JPH05261145A - 創傷被覆材用シート状素材 - Google Patents

創傷被覆材用シート状素材

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JPH05261145A
JPH05261145A JP4092304A JP9230492A JPH05261145A JP H05261145 A JPH05261145 A JP H05261145A JP 4092304 A JP4092304 A JP 4092304A JP 9230492 A JP9230492 A JP 9230492A JP H05261145 A JPH05261145 A JP H05261145A
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JP
Japan
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wound
silicone
polymer material
wound dressing
water vapor
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JP4092304A
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English (en)
Inventor
Takahiro Oga
隆裕 大賀
Masayuki Kobayashi
正幸 小林
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Japan Gore Tex Inc
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Japan Gore Tex Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 創傷からの滲出液を吸収し、外部からの余剰
な水分或は細菌の浸入を阻止すると共に、創傷からの水
分蒸発を適切に助長し、更に、創傷面を外部から観察す
ることが出来る程度の透明性を有する創傷被覆材を得る
為に有用な創傷被覆材用シート状素材を提供することに
ある。 【構成】 水蒸気透過性高分子材料と多孔性高分子材料
とから一体的になることを特徴とする創傷被覆材用シー
ト状素材及びこれを用いた創傷被覆材である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、創傷からの滲出液を吸
収し、外部からの余剰な水分或は細菌の浸入を阻止する
と共に、創傷からの水分蒸発を適切に助長し、更に、創
傷面を外部から観察することが出来る程度の透明性を有
する創傷被覆材を得る為に有用な創傷被覆材用シート状
素材に関する。
【0002】
【従来の技術】現在市販されている創傷被覆材は、 創傷面に密着しこれを保護する。 創傷によるとう痛を緩和する。 創傷部位からの滲出液の漏出を防止する。 更には、創傷治癒効果を有する高分子材料を使用するこ
とにより、 創傷部位の表皮形成を促進する。 又、抗菌剤を併用したり、細菌非透過性の層を設けるこ
とにより、 細菌感染を防止する。 そして、創傷面からの水分蒸発等を適切にする。 等の作用効果を目標とした物である。そしてこれらの創
傷被覆材は、凍結乾燥豚皮等の生体皮膚加工品、コラー
ゲン、キチン或はキトサン等の生体由来高分子製のシー
ト状加工品、そして吸水性高分子ゲル等との合成品に大
別される。これらの中で、生体皮膚加工品については、
均一な品質を保つのが難しい上に使用に先立ち生理食塩
水に一定時間浸漬しなければならない等、使用上煩雑な
操作を必要とする等の欠点も多く、その為、大量且つ均
一な製品が得易いという点から、完全合成品や天然素材
の加工品が有望視されている。その中でも、創傷治癒効
果を有するコラーゲンやキチン、キトサンといった生体
