JPH05271879A - 高強度ばね部材 - Google Patents

高強度ばね部材

Info

Publication number
JPH05271879A
JPH05271879A JP1407093A JP1407093A JPH05271879A JP H05271879 A JPH05271879 A JP H05271879A JP 1407093 A JP1407093 A JP 1407093A JP 1407093 A JP1407093 A JP 1407093A JP H05271879 A JPH05271879 A JP H05271879A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phase
spring member
weight
alloy
strength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP1407093A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3612081B2 (ja
Inventor
Michihiko Inaba
道彦 稲葉
Mitsuhiro Tomita
充裕 富田
Yoko Ishimaru
曜子 石丸
Hirofumi Omori
廣文 大森
Shinichi Nakamura
新一 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP01407093A priority Critical patent/JP3612081B2/ja
Publication of JPH05271879A publication Critical patent/JPH05271879A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3612081B2 publication Critical patent/JP3612081B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【目的】 導電性と強度(硬さ)を兼備し、かつばね性
と耐磨耗性をもち、肉厚が薄くても動作可能な、また繰
り返し動作や変形に対する耐久性の高い低コストのばね
部材の提供を目的とする。 【構成】 Fe、または、FeとCrおよびZnから
選ばれた元素を10〜90重量%含有し残部が実質的にCu
からなる合金で構成されてなることを特徴とする高強度
ばね部材、および40重量%までのNiを含むFe−Ni
合金、または、このFe−Ni合金とCrおよびZnか
ら選ばれた元素を10〜90重量%含有し残部が実質的にC
uからなる合金で構成され、該合金中の平均的な転位密
度が102 dl/cm2 以上であることを特徴とする高強度ば
ね部材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、板ばね、トーションバ
ー、皿ばね、座金類、ジグザクばね、スナップリング、
うずまきばね、コイルばね、輪ばね、モーターのブラ
シ、スライドスイッチ等に代表される一般ばねや、コン
セント、コンセントプラグ、ピンプラグソケット、コー
ドプラグ、遮断器を含むスイッチ一般、機器用接続端子
に代表される導電コネクタ等として用いられる高強度ば
ね部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から用いられているばね材料は、金
属系ばねと非金属系ばねとに大別され、金属系ばねは、
さらに鋼ばねと非鉄金属ばねに分類される。
【0003】鋼ばねは、主として車両、自動車用に用い
る重ね板ばね、コイルばね、トーションバー等の大型ば
ね材料として用いられれており、炭素鋼をはじめSi
鋼、Mn鋼、Si−Mn鋼、Si−Cr鋼、Mn−Cr
鋼、Cr−V鋼等がある。
【0004】しかしながら、これらのばね材も、近年で
は複雑な形状のものも多くなってプレス打ち抜きやエッ
チング等の必要性もでてきており、また、装飾性をもっ
た板ばね等も試作されるようになって、従来の鋼ばねで
は適応できない分野も出てきている。特に、導電性を必
要とする用途や、マイクロマシンのような特殊な用途に
用いるばねには、現用のばね材では限界がある。また、
測定器などには、Fe−Ni合金や、Co基のばねが使
われているが、いずれも高価であるという問題がある。
【0005】非鉄金属ばねには、黄銅(真鍮,Cu−Z
n合金)、洋白(Cu−Ni合金)、ベリリウム銅、チ
タン合金等が用いられている。これらのばね材は、主に
機器用として利用され、導電率が高い銅を含有すること
から、電気信号を伝達するばねとして用いられる。この
ようなばねとしては、電気信号を伝達する複数の導電体
にそれぞれジャックとソケットを導電的に装着し、ジャ
ックをソケットに挿入することにより電気的および機械
