JPH0444861Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 考案の目的 （産業上の利用分野） この考案は斜板式圧縮機の斜板に関するもので
ある。

（従来の技術） 従来より、この種の斜板式圧縮機は、第５図に
示すように構成されている。

すなわち、対接された一対のシリンダブロツク
１の中心部には回転軸２が支持され、該回転軸２
には鉄製の斜板３が嵌合固定されている。前記シ
リンダブロツク１には等間隔にそれぞれシリンダ
ボア４が形成されており、各シリンダボア４内に
はアルミニウム材料製のピストン５が摺動自在に
嵌合されている。そして、ピストン５と斜板３と
の間に半球状をなす鉄製のシユー６を所定のシユ
ークリアランス（ピストン５とシユー６とのクリ
アランス及びシユー６と斜板３とのクリアランス
の両方をいう）を持つた状態で配置させることに
よつて両者を連結している。

そして、近年圧縮機自体をさらに軽量化した
り、作動時の慣性モーメントを減らしたりするた
め、前記斜板３を比重の軽いアルミニウム材料を
用いて形成することが考えられている。

（考案が解決しようとする問題点） ところが、前記アルミニウム材料の熱膨張率は
鉄の熱膨張率よりもはるかに高いため、前記斜板
３にこれらの材料を用いた場合には、この圧縮機
の低温雰囲気における作動時や、各部材が高温状
態となる高速運転時に次に示すような問題が生じ
る。

斜板３が鉄製の場合、シユー６と斜板３とは
同材質のため摺動性が向上するが、低温雰囲気
においてはアルミニウム材料製のピストン５が
鉄製の斜板３よりも大きく収縮するため、前記
シユークリアランスが小さくなり、圧縮機の作
動時に焼き付きが生じる。また、高速運転時に
は逆にシユークリアランスが大きくなり異音の
発生する原因となる。

斜板３がアルミニウム材料製の場合、上述し
たシユークリアランスの問題は生じないが、該
アルミニウム材料は高温時に軟化し易いため鉄
に比べ剛性が劣るとともに、高速運転時にシユ
ー６と斜板３との摺動性が低下する。

考案の構成 （問題点を解決するための手段） 本考案は前記問題点を解決するため、アルミニ
ウム材料又は合成樹脂からなる軽量材で形成され
たボスの外周には、前記一対の鉄製のシユーに接
触する前後一対の鉄製の接触板と、各接触板間の
一部を連結する鉄製の連結部と、前記接触板間の
残部に充填された軽量材とから構成される円板状
の斜板部が突出形成されているという手段を採用
している。

（作用） 前記構成の斜板は接触板と連結部以外の部分を
軽量材で形成したため斜板自体が軽量化されると
ともに、鉄製のシユーとの接触部を同じく鉄製の
接触板で形成したため、これらの摺動特性が向上
する。

また、鉄製の接触板間に充填された軽量材は同
鉄よりも熱膨張率が高いため、斜板が高温となつ
た場合には、前記軽量材が鉄よりも大きく膨張す
ることによつて、両接触板を連結部の抗力に対抗
して互いに離間する方向に押圧し、接触板の表面
を同連結部の中央部を境として前後方向に均等量
だけ変位させる。また、斜板が低温となつた場合
には、上述した逆の作用によつて両接触板が近づ
く方向に変位する。従つて、斜板式圧縮機の高速
回転時や低温雰囲気における作動時でもそのアル
ミニウム材料製のピストンの熱膨張率に合わせて
斜板の厚みが変わることとなり、ピストンの係留
凹所と斜板の接触板との間に配置されるシユーは
常にほぼ一定のシユークリアランスを持つた状態
に維持される。

さらに、両接触板間を連結部で連結したため、
斜板自体の剛性をアルミニウム材のみで形成した
場合よりも非常に高くすることができる。

（実施例） 以下、この考案を具体化した一実施例を第１
図、第２図に従つて説明する。

対接された一対のシリンダブロツク１の中心部
には回転軸２が挿通され、軸受７，８によつて回
転可能に支承されている。前記回転軸２の中央部
には軽量材としてのアルミニウム材料で形成され
た斜板３がスプリングピン９によつて固定されて
いる。前記斜板３は軽量材としてのアルミニウム
材製のボス１０と、その外周に斜状に突出形成さ
れた円板状の斜板部１１とから構成されている。

