JPH05117044A

JPH05117044A - 耐熱スポーリング性キヤスタブル耐火物

Info

Publication number: JPH05117044A
Application number: JP3306829A
Authority: JP
Inventors: Matsuichi Yoshimura; 松一吉村; Junichiro Mori; 淳一郎森; Masao Oguchi; 征男小口
Original assignee: Kawasaki Refractories Co Ltd
Current assignee: JFE Refractories Corp
Priority date: 1991-10-24
Filing date: 1991-10-24
Publication date: 1993-05-14

Abstract

(57)【要約】【目的】耐熱スポーリング性、耐食性を向上させるこ
とにより、鋼浴部での使用における耐用性を改善する。【構成】アルミナクリンカーとスピネルクリンカーと
を配合してなるアルミナ・スピネル質キャスタブル耐火
物に、含有率が５〜２０重量％になるような割合でアル
ミナ・ジルコニアクリンカーを配合する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明はキャスタブル耐火物に
関し、詳しくは、耐熱スポーリング性に優れたアルミナ
・スピネル質キャスタブル耐火物に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、各種窯炉に耐火物ライニングを施
す場合、不定形耐火物を用いて施工を行う、いわゆる不
定形化が急速に進み、取鍋、タンディッシュなどの溶融
金属容器の内張りには、比較的低コストで、性能的にも
熱スポーリングや構造スポーリングの発生が少ないとい
う利点を具備しているジルコン質原料を骨材とするジル
コン質キャスタブル耐火物が使用されてきた。

【０００３】しかし、高級鋼の生産量が増加するととも
に、取鍋内精練が行われるなど、溶鋼の処理条件も苛酷
化し、耐火ライニングに求められる耐用性も高度なもの
となるにともない、上記ジルコン質キャスタブル耐火物
では、その耐食性が必ずしも十分ではなく、さらに耐食
性に優れたキャスタブル耐火物が要求されるようになる
とともに、鋼中の非金属介在物を低減するために、溶鋼
への非金属物質の溶出の少ない中性あるいは塩基性のキ
ャスタブル耐火物が強く要求されるようになってきた。

【０００４】そこで、上記ジルコン質キャスタブル耐火
物に代って、アルミナ質原料とスピネル質原料を配合し
てなるアルミナ・スピネル質キャスタブル耐火物が用い
られるようになってきた。そして、その性能をさらに向
上させるために、例えば、スピネルクリンカー１０〜８
５重量部、アルミナ５〜３０重量部、ハイアルミナセメ
ント１０〜２５重量部より構成されるアルミナ・スピネ
ル質キャスタブル耐火物（特開昭５５−２３００号公
報）、少なくとも６０重量部のスピネルクリンカー、ア
ルミナクリンカー１０〜３５重量部、アルミナセメント
３〜１０重量部より構成されるアルミナ・スピネル質キ
ャスタブル耐火物（特開昭６０−６０９８５号公報）、
さらには、アルミナクリンカー５０〜９０重量部、粒径
１mm以下のスピネルクリンカー５〜４０重量部、アルミ
ナセメント３〜２５重量部より構成されるアルミナ・ス
ピネル質耐火物（特開平１−８７５７７号公報）などの
種々の耐火物が提案されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のア
ルミナ・スピネル質キャスタブル耐火物を実炉に使用し
た場合、加熱・冷却の繰返しにともない、稼働面に平行
に亀裂が発生し、そのために剥離を生じる、いわゆる熱
スポーリングが発生するという問題点がある。そして、
この問題点を解決するために、直径３０mm程度の粗骨材
を添加して、熱応力の分散を図る試みがなされている
が、いまだ十分な耐熱スポーリング性を有するキャスタ
ブル耐火物は得られていないというのが実情である。

【０００６】この発明は、上記問題点を解決するもので
あり、十分な耐食性を有するとともに、耐熱スポーリン
グ性にも優れたアルミナ・スピネル質キャスタブル耐火
物を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明の耐熱スポーリング性キャスタブル耐火物
は、アルミナクリンカーとスピネルクリンカーとを配合
してなるアルミナ・スピネル質キャスタブル耐火物に、
含有率が５〜２０重量％になるような割合でアルミナ・
ジルコニアクリンカーを配合したことを特徴とする。