的な接続を行うようにした導電コネクタが汎用されてお
り、最近では半導体装置のリードフレームを直接ソケッ
トに挿入して電気的および機械的な接続を行うようにし
た導電コネクタも多用されている。
【0006】これらの合金は機械的強度に優れ、導電率
も30〜80%程度と良好であり、また、これらの合金表面
には、ソケッティングの際の磨耗を避け、耐蝕性を向上
させるために、Niメッキ、Crメッキ、Auメッキ、
AgメッキあるいはSnメッキを施すことも行われてい
る。
【0007】しかしながら、素材が黄銅の場合には、機
械的強度は高いものの時期割れを起こして粒界より破断
が生じて接続不良を起こすという問題があり、ベリリウ
ム銅やチタン銅には高価であるという問題がある。
【0008】非鉄金属ばねの表面にメッキを施すこと
は、黄銅の時期割れを防ぐために有効であるが、メッキ
の厚さが薄い場合にはやはり時期割れ等の不良が発生す
る。
【0009】一方、りん脱酸銅やりん青銅からなるばね
材は、強度が不十分で肉厚を厚くしなければならないと
いう問題がある。
【0010】ところで、近年においては、ピンプラグの
小型化が進み、肉厚の薄いものが要求されるようになっ
てきたため、導電率と強度を兼ね備えたCu−Fe合金
の使用が検討されており、リードフレームについてはこ
のCu−Fe合金を使用したものが提案されている。
【0011】Cu−Fe合金は、一般的に高い導電率と
機械的強度とを兼備しているが、リードフレームの場合
には、ガルウィング等の曲げ加工が多く、スプリングバ
ックが大きいと所定の形状に加工できない不都合が生じ
るため、これを導電コネクタの、特にばね性が要求され
るめす側には適用できないという問題がある。また、ソ
ケッティングの際の耐磨耗性も改良されていないのが現
状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
状況を考慮してなされたものであり、ばね性と耐磨耗性
に優れ、肉厚が薄く、線径が小さくとも十分な強度を有
する高強度ばね部材を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、第1の高強度ばね部材は、Fe、または、FeとC
rおよびZnから選ばれた元素を10〜90重量%含有し残
部が実質的にCuからなる合金で構成されてなることを
特徴としており、第2の高強度ばね部材は、40重量%ま
でのNiを含むFe−Ni合金、または、このFe−N
i合金とCrおよびZnから選ばれた元素を10〜90重量
%含有し残部が実質的にCuからなる合金で構成され、
該合金中の平均的な転位密度が102 dl/cm2 以上である
ことを特徴としている。
【0014】第1の高強度ばね部材において、Fe、ま
たはFeとCrおよびZnから選ばれた元素を10〜90重
量%の範囲としたのは、10%未満では機械的強度が低下
してしまい、90重量%を越えるとCu相が少なくなって
装飾性、加工性、エッチング性が低下してしまうためで
ある。
【0015】上記組成中、Crは、Feの耐蝕性を向上
させる成分であり、その添加量はFeとの合計量に対し
10〜20重量%の範囲が適当である。特に、磁性をもつこ
とが不都合なコネクタの場合には、Cu相、Fe相の 2
相に分離したFe層中のCrの濃度を70重量%以上に調
整すると効果的である。
【0016】また、Znは、耐蝕性を向上させるために
添加する成分である。その添加量がCuとの合計量に対
し70重量%を越えると脆くなるので、70重量%未満とす
ることが望ましく、特に、Cuとの合計量に対して 0.1
〜60重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0017】第2の高強度ばね部材において、NiはF
e相の熱膨張係数制御や耐蝕性を向上させる成分であ
り、その添加量はFeとの合計量に対して40重量%まで
とする。Niの添加量を、Feとの合計量の40重量%ま
でとしたのは、40重量%を越えるとコストが高くなり、
エッチング性や装飾性等が損なわれ、導電率も低くなっ
てしまうためである。Niの添加量は、好ましくはFe
との合計量に対して0.05〜40重量%である。
【0018】第2の高強度ばね部材における他の元素の
添加理由および成分範囲を限定した理由も第1の高強度
ばね部材における理由と同様である。
【0019】第2の高強度ばね部材において、合金中の
平均的な転位密度を102 dl/cm2 以上としたのは、これ
より小さいと金属内が焼きなまされた状態で強度が出な
いためである。
【0020】Fe相とCu相の転位密度は、いずれも10
2 dl/cm2 以上、望ましくは104 dl/cm2 以上とする。
【0021】Cu相とFe相の転位密度は、Cu相の方
が高い方がよい。これは、Cu相の転位密度が低いと、
Cu相の強度がFe相に比べてさらに低くなるためであ
る。転位の集中によりCu相の強度を上げることが望ま
しく、特にCu相の転位密度はFe相の転位密度の 2倍
