JPH0612635A - 浮上型磁気ヘッド装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 磁石が設けられたサスペンションによって磁
気ヘッド素子が形成されたスライダーを支持し、装置本
体のサスペンションに設けた磁石に対向する位置に磁石
を設ける。 【効果】 スライダーと磁気ディスク間の摺動による摩
耗を低減し、両者のコンタクト・スタート・ストップ耐
久性を向上させ、磁気ヘッド素子，スライダー及び磁気
ディスクの製品寿命を向上させ、かつスライダー浮上距
離の安定性を向上し、情報の記録再生を迅速かつ安定・
確実に行い、装置間のスライダー浮上特性のバラツキを
低減する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ハードディスクドライ
ブ装置等に用いられる浮上型磁気ヘッド装置に係わり、
特に、磁気ディスク表面に対して微小の間隙をもった状
態で情報の記録再生を行い、起動停止時には磁気ディス
ク表面に接するコンタクト・スタート・ストップ型の浮
上型磁気ヘッド装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】ハードディスク等に対して情報の記録再
生を行うハードディスクドライブ装置においては、磁気
ヘッドと磁気ディスク表面の接触による摩耗損傷を避け
るために、起動停止時には磁気ヘッドが磁気ディスクに
接し、情報の記録再生時には高速回転する磁気ディスク
表面に発生する空気流によって磁気ヘッドを磁気ディス
ク表面より微小間隙をもって浮上走行させるように構成
した、いわゆるコンタクト・スタート・ストップ型の浮
上型磁気ヘッド装置が用いられている。

【０００３】上記コンタクト・スタート・ストップ型の
浮上型磁気ヘッド装置は、磁気ディスク表面に発生する
空気流を受ける面であるエア・ベアリング・サーフェス
を有するスライダーに情報の記録再生を行う磁気ヘッド
素子が形成されてなり、該スライダーは板バネによって
構成されるサスペンションによって支持され、該サスペ
ンションは支持体によって支持され、これを磁気ディス
ク表面に平行な面内を移動させ、磁気ディスクの所定の
記録トラックへの情報の記録再生を行うものである。

【０００４】よって、該磁気ディスクの回転が停止して
いる時は、磁気ヘッド素子の形成されたスライダーはサ
スペンションのバネ的性質によるサスペンション荷重と
サスペンション，スライダーの自重により構成されるヘ
ッド荷重を受けて磁気ディスク表面に接している。そし
て、磁気ディスクが回転すると、その回転によって発生
する空気流をスライダーのエア・ベアリング・サーフェ
スに受け、すなわち、空気流からの浮力を受けてスライ
ダーは浮上する。この時、やはりサスペンション荷重と
サスペンション，スライダーの自重によって、スライダ
ーにはヘッド荷重が加わっている。従って、コンタクト
・スタート・ストップ型の浮上型磁気ヘッド装置におい
ては、磁気ディスクの回転によって発生する空気流によ
る浮力とサスペンション荷重とサスペンション，スライ
ダーの自重により構成されるヘッド荷重のバランスによ
りスライダー浮上距離が決定され、磁気ヘッド素子の形
成されたスライダーは所定の浮上距離を保ちながら、磁
気ディスクの所定の記録トラックへの情報の記録再生を
行う。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、前述のよう
に、コンタクト・スタート・ストップ型の浮上型磁気ヘ
ッド装置においては、磁気ヘッド素子の形成されたスラ
イダーは、起動時及び停止時には磁気ディスクに接して
おり、起動動作直後或いは停止動作直後には磁気ディス
ク表面に摺動することとなる。その際、スライダー表面
及び磁気ディスク表面が摩耗していまい、コンタクト・
スタート・ストップ耐久性は良好ではない。また、これ
によって、両者の製品寿命が短くなるとともに、摺動に
よって発生する摩耗粉がスライダーに付着し、スライダ
ーの浮上性能が低下するという問題も発生している。

【０００６】ところで、上述のような浮上型磁気ヘッド
装置において、磁気ヘッド素子の形成されたスライダー
の磁気ディスクの所定の記録トラックへの移動は、次の
ような方法により行われる。例えば、磁気ヘッド素子の
形成されたスライダーを支持するサスペンションを磁気
ディスクの径方向に平行に移動することの可能な支持体
によって支持し、スライダーが磁気ディスクの径方向に
平行に移動して磁気ディスクの記録トラックにアクセス
するリニアアクチュエーター方式や、磁気ヘッド素子の
形成されたスライダーを支持するサスペンションを回動
自在な支持体によって支持し、支持体の回動軸を中心と
してこれに支持されるサスペンション及びスライダーを
回動させ、磁気ヘッド素子の形成されたスライダーが円
弧を描きながら磁気ディスクの記録トラックにアクセス
する回転アクチュエーター方式等の移動方式である。