【０００８】この発明の耐熱スポーリング性キャスタブ
ル耐火物においては、アルミナ・ジルコニアクリンカー
が、アルミナ・スピネル質キャスタブル耐火物に配合さ
れており、このアルミナ・ジルコニアクリンカーは、キ
ャスタブル耐火物組成中においてアルミナ質原料及びス
ピネル質原料とは異なる熱間線膨脹率を示す。その結
果、キャスタブル耐火物の組織中に、アルミナ・スピネ
ル原料よりも熱間線膨脹率が０．２〜０．５％程度低い
部分が形成され、マトリックス中においてアルミナ・ス
ピネル質キャスタブル耐火物とアルミナ・ジルコニアク
リンカーの間にマイクロクラックが発生する。そして、
このマイクロクラックが熱応力を吸収し、キャスタブル
耐火物の施工体の剥離を招くような亀裂の発生を抑制
し、剥離が生じることを防止する。

【０００９】なお、この発明の耐熱スポーリング性キャ
スタブル耐火物に使用されるアルミナ・ジルコニアクリ
ンカーは、アルミナとジルコニアを溶融させることによ
り製造されるものが好ましい。また、アルミナ・ジルコ
ニアクリンカー中のジルコニアの含有割合は、１０〜３
０重量％であることが望ましい。これは、ジルコニアの
含有量が１０重量％未満の場合、アルミナ単体に近くな
り、その特性が強く出すぎるため、熱間線膨脹率がアル
ミナ単体の熱間線膨脹率とあまり変らなくなり、アルミ
ナ・ジルコニアクリンカーを添加する意義がなくなり、
また、ジルコニアの含有量が３０重量％を越えると、ジ
ルコニアに起因する異常膨脹が顕著に表れるようにな
り、体積安定性が損われて好ましくないことによる。

【００１０】また、アルミナとジルコニアを溶融させる
ことにより製造されるアルミナ・ジルコニアクリンカー
は、５〜８％の見かけ気孔率を示すが、この発明の耐熱
スポーリング性キャスタブル耐火物に用いられるアルミ
ナ・ジルコニアクリンカーの見かけ気孔率は、１０％以
下であることが望ましい。

【００１１】さらに、アルミナ・ジルコニアクリンカー
の配合割合は、配合後のキャスタブル耐火物全体の５〜
２０重量％の範囲にあることが望ましい。すなわち、５
重量％未満では、耐熱スポーリング性などに関して所期
の効果が得られず、また、２０重量％を越えるとアルミ
ナ・スピネル質主原料の存在割合が低下して特性が劣化
するからである。

【００１２】また、母材のアルミナ・スピネル質キャス
タブル耐火物の組成については特に制約はないが、アル
ミナ質原料７０〜７５重量部、スピネルクリンカー２０
〜２５重量部、アルミナセメント５〜８重量部からなる
キャスタブル耐火物を用いることにより良好な結果を得
ることができた。

【００１３】なお、この発明の耐熱スポーリング性キャ
スタブル耐火物においては、シリカフラワー、分散剤
（減水剤）、硬化促進剤、硬化遅延剤などを必要に応じ
て添加することも可能である。

【００１４】

【実施例】以下、この発明の実施例を比較例とともに示
して、発明の特徴をさらに詳しく説明する。この実施例
においては、表１に示すような配合割合で各成分を配合
して、実施例１，２，３及び比較例１，２のアルミナ・
スピネル質キャスタブル耐火物を調製し、これを試料と
して表１に示す各物性を測定した。なお、比較例１は、
アルミナ・ジルコニアクリンカーを含有しないアルミナ
・スピネル質耐火物であり、比較例２は、アルミナ・ジ
ルコニアクリンカーをこの発明の範囲（５〜２０重量
％）より小さい割合（３重量％）で含有させたアルミナ
・スピネル質耐火物である。

【００１５】

【表１】

【００１６】なお、表１に示す実施例１，２，３及び比
較例２に配合されているアルミナ・ジルコニアクリンカ
ーは、アルミナ７１重量％とＺｒＯ₂２８重量％を含有
する電融品であり、その見かけ気孔率は５．３％で、電
融アルミナなどとほぼ同等の見かけ気孔率を有してい
る。また、このアルミナ・ジルコニアクリンカーは、ア
ルミナと比較して、特徴的な熱間線膨脹傾向を有してい
る。すなわち、図１に示すように、アルミナ・ジルコニ
アクリンカーは、１１００℃付近からアルミナより熱間
線膨脹率が０．２％程度低く、この熱間膨脹率の差が前
述のように、マトリックス中にマイクロクラックを生じ
させ、熱応力を吸収させる要因となる。なお、この実施
例においては、上記のアルミナ・ジルコニアクリンカー
を粉砕し、粒度を１mm〜に調整してアルミナ・スピネル
質キャスタブル耐火物に添加配合している。

