JPH05250981A - 含浸形陰極およびその製造方法 - Google Patents

含浸形陰極およびその製造方法

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JPH05250981A
JPH05250981A JP4870992A JP4870992A JPH05250981A JP H05250981 A JPH05250981 A JP H05250981A JP 4870992 A JP4870992 A JP 4870992A JP 4870992 A JP4870992 A JP 4870992A JP H05250981 A JPH05250981 A JP H05250981A
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tungsten
oxygen
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scandium
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JP4870992A
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Tadanori Taguchi
貞憲 田口
Yukio Suzuki
行男 鈴木
Shunji Saito
駿次 斎藤
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電子管製造の封止工程における酸化に耐え、
電子放出特性の高い低仕事関数のバリウム−スカンジウ
ム−酸素の複合層を形成した含浸形陰極を得る。 【構成】 電子放出物質部4を、バリウムと酸素を含む
化合物2と、タングステンとスカンジウムおよび酸素を
含む化合物3の混合物で構成し、プレス成形後、焼結す
ることでバリウム−スカンジウム−酸素の複合層9を形
成する。 【効果】 実用レベルの低温度動作型の、かつ高い電子
放出特性をもつ含浸形陰極がが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ブラウン管,撮像管あ
るいは進行波管などの陰極線管に用いる陰極に係り、特
に低温で動作し、かつ高電流密度を得ることのできる含
浸形陰極とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の含浸形陰極は、タングステンW
などからなる耐熱多孔質基体にバリウムBa化合物から
なる電子放出物質を含浸した構造を基本とする。一般
に、陰極は高温に加熱された状態で使用されるものであ
るが、動作温度が高い程、その寿命が短くなるため、低
い動作温度で高密度の電子流を放出できるものが望まし
い。
【0003】陰極の動作温度を下げる方法としては、例
えば特公昭47−21343号公報に開示されたよう
に、陰極の表面にオスミウム−ルテニウム(Os−R
u)合金などを被覆するのが一般的である。しかし、こ
の方法では、陰極の動作温度は約1000°Cと依然と
して高く、低温かつ高電流密度の陰極を実用化する上で
大きな障害となっている。
【0004】また、同様に、陰極の動作温度を下げる他
の方法として、特開昭61−13526号公報に開示さ
れたように、オスミウム−ルテニウム(Os−Ru)合
金に代えてタングステンWと酸化スカンジウム(Sc2
3 )を真空スパッタ法による薄膜付着、あるいは原料
粉末を焼き付けて焼結体とした薄膜を被着する方法が提
案されている。
【0005】上記後者の陰極は、その動作中、陰極表面
に単分子層〜数分子層程度の低仕事関数の(Ba,S
c,O)複合層を形成して、動作温度を前者の陰極より
も150°C〜200°C下げることができるというも
のである。しかし、上記タングステン−酸化スカンジウ
ム(W−Sc2 3 )混合薄膜中のタングステンWが電
子管に陰極を封止する工程において酸化し、電子放出に
適した低仕事関数の(Ba,Sc,O)複合層の形成が
難しくなり、当該陰極固有の電子放出特性が大きく変動
し、その電子放出特性の再現性が乏しく、低温条件下で
の使用を難しいものにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、従来
技術による含浸形陰極は、電子管製造における封止工程
でタングステン−酸化スカンジウム(W−Sc2 3
