JPH0544674A - 圧縮機 - Google Patents

圧縮機

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Publication number
JPH0544674A
JPH0544674A JP20194291A JP20194291A JPH0544674A JP H0544674 A JPH0544674 A JP H0544674A JP 20194291 A JP20194291 A JP 20194291A JP 20194291 A JP20194291 A JP 20194291A JP H0544674 A JPH0544674 A JP H0544674A
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JP
Japan
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compressor
roller
alloy
sintered
area ratio
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Pending
Application number
JP20194291A
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English (en)
Inventor
Shuji Matsumoto
修二 松本
Tsutomu Morioka
勉 森岡
Kunpei Kobayashi
薫平 小林
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的は、冷媒の変更に伴って使用温度
が上昇た場合においても、圧縮機を構成する摺動材の寸
法変化や硬度低下が少なく安定した耐摩耗性および耐久
性を発揮する圧縮機を提供することにある。 【構成】本発明に係る圧縮機は、鋳物製シリンダ内面に
摺接し、偏心回転運動をするローラと、このローラと接
触してシリンダより出入するベーン材とを備える圧縮機
において、上記ローラを、重量%でNiを1〜8%、C
rを0.5〜3%、Moを0.5〜3%、Cuを0.2
%以下、Cを1〜2.5%、残部Feから成る焼結合金
であり、合金のオーステナイト組織の面積率が5%以下
であると共に鉄酸化物の含有量が容積%で5〜10%で
ある焼結合金から形成する一方、上記ベーン材を、重量
%でCrを3.9〜4.4%、Moを4.9〜20%、
Wを5.6〜6.5%、Vを0.5〜2%、Cを0.8
〜2%、残部Feから成り、オーステナイト組織の面積
率が5%以下である合金から形成して構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は圧縮機に係り、特に高温
度条件下において優れた耐摩耗性および耐焼付性を有
し、耐久性に優れた圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】冷凍機、冷蔵庫、空調機やショーケース
においては冷媒を圧縮する圧縮機が主要機器として装備
されている。上記用途例において一般的に使用されてい
る圧縮機として、図1および図2に示すような密閉型の
ロータリ圧縮機がある。
【0003】この圧縮機1は、ケ―シング2の内部にモ
ータ3aと圧縮要素3bとを内装し、圧縮要素3bはモ
ータ3から延びる回転軸4を主軸受5と副軸受6に挿通
させ、この主軸受5と副軸受6との間に、仕切板7を介
して2基のシリンダ8a,8bを配設し、各シリンダ8
a,8b内において、前記回転軸4に形成された偏心部
9a,9bにそれぞれ円筒状のローラ10a,10bを
嵌合させる一方、第2図に示すように偏心回転するロー
ラ10a,10bに対して常時押し付けて接触するよう
に、ベーン11a,11bが配設されて構成される。ベ
ーン11a,11bは偏心部9a,9bおよびローラ1
0a,10bの回転に応じて往復動し、各シリンダ8
a,8b内部を圧力的に仕切る役割を果している。こう
して圧縮機1は、モータ3の駆動によって前記ローラ1
0a,10bをシリンダ8a,8b内において偏心回転
させることにより、シリンダ8a,8b内に吸入したガ
スを圧縮して吐出するものである。
【0004】上記のような圧縮機1においては、主副軸
受5,6と回転軸4、シリンダ8とベーン11、仕切板