以上であることが望ましい。
【0022】なお、高強度ばね部材の転位密度は、第2
の高強度ばね部材に限らず、第1の高強度ばね部材にお
いても上記の範囲であることが望ましい。
【0023】転位密度を求めるには、電子顕微鏡により
Fe相とCu相の転位を含んだ組織写真をとり、以下に
説明する、Hamの方法により転位の数を調べればよ
い。
【0024】すなわち、測定すべき試料を透過電子顕微
鏡(TEM)により直接観察するために、まず、試料片
をエッチングによって薄片化する。これをTEMで観察
し、転位が容易に観察できる数万倍の写真を、例えば10
枚近く撮影する。この写真に全長Lのいくつかの任意の
線を引き、この線が転位線と交わる数をNとしたとき、
転位密度(単位はdislocation line/cm2 )ρは、次の
式により求められる。
【0025】ρ= 2N/Lt t:試料薄片厚み この式により平均の転位密度が求められる。
【0026】導電コネクタの場合、103 〜104 dl/cm2
レベルでもよいが、やや強度を要求する場合には105 dl
/cm2 以上が望ましい。105 dl/cm2 未満ではやや柔ら
かくなり、Fe、あるいは一部をCrやNiで置換した
Feの含有量を60重量%以上にしなければならなくな
る。一方、高強度ばね一般の場合には、平均転位密度は
107 dl/cm2 以上が好適である。尚、上述の方法では、
1013dl/cm2 程度まで測定可能であるが、それ以上であ
っても良い。
【0027】転位密度の調整は、双ロールの冷却速度、
板材の熱処理温度と時間、圧延率によって行う。特に、
105 dl/cm2 以上にするには、冷却速度を 200℃/秒と
し、107 dl/cm2 以上にするには冷却速度を 400℃/秒
以上とする。
【0028】本発明の高強度ばね部材の成分組成は、用
途によって次のように適宜調整して用いることが好まし
い。
【0029】 導電コネクタ:コンセント、コンセン
トプラグ、ピンプラグ、ソケット、コードプラグ、ブレ
ーカー、しゃ断器等 これらは導電性が特に要求される用途であり、表面には
めっき等の表面処理が施されることもある。
【0030】これらの用途に用いる場合の好適組成はC
uベースであり、Cuあるいはその一部を50重量%まで
Znで置換した成分を、50〜90重量%の範囲とすること
が好ましい。これらの成分が50重量%未満になると導電
率が低くなり過ぎるので好ましくない。残りの成分は、
Fe、またはFeとCr、またはFeとCrとNiにな
るが、Niを添加する場合には、Feとの合計量に対し
て10重量%以下とすることが好ましい。Niの添加量が
10重量%を越えると合金中のCu相中にNiが多く固溶
して導電率を低下させるので好ましくない。Crの添加
量については特別な制限はないが、耐食性を考慮すると
Feとの合計量に対して20重量%以下とすることが好ま
しい。なお、後述する強度改善成分を添加する場合に
は、合計で基材の総量の 5重量%以下、好ましくは0.1
〜 2重量%の範囲とすることが好ましい。
【0031】 高強度ばね:板ばね、トーションバ
ー、皿ばね、座金類、ジグザクばね、スナップリング、
うずまきばね、コイルばね、輪ばね、モーターのブラ
シ、スライドスイッチ等 これらは機械的強度と高弾性率が要求される用途であ
り、表面には、硬化処理層が設けられることもある。
【0032】好適組成はFeベースであり、Feあるい
はその一部をNi、Crの少なくとも1種で35重量%ま
で置換したものを、60〜90重量%範囲とすることが好ま
しい。これらの成分が60重量%未満では、強度と弾性率
が低くなるので好ましくない。残りの成分は、Cu、ま
たはCuの一部をZnで置換したものとになる。
【0033】なお、後述する強度改善成分を添加する場
合には、合計で基材の総量の15重量%以下、好ましくは
0.1 〜 5重量%の範囲とすることが好ましい。特に、コ
ストを低く抑える必要のある板ばねやトーションバー等
として用いる場合には、Fe、またはFeの一部をN
i、Crで置換したものの含有量を、75〜90重量%とす
ることが望ましい。また、Ni、Crを添加する場合に
は、NiはFeとの合計量の10重量%以下、CrはFe
との合計量の20重量%以下とすることが、コストを抑え
る上で好ましい。
【0034】熱膨脹係数や弾性率を制御した精密ばねに
用いる場合には、Fe、Ni、Crの合計量に対してN
iを30〜40重量%、Crを10重量%以下に調整すること
が好ましい。この範囲外では熱膨脹係数や弾性率が大き
く変化するようになる。
【0035】本発明においては、第1の高強度ばね部
材、第2の高強度ばね部材とも、その強度を改善するた
めに、V、Al、Si、W、Mo、Ta、Nb、Ti、
Mn、Zr、P、C、Coの 1種以上を 5重量%以下、
望ましくは0.01〜 3重量%添加することができる。これ
らの添加元素は、高強度ばね部材の強度をより一層向上