【０００７】しかしながら、上述のような移動方式によ
り磁気ヘッド素子の形成されたスライダーの磁気ディス
クの所定の記録トラックへの移動を行うと、スライダー
浮上距離が安定しないという問題が発生している。

【０００８】前述のように、コンタクト・スタート・ス
トップ型の浮上型磁気ヘッド装置においては、磁気ディ
スクの回転によって発生する空気流による浮力とサスペ
ンション荷重とサスペンション，スライダーの自重によ
って構成されるヘッド荷重がバランスすることによりス
ライダーは浮上状態を保っている。この時、サスペンシ
ョン荷重とサスペンション，スライダーの自重によるヘ
ッド荷重が一定であるのに対して、磁気ディスクの回転
によって発生する空気流による浮力の強さは磁気ディス
クと磁気ヘッドの相対周速度によって決定され、内周よ
りも外周において大きくなる。よって、浮力とヘッド荷
重のバランスによって決定されるスライダー浮上距離は
磁気ディスクの内周よりも外周において大きくなり、ス
ライダー浮上距離は安定しない。

【０００９】また、近年では、ハードディスク等の磁気
ディスクの記録密度を向上させるために、外周と内周の
記録密度を略同じにして記録を行うゾーンビットレコー
ディングが利用されており、このことからもスライダー
浮上距離の安定性の向上が望まれている。

【００１０】そこで、上述の移動方式のうち、回転アク
チュエーター方式において、磁気ヘッド素子の形成され
たスライダーが円弧を描いて磁気ディスクの記録トラッ
クにアクセスする際、スキュー角と称される記録トラッ
クの接線方向に対するスライダーの中心線の方向のズレ
が生じることを利用し、エア・ベアリング・サーフェス
の形状に改良を施したクロススロットスライダーやＴＰ
Ｃ（Ｔｒａｎｓｖｅｒｓａｌ Ｐｒｅｓｓｕｒｅ Ｃｏ
ｎｔｒｏｌ）スライダー等のスライダーが提案されてい
る。ところが、このようなエア・ベアリング・サーフェ
スの形状に改良を施したスライダーにおいては、磁気デ
ィスクの径，スライダーの周速度範囲，スキュー角範囲
等の組み合わせによる様々な条件に対して、これに対応
したエア・ベアリング・サーフェスを設計する必要があ
り、非常に煩雑である。

【００１１】また、コンタクト・スタート・ストップ型
の浮上型磁気ヘッド装置においては、サスペンションの
バネ的性質によるサスペンション荷重とサスペンショ
ン，スライダーの自重によって構成されるヘッド荷重が
磁気ヘッド素子の形成されたスライダーにかかっている
が、このヘッド荷重を大きく左右するのはサスペンショ
ンのバネ的性質によるサスペンション荷重であり、サス
ペンション荷重によりスライダーの浮上特性は大きく影
響される。ところが、浮上型磁気ヘッド装置の製造時に
おいて均一なバネ特性を有するサスペンションを形成す
ることは困難であり、装置ごとにサスペンションのバネ
的性質が異なるために装置間でスライダー浮上特性のバ
ラツキが大きく、問題となっている。

【００１２】そこで本発明は、かかる従来の実情に鑑み
て提案されたものであって、スライダーと磁気ディスク
間の摺動による摩耗を低減し、両者のコンタクト・スタ
ート・ストップ耐久性を向上させ、磁気ヘッド素子，ス
ライダー及び磁気ディスクの製品寿命を向上させ、かつ
スライダー浮上距離の安定性を向上し、情報の記録再生
を迅速かつ安定・確実に行うことが可能であり、装置間
のスライダー浮上特性のバラツキが低減された浮上型磁
気ヘッド装置を提供することを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに本発明者等が鋭意検討した結果、浮上型磁気ヘッド
装置のスライダーにかかるヘッド荷重を制御することに
よって、スライダー浮上距離を自由に決定することがで
きるとの知見を得た。すなわち、図５にエア・ベアリン
グ・サーフェス幅が３２０μｍであるアルチック材製の
スライダーを用い、スライダー周速度を６．０ｍ／ｓと
した場合のスライダーにかかるヘッド荷重とスライダー
浮上距離の関係を示すが、ヘッド荷重によってスライダ
ー浮上距離は変化し、ヘッド荷重が小さい場合にはスラ
イダー浮上距離が大きく、ヘッド荷重が大きい場合には
スライダー浮上距離が小さくなるため、スライダーにか
かるヘッド荷重を制御することによってスライダー浮上
距離を自由に決定することが可能であることがわかっ
た。