混合薄膜中のタングステンWが酸化されることにより、
陰極本来の電子放出特性が得られないという問題があっ
た。この原因は、上記タングステン−酸化スカンジウム
(W−Sc2 3)混合薄膜中のタングステンWの酸化
によって、陰極表面に低仕事関数の(Ba,Sc,O)
複合層が容易に形成できなくなるためである。
【0007】図6は従来の含浸形陰極の概略構造を説明
する断面図であって、耐熱多孔質基体からなる耐熱金属
部01と電子放出物質04とからなる含浸形陰極ペレッ
ト05,障壁層06,スリーブ07,ヒータ08,タン
グステンWと酸化タングステン(WO3 )及び酸化スカ
ンジウム(Sc2 3 )を含む混合薄膜03から構成さ
れる。
【0008】ヒータ08への通電により陰極を加熱する
ことによって、上記混合薄膜03中でWO3 とSc2
3 が反応して、下記の反応式(1)によりSc2 3
12が生成される。 3WO3 +Sc2 3 →Sc2 3 12 (1) また、含浸形陰極ペレット05内において、耐熱金属部
01と電子放出物質04とが反応してバリウムBaを生
成する。例えば、電子放出物質04としてBa3 Al2
6 を使用し、耐熱金属部01としてWを使用した場合
には、下記の反応式(2)によりバリウムBaが生成さ
れる。 (2/3)Ba3 Al2 6 +(1/3)W →(1/3)BaWO4 +(2/3)BaAl2 4 +Ba (2) 生成したバリウムBaの一部は陰極表面に拡散すると同
時に、他のバリウムBaは混合薄膜03内に生成したS
2 3 12とBaが反応して、下記の反応式(3)に
よりスカンジウムScが生成される。 Sc2 3 12+3Ba→3BaWO4 +2Sc (3) 陰極表面に拡散したバリウムBa及びスカンジウムSc
は電子放出物質04の熱分解によって生ずる酸素や雰囲
気中の酸素と結合して、混合薄膜03上に単分子層から
数分子層程度の極めて薄い(Ba,Sc,O)複合層0
9を形成する。
【0009】この複合層09は、その電子放出仕事関数
が1.2eVと小さく、これが高い電子放出能が得られ
る要因である。しかし、従来の含浸形陰極は、この(B
a,Sc,O)複合層09の形成率に安定した再現性が
なく、陰極毎での電子放出特性が大きく変動していた。
(Ba,Sc,O)複合層09の再現性を良好にし、し
かも安定した被覆率を得るためには、薄膜中のW,WO
3 ,及びSc2 3 の量を自由に制御できることが必要
であるが、従来技術では、WO3 はWのスパッタ中に雰
囲気中のガスと反応させる方法を採用しており、雰囲気
中のガス分圧は大きく変動するためにWO3 の生成量を
制御できない。その結果、再現性のよい薄膜組成を得る
ことができない。
【0010】また、Sc2 3 に代えてSc2 3 12
を用いる方法を検討したが、スカンジウムScとタング
ステンWの蒸発速度が異なるために、徐々に薄膜組成が
徐々に変動し、常に同じ薄膜形成条件を見直す必要があ
った。この問題を解決しなければ、低温動作型の含浸形
陰極の実用化が難しい。本発明の目的は、電子管製造の
封止工程での酸化に耐え、陰極表面に電子放出に適した
低仕事関数のバリウム−スカンジウム−酸素複合層を容
易に形成できる含浸形陰極を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、タングステンWもしくはモリブデンMo
を含む耐熱金属部と、少なくともバリウムBaと酸素O
を含む化合物、および少なくともタングステンWとスカ
ンジウムScおよび酸素Oを含む化合物からなる電子放
出物質部とからなる陰極構成としたことを特徴とすると
する。
【0012】そして、この陰極は、上記耐熱金属粉と上
記電子放出物質粉を混合した後、所望の陰極ペレット形
状にプレス成形し、非酸化性雰囲気中で焼結することに
よって製造される。すなわち、本発明による含浸形陰極
は、タングステンWまたはモリブデンMoあるいはその
両方を含む耐熱金属部1と、少なくともバリウムBaと
および酸素Oを含む化合物2と、少なくともタングステ
ンWとスカンジウムScおよび酸素Oを含む化合物3と
からなる電子放出物質部4と、から構成されたことを特
徴とする。
【0013】また、本発明による含浸形陰極は、スリー
ブ7と、このスリーブの一端に装着されたタングステン
WまたはモリブデンMoあるいはその両方を含む耐熱金
属部1と少なくともバリウムBaとおよび酸素Oを含む
