JPH0598356A - 焼き戻し省略型Ti−B系高炭素薄鋼板の製造方法 - Google Patents

焼き戻し省略型Ti−B系高炭素薄鋼板の製造方法

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JPH0598356A
JPH0598356A JP25808491A JP25808491A JPH0598356A JP H0598356 A JPH0598356 A JP H0598356A JP 25808491 A JP25808491 A JP 25808491A JP 25808491 A JP25808491 A JP 25808491A JP H0598356 A JPH0598356 A JP H0598356A
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JP
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steel sheet
steel
quenching
toughness
formability
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JP25808491A
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Kiyoshi Fukui
清 福井
Eigo Yagi
英剛 八木
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】チェーン、シートベルト金具製造用に適する焼
入、焼戻の省略可能な安価な材料の製造方法を提供す
る。 【構成】C: 0.15〜0.40%としてセメンタイトの析出を
抑え、B添加によって焼入性を確保し、さらにオーステ
ナイト粒の異常成長を抑制すべくAlN 、TiN の析出を利
用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高炭素薄鋼板の製造方
法、特に自動車部品 (例: クラッチ用皿バネ) 、事務機
器用チェーン、自動車用強度部材 (シートベルト金具)
に好適な、冷間加工性、焼入れ性、熱処理後靱性に優れ
た高炭素薄鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、チェーン部品、自動車部品等と
して用いられる高炭素薄鋼板にはJISG3311 に規定され
る S30〜70CMあるいはSK3〜5の高炭素冷延鋼板を素材
とし、これを成形加工した後、焼入れ・焼戻し、オース
テンパ等の熱処理により硬化することにより製造され
る。このような材料では、引張強度で1400MPa 以上(HRC
硬度=42〜46) の強度確保、焼入れ性確保および焼戻し
後の靱性向上のために炭素を重量比で0.4 %以上添加す
ることが必要であった。
【0003】しかし、このような高炭素鋼では強度の上
昇にともない、切欠感受性の増大による靱性劣化が生
じ、これを防ぐため注意深い焼戻し処理が必要であり、
そのうえ、焼戻し脆性域では著しい靱性劣化が見られる
ことなどから、これら脆化温度域での焼戻しを回避しな
ければならず、ために強度設定にはC量、合金成分量の
調整を十分注意して行う必要があった。また、このと
き、0.4 %超とC量が高い場合には、焼入れ、オーステ
ンパ等の熱処理を受けた際に焼入れ歪による寸法の変化
が生じ、これによる精度劣化を防止するためにプレステ
ンパー等煩雑な焼戻し処理が必要となっていた。
【0004】さらに、かかる高炭素鋼は焼入れ等の熱処
理前の成形性が低く、深絞り、小径曲げ等の複雑な成形
が困難である。この成形性の向上には成形前の冷間圧延
および焼鈍条件を調整して対応しているが、これにも限
界があり、またコスト高は免れない。一方、0.4 %以下
の炭素量の鋼では比較的これらの成形性は良好である
が、焼入れ性が悪く、板厚の大きな成品あるいは複雑な
形状に成形された成品では焼入れ後のマルテンサイト組
織、あるいはオーステンパ後のベイナイト組織が均一に
確保できない等の弊害があった。
【0005】そこで、これら熱処理前の成形性に優れか
つ、熱処理後に安定した焼入れ組織が得られ、また焼入
れ、オーステンパ等の熱処理後の靱性にも優れた高強度
鋼板が要求されていた。この問題を打開するため中炭素
域の鋼種にB (ボロン) を添加し、成形性と焼入れ性を
両立し得る鋼種として、FORMARLY STANDARD SEA ALLOY
STEELS中のSAE10B20〜SAE10B40等の鋼種が提案されてお
り、またその薄鋼板の製造方法 (特願平2−90764 号)
が発明されたが、焼入れ前の成形加工において打ち抜
き、小径曲げ等の強加工を受けた部分では焼入れ処理の
際にオーステナイト域での均熱中にオーステナイト粒が
異常成長し、熱処理後の靱性を著しく劣化する場合があ
った。
【0006】さらに浸炭用合金鋼であるSCM420の成形性
を向上させる目的の鋼種として「日新製鋼技報」45号p.
