JPH0614938B2 - 骨プレート - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （イ）産業上の利用分野 この発明は、骨折、特に粉砕骨折の接骨治療に威力を発
揮する、画期的な「むかで型」の骨プレートに関する。

（ロ）従来の技術 従来の骨プレートは、第４図に示すようなものであつ
た。すなわち、本体(1)が金属製の細長い平板で、その
中心線に複数個のネジ穴(4)を設けたものである （ハ）発明が解決しようとする課題 従来の骨プレートは、次のようにして使用していた。す
なわち、上腕骨前腕骨、脛骨、大腿骨などの長骨が二つ
に折れた、いわゆる単純骨折の場合、常法どとり切皮
し、筋肉を分け、骨折部に到達したら、両方の骨折端を
確認し、元どおりに骨折をきれいに揃えて修復する。そ
の際、骨が折れて支えを失った筋肉は、著しく収縮して
いて修復作業に難渋するから、患者患蓄に、あらかじめ
筋肉弛緩剤や精神安定剤を投与しておく。

次に、把骨鉗子で骨折端が離れないように固定したの
ち、骨折部をまたぐように、また骨の中軸に沿うように
して、骨プレートの装着位置を定める。位置を定めた
ら、骨プレートのネジ穴の間隔に合わせ、デバイダーで
正確にネジ込み箇所の目印を骨の上につける。目印をネ
ジの直径より細いドリルで穿孔したのち、骨の上に骨プ
レートを載せ、ドライバーでネジを入れる。

ネジ込みは、骨折端に近いところから始め、骨折端がず
れないように、また骨プレートが骨の中軸から外れない
よう細心の注意を払いつつ、残りのネジを締めつける。
最後に抗生物質を注ぎ、皮下織、皮膚を縫合して手術を
終わる。

しかし、このようにして使用する従来の骨プレートは、
長骨が管状であることに配慮が及ばず、形が単純な平板
であるため、骨の上に載せたときの坐り、つまり安定性
が非常に悪かった。骨のサイズに比べて小さな骨プレー
トを使用すれば、安定性は良くなるものの、強度の点で
実用性に欠けるうらみがあった。

そのため、骨の上に載せた骨プレートがぐらぐら動いて
しまうので、骨にネジ穴を穿孔するときには、骨プレー
トを外さなければならず、ドライバーでネジを締めると
きにも、助手に骨プレートを押さえさせるなどして、非
常に扱い辛いものであった。そればかりか、ネジの締め
加減が極めて難しく、経験豊富な熟練した術者が時間を
かけ、細心の注意を払いながら装着したにもかかわら
ず、骨プレート装着後に、きちんと揃えておいた骨折端
がずれたり、よじれてしまったり、あるいは、骨プレー
トが骨の中軸から外れてしまつたりしがちで、やりなお
しに手間取ることが少なくなかった。

単純骨折の場合でさえ、このような不便があるのである
から、いわんや骨が粉々に砕けた粉砕骨折の場合には、
従来の骨プレートはほとんど役に立たなかった。

すなわち、粉砕骨折の接骨治療には、大小の骨プレート
を組み合わせて装着するだけでは足りず、状況によって
はワイヤー締結法を併用しなければならないのである
が、これらの装着作業に長時間を要するうえ、ワイヤー
の存在によって骨の新生を阻害され、骨折端の癒合しな
い事例も稀でなかった。しかも、細かく破損した骨片ま
で一つ残らず結束するのは、そうてい不可能であるか
ら、捨てた骨片の分だけ折れた手足が短くなるわけで、
跛行など深刻な後遺症を残しがちであった。

この発明が解決しようとする課題は、骨プレートを骨折
部に装着しやすくして、単純骨折の手術時間を短縮させ
ると共に、粉砕骨折を確実に治療できるようにすること
である。

（ニ）課題を解決するための手段 以上に説明した課題を解決するための手段について、こ
の発明の発明者は、実験犬を使用していろいろ実験し
た。

最初の試作品は、ステンレスのザルを従来の骨プレート
に溶接したものであり、ザルの中に小骨片を収納するこ
とによって完治を期待したのであるが、筋肉の収縮力は
強大で、手術中に芯を持たないザルは変形してしまっ
た。ついで、多数の円孔を開けた円筒を試作し、円筒内
に骨折端と骨片を嵌め込んでみたのであるが、強度の点
では申し分なかったものの、骨と筋肉の癒合がはかばか
しくゆかず、失敗に終わった。この発明者は、このよう
な実験を長年にわたって重ねた結果、ようやくこの発明
を完成させたのである。

