JP7502621B2 - 加工材の製造方法及び加工材 - Google Patents

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Description

本願は、加工材の製造方法及び加工材を開示する。
特許文献1には、パンチとダイとを用いて鋼材をせん断して加工材を得る技術が開示されている。特許文献1においては、パンチで打ち抜かれた抜き材の破断面を、加工材の破断面に押し付けることにより、加工材の破断面の引張残留応力を低減している。
特許文献2には、パンチとダイとを用いて鋼板を打ち抜いて、抜き穴を形成する技術が開示されている。特許文献2においては、抜き穴を画定するせん断端面のうち、曲率半径の小さな湾曲部において、破断面の板厚方向長さを大きくし、せん断面の割合を小さくすることで、湾曲部が伸びフランジ成形された場合における伸びフランジ割れを抑制している。一方で、抜き穴を画定するせん断端面のうち、湾曲部以外の曲率半径の大きな部分については、破断面の板厚方向長さを短くし、せん断面の割合を大きくすることで、疲労強度の低下を抑制している。特許文献2においては、鋼材をせん断する際、上記の湾曲部に相当する部分よりも先に、それ以外の部分にせん断面を形成している。
国際公開第2016/136909号 国際公開第2016/092657号
特許文献1に開示されているように、鋼材をせん断して得られる加工材においては、破断面の引張残留応力が大きくなる場合がある。鋼材をせん断して加工材を得る場合に、加工材の破断面の引張残留応力を低減可能な新たな技術が必要である。
また、鋼材に対して曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1x(例えば図1参照)と曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1y(例えば図1参照)とを形成する場合、第1切断端面1xは、第2切断端面1yよりも、例えばその後の成形加工時等に変形が生じ易く、引張残留応力が解消され易い。すなわち、曲率半径の小さな第1切断端面1xに大きな引張残留応力が生じたとしても、加工材の性能を低下させ難い。この点、鋼材に対して曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xと曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yとを形成する場合、第2切断端面1yにおいて引張残留応力を低減できるとよい。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
鋼材を切断して加工材を製造する方法であって、
前記鋼材に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面を形成すること、及び、
前記第1切断端面を形成した後、前記鋼材に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面を形成すること、ここで前記第2切断端面は前記第1切断端面と連続する、
を含む、
加工材の製造方法
を開示する。
本開示の製造方法において、前記第2切断端面の曲率半径R2(mm)と、前記第1切断端面の曲率半径R1(mm)との比R2/R1が、2.0以上であってもよい。
本開示の製造方法において、せん断加工により前記第1切断端面を形成してもよい。
本開示の製造方法において、前記鋼材が板状であってもよい。
本開示の製造方法において、前記鋼材の引張強さが980MPa以上であってもよい。
本開示の製造方法において、前記鋼材の引張強さが1470MPa以上であってもよい。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
切断端面を有する鋼材からなる加工材であって、
前記切断端面が、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面と、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面とを備え、
前記第1切断端面と前記第2切断端面とが連続しており、
前記第1切断端面が第1ダレと第1破断面と第1バリとを含み、
前記第2切断端面が第2ダレと第2破断面と第2バリとを含み、
前記第1破断面が、第1部分と第2部分とを含み、
前記第2破断面が、第3部分と第4部分とを含み、
前記第1部分が、前記第1ダレ側から前記第1バリ側に向かって進展した第1き裂によって形成され、
前記第2部分が、前記第1バリ側から前記第1ダレ側に向かって進展した第2き裂によって形成され、
前記第3部分が、前記第2ダレ側から前記第2バリ側に向かって進展した第3き裂によって形成され、
前記第4部分が、前記第2バリ側から前記第2ダレ側に向かって進展した第4き裂によって形成され、
前記第1破断面に占める前記第1部分の面積率をX1(%)とし、
前記第1破断面に占める前記第2部分の面積率をX2(%)とし、
前記第2破断面に占める前記第3部分の面積率をY1(%)とし、
前記第2破断面に占める前記第4部分の面積率をY2(%)とした場合、
Y1がX1の1.1倍以上である、
加工材
を開示する。
本開示の加工材において、Y2<Y1であってもよい。
本開示の加工材において、X1/X2<Y1/Y2であってもよい。
本開示の加工材において、前記第1切断端面と前記第2切断端面との境界において、前記第1切断端面における前記第1部分と前記第2部分との境界線と、前記第2切断端面における前記第3部分と前記第4部分との境界線と、が不連続となっていてもよい。
本開示の製造方法によれば、鋼材に対して曲率半径が相対的に小さい第1切断端面と曲率半径が相対的に大きい第2切断端面(せん断端面)とを形成して加工材を製造する際、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面における破断面の引張残留応力を低減することができる。
せん断加工の流れの一例について説明するための概略図である。(A)が第1刃と第2刃とを離隔させた状態を示し、(B)が第1刃と第2刃との間に鋼材を配置した状態を示し、(C)が第1刃と第2刃とを相対的に移動させて互いに近付けることで、鋼材の一部を打ち抜いた状態を示し、(D)が第1刃と第2刃とを離隔させて(A)の位置に戻した状態を示している。 鋼材をせん断した場合における切断端面の形成メカニズムの一例について説明するための概略図である。第1刃及び第2刃の相対的な移動方向に沿った断面であって、第1刃、第2刃及び鋼材を含む断面の形態を示している。(A)が鋼材に第1刃及び第2刃を押し付けることで、鋼材にダレが形成された状態を示し、(B)がダレ形成後、鋼材に第1刃及び第2刃をさらに押し付けることで、鋼材にき裂を生じさせた状態を示し、(C)がき裂形成後、鋼材に第1刃及び第2刃をさらに押し付けることで、鋼材の一部を打ち抜いた状態を示している。 本発明者による新たな知見について説明するための概略図である。(A)が第1刃からき裂を進展させた場合、(B)が第1刃及び第2刃の双方からき裂を進展させた場合、(C)が第2刃からき裂を進展させた場合である。「○」は引張残留応力が小さいことを意味し、「△」は引張残留応力が中程度であることを意味し、「×」は引張残留応力が大きいことを意味する。 スクラップの拘束と、き裂の進展方向との関係について説明するための断面概略図である。(A)がスクラップの拘束が小さい場合、(B)がスクラップの拘束が大きい場合である。 加工材の製造方法の流れの一例について説明するための概略図である。平面視において鋼材の中央部分を打ち抜いて抜き穴を設ける形態を示している。(A)が鋼材に対する切断線を点線で示し、(B)が1段階目の切断後の鋼材の状態を示し、(C)が2段階目のせん断後に得られる加工材の状態を示している。 