JP7502621B2 - 加工材の製造方法及び加工材 - Google Patents
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Description
鋼材を切断して加工材を製造する方法であって、
前記鋼材に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面を形成すること、及び、
前記第1切断端面を形成した後、前記鋼材に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面を形成すること、ここで前記第2切断端面は前記第1切断端面と連続する、
を含む、
加工材の製造方法
を開示する。
切断端面を有する鋼材からなる加工材であって、
前記切断端面が、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面と、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面とを備え、
前記第1切断端面と前記第2切断端面とが連続しており、
前記第1切断端面が第1ダレと第1破断面と第1バリとを含み、
前記第2切断端面が第2ダレと第2破断面と第2バリとを含み、
前記第1破断面が、第1部分と第2部分とを含み、
前記第2破断面が、第3部分と第4部分とを含み、
前記第1部分が、前記第1ダレ側から前記第1バリ側に向かって進展した第1き裂によって形成され、
前記第2部分が、前記第1バリ側から前記第1ダレ側に向かって進展した第2き裂によって形成され、
前記第3部分が、前記第2ダレ側から前記第2バリ側に向かって進展した第3き裂によって形成され、
前記第4部分が、前記第2バリ側から前記第2ダレ側に向かって進展した第4き裂によって形成され、
前記第1破断面に占める前記第1部分の面積率をX1(%)とし、
前記第1破断面に占める前記第2部分の面積率をX2(%)とし、
前記第2破断面に占める前記第3部分の面積率をY1(%)とし、
前記第2破断面に占める前記第4部分の面積率をY2(%)とした場合、
Y1がX1の1.1倍以上である、
加工材
を開示する。
図1(A)~(D)に鋼材をせん断して加工材を得る場合の流れの一例を示す。まず、図1(A)及び(B)に示されるように、第1刃21と第2刃22とを離隔させた状態で、その間に鋼材5を配置する。ここで、鋼材5は第1面10aと第1面10aとは反対側の第2面10bとを有し、第1刃21は第1底面21aと第1側面21bと第1先端部21x(図2(A)参照)とを有し、第2刃22は第2底面22aと第2側面22bと第2先端部22x(図2(A)参照)とを有する。第1先端部21x及び第2先端部22xは、各々、平面視において、曲率半径の小さな部分と曲率半径の大きな部分とを有する。図1(B)及び(C)に示されるように、第1底面21aは鋼材5の第1面10aと接触し、第2底面22aは鋼材5の第2面10bと接触する。第1刃21はパンチであってもよく、第2刃22はダイであってもよい。続いて、図1(C)に示されるように、第1刃21及び第2刃22を相対的に移動させることで鋼材5をせん断する。これにより、図1(C)及び(D)に示されるように、鋼材5の一部が第1刃21によってスクラップ15(図2(C)参照)として打ち抜かれ、鋼材5の残りの部分が切断端面1を有する加工材10となり得る。尚、スクラップ15を何らかの製品に利用してもよい。図1(D)に示されるように、加工材10の切断端面1は、上記の第1先端部21x及び第2先端部22xの形状と対応して、曲率半径の小さな第1切断端面1xと曲率半径の大きな第2切断端面1yとを有する。
(1)切断端面1のうち破断面1bに生じる引張残留応力は、破断面1bを形成するき裂1dx、1dyの進展方向や長さに依存して変化する。
(2)破断面1bにおいて、ダレ1a側(第1刃21側)から進展したき裂1dxが長くなるほど、加工材10の破断面1bの引張残留応力が小さくなり、スクラップ15の破断面の引張残留応力が大きくなる。
(3)すなわち、加工材10の破断面1bにおいて、ダレ1a側から進展した第1き裂1dxに由来する部分の面積率が、バリ1c側から進展した第2き裂1dyに由来する部分の面積率よりも大きい場合、ダレ1a側から進展した第1き裂1dxに由来する部分の面積率が、バリ1c側から進展した第2き裂1dyに由来する部分の面積率よりも小さい場合よりも、破断面1bの引張残留応力を相対的に低減することができる。
(4)鋼材5の一部をせん断して、曲率半径の小さな第1切断端面1xと曲率半径の大きな第2切断端面1yとを形成する場合において、当該第1切断端面1xと第2切断端面1yとを、1度のせん断で同時に形成しようとすると、スクラップ15の拘束が大きくなり、スクラップ15側に倒れ角αが生じ難く、第1切断端面1xと第2切断端面1yとの双方において引張残留応力が生じ易い。
