JPH05263312A - 強度の優れたポリビニルアルコール系繊維の製法 - Google Patents

強度の優れたポリビニルアルコール系繊維の製法

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JPH05263312A
JPH05263312A JP8798492A JP8798492A JPH05263312A JP H05263312 A JPH05263312 A JP H05263312A JP 8798492 A JP8798492 A JP 8798492A JP 8798492 A JP8798492 A JP 8798492A JP H05263312 A JPH05263312 A JP H05263312A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高速でも高強度なポリビニルアルコール系繊
維を安定に製造する方法を提供する。 【構成】 有機溶媒系高重合度PVA原液を有機溶媒系
固化浴中に高速で流上湿式紡糸するに際し、固化浴中滞
留時間T↓Bと、固化浴上より第1ゴデットローラーま
での大気滞留時間T↓Aとした時0.5T↓B≦T↓A≦
10T↓Bとし、かつ第1ゴデットローラー部での固化
糸の溶媒残存率を25〜80%として紡糸する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主として強度の優れた
ポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)系繊維
を製造するために利用される湿式紡糸方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】汎用繊維の中で、PVA系繊維は、ポリ
アミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系繊維に
比べて強度、弾性率が高いため、漁網、ロープなどの産
業資材用としてばかりでなく、セメント、プラスチック
などの補強材用としても利用されている。一方では社会
の高度化に伴い、PVA系繊維に対してもより高強度化
の要望が高まっている。
【0003】このような要望に応えるべく、より高強度
なPVA系繊維を製造する方法として、超高分子量ポリ
エチレンのゲル紡糸−超延伸の考え方をPVAに適用し
た特開昭59−130314号公報などが提案され、さ
らには高重合度PVAを用い、有機溶媒を使用して湿式
あるいは乾湿式法により凝固紡糸することが特開昭59
−100710号公報、特開昭60−126312号公
報や特開昭63−99315号公報などにおいて提案さ
れている。なお本発明においては、ゲル紡糸とは紡糸原
液が組成変化を伴わずとも冷却のみで固化する場合をい
い、凝固紡糸とは紡糸原液が冷却のみでは固化せず、固
化浴が紡糸原液に浸透し組成変化して固化する場合をい
う。
【0004】しかし、ゲル紡糸は、工業的に実施しよう
として多ホールで紡糸すると極めて硬着し易く、工業的
に実施するには凝固紡糸が有利であるが、従来の公知技
術で採用されている凝固紡糸の場合、高重合度PVAを
用いた際、必ずしもゲル紡糸ほどの高強度なPVA繊維
を得ることができない。この原因について種々追及し、
その顕著な一因が紡糸原液の固化抽出過程にあることを
見出し、これを解決する手段として本発明者らは先に特
願平3−267203号を提案した。すなわち第1ゴデ
ットローラー部での固化糸の溶媒残存率を原液溶媒量の
25〜80%と高くすることが重要であることを見出し
た。
【0005】一方ゲル紡糸と凝固紡糸は先述の如く固化
機構の観点から溶液紡糸を分類したものであるが、紡糸
形態の観点から分類すると、ノズル面と固化浴の間に空
気などの不活性気体層を介在させる乾湿式紡糸法と、ノ
ズル面を固化浴と直接接触させる湿式紡糸法があり、湿
式紡糸には、原液をノズル面より鉛直上方に吐出させる
流上湿式紡糸法、原液をノズル面より鉛直下方に吐出さ
せる流下湿式紡糸法、原液をノズル面より水平に吐出さ
せる横型湿式紡糸などがあるが、PVA系繊維で操業化
され、最も実績のある紡糸形態は流上湿式紡糸法であ
