JPH05163110A - 徐放性フェロモン製剤 - Google Patents

徐放性フェロモン製剤

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JPH05163110A
JPH05163110A JP3351437A JP35143791A JPH05163110A JP H05163110 A JPH05163110 A JP H05163110A JP 3351437 A JP3351437 A JP 3351437A JP 35143791 A JP35143791 A JP 35143791A JP H05163110 A JPH05163110 A JP H05163110A
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豊久 桜田
Kenichi Ito
健一 伊藤
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昭 山本
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】本発明はフェロモンを長期にわたり均一な速度
で放出できる放出制御性を有すると共に、製剤としての
加工性と機械的強度を有し、しかも土中で分解すること
のできる交信撹乱用徐放性フェロモン製剤を提供する。 【構成】この徐放性フェロモン製剤は、3−ヒドロキシ
酪酸と他のヒドロキシ脂肪酸との縮重合物であって、3
−ヒドロキシ酪酸に起因する成分を70〜98モル%含有す
る3−ヒドロキシ酪酸共重合体からなる厚さ15μm以上
の均質膜を、内蔵する性フェロモン物質の放出制御層と
して有するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は徐放性フェロモン製剤、
とくには害虫防除に使用される性フェロモン物質(以
下、単にフェロモンとする)を長期間一定の速度で徐々
に放出して大気中に漂わせ、害虫の交尾行動を阻害して
害虫を防除する、交信撹乱用のフェロモン製剤に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、害虫防除に有効なフェロモンを容
器中に封入し、その放出速度を経時的に一定に保持する
工夫が数多く提案され実施されている。これらの提案の
一つの方法として、フェロモンを吸着剤に担持したり、
またこれをポリマ−担持層に混合して保持させたものが
知られている。
【0003】しかしながら、これらの方法には初期のフ
ェロモンの放出速度が過大で、その後は経時的に低下す
ること、また、これらの製剤はいずれも放出の後半にお
いて担持層に吸着されたまま放出されずに残留するフェ
ロモン量が多いという欠点がある。
【0004】このようにフェロモン製剤として求められ
る重要な特性は、フェロモンを長期にわたり均一な速度
で放出すると共に、吸着されたままで残留するフェロモ
ンの量をできるだけ減らすことである。この要求を満た
す製剤形態は液状のフェロモンを、これに対して適度の
透過性を有するバリヤー層を備えた容器中に封入したも
のが提案されている。
【0005】例えば、製剤壁として、ポリアミド、ポリ
スルフォンアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、
ポリウレア、ポリエステルなどのフェロモンの透過速度
の小さい素材を用いて放出制御を行う方法としてマイク
ロカプセル化したものがある(米国特許第 2800457号、
第 2800458号、第 3577515号各明細書など) 。
【0006】また、より長期間にわたり均一にフェロモ
ンを放出するために、フェロモンをポリエチレンやエチ
レン−酢酸ビニル共重合体などの細管に封入したもの
(特開昭56- 142202号、同57 -9705号、-72904号、-451
01号、 -156403号、同59 -216802号、同60 -215367号各
公報など) や、バリヤー層として塩化ビニリデンまたは
その共重合体の薄膜を用い、これにポリオレフィンなど
の膜をラミネートしたフィルムからなる袋に封入したも