【００１７】また、表１において、スポーリングテスト
は、１３００℃に１５分加熱した後１５分空冷を行い、
これを繰り返す１３００℃空冷法によるテストの結果を
示している。

【００１８】さらに、表１において、スラグ試験は、ロ
ータリー法（１６５０℃×６時間、普通鋼：転炉スラグ
＝１：１）による試験結果を示している。

【００１９】表１に示すように、アルミナ・ジルコニア
クリンカーを、所定の割合で配合した実施例１，２，３
の試料は、比較例１及び２の試料に比べて１５００℃焼
成後の弾性率が低く、スポーリングテストの剥落までの
回数が、比較例よりも大幅に増大していることがわか
る。したがって、実使用した場合にも、剥落が減少し、
耐用性が相当に向上するものと判断される。

【００２０】また、スラグ試験における溶損比率及び浸
透比率より、実施例１，２，３の耐火物は耐溶損性及び
耐スラグ浸透性とも比較例１，２と同等か又はそれより
優れており、総合的にみて耐食性が向上していることが
わかる。

【００２１】さらに、曲げ強さ、圧縮強さについても、
実施例１，２，３の試料は、比較例１，２の試料と比べ
てほぼ同等の特性を有しており、実用上十分な強度を有
していることがわかる。

【００２２】上記の試験結果より、実施例１，２，３に
代表されるこの発明のキャスタブル耐火物は、溶鋼容器
の内張り用不定形耐火物として好ましい特性を有してい
るものと判断することができる。

【００２３】さらに、上記実施例２と比較例１のアルミ
ナ・スピネル質耐火物を用いて取鍋の鋼浴部に施工し、
実使用して使用状況及び使用後の状態を観察・比較し
た。

【００２４】比較例１の耐火物を用いた場合、使用回数
が５０回を越えると、スラグライン下部に３０〜５０mm
厚さの剥離が発生し、１００回を越えるとほぼ全面が剥
離するに至り、最終的な耐用回数は１８０回であった。

【００２５】これに対し、実施例２の耐火物を用いた場
合、使用回数が８０回を経過するまでは剥離の発生が認
められず、さらに使用を継続しても、部分的な剥離が認
められただけで、剥離が全面に広がることはなかった。
その結果、実施例２の耐火物を用いた場合、最終の耐用
回数は２３０回に達し、比較例１に比べて耐用性（寿
命）が大幅に向上することがわかった。

【００２６】なお、この発明は、上記実施例により限定
されるものではなく、耐火骨材であるアルミナ・スピネ
ル質キャスタブル耐火物の組成や、アルミナ・ジルコニ
アクリンカーの配合割合などを適宜変更したり、あるい
は、必要に応じて結合剤成分、分散剤（減水剤）、硬化
促進剤、硬化遅延剤などを添加したりすることなど、こ
の発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の応用を行うこと
が可能である。

【００２７】

【発明の効果】上述のように、この発明の耐熱スポーリ
ング性キャスタブル耐火物は、アルミナ・スピネル質キ
ャスタブル耐火物に、含有率が５〜２０重量％になるよ
うな割合でアルミナ・ジルコニアクリンカーを配合して
いるので、耐熱スポーリング性が大幅に改善されるとと
もに耐食性が向上し、従来のアルミナ・スピネル質キャ
スタブル耐火物を使用した場合には十分な耐用性を得る
ことができないような溶融金属容器の鋼浴部での使用に
おいて優れた耐用性を実現することができる。

【００２８】また、その結果として、耐火物施工体の寿
命を延長させることが可能になり、稼働効率を向上させ
て耐火物原単位の低減や省力化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】アルミナ及びアルミナ・ジルコニアクリンカー
の熱間線膨脹曲線を示す図である。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】アルミナクリンカーとスピネルクリンカ
ーとを配合してなるアルミナ・スピネル質キャスタブル
耐火物に、含有率が５〜２０重量％になるような割合で
アルミナ・ジルコニアクリンカーを配合したことを特徴
とする耐熱スポーリング性キャスタブル耐火物。
【請求項２】前記アルミナ・ジルコニアクリンカーと
して、ジルコニアの含有率が１０〜３０重量％の範囲に
あるアルミナ・ジルコニアクリンカーを用いることを特
徴とする請求項１記載の耐熱スポーリング性キャスタブ
ル耐火物。