加工材の製造方法の流れの他の例について説明するための断面概略図である。平面視において鋼材の外縁の全周を打ち抜いて、鋼材の中央部分を加工材として残す形態を示している。(A)が鋼材に対する切断線を点線で示し、(B)が1段階目の切断後の鋼材の状態を示し、(C)が2段階目のせん断後に得られる加工材の状態を示している。 加工材の製造方法の流れの他の例について説明するための断面概略図である。平面視において鋼材の一端を曲線状に打ち抜いて開断面を形成する形態を示している。(A)が鋼材に対する切断線を点線で示し、(B)が1段階目の切断後の鋼材の状態を示し、(C)が2段階目のせん断後に得られる加工材の状態を示している。 本開示の製造方法によって製造される加工材の構成の一例を説明するための概略図である。加工材のうち曲率半径の大きな第2切断端面(せん断端面)を含む断面形状を示している。 本開示の加工材の第2切断端面(せん断端面)の構成の一例を説明するための概略図である。第2切断端面を正面から見た状態を示している。 破断面における第1部分と第2部分とを判別する方法について説明するための概略図である。(A)が破断面に生じる水素脆化割れの向きを模式的に示しており、(B)が破断面におけるバリ側からダレ側の間の任意の位置Xと、水素脆化割れの向き(角度θ)との関係を模式的に示している。 第1切断端面及び第2切断端面の双方を「せん断」にて形成した場合における、加工材の性状の一例を説明するための概略図である。第1切断端面及び第2切断端面の各々を正面から見た状態を示している。 実施例1及び比較例1に関し、平面視における、鋼板に対する切断線の形状を説明するための概略図である。切断線を点線で示している。 実施例1及び比較例1に関し、切断端面の残留応力の測定方法について説明するための概略図である。 実施例1及び比較例1に関し、第2切断端面を形成する際にスクラップに生じる傾き(倒れ角)について示す図である。図12のX-X’断面における状態を示している。(A)が実施例1、(B)が比較例1である。 実施例1及び比較例1に関し、スクラップ側及び加工材側の各々の第2切断端面に生じた引張残留応力値を示すグラフである。 実施例2及び比較例2に関し、平面視における、鋼板に対する切断線の形状を説明するための概略図である。切断線を点線で示している。 実施例2及び比較例2に関し、スクラップ側及び加工材側の各々の第2切断端面に生じた引張残留応力値を示すグラフである。 実施例3及び比較例3に関し、平面視における、鋼板に対する切断線の形状を説明するための概略図である。切断線を点線で示している。 実施例3及び比較例3に関し、スクラップ側及び加工材側の各々の第2切断端面に生じた引張残留応力値を示すグラフである。 実施例4及び比較例4に関し、平面視における、鋼板に対する切断線の形状を説明するための概略図である。切断線を点線で示している。 実施例4及び比較例4に関し、スクラップ側及び加工材側の各々の第2切断端面に生じた引張残留応力値を示すグラフである。
1.課題及び新たな知見
図1(A)~(D)に鋼材をせん断して加工材を得る場合の流れの一例を示す。まず、図1(A)及び(B)に示されるように、第1刃21と第2刃22とを離隔させた状態で、その間に鋼材5を配置する。ここで、鋼材5は第1面10aと第1面10aとは反対側の第2面10bとを有し、第1刃21は第1底面21aと第1側面21bと第1先端部21x(図2(A)参照)とを有し、第2刃22は第2底面22aと第2側面22bと第2先端部22x(図2(A)参照)とを有する。第1先端部21x及び第2先端部22xは、各々、平面視において、曲率半径の小さな部分と曲率半径の大きな部分とを有する。図1(B)及び(C)に示されるように、第1底面21aは鋼材5の第1面10aと接触し、第2底面22aは鋼材5の第2面10bと接触する。第1刃21はパンチであってもよく、第2刃22はダイであってもよい。続いて、図1(C)に示されるように、第1刃21及び第2刃22を相対的に移動させることで鋼材5をせん断する。これにより、図1(C)及び(D)に示されるように、鋼材5の一部が第1刃21によってスクラップ15(図2(C)参照)として打ち抜かれ、鋼材5の残りの部分が切断端面1を有する加工材10となり得る。尚、スクラップ15を何らかの製品に利用してもよい。図1(D)に示されるように、加工材10の切断端面1は、上記の第1先端部21x及び第2先端部22xの形状と対応して、曲率半径の小さな第1切断端面1xと曲率半径の大きな第2切断端面1yとを有する。
図1(A)~(D)には、第1刃21と第2刃22とで鋼材5をせん断することで、鋼材5の一部に抜き穴を形成する形態を示したが、第1刃21と第2刃22とで鋼材5の端部をせん断して除去してもよいし、第1刃21と第2刃22とで鋼材5をせん断してスリット等を形成してもよい。また、平面視における切断端面1の形状も図示した形態に限定されるものではなく、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xと、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yとが組み合わせたものであればよい。
せん断によって切断端面を形成する場合のメカニズムの一例について説明する。図2(A)~(C)に示されるように、第1刃21と第2刃22とで鋼材5をせん断することで、切断端面1を有する加工材10を得る場合について考える。図2(A)に示されるように、鋼材5の第1面10aに第1刃21の第1底面21aが押し付けられることで、鋼材5の第1面10a側にダレ1aが形成される。ダレ1aは鋼材5に第1刃21の第1先端部21xが食い込むまでの過程で形成される。ダレ1aが形成された後、第1先端部21xが鋼材5に食い込む過程でせん断面1e(図8参照)が形成される場合もある。ダレ1aが形成された後、又はダレ1a及びせん断面1eが形成された後、図2(B)に示されるように、第1刃21側から第2刃22側に向かって、第1き裂1dxが発生する。一方で、第2刃22側においても同様に、鋼材5の第2面10bに第2先端部22xが食い込んだ後、第2刃22側から第1刃21側に向かって、第2き裂1dyが発生する。図2(C)に示されるように、第1き裂1dx及び第2き裂1dyの各々が進展して互いに合わさることで、破断面1bが形成される。また、第1刃21と第2刃22とをさらに移動させることで、鋼材5が、スクラップ15と、目的物である加工材10とに分離される。この時、図2(C)に示されるように、加工材10の切断端面1のうち、第2刃22側の角部に、バリ1cが形成され得る。第1刃21と第2刃22との間のシャー角の有無や、平面視における切断端面1の形態(開断面、閉断面等)によらず、図2(A)~(C)のようなメカニズムで、せん断による切断端面1が形成され得る。
上記のようにして形成された切断端面1においては、せん断による損傷や歪等によって圧縮残留応力や引張残留応力が生じ得る。せん断による切断端面1において大きな引張残留応力が存在すると、例えば、切断端面1の耐水素脆化性又は疲労強度が低下し易い。この点、性能の高い加工材10を得るためには、切断端面1において如何にして引張残留応力を低減するかが一つの課題となり得る。特に、特許文献1に開示されているように、切断端面1のうち破断面1bにおける引張残留応力を低減できるとよい。
