JP7505740B2 - 電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置 - Google Patents

電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7505740B2
JP7505740B2 JP2020079789A JP2020079789A JP7505740B2 JP 7505740 B2 JP7505740 B2 JP 7505740B2 JP 2020079789 A JP2020079789 A JP 2020079789A JP 2020079789 A JP2020079789 A JP 2020079789A JP 7505740 B2 JP7505740 B2 JP 7505740B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
concentration
dielectric layer
impedance matching
wave
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020079789A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021173709A (ja
Inventor
徹 倉林
徹 高橋
信一 淀川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Akita University NUC
Original Assignee
Akita University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Akita University NUC filed Critical Akita University NUC
Priority to JP2020079789A priority Critical patent/JP7505740B2/ja
Publication of JP2021173709A publication Critical patent/JP2021173709A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7505740B2 publication Critical patent/JP7505740B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)

Description

特許法第30条第2項適用 1.刊行物に発表 発行者名:A Non-profit Scientific Organization United Scientific Group 刊行物名:International conference on analytical and bioanalytical methods,Apr.29-May 01,2019、第9頁 発行年月日:平成31年4月29日 2.集会において発表 集会名:International conference on analytical and bioanalytical methods,Apr.29-May 01,2019 開催日:平成31年4月29日
本発明は、電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置に関する。
水溶液中の濃度測定には様々な方法が存在し、例えば、糖度計や血糖値測定などで以下の方法が利用されている。糖度計では、可視光領域において、水溶液の濃度変化により屈折率が変化することを利用している。血糖値測定では、酵素反応によって変化する検査紙の色を読み取る比色法や試薬中の電荷の変化により検出する電極法などがある。
電磁波を利用した濃度測定も存在し、電磁波は低侵襲での測定が可能であり、マイクロ波やミリ波で物質特有の振動が確認されている。主に、同軸プローブ法が用いられており、水溶液の濃度変化により生じる誘電率および導電率の変化(Cole-Cole Plotの変化)で測定される方法もある。例えば、特許文献1では、2種類の検体の電磁波特性の差および温度差から成分濃度を測定している。
しかしながら、電磁波を利用した従来の水溶液濃度測定方法では、濃度変化に対する感度が十分でないという課題があった。
国際公開公報2011/074217号
本開示は、電磁波を用いた水溶液の濃度測定において、高精度で水溶液中の物質の濃度変化を測定する方法およびその装置を提供することを主目的とする。
本発明の一つの態様は、インピーダンス整合層を介して、水からなるリファレンス溶液に電磁波を照射したとき反射波の強度が入射波の強度の1/100以下となるインピーダンス整合層を使用する、水溶液の濃度測定方法であって、インピーダンス整合層を介して、水からなるリファレンス溶液と、物質が溶解した試料溶液と、にそれぞれ電磁波を照射して、反射波について、マッチング周波数の変化値、および/又は、反射強度の変化値を検出することにより、試料溶液中の物質の濃度変化を測定する、水溶液の濃度測定方法である。
インピーダンス整合層を介して、濃度既知の水溶液からなるリファレンス溶液に電磁波を照射したとき反射波の強度が入射波の強度の1/100以下となるインピーダンス整合層を使用する、水溶液の濃度測定方法であって、インピーダンス整合層を介して、濃度既知の水溶液からなるリファレンス溶液と、試料溶液と、にそれぞれ電磁波を照射して、反射波について、マッチング周波数の変化値、および/又は、反射強度の変化値を検出することにより、試料溶液中の物質の濃度変化を測定する、水溶液の濃度測定方法である。
さらに、インピーダンス整合層が、2以上の異なる誘電材料により形成され、周期構造を有してもよい。
本発明の他の態様は、試料溶液を内部に収容するとともに、試料溶液の照射面にインピーダンス整合層を備え、試料溶液に前記インピーダンス整合層を介して電磁波を照射する照射部と、試料溶液から反射される反射波の周波数及び強度を検出する検出部と、を有する水溶液の濃度測定装置であって、
インピーダンス整合層は、インピーダンス整合層を介してリファレンス溶液に電磁波を照射してリファレンス溶液から反射される反射波の強度が入射波の強度の1/100以下となる層である、水溶液の濃度測定装置である。
本発明の方法および装置によれば、電磁波を用いた水溶液の濃度測定において、高精度で水溶液中の物質の濃度変化を測定することができる。
図1は、三層の媒質に電磁波を照射したときの入射及び反射の様子を模式的に示す図である。図1(a)は、リファレンス溶液3を媒質として含む場合を示し、図1(b)は、試料溶液4を媒質として含む場合を示す。 図2は、電磁界解析法におけるモデルを示す図である。 図3は、複合誘電体層の構造の一つの態様を模式的に示す図である。 図4は、複合誘電体層の構造の他の態様を模式的に示す図である。 図5は、複合誘電体層の構造の他の態様を模式的に示す図である。 図6は、ネットワークアナライザの反射測定の基本構成を示す図である 図7は、単層誘電体を配置して電磁波を照射した場合の、純水のインピーダンスマッチング周波数を示す図である。 図8は、単層誘電体を配置し、溶液のイオン成分または非イオン成分を変化させたときの試料溶液からの電磁波の反射強度を示す図である。図8(a)は、溶液に非イオン成分が含まれる場合、図8(b)は、溶液にイオン成分が含まれる場合を示す。 図9は、単層誘電体を配置し、溶液のイオン成分または非イオン成分を変化させたときの試料溶液からの電磁波の反射強度を示す図である。図9(a)、図9(b)、図9(c)は、それぞれ溶液のイオン成分と非イオン成分との比が異なる場合を示す。 