JPH05222450A - 高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
高張力鋼板の製造方法Info
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Abstract
降伏比鋼を製造する場合に、従来法に比して強度・靱性
を向上し、なおかつ生産性の極めて高い製造方法を提供
するものである。 【構成】 鋼を直接焼き入れ、あるいは再加熱焼き入れ
し、焼き戻しを行って高張力鋼を製造する方法におい
て、焼き入れ後の金属組織が主にベイナイト、マルテン
サイトあるいはこの混合組織であって、焼き戻しの昇温
速度を1℃/秒以上とし、Ac1 点以下の保持を15分
以内とし、その後放冷もしくは強制冷却を行うことで強
度靱性の優れた低降伏比鋼板を短時間で製造する。 【効果】 強度、靱性に優れた低降伏比鋼板が高効率に
製造可能となる。
Description
生産性の高い強度、靱性に優れた低降伏比高張力鋼板製
造方法に関するものである。
(鋼板、鋼管、形鋼など)においては耐震性の優れた低
降伏比高張力鋼板が求められている。このような要求に
対して、例えば特開昭55−41927号公報あるいは
特開昭55−97425号公報記載の方法が提案されて
いる。前者の方法は制御圧延、制御冷却を用いた方法で
あり、後者の方法は焼き入れ、焼き戻しによる方法であ
るが、いずれの場合も引っ張り強度が60kgf/mm
2 級の鋼に適用される方法であり、60kgf/mm2
を超える鋼に対して一般的に適用されるものではない。
法の問題点を排除し、60kgf/mm2 を超える強度
の鋼に対しても適用できる強度、靱性に優れた低降伏比
高張力鋼板の容易なる製造方法を提供することにある。
ろは (1)重量%で、 C :0.02〜0.5%、 Mn:0.02〜10.0%、 Si:0.01〜1.0%、 Al:0.1%以下、 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
板を直接焼き入れあるいは再加熱後に焼き入れし、その
後、焼き戻しを行って高張力鋼板を製造する方法におい
て、焼き入れ後の金属組織が主にベイナイト、マルテン
サイトあるいはこの混合組織であって、焼き戻し時の昇
温速度を1℃/秒以上、焼き戻し温度をAc1 点以上の
温度とし、さらに保持を15分以内で終了し、その後、
放冷もしくは強制冷却を行うことを特徴とする生産性の
高い高強度、高靱性低降伏比高張力鋼板の製造方法。 (2)重量%で、 C :0.02〜0.5%、 Mn:0.02〜10.0%、 Si:0.01〜1.0%、 Al:0.1%以下、 が基本成分であり、 Mo:3.0 %以下、 Ni:10.0 %以下、 Cr:3.0 %以下、 V :0.1 %以下、 Nb:0.1 %以下、 Ti:0.1 %以下、 B :0.003 %以下、 Cu:10.0 %以下、 Co:10.0 %以下、 W :3.0 %以下 のいずれか1種、または2種以上をさらに含有する残部
がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板を直接焼き入
れあるいは再加熱後に焼き入れし、その後焼き戻しを行
って高張力鋼板を製造する方法において、焼き入れ後の
組織が主にマルテンサイト、ベイナイトあるいはこの混
合組織であって、焼き戻し時の昇温速度を1℃/秒以
上、焼き戻し温度をAc1 点以上の温度とし、さらに保
持時間を15分以内で終了し、その後放冷もしくは強制
冷却を行うことを特徴とする生産性の高い高強度、高靱
性低降伏比高張力鋼板の製造方法にある。これにより焼
き戻しマルテンサイトあるいは焼き戻しベイナイトの微
細な金属組織状態を損なうこと無く、その組織中に微細
なマルテンサイト、残留オーステナイトあるいはセメン
タイトを分散させ、強度、靱性にすぐれた低降伏比高張
力鋼板を製造し得る。
発明の基本となる考え方は以下の通りである。まず、金
属学的な見地から直接焼き入れを含む焼き入れ、焼き戻
しで製造される鋼の強度、靱性は第一に金属組織の微細
さに依存している。通常、焼き入れ後の鋼の金属組織は
マルテンサイトとベイナイトからなり、その結晶粒は微
細である。従って、その強度は高い。しかしながら、焼
き入れままの金属組織は過飽和の炭素原子を多く含有し
ており、強度は高いが延性や靱性が充分ではない。そこ
で、通常、焼き入れ後には焼き戻し処理が行われる。一
般に焼き戻し処理は焼き戻し処理を行う温度に設定され
た熱処理炉内に鋼板を挿入し、Ac1 点以下の所定の温
度に到達せしめ、その後に数10分程度の保持を行うこ
とで行われており、昇温の為の時間を含めると極めて長
時間の焼き戻し処理が行われる。このため焼き戻し後の
金属組織は焼き戻しマルテンサイトあるいは焼き戻しベ
イナイトとなる。このような鋼の降伏比は、焼き戻しに
より析出したセメンタイト等の炭化物が可動転位を固着
するために降伏強度が高く、90%を超えることが多
い。
留オーステナイトは結晶粒内に転位を多く含有するなど
のために降伏強度が低く、低降伏比となる。さらに残留
オーステナイト部分にはマルテンサイト(フェライト)
との固溶度の差に基づいて、固溶原子を吸収し、マルテ
ンサイト中で降伏強度の上昇をもたらす固溶原子等を低
減する効果もある。そこで鋼を低降伏比とするには、残