また、図1に示されるように、鋼材5を切断して曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xと曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yとを形成する場合、第1切断端面1xは、第2切断端面1yよりも、その後の成形加工時等において変形が生じ易く、引張残留応力が解消され易い。すなわち、曲率半径の小さな第1切断端面1xに大きな引張残留応力が生じたとしても、加工材10の性能を低下させ難い。この点、鋼材5に対して曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xと曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yとを形成する場合、第1切断端面1xよりも第2切断端面1yにおいて引張残留応力を低減できるとよい。
本発明者は、鋼材5に対するせん断の条件と、当該せん断によって生じた切断端面1の性状との関係について数々の実験・分析を繰り返した結果、以下の新たな知見を得た。
図3(A)~(C)に示されるように、第1刃21によって鋼材5の一部11を打ち抜くとともに、第2刃22によって鋼材5の他部12を打ち抜く場合について説明する。この場合において、図3(A)に示されるように、第1刃21側から優先的にき裂が進展した場合、一部11の切断端面における引張残留応力が大きくなる一方で、他部12の切断端面における引張残留応力が小さくなる。すなわち、一部11をスクラップ15とする一方、他部12を製品(加工材10)として好適に採用し得る。また、図3(B)に示されるように、第1刃21側及び第2刃22側の双方から同等にき裂が進展した場合、一部11及び他部12の双方の切断端面に同等の引張残留応力が生じ得る。すなわち、一部11と他部12との特性のバラつきが抑えられる。この点、一部11及び他部12の双方を製品として採用する場合に好適といえる。さらに、図3(C)に示されるように、第2刃22側から優先的にき裂が進展した場合、他部12の切断端面における引張残留応力が大きくなる一方で、一部11の切断端面における引張残留応力が小さくなる。すなわち、他部12をスクラップ15とする一方、一部11を製品(加工材10)として好適に採用し得る。
以上の知見から、以下のことがいえる。
(1)切断端面1のうち破断面1bに生じる引張残留応力は、破断面1bを形成するき裂1dx、1dyの進展方向や長さに依存して変化する。
(2)破断面1bにおいて、ダレ1a側(第1刃21側)から進展したき裂1dxが長くなるほど、加工材10の破断面1bの引張残留応力が小さくなり、スクラップ15の破断面の引張残留応力が大きくなる。
(3)すなわち、加工材10の破断面1bにおいて、ダレ1a側から進展した第1き裂1dxに由来する部分の面積率が、バリ1c側から進展した第2き裂1dyに由来する部分の面積率よりも大きい場合、ダレ1a側から進展した第1き裂1dxに由来する部分の面積率が、バリ1c側から進展した第2き裂1dyに由来する部分の面積率よりも小さい場合よりも、破断面1bの引張残留応力を相対的に低減することができる。
本発明者は、鋼材5のせん断時に、き裂1dx、1dyの進展方向や長さを制御することについて、数々の実験・分析を繰り返した結果、さらに、以下の新たな知見を得た。
図4(A)及び(B)に示されるように、き裂1dx、1dyの進展方向や長さは、せん断時のスクラップ15の拘束状態によって変化する。具体的には、スクラップ15の拘束が小さい場合は、せん断時にスクラップ15側に倒れ角αが生じ易く、図4(A)に白抜き矢印で示されるように、第1刃21からき裂1dxが進展し易くなり、結果として加工材10の破断面1bにおける引張残留応力が小さくなり易い。一方で、スクラップ15の拘束が大きい場合は、せん断時にスクラップ15側に倒れ角αが生じ難く、図4(B)に白抜き矢印で示されるように、第1刃21及び第2刃22の双方からき裂1dx、1dyが進展し易くなり、結果として、加工材10の破断面1bにおける引張残留応力が大きくなり易い。
せん断時のスクラップの拘束状態は、切断端面の曲率半径等によって変化する。例えば、曲率半径の小さな切断端面を形成する場合よりも、曲率半径の大きな切断端面を形成する場合のほうが、スクラップ15の拘束が小さく、せん断時にスクラップ15側に倒れ角αが生じ易い。また、抜き穴等の閉断面を形成する場合よりも、トリミング等の開断面を形成する場合のほうが、スクラップ15の拘束が小さく、せん断時にスクラップ15側に倒れ角αが生じ易い。
以上の知見から、以下のことがいえる。
(4)鋼材5の一部をせん断して、曲率半径の小さな第1切断端面1xと曲率半径の大きな第2切断端面1yとを形成する場合において、当該第1切断端面1xと第2切断端面1yとを、1度のせん断で同時に形成しようとすると、スクラップ15の拘束が大きくなり、スクラップ15側に倒れ角αが生じ難く、第1切断端面1xと第2切断端面1yとの双方において引張残留応力が生じ易い。
(5)鋼材5の一部をせん断して、曲率半径の小さな第1切断端面1xを形成した後、曲率半径の大きな第2切断端面1yを形成する場合、第1切断端面1xを形成する際は、スクラップ15の拘束が大きいことから、第1切断端面1xに引張残留応力が生じるものの、その後の第2切断端面1yの形成の際は、スクラップ15の拘束が小さいことから、第2切断端面1yに生じる引張残留応力を相対的に低減することができる。ここで、上述したように、曲率半径の小さな第1切断端面1xに生じた引張残留応力は、加工材10の性能を低下させ難い。
(6)鋼材5に対して、曲率半径の小さな第1切断端面1xを形成した後、曲率半径の大きな第2切断端面1yを形成する場合、第1切断端面1xは、せん断加工以外の方法によって形成されたものであってもよい。すなわち、せん断加工に限られない切断加工によって曲率半径の小さな第1切断端面1xを形成した後、せん断加工によって曲率半径の大きな第2切断端面1yを形成した場合にも、第2切断端面1yにおいて引張残留応力を低減することができる。
本開示の加工材の製造方法は、以上の知見に基づき完成されたものである。
2.加工材の製造方法(第1実施形態)
図5(A)~(C)に、鋼材5を切断して加工材10を製造する方法の一例を示す。図5(A)~(C)に示されるように、本開示の製造方法は、
鋼材5に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xを形成すること(図5(A)及び(B))、及び、
第1切断端面1xを形成した後、鋼材5に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成すること、ここで第2切断端面1yは第1切断端面1xと連続する(図5(C))、
を含む。
2.1 鋼材
鋼材5の形状は、せん断加工が可能である限り、特に限定されるものではない。鋼材5は、例えば、板状であってもよいし、棒状であってもよい。鋼材5が板状である場合、その板厚は、例えば、0.8mm以上であってもよく、3.0mm以下であってもよい。また、鋼材5が棒状である場合、その断面形状は特に限定されず、例えば円状であっても多角形状であってもよく、その断面の円相当直径は10mm以上であってもよく、150mm以下であってもよい。さらに、鋼材5は、折り曲げ等によって何らかの形状に成形されたものであってもよい。
図5(A)に示されるように、鋼材5は、第1面10aと第1面10aとは反対側の第2面10bとを備えていてもよい。第1面10aと第2面10bとは互いに平行であってもよい。尚、本願にいう「平行」とは、完全な平行に限定されるものではなく、実質的に平行であればよい。すなわち、第1面10aと第2面10bとが完全な平行ではない場合においても、工業生産上許容される誤差の範囲内であれば平行とみなす。具体的には、第1面10aと第2面10bとのなす角が0°±1°の場合、当該第1面10aと第2面10bとは平行であるものとみなす。
鋼材5は表面処理層を有していてもよい。表面処理層としては、めっき層や塗膜等が挙げられる。また、鋼材5は鋼種の異なる複数の層を含むものであってもよい。例えば、鋼材5としてクラッド鋼を採用することも可能である。