7とローラ10など相互に摺接する摺動部における摩耗
が特に顕著になるため、高い耐摩耗性を有する材料で形
成する必要がある。
【0005】従来、この種の材料としては、高速度鋼や
共晶黒鉛鋳鉄の溶解材、さらにより具体的には2.2S
i−3.4C−残部Feから成るFC200材、SMF
4030などのSMF−4種材(鉄−炭素−銅系合金)
など耐摩耗性を高めた材料が一般に使用されている。特
に高度の耐焼付性および耐摩耗性が要求されるローラを
構成する耐摩耗材料としては、Mo−Ni−Cr−Si
−Fe合金(モニクロ鋳鉄)が広く利用され、またベー
ン材としてはSKH−51、シリンダ材としては、黒鉛
を分散させた鋳物材等が一般に使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
冷凍機用、冷蔵庫用、空調機用などの圧縮機用の冷媒と
して一般的に使用されていたフロンが環境破壊の一因と
なることが判明し、フロンに代替する新しい冷媒の開発
が進められている。
【0007】ところが現在までに開発段階にある新規な
冷媒はいずれも運転温度が、従来のフロンと比較して大
幅に上昇するため、従来の耐摩耗材料で摺動部を形成し
た圧縮機では種々の問題点が発生することが確認されて
いる。
【0008】すなわち冷媒の変更に伴い使用環境温度の
上昇が必至となり、そのため、ローラ等の摺動部材の寸
法が熱膨張により変化し、摺動部材相互の微小なクリア
ランスが拡大して冷媒の圧縮効率が低下し、最終的に冷
却能力の低下を招来する問題点がある。
【0009】また使用温度の上昇に伴い、摺動材を構成
する合金組織の変態等により、その硬度および耐摩耗性
が低下して圧縮機としての能力が低下してしまう問題点
が確認されている。
【0010】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたものであり、冷媒の変更に伴って使用温度が上昇
した場合においても、圧縮機を構成する摺動材の寸法変
化や硬度低下が少なく安定した耐摩耗性および耐久性を
発揮する圧縮機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段と作用】本発明者等は上記
の目的を達成するため、圧縮機の摺動部を構成する合金
材料を種々変えて、その摺動特性を比較検討し、さらに
各合金材料の高温度使用条件下においても安定した合金
組織を形成することが可能な材料の調製方法を研究した
結果、所定組織を有する鉄系焼結合金であり、そのオー
ステナイト組織を低減し、さらに鉄酸化物量を所定範囲
に設定した焼結合金で摺動部材を形成したときに、高温
度使用条件下においても極めて安定した耐摩耗特性およ
び耐久性を有する圧縮機が得られた。本発明は上記知見
に基づいて完成されたものである。
【0012】すなわち本発明に係る圧縮機は、鋳物製シ
リンダ内面に摺接し、偏心回転運動をするローラと、こ
のローラと接触してシリンダより出入するベーン材とを
備える圧縮機において、上記ローラを、重量%でNiを
1〜8%、Crを0.5〜3%、Moを0.5〜3%、
Cuを0.2%以下、Cを1〜2.5%、残部Feから
成る焼結合金であり、合金のオーステナイト組織の面積
率が5%以下であると共に鉄酸化物の含有量が容積%で
5〜10%である焼結合金から形成する一方、上記ベー
ン材を重量%でCrを3.9〜4.4%、Moを4.9
〜20%、Wを5.6〜6.5%、Vを0.5〜2%、
Cを0.8〜2%、残部Feから成り、オーステナイト
組織の面積率が5%以下である合金から形成したことを
特徴とする。
【0013】さらに焼結合金の密度が7.0〜7.7g
/cm3 で設定した構成するとよい。
【0014】またベーン材を構成する合金が焼結体であ
り、この焼結体に含有される鉄酸化物の含有量を容積%
で5〜18%の範囲に設定したり、ベーン材を構成する
焼結合金に添加される硫黄または窒素の含有量を重量%
で0.1〜0.7%の範囲に設定して、より摺動特性ま
たは耐摩耗性をより改善することもできる。
【0015】以下本発明に係る圧縮機に使用されるロー
ラ材料組成等の限定理由を以下に述べる。
【0016】Niはローラの焼付きを抑制する元素であ
り、1〜8重量%(wt%)添加される。Ni添加量が
1wt%未満の場合には耐焼付き性を付与する効果が少
ない一方、添加量が8wt%を超える場合には、後述す