由来の天然高分子材料は、バイオマスとして自然界に大
量に存在し、又、創傷被覆剤としての臨床結果も好まし
いものであった為に、種々の製品が上市されている。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、上
記の創傷からの水分蒸発を適切に助長するという特性を
得る為、即ち、滲出液を適度に吸収し、神経末端が空気
に晒されるのを防止する為に、織布、不織布或は多孔質
体としたこれら生体由来の高分子材料製の創傷被覆材
は、どちらかといえば水分が過剰に蒸散してしまい、創
傷面が乾燥しすぎる傾向にあり、そのうえ被覆材とそれ
を覆う包帯が乾燥した滲出液により固着してしまい、こ
れを除去する際に、新生組織まで損傷し、かえって治療
時期を遅らせるという欠点が生じる。又、当然のことな
がら、外部からの細菌の浸入を防ぐ構造を伴っていない
という問題もある。これらの問題を改善すべく、生体親
和性フィルムの最外層に、透湿防水性を有する微孔性フ
ッ素樹脂を積層してなる創傷カバー剤(特公昭60−2
7535号公報)が提案されている。しかし、該創傷カ
バー剤に積層される微孔性フッ素樹脂の水蒸気透過性
は、創傷面からの好ましい水蒸気蒸散速度である約13
0g/m2・hr程度に比較して著しく大きい。例え
ば、厚さ40μm、平均孔径0.2μm及び空孔率80
%の延伸多孔質フッ素樹脂の場合では、水蒸気透過率が
数千〜数万g/m2・hrにも達する。この為、創傷面
は表皮形成に好ましい状態より過度に乾燥してしまい、
創傷治癒を遅らせる要因となる等の問題がある。又、短
期間の使用においては、上記の様な微孔性フッ素樹脂は
十分な体液漏出防止機能を有するものの、長期間の使用
では、体脂の分泌により微孔部が汚染されるとその部分
が親水性となり、体液を漏出させてしまうという問題も
ある。更に、この微孔性フッ素樹脂は白色不透明である
為、創傷カバー剤を通して創傷面を観察することが出来
ず、適切な治療のタイミングを失してしまうという恐れ
もある。その他、最外層にポリウレタンや、Yanna
s型人工皮膚の例に見られるシリコーン等の疎水性高分
子層を形成させた製品もあるが、ポリウレタンやリコー
ン等の強度不足が原因で、製造上、又、取り扱い上の問
題から当該高分子層の厚さを十分に薄くすることが不可
能である為、水蒸気透過性が不十分で、創傷面が過度の
湿潤状態となって感染に弱い条件となってしまうという
問題がある。又、疎水性高分子層に開口部を設け、水蒸
気透過性を向上させた製品も見られるが、この為に細菌
感染の可能性が生じてしまうという問題もある。
【0004】従って本発明の目的は、上記従来技術の問
題点を解決し、下記の優れた特性を有する創傷被覆材が
得られる創傷被覆材用シート状素材を提供することにあ
る。(a)十分な柔軟性を有する薄膜状製剤であり、
(b)神経末端を空気から遮断する為に、創傷部位から
の滲出液を吸収してこれを保持し、(c)疎水性の外層
を有し(但し、微孔性の疎水性層は体脂の汚染や、孔内
での水分凝集により部分的に親水性化され、滲出液等が
通過できる状態となる為、疎水性の充実層を設け
る。)、(d)創傷治癒効果を有し、(e)創傷面から
の適切な水蒸気蒸散性を有する。更に、これに加えて創
傷治癒過程が外部から肉眼によって観察することが出来
る程度の透明性をも有することがより望ましい。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的は下記の本発
明により達成される。即ち、本発明は、水蒸気透過性高
分子材料と多孔性高分子材料とから一体的になることを
特徴とする水蒸気透過性薄膜層としての創傷被覆材用シ
ート状素材である。
【0006】
【作用】本発明者らは上記従来技術の問題点を解決すべ
く鋭意研究した結果、多孔性高分子材料と水蒸気透過性
を有する疎水性高分子とを複合化して薄膜層を形成し
て、創傷被覆材用シート状素材とすれば、多孔性高分子
材料の空孔が水蒸気透過性疎水性高分子材料によって充