【００１４】また、本発明者等は、浮上型磁気ヘッド装
置のスライダーにかかるヘッド荷重を制御することによ
ってコンタクト・スタート・ストップ耐久性が決定され
るとの知見も得た。すなわち、図６にエア・ベアリング
・サーフェス幅が３２０μｍであるアルチック材製のス
ライダーを用い、スライダー周速度を６．０ｍ／ｓとし
た場合のスライダーにかかるヘッド荷重と繰り返し可能
なコンタクト・スタート・ストップ回数の関係を示す。
この時、繰り返し可能なコンタクト・スタート・ストッ
プ回数は、スライダーと磁気ディスク間の摩擦係数μが
０．５＜μとなるまでのコンタクト・スタート・ストッ
プ回数とした。図６に示されるように、スライダーにか
かるヘッド荷重によってコンタクト・スタート・ストッ
プ耐久性が決定されており、ヘッド荷重が小さい場合に
はコンタクト・スタート・ストップ耐久性が高く、ヘッ
ド荷重が大きい場合にはコンタクト・スタート・ストッ
プ耐久性が低くなるため、スライダーにかかるヘッド荷
重を制御することによってコンタクト・スタート・スト
ップ耐久性を決定することが可能であることがわかっ
た。

【００１５】よって、コンタクト・スタート・ストップ
型の浮上型磁気ヘッド装置においては、スライダーにか
かるヘッド荷重を制御することにより、スライダー浮上
距離，コンタクト・スタート・ストップ耐久性を決定す
ることができる。

【００１６】すなわち、本発明においては、磁気ヘッド
素子が形成されてなるスライダーがサスペンションに支
持されてなる浮上型磁気ヘッド装置において、上記サス
ペンションに磁石が設けられ、装置本体のサスペンショ
ンに設けられた磁石と対向する位置に磁石が設けられて
いることを特徴とするものである。

【００１７】

【作用】

【００１８】本発明においては、磁気ヘッド素子が形成
されてなるスライダーがサスペンションに支持されてな
る浮上型磁気ヘッド装置において、上記サスペンション
に磁石が設けられ、装置本体のサスペンションに設けら
れた磁石と対向する位置に磁石が設けられているため、
２つの磁石間に反発力あるいは吸引力を発生させること
が可能であり、磁石の設けられたサスペンションに荷重
を与えることができ、ヘッド荷重を制御することが可能
である。

【００１９】

【実施例】以下、本発明を適用した浮上型磁気ヘッド装
置の具体的な実施例について、図面を参照しながら説明
する。先ず、浮上型磁気ヘッド装置の構成について説明
する。浮上型磁気ヘッド装置は、図１に示すように、ス
ライダー１はサスペンション２に取り付けられ、支持体
３に取り付けられてアクチュエーター４に取り付けられ
ている。該浮上型磁気ヘッド装置において、スライダー
１は起動時には磁気ディスク５に接しているが、磁気デ
ィスク５が図中Ｒ₁ 方向に回転すると、これによって発
生する空気流による浮力を受けて浮上し、磁気ディスク
５の表面より微小な間隙をもって情報の記録再生を行
い、停止時には磁気ディスク５上に降下するものであ
る。また、磁気ディスク５が図中Ｒ₁ 方向に回転する
時、アクチュエーター４は図中Ｒ₂ 方向に回動し、支持
体３，サスペンション２を介してスライダー１を磁気デ
ィスク５面上で図中矢印Ｍのように移動させる。

【００２０】次に、図２にスライダー１周辺部の拡大図
を示す。図２に示すように、スライダー１の一主面には
レール加工が施されて溝部６が形成され、この溝部６の
両側にはスライダーレール７，８が突条部として形成さ
れている。さらに、例えば薄膜磁気ヘッドである磁気ヘ
ッド素子９が一方のスライダーレール７の磁気ディスク
５との対向面７ａと直交する一側面７ｂに設けられ、磁
気ギャップが上記磁気ディスク５との対向面７ａに臨む
ようになされている。なお、磁気ヘッド素子９として
は、薄膜磁気ヘッドの他、コンポジット型，モノリシッ
ク型等の磁気ヘッドを使用しても良い。従って、起動動
作直後或いは停止動作直後において、磁気ディスク５表
面とスライダー１のスライダーレール７，８の対向面７
ａ，８ａとが摺動する状態となっている。

【００２１】この時、本実施例の浮上型磁気ヘッド装置
においては、図３に示されるように、スライダー１をサ
スペンション２が支持し、これを支持体３によって支持
しており、上記支持体３はサスペンション２と接するこ
となく対向する突出部３ａを有する形状とされている。
そして、支持体３の突出部３ａのサスペンション２との
対向面３ｂに永久磁石１１が配されており、サスペンシ
ョン２の突出部３ａとの対向面２ａに永久磁石１１に対
向するように電磁石１０が配されている。