る焼結合金中に残留するオーステナイト組織の割合が高
まり、材料の安定性や硬度が低下してしまう。
【0017】Crは、ローラの耐摩耗性を向上させる元
素であり、0.5〜3wt%添加される。Crの添加量
が0.5wt%未満の場合には、添加の効果が少ない一
方、添加量が3wt%を超える場合には、成形性が阻害
されてしまう。
【0018】Moは、ローラの耐摩耗性および摺動特性
を改善するために0.5〜3wt%の範囲で添加され
る。Mo添加量が0.5wt%未満の場合には、添加の
効果が少なくなる一方、添加量が3wt%を超えると、
Crと同様に成形性を阻害する。
【0019】Cuは摺動部材として使用されるローラの
初期摺動特性を改善する元素であるが、一方で焼付きを
誘発する元素でもある。特に添加量が0.2wt%を超
える場合には焼付きが生じ易くなるため、その添加量は
0.2wt%以下に設定される。
【0020】Cは、焼結合金基地を構成するFeと反応
して耐摩耗性を有するパーライトを生成する元素であ
り、かつ基地中に遊離黒鉛として分散し、摺動面の潤滑
性を高めて摺動材としてのローラのかじりを防止し、初
期摺動特性を改善するために1〜2.5重量%(wt
%)添加される。C添加量が1%未満の場合には摺動特
性の改善効果が少ない一方、添加量が2.5%を超える
場合には、脆化し成形性が低下し、高密度かつ高強度の
焼結体が得られにくい。また基地中に分散した遊離黒鉛
量はCの総添加量の30%以上が望ましい。
【0021】また焼結合金のオーステナイト組織の面積
率の多少は、ローラの安定性に大きく関係することが本
発明者らの実験によって確認されている。すなわち焼結
合金のオーステナイト組織の面積率が5%を超えると、
ローラの熱的安定性が低下し、高温度条件下においてロ
ーラの寸法変化が大きくなる。特にこの材料で圧縮機の
摺動部材を形成した場合には、摺動部材間のクリアラン
スが拡大して気密保持が困難となり、冷媒の体積効率の
低下を招き易くなる。一方、上記面積率を5%以下に設
定することによって、300℃以下の使用温度範囲にお
いて、寸法変化や硬度低下の影響を受けにくい材料とす
ることができる。
【0022】上記焼結合金のオーステナイト組織の面積
率は、焼結合金の焼戻し処理の温度および時間によって
調整される。
【0023】また鉄酸化物は圧縮機内に充填した潤滑油
の保持特性(保油性)を改善するとともに、後述するよ
うに焼結合金の気密性および摺動特性を改善するため
に、焼結合金の容積に対して5〜10%になるように設
定される。
【0024】ところで、近年圧縮機も、インバータ制御
によってその回転数が大きく変動するような過酷な条件
で運転される場合が多く、回転数が急激に増加する瞬間
において潤滑状態が悪化して焼付きを生じる危険性も高
くなっている。しかるに本願材料のように潤滑油を含浸
できる焼結体で摺動部材を形成することにより、上記焼
付きの危険性を低減することが可能になる。
【0025】上記諸特性を発揮する本発明の圧縮機用耐
摩耗材料は、下記の手順によって製造される。すなわ
ち、まず鉄粉に前記元素粉末および潤滑材を所定量添加
して混合粉末とし、得られた混合粉末を成形圧600〜
700MPaで圧縮して所定形状の成形体とした後に、
得られた成形体を水素等の還元ガス雰囲気、ないし非酸
化性ガス雰囲気において、温度500〜700℃で1〜
2時間脱脂処理する。さらに脱脂した成形体を、減圧雰
囲気ないし還元性ガス雰囲気において温度1000〜1
200℃で1.5〜3時間加熱して焼結体とし、この焼
結体を温度850〜950℃で40〜90分間保持した
後に、ガス冷却を施して焼入れ処理を行なう。さらに焼
入れ処理した焼結体を水蒸気処理によって酸化すると同
時に、封孔処理および焼戻処理を行なって、5〜10v
ol%の鉄酸化物を合金中に分散させると共に、残留オ
ーステナイト組織の面積率を5%以下に設定する。
【0026】ここで焼結合金の密度は7.0〜7.7g
/cm3 の範囲が好ましい。この密度が7.0g/cm3
満であると摺動材の部品としての構造強度および硬度が
低下する一方、密度が7.7g/cm3 を超えると、潤滑
油の保油性が優れる鉄酸化物の生成量が減少して摺動特
性および耐久性が共に低下してしまう。
【0027】ここで水蒸気処理は温度500〜650
℃、圧力0.03〜0.1MPaの過熱水蒸気中に焼結
体を1〜4時間保持するものである。
【0028】この水蒸気処理により焼結合金の基地組織