填され、外部からの余剰な水分或は細菌を通過させるこ
となく、優れたバリヤー効果が得られることを知見して
本発明を完成した。又、上記の様な創傷被覆材用シート
状素材に、液吸収性且つ創傷治癒効果を有する生体親和
性素材を積層させれば、創傷部位からの滲出液を吸収し
保持することが出来、且つ創傷治癒状態を外側から観察
し得る優れた創傷被覆材を得ることが出来る。
【0007】即ち、創傷治癒過程において、望ましいと
される創傷面からの水蒸気透過性は、約130g/m2
・hr以上である。ここで水蒸気透過性の素材としてシ
リコーンを考えた場合、この様な水蒸気透過率とする為
には、シリコーン層の厚さに換算した場合で20μm以
下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以
下の薄膜とする必要がある。しかし、従来のシリコーン
層はそれ自身の強度が不十分であり、薄膜化しにくいと
されていた。事実、厚さ100μm以下のシリコーンシ
ートは殆ど上市されていない。これに対し本発明の創傷
被覆材用シート状素材によれば、延伸多孔質ポリテトラ
フルオロエチレン(PTFE)の様な高空孔率の多孔質
性構造を有する高分子材料をこのシリコーン層と一体的
に複合化させすることで、薄くしかも強度のあるシリコ
ーン層が得られる。そしてこの際に、シリコーンが当該
多孔質高分子材料の連続空孔に充填される構成とすれ
ば、水蒸気はシリコーン内を拡散して蒸発する為、シリ
コーン均質膜とほぼ同程度の水蒸気透過性を有する薄層
が得られる。又、この様な構成とすることにより、本発
明の創傷被覆材用シート状素材においては、水蒸気透過
性薄層は充実体となる為、細菌等は通過することが出来
ず、又、多孔質疎水性膜の様に空孔が体脂汚染や凝集水
によって部分的に浸水化し、滲出液が漏出する恐れもな
い。更に、空孔がシリコーンやポリウレタン等の透明性
を有する高分子材料で充填されている為、この薄層は十
分に透明なものとなる。
【0008】従って、本発明の創傷被覆材用シート状素
材を生体親和性素材を積層させる基材として創傷被覆材
を形成すれば、かかる基材は十分に薄く、且つ創傷治癒
過程において望ましいとされる創傷面からの水蒸気透過
性を有し、更に、体液を吸収して生体親和性素材層の透
明度が上昇すると全体として創傷面を肉眼で外部から観
察することが可能である為、優れた特性を有する創傷被
覆材とすることが出来る。又、この様にして形成された
創傷被覆材は、生体親和性素材が、織布、不織布或はス
ポンジ等の多孔質体とする等の方法で液吸収性となって
いる為、創傷面からの滲出液を吸収することが出来、且
つ創傷面をある程度の湿潤状態に保つことが出来る。こ
の結果、末端神経が直接空気にさらされない為に、とう
痛を緩和することが出来、更にこの条件下では乾燥表皮
形成が抑制されて、表皮形成が促進され、創傷治癒の優
れた効果が発揮される。その他、本発明の創傷被覆材用
シート状素材は、特にシリコーンゴムを水蒸気透過性材
料とした場合に、水蒸気のみならず、薬剤等の透過性に
も優れている。従って、万一、創傷面が細菌に汚染され
た際には、創傷被覆材の上、即ち、最外層となるシート
状素材面に抗菌剤入りのクリーム塗布をすることによっ
て、十分な抗菌作用を期待することが出来る。この場合
の抗菌剤としては、種々の抗生物質等、具体的には、Si
lver SulfadiazineやMafenide Acetate等を好適に使用
することが出来る。ここで、本発明の創傷被覆材用シー
ト状素材にあっては、該シート状素材の厚さを変化させ
ることで、水蒸気透過性を反比例的に制御するだけでな
く、複合化される多孔性高分子材料の空孔率を変化させ
ることによっても、水蒸気透過性を制御することが出来
る。本発明では、創傷面から適当な量の水蒸気を蒸散さ
せる必要がある為、多孔性高分子材料の空孔率は大きい
方が望ましい。多孔性高分子材料の空孔率が極端に小さ
いものでは水蒸気拡散経路が十分確保されない為、水蒸
気透過性は小さくなる。
【0009】
