JPH05144628A - 磁場発生装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気共鳴撮影装置に於ける画像のボケや歪を
抑える。 【構成】 磁気共鳴撮影装置に用いる磁場発生装置が作
る磁場の均一度を良好に保ちつつ、画像のボケや歪の原
因となる整磁板に発生する環状電流（整磁板に発生する
渦電流が全体として形成する電流の流れ）抑制のため、
整磁板を数磁極片に分割し、各々の磁極片間に電気的絶
縁体で且つ磁性体を充填させたものを用いて磁場発生装
置を作製する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は磁場発生装置に関し、特
に磁気共鳴を利用して物体の画像を得る磁気共鳴撮影装
置（ＭＲＩ）に用いて好適な磁場発生装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】図２及び図３を用いて、従来例について
説明する。永久磁石を用いた磁場発生装置では、希土類
磁石を用いた磁石対向型が主流である。ＭＲＩとして使
用するには、所定空間（磁石対向型では対向磁石面間）
に均一磁場を発生させる必要がある。しかし、磁石を対
向させただけでは対向磁石面間からはみ出す磁束があり
均一磁場とはならない。このため、磁石対向型の磁場発
生装置では、図２に示すように、継鉄２４の内部に異極
同士を対向させた磁石対２０ａ、２０ｂを設け、その対
向面に、外周に突起部２８ａ、２８ｂを夫々有する整磁
板２２ａ、２２ｂ（軟鉄等の磁性体からなる磁極板）を
設けて均一磁場を得ている。

【０００３】周知のように、ＭＲＩでは、被測定物の位
置情報を得るため（画像を得るため）に３方向の傾斜磁
場を必要とする。即ち、任意の１点の位置を確定するた
めには３方向（例えばデカルト座標のＸ、Ｙ、Ｚ座標）
での位置情報が必要なため、３方向の傾斜磁場が必要と
なる。

【０００４】図２の３０ａ、３０ｂは、Ｚ軸方向に傾斜
磁場を作るためのコイルであり、夫々整磁板２２ａ、２
２ｂの対向面の外周部分に設けられる。コイル３０ａと
３０ｂにパルス電流を流すことにより、整磁板２２ａ、
２２ｂ間に形成された均一磁場にパルス磁場が重畳さ
れ、Ｚ軸方向に磁場強度が変化する所謂傾斜磁場が形成
される。

【０００５】上述の如く、ＭＲＩでは傾斜磁場形成用の
パルス磁場を必要とするが、パルス磁場により整磁板内
に渦電流が発生するという問題がある。図３に示すよう
に、Ｚ方向にパルス磁場をかける（即ち、整磁板２２ａ
に設置されたコイル３０ａに矢印３２の向きにパルス電
流を流す）と、傾斜磁場形成用パルス磁場が３４の向き
（紙面の表から裏に向かう向き）に発生し、例えば矢印
３６の向きの渦電流が発生する。全体として例えば複数
の環状電流３８ａ、３８ｂ、３８ｃが流れる。この環状
電流によりパルス磁場と逆向きの磁場が作られるため、
傾斜磁場の立ち上がりが遅れたり、均一性が乱れたりす
るので、得られる画像にボケや歪が生じるという問題が
あった。

【０００６】上記の従来の問題点を解決するため、(a)
整磁板の抵抗率を高めて渦電流の発生を抑制したり、
(b) 整磁板の形状を工夫して渦電流に起因する環状電
流を阻止する等の試みが行なわれてきた。しかし、これ
らの従来の方法には、以下に述べるように、様々の問題
があった。

【０００７】まず、上記(a)の従来の方法によれば、整
磁板を、Ｍｎ−Ｚｎフェライト等の酸化物磁性体の焼結
体、或いは樹脂等の絶縁物に純鉄等の金属磁性粉体を混
入して製作している。

【０００８】整磁板としてＭｎ−Ｚｎフェライト等の酸
化物磁性体の焼結体を用いると、渦電流は殆ど発生しな
くなるという利点がある。しかし、脆い焼結体の整磁板
を磁石の上を滑らせて磁気回路に組み込む際、整磁板が
壊れ易いという欠点がある。更に、直径約１ｍ程度の大
型フェライト焼結体を作製すること自体が容易でないと
いう問題もある。一方、金属磁性粉体を樹脂等で固める
方法では、大型の整磁板を製作するのに製作費用がかか
り過ぎるという問題がある。

【０００９】次に、整磁板の形状を工夫して環状電流を
阻止する方法としては、(c) 薄い磁性体を電気的に絶
縁しながら積層して整磁板を製作する、(d) 磁極片を
ブロック状にして電気的に絶縁しながら組み合わせて整
磁板を構成する、(e) 整磁板に環状電流を妨げる切れ
込みや溝を設ける、等が提案されている。