留オーステナイトを生成せしめることや焼き戻し処理中
にマルテンサイトや残留オーステナイトの転位の回復を
制御することが必要であると思われる。従って、焼き戻
し処理温度をAc1 点温度以上とし金属組織の一部をオ
ーステナイト化し、冷却中にそのまま残留させるか再び
マルテンサイトにすることによって、焼き戻しマルテン
サイト、焼き戻しベイナイトとの混合組織を形成し、降
伏比の低い鋼板を製造できると考えられる。
法でこれを行えば、オーステナイト化部分が粗大とな
り、冷却後は粗大炭化物や粗大なマルテンサイトを含む
金属組織となるので強度、靱性の観点から好ましくな
い。また、オーステナイト化しなかった部分についても
焼き戻し温度が高いためにマルテンサイトの転位が著し
く減少したり、場合によっては再結晶により粗大なフェ
ライトが生成し、強度、靱性が著しく低下する。そこ
で、本発明者らは種々の熱処理条件を検討し、焼き戻し
温度をAc1 点温度以上としながらも急速加熱、短時間
保持により強度、靱性を向上した上で鋼の降伏比を容易
に低下することを見いだした。
での焼き戻しによって生じたオーステナイト部分をマル
テンサイトラス境界上などに微細に現出し(Ac1 点温
度以下でマルテンサイトラス境界上などに析出したセメ
ンタイトがオーステナイトの核となる)、それに引き続
く冷却中にこれがマルテンサイト、残留オーステナイ
ト、セメンタイトあるいはこれらの混合物となること、
およびこのようにして生じたマルテンサイト、残留オー
ステナイト部分が転位の豊富さなどの為に降伏点の低下
と引っ張り強度の上昇に寄与するために生じると考えら
れる。一方、オーステナイト化しなかった部分について
も、急速加熱、短時間焼き戻しによって、金属組織中に
存在する炭化物は微細に分散し、マルテンサイト変態な
どの変態により導入された転位や加工されたオーステナ
イトから引き継がれた転位が金属組織中に多く残存する
事によって強度が上昇し、場合によっては可動転位が延
性を促進することによって鋼の靱性を増すのである。
ナイト化した際にオーステナイト部分がマルテンサイト
(フェライト)との固溶度の差に基づいて、残部金属組
織の固溶元素を吸収、低減するという効果も期待でき、
このような効果は一度オーステナイト化した部分がフェ
ライトとセメンタイトとなった場合でも有効である。以
上のような考え方によって、本発明法によれば、マルテ
ンサイトあるいはベイナイトの微細な金属組織状態を損
なうこと無く、その組織中の極めて微少な部分を一度オ
ーステナイト化し、この部分を冷却中に再び微細なマル
テンサイト、残留オーステナイト、セメンタイトもしく
はこの混合物として、焼き戻しマルテンサイトあるいは
ベイナイト中に分散させることにより、強度、靱性にす
ぐれた低降伏比高張力鋼板を製造し得るのである。
に昇温速度を増加させ、保持を15分以内の短時間とす
ることにより、焼き戻しに要する実処理時間を大幅に減
少させることができ、生産性を著しく向上することが可
能となるのである。即ち、本発明法を適用する事によっ
て、従来法に比してきわめて短時間で、強度、靱性に優
れた低降伏比鋼板の製造が可能なのである。このような
新しい発見に基づき本発明法における鋼の化学成分、製
造条件を詳細に調査した結果本発明者らは特許請求の範
囲の第1項、第2項に示したような強靱な厚鋼板の製造
方法を創案した。
る。Cは鋼の強化を行うのに有効な元素であり0.02
%未満では十分な強度が得られない。一方、その含有量
が0.5%を越えると、溶接性を劣化させる。Siは脱
酸元素として、また、鋼の強化元素として有効である
が、0.01%未満の含有量ではその効果がない。一
方、1.0%を越えると、鋼の表面性状を損なう。Mn
は鋼の強化に有効な元素であり、0.02%未満では十
分な効果が得られない。一方、その含有量が10.0%
を越えると鋼の加工性を劣化させる。Alは脱酸元素と
して添加されるが、0.10%を越えると、鋼の表面性
状を劣化させる。
晶粒の微細化と析出強化の面で有効に機能するので溶接
部の靱性を劣化させない範囲で使用しても良い。このよ
うな観点からその添加量の上限を0.1%とする。C
u,Ni,Cr,Mo,Co,Wはいずれも鋼の焼き入
れ性を向上させる元素であり、本発明の場合、その添加
により鋼の強度を高めることが出来る。しかし、過度の
添加は鋼の靱性および溶接性を損なうため、Cu≦1
0.0%、Ni≦10.0%、Cr≦3.0%、Mo≦
3.0%、Co≦10.0%、W≦3.0%に限定す
る。Vは析出強化により鋼の強度を高めるのに有効であ
るが、過度の添加は鋼の靱性を損なうために、その上限
を0.10%とする。Bは鋼の焼き入れ性を向上させる
元素である。本発明における場合、その添加により鋼の
強度を高めることができるが、過度の添加はBの析出物
を増加させ鋼の靱性を損ねるのでその含有量の上限を
0.003%とする。
べる。本発明はいかなる鋳造条件で鋳造された鋼片につ
いても有効であるので、特に鋳造条件を特定する必要は
ない。また、鋳片を冷却すること無くそのまま熱間圧延
を開始しても一度冷却した鋳片をAc3 点以上に再加熱
した後に圧延を開始しても良い。なお、本発明において
は圧延あるいは圧延後の冷却の条件に付いては特に規定
するものではないが、それはいかなる圧延、冷却を行っ
ても本発明の有効性が失われないからである。ただし、