この斜板部１１は後述するシユー６との接触部
を有する前後二枚の鉄製の接触板１２と、これら
の間を連結する環状の鉄製の連結部１３と、前記
接触板１２間の連結部１３以外の部分を充填する
同じくアルミニウム材料製の充填層１４とから構
成されている。従つて、この斜板部１１に熱が加
わると、熱膨張率の高いアルミニウム材料が鉄よ
りも大きく膨張することによつて、前記充填層１
４が連結部１３の抗力に対抗して両接触板１２を
互いに離間する方向に押圧し、斜板部１１自体の
厚みを厚くするとともに、斜板部１１が低温状態
となると、この逆の作用によつて同斜板部１１の
厚みを薄くするようになつている。

そして、前記斜板３は前記二枚の円板状の接触
板１２のほぼ中央部を前記連結部１３で連結した
ものにアルミニウム材料を鋳込むことによつて前
記ボス１０と斜板部１１とが一体的に形成されて
いる。

なお、この実施例におけるアルミニウム材料は
純アルミニウムやアルミニウム合金をも含む意味
で用いられている。

前記シリンダブロツク１には等間隔にそれぞれ
シリンダボア４が形成されている。各シリンダボ
ア４内にはアルミニウム製のピストン５が摺動自
在に嵌合され、その内側には前記斜板３の係留凹
所１５が形成されている。前記係留凹所１５には
斜板３の斜板部１１が配置されており、同係留凹
所１５の前後に形成された半球状凹所１５ａと前
記接触板１２との間には半球状をなす鉄製のシユ
ー６が所定のシユークリアランスをもつて配置さ
れている。従つて、この斜板３が吸入フランジ
（図示なし）と連通する斜板室２０において回転
されると、前記シユー６を介してピストン５がシ
リンダボア４内で往復運動されるようになつてい
る。

前記シリンダブロツク１の前端面には各シリン
ダボア４ごとに吸入孔１６ａと吐出孔１６ｂを開
口したフロントバルブプレート１６を介してフロ
ントハウジング１７が接合され、後端面には同じ
く吸入孔１８ａと吐出孔１８ｂを開口したリヤバ
ルブプレート１８を介してリヤハウジング１９が
接合されている。前記フロント及びリヤのハウジ
ング１７，１９の外周部には斜板室２０と連通す
る吸入室２１が形成され、中央部には吐出フラン
ジ（図示なし）と連通する吐出室２２がそれぞれ
形成されている。

なお、前記吸入孔１６ａ，１８ａ及び吐出孔１
６ｂ，１８ｂにはそれぞれリード弁（図示なし）
が設けられている。

次に、上記のように構成された斜板式圧縮機に
ついてその作用を説明する。

図示しない電磁クラツチ等によつて動力源と連
結された回転軸２が回転すると、それに嵌合固定
された斜板３が回転し、このためピストン５がシ
リンダボア４内を往復運動し、被圧縮流体の圧縮
作業が行われる。

前記圧縮機が高速で回転され各部材が高温状態
となつた場合には、前記ピストン５が膨張して前
後の半球状凹所１５ａ間の距離を長くする。とこ
ろが、斜板部１１の充填層１４を鉄よりも熱膨張
率が大きく且つ、前記ピストン５と等しいアルミ
ニウム材料で形成したため、この部分が前記熱に
よつて大きく膨張し、両接触板１２を互いに離間
する方向に押圧する。このとき、両接触板１２は
連結部１３で連結されているため、充填層１４に
加わる圧縮力が連結部１３に加わる引張力とつり
あう分だけ同接触板１２の表面が連結部１３の中
心部を境にして前後方向に均等量だけ変位する。
従つて、前記接触板１２はそれ自体の厚みがアル
ミニウム材料の熱膨張率とほぼ等しい割合で厚く
なることとなり、前記シユークリアランスが常に
ほぼ一定に保たれる。