【好ましい実施態様】次に好ましい実施態様を挙げて本
発明を更に詳細に詳細に説明する。本発明の創傷被覆材
用シート状素材は、水蒸気透過性の好ましくは疎水性高
分子材料と、多孔質構造を有する高分子材料とが一体的
に複合化されて薄膜層を形成していることを特徴とす
る。又、本発明の創傷被覆材用シート状素材を適用した
創傷被覆材では、上記の様な創傷被覆材用シート状素材
に、創傷面と接触する、好ましくは液吸収性、且つ創傷
治癒効果を有する生体親和性素材からなる薄膜層が積層
される本発明の創傷被覆材用シート状素材に使用される
水蒸気透過性の疎水性高分子材料としては、シリコーン
ゴム、ポリカーボネイトやポリウレタン等の高分子材料
とシリコーンとを共重合させたシリコーン共重合体、及
びポリウレタン等の他の疎水性高分子材料を好ましく使
用することが出来る。しかし、水蒸気透過速度を、創傷
面からの好ましい水蒸気蒸散速度である、概ね130g
/m2・hr以上とする為には、これらの中でも、特に
水蒸気透過性の高いシリコーンゴム又はシリコーン共重
合体を用いるのが好ましい。
【0010】又、シリコーンゴム(又はシリコーン共重
合体)は、原料ポリマーの重合度に応じてシンプル型と
液状型とに分類されるが、本発明においては、多孔性高
分子材料と複合化して使用される為、液状シリコーンゴ
ムであるのが好適である。液状シリコーンゴムの硬化方
法には、複合反応白金触媒による付加反応、UV照射に
よるラジカル付加反応等があるが、本発明の場合はこれ
らのいずれかに限定されるものではなく、使用状況によ
って適宜決定される。更に、硬化後のシリコーンゴムの
機械的特性や硬さ等も特に限定されるものではないが、
本発明の創傷被覆材用シート状素材は医療用に適用され
るものである為、例えば、毒性試験等の安全性が確認さ
れた白金触媒付加型の医療用グレードシリコーンゴムを
使用するのが望ましい。又、液状シリコーンゴムの粘度
としては、次に述べる多孔性高分子材料との複合化の工
程において、多孔性高分子材料の空孔を充填することが
出来る様なものが望ましい。一例を挙げると、3,50
0P以下、好ましくは1,000P以下、更に好ましく
は500P以下の液状シリコーンゴムである。又、この
際に粘度調整剤或は硬化促進剤を添加して使用すること
も出来る。但し、いずれも医療用として安全性が十分確
認されていることが望ましい。又、この水蒸気透過性高
分子材料に予め抗菌剤や、抗菌剤を徐放する様なマイク
ロカプセルを混練しておくことも出来る。これにより、
本発明の創傷被覆材用シート状素材は、外部からの細菌
に対してしての物理的なバリヤー効果(細菌の通過出来
ない充実薄膜層としての効果)だけでなく、既に細菌感
染の可能性がある創傷面にも適用することが出来る他、
創傷被覆材の周囲から発生する万一の細菌感染に対して
も予防的に適用することが出来る。しかも、本発明に使
用する水蒸気透過性高分子材料は、薬剤を含むマトリッ
クスとして拡散制御の役割を果たすことにより、該シー
ト状素材そのものが薬剤徐放性製剤として作用する。従
って、抗菌効果は比較的長期にわたり、しかも安定的に
発現する。
【0011】以上に述べたこれらの水蒸気透過性を有す
る疎水性高分子材料と複合化される多孔性高分子材料と
しては、使用上必要な強度を有しておれば特に材質を限
定されるものではない。又、材料や形態も、織布、不織
布、スポンジ或はネット等いずれのものでもよい。但
し、一部のフォーム状成型品の如く、孔構造が高分子材
料の壁により相互に完全に独立しているものは、物質透
過経路を保ち得ない為、不適当である。又、この様な材
料としては、部分的な貫通構造を新たに形成して使用し
てもよいが、むしろ連続孔構造を有している材料、例え
ば、延伸多孔ポリエチレンや延伸多孔PTFEを使用す
るのが簡便であり、又、好適である。特に、延伸多孔P
TFEは、殆どの化学物質に対して安定であり、且つ生
体組織に対しても不活性且つ無害であるので、医療用途
に関しては最も適している。その上、延伸多孔PTFE