させ、かつ、Fe相とCu相の分散をよくする作用をす
る。添加量が 5重量%を越えると、加工がしにくくなる
ため好ましくない。
【0036】上記成分中、特に、Cは高強度ばね部材の
耐磨耗性に大きく影響を与える成分であって、0.01〜 3
重量%の範囲で添加することができる。0.01重量%未満
ではFe相の硬化の効果が現れず、 3重量%を越えると
相手材をかじってしまうようになる。特に、0.1 〜 2重
量%程度の添加量の範囲では、Fe3 Cが形成されて硬
化の効果が顕著になり、また球状黒鉛を生成させるので
摺動特性も改善され好都合である。
【0037】これらの合金を、ばね部材に加工するに
は、圧延材、棒材を圧延して薄板とし、その圧延方向ま
たは引き抜き方向に部品をとるようにすることが望まし
い。圧延材を利用した板状のばね部材の場合には、特に
面内方向に引き抜きするように材料を組み立てることが
望ましい。
【0038】本発明のばね部材に使用する合金は、通
常、上記の合金成分を溶解した溶湯を用いて溶湯急冷法
により薄板状に成形される。
【0039】すなわち、まず、双ロールにタンデッシュ
により溶湯に流し込み、 100℃/秒以上の冷却速度で急
冷し、その後、 500〜 900℃で時効処理を行い、内部に
発生した応力を解放する。双ロールと時効処理により作
製された数mm厚の板をそのまま使用する場合は、ロール
より引き出した板材を引き抜き方向に引っ張り、素材内
部のFe相とCu相を圧延方向に長く成長させることが
望ましい。圧延直角方向のFe相あるいはCu相の結晶
粒径の小さい方をa、圧延方向の結晶粒径をbとしたと
きのb/a(アスペクト比)は 2以上、より望ましくは
4以上とする。このようにアスペクト比の範囲を選定す
るのは、圧延方向のばね性を保つためで、b/aが 2よ
り小さいと弾性変形領域が応力−歪曲線上で少なくな
り、繰り返し動作により変形してしまうからである。ア
スペクト比を大きくするには、冷却速度を下げか、圧延
率を50%以上に高くすればよい。なお、アスペクト比の
上限は、30までとすることが望ましい。これは、異方性
を低く抑えるためである。
【0040】結晶粒の大きさは、平均して 100μm 以下
であることが望ましい。 100μm を越えるとFe相とC
u相が均一に分散せず、偏析が起きるようになる。結晶
粒の大きさは、望ましくは50μm 以下がよい。
【0041】結晶粒を微細化するためには、前述した強
度改善成分を添加し、金属組織中に、微細な炭化物、窒
化物、酸化物等を作らせるようにすればよい。
【0042】これら添加元素の少ない場合には、時効処
理温度を 500〜 750℃程度にすることが好ましい。
【0043】双ロールと時効処理により引き出した材料
を、さらに圧延する場合には、冷間圧延と焼鈍を繰り返
して厚みを薄くしていくが、最終圧延は50%以上の圧延
率をもつ強加工とすることが望ましい。これは、Fe相
あるいはCu相の結晶方位を(100) あるいは(110) に比
較的優先させるためである。(100) や(110) に優先方位
をもっていると、プレス加工やエッチング特性がよくな
る利点がある。この結晶方位は、X線回析法により簡単
に調べることができる。すなわち、X線回折パターンに
おける(200) 、(220) 、(111) 、(110) 、(211) の面方
位に対応するピークの強度をI(200) 、I(220) 、I(1
11) 、I(110) 、I(211) とすると、{I(200) +I(2
20) +I(110) }/{I(111) +I(211) }が0.5 より
も大きいことが望ましい。(200) 、(220) 、(110) 面の
回折線が強いことは(100) 、(110) に優先方位をもつこ
とを示している。
【0044】なお、上記の優先方位を持たせるために
は、材料に圧延率50%以上の強加工を加えた後、再結晶
温度以上の焼鈍しを行い、最後に20%以下の調質圧延を
行うことが望ましい。
【0045】ばね性や耐磨耗性を向上させるには、添加
元素の調整、結晶粒の形状、圧延率、結晶方位等のパル
クとして調整する他に表面処理を行うことが望ましい。
【0046】表面処理の方法としては、図1に示すよう
に、表面のFe、Cuの組成を変化させる方法(図1は
Feの表面濃度を高くしたものである)と、図2に示す
ように、メッキにより表面を保護する方法の 2通りがあ
る。
【0047】表面の濃度を変化させる方法では、Feあ
るいはCuの表面濃度を内部のそれより高くする。この
方法は選択的にエッチングして耐磨耗性のよいFe相
(CrはFe相に優先的に固溶するため実質的にはCr
添加の場合Fe−Cr相となる)1をCu相2よりも相
対的に表面で高めることにより実現できる。表面の濃度
は内部と比較して50%以上増加させることが望ましい。
Cu相は、有機系のアンモニア水中にディップすること
によりエッチング除去することができる。エッチングに
より表面に凹凸ができた場合はスキンパスにより、図3
