JPH0570037A - 糸条巻取装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】精紡機、撚糸機、紡糸引取機等で糸を巻取る
際、巻姿が向上し、糸落ちや輪抜けの生じない、解舒性
に優れたパッケージを得る糸条巻取装置を提供する。 【構成】パッケージを構成するための第一トラバース機
構のほかに第二トラバース機構１０を設け、第一トラバ
ースに重ねて第二トラバースを与える。

Description

【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】本発明は、精紡機、撚糸機等にお
ける糸条の巻取装置の改良に関し、詳しくはこれらの巻
取装置によって巻き取られた糸条の形態安定に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】精紡機、撚糸機、紡糸引取機等、スピン
ドルを用いて糸条を巻取る装置において、スピンドル上
のボビンに糸条をパーン状に巻取ることは広く行われて
いる。パーンを形成させるためには、糸条をスピンドル
上のボビンにたいしトラバースさせることが必要である
が、トラバース機構については多くの提案がなされてい
る。

【０００３】特公平２ー１９０６７号公報には、糸条の
巻取位置を固定し、巻取位置にたいしてボビンを移動さ
せてパーンを形成するトラバース方式が提案されてい
る。この方式はボビンの位置を固定し、これにたいしガ
イドを移動させて糸条をトラバースさせる一般的な方式
にたいしては逆の発想である。何れのトラバース方式を
取るにせよ、形成されたパーンの形態が安定し、ボビン
取扱中に糸条が乱れたりしないことが要求される。

【０００４】近来、糸条の取扱いスピードの高速化要求
は益々高まっている。このことはすなわち巻取速度の高
速化要求であるが、巻取った糸条が安定的な状態である
ためには、巻取にあたり糸条に与える張力の調整や、巻
取った後の巻姿の改善が必要である。この点で従来も各
種の工夫が行なわれているが、糸条処理速度の高速化は
従来の工夫では所期の目的を果たせないようになってい
る。

【０００５】

【発明が解決しょうとする課題】本発明は、上述の如き
状況において、糸状をパーン状に巻取った際、優れた巻
姿が得られると共に解舒性に優れ、輪崩れの生じないパ
ーンを得ることができる、高速巻取可能な糸条巻取装置
を提供せんとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、 １．スピンドルにたいし糸条をスピンドル軸芯方向に相
対的に移動させてスピンドル上のボビンにパーンを形成
させる第一トラバース機構を備えた糸条巻取装置におい
て、第一トラバース機構のほかに、第一トラバース機構
でトラバースされる糸条に、第一トラバース機構で与え
られるトラバースに重ねてトラバースを与える第二トラ
バース機構を備えたことを特徴とする糸条巻取装置。 ２．第二トラバース機構のトラバース速度は、第一トラ
バース機構のトラバース速度より大きいことを特徴とす
る上記１記載の糸条巻取装置。とすることによって目的
を達成するものである。

【０００７】以下図面を用いて詳細説明する。図１は、
本発明装置の一実施態様を示す全体斜視図である。図２
乃至図４は、夫々第二トラバース機構の異なった実施態
様を示す斜視図である。図５は、従来の巻取装置を用い
て糸条を巻取ったパーン状パッケージのボビン中心線に
おける正面断面図、図６は、本発明装置により糸条を巻
取ったパーン状パッケージのボビン中心線における正面
断面図である。

【０００８】図において、１はスピンドルで、スピンド
ルモータ２によって回転を与えられ嵌合したボビン３に
糸条を巻取るものである。４はフレーム１２にブラケッ
ト１３を介して固定されているトラバースシリンダで、
スピンドル１にトラバースを与えるものである。すなわ
ち、スピンドル１を装着したスピンドルモータ２は下方
に摺動子６を取り付けてあり、摺動子６はフレーム１２
に固定されたガイドレール５の上に載せられている。従
ってスピンドル１はスピンドルモータ２と共にガイドレ
ールの上をガイドレールに沿って往復できるようになっ
ている。８はロータリーエンコーダでフレーム１２との
間にラックアンドピニオン７を設けてあり、スピンドル
の位置を検出することができる。検出した結果は、トラ
バースシリンダ４へフィードバックされトラバースシリ
ンダを制御する。

