JP7501077B2 - 中空粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中空粒子の製造方法に関する。
中空樹脂粒子は、内部に実質的に空隙を有しない樹脂粒子と比べて、光を良く散乱させ、光の透過性を低くできるため、不透明度、白色度などの光学的性質に優れた有機顔料や隠蔽剤として水系塗料、紙塗被組成物などの用途で汎用されている。特に、中空重合体粒子は、断熱性を高めることができるため、感熱紙への紙塗被組成物などの用途に用いられている。
このような中空樹脂粒子の製造方法として、たとえば、特許文献1には、次の製造方法が開示されている。すなわち、モノビニル単量体及び親水性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体、架橋性単量体、油溶性重合開始剤、炭化水素系溶剤、懸濁安定剤、並びに水系媒体を含み、かつ架橋性単量体の含有量が特定の範囲である混合液を調製する工程(混合液調製工程)、前記混濁液を懸濁させることにより、炭化水素系溶剤を含むモノマー液滴が水系媒体中に分散した懸濁液を調製する工程(懸濁液調製工程)、前記懸濁液を重合反応に供することにより、中空部を持ちかつ当該中空部に炭化水素系溶剤を内包する前駆体粒子を含む前駆体組成物を調製する工程(重合工程)、前記前駆体組成物を固液分離することにより前記前駆体粒子を得る工程(固液分離工程)、並びに前記前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤を気中にて除去する工程(溶剤除去工程)、を含むことを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法が開示されている。
また、特許文献2によれば、多官能性モノマーと非反応性溶媒とを含む混合溶液を水溶液に分散し、次いで前記多官能性モノマーを重合させることにより中空樹脂粒子を得ることを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法が開示されている。
その一方で、得られる中空樹脂粒子について、さらなる断熱性の向上のため、空隙率をより高め、粒子径をより大きくすることが望まれている。たとえば、特許文献1および特許文献2に開示された製造方法においては、得ようとする中空樹脂粒子の空隙率をより高く、また、粒子径をより大きいものとした場合、重合時の安定性が十分でなく、そのため、凝集物が発生してしまうという課題があった。さらに、溶剤除去工程における溶剤除去の容易性が十分でなく、そのため、得られる中空樹脂粒子は、中空中の溶剤の残留量が多いものとなったり、溶剤除去工程において中空樹脂粒子の潰れが発生してしまうという課題があった。
国際公開第2019/026899号 特開2016-190980号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、空隙率が高く、粒子径を大きくした場合でも、中空中の溶剤の残存量が効果的に低減された中空粒子を製造でき、かつ、重合時の安定性に優れた製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、単量体、油溶性重合開始剤、および有機溶剤を含む油相を、水系媒体に懸濁させた状態で、単量体を重合する工程を経て、貫通孔を有する中空粒子を製造する際に、単量体として、特定のモノビニル単量体および架橋性単量体を特定量含むものを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、貫通孔を有する中空粒子の製造方法であって、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、有機溶剤(C)、懸濁安定剤(D)、および水系媒体(E)を含む混合液を懸濁させることにより、前記水系媒体(E)に、前記単量体(A)、前記油溶性重合開始剤(B)、および前記有機溶剤(C)を含む油相が分散した懸濁液を調製する懸濁工程と、前記懸濁液中の前記単量体(A)を重合することにより、前記有機溶剤(C)を内包するとともに、貫通孔を有する前駆体粒子を含む前駆体分散液を調製する重合工程と、前記前駆体分散液から前記有機溶剤(C)を除去することにより、貫通孔を有する中空粒子を得る除去工程と、を備え、前記単量体(A)として、モノビニル単量体0.8~40質量%、および架橋性単量体60~99.2質量%を含むものを用い、前記モノビニル単量体として、ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体およびビニル基を1つ有するカルボン酸エステル単量体を含むものを用い、前記単量体(A)中における、前記ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体の使用量が、0.5~8.0質量%であり、前記ビニル基を1つ有するカルボン酸エステル単量体の使用量が、0.3~20質量%である中空粒子の製造方法が提供される。
本発明の中空粒子の製造方法において、前記有機溶剤(C)として、10℃における水100gに対する溶解度が1g/100g以下の疎水性溶剤と、10℃における水100gに対する溶解度が1g/100g超、100g/100g未満の親水性溶剤と、を含むものを用いることが好ましい。
本発明の中空粒子の製造方法において、前記懸濁安定剤(D)として、ノニオニックアニオン系界面活性剤を含むものを用いることが好ましい。
本発明の中空粒子の製造方法において、前記ノニオニックアニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いることが好ましい。