(5)鋼材5の一部をせん断して、曲率半径の小さな第1切断端面1xを形成した後、曲率半径の大きな第2切断端面1yを形成する場合、第1切断端面1xを形成する際は、スクラップ15の拘束が大きいことから、第1切断端面1xに引張残留応力が生じるものの、その後の第2切断端面1yの形成の際は、スクラップ15の拘束が小さいことから、第2切断端面1yに生じる引張残留応力を相対的に低減することができる。ここで、上述したように、曲率半径の小さな第1切断端面1xに生じた引張残留応力は、加工材10の性能を低下させ難い。
(6)鋼材5に対して、曲率半径の小さな第1切断端面1xを形成した後、曲率半径の大きな第2切断端面1yを形成する場合、第1切断端面1xは、せん断加工以外の方法によって形成されたものであってもよい。すなわち、せん断加工に限られない切断加工によって曲率半径の小さな第1切断端面1xを形成した後、せん断加工によって曲率半径の大きな第2切断端面1yを形成した場合にも、第2切断端面1yにおいて引張残留応力を低減することができる。
図5(A)~(C)に、鋼材5を切断して加工材10を製造する方法の一例を示す。図5(A)~(C)に示されるように、本開示の製造方法は、
鋼材5に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xを形成すること(図5(A)及び(B))、及び、
第1切断端面1xを形成した後、鋼材5に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成すること、ここで第2切断端面1yは第1切断端面1xと連続する(図5(C))、
を含む。
鋼材5の形状は、せん断加工が可能である限り、特に限定されるものではない。鋼材5は、例えば、板状であってもよいし、棒状であってもよい。鋼材5が板状である場合、その板厚は、例えば、0.8mm以上であってもよく、3.0mm以下であってもよい。また、鋼材5が棒状である場合、その断面形状は特に限定されず、例えば円状であっても多角形状であってもよく、その断面の円相当直径は10mm以上であってもよく、150mm以下であってもよい。さらに、鋼材5は、折り曲げ等によって何らかの形状に成形されたものであってもよい。
本開示の製造方法においては、まず、上記したような鋼材5に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面1xを形成する。例えば、図5(A)及び(B)に示されるように、鋼材5の一部を打ち抜いて抜き穴を形成する場合、当該抜き穴を画定する切断線Lの全体を一度に打ち抜くことはせず、当該切断線Lのうち曲率半径が相対的に小さい部分を先に切断して、第1切断端面1xを形成する。尚、切断線Lのうちどこからどこまでを曲率半径が相対的に小さい部分とし、どこからどこまでを曲率半径が大きい部分とするかについては、引張残留応力を低減したい部分に応じて適宜決定すればよい。本開示の製造方法は、切断線Lの全体を1回で切断するのではなく、2回以上に分割して切断することで、スクラップ15(図2(C)、図4(A)及び(B)参照)の拘束状態を変化させつつ切断加工及びせん断加工を行う点に特徴があり、曲率半径が相対的に小さい部分と曲率半径が相対的に大きい部分との境目を厳密に特定する必要はない。例えば、図5(B)において、第1切断端面1xは、切断線Lのうち、湾曲部分とともに少々の直線部分を含んでいてもよい。また、引張残留応力を最も低減したい部分が後述の第2切断端面1yに含まれるように、それ以外の部分を第1切断端面1xとしてもよい。
本開示の製造方法においては、第1切断端面1xを形成した後、鋼材5に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成する。ここで第2切断端面1yは第1切断端面1xと連続する。すなわち、第1切断端面1xと第2切断端面1yとは、互いに連結して一つの切断端面を形成し得る。尚、第2切断端面1yは、1回のせん断によって形成されてもよいし、複数回のせん断によって形成されてもよい。このように、本開示の製造方法においては、第1切断端面1xの形成と第2切断端面1yの形成とを分けて、1段階目の切断時と2段階目のせん断時とでスクラップ15(図2(C)、図4(A)及び(B)参照)の拘束状態を変化させることで、第2切断端面1yが形成される際のき裂の進展方向を適切に制御することができ、結果として、第2切断端面1yの破断面1bにおける引張残留応力を低減することができる。
本開示の製造方法においては、以下に説明するようなせん断加工によって、第1切断端面1xを形成してもよいし、第2切断端面1yを形成してもよい。
第1刃21は、第1底面21a、第1側面21b及び第1先端部21xを有する。第1底面21aは、第1刃21の相対的な移動方向に対して交差する面を有していてもよく、当該移動方向に対して直交する面を有していてもよい。また、第1側面21bは、第1刃21の相対的な移動方向に沿った面を有していてもよく、当該移動方向に対して傾いた面を有していてもよい。また、第1先端部21xは、第1底面21aと第1側面21bとの交線付近の部分をいう。例えば、第1底面21aと第1側面21bとの交線から第1底面21a側及び第1側面21b側の双方に向かって2mmの範囲にある部分であってもよい。第1刃21の先端がRを有するように加工されている場合や先端が面取りされている場合は、第1底面21aに沿って延長した面と、第1側面21bに沿って延長した面との交線を仮定し、当該交線から第1底面21a側及び第1側面21b側の双方に向かってR+2mmの範囲内に含まれる部分を第1先端部21xとみなしてもよい。