図10(a)は、単層誘電体を配置し、溶液のイオン成分または非イオン成分によるインピーダンスマッチング周波数の変化を示す図であり、図10(b)は溶液のイオン成分と非イオン成分とを変化させたときの電磁波の反射強度の最小値を示す図である。 図11(a)、および、図11(b)は、図3に示す複合誘電体層100において、球状の誘電体102の直径を変化させたときの電磁波の反射強度および実効屈折率を示す図である。 図12は、複合誘電体層を配置し、溶液のイオン成分と非イオン成分とを変化させたときの試料溶液からの電磁波の反射強度を示す図である。図12(a)は、溶液に非イオン成分が含まれる場合、図12(b)、および、図12(c)は、溶液に非イオン成分が含まれる場合を示す。 図13(a)、および、図13(b)は、比誘電率εおよび導電率σについて、溶液のイオン成分または非イオン成分の濃度成分を変化させたときの電磁波の反射率およびマッチング周波数を示す図である。 図14は、図4(a)に示す複合誘電体層200、図5(a)に示す複合誘電体層300、図5(b)に示す複合誘電体層400における電磁波の反射強度を示す結果である。 図15は、ネットワークアナライザによるタイムドメイン法を用いた、セラミックスを誘電体膜としたときの純水の反射スペクトルの測定結果を示す図である。 図16は、THz波領域において、複合誘電体層を配置し、電磁波の反射強度を解析した結果を示す図である。 図17は、単層誘電体を配置し試料溶液からの電磁波の反射強度を測定した結果を示す図である。
(濃度測定方法)
電磁波は屈折率の異なる媒質に入射すると、インピーダンスの変化により、電磁波の一部は透過するが、残りは反射する。図1(a)および図1(b)は、三層の媒質における電磁波を照射したときの入射波6及び反射波7の様子を模式的に示す図である。図1(a)における三層の媒質は、電磁波の入射方向から、真空1、誘電体層2、水または濃度既知の水溶液からなるリファレンス溶液3の順に配置されている。誘電体層2の表面からの反射波7’、および、誘電体層2とリファレンス溶液3の界面からの反射波7’’が発生するとき、互いに反射波の振幅が同じで位相が逆相になることにより打ち消しあい、電磁波の反射率がゼロになる。その現象をインピーダンスマッチングという。
本発明は、特定の周波数(マッチング周波数)で電磁波の反射率がゼロ(極小値)に近づくような誘電体層2を使用することを特徴とする濃度測定方法である。
図1(b)における三層の媒質は、電磁波の入射方向から、真空1、誘電体層2、試料溶液4の順に配置されている。これにより、誘電体層2表面からの反射波7’、および、誘電体層2と試料溶液4の界面からの反射波7’’ を合わせた反射波7について、リファレンス溶液3を用いた測定からの周波数の変化値、および/又は、反射強度の変化値を検出することにより、試料溶液中の物質の濃度変化を測定することができる。
水溶液に物質が溶解すると、濃度に応じて、複素誘電率、すなわち、比誘電率、および、比導電率が変化し、複素反射係数が変化する。例えば、試料溶液4において、糖などの非電解質の溶解量が変化したとき、すなわち、溶液の非イオン成分の濃度が変化したときには、比誘電率が変化し、反射スペクトルにおいて主に周波数がシフトする。また、試料溶液4において、塩・酸などの電解質の溶解量が変化したとき、すなわち、溶液のイオン成分の濃度が変化したときには、導電率が変化し、反射スペクトルにおいて主に反射強度が変化する。
溶液のイオン成分および非イオン成分がともに変化した場合には、比誘電率の影響が導電率の影響よりも大きい試料溶液4ではインピーダンスマッチング周波数のシフトが顕著であり、導電率の影響よりも比誘電率の影響が小さい試料溶液4では電磁波の反射強度の変化が顕著である。すなわち、試料溶液4が、電解質溶液、非電解質溶液、および電解質と非電解質との混合溶液のいずれの場合も、濃度変化の測定が可能である。
また、血中糖濃度による糖尿病診断においては、空腹時血糖値が126mg/dL以上であることが挙げられているが、126mg/dLのグルコース濃度を重量%で示すと0.126となり、最低でも0.01重量%以上の測定分解能が必要となり、0.001重量%以上の精度が好ましく、0.0001重量%以上の精度がより好ましい。「電磁波の反射率がゼロ(極小値)に近づくように」とは、電磁波の反射率が上記測定分解能を満たす程度に小さいことを意味する。電磁波の反射率がゼロに近づくほど測定分解能は向上するので、例えば、電磁波の反射率を1/100程度まで減少させると、0.1重量%の濃度変化が、電磁波の反射率を1/1000程度まで減少させると、0.01重量%の濃度変化が、電磁波の反射率を1/10000程度まで減少させると、0.001重量%の濃度変化が、電磁波の反射率を1/100000程度まで減少させると、0.0001重量%の濃度変化が、それぞれ顕著に検出できる。導電率や誘電体層の屈折率も電磁波の反射率と同じ正確性で厳密に制御されるようにすることが好ましい。すなわち、インピーダンス整合層を介してリファレンス溶液3に電磁波を照射して、誘電体層2の表面からの反射波7’、および、誘電体層2とリファレンス溶液3の界面からの反射波7’’が発生するとき、反射波7’と反射波7’’とを合わせた反射波7の強度は、入射波の強度の1/100以下が好ましく、1/1000以下がより好ましく、1/10000以下がさらに好ましく、1/100000以下が極好ましい。
本実施形態では、リファレンス溶液3として、純水または濃度既知の水溶液が用いられる。リファレンス溶液3として純水を使用する場合、純水でインピーダンスマッチングを実現できる誘電体層2を選択して使用することにより、純水(濃度0)から濃度偏倚を有する試料溶液4について、微量物質の濃度を測定することが可能である。また、リファレンス溶液3として、濃度既知の水溶液を使用する場合、濃度既知の水溶液でインピーダンスマッチングを実現できる誘電体層2を選択して使用することにより、インピーダンスマッチングさせた任意の濃度からの濃度偏倚を測定することが可能である。例えば、ヒトの血糖値レベルであるグルコース100mg/dlをリファレンス溶液3として、インピーダンスマッチングさせ、グルコース100mg/dlからの濃度の偏倚を測定することが可能である。
本実施形態では、電磁波を入射させる媒質は、真空1が用いられているが、真空に限らず、空気等の気体でもよい。
(誘電体層の屈折率・厚さの決定方法)
本発明では、電磁波を照射する測定試料溶液の照射面に、インピーダンス整合層である誘電体層2を配置する。
誘電体層2は、リファレンス溶液3にインピーダンスマッチングする厚さd、屈折率nの誘電体層である。誘電体層2の厚さd、屈折率nは、図1(a)に示すように、リファレンス溶液3において電磁波の反射率がゼロ(極小値)に近づくように後述される数式を用いて決定される。これによって、周波数の変化値、又は、電磁波の反射強度の変化値を高精度で検出することができ、溶液中の物質の濃度変化を測定することができる。また、インピーダンスマッチング時の周波数fは、マッチング周波数ともいう。
誘電体層2におけるインピーダンスマッチングの条件、すなわち電磁波による反射波が最小になる条件としての振幅整合条件と位相整合条件は、誘電体層2やリファレンス溶液3に電磁波の吸収がない場合、真空1と誘電体層2との界面での反射波のフレネル係数をρ、誘電体層2とリファレンス溶液3との界面での反射波のフレネル係数をρとすると式(1)および式(2)になる。真空1の屈折率をn、リファレンス溶液3の屈折率をnとする。
Figure 0007505740000001
Figure 0007505740000002
また、誘電体層の上下面による多重反射の影響を考慮した全体のフレネル係数ρは式(3)になる。
Figure 0007505740000003
よって、全体の反射率Rはフレネル係数ρを用いると、式(4)になる。
Figure 0007505740000004