本発明では焼き戻しにより鋼中の結晶粒、炭化物を微細
に分散させるという目的があるので本発明の効果を最大
限に利用するためには、焼き入れ後に金属組織がマルテ
ンサイトあるいはベイナイトで、結晶粒が微細であるこ
とが望ましい。
き戻し温度をAc1 点以上としたのはこれ未満では炭化
物をオーステナイト化することができないからである。
焼き戻し中の昇温速度を1℃/秒以上、Ac1 点以上の
温度域での保持を15分以内としたのは、昇温速度が遅
く、保持時間が長ければ昇温中に転位の回復、組織・析
出物の粗大化、固溶炭素原子の析出が生じてしまい強
度、靱性を高めることができないこととオーステナイト
の粗大化が進み、冷却後の組織が粗大で不均一となり、
靱性を劣化させるからである。
を示す。表1及び表2は実施例の鋼の成分を示すもので
ある。このような成分の鋼を表2及び表3に示す製造条
件で製造した場合に、同じく表2及び表3に示すような
強度、靱性、焼き戻しに要した処理時間が得られた。表
3、表4では本発明の条件に合致しない項目に下線をつ
けて示して有る。これによれば、本発明法は比較法に比
べ明らかに生産性が高く、引っ張り強度・靱性に優れた
低降伏比鋼板を製造することが可能であり、本発明は有
効である。
て、従来法に比較して極めて短時間で、かつ強度、靱性
に優れた低降伏比鋼板が製造可能となり、生産性を著し
く向上することが出来た。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.02〜0.5%、 Mn:0.02〜10.0%、 Si:0.01〜1.0%、 Al:0.1%以下、 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
板を直接焼き入れあるいは再加熱後に焼き入れし、その
後、焼き戻しを行って高張力鋼板を製造する方法におい
て、焼き入れ後の金属組織が主にベイナイト、マルテン
サイトあるいはこの混合組織であって、焼き戻し時の昇
温速度を1℃/秒以上、焼き戻し温度をAc1 点以上の
温度とし、さらに保持を15分以内で終了し、その後、
放冷もしくは強制冷却を行うことを特徴とする生産性の
高い高強度、高靱性低降伏比高張力鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 重量%で、 C: 0.02〜0.5%、 Mn:0.02〜10.0%、 Si:0.01〜1.0%、 Al:0.1%以下、 が基本成分であり、 Mo:3.0 %以下、 Ni:10.0 %以下、 Cr:3.0 %以下、 V :0.1 %以下、 Nb:0.1 %以下、 Ti:0.1 %以下、 B :0.003 %以下、 Cu:10.0 %以下、 Co:10.0 %以下、 W :3.0 %以下 のいずれか1種、または2種以上をさらに含有する残部
がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板を直接焼き入
れあるいは再加熱後に焼き入れし、その後焼き戻しを行
って高張力鋼板を製造する方法において、焼き入れ後の
組織が主にマルテンサイト、ベイナイトあるいはこの混
合組織であって、焼き戻し時の昇温速度を1℃/秒以
上、焼き戻し温度をAc1 点以上の温度とし、さらに保
持時間を15分以内で終了し、その後放冷もしくは強制
冷却を行うことを特徴とする生産性の高い高強度、高靱
性低降伏比高張力鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP02503092A JP3228986B2 (ja) | 1992-02-12 | 1992-02-12 | 高張力鋼板の製造方法 |
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JP02503092A JP3228986B2 (ja) | 1992-02-12 | 1992-02-12 | 高張力鋼板の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH05222450A true JPH05222450A (ja) | 1993-08-31 |
JP3228986B2 JP3228986B2 (ja) | 2001-11-12 |
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ID=12154518
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP02503092A Expired - Lifetime JP3228986B2 (ja) | 1992-02-12 | 1992-02-12 | 高張力鋼板の製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3228986B2 (ja) |
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- 1992-02-12 JP JP02503092A patent/JP3228986B2/ja not_active Expired - Lifetime
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