第2刃22は、第2底面22a、第2側面22b及び第2先端部22xを有する。第2底面22aは、第2刃22の相対的な移動方向に対して交差する面を有していてもよく、当該移動方向に対して直交する面を有していてもよい。また、第2側面22bは、第2刃22の相対的な移動方向に沿った面を有していてもよく、当該移動方向に対して傾いた面を有していてもよい。また、第2先端部22xは、第2底面22aと第2側面22bとの交線付近の部分をいう。例えば、第2底面22aと第2側面22bとの交線から第2底面22a側及び第2側面22b側の双方に向かって2mmの範囲にある部分であってもよい。第2刃22の先端がRを有するように加工されている場合や先端が面取りされている場合は、上述した第1先端部21xと同様に、第2先端部22xを特定し得る。すなわち、第2底面22aに沿って延長した面と、第2側面22bに沿って延長した面との交線を仮定し、当該交線から第2底面22a側及び第2側面22b側の双方に向かってR+2mmの範囲内に含まれる部分を第2先端部22xとみなしてもよい。
本開示の製造方法においては、鋼材5に対して第1切断端面1xや第2切断端面1yを形成するにあたって、上記のような第1刃21と第2刃22との間に鋼材5を配置してもよい。第1刃21と第2刃22との間における鋼材5の配置について特に制限はなく、鋼材5を適切にせん断できるように配置されればよい。例えば、図1(B)に示されるように、鋼材5の上方に第1刃21が配置されるようにしつつ、第2刃22の第2底面22aの上に鋼材5を載置してもよい。また、本開示の製造方法においては、鋼材5のせん断時にスクラップ15の拘束状態を制御するため、第1刃21と第2刃22との間に鋼材5を配置する際、不図示の押さえ部材(ホルダー)によって鋼材5を第1底面21aや第2底面22aへと押さえつけてもよい。押さえ部材の形態は特に限定されるものではなく、一般的な押さえ部材を採用すればよい。
本開示の製造方法においては、第1刃21と第2刃22との間に鋼材5を配置した後、第1刃21と第2刃22とを相対的に移動させることで、鋼材5をせん断して、第1切断端面1xや第2切断端面1yを形成し得る。第1刃21及び第2刃22の相対的な移動は、不図示の移動装置によって行われればよい。或いは、第1刃21及び第2刃22の少なくとも一方を手動で移動させてもよい。
図5(A)~(C)に示す製造方法においては、鋼材5の一部を打ち抜いて抜き穴を形成する形態を示したが、本開示の製造方法はこの形態に限定されるものではない。例えば、図6(A)~(C)に示されるように、鋼材5をトリミングする形態においても本開示の製造方法を採用し得る。すなわち、図6(A)及び(B)に示されるように、鋼材5をトリミングする場合にも、切断線Lの全体を一度に打ち抜くことはせず、当該切断線Lのうち曲率半径が相対的に小さい部分を先に切断して、第1切断端面1xを形成する。第1切断端面1xを形成した後は、図6(C)に示されるように、鋼材5に対してせん断加工を施して、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成する。これにより、第2切断端面1yの破断面1bにおける引張残留応力を低減することができる。
図5(A)~(C)及び図6(A)~(C)に示す製造方法においては、鋼材5の切断線Lが環状である形態を示したが、本開示の方法はこの形態に限定されるものではない。例えば、図7(A)~(C)に示されるように、鋼材5に対して開断面を形成する形態においても本開示の製造方法を採用し得る。すなわち、図7(A)及び(B)に示されるように、鋼材5に対して開断面を形成する場合にも、切断線Lの全体を一度に打ち抜くことはせず、当該切断線Lのうち曲率半径が相対的に小さい部分を先に切断して、第1切断端面1xを形成する。第1切断端面1xを形成した後は、図7(C)に示されるように、鋼材5に対してせん断加工を施して、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yを形成する。これにより、第2切断端面1yの破断面1bにおける引張残留応力を低減することができる。
尚、上記においては、第1切断端面1xを形成した後において、第2切断端面1yとなる切断線Lを介して、スクラップ15側となる部分を「片持」で支えられた状態とする(スクラップ15側となる部分が、一本の切断線Lのみを介して加工材10側に保持されるようにする)形態について示したが、本開示の製造方法は、この形態に限定されるものではない。第1切断端面1xを形成した後において、第2切断端面1yが両持或いはそれ以上となるような場合であっても、第2切断端面1yを形成する前に第1切断端面1xを形成することで、第1切断端面1xと第2切断端面1yとを同時にせん断する場合と比べて、スクラップ15側の拘束が小さくなり、第2切断端面1yを形成する際にスクラップ15側に倒れ角αを生じさせ易くなることから、第2切断端面1yの破断面1bに生じる引張残留応力を相対的に低減することができる。ただし、本発明者の新たな知見によれば、第1切断端面1xを形成した後において、第2切断端面1yとなる切断線Lを介して、スクラップ15側となる部分が加工材10側となる部分から「片持」で支えられた状態とすることで、その後、せん断によって第2切断端面1yを形成する場合に、スクラップ15側に一層大きな倒れ角αを生じさせ易くなり、第2切断端面1yの破断面1bに生じる引張残留応力を一層低減することができる。