【００２２】上記電磁石１０，永久磁石１１は図４に示
されるように構成されており、永久磁石１１は、言うま
でもなく、端部にＮ極及びＳ極を有し図中矢印Ｌのよう
な磁界の向きを有する磁石であり、一方、電磁石１０は
高透磁材料１４中にコイル１２，１３が埋め込まれた構
造を有している。このように構成される電磁石１０，永
久磁石１１においては、例えば電磁石１０の永久磁石１
１への対向面１０ａに現れるコイル１２の磁極がＮ極で
あり、コイル１３の磁極がＳ極である場合においては、
電磁石１０と永久磁石１１は反発し合い、逆に対向面１
０ａに現れるコイル１２の磁極がＳ極であり、コイル１
３の磁極がＮ極である場合においては、電磁石１０と永
久磁石１１は引き寄せ合う。よって、このような電磁石
１０と永久磁石１１の挙動により、電磁石１０，永久磁
石１１の配されるサスペンション２と支持体３間の距離
が変化する。すなわち、支持体３は硬質であるため、板
バネであるサスペンション２が電磁石１０と永久磁石１
１間の磁力によって撓むこととなる。この時、電磁石１
０に流す電流の強さ及び向きを変化させることにより、
電磁石１０と永久磁石１１間に働く反発力、あるいは吸
引力を変化させ、サスペンション２への荷重を変化さ
せ、ヘッド荷重を変化させることができる。

【００２３】従って、本実施例の浮上型磁気ヘッド装置
によれば、スライダーにかかるヘッド荷重を制御するこ
とが可能であるため、スライダーにかかるヘッド荷重を
制御することによりスライダーと磁気ディスク間の摺動
による摩耗を低減し、コンタクト・スタート・ストップ
耐久性を向上させ、スライダー及び磁気ディスクの製品
寿命を向上させ、また、スライダー浮上距離の安定性を
向上させ、情報の記録再生を迅速かつ安定・確実に行わ
せ、さらに、これらのことから装置間のスライダー浮上
特性のバラツキを低減させることが可能である。

【００２４】

【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明においては、磁気ヘッド素子が形成されてなるスライ
ダーがサスペンションに支持されてなる浮上型磁気ヘッ
ド装置において、上記サスペンションに磁石が設けら
れ、装置本体のサスペンションに設けられた磁石と対向
する位置に磁石が設けられているため、２つの磁石間に
反発力あるいは吸引力を発生させることが可能であり、
磁石の設けられたサスペンションに荷重を与えることが
でき、ヘッド荷重を制御することが可能である。

【００２５】従って、スライダーにかかるヘッド荷重を
制御することによりスライダーと磁気ディスク間の摺動
による摩耗を低減させ、両者のコンタクト・スタート・
ストップ耐久性を向上させ、磁気ヘッド素子，スライダ
ー及び磁気ディスクの製品寿命を向上させ、また、スラ
イダー浮上距離の安定性を向上させ、情報の記録再生を
迅速かつ安定・確実に行わせ、さらに、これらのことか
ら装置間のスライダー浮上特性のバラツキを低減させる
ことが可能であり、その工業的価値は非常に高い。

【図面の簡単な説明】

【図１】浮上型磁気ヘッド装置の構成を示す要部概略斜
視図である。

【図２】スライダー周辺部の要部概略斜視図である。

【図３】本発明を適用した浮上型磁気ヘッド装置のスラ
イダー，サスペンション，支持体の構成を示す要部概略
斜視図である。

【図４】本発明を適用した浮上型磁気ヘッド装置のサス
ペンション，支持体に配された電磁石，永久磁石を示す
模式図である。

【図５】ヘッド荷重とスライダー浮上距離の関係を示す
図である。

【図６】ヘッド荷重と繰り返し可能なコンタクト・スタ
ート・ストップ回数の関係を示す図である。

【符号の説明】

１・・・・スライダー ２・・・・サスペンション ２ａ・・・対向面 ３・・・・支持体 ３ａ・・・突出部 ３ｂ・・・対向面 １０・・・電磁石 １０ａ・・対向面 １１・・・永久磁石 １２・・・コイル １３・・・コイル １４・・・高透磁材料

フロントページの続き (72)発明者 早田 裕 東京都品川区北品川６丁目７番35号 ソニ ー株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 磁気ヘッド素子が形成されてなるスライ
   ダーがサスペンションに支持されてなる浮上型磁気ヘッ
   ド装置において、 上記サスペンションに磁石が設けられ、装置本体のサス
   ペンションに設けられた磁石と対向する位置に磁石が設
   けられていることを特徴とする浮上型磁気ヘッド装置。