は、延伸多孔ポリプロピレン等に比較して高強度であ
り、更に空孔率も高く、水蒸気透過性を高レベルに保つ
上で有効である。即ち、空孔率が高い為、延伸多孔PT
FEの単位体積当たりの、シリコーンゴム等の水蒸気透
過性高分子材料の含量を大きくすることが出来、水蒸気
拡散経路を十分に確保することが可能である。。本発明
の創傷被覆材用シート状素材に好ましく使用される延伸
多孔PTFEの空孔率としては40%以上、好ましくは
70%以上、更に好ましくは75%以上である。
【0012】上記の様な多孔性高分子材料と水蒸気透過
性を有する疎水性高分子材料との複合化は、下記の様な
方法で行われる。即ち、硬化する以前のシリコーンゴ
ム、及び加熱溶融したり溶媒に溶かしたポリウレタン等
の他の水蒸気透過性高分子材料を使用する場合には、含
浸、コーティング、スクリーン印刷と同様の転写、グラ
ビアコーティング等、従来既知の手法が採用される。例
えば、先ず、互いに一定の間隔をおいて逆方向に回転す
るA及びBの2本のロールの間隙から、未硬化の液状シ
リコーンを送り出すことにより、ロールA及びロールB
の表面に、薄い一定厚のシリコーン層が形成される。次
に、このロールBの外周に多孔性高分子材料の薄膜を巻
き、ロールBと同一方向に回転させながら送り出すロー
ルCを接触させることにより、一定量のシリコーンが多
孔性高分子材料の薄膜にコーティングされる。更に、こ
の際シリコーンの粘度を適当な値に調整しておくと、速
やかに多孔性高分子材料薄膜の空孔に侵潤し、これに充
填される。しかる後に、シリコーンを加熱等の手段で硬
化させれば、多孔性高分子材料とシリコーンとが一体的
に複合化される。以上の様にして多孔性高分子材料の空
孔が水蒸気透過性の疎水性高分子材料で充填された構成
とすることにより、外部からの余剰な水分や細菌を通過
させない優れたバリヤー効果を有する本発明の創傷被覆
材用シート状素材が得られる為、望ましい態様である。
【0013】上記の様にして形成される本発明の創傷被
覆材用シート状素材に積層され、創傷被覆材を形成する
為に使用される、創傷治癒効果を有する生体親和性素材
とは、コラーゲン、キチン、キトサン、フィブリン等、
生体由来のタンパク質や多糖類の他、合成高分子ゲル等
を指す。又、これらを十分な液吸収性とする為には、吸
水性の高分子ゲルを除き、これらを織布、不織布、スポ
ンジといった多孔質体に形成させるのが望ましい。例え
ば、コラーゲンは牛等の動物皮膚真皮層から抽出される
が、抽出されたコラーゲンは抗原性を有するテロペプチ
ドを分子末端に有している為、ペプシン処理又はアルカ
リ処理等を施し、このテロペプチドを除いたアテロコラ
ーゲンとするのが好ましい。即ち、アテロコラーゲンは
酸性条件で可溶性であるが、アンモニアガスやその他の
アルカリで、pHをアルカリ側にすることによりゲル化
し、不溶性となる。こうして得られる繊維状アテロコラ
ーゲンは、不織布に成形することが出来る。又、キチン
は甲殻類、例えば、カニ等の甲羅から粉末状で得られ
る。これを脱カルシウム及び除タンパク等の精製処理を
施し、アミド系溶剤に溶かした後、貧溶媒中に押出して
糸状とする。こうして得られたキチン糸を短繊維とした
後に、不織布に成形する。尚、不織布に成形する際に、
ポリビニルアルコール等をバインダーにしたり、或はゲ
ル化以前のコラーゲン溶液等もバインダーとして好まし
く利用することが出来る。その他、この生体親和性素材
には必要に応じてグリセリン、ポリエチレングリコール
等の多価アルコールを予め配合する等、従来公知の手法
で柔軟性を高め、皮膚に対する刺激を抑制する為の処理
を加えてもよい。同様に、抗菌剤やコンドロイチン硫
酸、その他の抗菌性を高めたり、或は創傷治癒に効果の
ある細胞賦活性物質を加える等の処理を行うことも出来
る。
【0014】本発明の創傷被覆材用シート状素材に、上
記の様な生体親和性素材を積層させて創傷被覆材を得る
方法としては、接着剤を用いて接着させ積層する方法が
