JPH0531896Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、水耕栽培において、培養液の液面に
浮かべた定植パネルと組み合わせて使用する水耕
栽培用栽培物保持器に関するものである。

〔従来の技術〕

植物を栽培する方法の一つに、土の代わりに培
養液を用いて、植物に必要な成分を補給する水耕
栽培がある。

上記水耕栽培において、作物の種子を育苗し、
その苗を保持するために、栽培物保持器が使用さ
れている。

従来の栽培物保持器は、作物に十分な養分が供
給されるように、空隙率の大きいウレタンチツプ
やロツクウールが使用されている。このような栽
培物保持器に、適当数の種子が播種される。この
播種は、種子が播種位置で安定して保持されるよ
うに、ウレタンチツプやロツクウール中に一個ず
つ押し込んでいく操作によつて行わる。このよう
な栽培物保持器で、ある程度作物が生長すると、
栽培物保持器を個々の作物単位に分割し、培養液
の液面に浮かべた定植パネルに移植して、商品と
して出荷できるまで成育される。この定植パネル
には、出荷段階での生長作物の横方向の広がりを
見込んで、例えば隣合う作物同志が相互に触れ合
わない間隔で貫通穴が設けられており、これら貫
通穴に、上記の分割された栽培物保持器をそれぞ
れ押し込み定置させて移植される。移植後、作物
が生長すると、定植パネルの穴に押し込まれてい
るウレタンチツプ等からなる栽培物保持器と共に
作物を引き出して収穫され、さらに、いくつかの
束にまとめて包装され出荷される。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、上述のような従来の栽培物保持
器では、播種された種子を安定に保持するため
に、ウレタンチツプやロツクウール中に種子を押
し込む操作を必要として播種作業が煩雑になる。
また、作物の生長がある程度進んだ段階で、栽培
物保持器を作物単位毎に個々に分割して定植パネ
ルへ移植する際には、作物を傷めないように充分
に注意しながら行うことが必要である。また、生
長した作物を収穫する場合には、定植パネルの穴
に押し込まれているウレタンチツプ等からなる栽
培物保持器を引き出すために、例えば作物の茎の
部分を直接手で把持し、力を加えて引き出す作業
が必要となり、このような作業中にも、作物を傷
つけないようにとの多大の注意を払いながら行う
ことが必要となる。

このように、従来の栽培物保持器では、播種作
業が煩雑であると共に、移植から出荷に至るまで
の作業を進めるにあたつても、特に、作物を傷つ
けないようにとの多大の注意を払いながら行うこ
とが必要であるために作業が煩雑となり、この結
果、多くの手間と時間を要するという問題を生じ
ている。

本考案は、上述の問題点を解決するためになさ
れたものであつて、作物の播種から生長後に収穫
して出荷するまでの作業を容易になし得る水耕栽
培用栽培物保持器を提供することを目的とするも
のである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係る水耕栽培用栽培物保持器は、上記
課題を解決するために、培養液の液面に浮かべら
れる定植パネルに形成された貫通穴に着脱自在に
挿入されると共に作物の種子を保持して発芽及び
成長させるための断面Ｖ字形の発泡樹脂より成る
保持部を有し、この保持部の底部に、作物の種子
が通過しない大きさの切欠部が形成される一方、
上記保持部の上縁側に、この保持部を定植パネル
の貫通穴に上方から挿入するときに定植パネルの
上面に上方から当接して係止されるつばが側方に
広がる形状で一体的に設けられ、かつ、このつば
における上記保持部上縁側への連なり部には、こ
の部位を上方に突出させて厚肉状とした補強部が
設けられていることを特徴としている。

〔作用〕 上記構成の水耕栽培用栽培物保持器において
は、作物の種子を断面Ｖ字形の保持部に上方から
投入することにより、種子は保持部の底部に安定
して配されるので、播種作業が容易となる。

また、定植パネルへの組付けは、保持部の上縁
側に設けられているつばが定植パネルの上面に当
接して係止される位置まで、定植パネルの貫通穴
に保持部を上方から挿入するというきわめて簡単
な作業で行うことができる。このような装着状態
において、保持部の底部に形成された切欠部よ
り、培養液の養分が供給され、発芽後の茎は、保
持器のＶ字形の側壁に支持されながら生長する。
一方、根の部分は、切欠部を通過して培養液に入
り成育を続けることとなる。