全体の反射率Rは、屈折率を用いて表すと式(5)になる。
Figure 0007505740000005
式(5)より反射率Rをゼロにするための振幅整合条件は式(6)になる。
Figure 0007505740000006
Figure 0007505740000007
振幅整合条件とは、誘電体層2の表面からの反射波と、誘電体層2とリファレンス溶液3との界面からの反射波と、の振幅が同じになる条件である。
また、位相整合条件、すなわち、誘電体層2の表面からの反射波の位相と、誘電体層2とリファレンス溶液3との界面からの反射波の位相が逆相になる条件は、位相差2ndcosθが垂直入射の場合にはcosθ=1となるため、式(8)のように表される。
Figure 0007505740000008
上記の振幅整合条件および位相整合条件を満たし、反射量を最小にするためには、各媒質の屈折率の関係がn<n<nを満たす必要がある。この条件により、真空1から誘電体層2とリファレンス溶液3に電磁波を照射すると、疎な物質から密な物質に電磁波が入射するため、反射波の位相はそれぞれ180度ずれ、反射波同士は同相となるが、位相整合条件を満たす場合には水溶液からの反射波がさらに180度ずれるため真空1で重なるときには逆相となる。
式(7)の振幅整合条件と式(8)の位相整合条件のそれぞれを満たすとき、特定の周波数で合計の反射率が最小となる。
誘電体層2におけるインピーダンスマッチングの条件において、誘電体層2およびリファレンス溶液3に電磁波の吸収がある場合、振幅整合条件は以下のようになる。
誘電体層2およびリファレンス溶液3の複素屈折率は、それぞれN=n-jk、N=n-jkとし、入射媒質には電磁波の吸収がないとする。また、誘電体層2を1回通過した電磁波は,Δだけ位相が変化する。
Figure 0007505740000009
Figure 0007505740000010
Figure 0007505740000011
Figure 0007505740000012
ここで、δは電磁波の吸収がない場合の位相変化であり、γは電磁波の吸収による減衰に関する係数である。これより、全体のフレネル係数ρは以下のようになる。
Figure 0007505740000013
ただし、A,B,C,Dは、式(14)~式(18)になる。
Figure 0007505740000014
Figure 0007505740000015
Figure 0007505740000016
Figure 0007505740000017
したがって、反射率Rおよび位相φは式(18)、式(19)に表される。
Figure 0007505740000018
Figure 0007505740000019
つまり、媒質で電磁波の吸収がある場合についても振幅整合条件を求めることができる。
(FDTD法)
また、水および水溶液は、複素誘電率を用いて表され、周波数依存性がある。上述したインピーダンスマッチング条件を満たす、誘電体層2の最適な厚みd、および、実効屈折率nを高精度で決定するために、電磁界解析法において、FDTD法は有効な方法である。
FDTD(Finite-Difference Time-Domain;時間領域差分)法とは、広く用いられている数値電磁界解析法であり、1966 年にK.S.Yee により基本的アルゴリズムが提案された、時間領域のマクスウェル方程式(電磁現象の最も基礎的な法則)を直接差分化する手法である。
FDTD法による逐次解析手法の一例として、以下(1)~(6)の手順が挙げられる。ただし、以下手順によって、本実施形態におけるFDTD法を用いた逐次解析手法が制限されるものではない。
(1)領域を細かいセルに分割し、それぞれのセルに対しマクスウェル方程式を定式化する。すなわち、マクスウェルの微分方程式の時間と空間の微分を差分で表した式を作る。
(2)それぞれのセルに媒質の定数を与える。すなわち、真空、誘電体、導体等様々な媒質で構成される領域に、媒質の誘電率、導電率、透磁率等を設定する。
(3)励振を与え,電磁波源を作る。すなわち、励振面で正弦波の平面波を与える。
(4)全領域の各セルの電磁界を算出する。
(5)微小時間経過後の正弦波を励振面に与え、上記計算を定常状態、つまり、電磁波が領域全体に伝わり一定の状態、になるまで繰り返し、その時の電力観測面での反射電力、透過電力を算出する。
(6)励振する周波数を変化させ,上記(1)~(5)の計算を繰り返す。
図2は、電磁界解析法に使用する解析構造30のモデルを示す図である。図2において、Pは以下で説明する周期、dは誘電体層2の厚さ、eは真空1側のPML面31とリファレンス溶液3または試料溶液4側のPML面34との距離、fは真空1側のPML面31と、リファレンス溶液3もしくは試料溶液4内の観測面32、との距離、gは真空1側のPML面31と、真空1および誘電体層2の界面、との距離、hは真空1側のPML面31と励振面33との距離、iは真空1側のPML面31と観測面32との距離である。また、FDTD法において用いる解析構造30は、セルサイズを設定する必要がある。
開放領域の解析を行う場合、解析領域は有限なため、解析構造の終端で反射が生じないように吸収媒質で囲む必要がある。本実施形態では、吸収境界条件の一つであるPML(Perfect Matched Layer)面31、34を使用している。
観測面32において、一定時間に透過する電力を算出し励振した電力に対する比を求め、反射電力と透過電力を算出する。
励振面33は、正弦波の平面波を発生させる面であり、電磁波の発生源となる。z方向のみに進行する電磁波を励振すると、励振面の後方にある観測面は、媒質からの反射電力を観測する面となる。
セルサイズは、Yeeのアルゴリズムによる微小セルを表す。y方向が一様(y方向は無限に広がっていて、電磁界も一様に広がっている)場合には、二次元解析としてΔxおよびΔzを設定する。三次元解析では、Δx、Δy、および、Δzを設定する。任意のセルサイズを制限なく設定することができるが、逐次解析によるずれを防ぐように、セルサイズΔx、Δy、および、Δzの数値を設定する必要がある。例えば、誘電体層2のセルサイズΔx、Δy、および、Δzとして、100μm以下を用いると、逐次解析のずれを防ぐことができる。セルサイズは50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさら好ましく、1μm以下がさらにより好ましく、0.1μm以下が極好ましい。また、セルサイズΔx、Δy、および、Δzは、それぞれ同じ数値でも異なる数値の組み合わせでもよい。後述する複合誘電体層300、および、複合誘電体層400において、5μm以下のセルサイズを設定することにより、多層構造の層数分の逐次解析によるずれが蓄積されて、インピーダンスマッチングの条件から大きくずれてしまうことを防ぐことができる。複合誘電体層100、および、複合誘電体層200において、0.1μm以下のセルサイズを設定することにより、微細構造で逐次解析によるずれが蓄積されて、インピーダンスマッチングの条件から大きくずれてしまうことを防ぐことができる。
(誘電体層の構造)
誘電体層2は、単層誘電体でも、複合誘電体層でもよい。誘電体層2を形成する材料としては、少なくとも1種類以上の誘電体であればよい。単層誘電体であれば、形成する材料により屈折率nが決定されるので、インピーダンスマッチングするように、誘電体層の厚さdを決定すればよい。
複合誘電体層では、2種類以上の誘電体から構成され、異なる種類の誘電体は異なる屈折率を有するため、厚さdに加えて、実効屈折率の制御が可能である。所望の実効屈折率を得るために、複合誘電体層内として、後述する構造をもつ誘電体層が挙げられる。
図3、図4、図5では、電磁波の入射方向をz方向、照射面をxy平面として、x軸、y軸、z軸を表示している。複合誘電体層の構造について以下に説明する。
