N
    i、Mn、Be、V、Nbの中の少なくともいずれか一
    種類の元素が添加されていることを特徴とする請求項1
    記載の光磁気記録媒体。
  12. 【請求項12】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
    方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
    移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
    を光磁気記録する記録層とを有しており、 上記記録層がTbFeCoであることを特徴とする光磁
    気記録媒体。
  13. 【請求項13】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
    方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
    移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
    を光磁気記録する記録層とを有しており、 上記読み出し層は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属
    非晶質合金からなっており、その補償温度が125℃以
    上になるように組成が設定され、かつ、膜厚が10nm
    以上に設定されていることを特徴とする光磁気記録媒
    体。
  14. 【請求項14】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
    方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
    移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
    を光磁気記録する記録層とを有しており、 上記読み出し層は、フェリ磁性を有する希土類遷移金属
    非晶質合金からなっており、補償温度を持たないでキュ
    リー温度が130℃以上になるように組成が設定され、
    かつ、膜厚が10nm以上に設定されていることを特徴
    とする光磁気記録媒体。
  15. 【請求項15】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
    方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
    移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
    を光磁気記録する記録層とを有しており、 上記の基体の読み出し層側の面には、光ビームを案内す
    るためのグルーブが設けられており、グルーブの幅がグ
    ルーブ間のランドの幅にほぼ等しくなるように設定され
    ていることを特徴とする光磁気記録媒体。
  16. 【請求項16】上記のグルーブ上の記録層およびランド
    上の記録層に情報が光磁気記録されることを特徴とする
    請求項15記載の光磁気記録媒体。
  17. 【請求項17】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示す
    一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化
    状態に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
    れ、情報を光磁気記録する記録層とを有しており、 上記読み出し層は、希土類遷移金属合金からなってお
    り、その補償温度が室温とキュリー温度の間にないよう
    に設定され、かつ、希土類金属の含有量が補償組成に対
    応する最大含有量よりも多くなるように設定されている
    ことを特徴とする光磁気記録媒体。
  18. 【請求項18】上記読み出し層と記録層の間には、面内
    磁化膜からなる中間層が設けられていることを特徴とす
    る請求項17記載の光磁気記録媒体。
  19. 【請求項19】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示す
    一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化
    状態に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
    れ、情報を光磁気記録する記録層とを有しており、上記
    読み出し層は、希土類遷移金属合金からなっており、そ
    の補償温度が室温とキュリー温度の間にないように設定
    され、かつ、希土類金属の含有量が補償組成に対応する
    最大含有量よりも多くなるように設定されている光磁気
    記録媒体を使用し、情報の記録再生を行う記録再生方法
    であって、 読み出し層を磁化する一定磁界を印加しながら、記録信
    号に応じて比較的低い第1のレーザーパワーと比較的高
    い第2のレーザーパワーとに切り換えたレーザー光を照
    射することにより記録層の磁化の向きを反転させて記録
    を行い、 第1のレーザーパワーよりもさらに低いレーザーパワー
    のレーザー光を照射することにより、読み出し層のレー
    ザースポット径より小さい領域を垂直磁化状態に移行さ
    せ、かつ、読み出し層の垂直磁化状態となった領域の副
    格子磁化を記録層の副格子磁化に対して安定な方向に揃
    え、読み出し層の垂直磁化状態となった領域より情報の
    再生を行うことを特徴とする記録再生方法。
  20. 【請求項20】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化状態を示す
    一方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化
    状態に移行する読み出し層と、読み出し層上に形成さ
    れ、情報を光磁気記録する記録層とを有しており、 上記読み出し層と記録層の間には、非磁性膜からなる中
    間層が設けられていることを特徴とする光磁気記録媒
    体。
  21. 【請求項21】透光性のある基体と、基体上に形成さ
    れ、室温で面内磁気異方性が優位な面内磁化を示す一
    方、温度上昇に伴い垂直磁気異方性が優位な垂直磁化に
    移行する読み出し層と、読み出し層上に形成され、情報
    を光磁気記録する記録層とを有しており、上記の基体の
    読み出し層側の面には、光ビームを案内するためのグル
    ーブが設けられており、グルーブの幅がグルーブ間のラ
    ンドの幅にほぼ等しくなるように設定されている光磁気
    記録媒体を使用する記録再生方法であって、 上記のグルーブ上の記録層およびランド上の記録層を情
    報の記録再生に用いることを特徴とする記録再生方法。
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