30に記載されたN22CB 等のB添加型鋼種があるが、この
鋼種は浸炭用にCrが添加されているため880 ℃程度の比
較的高い温度で1h 以上の長時間の均熱プロセスが必要
となっていた。またこれらB添加型鋼種では、同じく
「日新製鋼技報」52号p.1 に記載されているように焼
鈍、熱処理等の加熱過程でBNや、M23(CB)6を形成するた
め焼入れ性や熱処理後の靱性阻害が問題となっていた。
また、これらの報文に記載されたN22CB 鋼種はCr添加量
が高く、オーステナイト化温度域に加熱した際に、セメ
ンタイトの分解に時間を要するため、安定した焼入れ性
の確保には比較的長時間のオーステナイト域での均熱が
必要であった。
【0007】
【発明が解決すべき課題】このように、C: 0.4 %超と
した高炭素鋼では、熱処理前の成形性が悪く、焼き入れ
後の焼き戻し処理は不可避であり、コスト上昇は避けら
れなかった。しかし、C:0.4%以下として成形性と焼き
入れ性との両立を図っても、今度は機械的特性の劣化を
避けられず、これら諸特性をいずれも満足する材料を開
発することは困難と考えられていた。特に、靱性さらに
は焼き入れ性改善には高温での長時間均熱が必要とされ
ており、コスト上昇は避けられなかった。かくして、本
発明の目的は、冷間加工、焼き入れ性、そして熱処理後
靱性のいずれにも優れた高炭素薄鋼板の安価な製造方法
を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる課題
を解決すべく種々検討を重ね、研究開発を続けたとこ
ろ、次のような知見を得た。 1) 熱処理前の成形性確保のため、成形性阻害要因であ
るセメンタイトの体積分率抑制を目的としてC量の上限
を重量比で0.4 %とすることにより、熱延鋼板での伸び
値は、S55Cクラスで20%以下であったのに対し、本発明
鋼では22%以上を有し、従来用いられている熱延高炭素
鋼板よりも、曲げ、絞り等の成形性が良好であり、一
方、冷延鋼板の場合、好ましくは、例えば30〜80%の範
囲で冷間圧延し、箱焼鈍した後の伸び値はS55CM クラス
で30%以下であったのに対し本発明鋼種では35〜40%ま
で向上する。このとき、TS×ELバランスは16000MPa・%
以上となり、S55CM クラスよりも軟質であって、十分な
成形性は確保される。
【0009】2) このとき、S55CM クラス並の焼入れ性
を確保するために0.0003%以上のBを添加し、またこの
Bによる焼入れ性を確保するために、好ましくは0.1 %
を上限として0.005 %以上のTiを添加する。このとき、
Bが過剰に添加されると、熱間圧延あるいは成形加工後
の焼入れ等最終熱処理においてBNが形成され、最終成品
の靱性が阻害されたり、さらに箱焼鈍工程においてM
23(CB)6を形成し、靱性を著しく劣化させるため添加量
の上限を0.0030%とする。
【0010】3) さらに、成形加工後焼入れ等の熱処理
を施す場合、打ち抜き、小径曲げ等の強加工を受けた部
分ではオーステナイト化温度域で均熱した際にオーステ
ナイト粒が異常成長し、熱処理後の靱性が劣化する。こ
の対策としてAlN 、TiN の析出物を熱間圧延時、あるい
は成形後の熱処理時に析出させるとオーステナイト粒の
異常成長が効果的に抑制され、この析出条件としては、
BとAl、Tiとの間で、B添加量が0.0032%−0.014 ×so
l.Al%−0.29×Ti%を上限として0.0003%以上であるこ
とを満足する必要がある。
【0011】4) 焼入れ方法は水焼入れ、油焼入れでも
問題なく、また鋼中炭素量を低く抑えた結果、焼入れま
まで高靱性の確保が可能であるため焼き戻し処理を省略
できる。
【0012】本発明は、上記の知見に基づき発明された
ものであり、その要旨とするところは、重量割合にて、 C:0.15 〜0.40%、Si≦0.35%、Mn:0.6〜1.50%、P≦
0.030 %、 S: ≦0.020 %、 Ti:0.005〜0.1 %、sol.Al:0.01 〜