本開示の製造方法により得られる加工材10は、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面1yにおいて、特に破断面1bにおける引張残留応力が低減され得る。以下、加工材10の第2切断端面1yの一例について説明するが、第2切断端面1yは以下の形態に限定されるものではない。図8及び9に示されるように、加工材10の第2切断端面1yは、ダレ1aと破断面1bとバリ1cとを備える。破断面1bは、第1部分1bxと第2部分1byとを含む。第1部分1bxは、ダレ1a側からバリ1c側へと進展した第1き裂1dxによって形成され、第2部分1byは、バリ1c側からダレ1a側へと進展した第2き裂1dyによって形成される。破断面1bに占める第1部分1bxの面積率は、破断面1bに占める第2部分1byの面積率よりも大きい。
本開示の製造方法において、第1切断端面1xと第2切断端面1yとをともに「せん断」によって形成した場合、加工材の第1切断端面1xと第2切断端面1yとは、以下の構成を有していてもよい。図11に、加工材10の第1切断端面1xと第2切断端面1yとの各々の構成を概略的に示す。
上記鋼板Aに対して、図12に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)とそれと連続する曲率半径の大きな部分(直線)とからなる切断端面を形成し、切断端面のうち曲率半径の大きな部分における引張残留応力を測定した。
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、曲率半径の小さな部分を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分を切断して第2切断端面を形成した(図7(A)~(C)参照)。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図14(A)に、第2切断端面を形成する際のスクラップの傾きの様子を示す。また、図15に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分と曲率半径の大きな部分とを同時にせん断した。図14(B)に、せん断時のスクラップの傾きの様子を示す。また、図15に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、曲率半径が相対的に大きい部分(第2切断端面に相当する部分)における引張残留応力の測定結果を示す。
図14(A)及び(B)から明らかなように、実施例は、比較例よりも、せん断時のスクラップの傾き(倒れ角)が大きく、パンチ側から優先的にき裂を進展させることができた。その結果、図15に示されるように、比較例においては、加工材(製品)側とスクラップ側とで、第2切断端面における引張残留応力がほぼ同等に大きいのに対し、実施例においては、加工材(製品)側の第2切断端面における引張残留応力を顕著に低減することができた。
鋼板Aと同様に、鋼板B~Dについても同様の切断加工を行い、実施例1の場合と比較例1の場合とで、第2切断端面に生じる引張残留応力を比較した。鋼板Aに係る結果と合わせて、鋼板B~Dに係る結果を下記表1に示す。
鋼板に対する切断線の形状を変化させて、せん断加工を行った。せん断加工の際は、曲率半径の小さな部分(R=30mm)とそれと連続する曲率半径の大きな部分(直線(R=∞)、R=150mm、R=60mm)とからなる切断端面を形成し、切断端面のうち曲率半径の大きな部分における引張残留応力を測定した。
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、図16に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分(R=∞)を切断して第2切断端面を形成した。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図17に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