ある。例えば、水蒸気透過性の疎水性高分子材料がシリ
コーンを素材とした薄層である場合には、医療用シリコ
ーン系接着剤を使用し、積層することが好ましい。この
際、接着剤が創傷被覆材の水蒸気透過性に対し、悪影響
を与えることが懸念される場合には、接着剤を細いドッ
ト状に転写することが出来るグラビアロール等を使用す
ることも出来る。その他、未硬化シリコーンゴムを表面
に有する薄層を直接生体親和性素材に重ね合わせ、シリ
コーンゴムが硬化する間、両者を圧着させることにより
積層することも出来る。即ち、生体親和性素材の多孔質
構造に硬化シリコーンゴムが「アンカー効果」を発揮
し、これにより両者が積層される。又、水蒸気透過性の
疎水性高分子材料が熱溶解性のポリウレタン等の他の水
蒸気透過性高分子材料を素材とした薄層である場合に
は、この表面を加熱、溶解し、直ちに生体親和性素材と
重ね合わせて圧着することで、上記と同様の「アンカー
効果」により両者を積層させることが出来る。又、以上
に述べた方法以外に、生体親和性素材に予め多孔性高分
子材料を積層しておき、しかる後に積層された多孔性高
分子材料にシリコーンその他の水蒸気通過性疎水性高分
子材料を複合化させることによっても、上記と同様に創
傷被覆材を得ることが出来る。この場合においても、積
層並びに複合化の方法は前述の手法に準じて実施するこ
とが出来る。
【0015】
【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に
具体的に説明する。 実施例1 孔径0.2μm、膜厚5μm及び空孔率85%の延伸多
孔PTFEに医療グレードシリコン(ダウコーニング
製、メディカルグレードエラストマーMDX−4−42
10)を含浸させ、150℃で10分加熱して、厚さ5
〜7μmのシリコーン膜である本発明の創傷被覆材用シ
ート状素材を得た。これを、牛真皮より抽出したコラー
ゲンを、トリプシン処理して得られたアテロコラーゲン
を加工し形成した厚さ70μmの不織布の一面に接着し
て創傷被覆材を得た。この際両者の接着は、シリコーン
系接着剤(ダウコーニング製、サイラスティック(商品
名) 医療用接着剤 タイプA)を1g/m2 の割合で
グラビアロールにて転写して行った。
【0016】実施例2 実施例1と同様にして厚さ5〜7μmの本発明の創傷被
覆材用シート状素材であるシリコーン層を得た。このシ
リコーン層の一面に、実施例1と同様の医療グレードシ
リコーンを約5μm厚に塗布し、40℃にて10分間加
熱して、半硬化状態とした後、スワイガニの甲羅より抽
出及び精製したキチンを加工して得られた厚さ0.12
μmの不織布と重ね、圧着した状態で、一晩40℃の条
件下に放置して創傷被覆材を得た。
【0017】実施例3 厚さ25μm、空孔率40%の延伸多孔ポリプロピレン
膜に、10重量%の医療グレード粘度調整剤を加えた医
療グレードシリコーンを30μm厚でコーティングし、
室温で30分間放置した。ポリプロピレン膜の空孔にシ
リコーンが充填したものを膜の透明度変化で確認した
後、膜上の余剰シリコーンをふきとり、40℃にて10
時間放置して、本発明の創傷被覆材用シート状素材であ
るシリコーン層を得た。これに実施例1と同様のシリコ
ーン系接着剤を同様の方法で転写し、実施例2で使用し
たのと同様のキチン不織布と接着して創傷被覆材を得
た。
【0018】実施例4 孔径0.2μm、膜厚5μm及び空孔率80%の延伸多
孔PTFEに、予め混合した2液性無溶剤ポリエーテル
型ポリウレタンを25g/m2の割合でコーティングし
た。架橋終了後の膜厚は40μmであった。これを実施
例1と同様の手法により厚さ70μmのアテロコラーゲ
ン不織布と積層して創傷被覆材を得た。
【0019】比較例1 実施例1で使用したと同様の、牛真皮より抽出したコラ
ーゲンをトリプシン処理して得られたアテロコラーゲン
を加工して、厚さ70μmの不織布とし、これを比較例
1の創傷被覆材とした。
【0020】比較例2 比較例1のアテロコラーゲン不織布の一面に、孔径0.