この発明に係わる骨プレートは、前記課題を見事に解決
したものであって、その解決手段を第１図に基づいて説
明する。

第１図は、この発明に係わる「むかで型」の骨プレート
を示す斜視図である（１）は、長骨の全周を囲むことの
できる幅を持つ長方形の金属板を断面がＵ字状になるよ
うに成形した本体を示している。本体(1)の両方の側縁
部(2)には、むかでの足のように脚(3)が多肢状に形成さ
れている。本体(1)の湾曲度や脚(3)の長さ、幅、間隔な
どは、特に限定されるものでなく、骨の形状やサイズに
合わせて任意に選択することができる。

（ホ）作 用 第１図に示したこの発明に係わる骨プレートは、次のよ
うにして長骨の粉砕骨折の接骨治療に使用する まず、あらかじめＸ線像などによって、対位する健常骨
の長さを測定しておく。また、複雑に破損した骨端を原
形どおりに修復することは、実際上、ほとんど不可能で
あるが、骨片についた筋肉をできるだけ離断せぬようか
つ、骨片の配列にできるだけ狂いのなきう心掛けなが
ら、骨片を残らず集めておく。

そのうえで、この「むかで型」骨プレートを骨折部にか
ぶせ、これをローリングさせて骨折片を見えやすくしな
がら近位の遠位の骨片をそれぞれ元来あるべき形に近づ
け、ついで本体のネジ穴を術者の視野入れてのち、順を
追って脚を閉じ、ネジ止めをし、健常骨と等長になる位
置で固定する。さらに、ネジ止めできる大きさの骨片を
選び、これらを骨プレートにネジで固定する。最後、骨
折端や固定した骨片の間隙に、細かな骨片を一つ残らず
挿入し、開いていた脚を閉じて粉砕骨折の接骨手術を終
了する。

（ヘ）発明の効果 この発明に係わる骨プレートを使用すると、断面をＵ字
状に成形した本体(1)が管状の長骨にすっぽり嵌合す
る。さらに、両側の側縁部(2)に形成された多肢状の脚
(3)が強力なバネとなり、折れた骨を脇からしっかり支
える。

そのため、骨プレートの安定性が格段に向上し、骨プレ
ートを骨折部に仮装装着したまま、ネジ穴から直接ドリ
ルで骨を穿孔することができるようになる。しかも、ド
ライバーでネジを締めつけるときに、修復した骨折端が
ずれたり、よじれたりせず、また、骨プレートが骨の中
軸から外れる心配もないので、極めて容易にかつ短時間
で固定作業を完了することができるようになる。仕上が
り具合も良好であるから、厄介なやりなおしに手間取る
こともなく、手術時間が著しく短縮し、術者や助手の疲
労も著しく軽減されるようになる。

粉砕骨折の場合に、この発明に係わる「むかで型」の骨
プレートを使用することによって、骨折部に装着する骨
プレートの固定位置を自由に調節し、折れた骨を元どお
りの長さに復元することができるようになる。そのう
え、従来は結束できなかった細かい骨片まで、多肢状の
脚で抱きかかえるようにして、一つ残らず完全に集束す
ることができるようになる。そして、不規則に集められ
た小さな骨片も、骨癒合を促進させる充填剤の役割をす
る。そのため、ワイヤー使用にる骨新生阻害のよう弊害
がなく、また手肢短縮のような後遺症も防ぎ、満足ゆく
治療成果を得ることができるようになる。

しかも、断面がＵ字状の骨プレートは、平板状の従来品
よりも飛躍的に強度が高まるから、患者患蓄の不養生に
よる骨プレートの変形をも防止することができる。その
ため、ギブスを不要とする症例が増え、ギブス着用の場
合でも、使用期間を著しく短縮できるようになる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この発明に係わる骨プレートを示す斜視図で
ある。第２図は、この発明品の粉砕骨折における使用状
態を示す斜視図である。第３図は、長骨の粉砕骨折の一
例を示す斜視図である。第４図は、従来の骨プレートを
示す斜視図である。 １……本体、２……側縁部 ３……脚、４……ネジ穴

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】長骨の全周を囲むことのできる幅を持つ長
   方形の金属板を断面がＵ字状になるように成形して本体
   （１）とし、本体（１）の両側縁部（２）、（２）を断
   続的に切除して多肢状の脚（３）を連設した、骨プレー
   ト。