JPH057944A - 絞り加工方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 トリム加工において、発生するスクラップを
分割するのに必要なスリット加工を、それ専用の工程を
加えることなしに実現する。 【構成】 ワークを絞り加工するドロー工程と、絞り加
工後のワークを仕上げるリストライク工程と、ワークを
製品部とスクラップ部に分けるトリム工程とを有する絞
り加工方法。 【効果】

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は絞り加工方法に関し、特
にワークを絞り加工した後に、ワークから製品の部分の
みを残して不要な部分をスクラップとして除去するトリ
ミング工程を有する絞り加工方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】パネル材をワークとして、これを深絞り
加工により自動車用のパネル部品を成形する場合には、
絞り加工を行うドロー工程と、このドロー工程で最終製
品の形状よりも絞り半径を大きく成形した後のワークを
所用の深さまで仕上げるリストライク工程と、このリス
トライク工程で最終製品の形状となったワークから、製
品以外の不要な部分をスクラップとして切除するトリム
工程とを有している。ワークからワークの全周の部分を
切除する全周トリムを行う場合には、通常トリミング加
工後に生じるスクラップを分割する必要がある。これ
は、分割しない場合に比べてスクラップの取扱いが楽に
なるからである。

【０００３】トリム時に生じるスクラップをトリム加工
と同時に分割するには、トリムがなされる前に、製品と
なる部分とスクラップとなる部分との境界であるトリム
ラインの部分に、予めピアス加工またはスリット加工を
行っておく必要がある。従来の絞り加工方法を示すと、
図７〜１０の通りである。

【０００４】図７（Ａ）はパネル材つまりブランク材を
用いてドロー工程により絞り加工が終了した後のワーク
Ｗの平面図と断面図とを示す。このワークＷは、図７
（Ｂ）に示されるリストライク工程において所用の深さ
の絞り半径に仕上げられた後に、ワークＷから不要なス
クラップ部Ｓを切除して製品部Ｍを得るために、図７
（Ｄ）に示されるトリム工程に送られることになるが、
その前にトリムの準備のために、図７（Ｃ）に示される
ピアス加工がなされる。このピアス加工によりトリムラ
インＴの部分にはこれをまたぐように切欠きＨ加工がな
され、トリム加工によりスクラップ部は４つのスクラッ
プに分断される。

【０００５】絞り加工は、トリム加工工程まで含める
と、図７に示されるような４つの加工工程を有してい
る。図７（Ｃ）に示されたピアス加工をドロー工程また
はリストライク工程において同時に行うために、図８に
示されるようなプレス型を用いたり、図１０に示される
ように、リストライク工程において、ワークＷのうちス
クラップＳに相当する部分にスリットＬを形成する試み
がなされている。この方法によれば、トリム工程を含め
て３工程により絞り加工を行うことができ、製品を成形
するまでのプレス型の数を減少させることができる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】図８は上述した、リス
トライク工程においてワークＷにリストライク加工とピ
アス加工とを同時に行うプレス型を示す図である。図示
するように、下ホルダー２の上には、ポンチ３が固定さ
れ、ポンチ３の上方に設けられ上下動自在となった上ホ
ルダー４には、これに対して所定のストロークだけ上下
動自在にダイ５が取り付けられている。また下ホルダー
２には、ダイ５の下面に対してワークＷの周辺部を介し
て対向するブランクホルダー６が載置されており、この
ブランクホルダー６には、下ホルダー２内に組込まれた
クッションピン７により上方に向かう負荷が付勢されて
いる。そして、リストライク加工時にワークＷのうちス
クラ６プ部Ｓに対応する部分に、例えば４個所に孔明け
加工を行うために、ブランクホルダー６にはピアスダイ
８を組込むとともに、上ホルダー４にピアスポンチ９を
取付ける必要がある。

【０００７】しかしながら、図８に示される構造のリス
トライク加工用のプレス型を使用すると、複数のピアス
加工ポンチ９を取り付けるためのスペースをダイ５に形
成すると共に、ブランクホルダー６にはピアス加工時に
発生したスクラップＳを排出するための孔１０を形成す
る必要があり、プレス型の剛性が全体的に低下すること
になる。リストライク型には、形状凍結が必要であり、
型剛性の低下を伴うピアス加工用の機構を組込むことは
好ましくない。

【０００８】図９（Ａ）は、図８に示されたピアス加工
の機構を絞り加工用のプレス型に組込んで、ワークＷに
孔明け加工を行った状態を示す図である。このようにし
て切欠Ｈが加工された後のワークＷに、リストライク加
工用のプレス型を用いてリストライク加工を行うと、図
９（Ａ）において符号ａで示された絞り加工時における
部分は、リストライク加工時に変動することになり、図
９（Ａ）、（Ｂ）に示されるように、製品の内壁面から
切欠きＨの端面までの距離ｂが変動することになる。こ
の結果、トリムラインＴと切欠き面とで囲まれる部分、
つまりトリム加工した後に製品に残存する切欠き部Ｈ´
の面積は、製品毎に変化してしまい、製品の歩留低下に
つながる。