の空孔に鉄酸化物が分散生成される。この鉄酸化物量は
焼結体の全容積に対して5〜10vol%に設定すると
よい。この鉄酸化物は焼結合金の耐摩耗性を向上させる
とともに、焼結合金の基地組織の空孔を封じる役割(封
孔作用)を果して気密性を与える。この封孔処理を行な
うことにより、圧縮機内の冷媒ガスが焼結体中を通り抜
けることが防止できるため、圧縮機の体積効率を大幅に
改善することができる。鉄酸化物はまた潤滑油の保油性
に優れている。鉄酸化物の生成量が5vol%未満であ
ると上記効果が少なく、一方生成量が10vol%を超
えると、焼結体の強度が低下してしまう。さらに、水蒸
気処理により焼結合金の基地組織に存在している窒素分
が拡散して、基地組織の粒子中に固溶するために、窒素
分の存在による焼結体の脆化を大幅に改善できる。
【0029】また上記水蒸気処理の条件、すなわち温度
500〜650℃で1〜4時間加熱することにより、酸
化物を形成する処理と同時に焼結体の焼戻処理が実施さ
れる。この焼戻処理により焼結体中の残留オーステナイ
ト量を5%以下に調整することができ、300℃程度の
高温度条件下における材料の寸法変化または硬度低下割
合をほぼ解消することが可能となる。
【0030】次に上記組成を有するローラに摺接するベ
ーン材の組成限定理由を以下に説明する。
【0031】Crは一部が基地に固溶し、一部は炭化物
となり、ベーン材の焼入性の向上による硬度の改善に有
効であり、3.9〜4.4重量%(wt%)添加され
る。Cr添加量が3.9wt%未満の場合には焼入性の改
善効果が少ない一方、添加量が4.4wt%を超えても
顕著な効果が得られない。
【0032】MoはWと同様に、ベーン材の耐摩耗性を
改善するために4.9〜20wt%添加される。Mo添
加量が4.9wt%未満の場合には耐摩耗特性の改善効
果が認められない一方、添加量が20wt%を超えるよ
うに過量に添加しても顕著な効果が得られない。
【0033】Wは、Cと化合して高硬度の複炭化物を生
成してベーン材の耐摩耗性を向上するために、5.5〜
6.5wt%添加される。W添加量が5.6wt%未満
の場合は耐摩耗特性の改善効果が少ない一方、添加量が
6.5wt%を超えると相手材であるローラを摩耗させ
る。
【0034】Vは、Wと同様に高硬度の炭化物を形成し
てベーン材の耐摩耗性を改善するために0.5〜2wt
%の範囲で添加される。V添加量が0.5wt%未満の
場合には、耐摩耗効果が少なく、添加量が2wt%を超
える場合には同様に相手材としてのローラの摩耗を顕著
にする。
【0035】Cは、Mo,Cr,W,Vと化合して硬い
複化合物を生成してベーン材の耐摩耗強度を向上させる
ために0.8〜2wt%添加される。C添加量が0.8
wt%未満では充分な量の複炭化物が生成されず、一方
添加量が2wt%を超える場合はベーン材の強度が低下
してしまう。
【0036】上記の組成を有する合金であれば、溶製材
でも焼結体であっても構わない。またベーン材における
オーステナイト組織の面積率の限定理由およびベーン材
を焼結合金で形成した場合における鉄酸化物の含有量、
焼結合金の密度の限定理由は、前記ローラ材についての
限定理由と同様である。
【0037】上記ベーン材を溶製材で形成する場合の製
造方法は下記の通りである。すなわち、上記組成を有す
る鉄系合金インゴットを造塊した後に、炭化物を微細化
するためのコッシング処理を行ない、鍛造した後に、8
00〜880℃の温度で焼鈍を行なう。次に焼鈍した材
料を所定のベーン形状に切断した後に1150〜125
0℃で焼入処理を行ない、しかる後に温度560℃で2
回の焼戻し処理を行なうことにより、残留オーステナイ
ト組織の面積率が5%低下のベーン材が製造される。
【0038】さらに上記ベーン材を焼結合金で形成する
場合の製造方法は、前記のローラの製造方法にほぼ準拠
する。
【0039】また、焼結合金で形成したベーン材の耐摩
耗性や耐焼付き性をより向上させるために、焼結体表面
部に硫黄(S)や窒素(N)を拡散浸透させる浸硫処理
や窒化処理を施すとよい。
【0040】すなわち浸硫処理は、焼結体表面に硫黄を
拡散浸透させる方法であり、表面層は多孔質となり、硬
さの上昇は少ないが、表面部に形成される硫黄拡散層お
よび焼結孔周辺に生成された硫化物が滑り摩擦抵抗を滅
じて初期摺動特性、耐摩耗性および耐焼付き性を改善す
る。浸硫処理によって添加される硫黄量は0.1〜0.