る。そこで特開平3−267203号提案の紡糸法を流
上湿式紡糸に適用しようとしたところ、特に第1ゴデッ
トローラー速度が高速の場合、工程通過性及び繊維性能
が不安定となることがわかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、原液
溶媒と凝固浴のいずれもが有機溶媒系を使用するPVA
系繊維の凝固紡糸を流上湿式紡糸法で高速で実施する場
合、如何にしたら高重合度でもゲル紡糸法に匹敵する高
強度のPVA系繊維を安定に製造できるかを追及したも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、粘度
平均重合度1500以上のPVA系ポリマーを有機溶媒
に溶解して得られる紡糸原液を、凝固能を有する有機溶
媒系の固化浴中にバスドラフト1未満の状態で押し出
し、形成された固化糸を10m/分以上の第1ゴデット
ローラー速度で引き取る流上湿式紡糸において、固化糸
の固化浴中での滞留時間をT↓B、固化浴上から第1ゴ
デットローラーに接触するまでの大気滞留時間をT↓A
とするとき、0.5T↓B≦T↓A≦10T↓Bを満足
し、かつ第1ゴデットローラー部での固化糸の溶媒残存
率を原液溶媒量に対し25〜80%とすることを特徴と
するPVA系繊維の製法である。
【0008】本発明に用いるPVA系ポリマーは、30
℃の水溶液で粘度法により求めた粘度平均重合度が15
00以上のものである。平均重合度が1500未満では
本発明の目的である高強度のPVA系繊維を得ることが
できない。平均重合度が3500以上であるとより好ま
しく、7000以上であるとさらに好ましい。特に平均
重合度が1500以上であると、本発明紡糸法の効果が
より顕著となる。
【0009】用いるPVA系ポリマーのケン化度に関し
ては特別な限定はないが、98.5モル%以上が好まし
く、99.7モル%以上であるとさらに好ましい。また
用いるPVA系ポリマーは、他のビニル基を有するモノ
マー、例えばエチレン、イタコン酸、ビニルピロリドン
などのモノマーを10モル%以下、好ましくは2モル%
以下の比率で共重合したものであってもよい。
【0010】本発明に用いるPVA系ポリマーの溶媒と
しては、PVA系ポリマーを溶解することができ、メタ
ノールなどの凝固能を有する有機溶媒の浸透によってP
VA系ポリマーの溶液を固化させることができる有機溶
媒なら特に限定はなく、ジメチルスルホキシド(DMS
Oと略記する)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミ
ダゾリジノンなどの極性溶媒があげられる。またこれら
の溶媒の混合物なども使用しうる。数多い溶媒の中でも
DMSOは80℃以下の低温で溶解することができ、P
VA系ポリマーの重合度低下を少なくすることができ、
好ましい溶媒である。
【0011】紡糸原液におけるPVA系ポリマーの濃度
は、PVA系ポリマーの重合度や溶媒の種類などによっ
て異なるが、通常2〜30重量%、好ましくは3〜20
重量%である。特に本発明では高強度PVA繊維を得る
ことを目的としており、このためには紡糸時の単糸切れ
や糸斑、単糸間硬着などが生じない範囲内でPVA系ポ
リマー濃度を低くした方が好ましい。
【0012】また、紡糸原液にはPVA系ポリマーと溶
媒以外にも目的に応じて種々の添加剤、例えば顔料など
の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、界面活
性剤、酸などのpH調節剤などを所要量添加してもよ
い。さらにDMSOの如く比較的高い凍結温度を有する
溶媒に対しては、水などの溶媒やメタノールなどの凝固
作用を示すものでもPVA系ポリマーが凝固しない範囲
内で添加すると、固化浴を溶媒の凍結温度以下としても
紡糸原液が凍結しないので好ましい場合がある。
【0013】PVA系ポリマー、溶媒及び添加剤を溶解
機に仕込み、例えば溶媒としてDMSOを使用する場
合、混合物を攪拌しながら、50〜120℃に昇温し、
攪拌を4〜16時間続行し、PVA系ポリマーを溶媒に
溶解し、次いで脱泡して紡糸原液とする。この際、仕込
み後昇温前に溶解機に窒素などの不活性気体を加圧注
