JPH0128242Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はロータリピストンエンジンのシール装
置、特にコーナーシールとサイドシール当接部の
改良に関する。

（従来技術） 繭形の内周面を有するケーシング内で略三角形
状のロータを遊星回転運動させて、吸気、圧縮、
爆発、排気の各行程を行わせるようにしたロータ
リピストンエンジンにおいては、上記ロータの各
頂辺部によつて画成される作動室間のガスシール
装置として、通例、次のような構成が採用されて
いる。即ち、第６，７図に示すように、ロータ１
の各頂辺に沿つて装着されてセンタハウジング２
の内周面に摺接するアペツクスシール３と、ロー
タ１の両側面における各頂辺部に装着されてサイ
ドハウジング４の内面に摺接するコーナーシール
５と、ロータ１の側面における隣接コーナーシー
ル５，５間に装着されて同じくサイドハウジング
４の内面に摺接するサイドシール６とを備えると
共に、アペツクスシール３はアペツクスシールス
プリング７によりセンタハウジング２の内周面に
押し付け、コーナーシール５はコーナーシールス
プリング８によりサイドハウジング４の内面に押
し付け、またサイドシール６は、例えば実開昭55
−92002号公報にも示されているように、波板状
のサイドシールスプリング９によりサイドハウジ
ング４の内面に押し付ける構成となつている。

然して、このような構成においては、隣接コー
ナーシール５，５間に装着されて両端部が両コー
ナーシール５，５の周面５ａ，５ａに近接されて
いるサイドシール６に、サイドハウジング４との
摺動抵抗によりロータ１のａ方向の回転に対して
第６図に示す方向の力Ｆが作用して、該サイドシ
ール６のトレーリング側の端面６ａがこれに対向
するコーナーシール５の周面５ａに強く押し付け
られることになる。そのため、該サイドシール端
面６ａとコーナーシール周面５ａとの対接部に第
７図に示すような大きな摩擦抵抗F′が生じ、これ
がサイドシールスブリング９による該サイドシー
ル６をサイドハウジング４の内面に圧接させる力
F″を弱めるのである。その結果、該サイドシー
ル６のトレーリング側端部Ｘにおけるサイドハウ
ジング４の内面との接触面圧が低下することにな
り、該部分におけるシール性が悪化する。特に、
この問題は、サイドシール６の背部にサイドシー
ルスプリング９と周方向の付勢力を生じさせるガ
ス圧が十分でないクランキング時に著しくなり、
そのためエンジンの始動不良や未燃焼ガスの排出
等の弊害が生じる。

（考案の目的） 本考案はロータリピストンエンジンのシール装
置に関する上記のような問題に対処するもので、
サイドシールのトレーリング側端面が該シールと
サイドハウジングとの摺動抵抗によつてコーナー
シールの周面に強く押し付けられても、該サイド
シール端面とコーナーシール周面との間に生じる
摩擦抵抗を小さくすることにより、該サイドシー
ルのトレーリング側端面がサイドシールスプリン
グによりサイドハウジングの内面に所要の面圧で
圧接されるように構成し、これにより該サイドシ
ールのトレーリング側端部におけるシール性不良
やこれに伴う始動性能及び排気性能の悪化等を防
止することを目的とする。

（考案の構成） 即ち、本考案に係るロータリピストンエンジン
のシール装置は、上記目的達成のため、ロータの
側面における各頂辺部に夫々コーナーシールが装
着され、且つ隣接コーナーシール間に両端部を両
側のコーナーシールの周面に近接させてサイドシ
ールが装着された構成において、該サイドシール
のトレーリング側の端面と該端面に対向するコー
ナーシールの周面との少なくとも一方に低摩擦係
数部材を設ける。この低摩擦係数部材は、例えば
フツ素樹脂のコーテイングにより設けられ、或い
はテフロンや二硫化モリブデンを含有した材料で
なる別部材を当該端面又は周面の少なくとも一方
に固着することにより設けられる。