化合物2と、少なくともタングステンWとスカンジウム
Scおよび酸素Oを含む化合物3とからなる電子放出物
質部4とからなる含浸形陰極ペレット5と、この含浸形
陰極ペレット5の電子放出面に形成されたバリウムB
a,スカンジウムScおよび酸素Oの複合層9とを有
し、上記スリーブの他端にヒータを装着してなることを
特徴とする。
【0014】そして、本発明による含浸形陰極は、タン
グステンW粉またはモリブデンMo粉あるいはその両方
をバインダと共に顆粒化する第1顆粒化工程21と、バ
リウムBaと酸素Oの化合物を顆粒化する第2顆粒化工
程22と、タングステンWとスカンジウムScおよび酸
素Oの化合物を顆粒化する第3顆粒化工程23と、上記
第1顆粒化工程21,第2顆粒化工程22および第3顆
粒化工程23で顆粒化した各顆粒を秤量して混合する秤
量・混合工程25と、秤量・混合工程25で混合した混
合物を所望の形状にプレス成形してペレット化するペレ
ット化工程26と、ペレット化工程26で成形して得た
ペレットを水素雰囲気中で加熱してバインダを分解し、
タングステンW粉あるいはモリブデンMo粉を焼結し、
電子放出物質粉を固着する焼結・固着工程27と、障壁
層6と共にスリーブ7に組み付けて電子管用陰極に組み
立てる組立工程28とからなる製造方法により製造する
ことを特徴とする。
【0015】
【作用】上記構成とすることにより、同一の薄膜形成条
件のもとで、再現性が良好で、常に同じ組成の薄膜を形
成させ、(Ba,Sc,O)複合層9を再現性よく、し
かも安定した被覆率を得ることができる。すなわち、タ
ングステンWもしくはモリブデンMoを含む耐熱金属部
と、少なくともバリウムBaと酸素Oを含む化合物、お
よび少なくともタングステンWとスカンジウムScおよ
び酸素Oを含む化合物からなる電子放出物質部とからな
る陰極をヒータ8に通電して加熱することによって、当
該陰極表面に単分子層から数分子層程度の極めて薄い
(Ba,Sc,O)複合層9が形成される。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例につき、図面を参照し
て詳細に説明する。図1は本発明による含浸形陰極の一
実施例の概略構造を説明する断面図であって、1は耐熱
金属部、2はBa,Oを少なくとも含む第1の化合物、
3はW,Sc,Oを少なくとも含む第2の化合物、4は
第1の化合物2と第2の化合物3からなる電子放出物質
部、5は耐熱金属部1と電子放出物質部4とからなる含
浸形陰極ペレット、6は障壁層、7はスリーブ、8はヒ
ータ、9は(Ba,Sc,O)複合層である。
【0017】本実施例の含浸形陰極は、耐熱金属部1と
電子放出物質部4とからなる含浸形陰極ペレット5をス
リーブ7に組み付け、ヒータ8に通電することにより、
Ba,Oを少なくとも含む第1の化合物2と(W,S
c,O)を少なくとも含む第2の化合物3からなる電子
放出物質部4が熱分解され、前記した単分子層から数分
子層程度の極めて薄い(Ba,Sc,O)複合層9が陰
極表面に形成される。
【0018】この(Ba,Sc,O)複合層9は、その
電子放出仕事関数が1.2eVと小さく、高い電子放出
能が得られる。次に、上記(Ba,Sc,O)複合層9
の形成過程を、耐熱金属1としてタングステンW、バリ
ウムBa,酸素Oを含む第化合物2としてBa3 Al2
6 、タングステンW,スカンジウムSc,酸素Oを含
む化合物3としてSc2 3 12を使用した場合につい
て説明する。
【0019】前記したように、上記陰極ペレット5を加
熱すると、WとBa3 Al2 6 が反応して、次式によ
りバリウムBaが生成される。 (2/3)Ba3 Al2 6 +(1/3)W →(1/3)BaWO4 +(2/3)BaAl2 4 +Ba (4) 生成したバリウムBaの一部は陰極表面に拡散すると同
時に、他のバリウムBaはSc2 3 12と反応し、次
式によってスカンジウムScが生成される。
【0020】 Sc2 3 12+3Ba→3BaWO4 +2Sc (5) 陰極表面に拡散したバリウムBaおよびスカンジウムS
cは、電子放出物質4の熱分解によって生ずる酸素や雰
囲気中の酸素と結合して、陰極表面に単分子層から数分
子層程度の極めて薄い(Ba,Sc,O)複合層9を形
成する。このようにして、陰極表面のタングステンW
(もしくは、モリブデンMo)上に形成した複合層9
は、その電子放出仕事関数が1.2eVと小さく、高い