入、減圧排出を繰り返し不活性気体に置換し、昇温溶解
中や脱泡放置中も減圧あるいは不活性気体による加圧を
行ないPVA系ポリマーの溶液を可能な限り酸素と接触
させない方がPVA系ポリマーの分解抑制の点で好まし
い。重合度が高くなると溶解脱泡温度を高くする必要が
あり、この場合特に不活性気体による置換などにより酸
素と接触させないことが重要となる。
【0014】バスドラフト(原液がノズルより吐出され
る際の吐出線速度に対する第1ゴデットローラー速度の
比で定義される。)は1.0未満としないと後工程での
延伸性が不十分となり、高強度繊維を得ることが困難と
なる。バスドラフトが0.1〜0.5の範囲がより好ま
しく、0.15〜0.3であるとさらに好ましい。ノズ
ルの孔径をバスドラフトが適性となるよう選択すること
が重要である。
【0015】本発明に用いる紡糸形態は、流上湿式紡糸
法である。ノズル面と固化浴の間に不活性気体を介在さ
せる乾湿式紡糸法では不活性気体層での単糸間硬着が起
き易く、ノズルの孔ピッチを大きくせねばならずコンパ
クト化が困難となる。ノズル面が固化浴と直接接触する
湿式紡糸法はノズル吐出直後、固化浴が浸透し、直ちに
固化するため、ノズルの孔ピッチを小さくすることがで
き、このため多ホールでもコンパクト化しうる。湿式紡
糸法の中では流上湿式紡糸法がPVA系繊維の生産で最
も一般的に行なわれており、技術蓄積が多く、工業的に
最も実施し易い紡糸法である。
【0016】固化浴としては、PVA系ポリマーに対し
て凝固能のある有機溶媒を用いる。芒硝などの脱水性塩
類水溶液を固化浴に用いると、固化糸の表面が優先的に
脱水され、固化糸内部の脱水が阻害され断面方向に不均
一な構造すなわちスキン−コア構造となるため、延伸性
がわるくなり、高強度なPVA系繊維を得ることができ
ない。PVA系ポリマーに対して凝固能を有する有機溶
媒としては、例えばメタノール、エタノールなどのアル
コール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン
類などがあり、特別な限定はないが、中でも凝固能のバ
ランス及びコストの点でメタノールが好ましい。
【0017】本発明においては固化浴中に原液溶媒を5
〜70%含有することが好ましい。原液溶媒の含有量
は、固化浴として用いる有機溶媒の種類や固化浴温度な
どによって異なるが、5%未満であるとノズルより吐出
直後にあまりにも固化が急激に起こり、不均一な固化糸
となり易い。一方70%を越えると固化速度が遅過ぎて
硬着し易くなる。固化浴中の原液溶媒の含有量が10〜
50重量%であるとより好ましく、15〜45%である
とさらに好ましい。
【0018】固化浴の温度が20℃を越えると、固化糸
は相分離が進んだ状態となりボイドが多く、不透明化
し、不均一構造となり、高強度繊維を得ることは困難と
なる。固化浴の温度が10℃以下であるのがより好まし
く、5℃以下であると、透明な均一構造の固化糸が得ら
れるのでさらに好ましい。但し固化浴の温度があまりに
低いとノズルより吐出される紡糸原液が凍結することが
あるので、原液に凍結防止剤を添加するなどの配慮が必
要である。
【0019】本発明においては、固化浴中で形成された
固化糸を10m/分以上の第1ゴデットローラー速度で
引き取る。10m/分未満では生産速度が小さく、工業
的生産するには高コストとなる。
【0020】次に第1ゴデットローラー部での固化糸に
含まれる溶媒残存率を25〜80%とすることが本発明
のポイントの1つである。本発明にいう第1ゴデットロ
ーラーとは、原液がノズルより吐出されて固化浴中で固
化糸となり、その固化糸が初めて接触する固体であり、
所定速度で回転している駆動ローラーや、固化糸との摩
擦により回転するアリーローラー、さらには固化糸の糸
道方向を変更するために用い、それ自体は動かない棒
状、T字状、スネーク状などのガイド類が包含される。
但し、固化糸に付着する固化液を除去するためにだけ用
いる所謂液切りガイドは本発明にいう第1ゴデットロー
ラーには包含されないものとする。
【0021】第1ゴデットローラー部での固化糸に含ま
れる溶媒残存率を25〜80%と高くすることは、第1