鋼材5の機械特性は特に限定されるものではなく、加工材10の用途に応じて適宜決定され得る。ただし、引張残留応力による耐水素脆化性の低下の問題は、特に、高強度の鋼材において生じ易い。この点、鋼材5は、例えば、引張強さが980MPa以上であってもよく、1180MPa以上であってもよく、1470MPa以上であってもよい。鋼材5の引張強さの上限は特に限定されるものではないが、例えば、2500MPa以下であってもよく、2200MPa以下であってもよく、2000MPa以下であってもよい。尚、本願にいう鋼材の「引張強さ」とは、ISO 6892-1:2009にしたがうものである。
鋼材5の化学組成や金属組織は特に限定されるものではなく、加工材10の用途に応じて適宜決定され得る。本開示の技術によれば、鋼材5の化学組成や金属組織によらず、破断面1bにおける引張残留応力を低減することができる。化学組成の一例として、鋼材5は、質量%で、C:0.050~0.800%、Si:0.01~3.00%、Mn:0.01~10.00%、Al:0.001~0.500%、P:0.100%以下、S:0.050%以下、N:0.010%以下、Cr:0~3.000%、Mo:0~1.000%、B:0~0.0100%、Ti:0~0.500%、Nb:0~0.500%、V:0~0.500%、Cu:0~0.50%、Ni:0~0.50%、O:0~0.020%、W:0~0.100%、Ta:0~0.10%、Co:0~0.50%、Sn:0~0.050%、Sb:0~0.050%、As:0~0.050%、Mg:0~0.050%、Ca:0~0.050%、Y:0~0.050%、Zr:0~0.050%、La:0~0.050%、Ce:0~0.050%、及び、残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有していてもよい。また、鋼材5の上記化学組成において、任意に添加される元素であるCr、Mo、B、Ti、Nb、V、Cu、Ni、O、W、Ta、Co、Sn、Sb、As、Mg、Ca、Y、Zr、La、及びCeの含有量の下限は0.0001%又は0.001%であってもよい。
2.2 第1切断端面の形成
本開示の製造方法においては、まず、上記したような鋼材5に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xを形成する。例えば、図5(A)及び(B)に示されるように、鋼材5の一部を打ち抜いて抜き穴を形成する場合、当該抜き穴を画定する切断線Lの全体を一度に打ち抜くことはせず、当該切断線Lのうち曲率半径が相対的に小さい部分を先に切断して、第1切断端面1xを形成する。尚、切断線Lのうちどこからどこまでを曲率半径が相対的に小さい部分とし、どこからどこまでを曲率半径が大きい部分とするかについては、引張残留応力を低減したい部分に応じて適宜決定すればよい。本開示の製造方法は、切断線Lの全体を1回で切断するのではなく、2回以上に分割して切断することで、スクラップ15(図2(C)、図4(A)及び(B)参照)の拘束状態を変化させつつ切断加工及びせん断加工を行う点に特徴があり、曲率半径が相対的に小さい部分と曲率半径が相対的に大きい部分との境目を厳密に特定する必要はない。例えば、図5(B)において、第1切断端面1xは、切断線Lのうち、湾曲部分とともに少々の直線部分を含んでいてもよい。また、引張残留応力を最も低減したい部分が後述の第2切断端面1yに含まれるように、それ以外の部分を第1切断端面1xとしてもよい。
切断線Lのうち曲率半径が相対的に小さい部分の当該曲率半径は、例えば、100mm以下であってもよい。一方、切断線Lのうち最も曲率半径の大きな部分は、直線であってもよい。
第1切断端面1xは、平面視において、後述する第2切断端面1yよりも曲率半径が相対的に小さければよい。例えば、第2切断端面1yの曲率半径R2(mm)と、第1切断端面1xの曲率半径R1(mm)との比R2/R1が、2.0以上であってもよいし、5.0以上であってもよい。尚、本願においては、第1切断端面1xの曲率半径R1や第2切断端面1yの曲率半径R2は、以下の通りにして特定する。すなわち、各々の切断端面1x、1yにおいて曲率半径の最も小さい部分を特定して、これを各々R1、R2とみなす。具体的には、鋼材5の平面上に2mm間隔に隣接する3点に基づいて曲率半径を測定し、測定した曲率半径が最も小さくなる部分を特定し、第1切断端面1xの曲率半径R1や第2切断端面1yの曲率半径R2を特定する。
平面視における第1切断端面1xの長さは特に限定されるものではないが、例えば、10mm以上であってもよいし、500mm以下であってもよい。或いは、一つの第1切断端面1xの長さL1と、一つの第2切断端面1yの長さL2との比L1/L2が、0.5以上であってもよいし、3.0以下であってもよい。
第1切断端面1xの形成は、せん断加工に限られるものではない。例えば、レーザー加工や機械加工等のせん断加工以外の一般的な切断加工によって第1切断端面1xを形成してもよい。ただし、製造設備を共通化する観点や工程を簡略化する観点等からは、せん断加工により第1切断端面1xを形成してもよい。せん断加工の一例については後述する。
2.3 第2切断端面の形成
本開示の製造方法においては、第1切断端面1xを形成した後、鋼材5に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成する。ここで第2切断端面1yは第1切断端面1xと連続する。すなわち、第1切断端面1xと第2切断端面1yとは、互いに連結して一つの切断端面を形成し得る。尚、第2切断端面1yは、1回のせん断によって形成されてもよいし、複数回のせん断によって形成されてもよい。このように、本開示の製造方法においては、第1切断端面1xの形成と第2切断端面1yの形成とを分けて、1段階目の切断時と2段階目のせん断時とでスクラップ15(図2(C)、図4(A)及び(B)参照)の拘束状態を変化させることで、第2切断端面1yが形成される際のき裂の進展方向を適切に制御することができ、結果として、第2切断端面1yの破断面1bにおける引張残留応力を低減することができる。
2.4 せん断加工の一例
本開示の製造方法においては、以下に説明するようなせん断加工によって、第1切断端面1xを形成してもよいし、第2切断端面1yを形成してもよい。
例えば、図1及び2に示されるように、鋼材5を第1刃21と第2刃22との間に配置する。ここで第1刃21は第1底面21aと第1側面21bと第1先端部21xとを有し、第2刃22は第2底面22aと第2側面22bと第2先端部22xとを有する。第1先端部21xや第2先端部22xは、第1切断端面1x又は第2切断端面1yと対応する形状を有する。鋼材5を第1刃21と第2刃22との間に配置した後、第1刃21と第2刃22とを相対的に移動させて鋼材5をせん断することで、第1切断端面1x又は第2切断端面1yを形成することができる。言うまでもないが、第1切断端面1x及び第2切断端面1yの双方について、第1刃21と第2刃22とを用いたせん断によって形成する場合、第1切断端面1xを形成するための第1刃21及び第2刃22と、第2切断端面1yを形成するための第1刃21及び第2刃22とは、刃の形状が異なる。
2.4.1 第1刃
第1刃21は、第1底面21a、第1側面21b及び第1先端部21xを有する。第1底面21aは、第1刃21の相対的な移動方向に対して交差する面を有していてもよく、当該移動方向に対して直交する面を有していてもよい。また、第1側面21bは、第1刃21の相対的な移動方向に沿った面を有していてもよく、当該移動方向に対して傾いた面を有していてもよい。また、第1先端部21xは、第1底面21aと第1側面21bとの交線付近の部分をいう。例えば、第1底面21aと第1側面21bとの交線から第1底面21a側及び第1側面21b側の双方に向かって2mmの範囲にある部分であってもよい。第1刃21の先端がRを有するように加工されている場合や先端が面取りされている場合は、第1底面21aに沿って延長した面と、第1側面21bに沿って延長した面との交線を仮定し、当該交線から第1底面21a側及び第1側面21b側の双方に向かってR+2mmの範囲内に含まれる部分を第1先端部21xとみなしてもよい。