図3は、複合誘電体層の構造の一つの態様を模式的に示す図である。図3(a)は、複合誘電体層100の斜視図であり、図3(b)は、複合誘電体層100のxy平面に沿う断面図である。図3(c)は、FTDT法による解析を行う1ユニットの誘電体103の概要を示す図である。
図3(a)~図3(c)に示すように、複合誘電体層100は、直方体の誘電体101中に直径2aμmの球形の誘電体102を有する1ユニットの誘電体103を、複数ユニット有し、1ユニットの誘電体103がxy平面上に周期的に隣り合って配置されることで形成されている。1ユニットの誘電体103の厚さ、すなわちz軸上の長さはdμm、x軸上、y軸上の長さはPμmであり、xy平面上に隣あう球形の誘電体102の球の中心間の距離はPμmである。図3(a)では1ユニットの誘電体103が9個周期的に配置され、複合誘電体層100が構成されているが、複合誘電体層100における1ユニットの誘電体103の個数は、周期的に隣り合って配置されていれば、制限はなく、何個でもよい。
実効屈折率を所望の数値にするために、直方体の誘電体101と球形の誘電体102との体積比を変化させてもよい。例えば、球形の誘電体102の半径aを変える方法は、実効屈折率を簡単に制御できる方法の一つである。
図4は、複合誘電体層の構造の他の態様を模式的に示す図である。図4(a)は、複合誘電体層200を斜視図であり、図4(b)は、直方体の誘電体202の斜視図である。図4(c)は、FTDT法による解析を行う1ユニットの誘電体203の概要を示す図である。
図4(a)および図4(b)に示すように、複合誘電体層200は、z軸上の長さはdμm、x軸上、y軸上の長さはaμmの直方体の誘電体202を内包する、z軸上の長さがdμm、x軸上、y軸上の長さがPμmの直方体の誘電体201を有する1ユニットの誘電体203を、複数ユニット有し、1ユニットの誘電体203がxy平面上に周期的に隣り合って配置されることで形成されている。図4(a)では1ユニットの誘電体203が9個周期的に配置され、複合誘電体層200が構成されているが、複合誘電体層200における1ユニットの誘電体203の個数は、周期的に隣り合って配置されていれば、制限はなく、何個でもよい。
実効屈折率を所望の数値にするためには、直方体の誘電体201と直方体の誘電体202との体積比を変化させてもよい。例えば、直方体の誘電体202のx軸上、y軸上の長さaを変える方法は、実効屈折率を簡単に制御できる方法の一つである。
本実施形態の態様として、2種類の誘電体から形成される複合誘電体層の構造を上述したが、誘電体は3種類以上の複合誘電体層でもよく、複合誘電体層の構造は、上述した複合誘電体層の構造の態様に限らない。
例えば、複合誘電体層100内の球形の誘電体102が楕円球形等でもよく、複合誘電体層200内の直方体の誘電体202のz軸上の長さが直方体の誘電体201のz軸上の長さより小さい値をとり、内包されていてもよい。複合誘電体層100および複合誘電体層200がxy平面上だけでなくz軸上にも周期的に配置されて複合誘電体層を形成していてもよい。
また、4種類以下の誘電体材料からなる複合誘電体層であれば、複合誘電体層を作成する際の歪制御などが抑えられる。
他の態様として、図5(a)、および、図5(b)に示すように、誘電体301と誘電体302とがx軸方向に交互に積層された複合誘電体層300、および誘電体401~408がz軸方向に順に積層された複合誘電体層400が挙げられる。また、誘電体301と誘電体302は、異なる誘電体材料であり、誘電体301のx軸方向の厚さDx1と誘電体302のx軸方向の厚さDx2は、同じでもよく、異なっていてもよい。本実施形態の複合誘電体層300では、2種類の誘電体が積層されているが、3種類以上の誘電体材料が積層されていてもよい。
本実施形態では、誘電体401~408に用いられる誘電体材料の種類およびそれぞれの厚さは、特に限定されないが、異なる種類の誘電体材料でもよく、同じ種類の誘電体材料が誘電体401~408のうちいずれか2つ以上の誘電体に用いられていてもよく、またその配置の順序にも制限はない。また、誘電体401~408のz軸方向の各誘電体の厚さDz1~Dz8は、それぞれ、照射する電磁波の波長に応じて選択できる。
本発明で用いる解析においては、複合誘電体層は、周期的に隣り合って配置される、すなわち周期構造をもつための、1ユニットの誘電体の大きさ、すなわち周期Pは、特に制限されない。周期Pは、マイクロ波~ミリ波帯では、好ましくは1~10mm程度、より好ましくは2~6mm程度、さらに好ましくは3~4mm程度に設定し、THz波では、好ましくは0.1~100μm程度、より好ましくは0.5~50μm程度、さらに好ましくは1~10μm程度に設定する。FTDT法において、周期的境界条件を用いて、1ユニットの誘電体が周期構造をもつことで形成された平面(波長に対して十分大きく、ほぼ無限大である平面)として解析結果を得ているため、周期Pは、特に制限されない。
(誘電体層の材料)
誘電体層2を形成する材料として、公知の誘電体を特に制限なく用いることができる。例えば、クリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、ポリエチレン、ポリイミドなどのプラスチック、セラミックス、油などの液体、シリコンやゲルマニウムなどの半導体材料等が挙げられる。
その製造方法も、公知の方法を特に制限なく用いることができるが、例えば、ポリイミドやアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)は、液体状物質を塗布し溶剤を乾燥させ、必要に応じて熱処理をすることで、所望の膜厚の誘電体層を得ることができ、ポリエチレンやセラミックス、シリコンやゲルマニウムなどの半導体材料は、切削や研磨を用いることで、所望の膜厚の誘電体層を得ることができる。
誘電体層2を形成する材料として、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、メラミン樹脂、光学プラスチック(ポリメタクリル酸メチル樹脂)などが好適である。その製造方法も、公知の方法を特に制限なく用いることができるが、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、メラミン樹脂、光学プラスチック(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等は、各種液状材料を用いた射出成型による所望の膜厚の誘電体層の形成や、スプレーコーティングやスピンコーティングによる塗布量制御による膜厚制御による形成が可能である。さらには、所定よりも厚い板材から、切削や研磨によって所望の膜厚の誘電体層を得ることも可能である。
本実施形態の複合誘電体層300および複合誘電体層400では、誘電体が積層されており、その製造方法も公知の方法を特に制限なく用いることができるが、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法やスパッタリング法等の誘電体多層膜の成膜方法が挙げられる。
本実施形態の複合誘電体層100および複合誘電体層200では、あらゆる誘電体材料の組み合わせが可能である。
例えば、各種気体の比誘電率が1程度、樹脂を含む各種高分子の比誘電率は2~4、各種セラミックスの比誘電率は20~100であることは公知である。複合誘電体層100を構成する誘電体101および102、複合誘電体層200を構成する誘電体201および202、複合誘電体層300を構成する誘電体301および302、誘電体層400を構成する誘電体401および402の組み合わせとして、組み合わせる誘電体材料は限定されないが、各種高分子と各種セラミックス、各種気体と各種セラミックス、各種気体と各種高分子、各種高分子と各種高分子、各種セラミックと各種セラミックス等を組み合わせることができ、誘電体材料により異なる比誘電率を持つことから、複合誘電体層の誘電率および実行屈折率を制御することが可能である。
