JPH06107538A - 角膜移植用眼球保存液 - Google Patents

角膜移植用眼球保存液

Info

Publication number
JPH06107538A
JPH06107538A JP4104009A JP10400992A JPH06107538A JP H06107538 A JPH06107538 A JP H06107538A JP 4104009 A JP4104009 A JP 4104009A JP 10400992 A JP10400992 A JP 10400992A JP H06107538 A JPH06107538 A JP H06107538A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
corneal
eye
cornea
solution
preserving solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP4104009A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeo Obara
健男 小原
Toshijiro Yamaguchi
敏二郎 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shiseido Co Ltd
Original Assignee
Shiseido Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shiseido Co Ltd filed Critical Shiseido Co Ltd
Priority to JP4104009A priority Critical patent/JPH06107538A/ja
Publication of JPH06107538A publication Critical patent/JPH06107538A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Prostheses (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 分子量が5万〜250万であるヒアルロン酸
またはその生理学的に許容される塩0.05〜0.5重
量/容量%を含んでなる角膜移植用眼球保存液。 【効果】 角膜移植用眼球保存液にヒアルロン酸または
その生理学的に許容される塩を含めることにより、保存
中の角膜膨潤性を低減できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、角膜移植用眼球保存液
に関し、特にヒアルロン酸またはその生理学的に許容さ
れる塩を含んでなる角膜移植用眼球保存液に関する。
【0002】
【従来の技術】角膜移植に用いられる全眼球や強角膜片
は人体から摘出後速やかに低温保存されることが望まし
く、保存に際しては角膜内皮細胞に影響を与えず、角膜
の膨潤を招かないことが要求される。しかしながら、単
に低温保存しても角膜内皮のイオンポンプはいまだ4%
程度働いており、長期間保存するとポンプ機能は減弱
し、強いては角膜の膨化ならびに角膜内皮細胞の破壊を
引き起こす。そこで、全眼球あるいは強角膜片を低温で
長期間保存するための保存液(眼球保存液)の開発が切
望され、種々研究が進められてきたが、良好な保存液は
得られていなかった。
【0003】ところが、DiksteinらはHCO3 - イオン
を含まないメディウム中で強角膜片をインキュベーショ
ンすると角膜内皮のHCO3 - ポンプが止まり、角膜は
ゆっくり膨潤してゆくが、再びHCO3 - を含有した液
に換えるとHCO3 - ポンプが働き膨潤が回復する事実
を見出した(S.Diksteinら:J.Physiol .,221 , 29〜
41,1972)。そのため、低温保存とHCO3 -
オンフリーによるポンプの休眠化保存を組み合わせるこ
とにより、角膜片の寿命を一層延長させることが可能と
なった。このような観点から、GPR(Glucose-Phosph
ate-Ringer) 等の眼球保存液が開発された。さらに、角
膜の膨化を抑制する目的で多糖類であるデキストランを
添加した眼球保存液(EP−II液等)が考案され、現在