本発明の中空粒子の製造方法において、前記単量体(A)が、前記親水性基含有単量体として、酸基含有単量体を含むことが好ましい。
本発明の中空粒子の製造方法において、前記単量体(A)が、前記酸基含有単量体として、(メタ)アクリル酸単量体を含むことが好ましい。
本発明の中空粒子の製造方法において、前記中空粒子の個数平均粒子径が、1~14μmであることが好ましい。
本発明によれば、空隙率が高く、粒子径を大きくした場合でも、中空中の溶剤の残存量が効果的に低減された中空粒子を製造でき、かつ、重合時の安定性に優れた製造方法を提供することができる。
図1は、実施例1で得られた中空粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 図2は、比較例2で得られた中空粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の中空粒子の製造方法は、
貫通孔を有する中空粒子の製造方法であって、
単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、有機溶剤(C)、懸濁安定剤(D)、および水系媒体(E)を含む混合液を懸濁させることにより、前記水系媒体(E)に、前記単量体(A)、前記油溶性重合開始剤(B)、および前記有機溶剤(C)を含む油相が分散した懸濁液を調製する懸濁工程と、
前記懸濁液中の前記単量体(A)を重合することにより、前記有機溶剤(C)を内包するとともに、貫通孔を有する前駆体粒子を含む前駆体分散液を調製する重合工程と、
前記前駆体分散液から前記有機溶剤(C)を除去することにより、貫通孔を有する中空粒子を得る除去工程と、を備え、
前記単量体(A)として、モノビニル単量体0.8~40質量%、および架橋性単量体60~99.2質量%を含むものを用い、
前記モノビニル単量体として、ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体およびビニル基を1つ有するカルボン酸エステル単量体を含むものを用い、
前記単量体(A)中における、前記ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体の使用量が、0.5~8.0質量%であり、前記ビニル基を1つ有するカルボン酸エステル単量体の使用量が、0.3~20質量%であるものである。
以下、本発明の製造方法の各工程について説明する。
〔懸濁工程〕
懸濁工程は、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、有機溶剤(C)、懸濁安定剤(D)、および水系媒体(E)を含む混合液を懸濁させることにより、水系媒体(E)に、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、および有機溶剤(C)を含む油相が分散した懸濁液を調製する工程である。
(単量体(A))
本発明においては、単量体(A)として、モノビニル単量体および架橋性単量体を少なくとも用いるものであり、モノビニル単量体を0.8~40質量%の割合で、架橋性単量体を60~99.2質量%の割合で使用する。
モノビニル単量体としては、炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であればよいが、本発明においては、モノビニル単量体として、ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体(以下、適宜、「親水性基含有単量体」とする。)、およびビニル基を1つ有するカルボン酸エステル単量体(以下、適宜、「カルボン酸エステル単量体」とする。)を用いる。
親水性基含有単量体としては、1つのビニル基と、親水性基とを有するものであればよく、特に限定されない。親水性基含有単量体としては、酸基含有単量体を使用することが好ましい。ここでいう酸基とは、プロトン供与基(ブレンステッド酸基)、電子対受容基(ルイス酸基)のいずれも含む。このような酸基含有単量体としては、たとえば、カルボキシル基含有単量体、およびスルホン酸基含有単量体が挙げられる。
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;イタコン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノ2-ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル単量体;などが挙げられる。
スルホン酸基含有単量体としては、スチレンスルホン酸などが挙げられる。
また、その他の親水性基含有単量体として、たとえば、ヒドロキシル基含有単量体、アミド基含有単量体、ポリオキシエチレン基含有単量体を用いてもよい。
ヒドロキシル基含有単量体としては、たとえば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
アミド基含有単量体としては、たとえば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド単等が挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有単量体としては、たとえば、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
