JPH058235Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は、昇降式スラスタの構造に関するも
ので、とくに昇降式スラスタの封水筒のために設
けられるシール部の周辺の構造に関するものであ
る。

（従来技術） 第３図は従来の昇降式スラスタの構造を示し、
モータ１の動力を入力軸２、ベベルギヤ３、およ
びプロペラ軸４を介してプロペラ５に伝え、スラ
ストを発生させる構造をそなえる。船外と船内と
はシール６によつて分離されている。スラスタを
使用しないときは、一対の油圧シリンダ７，７に
よつて上方に引き上げられ、船体外部に設けた部
屋８内に収容格納される。

一般に、シール６は損傷するケースが非常に多
いが、その理由の一つとして、部屋８の中は殆ど
水流がなく、そのため、ふじつぼ、かきなどの介
殻類が封水筒９の表面に付着し易く、これらの介
殻が付着した状態のまゝで封水筒９が昇降し、そ
のつどシール６の内面を擦過することになるとい
うことが挙げられる。シール６が擦過損傷する
と、船外からの水の侵入を防ぐための手段がほか
に装備されていないので、そのつど船をドツクに
入れて修理する必要があり、出費が嵩むという問
題点があつた。

（考案の目的） この考案は、上記の問題点を解決するためにな
されたもので、封水筒のために設けられるシール
の摺動面の損傷を著しく軽減し、シールからの水
の侵入を防止することによつて、シールの修理の
ための入渠の頻度を減少し、また、予備シールを
作用せしめることによつて損傷シールの取替作業
を航行中に船内側から実施可能として入渠度数を
減少し、もつて維持費の軽減を達成しうる昇降式
スラスタの構造を提供することを目的としてなさ
れたものである。

この考案の他の目的は、シール損傷の始期を予
知して損傷防止のための対応手段の発動を自動的
に関連作動せしめることのできる昇降式スラスタ
の構造を提供することにある。

（考案の構成） この考案は、上記の目的達成のための手段とし
て、昇降装置によつてプロペラ部を上方に移動し
て格納できる昇降式スラスタにおいて、昇降する
封水筒の外周面に対向して設置されて常時船外の
水をシールする常備のシールと、そのシールより
もさらに船外の水に近い位置において封水筒の外
周面に対向して外周面との間に僅かの隙間を持つ
て設置さて、必要に応じて船外の水をシールする
予備シールとを設け、予備シールは外部から圧力
流体を導通することによつて上記僅かに隙間が消
滅し、対向する封水筒の外周面に密着する方向に
押し付けられて弾性変形しうる中空の弾性材によ
つて構成されている。

あるいは上記常備のシールの船内側に該シール
のシール機能の劣化に応じて船内側に発生する水
圧の変化を検知するための圧力センサーを設け、
上記予備シールに圧力流体を導通するための流体
圧ラインの途中に開閉弁を設け、該圧力センサー
と該開閉弁とを電気的に連結して圧力センサーの
検出値に応じて開閉を制御することにより、予備
シールのシール機能の増減を自動的に行う構成と
してもよい。

（作用） 請求範囲第(1)項の構成により、常時船外の水を
シールする常備のシールに加えてこのシールより
もさらに船外の水に近い位置に別に設けられる中
空弾性材の予備シールに対して、外部から圧力流
体を導通すると、予備シールが弾性変形を起こし
て対向する封水筒周面に押し付けられて密着し、
シール機能を発揮する。すなわちこの予備シール
のシール機能は、必要に応じ随時に発生させまた
は停止させることができるものである。しかも予
備シールの設置位置が上記常備のシールよりもさ
らに船外の水に近い位置にあつて、いわば外側に
位置するシールであることから、予備シールを利
用して上記の常備シールの取り替え作業、あるい
は両シールの併用による総合シール機能の増強な
どが可能となる。

また、常備のシールが摩耗等によつてシール機
能の劣化が生じると、該シールの船内側に水圧の
変化が発生するが、請求項第(2)項の構成により、
設置される圧力センサーがこの水圧の変化を検知
する。一方、同項の構成により、予備シールに圧
力流体を導通するための流体圧ラインの途中に開
閉弁を設け、圧力センサーと開閉弁とを電気的に
連結してあるので、開閉弁の開度が上記水圧の変
化値によつて制御され、その結果常備シールの機
能劣化を補う予備シールのシール機能に関する貢
献度に対し、常備シールの劣化の進度に応じて常
に自動的に適正値を維持せしめることができる。

（実施例） つぎにこの考案の実施例について、図面に基づ
いて詳細に説明する。第１図および第２図におい
て、第１図に用いた符号と同一の符号は、同図に
おけると同等の部材を表示するものとする。１０
は封水筒で、プロペラ部と一体の連結された旋回
筒１１とは別体の構成される。１２は旋回筒１１
のためのシールで、封水筒１０と旋回筒１１の間
に介在させられ、また、１３は封水筒１０のため
のシールで、船体Ａと封水筒１０との間に介在さ
せられる。

１４は予備シールで、予備シール１４はシール
１３よりもさらに船外の水に近い側に設けられ
る。予備シール１４は中空の弾性材によつてリン
グ状に構成され、出入口１４ａから中空部１４ｂ
に向かつて空気圧ライン１５の空気圧を導通する
と、予備シール１４は内側に向かつて膨張して突
起１４ｃが封水筒１０の外周面に隙間のない状態
に押し付けられて完全なシール状態を実現する。
空気圧を遮断すると、予備シール１４はその弾性
によつて旧状に復帰し、封水筒１０との接触が開
放されて両者の間に再び隙間が生じる。