広く使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、現在
角膜移植用眼球保存液としては、NaHCO3 を含まな
い塩類溶液に多糖類であるデキストランを添加したもの
が広く使用されている。しかし、この眼球保存液の処方
中に含められる高分子化合物であるデキストランは、血
漿増量剤としてすでに使用されているとはいえ、元来生
体外成分であり、アレルギー反応を惹起する可能性のあ
ることが指摘されている(A.W.Richterら:Immunol.Toda
y , ,132〜138,1982)。また、デキスト
ランは保存中の角膜の膨潤性を阻止するには有効である
が、保存期間が長くなるにつれて角膜内皮細胞等の角膜
組織中の細胞に取り込まれ、その後角膜を前房水や無機
塩類溶液中に置くと取り込まれたデキストランにより水
分が角膜組織内に取り込まれ、角膜の膨潤を生じること
が明らかになっている(D.S.Hullら:Invest.Ophthalmo
l., 15,663〜666,1976、 B.E.MaCareyら:
Invest.Ophthalmol.,13,165〜173頁、197
4)。さらに、デキストランには、角膜内皮の保存状態
を高める性質はなく、むしろ角膜内皮とデスメ膜の接着
を弱めたり、角膜内皮細胞の機能を低下させる等有害な
影響を与える可能性のあることも示唆されている(R.H.L
indstromら:Br.J.Ophthalmol., 70,47〜54,19
86、E.Pelsら:Cornea, ,219〜227,198
4/1985)。
【0005】デキストランを用いることによって生じる
このような危惧を無くすために、デキストランの代わり
に生体内成分の一つであり、デキストランより良好なコ
ロイド形成能(こう質浸透圧)を有するコンドロイチン
硫酸ナトリウムを添加した眼球保存液が考案された(特
開昭62−198601号公報)。しかしながら、平均
分子量4万のコンドロイチン硫酸ナトリウムが2.5%
添加されてなる眼球保存液(EP−III 液)は、3.5
%デキストランを含有する眼球保存液(EP−II液)と
比較すると保存中の角膜膨潤性は少なく、優れた眼球保
存液である可能性があると考えられたものの、さらに検
討の余地があった(桑山信也他:眼紀、第41巻、第1
691〜1696,1990)。さらに、高分子量のコ
ンドロイチン硫酸ナトリウムではみられないが、低分子
量のコンドロイチン硫酸ナトリウムでは、保存期間が長
くなるにつれてデキストランと同様にそれらが角膜の各
細胞に取り込まれ、移植後に角膜の顕著な膨潤を引き起
こすことが報告されている(H.E.Kaufmanら:Am.J.Ophth
almol., 100 ,299〜304,1985)ことから、
分子量1万以下の低分子量コンドロイチン硫酸ナトリウ
ムを除去する必要性も生じていた。このように、眼球保
存液の改良は幾多行われてきたが、十分に満足できるも
のは得られていなかった。
【0006】したがって、本発明の目的は、従来使用さ
れてきた角膜移植用眼球保存液に付随する欠点の改良さ
れた当該保存液、例えば保存中の角膜膨潤性が低く、か
つ角膜内皮細胞に対する影響の少ない優れた角膜移植用
の眼球保存液を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記デキ
ストランやコンドロイチン硫酸ナトリウムに代替でき、
かつそれらの使用に付随する欠点を改良できる各種生体
高分子物質について検討した結果、主として高い粘弾性
を有し、そして非常に高い保水性を持つことから眼科手
術時に眼内に注入して用いられるヒアルロン酸を一定濃
度で使用すると、意外にも保存中の角膜膨潤性を低減で
き、上記課題が解決できることを見い出し本発明を完成
した。すなわち、本発明によれば、ヒアルロン酸または
その生理学的に許容される塩を含んでなる角膜移植用眼
球保存液が提供される。
【0008】本発明で使用されるヒアルロン酸は、遊離
酸でもその生理学的に許容される塩の形であってもよ
い。また、高純度で、混在する蛋白質やエンドトキシン
等の不純物質により細胞障害性を示さず、医療用として
支障をきたさないものであれば広く使用可能であり、そ
の由来も特に限定されない。具体的には、臍帯、硝子
体、鶏冠、微生物等から得られたヒアルロン酸が使用可