0.20%、 N:0.0020 〜0.012 %、0.0003〜0.0030%のB、 ただし、B≦0.0032−0.014 ×sol.Al−0.029 ×Ti、 残部が実質的にFeから成る鋼組成を有する板厚6mm以下
の熱延鋼板を、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて
均熱してから、水中あるいは油中に焼き入れすることを
特徴とする、成形性と靱性に優れた焼き戻し省略型Ti−
B系高炭素薄鋼板の製造方法である。
【0013】本発明は、その別の面からは、上記鋼組成
を有する板厚4mm以下の冷延鋼板を、塑性加工後、Ac3
〜950 ℃の温度域にて均熱してから、水中あるいは油中
に焼き入れすることを特徴とする、成形性と靱性に優れ
た焼き戻し省略型Ti−B系高炭素薄鋼板の製造方法であ
る。
【0014】さらに別の面からは、本発明は、上述の鋼
組成を有する鋼を、圧下率30〜80%の冷間圧延と箱焼鈍
により、板厚4mm以下でTS×El≧16000MPa%の鋼板と
し、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて均熱してか
ら、水中あるいは油中に焼き入れすることを特徴とす
る、成形性と靱性に優れた焼き戻し省略型Ti−B系高炭
素薄鋼板の製造方法である。
【0015】
【作用】ここで、本発明において上記のように成分範囲
および製造処理条件の数値限定を行った理由について下
記に示す。まず、本発明において鋼組成を上記のように
成分限定を行った理由は次の通りである。
【0016】(a) C:鋼板に所望の強度と焼入れ性を付
加するためにC添加量は0.15%以上とする。また、熱処
理時にオーステナイト化温度域に均熱した際に、比較的
低い温度で均一なオーステナイトを確保し、さらに焼入
れ後に1400MPa 以上の強度を確保するためには、C量は
0.20%以上が望ましい。しかし、0.40%を超えてCを添
加すると焼入れ後の強度が2000MPa を超え、靱性が著し
く劣化する。また、この靱性低下を抑制するためには比
較例高温で、かついわゆる焼戻し脆性域と呼ばれる温度
域を除いた温度での焼戻し処理が必要となる。これに対
して0.40%以下、特に0.30%以下のC量では焼入れまま
でも引張強度は1800MPa 以下であり、0.40%超の鋼種
の、焼入れ・焼戻し後の耐衝撃性が焼入れままでも確保
することができる。以上の結果、本発明鋼板のC添加量
の範囲を0.15〜0.40%、好ましくは0.20〜0.30%と限定
する。
【0017】(b) Si:脱酸材等として必然的に若干量の
添加が必要となるが、0.35%を超えて含有させると熱間
圧延後、熱間圧延・焼鈍後、あるいは冷間圧延、冷間圧
延・焼鈍後の鋼板強度が増大し、本発明の意図するとこ
ろの成形性の確保が困難となる。そこで、本発明ではSi
添加量の上限を0.35%と限定する。
【0018】(c) Mn:本発明では、一般にシートベルト
金具やチェーンに用いられている高C鋼板よりもC含有
量が低めとなっている。このため、絞り成形、曲げ成形
により焼入れの入りにくい部分が生じた場合、部分的に
パーライトやトルースタイトが形成され、著しく強度お
よび靱性が劣化する場合がある。そこで、このような部
分の発生を抑えるために焼入れ性を増大させる目的から
Mnを0.60%以上添加する。また、1.50%を超えてMnを添
加した場合、焼入れ状態での強度が1800MPa を超え、靱
性も劣化することからMn添加量は1.50%以下とする。
【0019】(d) P:熱処理後の鋼板の靱性を向上させ
る目的でP含有量は低いほど好ましい。このため、P含
有量は0.030 %以下と定めたが、望ましくは0.020 %以
下に制限するのがよい。
【0020】(e) S:0.020%以下:熱処理後の鋼板の耐
衝撃性の向上を目的として、S含有量は極力低く抑える
必要がある。また、MnS の過剰な形成は最終成品の耐疲
労特性を劣化することから、S含有量は0.020 %以下と
定めたが、望ましくは0.010 %以下に制限するのがよ
い。
【0021】(f) Ti:本発明では、sol.Alの項でも述べ
るようにBによる焼入れ性向上を促進するためオーステ
ナイト中の固溶Nとの結合によるBNの生成を抑制する必