１６は、空気圧ライン１５の途中に設けられた
開閉弁であり、１７はシール１３のパツキン部に
設けられた圧力センサーである。開閉弁１６と圧
力センサー１７とは電気的に連結されており、圧
力センサー１７の検出値に応じて開閉弁１６の開
閉が制御されるように構成されている。１８は刃
物で、シール部の最も船外の水に近い側に封水筒
１０の外周面との間にごく僅かの隙間を残して設
けられる。刃物１８は、封水筒１０が昇降すると
き、封水筒１０の周面に付着する介殻やゴミなど
を掻き落とすためのもので、それによつてシール
１３ないしは予備シール１４の内面の損傷を予防
する。１９は昇降ガイドで、封水筒１０と一体的
に昇降して円滑な昇降動作を誘導するためのもの
である。２０は旋回モータで、旋回筒１１を封水
筒１０の内部で旋回せしめ、プロペラ５の推力の
方向を自由に変換せしめるためのものである。

つぎに、このように構成されたシール装置の使
用状態について説明する。原則として、予備シー
ル１４にシール作用を持たせるのは、封水筒１０
が昇降動作に必要としないときに限るものとし、
封水筒１０が昇降動作を行うときのシール機能
は、従来からのシール１３によつて分担せしめる
ものとして、このときは予備シール１４は封水筒
の周面との間に隙間のある状態に放置するものと
する。

このような使用状態において、シール１３が次
第に損傷してシール機能が劣化してくると、シー
ル１３のパツキン部に水圧が発生するに至る。こ
のとき、圧力センサー１７が該水圧を検出し、開
閉弁１６に対して空気圧の導通を指令し、該空気
圧が予備シール１４に導通されて予備シール１４
によるシール状態が全く自動的に行われる。この
結果、シール１３の内部のパツキン取替作業が船
内側から自由に行われ得る状態となるので、シー
ルの修理作業のための船を入渠させるなどの必要
は全くない。

また、開閉弁１６の開閉操作を、圧力センサー
１７からの指令系統とは別に、これに加えて操縦
スタンドからの指令によつて制御し得るように設
定すると、船の運航状態に応じて、プロペラ部の
昇降動作のときのみ予備シール１４を開放して隙
間のある状態とし、昇降動作を伴わない運航状態
のときは、予備シール１４による完全シールの状
態とする二段シール装置としての使用がきわめて
容易に実現可能である。

（考案の効果） この考案にかかる昇降式スラスタは以上のよう
な構成によつて、つぎに示す効果を発揮する。

ア 請求範囲第(1)項の構成により、常備のシール
に加えて、必要に応じて随時にシール機能を発
揮させうる予備シールが、常備のシールよりも
さらに船外の水に近い位置に設けられているの
で、予備シールの活用によつて、常備のシール
の取り替え作業を、船を入渠させることなく、
航行中に船内側から容易に実施することができ
る。

また、常備シールと予備シールとの併用によ
り、総合シール機能の増強が可能となる。

イ 請求範囲第(2)項の構成により、常備のシール
の船内側に設けた圧力センサーと、予備シール
用流体圧ラインの途中に設けた開閉弁とを電気
的に連結したので、開閉弁の開度が上記水圧の
変化値によつて制御され、その結果常備シール
の機能劣化を補う予備シールのシール機能に関
する助勢の必要量を、常備シールの劣化の進度
に応じて常に自動的に保証せしめることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本案装置の一実施例を断面図として示
す全体配置図、第２図は第１図中の部を拡大し
て示す断面図、第３図は従来装置を断面図として
示す全体配置図である。 １……モータ、２……入力軸、３……ベベルギ
ヤ、４……プロペラ軸、５……プロペラ、６，１
２，１３……シール、７……油圧シリンダ、８…
…部屋、９，１０……封水筒、１１……旋回筒、
１４……予備シール、１４ａ……出入口、１４ｂ
……中空部、１４ｃ……突起、１５……空気圧ラ
イン、１６……開閉弁、１７……圧力センサー、
１８……刃物、１９……昇降ガイド、２０……旋
回モータ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 昇降装置によつてプロペラ部を上方に移動し
   て格納できる昇降式スラスタにおいて、昇降す
   る封水筒の外周面に対向して設置されて常時船
   外の水をシールする常備のシールと、そのシー
   ルよりもさらに船外の水に近い位置において封
   水筒の外周面に対向して外周面との間に僅かの
   〓間を持つて設置され、必要に応じて船外の水
   をシールする予備シールとを設け、予備シール
   は外部から圧力流体を導通することによつて上
   記僅かの〓間が消滅し、対向する封水筒の外周
   面に密着する方向に押し付けられて弾性変形し
   うる中空の弾性材によつて構成されることを特
   徴とする昇降式スラスタの構造。 (2) 常時のシールの船内側に該シールのシール機
   能の劣化に応じて船内側に発生する水圧の変化
   を検知するための圧力センサーを設け、上記予
   備シールに圧力流体を導通するための流体圧ラ
   インの途中に開閉弁を設け、該圧力センサーと
   該開閉弁とを電気的に連結して圧力センサーの
   検出値に応じて開閉弁の開閉を制御することに
   より、予備シールのシール機能の増減を自動的
   に行う実用新案登録請求の範囲第(1)項記載の昇
   降式スラスタの構造。