JPH0565582A - 高強度、高耐食性アルミニウムブレージングシート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】Ｍｎ：０．１〜１．３ｗｔ％、Ｍｇ：０．１〜
１．０ｗｔ％、Ｃｕ：０．１〜０．６ｗｔ％、Ｓｉ：
０．０５〜１．０ｗｔ％、Ｆｅ：０．０５〜０．６ｗｔ
％を含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からな
る芯材（１）の両面に、Ｍｎ：０．１〜１．３ｗｔ％、
Ｔｉ：０．０５〜０．２ｗｔ％、Ｆｅ：０．０５〜０．
６ｗｔ％、Ｓｉ：０．０５〜１．０ｗｔ％を含有し、残
部アルミニウム及び不可避不純物からなる拡散防止層
（２）（２）を介して、Ａｌ−Ｓｉ系ろう材層（３）
（３）が被覆形成されてなる。かつ前記拡散防止層
（２）はその片面厚さが全体厚さの３〜１０％に規定さ
れている。 【効果】芯材中のＣｕ、Ｍｇの拡散を効果的に抑制する
ことができ、ひいてはろう付性やろう付後の強度、耐食
性の劣化を防止し得て、ろう付性、強度、耐食性ともに
優れたブレージングシートとなしうる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、積層型アルミニウム
熱交換器のチューブエレメント等の構成材料として用い
られるアルミニウムブレージングシートに関し、特に高
強度、高耐食性アルミニウムブレージングシートに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】例えばカーエアコン用エバポレーター等
には積層型熱交換器、即ち扁平管部の両端または一端に
タンク部が形成されたチューブエレメントの複数枚がフ
ィンを介して積層された形式の熱交換器が一般に用いら
れていることが多い。

【０００３】ところで、上記積層型熱交換器に用いられ
るチューブエレメントとして、芯材の片面または両面に
ろう材層が被覆されたアルミニウムブレージングシート
が一般的に用いられる。

【０００４】従来、かかるアルミニウムブレージングシ
ートには、芯材にＡ３００３アルミニウム合金が、ろう
材層にＡ４００５合金等のＡｌ−Ｓｉ系合金が良く用い
られていた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、Ａ３００３合
金を芯材とするアルミニウムブレージングシートは強
度、耐食性の点で問題があり、昨今の熱交換器の軽量
化、薄肉化の要請に十分対処できなかった。

【０００６】そこで、最近では高強度、高耐食性ブレー
ジングシートとして、強化元素であるＣｕを含有したＡ
ｌ−Ｍｎ−Ｃｕ系合金を芯材に用いることの試みがなさ
れている。確かに、Ａｌ−Ｍｎ−Ｃｕ系合金はそれ自体
としてはＯ材強度で概ね１２〜１３Ｋｇ／ｍｍを示して
高強度であり、かつ腐食電位もＡ３００３合金よりも貴
であって高耐食性を有する。

【０００７】しかしながら、Ａｌ−Ｍｎ−Ｃｕ系合金を
芯材としてブレージングシートに製作した場合、ろう付
中に芯材のＣｕが皮材に拡散してしまい、本来芯材の有
する強度や耐食性がブレージングシートとしては得られ
ないという欠点があった。

【０００８】一方また、高強度アルミニウム合金である
Ａ３００５や６０００系のアルミニウム合金を芯材に用
いたブレージングシートも考えられているが、この場合
もＣｕと同様に芯材のＭｇがろう付中に皮材に拡散する
ため、強度低下を招くのみならずろう付性をも阻害する
という欠点があった。

