JPH0125534Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、機体走行速度を変更可能な変速装置
及び、走行機体に対して駆動昇降自在に連設され
た植付け装置を備えた田植機に関する。

この種の田植機では、機体旋回を安全に、か
つ、エンストなどのトラブルを招くことのない状
態で行うために直進植付け作業時よりも低速にし
て機体旋回することが望ましい。然しこの機体旋
回時には、植付けクラツチの切入、植付け装置の
昇降、線引きマーカーの姿勢切換えなど多種多様
な操作を要するため、前記変速装置の減速操作を
忘れ易く、その結果、思わぬ高速旋回になつて危
険を招いたり、エンジン負荷の異常増大に起因し
て不測のエンストを招くなどの問題があつた。

このような不都合を避けるためには、例えば、
前記植付け装置の昇降作動に連係させて、自動的
に車速を増減制御できるようにすることにより、
機体旋回時の減速操作忘れによる危険を回避する
ことは可能である。しかしながら、このように植
付け装置の昇降作動と機体走行速度の制御とを連
係させると、次のような新たな問題を招き易い。
つまり、植付作業の能率を上げようとするため
に、機体回向動作中に植付部下降への操作を行う
と、回向作業が終わつていない段階で高速走行が
始まり、隣接条への条合せが不確実となつたり、
エンジンストツプを招いたりするという問題があ
る。また、植付け装置を上昇させた走行姿勢は、
機体重心が高くて不安定な姿勢であるため、例え
ば、この田植機を運搬のためにトラツク荷台に積
み込む時、自走させながら狭いあゆみ板を登つて
荷台上に搭載するものであるが、植付け装置を上
昇させた重心の高い不安定な走行姿勢であること
のみに注意をひかれて、無意識のうちに植付け装
置を下降操作してしまうことがある。このような
操作が行われると、変速装置が高速側に操作さ
れ、田植機が急に、予期し得ない高速走行を始め
ることとなり、荷台や荷台上の作業者に衝突した
り、あゆみ板から転落するなどの、思わぬ危険な
事態を招く虞れがあつた。

本考案は、安全な機体旋回を行う上で必要な走
行速度の減速操作を、それら作業時に当然的に行
われる操作を利用して確実、簡便に行えるもので
ありながら、前述したような、機体の予期し得な
い高速走行による危険を確実に回避できるように
することに、その目的がある。

上記目的を達成するための本考案の特徴とする
構成は、走行機体に対して植付け装置を駆動昇降
自在に連設するとともに、機体走行速度を変更可
能な変速装置を備えた田植機において、前記変速
装置に対して前記植付け装置を、その植付け装置
の上昇側への作動のみが前記変速装置を減速側へ
操作するように伝えられ、かつ、植付け装置の下
降作動は前記低下した速度を上昇せしめないよう
に非可逆的に構成された自動減速機構を介して連
係させてある点にあり、この構成から次の作用効
果を奏する。

つまり、機体旋回や畦際植付け作業等を行うに
当たつては、前記植付け装置を非作用姿勢に必ず
切換え操作する点に着目し、この植付け装置の非
作用姿勢への切換え操作を利用して、前記変速装
置を旋回及び畦際植付け走行等に適した速度に自
動的に減速操作することができるから、機体旋回
や畦際植付け作業時において、減速のための特別
な操作が不要で、そのような減速操作の操作忘れ
によるエンストなどのトラブルなく、機体旋回及
び畦際植付け走行を安全、確実に行わせ得るとと
もに、前記植付け装置の下降側への作動によつて
は、前記変速機構が可逆的には増速されないの
で、機体回向中に植付装置下降への操作が行われ
ても、直進作業走行状態に至らない条合せの段階
で、機体が高速走行されて条合せが不確実になる
という不都合や、エンジンストツプを生じる問題
を避け易く、また、例えば機体があゆみ板を登つ
て、トラツク荷台に積み込まれるような作業状態
で、機体が予期し得ない高速走行を始めるという
ような、トラブルの発生を避け易い、という利点
がある。

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図で示すように、エンジン１から前後車輪
２，２及び３，３への伝動系に、ベルト式無段変
速装置４及びギヤ式変速装置５を介在してある走
行機体Ａの後部に、平行四連リンク機構６及び正
面視ほぼ逆台形状の吊下げリンク機構７を介して
５条植えの植付け装置８を昇降ならびにローリン
グ自在に連結するとともに、前記走行機体５と平
行四連リンク機構６との間に植付け装置８を駆動
昇降させるための油圧シリンダ９を介装し、か
つ、前記植付け装置８側には次回の走行基準線を
圃場面に刻設するための左右一対の線引きマーカ
ー１０，１０を、横外側方に突出する作用姿勢と
機体内方に対地浮上させた非作用姿勢ならびにこ
の非作用姿勢から更に鉛直又はほぼ鉛直方向に沿
う状態まで退避させた格納姿勢とに切換え自在に
装着してある乗用田植機において、前記線引きマ
ーカー１０，１０の姿勢切換装置は次の如く構成
する。

即ち、第２図でも示すように、前記植付け装置
８の植付け伝動ケース１１から横外側方に延出し
た筒状取付けフレーム１２，１２に対して、前記
の線引きマーカー１０，１０を前後軸芯周りで上
下揺動自在で、かつ、スプリング１３，１３を介
して前記の作用姿勢に弾性的に付勢するととも
に、前記植付け装置８の駆動上昇に連動して、作
用姿勢にある前記線引きマーカー１０又は、１０
を前記弾性付勢力に抗して非作用姿勢に自動的に
切換える機構１４と、非作用姿勢及び格納姿勢に
切換えられた線引きマーカー１０，１０を夫々前
記の弾性力をもつて係止保持可能なロツク機構１
５，１５ならびに、前記ロツク機構１５，１５を
係止解除するための人為操作具１６，１６とを設
けている。