7wt%の範囲に設定される。S添加量が0.1wt%
未満の場合には初期摺動特性の改善効果が少ない一方、
S添加量が0.7wt%を超えるとベーン材としての強
度が低下してしまう。したがって、硫黄含有量は上記範
囲に設定される。
【0041】さらに窒化処理は焼結体表面部に窒素を拡
散浸透させ硬い窒化層を形成する処理であり、一般に実
施されるガス窒化処理においては、通常、アンモニアガ
ス気流中で焼結体を450〜600℃に加熱し、10〜
100時間保持して実施される。この加熱によりアンモ
ニアは分解し、一部が発生期の窒素となって焼結体の表
面に吸着され、焼結孔周辺に窒化物や窒素固溶体を生成
する一方、多孔質部分を通り、内部へ拡散し、Cr,
V,Moを含有する鉄系焼結体を著しく硬化せしめ、耐
摩耗強度を大幅に向上させるとともに、ベーン材の疲労
強度を改善する。
【0042】上記の窒化処理によって添加される窒素量
は0.1〜0.7wt%の範囲に設定される。N添加量
が0.1wt%未満の場合には、初期摺動特性の改善お
よび耐焼付き性の向上効果が認められず、0.7wt%
を超える過量の添加はベーン材の強度低下をもたらすた
め、含有量は上記範囲に設定される。
【0043】一方、シリンダを構成する鋳物としては、
基地中に分散する全黒鉛のうち、ASTM規格A247
に規定するAタイプまたはBタイプでサイズがNo.3
からNo.5、もしくはDタイプまたはEタイプにあっ
てはサイズがNo.6からNo.8の形状およびサイズ
を有する黒鉛が、面積比で黒鉛全体の70%以上に占め
るように均一に分布せしめた鋳鉄がよい。
【0044】ここで上記鋳鉄中の黒鉛形状、大きさおよ
びその分布量の限定理由について以下に説明する。
【0045】すなわち黒鉛形状がASTM規格A247
のAタイプおよびBタイプの場合であってサイズがN
o.3より大きい場合、もしくはDタイプおよびEタイ
プの場合であってサイズがNo.6より大きい場合は保
油性には優れているが黒鉛が粗大であり、基地組織も粗
大となり基地が脆弱となる傾向があり、さらに黒鉛のエ
ッヂ部が摺動圧により破壊され易く、異常摩耗を引き起
こす割合が多い。一方、AタイプおよびBタイプの場合
でサイズがNo.5より小さいとき、もしくはDタイプ
およびEタイプの場合でサイズがNo.8より小さい場
合は、黒鉛におけるオイルポケットが微少過ぎて保油性
が乏しく、さらに自己潤滑性も低いため、シリンダ全体
として潤滑効果を発揮することができない。
【0046】次にAタイプおよびBタイプの黒鉛が混在
している場合、もしくはDタイプおよびEタイプが混在
している場合においても基地中に分散する黒鉛のうち、
前記黒鉛形状・サイズを持つものが面積比で黒鉛全体の
70%以下では、黒鉛の自己潤滑性およびオイル湿潤性
に基づく潤滑効果を充分満足せしめることが不可能であ
る。特に、上記の黒鉛形状・サイズ以外の鋳鉄でシリン
ダを構成する場合には、ベーン材と接触する箇所で焼付
きが生じ易くなることが発明者らの実験によって確認さ
れている。したがってシリンダを構成する鋳物材として
は、上記性状の鋳鉄材が使用される。
【0047】上記鋳鉄は、例えばSiを1.5〜4%、
Cを2〜5%、残部Feからなる溶湯を冷却速度1〜3
℃/secと大きく設定し、所定の片状黒鉛の析出を促進す
ることにより、上記性状を有するように製造される。
【0048】この鋳鉄は黒鉛の自己潤滑性およびオイル
湿潤性に基づく潤滑効果が優れており、前記組成を有す
るローラおよびベーン材との相性が優れている。
【0049】
【実施例】次に本発明に係る圧縮機の一実施例につい
て、摺動材としてローラおよびベーン材を有するロータ