電子放出能が得られる。
【0021】従来の含浸形陰極は、電子管製造の封止過
程においてタングステンWとSc23 を含む薄膜中の
タングステンWが酸化するために、該薄膜中には金属タ
ングステンWが存在しなくなったり、酸化したタングス
テンWの一部は消失し、一部は他の酸化物と反応するた
めに、該薄膜中の組成および酸素量が所望組成,所望特
性から変動し、スカンジウムScの生成が容易に行われ
ない上、陰極表面には金属タングステンWが存在しなく
なるために、低仕事関数の(Ba,Sc,O)複合層9
の形成が難しく、また、再現性がなく、優れた電子放出
特性が得られず、陰極ごとに特性が大きく変動する。
【0022】これに対して、本発明の実施例によれば、
電子管製造の封止工程を通しても、酸化するのは陰極表
面に露出している耐熱金属基体のタングステンWもしく
はモリブデンMoである。このタングステンWもしくは
モリブデンMoの酸化物は何れも蒸気圧が高いため、陰
極の活性化過程で蒸発し消失する。その後には、再び酸
化されていないタングステンW,モリブデンMoが陰極
表面に露出することになる。また、低仕事関数の複合層
9を構成するバリウムBa,スカンジウムScは、陰極
内部で生成されるため、電子管製造の封止工程で影響を
受けることがない。
【0023】バリウムBa,酸素Oを含む化合物として
は、BaO,(Ba,Sr,Ca)O,Ba3 Al2
6 ,Ba2 Sc5 5 ,Ba3 Sc4 9 ,Ba5 Ca
Al4 12等が好適である。また、タングステンW,ス
カンジウムSc,酸素Oを含む化合物としては、Sc2
3 12,Sc6 WO12,Sc2 (WO4 12等の何れ
も同等の効果が得られる。
【0024】なお、タングステンWに代えたSc2 Mo
3 12,Sc2 Mo2 12でも上記と同等の効果を得る
ことができる。このように、本実施例の陰極構造とする
ことによって、電子管製造の封止工程を通しても、定常
的に低仕事関数の(Ba,Sc,O)複合層9の形成が
可能となり、高い電子放出特性が得られ、低温動作が可
能となる。さらに、WとSc23 を含む薄膜の形成を
省略でき、コストを低減できる。
【0025】図2は図1で説明した本発明による含浸形
陰極の一実施例の製造方法を説明する概略工程図であっ
て、21は第1顆粒化工程、22は第2顆粒化工程、2
3は第3顆粒化工程、24は秤量・混合工程、25はペ
レット化工程、26は焼結・固着工程、27は組立工程
である。第1顆粒化工程21は耐熱金属部1となるタン
グステンWの顆粒化を行うもので、平均粒径5μmのタ
ングステンWの粉末を1.25%のポリメチルメタアク
リルをバインダとして添加したアセトン液中で攪拌しな
がら徐々にアセトンを揮発させてタングステンW粉の顆
粒化を行う。この顆粒を200メッシュの篩で分粒して
陰極製造用タングステン顆粒とする。
【0026】第2顆粒化工程22は化合物2となるBa
−O化合物の顆粒化工程であり、BaCO3 ,CaCO
3 ,Al2 3 の粉末をモル比で4:1:1の割合で秤
量し、混合した後、水素雰囲気中で1100°C→16
00°Cの2段階熱処理によってBaCO3 ,CaCO
3 炭酸塩の酸化物への分解(1100°C)と共に、4
BaO・CaO・Al2 3 の組成からなるBa−Ca
アルミネート化合物を合成(1600°C)して化合物
2を得る。
【0027】第3顆粒化工程23は、タングステンW,
スカンジウムSc,酸素Oを含む化合物3の製造工程で
あり、WO3 ,Sc2 3 の粉末をモル比で3:1の割
合となるように秤量して混合し、この混合物を酸素雰囲
気中で1100°CでSc23 12を合成し、これを
粉砕してタングステンWの粉末と同様に顆粒化を行い、
400メッシュの篩で分粒する。
【0028】秤量・混合工程で24では、前記第1顆粒
化工程で得たタングステンWの顆粒と、第2顆粒化工程
で得たBa−Caアルミネート化合物顆粒、および第3
顆粒化工程で得たSc2 3 12化合物顆粒を体積比で
7:2:1になるように秤量した後、混合する。耐熱金
属基体となるタングステンW顆粒は、通常、陰極ペレッ
トの6〜8割の範囲で選ばれる。Ba−Caアルミネー
ト化合物2とSc2 3 12化合物3の割合は、電子放
出の寿命特性から考え、1:1よりも前者の方が多くな
るように選ぶのがよい。
【0029】ペレット化工程25では、直径1.25m
mの円筒状のプレス型を用い、高さが0.5mmとなる