第1底面21aの形状は、目的とする加工材10の切断端面1x、1yの形状に応じて決定され得る。第1底面21aは平坦面や曲面を有していてもよく、当該平坦面や曲面は鋼材5のせん断時、第1面10aと対面し得る。
第1側面21bの形状は、目的とする加工材10の切断端面1x、1yの形状に応じて決定され得る。第1側面21bは平坦面や曲面を有していてもよい。
第1先端部21xは、目的とする加工材10の切断端面1x、1yの形状に応じて決定され得る。図5(A)~(C)に示されるように、鋼材5に抜き穴を設ける場合、第2切断端面1yの形成時に用いられる第1刃21において、第1先端部21xの形状は、当該抜き穴の縁に沿った環状であってもよい。
せん断動作前の待機状態において、第1刃21は、第2刃22よりも上方に配置されていてもよい。この場合、第1刃21は、第2刃22の第2底面22aの上に載置された鋼材5の一部を、上から下へと打ち抜くパンチであってもよい。
第1刃21は、せん断加工に用いられる刃として一般的な材質からなる。例えば、第1刃21は、SKD11からなっていてもよい。また、第1刃21はその表面に第1コーティングを有してもよい。
2.4.2 第2刃
第2刃22は、第2底面22a、第2側面22b及び第2先端部22xを有する。第2底面22aは、第2刃22の相対的な移動方向に対して交差する面を有していてもよく、当該移動方向に対して直交する面を有していてもよい。また、第2側面22bは、第2刃22の相対的な移動方向に沿った面を有していてもよく、当該移動方向に対して傾いた面を有していてもよい。また、第2先端部22xは、第2底面22aと第2側面22bとの交線付近の部分をいう。例えば、第2底面22aと第2側面22bとの交線から第2底面22a側及び第2側面22b側の双方に向かって2mmの範囲にある部分であってもよい。第2刃22の先端がRを有するように加工されている場合や先端が面取りされている場合は、上述した第1先端部21xと同様に、第2先端部22xを特定し得る。すなわち、第2底面22aに沿って延長した面と、第2側面22bに沿って延長した面との交線を仮定し、当該交線から第2底面22a側及び第2側面22b側の双方に向かってR+2mmの範囲内に含まれる部分を第2先端部22xとみなしてもよい。
第2底面22aの形状は、目的とする加工材10の切断端面1x、1yの形状に応じて決定され得る。第2底面22aは平坦面や曲面を有していてもよい。
第2側面22bの形状は、目的とする加工材10の切断端面1x、1yの形状に応じて決定され得る。第2側面22bは平坦面であっても、曲面であっても、平坦面と曲面との組み合わせであってもよい。
第2先端部22xは、目的とする加工材10の切断端面1x、1yの形状に応じて決定され得る。図5(A)~(C)に示されるように、鋼材5に抜き穴を設ける場合、第2切断端面1yの形成時に用いられる第2刃22において、第2先端部22xの形状は、当該抜き穴の縁に沿った環状であってもよい。
せん断動作前の待機状態において、第2刃22は、第1刃21よりも下方に配置されていてもよい。この場合、第2刃22は、鋼材5が載置されるダイであってもよい。
第1刃21は、せん断加工に用いられる刃として一般的な材質からなる。例えば、第2刃22は、SKD11からなっていてもよい。第2刃22の材質は、第1刃21の材質と同じであっても異なっていてもよい。また、第2刃22はその表面に第2コーティングを有してもよい。
2.4.3 鋼材の配置
本開示の製造方法においては、鋼材5に対して第1切断端面1xや第2切断端面1yを形成するにあたって、上記のような第1刃21と第2刃22との間に鋼材5を配置してもよい。第1刃21と第2刃22との間における鋼材5の配置について特に制限はなく、鋼材5を適切にせん断できるように配置されればよい。例えば、図1(B)に示されるように、鋼材5の上方に第1刃21が配置されるようにしつつ、第2刃22の第2底面22aの上に鋼材5を載置してもよい。また、本開示の製造方法においては、鋼材5のせん断時にスクラップ15の拘束状態を制御するため、第1刃21と第2刃22との間に鋼材5を配置する際、不図示の押さえ部材(ホルダー)によって鋼材5を第1底面21aや第2底面22aへと押さえつけてもよい。押さえ部材の形態は特に限定されるものではなく、一般的な押さえ部材を採用すればよい。
2.4.4 せん断の際の第1刃と第2刃の動作及び関係
本開示の製造方法においては、第1刃21と第2刃22との間に鋼材5を配置した後、第1刃21と第2刃22とを相対的に移動させることで、鋼材5をせん断して、第1切断端面1xや第2切断端面1yを形成し得る。第1刃21及び第2刃22の相対的な移動は、不図示の移動装置によって行われればよい。或いは、第1刃21及び第2刃22の少なくとも一方を手動で移動させてもよい。
尚、せん断の際、第1刃21と第2刃22との間に、クリアランスが設けられてもよい。クリアランスは、鋼材5の材質や板厚等に応じて適宜決定され得る。例えば、鋼材5が板状である場合、クリアランスは、板厚の5%以上又は6%以上であってもよく、25%以下又は18%以下であってもよい。また、本発明者の新たな知見によれば、クリアランスが10%以上14%以下である場合に、鋼材5に対するせん断時のき裂1dx、1dyの進展方向をより適切に制御し易い。尚、本願にいう「クリアランス」とは、ISO 16630:2009にしたがうものである。
せん断の際、第1刃21と第2刃22との間にシャー角が設けられてもよい。シャー角は0°以上であってもよく、10°以下であってもよい。また、本発明者の新たな知見によれば、シャー角が0°以上1°以下である場合に、鋼材5に対するせん断時のき裂1dx、1dyの進展方向を適切に制御し易い。
3.加工材の製造方法(第2実施形態)
図5(A)~(C)に示す製造方法においては、鋼材5の一部を打ち抜いて抜き穴を形成する形態を示したが、本開示の製造方法はこの形態に限定されるものではない。例えば、図6(A)~(C)に示されるように、鋼材5をトリミングする形態においても本開示の製造方法を採用し得る。すなわち、図6(A)及び(B)に示されるように、鋼材5をトリミングする場合にも、切断線Lの全体を一度に打ち抜くことはせず、当該切断線Lのうち曲率半径が相対的に小さい部分を先に切断して、第1切断端面1xを形成する。第1切断端面1xを形成した後は、図6(C)に示されるように、鋼材5に対してせん断加工を施して、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成する。これにより、第2切断端面1yの破断面1bにおける引張残留応力を低減することができる。
4.加工材の製造方法(第3実施形態)
図5(A)~(C)及び図6(A)~(C)に示す製造方法においては、鋼材5の切断線Lが環状である形態を示したが、本開示の方法はこの形態に限定されるものではない。例えば、図7(A)~(C)に示されるように、鋼材5に対して開断面を形成する形態においても本開示の製造方法を採用し得る。すなわち、図7(A)及び(B)に示されるように、鋼材5に対して開断面を形成する場合にも、切断線Lの全体を一度に打ち抜くことはせず、当該切断線Lのうち曲率半径が相対的に小さい部分を先に切断して、第1切断端面1xを形成する。第1切断端面1xを形成した後は、図7(C)に示されるように、鋼材5に対してせん断加工を施して、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成する。これにより、第2切断端面1yの破断面1bにおける引張残留応力を低減することができる。