の(特開平2-49702号公報)がある。
【0007】このように徐放性フェロモン製剤には、長
期間にわたり均一にフェロモンを放出できる特性のほか
に、使用後土中に埋没した際に分解することが望まれ
る。しかし、これらの製剤は化学合成高分子からなって
いるため、使用後に土中に埋没しても分解することがな
く、環境破壊につながる欠点がある。
【0008】一方、特開昭61-41321号公報には、ポリ乳
酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸などの
ポリヒドロキシ酸またはこれらの重合性成分に基づく共
重合体などの生物分解性重合体より、凝固法によって得
られる厚さ方向に不均斉な構造の壁を有する中空繊維
に、フェロモン、薬剤、忌避剤、殺虫剤等の活性物質を
充填し、両端を封止したものが示されている。しかし、
これは製造上の制約が多く高価なほか、活性物質の充填
量が少ない上に、不均斉な膜構造を有することから放出
速度が大きく、フェロモン製剤の特性として必要な長期
間の使用には適さない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、フェロモンを長期にわたり均一な速度で放出す
る放出制御性を有すると共に、製剤としての加工性と機
械的強度を有し、しかも土中で分解することのできる交
信撹乱用徐放性フェロモン製剤を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、加工が容
易で製剤としての機械的強度があり柔軟性を呈する程度
の膜厚において充分なフェロモン放出制御性を持つ素材
について種々検討の結果、生物分解性を併せ持つ、3−
ヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシ脂肪酸との縮重合物
で、3−ヒドロキシ酪酸に起因する成分を70〜98モル%
含有する3−ヒドロキシ酪酸共重合体からなる厚さ15μ
m以上の均質膜を、内蔵するフェロモンの放出制御層と
して用いると、上記目的の達成できることを見出し、本
発明を完成した。
【0011】これを説明すると、本発明で用いられるフ
ェロモンの制御層は、フェロモン製剤として必要とされ
る放出速度や機械的強度、加工性により、3−ヒドロキ
シ酪酸に起因する成分を70〜98モル%含有する共重合
体、とくには3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草
酸または4−ヒドロキシ酪酸とからなる共重合体が用い
られる。
【0012】3−ヒドロキシ酪酸の単独重合体、すなわ
ちポリヒドロキシ酪酸は結晶性が高く、比較的硬く、か
つ脆いもののため機械的強度が劣り、製剤としての長期
使用に耐えないが、3−ヒドロキシ酪酸を3−ヒドロキ
シ吉草酸などと共重合体化すると結晶性が下がって柔軟
になり製剤用素材として利用可能になる。
【0013】本発明のフェロモン製剤では放出制御層と
して上記共重合体からなる厚さ15μm以上の均質膜を使
用しているため、様々な気象条件下でも安定して長時間
均一な放出制御ができるほか、実用性のある機械的強度
を保持することができる。
【0014】本発明による徐放性フェロモン製剤は3−
ヒドロキシ酪酸の共重合体を熱により溶融するか溶剤に
より溶解するなどした後、任意の方法でフェロモン製剤
として必要な形状に成形し、厚さ15μm以上の均質膜を
持たせたものにフェロモンを充填したものである。
【0015】長期間にわたって放出制御を行うのに適し
たフェロモン製剤の形状には、袋状、チューブ状、ボト
ル状、スティック状、マイクロカプセル状などが挙げら
れるが、より均一に放出を行うためには袋状のものが望
ましい。また、これらの形状により必要な放出速度や機
械的強度が異なり、それにより必要とする膜厚、共重合
体の組成比、可塑剤や核形成剤などの充填剤の添加量も
変化する。
【0016】本発明の徐放性フェロモン製剤における放
出制御層の厚さは、15μm未満では機械的強度が不足す
るほか放出速度が速くなりすぎて十分な放出制御ができ
なくなり、また 300μmを超えると放出速度が低下して