これらの親水性基含有単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。親水性基含有単量体の中でも、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましく、メタクリル酸がさらに好ましい。
カルボン酸エステル単量体は、カルボン酸基を有する化合物と、アルコールとが脱水縮合することにより得られる、カルボン酸のエステル基を有する化合物であって、ビニル官能基を1つ有するものである。なお、本発明において、上記親水性基含有単量体は、カルボン酸のエステル基を有するものであっても、カルボン酸エステル単量体に該当しないものとする。たとえば、マレイン酸モノブチルは、エステル化されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基と、エステル化されたカルボキシル基を有する化合物であるが、本発明においては、カルボン酸エステル単量体ではなく、親水性基含有単量体に属するものとする。すなわち、本発明において、カルボン酸エステル単量体は、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を有さないものとする。
カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等の炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルの意味。以下、同様。);(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-イソプロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(t-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル等の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;アクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸シアノブチル等の炭素数2~12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シアノアルキルエステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル等の炭素数1~12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル;等が挙げられる。カルボン酸エステル単量体のなかでも、炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
そして、本発明においては、重合に用いる単量体(A)100質量%中における、親水性基含有単量体の含有割合を0.5~8.0質量%とし、カルボン酸エステル単量体の含有割合を0.3~20質量%とする。本発明によれば、重合に用いる単量体(A)を、モノビニル単量体と、架橋性単量体とを、特定量含むものとし、かつ、モノビニル単量体として、親水性基含有単量体と、カルボン酸エステル単量体とをこのような含有割合で用いることにより、水系媒体(E)中に、単量体(A)を、後述する油溶性重合開始剤(B)および有機溶剤(C)とともに懸濁させて、懸濁させた状態で、単量体(A)を重合し、有機溶媒(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、得られる前駆体粒子を、孔径が比較的大きな貫通孔を有するものとすることができるものである。そして、このような孔径が比較的大きな貫通孔を形成することにより、得られる中空粒子を、空隙率が高く、粒子径が大きなものとした場合でも、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)を、容易に除去することができ、結果として、得られる中空粒子を、中空中の溶剤の残存量が効果的に低減されたものとすることができるものである。
単量体(A)100質量%中における、親水性基含有単量体の含有割合は、0.5~8.0質量%であり、好ましくは0.5~7.0質量%、より好ましくは1.0~7.0質量%である。親水性基含有単量体の使用量が少なすぎると、前駆体粒子を製造する際に、凝集が発生してしまう。一方、親水性基含有単量体の使用量が多すぎると、単量体(A)を重合し、有機溶剤(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、前駆体粒子に形成される貫通孔の孔径を十分に大きなものとすることができず、これにより、有機溶剤(C)の除去が困難となる。
また、単量体(A)100質量%中における、カルボン酸エステル単量体の含有割合は、0.3~20質量%であり、好ましくは0.3~18質量%、より好ましくは0.3~15質量%である。カルボン酸エステル単量体の使用量が少なすぎると、重合時安定性に劣るものとなり、中空粒子の製造法が困難になる。一方、カルボン酸エステル単量体の使用量が多すぎると、単量体(A)を重合し、有機溶剤(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、前駆体粒子に形成される貫通孔の孔径を十分に大きなものとすることができず、これにより、有機溶剤(C)の除去が困難となる。
なお、親水性基含有単量体とカルボン酸エステル単量体との質量比は、好ましくは親水性基含有単量体:カルボン酸エステル単量体=99:1~30:70であり、より好ましくは親水性基含有単量体:カルボン酸エステル単量体=95:5~35:65である。