能である。なお、生理学的に許容される塩とは、造塩さ
れたヒアルロン酸が上述のような細胞障害性を示さない
ことをいう。そのため、かかる塩の種類は、本発明の目
的に使用できるものである限り制限されないが、特に、
本発明の保存液に添付される他の成分との適合性を有す
るナトリウム塩またはカリウム塩の形にあるものが好ま
しい。
【0009】かかるヒアルロン酸またはその生理学的に
許容される塩としては、分子量が5万〜250万の範囲
内にあるものが使用でき、保存液当りのその濃度は、
0.05〜0.5重量/容量%の範囲内に調整して用い
るのが好ましい。すなわち、本発明において、ヒアルロ
ン酸またはその生理学的に許容される塩の分子量は5万
以上であり、好ましくは60万以上である。分子量が5
万未満であると、デキストランやコンドロイチン硫酸ナ
トリウムのように角膜の各組織に取り込まれ、角膜の膨
潤が惹起され得る。また、分子量60万未満の場合も、
ヒアルロン酸のような高分子物質の場合、その分子量分
布が多分散性であることから、低分子量のヒアルロン酸
が混在する可能性が高く、角膜移植後の良好な経過が望
めない。
【0010】角膜移植用眼球保存液中のヒアルロン酸ま
たはその塩の濃度は0.05〜0.5重量/容量%であ
り、0.05%未満では、角膜膨潤抑制効果が十分でな
く、良好な保存状態は得られない(後記試験例1参
照)。また、濃度が0.5重量/容量%より高くなる
と、保存液の粘度が著しく増加してべとつき、眼球取り
扱い時の操作性が悪くなる。
【0011】また、本発明の角膜移植用眼球保存液は、
必要に応じて浸透圧、pH等を調製する他の成分が加えら
れる。用いられる他の成分としては、通常、陽イオンと
してナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイ
オンおよびマグネシウムイオン等が、また陰イオンとし
て塩素イオン、リン酸イオン、硫酸イオンおよびクエン
酸イオン等があげられ、さらにグルコースを含めること
ができる。
【0012】上記したような各成分を適当な濃度で処方
して、そのpHを6.5〜7.8に、浸透圧を260〜3
50mOsmの範囲に調整すると、本発明の角膜移植用
眼球保存液が提供される。なお、各成分は、塩化ナトリ
ウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウ
ム、クエン酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸
二ナトリウムとして添加されるのが好ましい。
【0013】本発明の角膜移植用眼球保存液の製造方法
としては、例えば、まずNaCl、KCl、CaCl2
・2H2 O及びMgSO4 ・7H2 Oを室温で注射用水
に溶解せしめ、次にグルコース、クエン酸ナトリウム二
水塩、ヒアルロン酸ナトリウム、NaH2 PO4 、Na
2 HPO4 ・12H2 Oをそれぞれ溶解させた後合わ
せ、最後に滅菌する。また、必要に応じてフェノールレ
ッド等の指示薬を滅菌前に添加することができる。かく
して得られる保存液は、通常pHが6.5〜7.8、浸透
圧が260〜350mOsmである。なお、当該保存液
を使用直前に現場で調製できるように各成分をそれぞれ
別個に包装した一連の試薬(成分)の組み合わせ物とし
て提供することもできる。
【0014】
【実施例】次に、本発明を具体的な処方例、試験例、実
施例に沿ってさらに詳細に説明するが、本発明はそれら
の処方例、実施例のみに限定されるものではない。処方例1 2Lフラスコ中にNaCl 5.39g、KCl 0.
41g、CaCl2 ・2H2 O 0.172gおよびM
gSO4 ・7H2 O 0.218gをとり、注射用水を
加えて、室温で攪拌し溶解させた。次に、グルコース
0.782gを加えて溶かし、さらにクエン酸ナトリウ
ム二水塩0.9g、微生物起原の精製したヒアルロン酸
ナトリウム(分子量180万)0.5g、NaH2 PO
4 0.25gおよびNa2 HPO4 ・12H2
3.6gをその順でそれぞれ添加し溶解させ、全量を1
Lとした。このものを濾過滅菌した後、100〜500
ml容のアンプルまたはバイアル瓶に分注し封入した。こ
のもののpHは7.34であり、浸透圧は275mOsm
であった。処方例2 2Lフラスコ中にNaCl 5.39g、KCl 0.