要がある。このため、上記のAlN でのN固着が不十分な
場合、TiによるTiN 生成により固溶Nを固着し、BN生成
を抑制する。このとき、TiN 生成に要する添加量の下限
は0.005 %以上で、0.1 %超では成形時に固溶Tiにより
強度が上昇し成形性が阻害される。また、成形加工後熱
処理を実施した成品では生成したTiN を起点とする破壊
が生じ易く靱性確保のためにも上限を0.1 %とする必要
がある。
【0022】(g) sol.Al:Alは鋼の脱酸材として必要に
応じて添加される成分であるが、この他AlN を生成し熱
処理時のオーステナイト粒の異常成長を抑制し、さらに
このN固着効果によりBNの生成を抑制してBによる焼入
れ性向上を促進する働きがある。これらの効果に対して
有効なsol.Al量は0.01%以上であるが、0.20%を超えて
はコストアップになり、鋼板の硬化をもたらすことから
上限を0.20%とした。
【0023】(h) N:Nの添加は鋼の硬度や引張強度の
向上に効果があり、AlN あるいはTiN を形成することに
よりオーステナイト粒の微細化をはかり、耐衝撃性向上
や、巻取り等における曲げ割れの防止に効果がある。こ
の効果を得るためNの添加量は、0.0020%以上である。
しかし、過度の添加は成形加工時の材料強度の増大につ
ながり、成形性を劣化させる。また、AlN 、TiN による
固着能力を超えて固溶Nが残留しBの焼入れ性向上効果
を阻害するため、上限を0.0120%とする。さらに、オー
ステナイト粒を微細化しかつ、BNの生成を抑制し得る適
正範囲としては0.0030〜0.0080%の範囲にNを限定する
ことが望ましい。
【0024】(i) B:成形性向上のため本発明ではC量
を0.40%以下と限定しているが、この場合深絞り成形、
小径曲げ加工等による複雑な加工部分では、未焼入れ部
が生じる場合があり、ここでは部分的にパーライトやト
ルースタイトが形成され著しく強度および靱性が劣化す
る。そこで、このような部分の発生を抑えるために焼入
れ性を増大させる目的からBを添加する。このとき焼入
れ性の向上に有効な添加量の下限は0.0003%以上であ
る。また、0.0030%を超えてのBの添加は焼入れ性上昇
効果が飽和する他、過剰なBの添加がM23(CB)6を形成
し、熱処理後の靱性を劣化し、さらにBNの析出の増大も
靱性を劣化する。以上の知見によりB添加量の上限を0.
0030%とする。またこのとき、添加BとNとの結合によ
るBN形成を防止するため、sol.Al、Tiとの添加バランス
を考慮する必要がある。BNは比較的低い温度で生成する
ことからこれよりも高い温度で生成するAlN 、TiN によ
り固溶Nを固着し、BNの生成を抑制する。このときの、
添加量の上限は、Al、Ti複合添加の場合には、B量の上
限は0.0032%−0.014 ×sol.Al%−0.029 ×Ti%とする
のがよい。
【0025】次に、本発明においてそれぞれ製造処理条
件を前述のように限定した理由を以下に述べる。 (j) 成品板厚範囲 本発明範囲の成分系の場合、C量が0.40%以下であるの
で焼入れ性を確保するためには、FORMARLY STANDARD SE
A ALLOY STEELS中のSAE10B20〜SAE10B40等のデータから
熱延鋼板の板厚上限を6.0 mm以下とする。さらに、冷延
鋼板としては板厚精度を±0.05mm以内とするため30%以
上の圧下率で冷間圧延することが必要であり、さらに冷
延鋼板として小径曲げ等の優れた成形性を付与するには
板厚が過度に大きい場合、曲げ割れ等の不都合が生じ
る。このため冷延鋼板としては最大板厚を4.0 mmと限定
する。
【0026】(k) 冷延圧下率範囲 本発明によって製造される鋼板の特徴として、優れた焼
入れ性の他に熱処理前の優れた成形性があげられる。こ
の成形性を確保するためには、熱延鋼板であってもある
いは単に冷延鋼板であってもよいが、より一層の成形性
を得るには冷間圧延集合組織の発達を目的として、30%
以上の圧下率を与えることが望ましい。このような冷間
圧延を行うことで、熱処理前のTS×ELバランスは16000M