リ式圧縮機を例にとり、従来例と比較して説明する。
【0050】実施例1〜5の圧縮機に使用するローラを
下記のように調製した。すなわち、平均粒径70μmの
Fe粉、平均粒径10μmのFe粉、平均粒径70μm
のSUS410L粉、平均粒径10μmのNi粉、平均
粒径10μmのMo粉および黒鉛粉末を所定量ずつ秤量
し、最終的に表1の左欄に示す組成となるように、各粉
末を混合し、この混合粉末100重量部に対して潤滑剤
を1重量部添加して混合し、5種類の均一な混合体を製
造した。
【0051】次に各混合体を成形圧600〜700MP
aで加圧して、外径33mm、内径23mm、高さ15mmの
寸法を有し、成形密度が6.8〜7.0g/cm3 の成形
体を得た。そして各成形体を水素ガス雰囲気において温
度600℃で2時間加熱することにより脱脂した。
【0052】次に脱脂した各成形体を減圧した水素ガス
雰囲気において温度1100〜1190℃で2時間焼結
し徐冷した。そして温度850〜950℃で40〜90
分間保持した後にガス冷却を行なって各焼結体の焼入処
理を実施した結果、密度が7.2〜7.5g/cm3 の焼
結体を得た。
【0053】次に焼入処理した各焼結体を温度500〜
650℃で圧力0.05MPaの過熱水蒸気中に2〜3
時間保持する水蒸気処理を施すことによりFe酸化物を
形成する封孔処理を行なうと同時に焼戻処理を行なっ
た。その結果、5〜8vol%の鉄酸化物が分散し、残
留オーステナイト組織の面積率が2〜4%である実施例
1〜5のリング状のローラをそれぞれ製造した。
【0054】一方、上記焼結合金性のローラと比較する
ため、比較例1として従来材であるモニクロ鋳鉄(Fe
−0.3Mo−0.3Ni−0.8Cr−2.2Si−
3.4C)溶製品を使用し、実施例1〜5と同一寸法の
ローラを製造した。
【0055】次に上記各ローラと組み合せて使用するベ
ーン材を下記の手順で調製した。すなわち、実施例1の
ローラに対応するベーン材(溶製材)は、表1の右欄に
示す組成を有するインゴットを造塊した後、炭化物を微
細化するため、コッシングして鍛造した後に温度800
〜880℃で焼鈍を行ない、しかる後に縦15mm×横2
0mm×厚さ3mmの板形状に切断し、さらに温度1210
℃で焼入れを行ない、温度560°で2回の焼戻し処理
を行なって調製され、最終的に残留オーステナイト組織
の面積率を5%とした。
【0056】実施例2〜5のローラに対応するベーン材
(焼結体)は、下記手順で調製した。すなわち表1の右
欄に示す組成から成る合金粉末に潤滑材を1%添加して
混合粉末を調製し、得られた混合粉末を成形圧600〜
700MPaで加圧して、縦15mm、横20mm、厚さ3
mmの寸法を有し、成形密度が6.5〜6.6g/cm3
成形体を得た。そして各成形体を水素ガス雰囲気におい
て温度600℃で2時間加熱することにより脱脂した。
【0057】次に脱脂した各成形体を減圧した水素ガス
雰囲気において温度1190〜1210℃で2時間焼結
し徐冷した。そして温度1190℃で40〜90分間保
持した後にガス冷却を行なって各焼結体の焼入処理を実
施した結果、密度が6.6〜6.7g/cm3 の焼結体を
得た。
【0058】次に上記焼入処理した焼結体のうち実施例
3用の焼結体を硫黄溶液中に浸漬した後に取り出し、乾
燥後、さらに温度200〜500℃で5〜60分間加熱
し焼結体の細孔周辺に硫化物を生成させる浸硫処理を行
なった。
【0059】一方実施例4〜5用の焼結体をアンモニア
気流中に置き、温度550〜600℃で30〜60分間
保持することにより焼結体の細孔周辺に窒化物および固