に示すように表面を滑らかにすることができる。
【0048】メッキは、Fe相には付きにくいので、F
e相を選択的にエッチングしたり、金属表面にCuスト
ライクメッキを行う必要がある。一般のメッキは 0.1μ
m 以上、ストライクメッキは 0.1μm 以下がよい。さら
に、一般のメッキのメッキ厚は望ましくは、0.3 〜10μ
m とする。メッキの場合エッチングによる表面の凹凸は
問題のない限り残しておいてもよい。これはアンカー効
果があるためである。図4に示すように、Fe相のエッ
チングはHF/H2 2 にディップしたり、NaOHや
NH4 OH液中で電解研磨することにより行うことがで
きるが、HCl処理が最も簡単である。HCl処理の場
合、 1〜36規定のものを温度で使用してもよいが、反応
を促進させるため80℃まで熱してもよい。ディツプする
時間は10分以内がよい。
【0049】Ni、Sn、Au、Ag、Cr、はんだ等
のメッキは通常の電気メッキで行うことができる。ま
た、Ni−P、Ni−Bの無電解メッキで表面処理する
ことも可能であり、はんだディップにより表面にはんだ
がけをするのもよい。いずれにしろ表面層のCu濃度が
60%以上あるとメッキが容易である。
【0050】金属組成は、Fe相、Cu相に分離してい
る組織がよいが、鋳造組織が残っている場合は、板厚方
向にエッチングするのに好都合である。
【0051】図5に示すように、金属内には、微細な酸
化物、炭化物、窒化物等の析出物4が分散しているとば
ね性も、より一層向上する。これらの析出物4が、主と
してCu相とFe相の界面に濃縮すると各相の結合を助
ける作用をするが、Fe相、Cu相内に存在してもよ
い。析出物をつくる元素は、V、Al、Si、W、M
o、Ta、Nb、Ti、Zr等であり、そのサイズは
0.3μm 以下が望ましい。これ以上のサイズになるとや
や脆くなる傾向がでてくる。
【0052】図6に示すように、表面に酸化膜5を形成
して耐蝕性を向上させたりするのもよい。酸化膜5は、
水蒸気、空気、炭酸ガスあるいはこれらを混合した雰囲
気中で 300〜1000℃、望ましくは 500〜 800℃で熱処理
することにより形成させることができる。酸化膜5しと
ては、α−Fe2 3 よりも、Cux Fe3-x 4 の化
学式をもつスピネル型の構造をもつ酸化膜の方がボイド
も少なく望ましい。スピネル型の構造をもつ酸化膜をつ
くるためには、酸素の含有量を25%以下に抑えることが
望ましい。Cr、Ni、その他前述した添加元素を加え
た場合には、Mx Cuy Fe3-x-y 4 の膜がよい(M
は添加元素を示す)。酸化膜厚は0.01μm 〜10μm 程度
が剥離しにくいので好ましい。
【0053】α−Fe2 3 は表面に存在してもよいが
その厚さは酸化膜の厚さ全体の20%以下にすることが望
ましい。これより厚いと緻密でないガサガサの膜とな
る。また、FeOが内部にあっても酸化膜の厚さ全体の
20%以下であればかまわない。添加元素のCr、Niは
酸化膜と金属界面に濃化させると密着性を向上させる効
果がある。Cr、Niを酸化膜と金属界面に濃化させる
には、露点を10℃以上にした雰囲気で酸化させるとよ
い。
【0054】表面酸化膜の色調の変化は、前述した方法
でFe相のみをエッチングしてCuを露出させついで酸
化させることにより達成される。また、低温で酸化した
い場合にも同様の方法をとる。熱放散や耐食性等の目的
の場合にはCu相をエッチングしてから酸化をするのが
よい。
【0055】図7に示すように、表面処理により表面に
硬化処理層6を形成して耐磨耗性を向上させることもで
きる。硬化処理法としては、窒化処理や炭化処理、硫化
処理等の硬化処理が用いられる。この場合、窒化物や炭
化物、硫化物をつくりやすいCr、V、Mo、Ta、T
i、W、Zr等を素材のFe相に固溶させておくと硬化
処理層6を容易に形成することができる。なお、前述し
た前処理により表層にFe相の濃縮させておいてから窒
化あるいは炭化をするとより効果的である。炭化、窒化
は従来より行われている公知の方法を用いることができ
る。これらの硬化層の厚みは 0.1μm 〜 100μm 程度が
望ましい。
【0056】装飾性をもたせるための表面への塗料塗装
は、メッキをしてもしなくても可能である。また、溶接
によって本発明のばね部材を他の部材に接続しても、以
上説明した性質は損なわれることがない。
【0057】
【作用】本発明の高強度ばね部材は、強度と導電性を兼
備し、しかも低コストで提供することができる。
【0058】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。表
1の成分を溶解して溶湯炉に溶湯を保持し、タンデッシ
ュを介して双ロールに溶湯を流し込み、 100℃/秒以上
(実施例3,6,15は特に800 〜2000℃/秒の高速で
冷却)のスピードで冷却し、その後、 500〜 900℃で時
効処理を行った後、実施例3,10を除いて圧延率50%