例えば、マシナブルセラミックスなどが好適である。マシナブルセラミックスは、ガラスをマトリックスとし、フッ素金雲母・ジルコニア微結晶を均一に析出させた緻密な複合マイカセラミックスで、電気絶縁性、耐熱性、断熱性に優れており、切削可能であるという特徴も持つ。インピーダンス整合層として、屈折率の制御が可能であるため、好適である。
マシナブルセラミックスの製造方法は、公知の方法を特に制限なく用いることができるが、例えば、特殊な組成のガラスを成形した後に、適当な温度で再加熱してガラス母材中に結晶を析出させる結晶化ガラスや微結晶焼結などがある。結晶化ガラスの結晶は、例えば、フッ素金雲母、希土類アルミノケイ酸塩を析出させたものがある。 微結晶焼結は、例えば、雲母、チタン酸アルミニウム、ワラストナイト、窒化ホウ素などを焼結させたものがある。
(測定装置)
本発明の水溶液の濃度測定装置には、電磁波の微小反射特性を検知できることが求められる。ネットワークアナライザは有効な測定手段と考えられる。以下にネットワークアナライザの反射測定の工程を説明する。
図6は、ネットワークアナライザの反射測定の基本構成を示す図である。マイクロ波からミリ波領域の電磁波を使用するにあたり、ネットワークアナライザ40を使用した際の反射測定は、信号発生器41でDUT(Device Under Test:非測定物)42に入力する信号を出力し、パワースプリッタ43で信号を2分岐し、分岐させた信号の1つはDUT42を通らないルートを通ってリファレンス受信部44に到達し、もう1つの信号は方向性結合器45を通過してDUT42に到達し、DUT42から反射した信号が方向性結合器45を通ってテスト受信部46に到達する。方向性結合器45は、端子間の信号が通過できる向きが制限されているデバイスで、本発明において、反射特性の測定に使用される。
リファレンス受信部44およびテスト受信部46で、到達した信号の信号レベルと位相を検出し、データ処理部で、リファレンス受信部44の信号レベル(DUT42を通らないルート)に対するテスト受信部46(DUT42から反射するルート)の比較をする。DUT42を通らないルートの信号とDUT42から反射した信号を検出・比較することによって、DUT42に信号を入力した場合にどのくらいの割合で信号が反射するか、また、入力信号と反射信号の位相差を測定することが可能となる。
また、ネットワークアナライザを用いて反射スペクトルを測定すると、所望の反射波以外の反射波も加わっている。所望の反射波を観測するために、周波数領域での測定データを逆フーリエ変換することにより、時間領域に変換するタイムドメイン法を使用することも有用である。
タイムドメイン法は、Time Domain Reflectometry(TDR:時間領域反射率測定法)ともいわれる。高速なステップ信号をDUTに入力し、そのDUTのインピーダンスに応じて発生する信号の反射波の振幅やステップ振動を出力してから反射波が返ってくるまでの時間を求めることができる。この時間を用いることによって、信号発生器からDUTまでの距離を求めることができ、さらにはDUTのインピーダンスを求めることができる。一般的に、オシロスコープでTDRを使用する場合にはステップ信号を入力するが、ネットワークアナライザでは正弦波を用いる。ネットワークアナライザの信号源から発振される信号は周波数を連続的に変化させる周波数掃引を用いる。そのため、それぞれの周波数について逆フーリエ変換することで時間領域の結果を得ることができる。
よって、Gating処理は、時間領域においてインピーダンスマッチングの前後のピーク間の時間を取り出して、不必要な時間領域を削除し、不要な反射波を取り除くことによって、必要な反射波のみを観測できる有用な方法の一つであり、本発明においても好適である。
また、電磁波を照射する照射部としては、公知の装置でよく、何ら制限なく用いることができる。電磁波としては、マイクロ波、ミリ波、および、THz波が用いられる。
<FTDT法結果>
(単層誘電体層)
図7は、単層誘電体を配置し、純水のインピーダンスマッチング周波数を示す図である。図2におけるFTDT法のパラメータで、P=3600μm、e=60000μm、f=57500μm、g=10000μm、h=3000μm、i=2500μm、セルサイズΔx=Δz=50μmと設定した。
純水に対する単層誘電体層のインピーダンスマッチング周波数は22.544621GHzで、マッチング周波数における電磁波の反射強度は-107.5dBである。インピーダンスマッチング条件を満たす誘電体層は、厚さd=1.05mmで、屈折率n=2.79556である。
リファレンス溶液として純水を用いた場合の試料溶液において、非イオン成分の濃度変化をΔc’、イオン成分の濃度変化をΔc’’とする。すなわち、純水では、Δc’=0、Δc’’=0となる。濃度係数mは、非イオン成分のみの溶液ではΔc’:Δc’’=m:0、イオン成分のみの溶液ではΔc’:Δc’’=0:mとなる。濃度係数mは、Δc’およびΔc’’の変化率を表す係数である。任意の実数xを用いて表すと、m=xの場合、Δc’:Δc’’=m:0であれば、純水の誘電率実部の値の変化量Δc’が(100×x)%となり、Δc’:Δc’’=0:mであれば、純水の誘電率虚部の値の変化量Δc’’が(100×x)%となる。
図8(a)、図8(b)、図9(a)、図9(b)、図9(c)は、濃度係数mを0から0.01までは0.001毎に、0.01から0.07までは0.01毎に変化させたときの試料溶液からの電磁波の反射強度を示す図である。
図8(a)は、Δc’:Δc’’=m:0であり、インピーダンスマッチング周波数を谷としてもつ試料溶液からの電磁波の反射スペクトルが非イオン成分の濃度変化によって周波数シフトすることがわかる。
図8(b)は、Δc’:Δc’’=0:mであり、試料溶液からの電磁波の反射強度がイオン成分の濃度変化によって変化することがわかる。
図9(a)は、Δc’:Δc’’=m:0.5mであり、図9(b)は、Δc’:Δc’’=m:mであり、図9(c)は、Δc’:Δc’’=0.5m:mである。
図10は、図8、図9を異なる視点から表した図である。図10(a)は、Δc’:Δc’’をm:0、m:0.5m、m:m、0.5m:m、0:mとしたときの、濃度係数mに対するインピーダンスマッチング周波数を示す図である。図10(a)より、比誘電率が導電率よりも大きい試料溶液ではインピーダンスマッチング周波数のシフトが顕著である。
図10(b)は、Δc’:Δc’’をm:0、m:0.5m、m:m、0.5m:m、0:mとしたときの、濃度係数mに対する電磁波の反射強度の最小値を示す図である。図10(b)より、導電率よりも比誘電率が小さい試料溶液では電磁波の反射強度の変化が顕著である。すなわち、試料溶液が、あらゆる電解質、非電解質、および電解質と非電解質との混合の溶液で応用可能であるといえる。
(複合誘電体層100)
図2におけるパラメータで、P=3600μm、e=60000μm、f=57500μm、g=10000μm、h=3000μm、i=2500μm設定する。サンプリング周波数0.001GHzとする。複合誘電体層100は、厚さd=1100μmで、比誘電率εr=2の直方体状の樹脂内に、比誘電率εr=80の球状のセラミックスを配置する。セルサイズは、誘電体層部分のセルでは、Δx=Δy=Δz=0.1μm、それ以外のセルでは、Δx=Δy=Δz=50μmとする。
なお、各種樹脂の比誘電率は2~4、各種セラミックスの比誘電率は20~100であることは公知であるため、複合誘電体層100として、比誘電率εr=2の直方体状の樹脂内に、比誘電率εr=80の球状のセラミックスを配置した。