Pa・%以上となり、平均r値も0.95以上となる。しか
し、過度の圧下率増大は冷間圧延中の耳割れ発生をとも
ない破断の原因となることから圧下率の上限を80%とす
る。
【0027】(l) 焼鈍条件:焼鈍は、鋼中パーライトの
セメンタイトを球状化するため箱焼鈍により行う。この
とき、焼鈍温度は特に規定はしないが、650 〜740 ℃に
て1h 以上均熱するのが望ましい。また、箱焼鈍の効率
を考慮して加熱冷却速度の下限は20℃/hとし、上限はセ
メンタイトの球状化が阻害されないよう100 ℃/hとする
のが望ましい。以上の条件で行う箱焼鈍により、これら
鋼板の強度×伸びバランスは16000MPa・%以上が確保で
きる。
【0028】(m) 塑性加工:ここに規定する塑性加工と
は、打抜き、プレス成形の他、打抜き性の向上を目的と
した圧延ロールによる塑性歪等の付与加工をも包含する (n) 焼入れ条件:オーステナイト化温度条件は、焼入れ
組織中にフェライト組織の残留がないようにAc3 温度以
上で均熱する必要がある。しかし、この温度域で長時間
均熱を行った場合、オーステナイト粒が異常成長し、靱
性を著しく阻害する場合がある。さらに、熱処理コスト
低減の意味からも均熱時間を比較的短い時間とすること
が望ましい。しかし、セメンタイトが分解して均一なオ
ーステナイトを形成するには、1分以上均熱することが
望ましく、この適正温度としてはAc3 +50℃以上の温度
がよい。しかし、熱効率、熱処理炉寿命の観点から上限
を950 ℃とする必要があり、さらに成品の焼入れ歪防止
の目的からは900 ℃以下とするのが望ましい。
【0029】焼入れ時の冷媒は、焼入れ後の洗浄工程の
簡略化を目的として水あるいは油が用いられる。また冷
媒温度は合金成分に対応して、注意深く調整されるが、
均一なマルテンサイト組織を確保するためオーステナイ
ト域からの冷却速度を50〜1000℃/secとする必要があ
る。また焼入れ時の歪発生を防止する目的で過度の急冷
も望ましくない。このため水温は0〜100 ℃、油温は0
〜180 ℃の範囲で適宜調整するものとする。
【0030】
【実施例】
(実施例1)本発明の対象となる鋼板には、焼入れ前の良
好な成形性と焼入れ後の高い強度特性が要求される。こ
のため、本例では、C量の適正値を求めるために表1の
7鋼種( A〜G)を用い、所定の製造処理条件で熱処理
材を得、焼鈍後と焼入後の機械的特性を調査した。製造
処理条件等は表1の注にまとめて示す。なお、各供試鋼
のAc3 点は、830 〜860 ℃であった。
【0031】結果は同じく表1にまとめて示す。これら
の結果からも明らかなように、本発明によって製造され
た鋼板は焼鈍後の成形性と、焼入れ後の強度・靱性との
バランスが優れている。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】(実施例2)本例では、Ti、Bの添加有無で
鋼種H、I、J、Kの4種からなる板厚2.5 mmの冷延鋼
板を用いて焼鈍処理前の成形性と、焼入れ後の靱性とを
調査した。すなわち、板厚4.0 mmの各熱延鋼板を、2.5
mmへ冷間圧延し、710 ℃×18h の球状化焼鈍を行った。
このときの化学成分と機械特性値を表3に示す。
【0035】次いで、これらの鋼板を880 ℃×25min の
条件で均熱後、20℃の水中へ焼入れしそのとき機械的特
性と硬度と耐衝撃性について調査した。機械的特性の結
果を同じく表3にまとめて示す。耐衝撃性については図
1にグラフで示す。なお、硬度は、鋼種I、Jはいずれ
もHRC:44と46、鋼種HのみHRC:42.3であった。
【0036】これらの結果からも明らかなように、B添
加により強度は上昇し、さらにTiの添加により遷移温度
が低下している。なお、比較のため同一条件で冷間圧延
・焼鈍した0.52%Cの鋼種Kを焼入れ、焼戻しし、硬度
をHRC =46.2とした。この鋼種Kの遷移温度は本発明鋼
板よりも高く、本発明鋼は成形性、耐衝撃性双方に優
れ、かつ焼入れ後の焼戻しが省略できる優位性があるこ
とを示している。
【0037】(実施例3)本例では、sol.Al量、Ti量の適