また、圧縮機を低温雰囲気で作動させた場合に
も、ピストン５は前述した高温状態と逆の状態と
なつて前後の半球状凹所１５ａ間の距離を狭くし
ようとするが、同様の理由で斜板部１１が薄くな
るため、シユークリアランスをほぼ一定とするこ
とができる。

従つて、従来の低温雰囲気における作動時の焼
き付きや高温回転時の異音を確実に防止でき、ひ
いては信頼性の高い斜板式圧縮機を提供すること
ができる。また、斜板３全体が軽くなるため、慣
性モーメントを小さくすることができ、高速回転
時の斜板３の追従性が向上する。

また、前記斜板部１１の鉄製のシユー６との接
触部分に同じく鉄製の接触板１２を取り付けたた
め、これらの摺動特性が特に高速運転時において
向上する。さらに、各接触板１２間を連結部１３
で連結したため、アルミニウムのみで斜板３を形
成した場合よりも剛性を向上させることができ、
高い負荷が加わつた場合でも斜板３の変形が防止
できる。

また、前記連結部１３を接触板１２のほぼ中央
部に設けたため、膨張及び収縮時に接触板１２が
同斜板部１１の先端側と基端側とで不均一に変位
することを防止できる。

また、斜板３を鉄とアルミニウム材料の二種類
の金属を用いて形成したため、互いの固有振動数
を打ち消すことができ、この固有振動数に起因す
る圧縮機の共振を防止することができる。

なお、本考案は前記実施例に限定されるもので
はなく、例えば、次に示すように変更して具体化
することも可能である。

(1) 前記実施例では連結部１３を環状としたが、
第３図に示すように間欠状に設けてもよい。ま
た、この間欠状は同一円周上とする必要はなく
千鳥状としてもよい。さらには、第４図に示す
ように接触板１２の先端部で連結部１３を連結
してもよい。

(2) 前記実施例では軽量材としてアルミニウム材
料を用いたが、この他、合成樹脂又はこの複合
物を用いることができる。ここで、前記合成樹
脂はアルミニウム材料に比べ熱膨張率がかなり
高いが、合成樹脂では前記連結部１３をアルミ
ニウム材料程強く弾性変形させることができな
いため、この合成樹脂を用いても前記実施例と
同様の効果を生じさせることができる。

考案の効果 以上詳述したように、本考案の斜板を用いれ
ば、同斜板自体の剛性や摺動特性を落とすことな
く軽量化できるとともに、低温雰囲気における作
動時や高速回転時においてもシユークリアランス
を常にほぼ一定とすることができるため、斜板式
圧縮機の作動時の焼き付きや異音の発生が確実に
防止でき、ひいては信頼性の高い斜板式圧縮機を
提供することができるという優れた効果を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明を具体化した斜板式圧縮機を示
す中央部縦断面図、第２図は斜板を示す部分破断
図、第３図は別例を示す部分破断図、第４図も同
じく別例を示す縦断面図、第５図は従来例を示す
中央部縦断面図である。 １……シリンダブロツク、２……回転軸、３…
…斜板、５……ピストン、６……シユー、１０…
…ボス、１１……斜板部、１２……接触板、１３
……連結部、１５……係留凹所。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ シリンダブロツクの中心部に支持された回転
   軸と、その回転軸に嵌合固定された斜板と、前
   記シリンダブロツクに摺動自在に嵌合されたア
   ルミニウム材料製のピストンと、前記斜板の前
   後面とピストンの前後の係留凹所との間に各々
   所定のシユークリアランスを持つて配置された
   前後一対の鉄製のシユーとから構成された斜板
   式圧縮機における前記斜板において、 アルミニウム材料又は合成樹脂からなる軽量
   材で形成されたボスの外周には、前記一対のシ
   ユーに各々接触する前後一対の鉄製の接触板
   と、各接触板間の一部を連結する鉄製の連結部
   と、前記接触板間の残部に充填された軽量材と
   から構成される円板状の斜板部が突出形成され
   ている斜板式圧縮機の斜板。 ２ 前記連結部は二枚の接触板のほぼ中央部に設
   けられている実用新案登録請求の範囲第１項に
   記載の斜板式圧縮機の斜板。