41g、CaCl2 ・2H2 O 0.172gおよびM
gSO4 ・7H2 O 0.218gをとり、注射用水を
加えて、室温で攪拌し溶解させた。次に、グルコース
0.782gを加えて溶かし、さらにクエン酸ナトリウ
ム二水塩0.9g、微生物起原の精製したヒアルロン酸
ナトリウム(分子量200万)5.0g、NaH2 PO
4 0.25gおよびNa2 HPO4 ・12H2
3.6gをその順でそれぞれ添加し溶解させ、全量を1
Lとした。このものを濾過滅菌した後、100〜500
ml容のアンプルまたはバイアル瓶に分注し封入した。こ
のもののpHは7.20であり、浸透圧は280mOsm
であった。処方例3 2Lフラスコ中にNaCl 7.8g、KCl 0.4
1g、CaCl2 ・2H2 O 0.172gおよびMg
SO4 ・7H2 O 0.218gをとり、注射用水を加
えて、室温で攪拌し溶解させた。次に、グルコース0.
782gを加えて溶かし、さらにクエン酸ナトリウム二
水塩0.9g、鶏冠起原の精製したヒアルロン酸ナトリ
ウム(分子量80万)1.0g、NaH2 PO4 0.
25gおよびNa2 HPO4 ・12H2 O 3.6gを
その順でそれぞれ添加し溶解させ、全量を1Lとした。
このもののpHは7.21であり、浸透圧は314mOs
mであった。
【0015】本発明の眼球保存液の有用性を調べるため
に、処方例1で得られたもの、処方例1においてヒアル
ロン酸ナトリウムの濃度を0.01%にせしめたものお
よびコンドロイチン硫酸ナトリウムを含有する松山らの
角膜移植用眼球保存液(特開昭62−198601号公
報参照)に準じた処方とを用いて全眼球保存効果を試験
した。試験例1 日本白色種雄性家兎(体重2〜3kg)の全眼球を摘出し
た後、ヒアルロン酸ナトリウムを含有する処方例1、処
方例1においてヒアルロン酸ナトリウムの濃度を0.0
1%にせめしたもの、あるいはヒアルロン酸ナトリウム
に代えコンドロイチン硫酸ナトリウムを2.5%含有す
る角膜移植用眼球保存液に浸漬し、4℃にて保存した。
眼球保存液は24時間毎に新しいものと入れ換えた。全
眼球摘出後および眼球保存液に入れた後24時間毎にシ
ルコ社製パキメーターにて角膜中央部の厚みを測定し
た。なお、本試験は各保存液について7眼ずつ実施し
た。
【0016】全眼球を7日間保存した時の角膜厚の測定
結果をグラフに示すと図1のごとくである。図1におい
て、黒丸はヒアルロン酸ナトリウムを0.05%含有す
る処方例1を、黒三角は処方例1においてヒアルロン酸
ナトリウムの濃度を0.01%にせしめたものを、白丸
はコンドロイチン硫酸ナトリウムを2.5%含有する角
膜移植用眼球保存液を示すものである。ヒアルロン酸ナ
トリウムを0.05%含有する処方例1では、コンドロ
イチン硫酸ナトリウムを2.5%含有する角膜移植用眼
球保存液と比較して、全眼球保存後2日以降において角
膜厚の増加率は顕著に抑制されていた。一方、処方例1
においてヒアルロン酸ナトリウムの濃度を0.01%に
せしめたものでは、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含
有する角膜移植用眼球保存液と比較して角膜厚の増加率
に差は認められなかった。試験例2 この試験では、角膜内皮細胞に及ぼす影響を、デキスト
ランを含有する眼球保存液であるEP−II液とヒアルロ
ン酸ナトリウムを0.5%含有する処方例1とで比較し
た。
【0017】日本白色種雄性家兎(体重2〜3kg)より
得た強角膜片をEP−II液あるいは処方例1においてヒ
アルロン酸ナトリウムの濃度を0.5%にせしめたもの
に4℃にて9日間保存した。保存後直ちに、あるいは室
温に1時間放置した後、強角膜片を、25mMNaHCO
3 を含有する保存液中に移し換え、37℃で1時間イン
キュベーションした(temperature reversalを実施)。
インキュベーション後、2.5%グルタルアルデヒドに
て強角膜片を固定し、常法に従って角膜内皮細胞を走査
型電子顕微鏡観察に供した。
【0018】図2に正常の角膜内皮細胞の走査型電子顕
微鏡写真を示す。細胞のモザイク模様がはっきりと見ら
れ、また角膜内皮細胞表面の微細構造、すなわち微細突
起は明瞭に観察される。図3〜図6に試験例2の走査型
電子顕微鏡写真を示す。図3及び図4から分かるよう
に、保存後直ちにtemperature reversalを実施した強角
膜片では、EP−II液および処方例1においてヒアルロ
ン酸ナトリウムの濃度を0.5%にせしめたものにおい
て、角膜内皮細胞はいずれも異常がなく良好に保存され
ていた。しかしながら、4℃にて保存後、室温に1時間
放置した強角膜片においては、図5から分かるようにE
P−II液の場合、角膜内皮細胞表面の微細突起に変形な
いしは萎縮が生じていた。一方、処方例1においてヒア