このような構成によれば、ロータの回転に伴う
サイドシールとサイドハウジングとの間の摺動抵
抗により該サイドシールのトレーリング側端面が
コーナーシールの周面に押し付けられる時に両者
が上記低摩擦係数部材を介して当接することにな
るから、大きな押し付け力が作用しても両者間の
摩擦抵抗が小さくなる。これにより、サイドシー
ルがトレーリング側端部においてもサイドシール
スプリングの付勢力によりサイドハウジングの内
面に所要の面圧で圧接されることになり、該部に
おけるシール性が改善される。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図に示すように、ロータリピストンエンジ
ン１０は、繭形の内周面１１ｄを有するセンタハ
ウジング１１と、該ハウジング１１の両端に固着
された一対のサイドハウジング１２，１２とによ
りケーシングを構成すると共に、該ケーシング内
に偏芯軸１３に支承された略三角形状のロータ１
４を備えて、該ロータ１４の各頂辺部Ａ…Ａによ
りケーシング内を複数の作動室１５…１５に画成
した構成である。そして、一方のサイドハウジン
グ１２の所定位置に吸気ポート１６を、センタハ
ウジング１１の所定位置に排気ポート１７を夫々
設けると共に、点火プラグ１８を備えて、上記ロ
ータ１４の回転により上記各作動室１５…１５が
吸気、圧縮、爆発、拝気の各行程を順次行うよう
に構成されている。

然して、このような構成においては、上記各作
動室１５…１５のガスシールが重要となる。次
に、このガスシールを行うシール装置について説
明すると、第２〜４図に示すようにロータ１４の
頂辺部Ａには該頂辺に沿つてアペツクスシール溝
１９が設けられて、該溝１９内にアペツクスシー
ル２０が装着されていると共に、このシール２０
をロータ１４の径方向外方に付勢するアペツクス
シールスプリング２１が備えられ、その付勢力に
よつてアペツクスシール２０の先端２０ａがセン
タハウジング１１の内周面１１ａに摺接するよう
になつている。また、ロータ１４の両側面には、
頂辺部Ａに上記アペツクスシール溝１９の端部に
重なる円筒状の凹部２２が設けられ、該凹部２２
内に上記アペツクスシール２０の端部が係合され
る切欠き部２３ａを有する略円筒状のコーナーシ
ール２３が装着されていると共に、該シール２３
をロータ１４の軸方向外方に付勢するコーナーシ
ールスプリング２４が備えられて、該シール２３
の端面２３ｂがサイドハウジング１２の内面１２
ａに摺接するようになつている。更にロータ１４
の側面には、隣接するコーナーシール装着用凹部
２２，２２間にロータ１４の辺部Ｂに沿つてサイ
ドシール溝２５が設けられ、該溝２５内に両端面
２６ａ，２６ｂを両側のコーナーシール２３，２
３の周面２３ｃ，２３ｃに夫々近接させてサイド
シール２６が装着されていると共に、該シール２
６をロータ１４の軸方向外方に付勢する波板状の
サイドシールスプリング２７が備えられて、該シ
ール２６の側面２６ｃがサイドハウジング１２の
内面１２ａに摺接されるようになつている。

そして、この実施例においては、上記サイドシ
ール２６におけるロータ１４のａ方向の回転に対
してトレーリング側となる端面２６ａに、第２，
３図及び第５図に示すように例えばフツ素樹脂の
コーテイングでなる低摩擦係数部材２８が設けら
れている。ここで、該サイドシール２６の長さ
は、その両端面２６ａ，２６ｂが対向する隣接コ
ーナーシール２３，２３の周面２３ｃ，２３ｃ間
の寸法より若干短くされている。