【０００９】この発明は、かかる技術的背景に鑑みてな
されたものであって、Ｃｕ、Ｍｇを芯材に含有するもの
でありながら、ブレージングシートとしても高強度、高
耐食性を実現しうるアルミニウムブレージングシートの
提供を目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明は、図面の符号を参照して示すと、Ｍｎ：
０．１〜１．３ｗｔ％、Ｍｇ：０．１〜１．０ｗｔ％、
Ｃｕ：０．１〜０．６ｗｔ％、Ｓｉ：０．０５〜１．０
ｗｔ％、Ｆｅ：０．０５〜０．６ｗｔ％を含有し、残部
アルミニウム及び不可避不純物からなる芯材（１）の両
面に、Ｍｎ：０．１〜１．３ｗｔ％、Ｔｉ：０．０５〜
０．２ｗｔ％、Ｆｅ：０．０５〜０．６ｗｔ％、Ｓｉ：
０．０５〜１．０ｗｔ％を含有し、残部アルミニウム及
び不可避不純物からなる拡散防止層（２）（２）を介し
て、Ａｌ−Ｓｉ系ろう材層（３）（３）が被覆形成され
てなり、かつ前記拡散防止層（２）はその片面厚さが全
体厚さの３〜１０％に規定されていることを特徴とする
高強度、高耐食性アルミニウムブレージングシートを要
旨とするものである。

【００１１】まず、本発明に係るアルミニウムブレーン
シートの芯材（１）における各元素の添加意義と組成範
囲の限定理由について説明すると、Ｍｎ（マンガン）は
芯材ひいてはブレージングシートの強度及び耐食性の向
上に寄与するものである。しかし、０．１ｗｔ％未満で
はその効果に乏しい。一方、１．３ｗｔ％を超えるとＡ
ｌーＭｎ系の粗大な化合物が晶出し、成形性を悪化させ
る。従ってＭｎは芯材（１）中に０．１〜１．３ｗｔ％
の範囲で含有されなければならない。Ｍｎの特に好まし
い含有範囲は０．５〜１．１ｗｔ％である。

【００１２】Ｍｇ（マグネシウム）は芯材ひいてはブレ
ージングシートの強度向上に寄与する元素であるが、
０．１ｗｔ％未満ではその効果に乏しい。一方１．０ｗ
ｔ％を超えると融点が低下するという欠点を派生する。
従って芯材中にはＭｇは０．１〜１．０ｗｔ％の範囲で
含有されなければならない。Ｍｇの特に好ましい含有量
は０．３〜０．７ｗｔ％である。

【００１３】Ｃｕ（銅）は芯材ひいてはブレージングシ
ートの強度の向上と、電極電位を貴にすることによる耐
食性の向上に有効な元素である。しかし、０．１ｗｔ％
未満ではその効果に乏しい。一方０．６ｗｔ％を超える
と芯材の融点低下を招来する。従って、Ｃｕは芯材中に
０．１〜０．６ｗｔ％の範囲で含有されなければならな
い。Ｃｕの特に好ましい含有範囲は０．３〜０．５ｗｔ
％である。

【００１４】Ｓｉ（珪素）は芯材ひいてはブレージング
シートの強度向上に有効であるが、０．０５ｗｔ％未満
ではその効果に乏しく、１．０ｗｔ％を超えると芯材の
融点低下を派生する。従ってＳｉは０．０５〜１．０ｗ
ｔ％の範囲で含有されなければならず、特に好ましくは
０．２〜０．６ｗｔ％含有されるのが良い。

【００１５】Ｆｅ（鉄）は結晶粒径の制御に寄与する
が、０．０５ｗｔ％未満ではその効果に乏しく、逆に
０．６ｗｔ％を超えると結晶粒が微細化され、ろう付時
の侵食を招き易くなる。従ってＦｅは０．０５〜０．６
ｗｔ％の範囲で含有されなければならなず、特に好まし
くは０．１５〜０．５ｗｔ％とするのが良い。

【００１６】上記芯材（１）の両面にクラッド等により
被覆される拡散防止層（２）は、芯材（１）中のＣｕ及
びＭｇのろう材層（３）への拡散を防止して、芯材の強
度、高耐食性を維持しひいてはブレージングシートに強
度、高耐食性を付与するとともに、Ｍｇ等の拡散による
ろう付性の低下を防止して良好なろう付性を発揮させる
役割を果たす。かかる拡散層（２）の目的に鑑み、その
組成の組合せと限定理由について説明すると次のとおり
である。