ように、プレス型にタングステンW顆粒1とBa−Ca
アルミネート化合物顆粒2、およびSc2 3 12化合
物顆粒3の混合物が定量自動供給され、5t/cm2
プレス成形圧力によって最終形状を見越した所望形状の
プレス成形体(ペレット)を作成する。
【0030】次に、焼結・固着工程26で上記ペレット
を水素雰囲気中で1000°C→1700°Cの2段階
熱処理し、含浸形陰極ペレット5を得る。この熱処理の
うち、1000°Cの処理は、タングステンW粉末,B
a−Caアルミネート化合物粉末、およびSc2 3
12化合物粉末の顆粒化工程で用いたバインダーであるポ
リメチルメタアクリルを分解蒸発させることを目的とす
る。このバインダーの分解後に炭素を残さないことが必
要である。したがって、この処理は600°C〜120
0°Cから選んでもよい。
【0031】そして、2段目の1700°Cの熱処理
は、タングステンW粉同士の焼結と電子放出物質粉同士
あるいはタングステンW粉との固着を目的とする。この
処理温度は電子放出物質の融点以下(化合物により融点
は異なるが、2000°C以下が目安)で実施する必要
がある。このようにして得た含浸形陰極ペレット5を、
組立工程27において、モリブデンMoからなるカップ
状の障壁層6に挿入し、さらにヒータ8を内包するため
のスリーブ7に挿入した後、これらを固着して電子管用
陰極本体を製作する。
【0032】上記のようにして製造した含浸形陰極につ
いて、電子管製造の封止工程を模擬し、470°Cで1
0min酸化処理を施して電子放出特性を測定したとこ
ろ、次のような結果が得られた。すなわち、この電子放
出特性は、真空度10-7パスカル級の高真空容器内に陽
極と陰極からなる平行平板の2電極を配置し、陰極温度
を1150°Cまで加熱して陰極の活性化を実施した
後、陰極温度を850°Cに下げて陽極に正のパルス電
圧を印加し、陰極からの放出電流を測定した。
【0033】図3は酸化処理した陰極の活性化時間によ
る電流密度変化の説明図であって、陰極の活性化時間と
動作温度850°Cにおける放出電流密度の関係を示
す。同図において、31は酸化処理を実施しない場合の
特性、32と33は酸化処理を実施した場合であり、3
2は本実施例の含浸形陰極の特性、33は陰極表面にW
−Sc2 3 薄膜を有している従来の陰極の特性であ
る。
【0034】同図から分かるように、従来の陰極の特性
33は活性化を繰り返しても放出電流密度は回復(上
昇)しない。本実施例の陰極の特性32は、最大の放出
電流密度を示す活性化時間は無処理陰極の特性31に比
べて若干長いが、実用上は問題がなく、また、放出電流
密度の減少は見られない。図4は酸化処理を実施した本
発明による含浸形陰極の一実施例(図3の特性32をも
つ陰極)について活性化した陰極表面のオージェスペク
トルの説明図であって、このオージェスペクトルは陰極
温度850°Cの動作状態で分析したものである。
【0035】同図から、陰極表面のタングステンW上に
電子放出に適した単分子層から数分子層程度の極めて薄
い低仕事関数の(Ba,Sc,O)複合層9が形成され
ていることを示している。このことから、本実施例の含
浸形陰極は、電子管製造時の封止工程における酸化に耐
えることができ、優れた低温動作の含浸形陰極であるこ
とが分かる。
【0036】図5は本発明による含浸形陰極を実装した
電子銃を用いたカラー陰極線管の一例を示す断面図であ
って、51はフェースパネル、52はファンネル、53
はネック、54は電子銃、55はシャドウマスク、56
は蛍光層、57は偏向装置である。同図において、電子
銃54を構成する3つの陰極には前記で説明した含浸形
陰極が実装されており、各陰極から放射された電子ビー
ムR,G,Bは偏向装置57で水平と垂直に偏向されて
フェースパネル51の内面に塗布された蛍光層に射突さ
れ、所要の映像を再生する。
【0037】このカラー陰極線管によれば、低電力で明
るい映像の再生が可能であり、高信頼性かつ長寿命の映
像再生装置を構成することができる。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による含浸
形陰極によれば、電子管製造の封止工程における酸化に
耐え、陰極表面に電子放出に適した低仕事関数の(B
a,Sc,O)複合層を容易に形成でき実用レベルの低
温動作型の含浸形陰極を得ることができる。
【0039】そして、本発明による含浸形陰極を用いた