鋼板Aに対して、図16に示されるような切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分(R=30mm)と曲率半径の大きな部分(R=∞)とを同時にせん断した。図17に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、図18に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分(R=150mm)を切断して第2切断端面を形成した。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図19に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
鋼板Aに対して、図18に示されるような切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分(R=30mm)と曲率半径の大きな部分(R=150mm)とを同時にせん断した。図19に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
鋼板Aに切断端面を形成するにあたって、図20に示されるように、曲率半径の小さな部分(R=30mm)を切断して第1切断端面を形成した後で、曲率半径の大きな部分(R=60mm)を切断して第2切断端面を形成した。各々の切断は、パンチとダイとを用いたせん断により行った。図21に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
鋼板Aに対して、図20に示されるような切断端面を形成するにあたって、パンチとダイとを用いて、曲率半径の小さな部分(R=30mm)と曲率半径の大きな部分(R=60mm)とを同時にせん断した。図21に、スクラップ側と製品(加工材)側との各々について、第2切断端面における引張残留応力の測定結果を示す。
図17、19及び21に示されるように、比較例2~4においては、加工材(製品)側とスクラップ側とで、第2切断端面における引張残留応力がほぼ同等に大きいのに対し、実施例2~4においては、加工材(製品)側の第2切断端面における引張残留応力を顕著に低減することができた。特に、実施例2のように、第2切断端面における曲率半径が大きいほど、引張残留応力の低減効果が高いことが分かる。
鋼板Aと同様に、鋼板B~Dについても同様の切断加工を行い、実施例2~4の場合と比較例2~4の場合とで、第2切断端面に生じる引張残留応力を比較した。鋼板Aに係る結果と合わせて、鋼板B~Dに係る結果を下記表2~4に示す。表2が図16に示されるR=∞の場合、表3が図18に示されるR=150mmの場合、表4が図20に示されるR=60mmの場合である。
鋼板Aについて、実施例1~4又は比較例1~4に係る条件でせん断加工を行い、加工材を得た。3%NaClの溶液に3g/LのNH4SCNを添加し、電解液を準備した。準備した電解液に加工材を浸漬したうえで、当該加工材に対して電流密度10mA/cm2の条件で3時間、電解チャージを実施し、加工材の少なくともせん断端面に水素を導入した。電解チャージ後、加工材を溶液から取り出し、せん断端面の性状を観察した。多量の水素の導入によってせん断端面に水素脆化割れが確認された。図10に示されるように、せん断端面を構成する破断面において水素脆化割れの方向が急変する部分を、「第1バリ側から進展したき裂に起因する第1部分と、第1ダレ側から進展したき裂に起因する第2部分との境界」「第2バリ側から進展したき裂に起因する第3部分と、第2ダレ側から進展したき裂に起因する第4部分との境界」とみなし、図11に示されるような、第1破断面に占める面積率X1、X2及び第2破断面に占める面積率Y1、Y2を特定した。結果を下記表5に示す。
1y 第2切断端面(曲率半径の大きな部分)
1 切断端面
5 鋼材
10 加工材
10a 第1面
10b 第2面
11 鋼材の一部
12 鋼材の他部
15 スクラップ
21 第1刃
22 第2刃
Claims (6)
- 鋼材を切断して加工材を製造する方法であって、
前記鋼材に対して切断加工を施し、曲率半径が相対的に小さい第1切断端面を形成すること、及び、
前記第1切断端面を形成した後、前記鋼材に対してせん断加工を施し、曲率半径が相対的に大きい第2切断端面を形成すること、ここで前記第2切断端面は前記第1切断端面と連続する、
を含み、
前記第1切断端面を形成した後において、前記第2切断端面となる切断線を介して、スクラップ側となる部分が、加工材側となる部分から片持で支えられた状態とされ、その後、前記せん断加工によって前記第2切断端面が形成される、
加工材の製造方法。 - 前記第2切断端面の曲率半径R2(mm)と、前記第1切断端面の曲率半径R1(mm)との比R2/R1が、2.0以上である、
請求項1に記載の製造方法。 - せん断加工により前記第1切断端面を形成する、
請求項1又は2に記載の製造方法。 - 前記鋼材が板状である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。 - 前記鋼材の引張強さが980MPa以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。 - 前記鋼材の引張強さが1470MPa以上である、
請求項5に記載の製造方法。
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