【００１７】即ち、Ｍｎは拡散防止層（２）自体の強
度、耐食性を向上させひいてはブレージングシートの強
度、耐食性の向上に役立つものである。しかし、０．１
ｗｔ％未満では上記効果に乏しく、１．３ｗｔ％を超え
るとＡｌ−Ｍｎ系の粗大な化合物が晶出し、成形性が悪
化する。従ってＭｎは拡散防止層（２）中に０．１〜
１．３ｗｔ％の範囲で含有されなければならない。Ｍｎ
の特に好ましい含有範囲は０．３〜１．１ｗｔ％であ
る。

【００１８】Ｔｉ（チタン）は芯材（１）中のＭｇのろ
う材層（３）への拡散を防止し、ひいてはブレージング
シートの強度、耐食性、ろう付性の劣化を抑制する効果
がある。これは、ＴｉはＭｇと化合物を形成せず、従っ
て親和性が悪くおそらくは両者間に斥力が働いているか
らと推測される。しかしＴｉが０．０５ｗｔ％未満では
Ｍｇの拡散防止効果に乏しい。一方０．２ｗｔ％を超え
て含有されても上記効果の格別な増大作用がなく、却っ
て経済的な無駄を招く。従ってＴｉは０．０５〜０２ｗ
ｔ％の範囲で含有されなければならず、特に好ましい含
有範囲は０．０８〜０．１５ｗｔ％である。

【００１９】Ｆｅは芯材（１）中のＣｕのろう材層
（３）への拡散を防止する元素であるが、０．０５ｗｔ
％未満ではその効果に乏しい。一方０．６ｗｔ％を超え
て含有されてもＣｕ拡散抑制効果が飽和し、該効果の格
別な増大を期待しえない。従って拡散防止層（２）中の
Ｆｅは０．０５〜０．６ｗｔ％の範囲で含有されなけれ
ばならない。Ｆｅの特に好ましい含有範囲は０．１５〜
０．５ｗｔ％である。

【００２０】Ｓｉは強度向上に有効であるが０．０５ｗ
ｔ％未満ではその効果が少なく、１．０ｗｔ％を超える
と拡散防止層（２）の融点低下を招く。従って拡散防止
層（２）中のＳｉは０．０５〜１．０ｗｔ％の範囲で含
有されなければならない。特に好ましくは０．２〜０．
６ｗｔ％である。

【００２１】かつまた、上記の拡散防止層（２）の肉厚
は片面厚さｔ₁ がブレージングシートの全体厚さｔの３
〜１０％の範囲に規定される必要がある。片面厚さｔ₁
が全体厚さｔの３％未満では、拡散防止層（２）の上記
組成にも拘らず十分な拡散防止効果を得ることができな
い。一方１０％を超える厚さでは、ブレージングシート
全体に対する拡散防止層（２）の割合が大きくなりす
ぎ、ブレージングシート全体の強度低下を派生する。好
ましくは拡散防止層（２）の片面厚さｔ₁ はこれをブレ
ージングシートの厚さｔに対し３〜６％に設定するのが
良い。

【００２２】拡散防止層（２）（２）の外側に被覆され
るろう材層の組成は特に限定されることはなく、従来よ
り用いられているＡｌ−Ｓｉ系あるいはＡｌ−Ｓｉ−Ｍ
ｇ系合金を適宜用いれば良い。

【００２３】この発明に係るアルミニウムブレージング
シートは、常法に従い、芯材（１）用、拡散防止層
（２）（２）用、ろう材層（３）（３）用の各アルミニ
ウム合金材を圧延でクラッドすることにより製作すれば
良い。