ルロン酸ナトリウムの濃度を0.5%にせしめたものに
おいては図6から分かるように、微細突起に変形ないし
は萎縮は認められず、良好にその形態は保存されてい
た。
【0019】以上の試験結果から明らかなように生体成
分の一つであり、かつヒト房水中の構成成分であるヒア
ルロン酸ナトリウムを含んでなる本発明の角膜移植用眼
球保存液は、デキストランやコンドロイチン硫酸ナトリ
ウムを含んでなる眼球保存液と同等もしくはそれ以上の
優れた角膜保存効果を有するものであった。なお、角膜
移植手術時においては、temperature reversalは、意図
的に実施されることはなく、移植操作終了後に角膜受領
者の前房水と移植された角膜が接することにより行われ
ている。すなわち、日常の臨床現場においては、temper
ature reversalが実施される前に移植用の角膜はしばら
くの間HCO3 - イオンフリーの環境で室温にさらされ
る可能性があるのである。かかる事項を勘案した場合に
おいても、ヒアルロン酸ナトリウムを含有した角膜移植
用眼球保存液は、その角膜内皮細胞保存効果から分かる
ように極めて優れている。イン・ビボ(in vivo)試験 カニクイザル2頭より全眼球を摘出し、ヒアルロン酸ナ
トリウム0.1%を含有する処方例3に4℃で浸漬し
た。24時間浸漬後、別のカニクイザル4頭の片眼に対
して浸漬後の角膜を移植した。すなわち、全眼球の前房
に眼科手術補助剤(ヒーロン:登録商標)〔カビ ファ
ルマシア社〕を小量注入した後、直径7mmのトレパンに
て角膜を打ちぬき、角膜剪刀にて切り取った。角膜を受
領するサルを塩酸ケタミン(ケタラール50:登録商
標)〔三共〕45mg/kgおよびキシラジン塩酸塩(セラ
クタール:登録商標)〔バイエル〕1.8mg/kgの筋肉
内注射により麻酔した。片眼の角膜を直径7mmのトレパ
ンにて打ち抜き、そこへ移植用角膜を載せた。10−0
ナイロン糸にて16針の端端縫合を行った後、生理食塩
液を前房内に注入して、前房を形成した。術後、0.3
%ゲンタマイシン(ゲンタシン:登録商標)〔エッセク
ス日本〕を1日5回点眼した。手術時の眼球の取り扱い
や操作性は良好で、術後7日でのスリットランプによる
検査では、角膜の混濁や前房中の炎症反応は見られなか
った。さらに、6カ月まで観察したが、角膜の厚さは正
常で、スペキュラーマイクロスコープによる観察結果に
おいても、角膜内皮細胞の減少率は平均値で6.3%と
低率であった。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、保存中の角膜膨潤性が
低く、かつ角膜内皮細胞に対する影響の少ない優れた角
膜移植用の眼球保存液が提供される。かかる効果は、ヒ
アルロン酸またはその生理学的に許容される塩を該保存
液に含めることにより達成され、こうして従来より使用
されているデキストランまたはコンドロイチン硫酸ナト
リウムが添加された角膜移植用眼球保存液と同等もしく
はそれ以上の角膜保存効果を奏する眼球保存液が提供可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1における家兎全眼球の角膜厚の変化を
示した特性グラフである。
【図2】生体から摘出直後の強角膜片の角膜内皮細胞
(正常)の拡大図に代わる走査型電子顕微鏡写真であ
る。
【図3】生体から摘出後、EP−II液に保存後直ちにte
mperature reversalを実施した上記細胞の拡大図に代わ
る走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図3のEP−II液に代え処方例1の保存液を用
いて図3のものと同様に処理した場合の上記細胞の拡大
図に代わる走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】生体から摘出後、EP−II液に保存後、さらに
室温で1時間放置した後にtemperature reversalを実施
した上記細胞の拡大図に代わる走査型電子顕微鏡写真で
ある。
【図6】図5のEP−II液に代え処方例1の保存液を用
いて図5のものと同様に処理した場合の上記細胞の拡大
図に代わる走査型電子顕微鏡写真である。(なお、図2
〜6の顕微鏡写真は、いずれも倍率4000倍であ
る。)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒアルロン酸またはその生理学的に許容
    される塩を含んでなる角膜移植用眼球保存液。
  2. 【請求項2】 ヒアルロン酸の分子量が5万〜250万
    であり、その濃度が前記保存液当り0.05〜0.5重
    量/容量%である請求項1記載の角膜移植用眼球保存
    液。
  3. 【請求項3】 浸透圧が260〜350mOsmに調整
    された請求項1または2記載の角膜移植用眼球保存液。