図11(a)は、直径2aμmの球状のセラミックにおいて、直径2aを898μm、899μm、900μm、901μmと変化させて、電磁波の反射強度を示す。図11(b)は、直径2aμmの球状のセラミックにおいて、直径2aを700μm、800μm、900μm、1000μmと変化させて、実効屈折率を示す。実効屈折率は、球状のセラミックの直径により、変化する。
(複合誘電体層200)
図2におけるパラメータで、P=3600μm、e=60000μm、f=57500μm、g=10000μm、h=3000μm、i=2500μmと設定する。サンプリング周波数0.001GHzとする。複合誘電体層200は、比誘電率εr=3.4の直方体状のポリイミド内に、比誘電率εr=11.7の直方体状のシリコンを配置する。セルサイズは、誘電体層部分のセルでは、Δx=Δy=Δz=0.1μm、それ以外のセルでは、Δx=Δy=Δz=50μmとする。
図12は、厚さd=1000.3μmで、a=852μmである誘電体層を用いて、濃度係数mを―0.003から0.0003までは0.001毎に、変化させたときの試料溶液からの電磁波の反射強度を示す図である。
図12(a)は、Δc’:Δc’’=m:0であり、図12(b)、および、図12(c)は、Δc’:Δc’’=0:mである。Δc’によるマッチング周波数のシフト、およびΔc’’による反射強度の変化がわかる。
図13は、図12を異なる視点から表した図である。図13(a)は、比誘電率εおよび導電率σについて、Δc’およびΔc’’に対する反射率を示す。図13(b)は、比誘電率εおよび導電率σについて、Δc’およびΔc’’に対するマッチング周波数を示す。分散係数Rが1もしくは限りなく1に近く、比誘電率εおよび導電率σの変化量が高精度で測定されている。
(その他の複合誘電体層)
図14は複合誘電体層200、複合誘電体層300、複合誘電体層400における反射強度を示す結果である。
図2におけるパラメータで、P=3600μm、e=60000μm、f=57500μm、g=10000μm、h=3000μm、i=2500μmと設定する。サンプリング周波数0.001GHzとする。
複合誘電体層200は、図4において、比誘電率εr=3.4の直方体状のポリイミド内に、比誘電率εr=11.7の直方体状のシリコンを配置し、z軸方向の誘電体層の厚さd=1000μm、a=852μmとした。セルサイズは、誘電体層部分のセルでは、Δx=Δy=Δz=0.1μm、それ以外のセルでは、Δx=Δy=Δz=50μmとする。
複合誘電体層300は、図5(a)において、誘電体301のx軸方向の厚さDx1=535μm、比誘電率2.0のシリコン樹脂等と、誘電体301のx軸方向の厚さDx2=465μm、比誘電率80のセラミックスとを積層することで、x軸方向の周期的構造を形成し、y軸方向の周期構造は1mmで繰り返し、z軸方向の誘電体層の厚さは0.5mmとした。セルサイズは、誘電体301では、Δx=53.5μm、誘電体302では、Δx=46.5μmとする。さらに、Δy=Δz=50μmとする。
複合誘電体層400は、図5(b)において、誘電体401、403、405、および、407は比誘電率80のセラミックス、誘電体402、404、406、および、408は比誘電率2.0のシリコン樹脂等とする。誘電体401~408のz軸方向の各層の厚さは、Dz1=55μm、Dz2=5μm、Dz3=20μm、Dz4=50μm、Dz5=85μm、Dz6=40μm、Dz7=170μm、Dz8=210μmとする。セルサイズは、Δx=Δy=50μm、Δz=5μmとする。
複合誘電体層の構造の変化により、インピーダンスマッチング周波数が変化する。
(Gating)
図15は、ネットワークアナライザによるタイムドメイン法を用いた、セラミックスを誘電体膜としたときの純水の反射スペクトルの測定結果を示す図である。
(THz領域)
図2において、FTDT法において、P=6μm、e=800μm、f=700μm、g=200μm、h=100μm、i=80μm、セルサイズΔx=Δy=Δz=0.1μmと設定する。サンプリング周波数0.01GHzとする。複合誘電体層200の構造をとり、比誘電率εr=2.56の直方体状の高分子内に、比誘電率εr=1の直方体状の真空(空気)を配置する。
例えば、εr=2.56の高分子としてはポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、メラミン樹脂、光学プラスチック(ポリメタクリル酸メチル樹脂)などが相当する。
図16(a)は、厚さd=20μmの複合誘電体層200内の直方体状の誘電体202において、長さaを2.81μmから2.86μmまで0.01μm毎に、反射強度を測定した結果である。図16(b)は、長さaμm=2.84μmの直方体状の誘電体202において、厚さdを19.87μmから19.91μmまで0.01μm毎に、電磁波の反射強度を解析した結果である。複合誘電体層はTHz領域も含む広範囲の周波数域で有用である。
<実測結果>
(単層誘電体層)
マイクロ波帯~ミリ波帯ネットワークアナライザ(N5244A、Agilent Technologies)を用いて、インピーダンスマッチングを用いた反射測定を行った。樹脂製容器に誘電体層を接着し、ネットワークアナライザに接続した同軸導波管変換器上に設置した。また、測定時に導波管の位置が変わらないように固定する。導波管の測定可能周波数範囲は20GHzから43.5GHzを利用した。
図17ではポリエチレン単層誘電体層を配置して、試料溶液として、0g/dL~1g/dLの濃度のグルコース溶液に、電磁波を照射して反射波の強度を測定した結果である。濃度により、反射強度が変化しているが、例えば、0g/dL(純水)と0.1g/dLグルコース溶液(血中血糖値レベル)の反射強度差は、約0.3dBである。
(複合誘電体層)
単層誘電体層における、反射強度の測定結果から、インピーダンスマッチングされた誘電体層を試料溶液の表面に配置することで、試料溶液における濃度変化を測定できることと、複合誘電体層と単層誘電体とのシミュレーション結果より、複合誘電体層ではより高精度で試料溶液における濃度変化を測定できると考えられる。
単層複合体で、十分なインピーダンスマッチングを生ぜしめる誘電率を持つ物質は実現しがたい場合にも、既存の誘電体から複合誘電体を形成することによって、十分なインピーダンスマッチングを実現できることができる。
またインピーダンスマッチング周波数により誘電体層の厚みは変化するが、本実施形態の複合誘電体層では、20~30GHz付近では誘電体層2の厚みdは900~1100μm程度、インピーダンスマッチング周波数が2~3THz領域では誘電体層2の厚みdは16~21μm程度であった。ただし、誘電体層の厚みの変化に加え、複合誘電体を形成する構造の寸法や多層構造における厚みの調整などを行うことにより、各周波数帯において最適の誘電率を実現させ、より高い精度でインピーダンスマッチングを生じさせることが可能となる。
ヒトの皮膚(角質、上皮、および、真皮)に対応した誘電体層を組み合わせることで、インピーダンスマッチングを実現すると、ヒト血糖値等の高感度での非侵襲測定が可能になり、従来の血糖値測定法で問題となっている痛みや検査の際の医療廃棄物を除去できると考えられる。
真空 1
誘電体層 2
リファレンス溶液 3
試料溶液 4
入射波 6
反射波 7 7’ 7’’
複合誘電体層 100 200 300 400
直方体の誘電体 101 201 202
誘電体 301 302 401 402 403 404 405 406 407 408
球形の誘電体 102
1ユニットの誘電体 103 203
解析構造 30
PML面 31 34
観測面 32
励振面 33
ネットワークアナライザ 40
信号発生器 41
DUT 42
パワースプリッタ43
リファレンス受信部44
方向性結合器45
テスト受信部46