ゴデットローラー部までの原液溶媒の抽出を、固化糸が
形成される範囲内において、抑制することにより、固化
糸の構造を出来る限り均一とするというものであり、そ
の指標として第1ゴデットローラー部での固化糸に含ま
れる溶媒残存率に着目するものである。溶媒残存率は、
固化浴の原液溶媒含有量、温度及び滞留時間などによっ
て制御しうる。すなわち溶媒残存率を大きくするには、
固化浴の原液溶媒含有量を高くしたり、固化浴の温度を
下げたり、或いは固化浴中滞留時間を短くするため、固
化浴長を短くしたり或いは第1ゴデットローラー速度を
大きくしたりすればよい。溶媒残存率が80%を越える
と固化が不十分となり、得られた固化糸が硬着したり、
極端には例えば固化浴の原液溶媒含有量を75%とする
と正常な紡糸が困難となる。溶媒残存率が25%未満で
は固化浴中での溶媒抽出が大き過ぎ強度の優れたPVA
系繊維を得ることができない。溶媒残存率が30〜60
%であるとさらに高強度繊維が得られ易い。
【0022】なお本発明にいう第1ゴデットローラー部
での凝固糸に含まれる溶媒残存率は以下のようにして測
定したものである。まず第1ゴデットローラー部での固
化糸を、表面付着液を拭きとり2つ同じ時間サンプリン
グする。1つは原液溶媒、添加剤、固化浴をソックレー
抽出し、絶乾することによりPVA系ポリマー重量(A
g)を求める。他の1つは水に溶解し、ガスクロ分析す
ることにより原液溶媒の重量(Bg)を求める。これよ
り固化糸の原液溶媒含有量B/A×100(%/PV
A)を算出する。一方原液中のPVA系ポリマーに対す
る溶媒の重量%を原液組成より計算しC(%/PVA)
とすると、第1ゴデットローラー部での固化糸に含まれ
る溶媒残存率(%)は100B/ACで求めることがで
きる。
【0023】次に本発明では、固化浴中での固化糸の滞
留時間をT↓B、固化浴から大気に出て第1ゴデットロ
ーラーに接触するまでの固化浴上大気滞留時間をT↓A
とするとき、0.5T↓B≦T↓A≦10T↓Bを満足す
るように紡糸することが重要なポイントである。第1ゴ
デットローラー速度が比較的小さい場合は、固化糸の溶
媒残存率を25〜80%の範囲に制御することにより、
ほぼ安定に高強度繊維が得られるが、第1ゴデットロー
ラー速度が10m/分以上と大きくなると、溶媒残存率
を25〜80%の範囲に制御しても、工程通過性が今一
歩で高強度繊維を安定に得ることが困難であるという事
態に直面した。そこでこの点について種々検討した結
果、固化浴を出てから第1ゴデットローラーに接触する
までの固化浴上大気滞留時間を固化浴中滞留時間の半分
〜10倍とすれば、第1ゴデットローラーを高速として
も工程通過性及び強度とも安定化することを見出した。
固化浴上大気滞留時間が、固化浴上滞留時間の半分より
短いと工程通過性や強度が不安定となる。固化浴滞留時
間の10倍より長いと、メタノールなどの揮発性の固化
浴の揮散量が多くなり好ましくない。
【0024】何故固化浴上大気滞留時間が高速の場合に
重要となるかは不明であるが、高速の場合固化浴内での
原液溶媒の抽出が単糸間でバラツキ易く、このため工程
通過性や性能が不安定化するのに対し、固化浴〜第1ゴ
デットローラー間の大気滞留中は固化浴に浸漬されてい
ないため固化糸全体としての抽出は殆んど起こらないも
のの、固化糸に付着している固化浴を通じて固化単糸間
の溶媒含有量の均一化がなされるためと推測される。こ
の固化浴上大気滞留中における単糸溶媒抽出の均一化作
用が第1ゴデットローラーが高速になった際に有効に作
用する結果と推定される。
【0025】第1ゴデットローラーに引き取られた固化
糸は、以下の工程に従って繊維化される。すなわち、凝
固能を有する有機溶媒よりなる抽出浴などにより固化糸
中の原液溶媒などを抽出洗滌し、次いで乾燥する。この
際第1ゴデットローラー直後より乾燥前に至る工程にお
いて1段あるいはより好ましくは2段以上の湿延伸を施
しておくと乾燥時の硬着を防止することができ好まし
い。湿延伸はローラーとローラーの間の大気中で延伸す
るローラー延伸とローラーとローラーの間の湿延伸浴中
で延伸する浴中延伸とがあり、通常両延伸法を併用する
ことが多い。好ましい湿延伸倍率は2.5〜5.5倍で