【００１０】しかし、整磁板を薄い磁性体を積層して製
作する上記(c)の方法では、製作費が高くなるだけでな
く、整磁板の強度が弱いという問題がある。一方、磁極
片のブロック化、及び、切れ込みや溝を設ける上記(d)
(e)の方法では、整磁板の製作は簡単であり且つ整磁板
の強度にも問題はないが、非磁性体の部分が整磁板に存
在することになるので、磁場の不均一化を招くという問
題がある。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の従来の問題を解決し、磁場の均一性を損なうことなく
環状電流の発生を防止し、容易に製作可能な整磁板を有
する磁場発生装置を提供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】厚み方向に磁化された１
対の円板状又はリング状の永久磁石を対向させて継鉄内
部に設け、上記１対の永久磁石の対向面の夫々に整磁板
を設け、対向した整磁板の間の空間に磁場を発生させる
磁場発生装置に於いて、上記整磁板は複数の磁極片の組
み合わせで構成され、該複数の磁極片間に電気的絶縁体
で且つ磁性体である物質を設けている。

【００１３】

【実施例】ここでは、整磁板の一例として、図１のよう
に同一形状の扇型の磁極片１０ａ乃至１０ｈを組み合わ
せて円形に作製した整磁板について述べる。２８ａ（２
８ｂ）は図２の２８ａ（２８ｂ）に対応する突起部であ
る。隣接する磁極片間に、電気的絶縁体で且つ磁性体で
ある物質を設ける（充填する）。即ち、磁極片１０ａ乃
至１０ｈは電気的には絶縁されているが磁気的には結合
された状態となる。従って、図３の環状電流３８ａ等の
発生を阻止できると共に、良好な傾斜磁場を発生するこ
とが可能である。

【００１４】磁極片間には、Ｍｎ−Ｚｎフェライト等の
酸化物磁性体、或いはセンダスト等の金属磁性体を設け
る。酸化物磁性体は電気的絶縁体であるが、金属磁性体
は電気的絶縁体ではないので電気的絶縁物を混合して電
気的絶縁体とする。磁極片間に設けた磁性体は磁場によ
り磁気的に飽和しないことが重要である。

【００１５】以下に、本発明と従来例との実験結果を示
す。まず、従来例（一体型の円板型整磁板）と、本発明
に係る整磁板（円板型整磁板を扇型状の磁極片に８分割
し各々の磁極片間に金属磁性体を樹脂と混合して充填し
た整磁板）とで、傾斜磁場の９０％までの立ち上がり時
間を比較した。その結果、従来例では２．６ｍｓであ
り、本発明に係る整磁板では１．２ｍｓであった。

【００１６】次に、(f) 一体型の円板型整磁板（従来
例１）と、(g) 円盤型整磁板を扇型状の磁極片に８分
割し、分割面に電気的絶縁塗料を塗布して組み立てた整
磁板（従来例２）と、(h) 円盤型整磁板を扇型状の磁
極片に８分割し、各々の磁極片間に電気的絶縁体で且つ
磁性体である物質（実験例では金属磁性体を樹脂と混合
した物質）を充填した整磁板（本発明）と、を用意し、
１対の整磁板の間に発生する磁場の均一度を調べた。上
記(f)(g)(h)の整磁板を夫々磁気回路に組み込んだ直後
の磁場均一度と、補助磁石や鉄片等を用いて磁場調整を
行なった後の磁場均一度とを表１に示す。磁場均一度
は、上記(f)の非磁性体部分の存在しない一体型整磁板
では良好であるが、上記(g)の整磁板では極端に悪化す
ることがわかる。しかし、上記(h)の本発明に係る整磁
板では、良好な磁場均一度を得られることがわかる。

【表１】

【００１７】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
磁場均一度を良好に保ったまま環状電流を抑えることが
可能となり、傾斜磁場の立ち上がり時間が短縮できた。
従って、本発明の磁場発生装置を使用すれば画像のボケ
や歪を抑えることができる。

【００１８】更に又、整磁板は通常約１ｍの直径を有す
るので、従来の一体型整磁板を高い精度で製作するのは
非常に困難である。しかし、本発明による整磁板は複数
の磁極片を組み合わせて製作するため、各磁極片を精密
に加工すればよく、製作費用が低いという長所がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の磁場発生装置に使用する整磁板の一
例。

【図２】対向磁石型の磁場発生装置の断面図。

【図３】パルス磁場により整磁板に発生する渦電流。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 厚み方向に磁化された１対の円板状又は
   リング状の永久磁石を対向させて継鉄内部に設け、上記
   １対の永久磁石の対向面の夫々に整磁板を設け、対向し
   た整磁板の間の空間に磁場を発生させる磁場発生装置に
   於いて、 上記整磁板は複数の磁極片の組み合わせで構成され、 該複数の磁極片間に電気的絶縁体で且つ磁性体である物
   質を設けた、 ことを特徴とする磁場発生装置。