作物の生長後には、栽培物保持器は定植パネル
上につばを上方から当接されて置いている状態で
あるので、つばを持つて保持部を引き上げ、さら
に、保持部の外周面を把持して、生長した作物と
共にこの栽培物保持器を定植パネルの貫通穴から
引き上げることで、作物の収穫を行うことができ
る。

なお、上記にようにつばを持つて引き上げる際
には、このつばにおける保持部上縁側との連なり
位置に応力集中が生じるものとなるが、この部位
は厚肉状の補強部により補強されているので、栽
培物保持器自体に亀裂等を生じさせないようにと
の過大な注意を必要とせずに、引き上げ作業を行
うことができる。

さらに、上記のような引き上げ作業の初期の段
階では、つばが定植パネルの上面に密着してお
り、このため、まず、上記の密着面に隙間を生じ
させて、つばの下に手を差し込むことことが必要
となる。このとき、前記の補強部が上方への突出
形状となつていることから、この部位を指先で掴
んで引き上げ、これによつて、つばと定植パネル
との間に隙間を生じさせることができる。したが
つて、上記のような隙間を生じさせるために、例
えば、作物の茎の部分を持つて引き上げる作業
や、尖頭形状の道具を別に準備し、これをつばと
定植パネルとの間に差し込む等の作業を必要とし
ない。この結果、作物には手を触れることなく、
上記のような収穫作業を容易に行うことができ
る。

なお、上記のように栽培物保持器と共に作物を
収穫した後、これらを一体的に包装して出荷する
ようにすることで、作物に極力傷をつけることな
く、播種から出荷までに必要な作業の全体を容易
なものとすることができる。

〔実施例 １〕 本考案の一実施例を第１図、第２図及び第９図
に基づいて説明すれば、以下の通りである。

第１図および第２図に示すように、本栽培物保
持器１は、約45度の角度を成した断面がほぼＶ字
形の保持部１ｂを有するほぼ三角柱形の容器状に
形成されている。

そして、この保持部１ｂの底部には、切欠部１
ａが、第２図に示すように、直線状に長手方向の
右端１ｇから左端１ｆまでの全域にわたつて形成
されている。なお、切欠部１ａの幅は、種子２が
落下しない程度の大きさに設定されている。ま
た、保持部１ｂの上部には、第９図ａに示すよう
に、栽培物保持器１が培養液９の液面に浮かべた
定植パネル８の穴に配された際、この穴から脱落
しないように、平板状のつば１ｃが側方に広がる
形状で一体的に設けられている。

上記の定植パネル８は、図示しない水槽内に満
たした培養液９上に浮かべて使用するもので、こ
の定植パネル８には、保持部１ｂが着脱自在に挿
入される厚み方向に貫通する穴が複数形成されて
いる。これらの貫通穴に保持部１ｂを上方から挿
入する際、つば１ｃが定植パネル８の上面に上方
から当接して係止され、この状態で栽培物保持器
１が定植パネル８に支持される。なお、上記のつ
ば１ｃを補強するために、このつば１ｃにおける
上記保持部１ｂの上縁側への連なり部には、この
部位を上方に突出させて厚肉状とした補強部が設
けられている。

上記の構成を有する栽培物保持器１は、従来使
用されていたウレタンチツプの充填物に代わり、
発泡スチロールの一体成形にて形成されている。

上記の構成において、第９図ａおよび第９図ｂ
に示すように、作物の種子２を栽培物保持器１に
投入したとき、栽培物保持器１の断面が、Ｖ字形
を成しているため、種子２が栽培物保持器１の底
部に安定して配される。そして、播種された栽培
物保持器１は、定植パネル８に組み付けられて、
培養液９上に浮かべられる。なお、種子２を栽培
物保持器１へ投入する場合には、ある一定の数量
に揃えておくとよい。すなわち、栽培物保持器１
に出荷単位の数量の種子２を入れて栽培すると、
収穫する場合に、作物を束ねる必要がなく、栽培
物保持器１を作物に付けたまま包装して出荷する
ことができるためである。