【０００９】更に、図１０に示されるように、リストラ
イク加工において、スクラップＳを分断させるためのス
リットＬ加工をリストライク加工と同時に行うようにし
た場合であれば、このスリットＬを加工するための機構
をリストライク加工用金型に組込んでも、型の剛性を低
下させるといった問題は起きないが、このスリットＬを
製品部Ｍにまで達するように成形する必要があることか
ら、トリミング工程においてスクラップＳを除去した後
には、図１０（Ｂ）に示されるように、製品Ｍには有害
なノッチＮが残ることになり、製品としての耐久性が低
下する。

【００１０】本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みて
なされたものであり、工程数を減少させることと、製品
の形状品質や残存切欠き面積量の安定させることを実現
しつつ、有害なノッチを製品に残すことなく、トリミン
グ加工と同時にワークを製品部Ｍとスクラップ部Ｓとに
分割することを目的とする。

【００１１】

【問題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明は、ワークを絞り加工する絞り工程と、絞り
加工後のワークを仕上げるリストライク工程と、ワーク
を製品部とスクラップ部に区画するトリムラインに沿っ
てワーク周辺部のスクラップ部を切除するトリム工程と
を有する絞り加工方法において、前記リストライク工程
において形成された前記円孤状スリットに交差するトリ
ムラインの部分で製品部からスクラップ部を切除する工
程とを有する絞り加工方法である。

【００１２】

【作用】分断スリットをリストライク工程において形成
することにより、工程数の減少と、製品に残存する切欠
き面積の安定化とを実現し、分断スリットのトリムライ
ンに交差する部分を円孤状スリットにすることで、製品
にとって有害なノッチを生じやすいスリット端をスクラ
ップ側に移動させた結果、ドロー工程とトリム工程は従
来のままにもかかわらずスクラップを分割できる。

【００１３】

【実施例】以下、図示する本発明の一実施例について説
明をする。本発明の絞り加工方法は、図１（Ａ）に示す
ようにワークＷを絞り加工する絞り工程つまりドロー工
程と、図１（Ｂ）に示されるように絞り加工後のワーク
Ｗを仕上げるリストライク工程と、図１（Ｃ）に示され
るようにワークＷを製品部Ｍとスクラップ部Ｓとに図１
（Ｂ）において二点鎖線で示されたトリムラインＴの部
分で分離し、ワーク周辺部のスクラップ部Ｓを切除する
トリム工程との３つの工程を有している。図１（Ａ）に
示されたワークの断面形状を示すと、図２（Ａ）の通り
であり、同様に図２（Ｂ）は図１（Ｂ）に対応し、図２
（Ｃ）は図１（Ｃ）に対応する。それぞれの工程は別々
のプレス型によって構成されており、それぞれのプレス
型は所定の間隔毎にライン状に配置され、ワークＷは順
次プレス型に搬送されて所定の加工がそれぞれのプレス
型によってなされる。

【００１４】上述した３工程のうち、絞り加工工程とト
リム工程のプレス型は従来のものと同様であるが、リス
トライク工程に使用されるリストライク型としては、図
３〜６に示されるものが使用されている。このプレス型
１は、図３に示すように、ポンチ３が固定された下ホル
ダー２と、ダイ５が固定された上ホルダー４とを有し、
上ホルダー４は下ホルダー２の上方で上下自在となって
いる。上ホルダー４が上下動することによって、前の絞
り加工工程において絞り加工がなされた後のワークＷ
は、ポンチ３とダイ４とにより、リストライク加工がな
される。この加工工程においては、下ホルダー２に組込
まれたクッションピン７によりワークＷの外周部分が挟
持されることになる。

【００１５】ブランクホルダー６には、図３に示される
ように、スリットダイ１１が取付けられ、このスリット
ダイ１１に対応させてダイ５にはスリットポンチ１２が
取付けられている。これらのスリットダイ１１とスリッ
トポンチ１２は、それぞれスリット加工部を構成してい
る。図３においては、スリットダイ１１とスリットポン
チ１２とが１つずつ示されているが、ワークＷの前後両
端部と左右両端部に合計４つずつ設けられている。スリ
ットダイ１１とスリットポンチ１２とに形成された切刃
を示すと、図４〜図６の通りであり、図６に示されるよ
うに、絞り加工後のワークＷのトリムラインＴをまた
ぎ、このラインＴに交差する円孤状スリット部１３、１
４とこれらを結ぶ直線部１４と、さらに一方の円孤状ス
リット部１３の一端からワークＷの周端面に連なる連通
スリット部１５とを有する分断スリット部１６が、これ
らのダイ１１とポンチ１２とに形成されている。