あり、3〜5倍であるとさらに好ましい。乾燥温度は4
0〜150℃が好ましく、70〜130℃であると乾燥
効率、性能の点でもっと好ましい。さらに乾燥温度を多
段に上げていくことが好ましい。
【0026】次いで高温で熱延伸を施し、PVA系ポリ
マーを配向結晶化させて高強度PVA系繊維とする。熱
延伸温度は140〜270℃とする。さらに好ましくは
150〜265℃の間で熱延伸温度を多段に制御する。
特に重要な最終段の延伸は225〜255℃で行なうの
がよい。このとき湿延伸倍率も含めた全延伸倍率は従来
法では通常16倍以上、より好ましくは18倍以上とす
るが、本発明方法での特徴は、12〜18倍という比較
的低倍率延伸でも十分な強度を得ることができることで
ある。熱延伸は、熱風や輻射炉の如く気体を熱媒体とし
て繊維を昇温してもよいし、シリコン、ウッドメタルな
ど液体を熱媒体として繊維を昇温してもよいし、さらに
熱プレートに繊維を接触させて熱伝導により繊維を昇温
してもよい。また多段で熱延伸を行なってもよい。さら
に必要に応じて熱処理や熱収縮を施してもよい。
【0027】何故に第1ゴデットローラー部での固化糸
の溶媒残存率が繊維性能に大きな影響を与えるかは不明
であるが、溶媒が抽出される際の張力が重要な因子と推
測される。すなわち第1ゴデットローラー部までは前記
の如く、バスドラフトは1.0未満であり、いわゆるバ
ックドラフト状態にあり、極めて固化糸がうけている張
力は低い。本発明紡糸法では微結晶によるジャンクショ
ンポイントの形成により固化が惹起すると考えられる
が、固化後溶媒抽出されるが、この際微結晶の生成と成
長及び相分離が同時並行的に進行するが、固化糸の張力
が低いと相分離が優先的に進行し、不透明な固化糸とな
り易い。従って低張力の第1ゴデットローラー部までは
相分離を制御するため、固化後は溶媒抽出を抑制すべき
と考えられる。一方第1ゴデットローラー以降の工程は
少なくとも定長か延伸がかかっており、糸がうける張力
は飛躍的に高くなる。高張力下では相分離が著しく抑制
されるため溶媒抽出をうけても相分離が進行せず、固化
時に形成された均一な構造すなわちジャンクションポイ
ントが均一にしかも多く存在しているため、全延伸倍率
が低くても実効延伸が効き、PVA系ポリマーの分子鎖
が高配向となり、高強度化につながっていると推察され
る。
【0028】以上の如く、固化浴上大気滞留時間を特定
範囲とし、さらに第1ゴデットローラー部での固化糸の
溶媒残存率を特定範囲に制御することにより、第1ゴデ
ットローラー速度が高くても、均質な原糸を得ることが
でき、全延伸倍率が比較的低くても強度の優れたPVA
系繊維を安定にかつ再現性よく製造することが実現でき
たものである。
【0029】
【実施例】以下実施例により具体的に説明するが、本発
明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】実施例1 粘度平均重合度4200、ケン化度99.9モル%のP
VAを9重量%となるようDMSOに添加し、さらに凍
結防止剤としてメタノールを2%添加し、80℃にて窒
素雰囲気下8時間溶解し、孔径0.17mm、孔数40
0のノズルより1℃のメタノール/DMSO=75/2
5よりなる固化浴中に紡糸筒長1.0m、第1ゴデット
ローラー速度12m/分、バスドラフト0.2で流上紡
糸した。この時第1ゴデットローラーを紡糸筒の1.5
m上すなわちノズル面と第1ゴデットローラーの距離を
2.5mとして、紡糸筒上大気滞留時間T↓Aは紡糸筒
滞留時間T↓Bの1.5倍とした。またこの時の第1ゴ
デットローラー部での固化糸の溶媒残存率は40%であ
った。
【0031】得られた固化糸をメタノール浴に浸漬し、
DMSOを抽出するとともに4.2倍の湿延伸を施こ
し、100℃熱風で乾燥した。次いで第1炉170℃、
第2炉240℃の熱風炉内で全延伸倍率が15.5倍と
なるように熱延伸し、延伸糸2kgを得た。紡糸及び延
伸を通じて断糸は全くなく、ローラー捲付きも殆んどな
く、工程安定性は良好であった。また得られた繊維のヤ
ーン強度は19.7g/dと優れていた。また毛羽は殆
んどなかった。
【0032】比較例1 実施例1で用いた紡糸原液を紡糸筒長2.0m、第1ゴ