栽培物保持器１に収容された種子２には、栽培
物保持器１の切欠部１ａより、培養液９の養分が
供給される。そして、発芽後の作物の茎は、栽培
物保持器１の側壁１ｄに支持されながら生長する
一方、根の部分は、切欠部１ａを通過して培養液
９に入る。これにより、従来のウレタンチツプの
充填物では、根付きが悪く栽培が困難とされてい
たほうれん草等の栽培が可能になる。

作物の生長後には、栽培物保持器１のつば１ｃ
を持つて保持部１ｂを引き上げ、さらに、保持部
１ｂの外周面を把持して、生長した作物と共にこ
の栽培物保持器１を定植パネル８の貫通穴から引
き上げることで、作物の収穫が行われる。その
後、作物は栽培物保持器１と共に包装され、出荷
される。

〔実施例 ２〕 本考案の他の実施例を第３図および第４図に基
づいて以下に説明する。

本実施例に係る栽培物保持器１１は、作物の種
子１２を入れて保持するために、約45度の角度を
なした断面Ｖ字形の保持部１１ｂを有している。
この保持部１１ｂには、等間隔に空間を区切るよ
うに補強壁１１ｅが設けられ、これによつて複数
の容器部１１ｆ…が形成されている。各容器部１
１ｆにおける保持部１１ｂの底部には、作物の種
子１２が落ちない大きさの小孔状の切欠部１１ａ
が開口されている。また、保持部１１ｂの上部に
は、つば１１ｃが設けられている。

本栽培物保持器１１では、上記のように、保持
部１１ｂおよび補強壁１１ｅにより容器部１１ｆ
が形成されている構造であるから、高い強度を備
えている。その他の構成および使用方法等につい
ては、実施例１と同様である。

〔実施例 ３〕 本考案の他の実施例を第５図および第６図に基
づいて以下に説明する。

本実施例に係る栽培物保持器４は、作物の種子
３を入れて保持するために、約45度の角度で断面
Ｖ字形をなす保持部４ｂを有している。保持部４
ｂには、等間隔に空間を区切るように、下方が内
側方向へ傾斜した補強壁４ｅが設けられている。
そして、これら保持部４ｂおよび補強壁４ｅによ
り、ほぼ四角錐形の空間を有する複数の容器部４
ｆ…が形成されている。各容器部４ｆにおける保
持部４ｂの底部には、作物の種子３が落ちない大
きさの小孔状の切欠部４ａが開口されている。ま
た、保持部４ｂの上部には、つば４ｃが設けられ
ている。

上記のように、本栽培物保持器４では、各容器
部４ｆにそれぞれ作物の種子３を配することによ
り、種子３が均一に分配されるようになつてい
る。加えて、保持部４ｂ及び補強壁４ｅにより容
器部４ｆが形成されている構造により、栽培物保
持器４の強度が向上されている。その他の構成お
よび使用方法等については、実施例１と同様であ
る。

〔実施例 ４〕 本考案の他の実施例を第７図に基づいて以下に
説明する。

本実施例に係る栽培物保持器５は、作物の種子
１０を入れて保持するために、断面が約45度のＶ
字形をなす円錐容器状の保持部５ｂを有してお
り、この保持部５ｂを主部とする形状となつてい
る。保持部５ｂの底部には、作物の種子１０が落
ちない大きさの小孔状の切欠部５ａが形成されて
いる。また、保持部５ｂの上部には、平板状のつ
ば５ｃが設けられている。その他の構成および使
用方法等については、実施例１と同様である。

〔実施例 ５〕 本考案の他の実施例を第８図に基づいて以下に
説明する。

本実施例に係る栽培物保持器６は、ほぼ円筒状
をなし、底部には、種子７を保持するための保持
部６ｂが数個形成されている。上記の保持部６ｂ
の断面は、約45度の角度のＶ字形をなしている。
保持部６ｂの底部には、切欠部６ｂが種子７が落
ちない大きさの小孔状に形成されている。また、
栽培物保持器６は、上部に、平板状のつば６ｃを
有している。その他の構成および使用方法等につ
いては、実施例１と同様である。