  4. 【請求項4】 摘出全眼球または強角膜片の保存に使用
    できる請求項1〜3のいずれかに記載の角膜移植用眼球
    保存液。
JP4104009A 1992-03-31 1992-03-31 角膜移植用眼球保存液 Withdrawn JPH06107538A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4104009A JPH06107538A (ja) 1992-03-31 1992-03-31 角膜移植用眼球保存液

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4104009A JPH06107538A (ja) 1992-03-31 1992-03-31 角膜移植用眼球保存液

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH06107538A true JPH06107538A (ja) 1994-04-19

Family

ID=14369269

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4104009A Withdrawn JPH06107538A (ja) 1992-03-31 1992-03-31 角膜移植用眼球保存液

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH06107538A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0781547A1 (en) * 1995-12-22 1997-07-02 Chemedica S.A. Sodium hyaluronate based ophthalmic formulation for use in eye surgery
WO1997037537A1 (en) * 1996-04-04 1997-10-16 Fidia S.P.A. Corneal storage fluid comprised of hyaluronic acid
FR2856891A1 (fr) * 2003-07-04 2005-01-07 Stem Alpha Milieu de conservation d'organes, de tissus biologiques ou de cellules vivantes
JP4861596B2 (ja) * 2000-07-07 2012-01-25 生化学工業株式会社 ヒアルロン酸オリゴ糖画分およびそれを含む医薬
WO2016076317A1 (ja) * 2014-11-11 2016-05-19 田畑 泰彦 生体成分用保存剤及び生体成分の回収方法
CN111685101A (zh) * 2019-03-11 2020-09-22 广东博与再生医学有限公司 一种用于脱细胞板层角膜的保存运输液
WO2023282338A1 (ja) * 2021-07-07 2023-01-12 株式会社セルージョン 細胞播種剤及び細胞移植用基材

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0781547A1 (en) * 1995-12-22 1997-07-02 Chemedica S.A. Sodium hyaluronate based ophthalmic formulation for use in eye surgery
US5880107A (en) * 1995-12-22 1999-03-09 Chemedica S.A. Sodium hyaluronate based ophthalmic formulation for use in eye surgery
WO1997037537A1 (en) * 1996-04-04 1997-10-16 Fidia S.P.A. Corneal storage fluid comprised of hyaluronic acid
AU732648B2 (en) * 1996-04-04 2001-04-26 Bausch & Lomb Incorporated Corneal storage fluid comprised of hyaluronic acid
US6838448B2 (en) * 1996-04-04 2005-01-04 Diego Ponzin Corneal storage fluid comprised of hyaluronic acid
JP4861596B2 (ja) * 2000-07-07 2012-01-25 生化学工業株式会社 ヒアルロン酸オリゴ糖画分およびそれを含む医薬