2μm、薄膜40μm及び空孔率80%の延伸多孔PT
FEを被覆し、これを比較例2の創傷被覆材とした。
尚、両者の接着は、実施例1と同様にして行った。
【0021】比較例3 膜厚25μmの有孔シリコーン充実膜とナイロンメッシ
ュ及びコラーゲンペプチドとを積層した構造を有する、
日本バイリーン(株)製のバイオブレン(商品名)を比
較例3の創傷被覆材とした。
【0022】比較例4 実施例2で使用したと同様の、スワイガニ甲羅より抽出
及び精製したキチンを加工して形成した厚さ0.12μ
mの不織布を比較例4の創傷被覆材とした。
【0023】使用例 以上の様にして形成した実施例及び比較例の創傷被覆材
を夫々用いて、創傷部位にこれらを適用し、1週間後の
滲出液の漏出及び創傷面の治癒状態を観察した。又、夫
々の創傷被覆材の水蒸気透過率を、JIS L 109
9−Bの方法により測定した。得られた結果を表1に示
した。
【0024】
【表1】
【0025】評価 創傷被覆材としての好ましい条件としては、下記の2点
が挙げられる。 (1)滲出液漏出がないこと、(2)水蒸気透過率が、
>130g/m2 ・hrであること。 以上の2点を満足するのは、実施例1、実施例2、実施
例4及び比較例2であった。しかし、比較例2の創傷被
覆材では創傷面が乾燥しすぎる傾向があり、又、創傷面
を被覆材を通しては全く観察することが出来なかった。
又、比較例1及び比較例4の創傷被覆材では、滲出液の
漏出は勿論、数日〜一週間の使用で、部分的に消化或は
ゲル化により創傷面の保護効果が不十分となっていた。
これに比較し、実施例の創傷被覆材では、最外層のシリ
コーン層がゲル化した生体親和性素材を支持している
為、創傷被覆材全体としての創傷面保護効果は十分保た
れていた。
【0026】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明の創傷被覆材
用シート状素材を適用した創傷被覆材は、十分な柔軟性
を有する薄膜状製剤であり、神経末端を空気から遮断す
る為に、創傷部位からの滲出液を吸収してこれを保持す
ることが出来、且つ創傷面からの適切な水蒸気蒸散性を
有し、創傷面が乾燥しすぎることがなく、創傷治癒効果
に優れたものである。又、本発明の創傷被覆材用シート
状素材を適用した創傷被覆材は、疎水性の外層を有する
為、創傷面に密着される創傷治癒効果を有する生体親和
性素材を長期間保持することが出来、細菌感染防止効果
を有し、創傷被覆材全体としての創傷面の保護効果が十
分に発揮される。更に、本発明の創傷被覆材用シート状
素材を適用した創傷被覆材は、創傷治癒過程を外部から
肉眼によって観察することが出来る程度の透明性をも有
する為、適切な治療のタイミングを失することがなく、
更なる創傷治癒効果が発揮される。その他、本発明の傷
被覆材用シート状素材を適用した創傷被覆材では、万一
細菌感染があった場合には、抗菌入りクリームを創傷被
覆剤の上から塗布することで、十分な抗菌効果が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1において形成された創傷被覆
材の斜視図である。
【符号の説明】
1:延伸多孔質PTFEと複合化したシリコーンゴムの
薄膜 2:グラビアロールによって1に転写された接着剤 3:コラーゲン不織布

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水蒸気透過性高分子材料と多孔性高分子
    材料とから一体的になることを特徴とする創傷被覆材用
    シート状素材。
  2. 【請求項2】 水蒸気透過性高分子材料がシリコーンゴ
    ム、シリコーン共重合体或はポリウレタン等の疎水性高
    分子材料である請求項1に記載の創傷被覆材用シート状
    素材。
  3. 【請求項3】 多孔性高分子材料が延伸多孔質ポリテト
    ラフルオロエチレンである請求項1に記載の創傷被覆材
    用シート状素材。
JP4092304A 1992-03-19 1992-03-19 創傷被覆材用シート状素材 Pending JPH05261145A (ja)

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