以上の圧延を行って厚さ1mm のCu−Fe系合金板を
得、その一部について表1に示すように、酸化処理(水
蒸気と炭酸ガスの混合ガス雰囲気)と表面硬化処理(0.1
〜30μm 厚) およびメッキ処理を施した。
【0059】これらの合金板を用いて冷間圧延し作成し
たばね部材の実験結果(アスペクト比、結晶方位、硬
さ、導電率およびばね性・耐磨耗性等)を合金の化学組
成とともに表示1に示す。なお、一部の部材はプレスあ
るいはエッチングによる加工を行っている。
【0060】
【表1】 NH3 * :有機アンモニア水 NH4 OH* :アンモニア水 NaOH* :電解研磨 Cr* :ストライクメッキ ピン* :ピンプラグおす ピン** :ピンプラグめす 端子* :機器接続端子めす コード* :コードプラグおす コード** :コードプラグめす コンセント* :コンセントおす コンセント** :コンセントめす なし* :Feの表面濃度が内部に比べて50
%以上有するもの 添加元素量は、経時された元素のそれぞれの%表示 転位密度は平均転位密度。平均を出しにくい場合はCu
相とFe相を別々に表示、 ばね性の評価は、弾性率が
15000kgf/mm2 以上のものを良好とし、それ以下のもの
を不良とした。また、耐磨耗性はスクラッチテストで5N
以上のものを良好とし、それ以下のものを不良とした。
【0061】表示1から分かるように、本発明の実施例
(Cu−Fe合金)の場合は、すべて硬さ170HV 以上の
良好な強度(硬さ)をもち、ばね性および耐磨耗性も良
好な特性を示した。これに対して比較例(Cu−Zn合
金を使用)の場合は、これらの特性(硬さ、ばね性およ
び耐磨耗性)は不十分なものであった。
【0062】
【発明の効果】本発明による高強度ばね部材は、硬さ17
0HV 以上を達成でき、肉厚の薄い小型のものが可能とな
り、ばね性や耐磨耗性に優れ、そのため何回動作させて
も殆ど変形を起こさない。したがって、家庭用、工業用
コンセント(雌)、同コンセント(雄)、プリント基板
の接続用ソケットやピン、オーディオ、ビデオ関連のピ
ンプラグやジャック、コード先端のプラグ、電気機器、
通信器等の機器用接続端子に代表される導電コネクタは
もとより、スイッチング機能をもったブレーカー、遮断
器等の導電コネクタにも利用できるばかりでなく、板ば
ね、トーションバー、皿ばね、座金類、ジグザクばね、
スナップリング、うずまきばね、コイルばね、輪ばね
等、ばね部材一般に利用できる。また、モーターのブラ
シ、スライドスイッチ等の耐磨耗性が大きく要求される
分野にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のばね部材のFe相の表面濃度が高い
部分の金属組織を模式的に示す断面図。
【図2】 本発明のばね部材の表面がメッキにより保護
された部分の金属組織を模式的に示す断面図。
【図3】 本発明のばね部材の表面がスキンパスにより
滑らかにされた部分の金属組織を模式的に示す断面図。
【図4】 本発明のばね部材のCu相の表面濃度が高い
部分の金属組織を模式的に示す断面図。
【図5】 本発明のばね部材の内部に析出物が分散して
いることを模式的に示す断面図。
【図6】 本発明のばね部材の表面が酸化膜で被覆され
ていることを模式的に示す断面図。
【図7】 本発明のばね部材の表面が硬化処理されてい
ることを模式的に示す断面図。
【符号の説明】
1………Fe相 2………Cu相 3………メッキ相 4………析出物 5………酸化膜 6………硬化処理層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大森 廣文 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 中村 新一 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe、または、FeとCrおよびZnか
    ら選ばれた元素を10〜90重量%含有し残部が実質的にC
    uからなる合金で構成されてなることを特徴とする高強
    度ばね部材。
  2. 【請求項2】40重量%までのNiを含むFe−Ni合
    金、または、このFe−Ni合金とCrおよびZnから
    選ばれた元素を10〜90重量%含有し残部が実質的にCu
    からなる合金で構成され、該合金中の平均的な転位密度
    が102 dl/cm2以上であることを特徴とする高強度ばね
    部材。
JP01407093A 1992-01-31 1993-01-29 導電コネクタ及び高強度ばね Expired - Fee Related JP3612081B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP01407093A JP3612081B2 (ja) 1992-01-31 1993-01-29 導電コネクタ及び高強度ばね