〔考案の効果〕

本考案の水耕栽培用栽培物保持器は、以上のよ
うに、培養液の液面に浮かべられる定植パネルに
形成された貫通穴に着脱自在に挿入されると共に
作物の種子を保持して発芽及び成長させるための
断面Ｖ字形の発泡樹脂より成る保持部を有し、こ
の保持部の底部に、作物の種子が通過しない大き
さの切欠部が形成される一方、上記保持部の上縁
側に、この保持部を定植パネルの貫通穴に上方か
ら挿入するときに定植パネルの上面に上方から当
接して係止されるつばが側方に広がる形状で一体
的に設けられ、かつ、このつばにおける上記保持
部上縁側への連なり部には、この部位を上方に突
出させて厚肉状とした補強部が設けられている構
成である。

これにより、作物の種子を上方から保持部内に
投入するだけで、種子は保持部の底部に安定して
配され、播種作業を容易に行うことができる。

また、定植パネルへは、つばが定植パネルの上
面に当接して係止される位置まで、定植パネルの
貫通穴に上方から挿入するという簡単な作業で組
付けることができる。

一方、作物の生長後、作物と共に保持部を定植
パネルの貫通穴から上記のつばを持つて引き上げ
る際、保持部上縁側との連なり位置における応力
集中箇所が厚肉状の補強部により補強されている
ので、栽培物保持器自体に亀裂等を生じさせない
ようにとの過大な注意を必要とせずに、作業する
ことができる。

さらに、つばが定植パネルの上面に密着してい
る初期の状態では、上方への突出形状の上記補強
部を指先で掴んで引き上げ、これによつて、つば
と定植パネルとの間に隙間を生じさせて、つばの
下側に手を差し込むことができる。これにより、
上記のような隙間を生じさせるために、作物の茎
を掴んで引き上げる作業や、例えば尖頭形状の道
具等を別途準備して差し込む作業等を必要としな
いので、作物を収穫する際の作業を、作物には手
を触れずに、容易に行うことができる。

このように、収穫時にも作物に直接手を触れず
に行うことが可能であり、したがつて、商品とし
ての作物に傷をつけないようにとの過度の注意を
必要としないので、播種から収穫・出荷に至る間
で必要な作業を容易に行うことができるという効
果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例における栽培物保持
器の一部を破断して示す斜視図、第２図は第１図
のＡ−Ａ矢視断面図、第３図は本考案の他の実施
例における栽培物保持器の一部を破断して示す斜
視図、第４図は第３図におけるＣ−Ｃ矢視断面
図、第５図は本考案のさらに他の実施例における
栽培物保持器の一部を破断して示す斜視図、第６
図は第５図におけるＢ−Ｂ矢視断面図、第７図は
本考案のさらに他の実施例における栽培物保持器
の一部を破断して示す斜視図、第８図は本考案の
さらに他の実施例における栽培物保持器の一部を
破断して示す斜視図、第９図ａは栽培物保持器を
定植パネルに組み付けた使用例を示す斜視図、同
図ｂは同図ａに示した栽培物保持器の拡大斜視図
である。 １，４，５，６，１１は栽培物保持器、１ａ，
４ａ，５ａ，６ａ，１１ａは切欠部、１ｂ，４
ｂ，５ｂ，６ｂ，１１ｂは保持部、１ｃ，４ｃ，
５ｃ，６ｃ，１１ｃはつば、１ｄは側壁、４ｅ，
１１ｅは補強壁、２，３，７，１０，１２は種
子、８は定植パネル、９は培養液である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 培養液の液面に浮かべられる定植パネルに形成
   された貫通穴に着脱自在に挿入されると共に作物
   の種子を保持して発芽及び成長させるための断面
   Ｖ字形の発泡樹脂より成る保持部を有し、この保
   持部の底部に、作物の種子が通過しない大きさの
   切欠部が形成される一方、上記保持部の上縁側
   に、この保持部を定植パネルの貫通穴に上方から
   挿入するときに定植パネルの上面に上方から当接
   して係止されるつばが側方に広がる形状で一体的
   に設けられ、かつ、このつばにおける上記保持部
   上縁側への連なり部には、この部位を上方に突出
   させて厚肉状とした補強部が設けられていること
   を特徴とする水耕栽培用栽培物保持器。