放出面積を大きくしなければならなくなるので、15μm
以上、とくには15〜 300μmが適当である。しかし、ア
セテート系フェロモンなど3−ヒドロキシ酪酸の共重合
体と親和性の高いものでは放出速度が速くなり過ぎるた
め厚さを20μm以上とするのが望ましい。
【0017】上記共重合体の組成比は3−ヒドロキシ酪
酸の含有量を70〜98モル%とする必要がある。この含有
量が98モル%を超えると共重合体の結晶性が強過ぎて硬
くて脆いものとなり、70モル%未満では柔軟性が強過ぎ
て機械的強度が低下し、いずれの場合もフェロモン製剤
として実用的な機械的強度のものでなくなる。
【0018】しかし、フェロモン製剤として袋状のもの
を使用するときはとくに柔軟性を付与する必要があるの
で、この含有量を70〜95モル%とするのが望ましく、こ
れが95モル%を超えると得られるポリマーは剛性が強過
ぎて袋状にするのが困難になる。また、チューブ状製剤
やボトル状製剤などでは機械的強度を保持するためにこ
の含有量を80〜98モル%とするのが望ましい。
【0019】本発明の製剤に内蔵するフェロモンは、リ
ンシ目害虫のフェロモンとして知られている炭素原子数
12〜20の不飽和脂肪族の、炭化水素、アセテ−ト、アル
デヒド、アルコールまたはケトン化合物で、これらの1
種または2種以上の混合物として使用されるが、これに
はさらに必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色
剤などを添加混合してもよい。
【0020】
【実施例】以下、本発明の具体的態様を実施例および比
較例により説明するが、本発明はこの実施例に限定され
るものではない。 実施例1.Tダイ押出成形により、3−ヒドロキシ酪酸
に起因する成分の含有量が84モル%である3−ヒドロキ
シ酪酸/3−ヒドロキシ吉草酸共重合体からなる厚み50
μmの均質なフィルムを作製した。得られたフィルムを
用いて、内のりが 2.5×4cmの大きさになるように四辺
をシールし、フェロモンの放出表面積を20cm2 とした袋
の中に、ワタアカムシのフェロモンであるZ,Z/E-7,11-
ヘキサデカジエニルアセテートを80mg封入した。この徐
放性製剤を気温30℃、風速0.5m/秒の条件下に放置して
上記フェロモンの放出速度の経時変化を測定したとこ
ろ、この徐放性製剤は0.5mg/日の均一な放出を 120日以
上維持し、この間フェロモンの袋表面への浸出も見られ
ず、良好な結果が得られた。
【0021】比較例1.3−ヒドロキシ酪酸に起因する
成分の含有量が84モル%である3−ヒドロキシ酪酸/3
−ヒドロキシ吉草酸共重合体をクロロホルムに溶解して
2重量%の溶液を調製した。これを平滑なガラス板に流
延し、5分間風乾した後、静かに石油エーテル中に浸漬
し凝固させることにより総厚60μmの不斉膜を得た。得
られた膜の均質な面が外側になるようにして実施例1と
同様に製袋しフェロモンを封入し、同一の条件下に放置
して放出速度を測定したところ、フェロモンの表面滲出
が速く製剤の表面に液相を形成し、液垂れを起こすなど
徐放性製剤として好ましくなかった。
【0022】比較例2.フィルムの素材として、厚さ50
μmの均質な高密度ポリエチレンフィルムを用いたほか
は、比較例1と同様にして徐放性製剤を作成し放出速度
を測定したところ、比較例1と同様の結果が得られた。
【0023】実施例2.3−ヒドロキシ酪酸に起因する
成分の含有量が76モル%であり、核形成剤としてチッ化
ホウソ1重量%を含む、3−ヒドロキシ酪酸/3−ヒド
ロキシ吉草酸共重合体を用いて、Tダイ押出成形により
厚み 300μmの均質なシートを作製した。このシートを
用いて、内のりが5×80cmの大きさになるように四辺を
シールし、放出表面積を800cm2とした袋の中にニカメイ
ガのフェロモンであるZ-11−ヘキサデセナールを 100mg
封入した。この徐放性製剤を直径約25cmの丸太に巻付け
て固定し、実施例1と同様の条件下に放置して上記フェ
ロモンの放出速度の経時変化を測定したところ、実施例
1と同様の結果が得られた。
【0024】比較例3.袋の材料として3−ヒドロキシ
酪酸に起因する成分の含有量が66モル%のものを用いた