【００１６】図４に示されるように、スリットダイ１１
にはワークＷの外周部のうちトリムラインＴの部分およ
びその近傍の部分を変型させるための凹部２０が形成さ
れ、その凹部との共働によりワークＷを変型させる凸部
２１がポンチ１２に形成されている。そして、図５に示
されるように、ダイ１１には前記凹部２０に対して直角
の方向となった凹部２２が形成され、この凹部２２との
協動によりワークＷを変型させるための凸部２３がポン
チ１２に形成されている。したがって、これらのダイ１
１とポンチ１２とにより、図１（Ｂ）に示すように、ス
クラップ部Ｓの幅方向中央部の始点２４を起点とし、ワ
ークＷの周端面の部分２５を終点とし、前記分断スリッ
ト部１６に対応した分断スリット２６がワークＷに形成
される。

【００１７】次に、上述したスリット加工部を構成する
ダイ１１とポンチ１２とを有するプレス型を用いて、リ
ストライク加工を行う手順について説明する。図３に示
すように、ダイ５がポンチ３から離れた状態のもとで、
予めドロー加工が終了した後のワークＷを、ワークＷに
形成された製品部Ｍの凹部側をポンチ３に対応させてダ
イ６の上に載置する。このときには、ダイ６はクッショ
ンピン７により所定のストロークだけ上昇している。こ
の状態のもとで、上ホルダー４を加工させると、ダイ５
とポンチ３とによりワークＷの製品部Ｍが仕上げ加工さ
れると共に、スリットダイ１１とスリットポンチ１２と
により、ワークＷには図１（Ｂ）に示されるように、分
断スリット２６は形成される。このときには、図４に示
されるように、ワークＷのうち、変型部Ｐは、凹部２０
と凸部２１とにより変型することから、変形部Ｐの端面
はトリムラインＴから離れることになる。

【００１８】図示するプレス型によりリストライク加工
と同時にワークＷに分断スリット２６を形成した後に
は，ワークＷは図示しないトリム加工用のプレス型に搬
送されて、そこでトリムラインＴの部分で製品部Ｍとス
クラップ部Ｓとに分断される、このときには、変形部Ｐ
の先端はトリムラインＴから離れているので、トリム加
工用のプレス型に設けられた切刃と変形部Ｐとの干渉が
回避される。

【００１９】

【発明の効果】本発明によれば、工程数を減少させ、製
品に有害なノッチを残すことなく、トリム加工と同時に
スクラップを分断するためのスリットを加工することが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】は（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）はそれぞれ、ドロー
工程、リストライク工程、トリム工程終了後のワークの
形状を示した正面図である。

【図２】は（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）はそれぞれ、ドロー
工程、リストライク工程、トリム工程終了後のワークの
形状を示す側断面図である。

【図３】は本発明を用いたリストライク工程を行う装置
の一実施例を示す図である。

【図４】はスリット形成時のワークＷの状態を、図６の
Ａ−Ａ断面での状態を例に用いて示した図である。

【図５】は分断スリットＬ形成時のワークＷの状態を、
図６のＢ−Ｂ断面での状態を例に用いて示した図であ
る。

【図６】はスリットダイ１０の正面図である。

【図７】は従来技術の実施例を示しており、（Ａ）、
（Ｂ）、（Ｃ）、（Ｄ）はそれぞれ、ドロー工程、リス
トライク工程、ピアス工程、トリム工程終了後のワーク
の形状を示す上面図と側断面図である。

【図８】は従来技術であるリストライク工程においてピ
アス加工を行う装置の実施例を示している。

【図９】は従来技術であるドロー工程においてピアス工
程を行う実施例を示している。

【図１０】は従来のスリット加工実施後のワークの状態
を示している。

【符号の説明】

１‥リストライク装置 ２‥下ホルダー ３‥
ポンチ ４‥上ホルダー ５‥ダイ ６‥
ブランクホルダー ７‥クッションピン １１‥スリットダイ １２‥
スリットポンチ Ｌ‥分断スリット Ｍ‥製品部 Ｐ‥
変形部 Ｓ‥スクラップ部

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 【請求項１】 ワークを絞り加工する絞り工程と、絞り
   加工後のワークを仕上げるリストライク工程と、ワーク
   を製品部とスクラップ部に区画するトリムラインの部分
   でワーク周辺部のスクラップ部を切除するトリム工程と
   を有する絞り加工方法において、 ポンチに対して相対的に接近離反移動自在となったリス
   トライク加工用のダイと、当該ダイに前記ワークの周辺
   部を介して圧接するブランクホルダーとにそれぞれ設け
   られたスリット加工部により、前記トリムラインに交差
   した円孤状スリット部と、当該円孤状スリット部の一端
   から前記ワークの周端面に連なる連通スリット部とを有
   する分断スリットをリストライク加工時にワークに複数
   箇所形成する工程と、前記リストライク工程において形
   成された前記円孤状スリットに交差するトリムラインの
   部分で製品部からスクラップ部を切除する工程とを有す
   る絞り加工方法。