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4-16913 1992-01-31
JP1691392 1992-01-31
JP01407093A JP3612081B2 (ja) 1992-01-31 1993-01-29 導電コネクタ及び高強度ばね

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05271879A true JPH05271879A (ja) 1993-10-19
JP3612081B2 JP3612081B2 (ja) 2005-01-19

Family

ID=34196296

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP01407093A Expired - Fee Related JP3612081B2 (ja) 1992-01-31 1993-01-29 導電コネクタ及び高強度ばね

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3612081B2 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000087195A (ja) * 1998-07-17 2000-03-28 Mitsubishi Materials Corp 高強度鉄基焼結合金およびその製造方法
JP2007270241A (ja) * 2006-03-31 2007-10-18 Nikko Kinzoku Kk 高強度高導電性二相銅合金
JP2011091029A (ja) * 2009-09-23 2011-05-06 General Electric Co <Ge> スイッチ構造及び方法
WO2012093506A1 (ja) * 2011-01-06 2012-07-12 中央発條株式会社 腐食疲労強度に優れるばね
US8789817B2 (en) 2009-09-29 2014-07-29 Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha Spring steel and spring having superior corrosion fatigue strength
WO2015049984A1 (ja) * 2013-10-04 2015-04-09 株式会社オートネットワーク技術研究所 自動車用コネクタ端子
JP5761400B1 (ja) * 2014-02-21 2015-08-12 株式会社オートネットワーク技術研究所 コネクタピン用線材、その製造方法及びコネクタ
WO2015190287A1 (ja) * 2014-06-12 2015-12-17 株式会社オートネットワーク技術研究所 コネクタ用端子