デットローラー速度3m/分、バスドラフト0.2で実
施例1と同様に流上紡糸した。このときの溶媒残存率は
18%であった。なおノズル面と第1ゴデットローラー
の距離は実施例1と同様に2.5mとしたので、T↓A
/T↓B=0.25倍であった、以後、実施例1と同様
の操作を実施し、全延伸倍率は25倍が可能であった
が、ヤーン強度は18.5g/dと実施例1より低かっ
た。また延伸時ローラー捲付が時折みられ、工程安定性
の面でも不十分であった。
【0033】比較例2 ノズル面と第1ゴデットローラーの距離を1.2mとす
る以外は全て実施例1と同様に紡糸、延伸を実施した。
この時T↓A/T↓B=0.2倍であった。また第1ゴデ
ットローラー部での固化糸の溶媒残存率は42%であっ
た。得られたヤーンの強度は19.5g/dと実施例1
と遜色なかったが、延伸時に延伸糸2kg当たり2回断
糸し、ローラー捲付きが時々みられ、従って捲き上が延
伸糸には毛羽がみられた。
【0034】実施例2 粘度平均重合度9000、ケン化度99.8モル%のP
VAを6%となるようDMSOに添加し、さらに水を
1.5%添加し、90℃にて窒素雰囲気下12時間溶解
し、孔径0.17mm、孔数600のノズルより−1℃
のメタノールDMSO=83/17よりなる固化浴中に
紡糸筒長1.2m、第1ゴデットローラー速度15m/
分、バスドラフト0.2で流上紡糸した。この時ノズル
面と第1ゴデットローラーの距離を3.6mとし、T↓
A/T↓B=2.0倍とした。また第1ゴデットローラー
部での固化糸の溶媒残存率は50%であった。得られた
固化糸をメタノール浴に浸漬し、DMSOを抽出すると
ともに3.8倍の湿延伸を施こし、100℃熱風で乾燥
した。次いで第1炉180℃、第2炉248℃の熱風炉
内で全延伸倍率が15.8倍となるよう延伸した。得ら
れたヤーン強度は21.7g/dと高強度であった。ま
た延伸時の断糸はなく、ローラー捲付きや毛羽も殆どな
く、工程通過性も良好であった。
【0035】
【発明の効果】従来の凝固紡糸による高強力PVA繊維
の製造法では、固化浴中で急速固化、溶媒緩徐抽出が有
効と考えられてきたので、固化浴中での滞留時間が長
く、低張力で相分離が行なわれていたため、高強度PV
A繊維の製造が困難であった。また第1ゴデットローラ
ー速度を大きくすると、延伸の安定性が悪化し、断糸、
捲付き、毛羽の発生がみられた。これに対し、本発明で
は紡糸筒長、第1ゴデットローラー速度、固化浴組成、
固化浴温度を制御することにより、第1ゴデットローラ
ー部での固化糸の溶媒残存率を高めに設定し、かつ紡糸
筒上がりの固化糸を大気にある程度滞留させることによ
り溶媒残存率の単糸間のバラツキを小さくすることによ
り、高強度のPVA繊維を高速でも安定に製造すること
を可能にしたものである。従って本発明により得られた
強度の優れたPVA繊維はパラ系アラミド繊維など他の
高強度繊維や従来のPVA繊維に比べてコストパーフォ
ーマンスに優れており、自動車用タイヤやホースなどの
ゴム資材分野やFRC及びFRPなどの補強材分野など
に広く有効に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 悟 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度1500以上のポリビニ
    ルアルコール系ポリマーを有機溶媒に溶解して得られる
    紡糸原液を凝固能を有する有機溶媒系の固化浴中にバス
    ドラフト1未満の状態で押し出し、形成された固化糸を
    10m/分以上の第1ゴデットローラー速度で引き取る
    流上湿式紡糸において、固化糸の固化浴中での滞留時間
    をT↓B、固化浴上から第1ゴデットローラーに接触す
    るまでの大気滞留時間をT↓Aとするとき、0.5T↓B
    ≦T↓A≦10T↓Bを満足し、かつ第1ゴデットローラ
    ー部での固化糸の溶媒残存率を原液溶媒量に対し25〜
    80%とすることを特徴とするポリビニルアルコール系
    繊維の製法。
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