ほかは、実施例2と同様にして均質膜を有する徐放性製
剤を作成し放出速度を測定したところ、この製剤は0.6m
g/日の均一な放出を維持したものの、柔軟性が強く製剤
としての強度が低かったため取扱時に伸びを生じてシー
ル部より漏れが発生するなど実用的ではなかった。
【0025】実施例3.3−ヒドロキシ酪酸に起因する
成分の含有量が95モル%であり、可塑剤としてトリアセ
チン10重量%を含む、3−ヒドロキシ酪酸/3−ヒドロ
キシ吉草酸共重合体をTダイ押出成形することにより厚
み20μmの均質なフィルムを作製した。このフィルムを
用いて、内のりが 2.5×3cmの大きさになるように四辺
をシールし、放出表面積を 15cm2とした袋の中にチャハ
マキのフェロモンであるZ-11−テトラデセニルアセテー
トを 110mg封入した。この徐放性製剤を実施例1と同様
の条件下に放置して上記フェロモンの放出速度の経時変
化を測定したところ、この徐放性製剤は0.7mg/日の均一
な放出を 120日以上維持し、良好な結果が得られた。
【0026】比較例4.3−ヒドロキシ酪酸の単独重合
体をTダイ押出成形することにより厚み10μmの均質な
フィルムを作製した。材料としてこのフィルムを用いた
ほかは実施例3と同様にして徐放性製剤を作製し放出速
度を測定したところ、この製剤は比較的均一な放出を維
持したものの、表面に液層を生じた上、柔軟性を持たな
いことから取扱時に割れるなどして実用に適さないもの
であった。
【0027】実施例4.3−ヒドロキシ酪酸に起因する
成分の含有量が98モル%である、3−ヒドロキシ酪酸/
3−ヒドロキシ吉草酸共重合体を押出成形することによ
り内径 0.8mm、外径 1.2mmの均質膜からなるチューブを
作製した。このチューブを20cmの長さに切断し、この中
にワタアカミムシのフェロモンであるZ,Z/E-7,11-ヘキ
サデカジエニルアセテートを80mg注入し、両端を溶封し
た。この徐放性製剤を実施例1と同様の条件下に放置し
て上記フェロモンの放出速度を測定したところ、この製
剤は0.1mg/日の均一な放出を 120日以上維持し、良好な
結果が得られた。
【0028】実施例1〜4で作製した3−ヒドロキシ酪
酸を主成分とする共重合体の各成形品と、比較例2で用
いた高密度ポリエチレンのフィルムとを、それぞれ7月
から3か月間土中に埋蔵したところ、下記の結果が得ら
れた。 記 実施例1のフィルム:殆ど消失し回収不能。 実施例2のシート :周辺は消失し、虫食いがひどく、
かなりぼろぼろになる。 実施例3のフィルム:完全に消失。 実施例4のチューブ:かなりぼろぼろで、所々切れてい
た。 比較例2のフィルム:変化は見られなかった。
【0029】
【発明の効果】本発明の徐放性フェロモン製剤は長期間
均一に放出制御させることができると共に、製剤として
必要な柔軟性や機械的強度を容易に持たせることができ
る。また、素材として使用する3−ヒドロキシ酪酸共重
合体は生物分解性を持っているので、フェロモン製剤と
して使用後、土中に埋没してもバクテリヤ等により容易
に分解されるので、環境保護の点でも有効である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 昭 新潟県中頸城郡頸城村大字西福島28番地の 1 信越化学工業株式会社合成技術研究所 内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】3−ヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシ脂肪
    酸との縮重合物であって、3−ヒドロキシ酪酸に起因す
    る成分を70〜98モル%含有する3−ヒドロキシ酪酸共重
    合体からなる厚さ15μm以上の均質膜を、内蔵する性フ
    ェロモン物質の放出制御層として有する徐放性フェロモ
    ン製剤。
  2. 【請求項2】他のヒドロキシ脂肪酸が3−ヒドロキシ吉
    草酸または4−ヒドロキシ酪酸である請求項1記載の徐
    放性フェロモン製剤。
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