5.補足
尚、上記においては、第1切断端面1xを形成した後において、第2切断端面1yとなる切断線Lを介して、スクラップ15側となる部分を「片持」で支えられた状態とする(スクラップ15側となる部分が、一本の切断線Lのみを介して加工材10側に保持されるようにする)形態について示したが、本開示の製造方法は、この形態に限定されるものではない。第1切断端面1xを形成した後において、第2切断端面1yが両持或いはそれ以上となるような場合であっても、第2切断端面1yを形成する前に第1切断端面1xを形成することで、第1切断端面1xと第2切断端面1yとを同時にせん断する場合と比べて、スクラップ15側の拘束が小さくなり、第2切断端面1yを形成する際にスクラップ15側に倒れ角αを生じさせ易くなることから、第2切断端面1yの破断面1bに生じる引張残留応力を相対的に低減することができる。ただし、本発明者の新たな知見によれば、第1切断端面1xを形成した後において、第2切断端面1yとなる切断線Lを介して、スクラップ15側となる部分が加工材10側となる部分から「片持」で支えられた状態とすることで、その後、せん断によって第2切断端面1yを形成する場合に、スクラップ15側に一層大きな倒れ角αを生じさせ易くなり、第2切断端面1yの破断面1bに生じる引張残留応力を一層低減することができる。
6.加工材の性状の一例
本開示の製造方法により得られる加工材10は、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yにおいて、特に破断面1bにおける引張残留応力が低減され得る。以下、加工材10の第2切断端面1yの一例について説明するが、第2切断端面1yは以下の形態に限定されるものではない。図8及び9に示されるように、加工材10の第2切断端面1yは、ダレ1aと破断面1bとバリ1cとを備える。破断面1bは、第1部分1bxと第2部分1byとを含む。第1部分1bxは、ダレ1a側からバリ1c側へと進展した第1き裂1dxによって形成され、第2部分1byは、バリ1c側からダレ1a側へと進展した第2き裂1dyによって形成される。破断面1bに占める第1部分1bxの面積率は、破断面1bに占める第2部分1byの面積率よりも大きい。
図8及び9に示されるように、第2切断端面1yは、ダレ1aと破断面1bとバリ1cとを備える。また、第2切断端面1yは、せん断面1eを備えていてもよい。第2切断端面1yのうち、ダレ1a、バリ1c、及び、せん断面1eについては、加工材10の形態に応じて任意の形態を採り得る。ダレ1a、バリ1c、及び、せん断面1eについては、従来と同様の形態であってもよい。
加工材10は、第2切断端面1yのうち破断面1bの構成に一つの特徴がある。図8及び9に示されるように、破断面1bは、第1部分1bxと第2部分1byとを含む。第1部分1bxは、ダレ1a側からバリ1c側へと進展した第1き裂1dxによって形成され、第2部分1byは、バリ1c側からダレ1a側へと進展した第2き裂1dyによって形成される。
第1き裂1dxの進展方向は、ダレ1a側からバリ1c側へと向かう方向であればよい。加工材10が板状である場合、第1き裂1dxの進展方向は、加工材10の板厚方向に沿った方向(第1面10a及び第2面10bに対して直交する方向)であってもよいし、板厚方向に対して傾いた方向であってもよい。また、第2き裂1dyの進展方向は、バリ1c側からダレ1a側へと向かう方向であればよい。加工材10が板状である場合、第2き裂1dyの進展方向は、加工材10の板厚方向に沿った方向(第1面10a及び第2面10bに対して直交する方向)であってもよいし、板厚方向に対して傾いた方向であってもよい。例えば、鋼材5のせん断の際、第1刃21と第2刃22との間にクリアランスが設けられた場合、第1き裂1dx及び第2き裂1dyの進展方向が板厚方向に対して傾いた方向となり得、クリアランスが大きいほど、傾きが大きくなり得る。
第1き裂1dxは、ダレ1a側を起点としてバリ1c側へと進展し、バリ1c側にて第2き裂1dyと合わさるものであればよく、必ずしも、ダレ1a側からバリ1c側の第2き裂1dyに向かって最短経路で進展する必要はない。例えば、第1き裂1dxは、ダレ1a側からバリ1c側に進展する途中において、図2(B)の紙面奥手前方向(加工材10が板状である場合、例えば、板幅方向)に向かって進展してもよい。第2き裂1dyについても同様である。
第2切断端面1yにおいて、破断面1bに占める第1部分1bxの面積率は、破断面1bに占める第2部分1byの面積率よりも大きくてもよい。言い換えれば、第2切断端面1yにおいて、ダレ1a側からバリ1c側に向かって進展した第1き裂1dxの平均長さが、バリ1c側からダレ1a側に向かって進展した第2き裂1dyの平均長さよりも長くてもよい。上記の通り、破断面1bのうち、ダレ1a側から進展したき裂1dxに由来する部分の面積率が、バリ1c側から進展したき裂1dxに由来する部分の面積率よりも大きい場合、破断面1bの引張残留応力を相対的に低減することができる。
尚、破断面1bにおける第1部分1bx及び第2部分1byの各々の面積率や第1き裂1dx及び第2き裂1dyの各々の長さを特定するにあたって、破断面1bの表面の凹凸は考慮しないものとする。例えば、図10(A)に示されるように、第2切断端面1yを正面から見た場合において、第1き裂1dxの起点となる位置をP1、第2き裂1dyの起点となる位置をP2、第1き裂1dxと第2き裂1dyとが合わさる位置をP3とした場合、P1とP3との間隔が、P2とP3との間隔よりも大きい場合に、破断面1bに占める第1部分1bxの面積率が、破断面1bに占める第2部分1byの面積率よりも大きいものと判断することができる。
本発明者の知見によれば、破断面1bに占める第1部分1bxの面積率が大きいほど、破断面1bの引張残留応力が低減される。例えば、加工材10において、破断面1bに占める第1部分1bxの面積率は、破断面1bに占める第2部分1byの面積率の1.2倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、1.7倍以上であってもよく、2.0倍以上であってもよく、2.2倍以上であってもよく、2.5倍以上であってもよい。
尚、バリ1cは目視では確認できない大きさであってもよい。加工材10の第1面10a及び第2面10bのうち、どちらがダレ1a側の面で、どちらがバリ1c側の面であるかについては、仮にバリ1cが確認できずとも、加工材10の形状を観察することによって容易に判別可能である。
第2切断端面1yにおいて、せん断面1eと破断面1bとは、その性状が異なる。例えば、せん断面1eと破断面1bとは粗さ(光沢度)が異なる。この点、外観を観察するだけでも、せん断面1eと破断面1bとを容易に判別可能である。
破断面1bにおいて、第1部分1bxと第2部分1byとの境界(第1き裂1dxと第2き裂1dyとが合わさる位置)は、例えば、第2切断端面1yに多量の水素を導入することで判別可能である。上述した通り、き裂の進展中に生じる応力は、き裂の進展方向に依存する。すなわち、図10(A)及び(B)に示されるように、第1き裂1dxと第2き裂1dyとが合わさる位置で、残留応力が急変するものといえる。このため、水素の侵入によって生じる水素脆化割れの方向についても、第1き裂1dxと第2き裂1dyとが合わさる位置で急変する。これを考慮すると、水素脆化割れの向きが急変する位置を、第1き裂1dxと第2き裂1dyとが合わさる位置とみなすことができる。