前記切換機構１４は、植付け装置８を駆動昇降
するための前記平行四連リンク機構６を構成する
一つのトツプリンク６Ａと左右一対のロアーリン
ク６Ｂ，６Ｂとのうち、前記トツプリンク６Ａ
の、前記植付け装置８の駆動昇降に伴なつて該植
付け装置８との上下相対位置が変動する突出後端
部分６ａと線引きマーカー１０，１０との間に張
設したワイヤーから構成されている。

前記ロツク機構１５，１５は、前記線引きマー
カー１０，１０の揺動基端部近くに固着したピン
１５Ａ，１５Ａに上方から嵌合して、該マーカー
１０，１０を前記の非作用姿勢及び格納姿勢に係
止保持する揺動自在なロツク部材１５Ｂ，１５Ｂ
とこのロツク部材１５Ｂ，１５Ｂを係合方向に付
勢するスプリング１５Ｃ，１５Ｃとから構成され
ていて、かつ、前記ロツク部材１５Ｂ，１５Ｂに
前記操作具１６，１６が枢支連結されている。

また、前記植付け伝動ケース１１から上方に延
出した苗のせ合支持フレーム１７には、前記操作
具１６，１６に固着した鍔部分１６Ａ，１６Ａに
接当して、係止解除姿勢にあるロツク部材１５
Ｂ，１５Ｂをマーカー係止受止め姿勢に保持する
ための当り部材１８，１８が固着されている。

前記ベルト式無段変速装置４は次の如く構成さ
れている。

即ち、第３図でも示すように、前記エンジン１
側の駆動軸１９及び前記ギヤ式変速装置５を内装
してあるミツシヨンケースＭ側の入力軸２０に
夫々プーリー２１，２２を装着し、そのうち、駆
動プーリー２１を、互いに遠近方向に摺動移動自
在で、かつ、スプリング２３，２３を介して、近
接方向に移動付勢されたプーリー部分２１Ａ，２
１Ｂに分割するとともに、前記両プーリー２１，
２２に亘つて掛張した伝動ベルト２４に押圧接当
可能な輪体２５を有する変速操作アーム２６を揺
動自在に枢着し、以つて、前記変速操作アーム２
６の輪体２５による伝動ベルト２４の押圧作用に
より、前記分割プーリー部分２１Ａ，２１Ｂのベ
ルト巻回径を順次小さくして、前記入力軸２０の
回転速度、つまり、機体走行速度を無段階に減速
可能に構成している。

而して、前記当り部材１８，１８に、前記線引
きマーカー１０，１０が非作用姿勢に切換えられ
たこと、つまり、前記植付け装置８の駆動上昇に
伴つて前記線引きマーカー１０，１０が非作用姿
勢で係止保持されたことを、前記当り部材１８，
１８に対する鍔部分１６Ａ，１６Ａの上方への難
間移動をもつて検出する常閉のスイツチ２７，２
７を設けるとともに、前記スイツチ２７，２７が
共にオン作動したとき、前記無段変速装置４を自
動的にそれまでの走行速度よりも低速状態に切換
えかつ、前記スイツチ２７，２７の何れか一方が
オフ作動したとき、元の走行速度に自動的に復帰
させる自動減速機構２８を設けている。つまり、
植付け装置８の上昇側への作動によつて前記スイ
ツチ２７，２７は自動的にオン作動され、無段変
速装置４が自動的に減速作動させられるものであ
るが、植付け装置８の下降側への作動によつて
は、前記切換機構１４のワイヤーが緩むだけで、
ロツク機構１５によりマーカー１０は非作用姿勢
にあり、従つて、前記スイツチ２７はオフ作動さ
れないので、前記変速装置４は低速状態のままに
あり、植付装置８の下降に連動しての増速復帰は
成されず、前記操作具１６の意識的な人為操作に
よつて始めて前記ロツクが解除され、スイツチ２
７，２７がオフ作動されて、元の増速側の走行速
度に復帰させられる。この自動減速機構２８は、
前記無段変速装置４の変速操作アーム２６に連結
されたシリンダ２８Ａと前記スイツチ２７，２７
の検出結果に基づいてシリンダ２８Ａを作動制御
するコントローレバルブ２８Ｂとから構成されて
いる。

尚、前記変速装置４としてギヤ変速式のものを
使用しても良い。

又、実用新案登録請求の範囲の項に図面との対
照を便利にする為に符号を記すが、該記入により
本考案は添付図面の構造に限定されるものではな
い。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案に係る田植機の実施例を示し、第
１図は全体側面図、第２図は要部の拡大図、第３
図は要部の拡大断面図である。 ４……変速装置、８……植付け装置、１０……
線引きマーカー、２８……自動減速機構、Ａ……
走行機体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 走行機体Ａに対して植付け装置８を駆動昇降自
   在に連設するとともに、機体走行速度を変更可能
   な変速装置４を備えた田植機において、前記変速
   装置４に対して前記植付け装置８を、その植付け
   装置８の上昇側への作動のみが前記変速装置４を
   減速側へ操作するように伝えられ、かつ、植付け
   装置８の下降作動は前記低下した速度を上昇せし
   めないように非可逆的に構成された自動減速機構
   ２８を介して連係させてあることを特徴とする田
   植機。