上記の構成によれば、ロータ１４のａ方向の回
転時に、サイドシール２６の側面２６ｃとサイド
ハウジング１２の内面１２ａとの間に生じる摺動
抵抗Ｆのため、該サイドシール２６のトレーリン
グ側の端面２６ａがこれに対向するコーナーシー
ル２３の周面２３ｃに強く押し付けられ、該押し
付け部にロータ１４の軸方向に沿う摩擦抵抗F′が
生じる。しかし、サイドシール２６の当該端面２
６ａには低摩擦係数部材２８が設けられて、該端
面２６ａとコーナーシール２３の周面２３ｃとが
この低摩擦係数部材２８を介して当接するから、
両面２６ａ，２３ｃが滑り易くなつて、上記摺動
抵抗Ｆによる押し付け力が大きくても、両面２６
ａ，２３ｃ間に生じる摩擦抵抗F′は小さいものと
なる。そのため、サイドシール２６は、トレーリ
ング側の端部Ｘにおいてもサイドシールスプリン
グ２７による外方への付勢力F″により所要の面
圧でサイドハウジング１２の内面１２ａに圧接さ
れることになり、これにより該部におけるシール
性が確保されることになる。

ここで、この実施例においては上記低摩擦係数
部材２８をサイドシール２６の当該端面２６ａに
フツ素樹脂等のコーテイングにより設けたが、例
えばテフロンや二硫化モリブデンを含有する材料
でなる別部材を該端面２６ａに固着するようにし
てもよい。また、この低摩擦係数部材２８はサイ
ドシール２６のトレーリング側端面２６ａに対
向、当接するコーナーシール２３の周面２３ｃに
設け、或いはその両面２６ａ，２３ｃに設けるこ
とも可能である。

（考案の効果） 以上のように本考案によれば、ロータの各頂辺
部にコーナーシールが装着され且つ該ロータの側
面における隣接コーナーシール間に両端面を両側
のコーナーシールの周面に各々近接させてサイド
シールが装着されたロータリピストンエンジンの
シール装置において、上記サイドシールのトレー
リング端面と該端面に対向するコーナーシールの
周面の少なくとも一方に低摩擦係数部材を設ける
構成としたから、サイドシールとサイドハウジン
グとの摺動抵抗に伴う上記サイドシール端面とコ
ーナーシール周面の当接部における摩擦抵抗が小
さくなる。これにより、該サイドシールがトレー
リング側の端部においてもサイドシールスプリン
グの付勢力によつて所要の面圧でサイドハウジン
グ内面に圧接されることになり、該部におけるシ
ール性が向上して、例えば始動不良や未燃焼ガス
の排出といつた弊害が防止されることになる。

【図面の簡単な説明】

第１〜５図は本考案の実施例を示すもので、第
１図はロータリピストンエンジンの一部縦断側面
図、第２図はロータ頂辺部の拡大側面図、第３，
４図は夫々第２図−線、−線で切断した
断面図、第５図はサイドシールの端部を示す拡大
斜視図である。第６，７図は従来例を示すもの
で、第６図はロータ頂辺部の拡大側面図、第７図
は第６図−線で切断した断面図である。 １１，１２……ケーシング（１１……センタハ
ウジング、１２……サイドハウジング）、１４…
…ロータ、２３……コーナーシール、２３ｃ……
周面、２６……サイドシール、２６ａ……トレー
リング側端面、２８……低摩擦係数部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ケーシング内に遊星回転運動するように装備さ
   れ且つ各頂辺部にコーナーシールが装着されたロ
   ータの側面における隣接コーナーシール間に、両
   端部を両側のコーナーシールの周面に各々近接さ
   せてサイドシールを装着してなるロータリピスト
   ンエンジンのシール装置であつて、上記サイドシ
   ールのトレーリング側端面と該端面に対向するコ
   ーナーシールの周面の少なくとも一方に低摩擦係
   数部材を設け、該部材を介して当該サイドシール
   の端面とコーナーシールの周面とが当接するよう
   にしたことを特徴とするロータリピストンエンジ
   ンのシール装置。