溶体を生成させる窒化処理を実施した。
【0060】そして上記のように処理した実施例2〜5
用の各焼結体を温度500〜650℃で圧力0.05M
Paの過熱水蒸気中に1〜4時間保持する水蒸気処理を
施すことによりFe酸化物を形成する封孔処理を行なう
と同時に焼戻処理を行なった。その結果、13vol%
の鉄酸化物が分散し、残留オーステナイト組織の面積率
が5%である実施例1〜5のローラと組み合せるベーン
材をそれぞれ製造した。
【0061】一方、上記溶製材または焼結合金製のベー
ン材と比較するため、比較例1として従来材であるSK
H51(Fe−4.1Cr−6.2W−1.1V−0.
9C−5.2Mo)溶製品を使用して実施例1〜5用ベ
ーン材と同一寸法のベーン材を製造した。
【0062】またシリンダはFe−2.4Si−3.2
Cの組成を有する溶湯を鋳型に注入し、冷却速度を通常
の冷却速度より早い2℃/secに設定して凝固せしめるこ
とにより、基地中の片状黒鉛の形状をASTM規格のA
タイプまたはBタイプでサイズがNo.3からNo.5
もしくはD,EタイプてサイズがNo.6からNo.8
のものが黒鉛全体の面積比で70%以上占めるように製
造した。
【0063】
【表1】
【0064】こうして製造した実施例1〜5および比較
例1の各ローラ、ベーン材およびシリンダを図1,2に
示すロータリ式圧縮機に実装し、インバータ制御により
所定間隔で高速運転および低速運転を繰り返すという最
も潤滑条件が悪化する条件を設定し、また圧縮する冷媒
ガス温度を300℃に設定して連続的に3000時間運
転する耐久試験を実施した。そして運転時間が3000
時間に達した時点における各ローラ、ベーン材先端部お
よびシリンダ内面の寸法変化割合および摩耗量を測定す
るとともに、各圧縮機の体積効率をそれぞれ測定し、下
記表2に示す結果を得た。
【0065】
【表2】
【0066】表2に示す結果から明らかなように、実施
例1〜5に係る圧縮機においては、耐摩耗性、潤滑性お
よび熱的安定性に優れた材料でローラ材、ベーン材およ
びシリンダの摺動部を構成しているため、高温度で過酷
な運動条件下で長時間運転した後においても、摺動部の
寸法変化割合および摩耗量が、比較例1で示す従来材で
形成した圧縮機よりも小さくなり、優れた耐久性を有し
ている。またローラの表面粗さも小さくなっており、摺
動部におけるかじりの発生が少なく、特にシリンダ内面
において焼付きなどの異常摩耗の現象も観察されず、初
期摺動特性も改善されることが確認された。
【0067】特に実施例1〜5においては、水蒸気処理
によって封孔処理を施した焼結合金でローラを形成して
いるため含浸された潤滑油の保持性が優れており、いわ
ゆる油切れの危険性がより低減され摩耗量も小さくなっ
ている。
【0068】また、鉄酸化物を形成して封孔処理を行な
っているため、冷媒ガスがローラを透過するおそれも少
なく、圧縮機全体としての体積効率が低下することも少
ない。
【0069】さらに熱的に不安定なオーステナイト組織
の面積率を5%以下と小さく設定しているため、高温度
使用条件下においてもローラおよびベーン材の寸法変化
や硬度低下が少なく、スティック等の故障や圧縮効率の
低下が少ない圧縮機を提供することができる。
【0070】上記実施例においては、ロータリ圧縮機に
本発明を適用した例で示しているが、適用対象はロータ
リ圧縮機に限定されす、例えば、スクロール圧縮機、レ
シプロ圧縮機等の種々の形式の圧縮機についても同様に
適用することができる。
【0071】
【発明の効果】以上説明の通り、本発明に係る圧縮機に
よれば、従来材と比較して高温度条件下においても安定