WO2005013690A1 (fr) * 2003-07-04 2005-02-17 Stem Alpha Milieu de conservation d'organes, de tissus biologiques ou de cellules vivantes
JP2007514640A (ja) * 2003-07-04 2007-06-07 ステム アルファ 臓器、生物組織または生細胞を保存するための媒質
FR2856891A1 (fr) * 2003-07-04 2005-01-07 Stem Alpha Milieu de conservation d'organes, de tissus biologiques ou de cellules vivantes
WO2016076317A1 (ja) * 2014-11-11 2016-05-19 田畑 泰彦 生体成分用保存剤及び生体成分の回収方法
US10765110B2 (en) 2014-11-11 2020-09-08 Yasuhiko Tabata Agent for preserving biological component
CN111685101A (zh) * 2019-03-11 2020-09-22 广东博与再生医学有限公司 一种用于脱细胞板层角膜的保存运输液
WO2023282338A1 (ja) * 2021-07-07 2023-01-12 株式会社セルージョン 細胞播種剤及び細胞移植用基材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kaufman et al. K-Sol corneal preservation
JP2820744B2 (ja) 眼科用製剤中の安定化された二酸化塩素の用途
US4238482A (en) Intraocular infusion irrigation solution and method
ES2406555T3 (es) Compuesto de ácido hialurónico, hidrogel del mismo y material para tratar articulaciones
US7959939B2 (en) Laminate of cultured human corneal endothelial cells layer and method for manufacturing same
US6271216B1 (en) Stable solution of hyaluronate in a balanced salt medium
JPH09216826A (ja) 眼外科用のヒアルロン酸ナトリウム主薬の眼製剤
JPH0322369B2 (ja)
CZ287223B6 (en) Ophthalmic preparation intended for use as artificial tear
CN111407774B (zh) 一种眼科用组合物及其制备方法
US4271144A (en) Dextran composition for controlling corneal hydration
US6495598B1 (en) Perfusate preparation for ophthalmic operation
EP0414373B2 (en) Stable solution of hyaluronate in a balanced salt medium
JP3751017B2 (ja) 二頂分子量ヒアルロネート製剤およびその使用方法
JPH06107538A (ja) 角膜移植用眼球保存液
US5221537A (en) Tissue irrigating solutions
Bourne et al. Organ-cultured corneal endothelium in vivo
US5328701A (en) Tissue irrigation solution
EP1128809A1 (en) Aqueous ophthalmic formulations comprising chitosan
JP4033510B2 (ja) トレハロースを含有する眼科用医薬組成物
JP2002193815A (ja) 眼手術用角膜乾燥防止点眼剤
EP1125575B1 (en) Perfusate preparation for ophthalmic operation
WO1997024129A1 (en) Pharmaceutical composition containing trehalose
EP1247526B1 (en) Perfusion liquid preparations for ophthalmic operations
JPH05310580A (ja) 眼内灌流用液剤

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 19990608