正範囲を検討するため、板厚4.0 mmの熱延鋼板を、2.5
mmへ冷間圧延し、710 ℃×18h の球状化焼鈍を行った。
次いで、これら鋼板を880 ℃×25min の条件で均熱後、
20℃の水中へ焼入れし、そのときの硬度と耐衝撃性を調
査し、その化学成分と機械特性値を表4および図2に示
す。また、sol.Al、Tiが本発明範囲を下回る鋼種Lでは
焼入れ後の硬度が低く靱性も劣化している。さらに、過
剰のTiが添加された鋼種Oでは焼入れ後の硬度は高い
が、靱性が劣化している。
【0038】(実施例4)本例では、Si、Mn、P 、S 、N
などの合金成分の影響を見るために、それぞれの添加量
を変化させたときの影響を評価した。供試材は実施例1
に準じて容易され、次いで焼入れを行った。焼入れ条件
は表5の注にまとめて示す。
【0039】鋼ALは、P、S添加量が本発明の規定範囲
外であり、靱性が著しく劣化し遷移温度も80℃を示す。
また、鋼ANはN量が低く、オーステナイト粒径が粗大化
しやすいことから遷移温度が高目となる。さらに鋼AO
は、Nが過剰に添加されているためやはり遷移温度が高
く低靱性が問題となる。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【発明の効果】本発明による、Ti−B系高炭素薄鋼板
は、焼鈍後の成形性が良好で、かつ熱処理後の靱性にも
優れ、さらに従来靱性向上のために必要とされていた焼
入れ後の焼戻しを省略し得るのであって生産性にも優れ
たものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に実施例の結果をまとめて示すグラフで
ある。
【図2】本発明に実施例の結果をまとめて示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/14

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量割合にて、 C:0.15 〜0.40%、Si≦0.35%、Mn:0.6〜1.50%、P≦
    0.030 %、 S: ≦0.020 %、Ti:0.005〜0.1 %、sol.Al:0.01 〜0.
    20%、 N:0.0020 〜0.012 %、B:0.0003 〜0.0030%、 ただし、B≦0.0032−0.014 ×sol.Al−0.029 ×Ti、 残部が実質的にFeから成る鋼組成を有する板厚6mm以下
    の熱延鋼板を、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて
    均熱してから、水中あるいは油中に焼き入れすることを
    特徴とする、成形性と靱性に優れた焼き戻し省略型Ti−
    B系高炭素薄鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の鋼組成を有する、板厚4
    mm以下の冷延鋼板を、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃の温度
    域にて均熱してから、水中あるいは油中に焼き入れする
    ことを特徴とする、成形性と靱性に優れた焼き戻し省略
    型Ti−B系高炭素薄鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の鋼組成を有する鋼を、圧
    下率30〜80%の冷間圧延と箱焼鈍により、板厚4mm以下
    でTS×El≧16000MPa%の鋼板とし、塑性加工後、Ac3
    950 ℃の温度域にて均熱してから、水中あるいは油中に
    焼き入れすることを特徴とする、成形性と靱性に優れた
    焼き戻し省略型Ti−B系高炭素薄鋼板の製造方法。
JP25808491A 1991-10-04 1991-10-04 焼き戻し省略型Ti−B系高炭素薄鋼板の製造方法 Withdrawn JPH0598356A (ja)

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