であり、かつ優れた耐摩耗性、潤滑性および耐焼付性を
有する材料で摺動部を形成しているため、長期間に亘っ
て過酷な条件で運転した場合においても、優れた耐久性
を発揮する圧縮機を提供することができる。
【0072】特に摺動部の材料組織において、熱的に不
安定なオーステナイト組織の割合を小さく設定している
ため、冷媒の変更に伴って使用温度が上昇した場合にお
いても、摺動材料の寸法変化や硬度低下が少なく、長寿
命の圧縮機を提供することができる。
【0073】また鉄酸化物を形成して封孔処理を施した
焼結体で摺動部が形成されているため、潤滑油の保持性
および気密性に優れ、冷媒ガス等の被圧縮ガスを透過さ
せることがない。したがって圧縮機の体積効率を損うこ
となく、耐摩耗性に優れた圧縮機を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】密閉型ロータリ圧縮機の構造を示す縦断面図。
【図2】図1に示す圧縮機のロータ部を示す平断面図。
【符号の説明】
1 圧縮機 2 ケ―シング 3a モータ 3b 圧縮要素 4 回転軸 5 主軸受 6 副軸受 7 仕切板 8,8a,8b シリンダ 9,9a,9b 偏心部 10,10a,10b ローラ 11,11a,11b ベーン

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳物製シリンダ内面に摺接し、偏心回転
    運動をするローラと、このローラと接触してシリンダよ
    り出入するベーン材とを備える圧縮機において、上記ロ
    ーラを、重量%でNiを1〜8%、Crを0.5〜3
    %、Moを0.5〜3%、Cuを0.2%以下、Cを1
    〜2.5%、残部Feから成る焼結合金であり、合金の
    オーステナイト組織の面積率が5%以下であると共に鉄
    酸化物の含有量が容積%で5〜10%である焼結合金か
    ら形成する一方、上記ベーン材を重量%でCrを3.9
    〜4.4%、Moを4.9〜20%、Wを5.6〜6.
    5%、Vを0.5〜2%、Cを0.8〜2%、残部Fe
    から成り、オーステナイト組織の面積率が5%以下であ
    る合金から形成したことを特徴とする圧縮機。
  2. 【請求項2】 シリンダを構成する鋳物が、基地中に分
    散する全黒鉛のうち、ASTM規格A247に規定する
    AタイプまたはBタイプでサイズがNo.3からNo.
    5、もしくはDタイプまたはEタイプにあってはサイズ
    がNo.6からNo.8の形状およびサイズを有する黒
    鉛が、面積比で黒鉛全体の70%以上に占めるように均
    一に分布せしめた鋳鉄で形成したことを特徴とする請求
    項1記載の圧縮機。
  3. 【請求項3】 焼結合金の密度が7.0〜7.7g/cm
    3 であることを特徴とする請求項1記載の圧縮機。
  4. 【請求項4】 ベーン材を構成する合金が焼結体であ
    り、この焼結体に含有される鉄酸化物の含有量を容積%
    で5〜18%の範囲に設定したことを特徴とする請求項
    1記載の圧縮機。
  5. 【請求項5】 ベーン材を構成する焼結合金に添加され
    る硫黄の含有量を重量%で0.1〜0.7%の範囲に設
    定したことを特徴とする請求項4記載の圧縮機。
  6. 【請求項6】 ベーン材を構成する焼結合金に添加され
    る窒素の含有量を重量%で0.1〜0.7%の範囲に設
    定したことを特徴とする請求項4記載の圧縮機。
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