【０００９】トラバースシリンダ４はシリンダ内を移動
できる作動杆４１をもっており、作動杆４１はスピンド
ルモータ２に結合されている。トラバースシリンダ４に
は作動杆４１を駆動するための適宜な動力源が接続され
ている。トラバースシリンダ４、作動杆４１、ガイドレ
ール５、摺動子６、ラックアンドピニオン７、ロータリ
ーエンコーダ８は、スピンドル１の位置をスピンドルの
軸芯方向に移動させることができ、第一のトラバース機
構を構成している。

【００１０】１０は、第二トラバース機構である。１１
は図示しないブラケットでフレーム１２に固定されてい
る振り支点ガイドであり、糸条の通過位置を糸条の供給
側にたいし決定すると共に、スピンドル１に嵌合された
ボビン３にたいしても決定している。従って、第二トラ
バース機構１０は第一トラバース機構よりもボビン３に
近い位置にある。 第二トラバース機構は、糸条に微細
な綾振りを行なうものであり、第一トラバース機構によ
るトラバースに重ねてトラバースを与えるものである。

【００１１】第二トラバース機構の態様の詳細は、図２
乃至図４に示されている。図２に示したものは、モータ
１０１の先に溝付回転ガイド１０２が取り付けられてい
る。溝付回転ガイド１０２の溝は、ガイドの回転軸の方
向に屈曲して刻まれている。従って、モータ１０１の回
転により、溝付回転ガイド１０２が回転すると、糸条は
溝によって細かくボビン軸方向に綾振りを行なうことに
なる。すなわち、全体のトラバースが第一トラバース機
構によって与えられるのに重ねて、第二トラバースを与
えることになる。

【００１２】図３に示した第二トラバース機構は図２と
は異なった態様である。すなわち、１０３はバイブレー
タで、１０４はバイブレータ１０３に取り付けられた振
動溝付ガイドである。振動溝付ガイド１０４には直線の
溝が刻まれておりかつ、回転しない。この態様にあって
は糸条は振動溝付ガイド１０４に案内されるが、振動溝
付ガイド１０４にはバイブレータ１０３により振動が与
えられているので糸条は細かく綾振られながら振動溝付
ガイド１０４を通過し、第二トラバースを重ねられるこ
とになる。図４の態様は、図３の場合とよく似ている。
すなわち、細かい振動を与えるためにバイブレータ１０
５を用いることは図３の場合と同じであるが、糸条を案
内するガイドが振動スネールガイド１０６である点で異
なっている。図３、図４の場合も第二トラバース機構の
位置は図２の場合と同じである。

【００１３】図５は、従来技術による巻取を行なった場
合に得られるパーン状パッケージの断面を示している。
パッケージの表面は凹凸があり、テーパー部９２にはハ
ダあれがある。また、糸条のトラバース折返部９１には
糸条の溜りが生じており、コブを形成している。 図６
には、本発明装置によって得られたパーン状パッケージ
の断面が示されている。本発明装置を用いて得たパッケ
ージには、図５に示されたようなテーパー部９４にはハ
ダあれはない。また、糸条の折返部９３には、糸条の溜
りによるコブはない。

【００１４】本発明装置によって得られるパッケージに
は、テーパー部にハダあれがなく、糸条の折返部に糸だ
まりによるコブがないので巻姿が向上し商品価値をあげ
ることができるものである。加えて、解舒にあたり輪抜
けの発生がなくスムースな解舒を行なうことができる。
さらに糸落ちといわれる大径部から小径部への糸条の移
動がなくなるので巻姿が美しく保持できるのみならず解
舒にあたり糸条の乱れがない。また、テーパー部の巻硬
度が上がるので取扱いがしやすくなるものである。

【００１５】このような取扱いの容易な、かつ、優れた
取扱性を示すパッケージを得ることのできる本発明装置
は、第一トラバースに重ねて第二トラバースを糸条に与
えることにより、糸条が細かくトラバースされ、かつ容
易に第二トラバース速度を制御できるので、いわゆるリ
ボン巻といわれる現象の発生を完全に防止することがで
きることと、糸条が既に巻かれている糸条と完全に区別
された部分に巻かれることにより、糸条が本来の区分を
容易に保持し接触している他の部分を引き出したりしな
いことによるものである。