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000087195A (ja) * 1998-07-17 2000-03-28 Mitsubishi Materials Corp 高強度鉄基焼結合金およびその製造方法
JP2007270241A (ja) * 2006-03-31 2007-10-18 Nikko Kinzoku Kk 高強度高導電性二相銅合金
JP4623737B2 (ja) * 2006-03-31 2011-02-02 Jx日鉱日石金属株式会社 高強度高導電性二相銅合金
JP2011091029A (ja) * 2009-09-23 2011-05-06 General Electric Co <Ge> スイッチ構造及び方法
US8789817B2 (en) 2009-09-29 2014-07-29 Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha Spring steel and spring having superior corrosion fatigue strength
US8936236B2 (en) 2009-09-29 2015-01-20 Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha Coil spring for automobile suspension and method of manufacturing the same
JP2012144752A (ja) * 2011-01-06 2012-08-02 Chuo Spring Co Ltd 腐食疲労強度に優れるばね
WO2012093506A1 (ja) * 2011-01-06 2012-07-12 中央発條株式会社 腐食疲労強度に優れるばね
US9068615B2 (en) 2011-01-06 2015-06-30 Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha Spring having excellent corrosion fatigue strength
WO2015049984A1 (ja) * 2013-10-04 2015-04-09 株式会社オートネットワーク技術研究所 自動車用コネクタ端子
JP5761400B1 (ja) * 2014-02-21 2015-08-12 株式会社オートネットワーク技術研究所 コネクタピン用線材、その製造方法及びコネクタ
WO2015125676A1 (ja) * 2014-02-21 2015-08-27 株式会社オートネットワーク技術研究所 コネクタピン用線材、その製造方法及びコネクタ
WO2015190287A1 (ja) * 2014-06-12 2015-12-17 株式会社オートネットワーク技術研究所 コネクタ用端子

Also Published As

Publication number Publication date
JP3612081B2 (ja) 2005-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3727069B2 (ja) 錫被覆電気コネクタ
JP4729680B2 (ja) プレス打ち抜き性に優れた銅基合金
KR101667812B1 (ko) 구리 합금 플레이트 및 그 제조 방법
JP4660735B2 (ja) 銅基合金板材の製造方法
JP4984108B2 (ja) プレス打抜き性の良いCu−Ni−Sn−P系銅合金およびその製造法
JP3962751B2 (ja) 曲げ加工性を備えた電気電子部品用銅合金板
JP2008266787A (ja) 銅合金材およびその製造方法
JPH11335756A (ja) 電子部品用銅合金板
JP2004225060A (ja) 銅合金およびその製造方法
JP3383615B2 (ja) 電子材料用銅合金及びその製造方法
JP2004307905A (ja) Cu合金およびその製造方法
JP3612081B2 (ja) 導電コネクタ及び高強度ばね
JPH0641660A (ja) 微細組織を有する電気電子部品用Cu合金板材
JP2959872B2 (ja) 電気接点材料とその製造方法
JPH10219372A (ja) 電気、電子部品用銅合金とその製造方法
US7578893B2 (en) Electrical contact material comprising a cobalt-nickel-iron alloy
JPS62182240A (ja) 導電性高力銅合金
MXPA02011664A (es) Aleacion de fe-ni endurecida para la fabricacion de rejillas de soporte de circuitos integrados y metodo de fabricacion de los mismos.
JPH0987814A (ja) 電子機器用銅合金の製造方法
JP2594250B2 (ja) コネクタ用銅基合金およびその製造法
JPH0718355A (ja) 電子機器用銅合金およびその製造方法
JP5155139B2 (ja) 錫被覆電気コネクタ
JP2743342B2 (ja) コネクタ用銅基合金およびその製造法
JP4570948B2 (ja) ウィスカー発生を抑制したCu−Zn系合金のSnめっき条及びその製造方法
JP2594249B2 (ja) コネクタ用銅基合金およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20020618

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040914

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20041022

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081029

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081029

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091029

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101029

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111029

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111029

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121029

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees