JPH0544112A - 亀裂含有炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

亀裂含有炭素繊維およびその製造方法

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JPH0544112A
JPH0544112A JP3216284A JP21628491A JPH0544112A JP H0544112 A JPH0544112 A JP H0544112A JP 3216284 A JP3216284 A JP 3216284A JP 21628491 A JP21628491 A JP 21628491A JP H0544112 A JPH0544112 A JP H0544112A
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carbon fiber
guest
fiber
crack
intercalation compound
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JP3216284A
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Inventor
Takashi Osaki
孝 大崎
Masanori Niiyama
正徳 新山
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Nikkiso Co Ltd
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Nikkiso Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 発達した黒鉛結晶を持ち、しかも縮合環状の
黒鉛網面の端面の露出度合が大きく、層間化合物のホス
トとして用いた場合、短時間でゲスト材料を黒鉛結晶面
間に挿入させることができる亀裂含有炭素繊維およびそ
の製造方法を提供すること。 【構成】 本発明の亀裂含有炭素繊維は、縮合環状の黒
鉛網面が繊維軸に沿って配列されるとともに、繊維軸に
沿って内部から外周部に至る亀裂を有する炭素繊維であ
る。また、本発明の亀裂含有炭素繊維の製造方法は、縮
合環状の黒鉛網面が繊維軸に沿って配列されてなる炭素
繊維をホストにして得られた層間化合物から、ゲスト原
子またはゲスト分子を急激に取り出し、その際の急激な
変化により炭素繊維を内部から破裂させる製造方法であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は亀裂含有炭素繊維および
その製造方法に関し、さらに詳しくは、層間化合物のホ
スト材料として有用な亀裂含有炭素繊維およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする技術的課
題】近年、黒鉛層間化合物(Graphite Int
ercalation Compounds、以下GI
Cと略称することがある。)が導電性等の面から注目さ
れている。しかしながら、実用化されているのは、リチ
ウム一次電池や固体潤滑剤として使用されるフッ化黒鉛
である。
【0003】GICが実用化されにくい理由として、一
つはGICが化学的に安定性が不十分なこと、もう一つ
はGICを形成する反応が煩雑で長時間を要することが
挙げられる。GICは、ホストである炭素材料の縮合環
状の炭素面間にゲストとなる原子や分子が挿入されてで
きる。したがって、GIC用の炭素材料としては、少な
くとも縮合環状の炭素面の良く発達している炭素材料が
適している。
【0004】高配向熱分解黒鉛(HOPG)、天然黒
鉛、キッシュ黒鉛、気相成長炭素等がホストとして選ば
れ、カーボンブラックやPAN系炭素繊維等がホストと
して選ばれない理由はここにある。しかしながら、縮合
環状の炭素面が発達しているだけではホストの条件とし
て十分ではない。すなわち、縮合環状の炭素面が発達す
ると、縮合環状の炭素面の間隙(doo2)は狭くなり、
縮合環状の炭素面の重なりの厚さ(結晶子の厚さ、L
c )は大きくなり、縮合環状の炭素面の重なりの大きさ
(結晶子の大きさ、La )も大きくなるので、ゲストで
ある原子や分子が結晶内部にまで入りにくくなり、反応
に長時間を要するようになる。
【0005】特に、この傾向は気相成長炭素繊維に見ら
れる。これは、気相成長炭素繊維は、縮合環状の炭素面
が年輪構造になっているので、直径1μm前後、長さ1
0μm前後と微細であるにもかかわらず、ゲストの原子
や分子が繊維の両端面から入り込むのに時間がかかるか
らだと考えられる。GICのホストに適した炭素材料と
して、成長軸に対し直角に縮合環状の炭素面が発達した
リボン状の気相成長炭素繊維(Nature、第345
巻、6月28日号、1990年、791頁)を挙げるこ
とができる。
【0006】しかし、このリボン状炭素繊維は縮合環状
の炭素面の層がまとまって折り畳んだ状態を呈している
ので、網面の端面のうち露出しているところは一部にす
ぎない。さらに、その特異な構造からして機械的性質や
導電性において問題があるとは言えない。
【0007】また、直径が5μm以上の太い黒鉛化気相
成長炭素繊維にインターカレーションを行うと、繊維直
径が数倍から十数倍に膨れることにより黒鉛化気相成長
炭素繊維が破壊され、これを更に加熱すると、該繊維は
更に膨れてついにはバラバラにくだけるという報告があ
る(Carbon、第28巻、第539頁、1990
年)。しかし、この場合、繊維の中央部に近いところ
(直径の約1/3)は殆ど破壊せず、外側のみが極端に
破壊した状態になってしまう。したがって、このような
状態のものを更にGIC用のホスト材料として到底使用
することができないし、また機械的強度の面から考えて
も好ましくない。
【0008】本発明は前記事情に基づいてなされたもの
である。すなわち、本発明の目的は、GIC用のホスト
としての反応速度を速めるために、発達した縮合環状の
炭素面を持ち、しかも縮合環状の炭素面の端面の露出度
合が大きいという独特の構造を有し、しかも繊維が機械
的強度を保持しているので、その後の加工処理を行なう
こともできる亀裂含有炭素繊維およびその製造方法を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、前記課題を解
決するための請求項1に記載の発明は、繊維軸に沿って
内部から外周部に到る亀裂を有し、その最大径が10μ
m以下であり、長さが200μm以下であることを特徴
とする亀裂含有炭素繊維であり、
【0010】請求項2に記載の発明は、前記炭素繊維の
黒鉛網面間距離(d002 )が3.52Å以下であり、黒
鉛結晶子の厚さ(Lc )が30Åである前記請求項1に
記載の亀裂含有炭素繊維であり、
【0011】請求項3に記載の発明は、前記炭素繊維の
黒鉛網面間距離(d002 )が3.35〜3.45Åであ
り、黒鉛結晶子の厚さ(Lc)が30〜900Åである
前記請求項1に記載の亀裂含有炭素繊維であり、
【0012】請求項4に記載の発明は、縮合環状の炭素
面が繊維軸に沿って配列されてなる直径3μm以下の炭
素繊維をホストにして得られた層間化合物からゲスト分
子またはゲスト原子を急激に取り出すことにより前記層
間化合物を内部から破裂させることを特徴とする請求項
1に記載の亀裂含有炭素繊維の製造方法である。
【0013】以下、本発明の亀裂含有炭素繊維およびそ
の製造方法について更に詳述する。本発明の亀裂含有炭
素繊維の一例を模式的に図1に示す。図1に示すよう
に、は、本発明の亀裂含有炭素繊維は、縮合環状の黒鉛
網面2が繊維軸Aに沿って配列され、好ましくは年輪状
に配列されると共に、繊維軸Aに沿って内部から外周部
に至る亀裂1を有している。この亀裂1においては、縮
合環状の黒鉛網面2は切断されて外部に露出している。
本発明の亀裂含有炭素繊維は繊維方向の両端のみなら
ず、亀裂1においても縮合環状の黒鉛網面の端面が露出
しているので、亀裂を有さない同種の炭素繊維に比べて
縮合環状の黒鉛網面の端面の露出度合いがはるかに大き
い。したがって、この亀裂含有炭素繊維をホストとして
用いると、短時間でゲスト材料を縮合環状の黒鉛網面間
に挿入させることができる。得られた層間化合物は、縮
合環状の黒鉛網面が繊維軸方向に沿っているので、機械
的強度も大きく、後加工しても折れや崩れを起こさな
い。
【0014】本発明の亀裂含有炭素繊維は、縮合環状の
黒鉛網面の発達度合いの点から、黒鉛網面間距離(d
oo2 )が3.52Å以下、好ましくは3.35〜3.4
5Å、更に好ましくは3.35〜3.40Åであり、ま
た縮合環状の黒鉛網面が重なった厚さすなわち黒鉛結晶
子の厚さ(Lc )は30Å以上であり、好ましくは30
〜900Å、更に好ましくは50〜500Åである。d
oo2 が大きすぎたり、Lc が小さすぎたりする場合は、
層間化合物を形成することができなくなることがある。
【0015】また、本発明の亀裂含有炭素繊維は、その
比表面積がBET値で2〜50m2/gであることが好
ましく、特に3〜20m2 /gであることが好ましい。
この比表面積が2m2 /g未満であると、GIC化の反
応速度が速くならないことがあり、また50m2 /gを
超えると、機械的強度が低下するので、後加工時に繊維
が破壊されてしまうことがある。
【0016】前記亀裂含有炭素繊維は、本発明の製造方
法によって製造することができる。すなわち、まず原料
としての炭素繊維から仮の層間化合物を製造する。炭素
繊維としては縮合環状の黒鉛網面が繊維軸に沿って配列
している限り特に制限がなく、例えば縮合環状の黒鉛網
面が繊維軸に沿って配列しているピッチ系炭素繊維、縮
合環状の黒鉛網面が繊維軸に沿って配列しているPAN
系炭素繊維、縮合環状の黒鉛網面が繊維軸に沿って配列
しているセルロース系炭素繊維、気相成長炭素繊維、気
相成長炭素繊維を黒鉛化処理してなる黒鉛繊維等を挙げ
ることができる。これらの中でも気相成長炭素繊維およ
び黒鉛繊維が好ましく、特に黒鉛繊維が好ましい。この
気相成長炭素繊維および黒鉛繊維は、縮合環状の黒鉛網
面が繊維軸を中心にして年輪状に高度の発達した構造を
有するからである。
【0017】ここで、気相成長炭素繊維は、気相成長法
により製造することができる。気相成長法により気相成
長炭素繊維を製造する方法としては、いわゆる基板法と
流動気相法とがある。基板法は、基板に触媒金属例えば
遷移金属もしくは遷移金属化合物を担持させ、高温度に
加熱しながら、その基板上に炭素源ガスである炭化水素
ガスを流通させることにより、基板表面に炭素繊維を生
成させる方法であり、流動気相法は、基板を使用せず、
触媒金属になり得る金属化合物と炭素源である炭素化合
物とを気化して高温の反応管中に流通させることによ
り、空間中に炭素繊維を生成させる方法である。
【0018】具体的には、特開昭52−107320
号、特開昭57−117622号、特開昭58−156
512号、特開昭58−180615号、特開昭60−
185818号、特開昭60−224815号、特開昭
60−231821号、特開昭61−132630号、
特開昭61−132600号、特開昭61−13266
3号、特開昭61−225319号、特開昭61−22
5322号、特開昭61−225325号、特開昭61
−225327号、特開昭61−225328号、特開
昭61−2275425号、特開昭61−282427
号の各公報に記載の方法により製造される気相成長炭素
繊維をこの発明の方法における原料として使用すること
ができる。
【0019】黒鉛繊維は、前記気相成長炭素繊維を不活
性雰囲気中で2,000℃以上で加熱処理することによ
り得ることができる。いずれの炭素繊維を原料にするに
せよ、上記原料としての炭素繊維は、d002が3.52
Å以下、好ましくは、3.35〜3.45Å、Lc が3
0Å以上であり、好ましくは300Å以上であり、更に
好ましくは1,000Å以上であるのが望ましい。d
002 が大きすぎたり、Lc が小さすぎたりする場合は、
ゲスト原子、ゲスト分子を急激に取り出しても炭素繊維
が破裂しないことがある。
【0020】また、原料としての炭素繊維は、その平均
アスペクト比が1〜200、好ましくは5〜50である
こと、および平均直径が0.01〜3μm、更に好適に
は0.05〜1.5μmであることが好ましい。この平
均アスペクト比が1未満であると、繊維の破壊が激し
く、微細化することがあり、また200を超えると、仮
の層間化合物化の際に一部にゲスト原子・分子が挿入さ
れないことがある。
【0021】また、平均直径は細い程良いが、0.01
μmよりも細い繊維を得ることは困難であり、平均直径
が3μmを超えると、繊維の外周部が剥離し、微細化す
ることがある。本発明の製造方法では、前記原料として
の炭素繊維から仮の層間化合物を調製する。それには、
ゲスト化合物あるいはゲスト金属の蒸気と前記炭素繊維
とを接触させる方法、ゲスト化合物あるいはゲスト金属
と炭素繊維との混合物を加熱する方法、第三物質の共存
下でゲストと炭素繊維とを反応させる方法など、公知の
方法を利用すればよい。
【0022】これらの方法の中でも、本発明に好ましい
具体的な方法としては、蒸気圧数torr〜数気圧、好
ましくは10torr〜1気圧のゲスト化合物雰囲気に
炭素繊維を数分〜数日間、好ましくは1時間〜1日置く
方法を挙げることができ、この様な蒸気圧雰囲気は加熱
により得られる。また、その際、金属原子をホストとす
る場合は、あらかじめ真空にしておくか、He、Ar等
の不活性ガスと共存させる。また、ハロゲン化合物をホ
ストとする場合は、塩素等のハロゲンガスと共存させる
と仮の層間化合物を生成させる速度が速まり好ましい。
【0023】前記の仮の層間化合物の製造に用いるゲス
トには、たとえばLi、K、Cs等のアルカリ金属、C
a等のアルカリ土類金属、Br2 、Cl2 等のハロゲ
ン、H2 SO4 、HNO3 等の無機酸、FeCl3 、F
eBr3 、NiCl2 、CuCl2 等のハロゲン化金属
などがある。これらの中でも、取り扱い易さおよび炭素
繊維の破裂の点では、ハロゲン化金属分子が好ましい
(アルカリ金属、アルカリ土類金属の層間化合物は大気
中に取り出すと発火する。)。
【0024】得られる仮の層間化合物としては、ゲスト
原子あるいはゲスト分子が縮合環状の黒鉛網面の各層間
に入り込んだ第一ステージ(stage)、1層おきに
入り込んだ第2ステージ、2層おきに入り込んだ第3ス
テージ、・・・・・n層おきに入り込んだ第n+1ステ
ージの層間化合物がある。本発明の方法としては、層間
に侵入したゲスト分子またはゲスト原子を急速に炭素繊
維外に放出させることにより、層間化合物を破裂させ、
これによって亀裂含有炭素繊維を形成するのであるか
ら、亀裂を効果的に発生させるために第1ステージおよ
び第2ステージの層間化合物が好ましい。
【0025】上述したところの、本願発明の好ましい具
体的な製造方法において、加熱温度を250〜600℃
にし、加熱時間を0.5〜48時間にすると、前記第1
ステージないし第2ステージの層間化合物を形成するこ
とができる。もっとも、加熱温度および加熱時間はゲス
ト金属あるいはゲスト化合物の種類によってその最適値
があるので、ゲスト金属あるいはゲスト化合物の種類に
応じて適宜に決定される。
【0026】本発明の方法においては、前述のようにし
て形成した仮の層間化合物からゲスト化合物あるいはゲ
スト金属を急激に取り出し、炭素繊維を破裂させると、
本発明の亀裂含有炭素繊維を得ることができる。
【0027】仮の層間化合物からゲスト分子またはゲス
ト原子を取り出す方法としては、熱処理法と液体接触法
とがある。熱処理法は、ゲスト原子、ゲスト分子に熱エ
ネルギーを与えてこれらゲストの運動を活発にし、層間
化合物から急激に拡散させる方法である。熱処理法にお
ける熱エネルギーの与え方としては、特に制約はない
が、通常の加熱手段、レーザー法、プラズマ法等があ
る。加熱温度はゲスト化合物あるいはゲスト金属の種類
に応じて一律に決定することはできないが、通常、30
0〜1,000℃、好ましくは350〜800℃であ
る。
【0028】液体接触法は、層間化合物を溶媒や溶液中
に浸すか、あるいは層間化合物に溶媒や溶液をスプレー
して層間化合物中のゲスト原子、ゲスト分子を溶媒、溶
液中に取り込み、炭素繊維の外部に急激に取り出す方法
である。液体接触法の場合、液体分子が一旦層間に侵入
し、ゲスト分子あるいはゲスト原子と結合して繊維を破
裂させた後、ゲスト分子あるいはゲスト原子と共に繊維
外に流出してきている可能性もあるが、その反応機構は
明確ではない。しかし、その場合においても、何らかの
状態でゲスト分子あるいはゲスト原子は大量の液体によ
って取り出されることになる。この液体接触法に用いる
溶媒や溶液の種類はゲストのそれに応じて適宜に決定さ
れ、たとえば水、アルコール類、液化アンモニアなどゲ
スト原子やゲスト化合物が一挙に溶解する液体が好まし
い。特に水および水溶液は加熱や物理的エネルギーの付
加が容易で、工業的見地から最も好ましい液体である。
【0029】なお、前記熱処理法や液体接触法を実施す
る際、化学反応を伴うようにすると、炭素繊維の破裂効
果は一層顕著となる。
【0030】たとえば、FeCl3 をゲストに選択した
場合、O2 やH2 の雰囲気下で層間化合物を加熱する
と、炭素繊維は容易に破裂する。また、液体接触法では
溶液や溶媒に超音波や熱等の物理的エネルギーを与えた
り、強酸、強塩基、その他の反応性化学薬品を添加する
ことにより、炭素繊維の破裂を促進することができる。
ただし、層間化合物を真空下におき、温度が充分に高く
ない場合は、単にゲスト分子、原子が脱離するだけで、
炭素繊維の破裂は起こらないから注意すべきである。水
の様な溶液に仮の層間化合物を投入した場合、その反応
は瞬時(数秒以内)に完了する程急激である。
【0031】加熱による場合は、例えばホスト化合物が
FeCl3 の時、Feの粒塊となって亀裂を生じるの
で、反応プロセスは異なるが、いずれにおいても急激な
反応を起こさせるのが好ましい。なお、破裂させた炭素
繊維中にゲストの分子や原子、これらの反応物が存在す
ると、この炭素繊維を層間化合物用ホスト材料として使
用する際に系全体が汚染されるので、ゲストは数十pp
m以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは
5ppm以下にまで洗浄除去することが望ましい。
【0032】
【実施例】次に実施例と比較例とに基いて本発明をさら
に具体的に説明する。
【0033】(実施例1)内径20mmのパイレックス
ガラス管内に約1gの気相成長炭素繊維[日機装(株)
製、グラスカー(登録商標)GWH−1A、平均直径
1.0μm、平均アスペクト比10、d002 =3.37
Å、Lc >1000Å、BET値:1.1m 2 /g]と
約6gの無水塩化第2鉄粉とを互いに混ざらないように
仕込み、真空に排気後、管内を約400torrの塩素
雰囲気にして熔封した。
【0034】このガラス管を電気炉内で300℃、24
時間で熱処理したのち、炭素繊維を外部に取り出した。
その繊維重量は約4.3gになっており、X線回折から
oo 2 は9.55Åを示し、第1ステージの塩化第2鉄
層間化合物になっていた。
【0035】この層間化合物を直ちに300ccの水が
入ったビーカーに投入し、超音波を与えながら約5分間
処理することにより亀裂含有炭素繊維を得た。その後、
亀裂含有炭素繊維を取り出し、pH2の水で同じ処理を
行ない、さらに洗浄のため、この亀裂含有炭素繊維を水
で同じ処理を10回行なった。
【0036】得られた亀裂含有炭素繊維は、繊維軸に沿
って内部から外周部にいたる亀裂が形成されていた(な
お、縮合環状の黒鉛網面は繊維軸に沿って配列されてい
る)。この亀裂含有炭素繊維の比表面積をBET法によ
り測定したところ、5.8m2 /gになっていた。ま
た、doo2 は3.37Åと変化はなかったが、Lc は2
70Åになっていた。また残留鉄分は0.1ppm以下
であった。なお、図2としてこの実施例で使用した気相
成長炭素繊維の電子顕微鏡写真を示し、図3としてこの
実施例で得られた第1ステージの塩化第2鉄層間化合物
の電子顕微鏡写真を示し、図4としてこの実施例で得ら
れた亀裂含有炭素繊維の電子顕微鏡写真を示した。
【0037】(実施例2)実施例1と同じ方法で製造し
た塩化第2鉄層間化合物を、今度は水素の気流中で45
0℃、2時間熱処理したところ、炭素繊維の殆どは繊維
軸に沿って内部から外周部に至る亀裂が生じ(なお、縮
合環状の黒鉛網面は繊維軸に沿って配列されている)、
炭素繊維の内外部に直径0.1〜0.5μmの鉄の微粒
子が析出していた。
【0038】層間化合物である鉄含有の炭素繊維を1N
HCl水溶液中に投入し、鉄の微粒子を溶解したのち、
さらに水で洗浄して亀裂含有炭素繊維を得た。この亀裂
含有炭素繊維は、BET法による比表面積が6.3m2
/g、doozが3.37Å、Lc が210Åであった。
残留鉄分は0.15ppmであった。
【0039】(実施例3)実施例1における気相成長炭
素繊維に替えてdoo2 が3.40Å、Lc が500Åの
気相成長炭素繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様
にして層間化合物を製造し、それを水中に投入したとこ
ろ、亀裂が部分的であったり、狭かったりするもののほ
とんどの炭素繊維に繊維軸に沿って内部から外周部に至
る亀裂が生じた(なお、縮合環状の黒鉛網面は繊維軸に
沿って配列されている)。
【0040】(実施例4)実施例1における気相成長炭
素繊維に替えてdoo2 が3.47Å、Lc が100Åの
気相成長炭素繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様
にして層間化合物を製造し、それを水中に投入したとこ
ろ、一部の炭素繊維に部分的に繊維軸に沿って内部から
外周部に至る亀裂が生じているのが観察された(なお、
縮合環状の黒鉛網面は繊維軸に沿って配列されてい
る)。
【0041】(比較例1)実施例1における気相成長炭
素繊維に替えてPAN系炭素繊維[東レ(株)製、T−
300]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして層
間化合物を製造し、それを水中に投入したところ、亀裂
の生じた炭素繊維は得られなかった。
【0042】(比較例2)実施例1における気相成長炭
素繊維に替えてPAN系高弾性炭素繊維[東レ(株)
製、M−40]を用いたこと以外は、実施例1と同様に
して層間化合物を製造し、それを水中に投入したとこ
ろ、亀裂の生じた炭素繊維は得られなかった。
【0043】(実施例5)実施例1で得られた亀裂含有
炭素繊維0.1gを良く乾燥してから、次のようにして
350℃で金属カリウムとの層間化合物を製造した。す
なわち、内径10mmのパイレックス管内に亀裂含有炭