Claims (4)

  1. インピーダンス整合層を介して、水からなるリファレンス溶液に電磁波を照射したとき反射波の強度が入射波の強度の1/100以下となるインピーダンス整合層を使用する、水溶液の濃度測定方法であって、
    (a)前記インピーダンス整合層を介して、前記水からなるリファレンス溶液と、物質が溶解した試料溶液と、にそれぞれ電磁波を照射して、反射波について、マッチング周波数の変化値、および/又は、反射強度の変化値を検出することにより、前記試料溶液中の前記物質の濃度変化を測定すること
    を含み
    前記電磁波は、マイクロ波、ミリ波、又はTHz波であり、
    前記インピーダンス整合層が、2種以上の誘電体が隣り合って繰り返し配置された周期構造を有する、水溶液の濃度測定方法。
  2. インピーダンス整合層を介して、濃度既知の水溶液からなるリファレンス溶液に電磁波を照射したとき反射波の強度が入射波の強度の1/100以下となるインピーダンス整合層を使用する、水溶液の濃度測定方法であって、
    (a)前記インピーダンス整合層を介して、前記濃度既知の水溶液からなるリファレンス溶液と、試料溶液と、にそれぞれ電磁波を照射して、反射波について、マッチング周波数の変化値、および/又は、反射強度の変化値を検出することにより、前記試料溶液中の物質の濃度変化を測定すること
    を含み
    前記電磁波は、マイクロ波、ミリ波、又はTHz波であり、
    前記インピーダンス整合層が、2種以上の誘電体が隣り合って繰り返し配置された周期構造を有する、水溶液の濃度測定方法。
  3. 前記(a)において、インピーダンスマッチング周波数の変化および反射強度の変化の両方に基づいて、前記試料溶液中の非イオン性物質およびイオン性物質の両方について濃度の変化を測定する、
    請求項1または2に記載の水溶液の濃度測定方法。
  4. 試料溶液を内部に収容するとともに、前記試料溶液の照射面にインピーダンス整合層を備え、前記試料溶液に前記インピーダンス整合層を介して電磁波を照射する照射部と、
    前記試料溶液から反射される反射波の周波数及び強度を検出する検出部と、
    を有する水溶液の濃度測定装置であって、
    前記インピーダンス整合層は、前記インピーダンス整合層を介してリファレンス溶液に電磁波を照射して前記リファレンス溶液から反射される反射波の強度が入射波の強度の1/100以下となる層であ
    前記電磁波は、マイクロ波、ミリ波、又はTHz波であり、
    前記インピーダンス整合層が、2種以上の誘電体が隣り合って繰り返し配置された周期構造を有する、水溶液の濃度測定装置。
JP2020079789A 2020-04-28 2020-04-28 電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置 Active JP7505740B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020079789A JP7505740B2 (ja) 2020-04-28 2020-04-28 電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020079789A JP7505740B2 (ja) 2020-04-28 2020-04-28 電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021173709A JP2021173709A (ja) 2021-11-01
JP7505740B2 true JP7505740B2 (ja) 2024-06-25