電子銃を電子管に実装した場合、その動作温度を従来の
Os−Ru被覆含浸形陰極に比べて、150°C〜20
0°C下げることが可能となり、陰極表面からのBaお
よびBaOの蒸発温度を1桁低減でき、グリッドエミッ
ション等に起因する管球特性の劣化を防止することがで
きる。
【0040】さらに、本発明による含浸形陰極が低温動
作であることから、陰極を加熱するヒータの信頼性も大
幅に向上でき、かつ、従来のごとくOs−Ru薄膜ある
いはW−Sc2 3 薄膜の形成工程を省略することがで
き、製造工程を簡略化できると共に、製造コストを低減
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による含浸形陰極の一実施例の概略構造
を説明する断面図である。
【図2】本発明による含浸形陰極の一実施例の製造方法
を説明する概略工程図である。
【図3】酸化処理した陰極の活性化時間による電流密度
変化の説明図である。
【図4】酸化処理を実施した本発明による含浸形陰極の
一実施例について活性化した陰極表面のオージェスペク
トルの説明図である。
【図5】本発明による含浸形陰極を実装した電子銃を用
いたカラー陰極線管の一例を示す断面図である。
【図6】従来の含浸形陰極の概略構造を説明する断面図
である。
【符号の説明】
1 耐熱金属部 2 Ba,Oを少なくとも含む第1の化合物 3 W,Sc,Oを少なくとも含む第2の化合物 4 第1の化合物2と第2の化合物3からなる電子放出
物質部 5 耐熱金属部1と電子放出物質部4とからなる含浸形
陰極ペレット 6 障壁層 7 スリーブ 8 ヒータ 9 Ba,Sc,O複合層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】タングステンまたはモリブデンあるいはそ
    の両方を含む耐熱金属部と、少なくともバリウムとおよ
    び酸素を含む化合物と、少なくともタングステンとスカ
    ンジウムおよび酸素を含む化合物とからなる電子放出物
    質部から構成したことを特徴とする含浸形陰極。
  2. 【請求項2】スリーブと、このスリーブの一端に装着さ
    れたタングステンまたはモリブデンあるいはその両方を
    含む耐熱金属部と少なくともバリウムとおよび酸素を含
    む化合物と、少なくともタングステンとスカンジウムお
    よび酸素を含む化合物とからなる電子放出物質部とから
    なる含浸形陰極ペレットと、この含浸形陰極ペレットの
    電子放出面に形成されたバリウム,スカンジウムおよび
    酸素の複合層とを有し、上記スリーブの他端にヒータを
    装着してなることを特徴とする含浸形陰極。
  3. 【請求項3】タングステン粉またはモリブデン粉あるい
    はその両方をバインダと共に顆粒化する第1顆粒化工程
    と、バリウムと酸素の化合物を顆粒化する第2顆粒化工
    程と、タングステンとスカンジウムおよび酸素の化合物
    を顆粒化する第3顆粒化工程と、上記第1顆粒化工程,
    第2顆粒化工程および第3顆粒化工程で顆粒化した各顆
    粒を秤量して混合する秤量・混合工程と、秤量・混合工
    程で混合した混合物を所望の形状にプレス成形してペレ
    ット化するペレット化工程と、ペレット化工程で成形し
    て得たペレットを水素雰囲気中で加熱して前記バインダ
    を分解し、タングステン粉あるいはモリブデン粉を焼結
    して電子放出物質粉を固着する焼結・固着工程と、障壁
    層と共にスリーブに組み付けて電子管用陰極に組み立て
    る組立工程とからなる含浸形陰極の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09500232A (ja) * 1994-03-15 1997-01-07 フィリップス エレクトロニクス ネムローゼ フェンノートシャップ ディスペンサ陰極およびディスペンサ陰極の製造方法
KR20020084615A (ko) * 2001-05-03 2002-11-09 삼성에스디아이 주식회사 음극 구조체
JP2004031081A (ja) * 2002-06-25 2004-01-29 New Japan Radio Co Ltd 含浸型カソード

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