素繊維0.1gと金属カリウム片0.1gとを互いに混
ざらないように仕込み、真空排気後1×10-5torr
の真空にして熔封した。このガラス管を350℃の電気
炉に入れ、30分間隔で、繊維の状態を観察した。上記
亀裂含有炭素繊維は、約30分間で全部の繊維が黄褐色
に変色したが、実施例1における原料である気相成長炭
素繊維は全部の繊維が黄褐色に変色するのに1日を要し
た。
【0044】(実施例6)実施例2で得られた亀裂含有
炭素繊維1gを良く乾燥してから、実施例5の方法で3
50℃で金属カリウムとの層間化合物を製造した。上記
亀裂含有炭素繊維は、約30分間で全部の繊維が黄褐色
に変色したが、実施例1の原料炭素繊維は全部の繊維が
黄褐色に変色するのに1日を要した。
【0045】
【発明の効果】本発明の亀裂含有炭素繊維は、発達した
黒鉛結晶を持ち、しかも縮合環状の黒鉛網面の端面の露
出度合の大きい新規な炭素繊維である。この亀裂含有炭
素繊維を層間化合物のホストとして用いた場合、短時間
でゲスト材料を挿入させることができ、得られた層間化
合物は原料である炭素繊維における結晶状態が良く保持
されているので機械的強度の低下が少なく、後加工して
も折れや崩れを起こさない。
【0046】また、本発明の製造方法は上記の亀裂含有
炭素繊維を効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の亀裂含有炭素繊維を模式的に示
す斜視図である。
【図2】図2は、実施例1で使用した気相成長炭素繊維
を示す図面代用写真としての電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例1で得られた第1ステージの塩
化第2鉄層間化合物を示す図面代用写真としての電子顕
微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例1で得られた亀裂含有炭素繊維
を示す図面代用写真としての電子顕微鏡写真である。
【符合の説明】
1 亀裂 2 縮合環状の黒鉛網面 A 繊維軸
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成3年9月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正内容】
【0010】請求項2に記載の発明は、前記炭素繊維の
黒鉛網面間距離(doo2 )が3.52Å以下であり、黒
鉛結晶子の厚さ(Lc )が30Å以上である前記請求項
1に記載の亀裂含有炭素繊維であり、
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06M 11/84 // D06M 101:40

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維軸に沿って内部から外周部に到る亀
    裂を有し、その最大径が10μm以下であり、長さが2
    00μm以下であることを特徴とする亀裂含有炭素繊
    維。
  2. 【請求項2】 前記炭素繊維の黒鉛網面間距離(d
    002 )が3.52Å以下であり、黒鉛結晶子の厚さ(L
    c )が30Å以上である前記請求項1に記載の亀裂含有
    炭素繊維。
  3. 【請求項3】 前記炭素繊維の黒鉛網面間距離(d
    002 )が3.35〜3.45Åであり、黒鉛結晶子の厚
    さ(Lc )が30〜900Åである前記請求項1に記載
    の亀裂含有炭素繊維。
  4. 【請求項4】 縮合環状の炭素面が繊維軸に沿って配列
    されてなる直径3μm以下の炭素繊維をホストにして得
    られた層間化合物からゲスト分子またはゲスト原子を急
    激に取り出すことにより前記層間化合物を内部から破裂
    させることを特徴とする請求項1に記載の亀裂含有炭素
    繊維の製造方法。
JP3216284A 1991-08-01 1991-08-01 亀裂含有炭素繊維およびその製造方法 Pending JPH0544112A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000058536A1 (en) * 1999-03-25 2000-10-05 Showa Denko K. K. Carbon fiber, method for producing the same and electrode for cell

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