加工材10は第1切断端面1xと第2切断端面1yとを有するものであればよく、これら切断端面以外の構成は特に限定されるものではない。加工材10は切断端面以外の端面を有していてもよい。加工材10の形状は、上記した鋼材5の形状と対応する。すなわち、加工材10は、上記したような板状であっても、棒状であってもよい。また、加工材10は、切断端面以外の面として、第1面10aと第1面10aとは反対側の第2面10bとを備えていてもよく、当該第1面10aと当該第2面10bとが、切断端面を介して連結されていてもよい。第1面10aと第2面10bとは互いに平行であってもよい。また、加工材10は上記したような表面処理層を有していてもよい。また、加工材10は鋼種の異なる複数の層を含むものであってもよい。加工材10の機械特性や化学組成についても上述した通りである。
7.加工材の性状の他の例
本開示の製造方法において、第1切断端面1xと第2切断端面1yとをともに「せん断」によって形成した場合、加工材の第1切断端面1xと第2切断端面1yとは、以下の構成を有していてもよい。図11に、加工材10の第1切断端面1xと第2切断端面1yとの各々の構成を概略的に示す。
図11に示される加工材10は、切断端面1を有する鋼材からなる。切断端面1は、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xと、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yとを備える。第1切断端面1xと第2切断端面1yとは連続している。第1切断端面1xは、第1ダレ1xaと第1破断面1xbと第1バリ1xcとを含む。第1切断端面1xは、さらに第1せん断面1xeを有していてもよい。第2切断端面1yは、第2ダレ1yaと第2破断面1ybと第2バリ1ycとを含む。第2切断端面1yは、さらに第2せん断面1yeを有していてもよい。第1破断面1xbは、第1部分1xb1と第2部分1xb2とを含む。第2破断面1ybは、第3部分1yb1と第4部分1yb2とを含む。第1部分1xb1は、第1ダレ1xa側から第1バリ1xc側に向かって進展した第1き裂1xd1によって形成される。第2部分1xb2は、第1バリ1xc側から第1ダレ1xa側に向かって進展した第2き裂1xd2によって形成される。第3部分1yb1は、第2ダレ1ya側から第2バリ1yc側に向かって進展した第3き裂1yd1によって形成される。第4部分1yb2は、第2バリ1yc側から第2ダレ1ya側に向かって進展した第4き裂1yd2によって形成される。第1破断面1xbに占める第1部分1xb1の面積率をX1(%)とし、第1破断面1xbに占める第2部分1xb2の面積率をX2(%)とし、第2破断面1ybに占める第3部分1yb1の面積率をY1(%)とし、第2破断面1ybに占める第4部分1yb2の面積率をY2(%)とした場合、Y1がX1の1.1倍以上であってもよい。
また、図11に示されるように、加工材10においては、上記Y1及びY2が、Y2<Y1の関係を満たしていてもよい。
また、図11に示されるように、加工材10においては、上記X1、X2、Y1及びY2が、X1/X2<Y1/Y2の関係を満たしていてもよい。
さらに、図11に示されるように、加工材10においては、第1切断端面1xと第2切断端面1yとの境界において、第1切断端面1xにおける第1部分1xb1と第2部分1xb2との境界線と、第2切断端面1yにおける第3部分1yb1と第4部分1yb2との境界線と、が不連続となっていてもよい。
尚、「X1」、「X2」、「Y1」及び「Y2」、並びに、「第1切断端面1xにおける第1部分1bx1と第2部分1bx2との境界線」及び「第2切断端面1yにおける第3部分1by1と第4部分1by2との境界線」については、上述したように、破断面に対して水素を導入して水素脆化割れの向きが急変する位置を特定すること等によって求めることができる。
切断に供する鋼材として、引張強さ1470MPa級の鋼板A(板厚:1.6mm)、引張強さ1310MPa級の鋼板B(板厚:1.6mm)、引張強さ1180MPa級の鋼板C(板厚:1.6mm)、引張強さ980MPa級の鋼板D(板厚:1.6mm)を用意した。
1.鋼板Aの切断及び評価
上記鋼板Aに対して、図12に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)とそれと連続する曲率半径の大きな部分(直線)とからなる切断端面を形成し、切断端面のうち曲率半径の大きな部分における引張残留応力を測定した。
尚、引張残留応力は以下の通りにして測定した。図13に引張残留応力の測定方法を示す。図13に示されるように、板厚方向の中心位置において、スポット径φ500μmでX線による残留応力測定を実施した(板幅方向に異なる3箇所)。残留応力の測定方向は、板厚方向、板幅方向、板厚方向から45度方向の3方向とし、残留応力の算出にはsinψ法を用いた。端面法線方向の残留応力をゼロと仮定し、算出した3方向の残留応力から、最大主応力を算出した。3箇所で算出した最大主応力の値を平均した。
1.1 実施例1
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、曲率半径の小さな部分を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分を切断して第2切断端面を形成した(図7(A)~(C)参照)。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図14(A)に、第2切断端面を形成する際のスクラップの傾きの様子を示す。また、図15に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
1.2 比較例1
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分と曲率半径の大きな部分とを同時にせん断した。図14(B)に、せん断時のスクラップの傾きの様子を示す。また、図15に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、曲率半径が相対的に大きい部分(第2切断端面に相当する部分)における引張残留応力の測定結果を示す。
1.3 評価結果
図14(A)及び(B)から明らかなように、実施例は、比較例よりも、せん断時のスクラップの傾き(倒れ角)が大きく、パンチ側から優先的にき裂を進展させることができた。その結果、図15に示されるように、比較例においては、加工材(製品)側とスクラップ側とで、第2切断端面における引張残留応力がほぼ同等に大きいのに対し、実施例においては、加工材(製品)側の第2切断端面における引張残留応力を顕著に低減することができた。
2.鋼板B~Dの切断及び評価
鋼板Aと同様に、鋼板B~Dについても同様の切断加工を行い、実施例1の場合と比較例1の場合とで、第2切断端面に生じる引張残留応力を比較した。鋼板Aに係る結果と合わせて、鋼板B~Dに係る結果を下記表1に示す。
Figure 0007502621000001
表1に示す結果から明らかなように、鋼板B~Dについても、実施例のように2段階でせん断を行った場合に、加工材(製品)側の第2切断端面における引張残留応力を顕著に低減することができた。
3.曲率半径の検討
鋼板に対する切断線の形状を変化させて、せん断加工を行った。せん断加工の際は、曲率半径の小さな部分(R=30mm)とそれと連続する曲率半径の大きな部分(直線(R=∞)、R=150mm、R=60mm)とからなる切断端面を形成し、切断端面のうち曲率半径の大きな部分における引張残留応力を測定した。
3.1 実施例2
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、図16に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分(R=∞)を切断して第2切断端面を形成した。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図17に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
