JPH0312994B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 この発明は例えば鉄鋼業の連続鋳造における溶
鋼の流量制御装置であるスライドバルブおよびロ
ータリーバルブに組込まれるプレート状耐火物の
亀裂発生防止に関するものである。 〔従来の技術〕 スライドバルブおよびロータリーバルブには周
知のように、溶鋼を流出させる通路である１〜２
個の貫通孔を厚さ方向に備えた各種形状のプレー
ト状耐火物（以下単に「耐火物」という）が組込
まれている。また、この貫通孔の非摺動面側には
上部ノズル、下部ノズルおよびシールドプレート
等を嵌合させるためのオンダボもしくはメンダボ
を備えている。 ここで摺動面側において、摺動に際して貫通孔
が移動する部位および熱衝撃に起因する応力によ
つて亀裂が最も発生しやすい部位を重要面と称し
その他の部位を非重要面という。また、この非重
要面の反対面（非摺動面側）の対応する部位を
「裏側非重要面」という。 これら耐火物では、その貫通孔を高温の溶鋼が
連続的もしくは間歇的に通過するものである。 〔発明が解決しようとする課題〕 摺動式流量制御装置における従来の耐火物で
は、その貫通孔が高温にさらされるため熱衝撃に
起因する応力によつて特に貫通孔付近から耐火物
にランダムに亀裂が発生し、これが重要面に拡大
して溶鋼が侵入して耐火物構造体の使用寿命を低
下させ、さらには溶鋼の漏れ事故を引き起すとい
う問題点があつた。 従来、これを防止するために種種耐火物の組成
改良が行われているが上記のような問題点を解決
するには至つていない。 この発明は、かかる問題点を解消するためにな
されたもので、貫通孔周辺部に亀裂が発生して
も、これが重要面に拡大することを有効に防止で
きる耐火物構造体を得ることを目的とする。 〔課題を解決するための手段〕 この発明に係る耐火物構造体は、耐火物にあけ
られた厚さ方向の貫通孔の周辺部の裏側非重要面
に、前記貫通孔のダボの外側面から該耐火物の外
側面まで延長させた溝を設けたものである。 また、上記のものにおいて溝を複数個設け、各
溝の巾を0.1〜５mm、その深さを２mm乃至耐火物
の厚みの４／５としたものである。 〔作用〕 この発明においては、裏側非重要面の表面に溝
が設けてあり、かつこの溝が貫通孔のダボの外側
面から始まつて耐火物の外側面まで延長している
ので、貫通孔壁に亀裂が発生する状況において
も、この亀裂は裏側非重要面に設けた溝に誘導さ
れる。従つて発生した亀裂は摺動面の重要面に拡
大していくことはない。 〔実施例〕 第１図および第２図はこの発明の一実施例を示
すものであり、第１図はロータリーバルブのスラ
イドプレート耐火物の非摺動面を示す平面図、第
２図は第１図の断面図である。即ち第１図は第２
図の図示下側から見た平面図である。 第１図において１，１ａは耐火物の厚さ方向に
設けた貫通孔で溶鋼の流出孔である。２はスライ
ドプレートを回転摺動することによつて摺動面に
おいて直接溶鋼と接触する重要面で、２ａは熱衝
撃に起因する応力によつて亀裂がもつとも発生し
易い重要面で、図においてそれぞれ点線で示す範
囲である。３は非摺動面における裏側非重要面で
ある。４，４ａは貫通孔１，１ａのダボで、この
プレートの場合はオンダボである。５はそれぞれ
裏側非重要面３に設けた溝であつてそれぞれダボ
４，４ａの外側面から耐火物の外側面まで延びて
いる。なお、５ａは両ダボ４，４ａの外側面をつ
なぐように設けた溝であるが、これをさらに耐火
物の外側面まで延長させてもよい。 この実施例では溝５の巾はそれぞれ２mm、深さ
は10mmであり、材質がAl₂O₃−Ｃ質で厚さが45mm
の耐火物の裏側非重要面に平面研削機で溝を形成
した。 さらに同一方法で溝の深さを５mmおよび30mmと
したもの、さらに溝の巾を１mm、深さを30mmとし
た別の実施例と、溝を設けない同一材質の従来例
とをアーク放電を利用したスポーリング試験によ
つて亀裂の発生状況を比較した結果を第１表に示
す。 また溝の形成を研削によらず、同一材混練物の
成形の際に成形枠に溝を設けて成形体表面に巾５
mm、深さ２mmおよび５mmの溝を形成させて同一条
件で焼成したらに別の実施例も加えて従来例と亀
裂の発生状況を比較した結果を第１表に示す。

【表】 第１表から明らかなように従来例では重要面に
大亀裂が発生したが、実施例では何れも目視でき
る亀裂は発生しないかまたは小亀裂の発生に止ま
つた。 また非重要面に僅かに亀裂が発生したが溝部に
相当量の亀裂が発生したことは亀裂の大部分が溝
部に誘導されたことを示している。 次に第３図および第４図はスライドバルブの場
合の実施例を示すもので、第３図はスライドプレ
ート耐火物の非摺動面を示す平面図、第４図は第
３図の断面図である。即ち第３図は第４図を図示
下側から見た平面図である。図中１〜５は第１
図，第２図の同一符号と同一部分または相当部分
を示す。 第２表は第１表と同様の材質で厚さ40mmの耐火
物において同じく溝の巾および深さを変化させ、
かつ溝の形成方法を前述のように２方法で行つた
各実施例と、溝のない従来例とを同一のスポーリ
ング試験で亀裂発生状況をテストした結果を示す
もので、第１表とほぼ同一の結果を得た。

【表】 ×××：大亀裂、××：中亀裂、×：小亀裂
、△：微亀裂、○：亀裂なし
なお上記各実施例において溝の深さが亀裂の誘
導に関係していることが判る。即ち同一形成方法
では５mmより10mmおよび10mmより30mmの方が重要
面における亀裂発生がより抑制されたことを示し
ている。 溝の巾は0.1mmより狭いと効果は期待できず、
５mmを越すと耐火物の強度上問題があり、また溝
の深さは２mmより浅いと亀裂をここに誘導する効
果が薄く耐火物厚みの４／５を越すと使用中に耐
火物が欠損する危険がある。 裏側非重要面に設ける溝の数とそれぞれの方向
は、スライドバルブの型式、使用状態および耐火
物の材質、大きさ等によつてそれぞれ設定される
ものであるが、何れも貫通孔ダボから耐火物の外
側面まで連結しているものである。 〔発明の効果〕 以上説明したようにこの発明によれば、溶鋼注
出のための貫通孔を有する耐火物の表面に溝を設
けるという簡単な構造により、この耐火物の使用
によつて発生する亀裂を裏側非重要面に誘導し重
要面にまで拡大することを防止するので、耐火物
の使用寿命の延長および溶鋼漏れなどの事故を防
止できる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図はこの発明の一実施例を示
す平面図およびその断面図、第３図および第４図
はこの発明の別の実施例を示す平面図およびその
断面図である。 図において１，１ａは貫通孔、２，２ａは重要
面、３は裏側非重要面、４，４ａは貫通孔のダ
ボ、５は溝である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 厚さ方向に貫通孔を有するプレート状耐火物
   の該貫通孔周辺部の裏側非重要面に、前記貫通孔
   のダボの外側面から前記耐火物の外側面まで延び
   た溝を設けたことを特徴とする耐火物構造体。 ２ 数個設けた溝の巾がそれぞれ0.1〜5.0mm、溝
   の深さがそれぞれ２mm乃至プレート状耐火物厚み
   の４／５である請求項１記載の耐火物構造体。