【００１６】このような優れた効果をもたらす本発明
は、第一トラバースに第二トラバースを重ねることによ
りもたらされるが、第二トラバース機構によるトラバー
ス効果を、第一トラバースに確実に与えるためには、第
二トラバースのトラバース速度は、第一トラバースのト
ラバース速度より大きいことが好ましく、より好ましく
は、第一トラバースのトラバース速度の１．５倍以上１
００倍程度までの速度が好ましく、最も好ましくは第一
トラバースのトラバース速度の３〜５倍程度である。

【００１７】また、第二トラバースのトラバース幅は小
幅であっても差し支えないが、３〜２０ｍｍとすること
が好ましい。さらに、第二トラバース機構の位置は、第
二トラバース機構によるトラバース効果を第一トラバー
ス機構によるトラバースにより確実に与えるため、なる
べくパッケージに近接させるのがよく、具体的には最大
巻径の外周から５〜２００ｍｍ離れた位置が好ましい。

【００１８】

【実施例】第一トラバース幅を２５０〜４００ｍｍ、第
二トラバース幅を３ｍｍ、第一トラバース速度を６ｍ／
分、第二トラバース速度を１８ｍ／分として設定してお
き、溶融紡糸後延伸された３０デニールのナイロン６６
糸条を張力４．５ｇ糸速４０００ｍ／分にて巻取ったと
ころ、テーパー部に糸落ち等なく優れた巻姿のパッケー
ジが採取できた。また、解舒時の輪抜けも発生しなかっ
た。 〔比較例〕第一トラバース速度を６ｍ／分と設定してお
き、第二トラバースは停止して、その他の条件を実施例
と同様にして巻取ったが、テーパー部のハダあれが見ら
れ解舒性は劣化した。

【００１９】

【発明の効果】本発明は、上述した構成としたので、ボ
ビンへの糸条の巻上時には巻姿の優れたパーンが得ら
れ、また、パーンからの解舒時には、輪抜けの発生しな
いスムーズな解舒が行なえる。したがって本発明は、ボ
ビンの運搬時においても、何ら巻崩れが発生せず優れた
巻姿のパーンを得ることができる。しかも本発明は、扱
いやすい、かつ、優れた巻姿のパッケージと、高速巻取
が可能な巻取装置であるにかかわらず、巻取装置それ自
体は僅かの部品を加えるのみで、このような優れた製品
を得ることができるものであり、実用性に富む優れた巻
取装置を提供するものである。

【００２０】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一つの実施態様を示す全体斜視図であ
る。

【図２】第二トラバース機構の一実施態様を示す斜視図
である。

【図３】図２とは別の、第二トラバース機構の実施態様
を示す斜視図である。

【図４】図２、図３とは別の第二トラバース機構の実施
態様を示す斜視図である。

【図５】従来技術による巻取装置によって得られたパー
ン状パッケージのボビン中心線における正面切断図であ
る。

【図６】本発明装置により得られたパーン状パッケージ
のボビン中心線における正面切断図である。

【００２１】

【符号の説明】

１：スピンドル ２：スピンドルモータ ３：ボビン ４：トラバースシリンダ ４１：作動杆 ５：ガイドレール ６：摺動子 ７：ラックアンドピニオン ８：ロータリーエンコーダ ９：パッケージ ９１：折返部 ９２：テーパー部 ９３：折返部 ９４：テーパー部 １０：第二トラバース機構 １０１：モータ １０２：溝付回転ガイド １０３：バイブレータ １０４：振動溝付ガイド １０５：バイブレータ １０６：振動スネールガイド １１：振り支点ガイド １２：フレーム １３：ブラケット

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】スピンドルにたいし糸条をスピンドル軸芯
   方向に相対的に移動させてスピンドル上のボビンにパー
   ンを形成させる第一トラバース機構を備えた糸条巻取装
   置において、第一トラバース機構のほかに、第一トラバ
   ース機構でトラバースされる糸条に、第一トラバース機
   構で与えられるトラバースに重ねてトラバースを与える
   第二トラバース機構を備えたことを特徴とする糸条巻取
   装置。
2. 【請求項２】第二トラバース機構のトラバース速度は、
   第一トラバース機構のトラバース速度より大きいことを
   特徴とする請求項１記載の糸条巻取装置。 【０００１】