Family

ID=78278283

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020079789A Active JP7505740B2 (ja) 2020-04-28 2020-04-28 電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7505740B2 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006000659A (ja) 2004-06-17 2006-01-05 Samsung Electronics Co Ltd ミリ波を用いた無血血糖測定装置及び方法
JP2008175794A (ja) 2007-01-17 2008-07-31 Tohoku Univ 反射測定装置および方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006000659A (ja) 2004-06-17 2006-01-05 Samsung Electronics Co Ltd ミリ波を用いた無血血糖測定装置及び方法
JP2008175794A (ja) 2007-01-17 2008-07-31 Tohoku Univ 反射測定装置および方法

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
清水陽人,外,電磁波を用いた生体関連物質の検出向上に関する研究,応用物理学会東北支部学術講演会講演予稿集(CD-ROM),2018年12月06日,ROMBUNNO.2aB03
鈴木耕也,外,誘電体層を介した生体水溶液表面のミリ波反射分析,日本表面科学会東北・北海道支部講演会講演予稿集,2018年03月08日,P.21
青木義典,外,電磁波を用いた生体物質水溶液の高感度測定法の開発,日本表面科学会東北・北海道支部講演会講演予稿集,2017年03月09日,P.37-38

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021173709A (ja) 2021-11-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Li et al. Elastic properties of soft tissue-mimicking phantoms assessed by combined use of laser ultrasonics and low coherence interferometry
Rahani et al. Mechanical damage detection in polymer tiles by THz radiation
Yoon et al. Coherent backscattering in biological media: measurement and estimation of optical properties
Gusev et al. Depth-profiling of elastic and optical inhomogeneities in transparent materials by picosecond ultrasonic interferometry: Theory
Thréard et al. Photoacoustic 3-D imaging of polycrystalline microstructure improved with transverse acoustic waves
Zhang et al. High sensitivity refractive index sensor based on frequency selective surfaces absorber
Hasar et al. Microwave method for reference-plane-invariant and thickness-independent permittivity determination of liquid materials
Marusii et al. Scattering of light by nematic liquid crystals in cells with a finite energy of the anchoring of the director to the walls
JP7505740B2 (ja) 電磁波を用いた水溶液の濃度測定方法およびその装置
JP2012185116A (ja) 光学特性評価装置および光学特性評価方法
Saha et al. Application of terahertz spectroscopy to the characterization of biological samples using birefringence silicon grating
Nourmohamadi et al. Refractive index optical sensor using gold-walled silicon nanowire
Jiang et al. A total-internal-reflection-based Fabry–Pérot resonator for ultra-sensitive wideband ultrasound and photoacoustic applications
Jiang et al. Nondestructive in-situ permittivity measurement of liquid within a bottle using an open-ended microwave waveguide
Li et al. A method to detect the mixed petrol interface by refractive index measurement with a fiber-optic SPR sensor
Hejase et al. Terahertz packaging: Study of substrates for novel component designs
Kiani et al. Rectangular Waveguide Characterization of Biaxial Material Using TM 11 Mode
Sener et al. Nondestructive Approach for Complex‐Shaped Cracks in Concrete Structures by Electromagnetic Waves with FDTD Technique
KR20160107924A (ko) 마이크로파 근접장 가열을 통한 근접장 영상화 현미경
Im et al. Coating thickness characterization of composite materials using terahertz waves
Hyde IV et al. Broadband, non‐destructive characterisation of PEC‐backed materials using a dual‐ridged‐waveguide probe
Danilenko et al. Effects of surface roughness and absorption on light propagation in graded-profile waveguides
Basanov et al. Determination of the Complex Permittivity of a Liquid in the Ka Band from the Interference Dependence of the Reflection Coefficient on the Layer Thickness
Yu Measurement of Coating Thickness Based on Terahertz Time-Domain Spectroscopy (THz-TDS) Technology
Podunavac et al. Design of Spoof Surface Plasmon Polariton-based Sensor for Low Dielectric Constant Liquid Samples

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20200520

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230405

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231226

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20240226

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240412

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240528

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240606