【００２４】

【実施例】次に、この発明の実施例を示す。

【００２５】下記表１及び表２に示す組成の芯材と拡散
防止層用の板材を用意した。

【００２６】

【表１】

【００２７】

【表２】

【００２８】そして、芯材と拡散防止層とを表３のよう
に組み合わせ、芯材の両面に拡散防止層を介してＡ４０
０５合金からなるろう材層がクラッドされた５層構造、
厚さ０．５mmのブレージングシートを圧延によって製作
した。

【００２９】なお、拡散防止層の厚さは、その片面厚さ
をブレージングシート全体の厚さに対して表３に示す割
合に設定した。また、ろう材層の厚さはいずれも片面
０．０６mmとした。

【００３０】次に、上記により製作した各アルミニウム
ブレージングシートを供試片とし、該供試片とＡ１１０
０合金からなる厚さ２mmの板片とを供試片を上側に垂直
状態に配した逆Ｔ継手に組み立てた。そして、該継手
を、フッ化物系フラックスを用いて６０５℃×１０分ろ
う付したときの供試片の耐力を測定するとともにろう付
性、耐食性を調べた。ろう付性は、供試片と板片との接
合部のろう付状態を目視観察することにより評価した。
また、耐食性はＪＩＳ−Ｈ−８６８１に基くキャス試験
により評価した。それらの結果を表３に併せて示す。

【００３１】

【表３】

【００３２】上記表３の結果からわかるように、本発明
品（Ｎｏ１〜４）はろう付後の強度も十分で、ろう付
性、耐食性にも優れていることを確認し得た。

【００３３】これに対し、芯材にＡ３００３合金を用い
ると共に、拡散防止層を設けない従来品（Ｎｏ５）は強
度、耐食性に劣るものであった。

【００３４】また、拡散防止層にＴｉを含まない合金を
用いた比較品（Ｎｏ６）はろう付性、耐食性に劣ってい
た。これは、拡散防止層にＴｉを含まないため、芯材中
のＭｇがろう材層に拡散したからと推測される。

【００３５】また、拡散防止層の厚さが薄すぎる比較品
（Ｎｏ７）は、Ｃｕ、Ｍｇの拡散防止効果に劣るためろ
う付性、耐食性いずれも不十分であった。

【００３６】

【作用】拡散防止層（２）により、芯材（１）中のＣ
ｕ、Ｍｇのろう材層（３）への拡散が防止される。

【００３７】

【発明の効果】この発明は、上述の次第で、Ｃｕ、Ｍｇ
を含む芯材とその両面ろう材層との間に、芯材中のＣ
ｕ、Ｍｇのろう材層への拡散を防止する一定組成、一定
厚さの拡散防止層が介在されているから、芯材中のＣ
ｕ、Ｍｇの拡散を効果的に抑制することができ、ひいて
はろう付性やろう付後の強度、耐食性の劣化を防止し得
て、ろう付性、強度、耐食性ともに優れたブレージング
シートとなしうる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係るブレージングシートの断面拡大
図である。

【符号の説明】

１…芯材 ２…拡散防止層 ３…ろう材層

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ｍｎ：０．１〜１．３ｗｔ％、Ｍｇ：
   ０．１〜１．０ｗｔ％、Ｃｕ：０．１〜０．６ｗｔ％、
   Ｓｉ：０．０５〜１．０ｗｔ％、Ｆｅ：０．０５〜０．
   ６ｗｔ％を含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物
   からなる芯材（１）の両面に、 Ｍｎ：０．１〜１．３ｗｔ％、Ｔｉ：０．０５〜０．２
   ｗｔ％、Ｆｅ：０．０５〜０．６ｗｔ％、Ｓｉ：０．０
   ５〜１．０ｗｔ％を含有し、残部アルミニウム及び不可
   避不純物からなる拡散防止層（２）（２）を介して、Ａ
   ｌ−Ｓｉ系ろう材層（３）（３）が被覆形成されてな
   り、 かつ前記拡散防止層（２）はその片面厚さが全体厚さの
   ３〜１０％に規定されていることを特徴とする高強度、
   高耐食性アルミニウムブレージングシート。