3.2 比較例2
鋼板Aに対して、図16に示されるような切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分(R=30mm)と曲率半径の大きな部分(R=∞)とを同時にせん断した。図17に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
3.3 実施例3
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、図18に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分(R=150mm)を切断して第2切断端面を形成した。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図19に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
3.4 比較例3
鋼板Aに対して、図18に示されるような切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分(R=30mm)と曲率半径の大きな部分(R=150mm)とを同時にせん断した。図19に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
3.5 実施例4
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、図20に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分(R=60mm)を切断して第2切断端面を形成した。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図21に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
3.6 比較例4
鋼板Aに対して、図20に示されるような切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分(R=30mm)と曲率半径の大きな部分(R=60mm)とを同時にせん断した。図21に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
3.7 評価結果
図17、19及び21に示されるように、比較例2~4においては、加工材(製品)側とスクラップ側とで、第2切断端面における引張残留応力がほぼ同等に大きいのに対し、実施例2~4においては、加工材(製品)側の第2切断端面における引張残留応力を顕著に低減することができた。特に、実施例2のように、第2切断端面における曲率半径が大きいほど、引張残留応力の低減効果が高いことが分かる。
4.鋼板B~Dの切断及び評価
鋼板Aと同様に、鋼板B~Dについても同様の切断加工を行い、実施例2~4の場合と比較例2~4の場合とで、第2切断端面に生じる引張残留応力を比較した。鋼板Aに係る結果と合わせて、鋼板B~Dに係る結果を下記表2~4に示す。表2が図16に示されるR=∞の場合、表3が図18に示されるR=150mmの場合、表4が図20に示されるR=60mmの場合である。
Figure 0007502621000002
Figure 0007502621000003
Figure 0007502621000004
表3~5に示す結果から明らかなように、鋼板B~Dについても、実施例2~4のように2段階でせん断を行った場合に、加工材(製品)側の第2切断端面における引張残留応力を顕著に低減することができた。特に、実施例2のように、第2切断端面における曲率半径が大きいほど、引張残留応力の低減効果が高いことが分かる。
5.せん断端面の性状の確認
鋼板Aについて、実施例1~4又は比較例1~4に係る条件でせん断加工を行い、加工材を得た。3%NaClの溶液に3g/LのNHSCNを添加し、電解液を準備した。準備した電解液に加工材を浸漬したうえで、当該加工材に対して電流密度10mA/cmの条件で3時間、電解チャージを実施し、加工材の少なくともせん断端面に水素を導入した。電解チャージ後、加工材を溶液から取り出し、せん断端面の性状を観察した。多量の水素の導入によってせん断端面に水素脆化割れが確認された。図10に示されるように、せん断端面を構成する破断面において水素脆化割れの方向が急変する部分を、「第1バリ側から進展したき裂に起因する第1部分と、第1ダレ側から進展したき裂に起因する第2部分との境界」「第2バリ側から進展したき裂に起因する第3部分と、第2ダレ側から進展したき裂に起因する第4部分との境界」とみなし、図11に示されるような、第1破断面に占める面積率X1、X2及び第2破断面に占める面積率Y1、Y2を特定した。結果を下記表5に示す。
Figure 0007502621000005
表5に示されるように、実施例に係る加工材においては、Y1がX1に対して十分に大きいことが分かる。具体的には、Y1はX1の1.1倍以上である。これに対し、比較例に係る加工材はX1とY1とが同等である。また、実施例に係る加工材はY2に対してY1が十分に大きくなるのに対し、比較例に係る加工材はY2とY1とが同等である。さらに、実施例に係る加工材はX1/X2に対してY1/Y2が十分に大きくなるのに対し、比較例に係る加工材はX1/X2とY1/Y2とが同等である。
本開示の方法により製造される加工材は、例えば、自動車、家電製品、建築構造物、船舶、橋梁、建設機械、各種プラント、ペンストック等の構成材料として利用可能である。
1x 第1切断端面(曲率半径の小さな部分)
1y 第2切断端面(曲率半径の大きな部分)
1 切断端面
5 鋼材
10 加工材
10a 第1面
10b 第2面
11 鋼材の一部
12 鋼材の他部
15 スクラップ
21 第1刃
22 第2刃

Claims (6)

  1. 鋼材を切断して加工材を製造する方法であって、
    前記鋼材に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面を形成すること、及び、
    前記第1切断端面を形成した後、前記鋼材に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面を形成すること、ここで前記第2切断端面は前記第1切断端面と連続する、
    を含
    前記第1切断端面を形成した後において、前記第2切断端面となる切断線を介して、スクラップ側となる部分が、加工材側となる部分から片持で支えられた状態とされ、その後、前記せん断加工によって前記第2切断端面が形成される、
    加工材の製造方法。
  2. 前記第2切断端面の曲率半径R2(mm)と、前記第1切断端面の曲率半径R1(mm)との比R2/R1が、2.0以上である、
    請求項1に記載の製造方法。
  3. せん断加工により前記第1切断端面を形成する、
    請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記鋼材が板状である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記鋼材の引張強さが980MPa以上である、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記鋼材の引張強さが1470MPa以上である、
    請求項5に記載の製造方法。
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