また、モノビニル単量体としては、上記した親水性基含有単量体およびカルボン酸エステル単量体以外に、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体およびその誘導体;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン単量体;ビニルピリジン単量体;等を用いることができる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
単量体(A)100質量%中における、モノビニル単量体の含有割合(すなわち、親水性基含有単量体、カルボン酸エステル単量体、および必要に応じ用いられるその他のモノビニル単量体の合計の含有割合)は、0.8~40質量%であり、好ましくは0.8~35質量%、より好ましくは1.0~30質量%である。モノビニル単量体の使用量が少なすぎると、得られる前駆体粒子の安定性が損なわれ、前駆体粒子を製造する際に凝集が発生してしまう。一方、モノビニル単量体の使用量が多すぎると、単量体(A)を重合し、有機溶剤(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、前駆体粒子に形成される貫通孔の孔径を十分に大きなものとすることができず、これにより、有機溶剤(C)の除去が困難となる。
また、架橋性単量体としては、重合可能な官能基を2つ以上有している化合物であれば、特に限定されず、架橋性単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレートおよびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2個以上の水酸基またはカルボキシル基を持つ化合物に炭素-炭素二重結合を有する化合物が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のその他ジビニル化合物;等が挙げられる。これらのなかでも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
単量体(A)100質量%中における、架橋性単量体の使用量としては、60~99.2質量%であればよく、好ましくは65~99.5質量%、より好ましくは70~99質量%である。架橋性単量体の使用量が少なすぎると、単量体(A)を重合し、有機溶剤(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、前駆体粒子に形成される貫通孔の孔径を十分に大きなものとすることができず、これにより、有機溶剤(C)の除去が困難となる。一方、架橋性単量体の使用量が多すぎると、得られる前駆体粒子の安定性が損なわれ、前駆体粒子が凝集してしまう。
(油溶性重合開始剤(B))
本発明で用いる油溶性重合開始剤(B)は、10℃の水100gに対する溶解度が0.2g/100g以下の親油性のものであれば特に制限されない。油溶性重合開始剤(B)としては、たとえば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシド-2-エチルヘキサノエート、オルソクロロベンゾイルペルオキシド、オルソメトキシベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。
単量体(A)の総量100質量部に対し、油溶性重合開始剤(B)の使用量は、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~7質量部であり、さらに好ましくは1~5質量部である。油溶性重合開始剤(B)の使用量を上記範囲とすることにより、重合反応を十分進行させ、かつ重合反応終了後に油溶性重合開始剤(B)が残存するおそれが小さく、予期せぬ副反応が進行するおそれも小さい。
(有機溶剤(C))
本発明で用いる有機溶剤(C)は、特に限定されないが、10℃における水100gに対する溶解度が1g/100g以下の疎水性溶剤と、10℃における水100gに対する溶解度が1g/100g超、100g/100g未満の親水性溶剤と、を含むものであることが好ましい。有機溶剤(C)として、疎水性溶剤と、親水性溶剤とを組み合わせて用いることにより、単量体(A)を重合し、有機溶媒(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、得られる前駆体粒子に形成される貫通孔を、有機溶剤(C)の除去により適したものとすることができ、これにより、得られる中空粒子における、中空中の溶剤の残存量をより効果的に低減することができる。
疎水性溶剤は、10℃における水100gに対する溶解度(すなわち、疎水性溶剤を溶解させた後の温度が10℃となるように、水100gに対して溶解させた際の溶解度)が1g/100g以下のものであることが好ましい。このような疎水性溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、二硫化炭素、四塩化炭素等の比較的揮発性が高い溶剤が挙げられる。
疎水性溶剤の、10℃における水100gに対する溶解度は、好ましくは1g/100g以下であり、より好ましくは0.8g/100g以下、さらに好ましくは0.6g/100g以下である。なお、疎水性溶剤の、10℃における水100gに対する溶解度の下限は、特に限定されないが、通常、0.0001g/100g以上である。
また、本発明で用いる疎水性溶剤は、20℃における比誘電率が3以下であるものが好ましい。比誘電率は、化合物の極性の高さを示す指標の1つである。疎水性溶剤の比誘電率が3以下と十分に小さい場合には、モノマー液滴中で相分離が速やかに進行し、中空が形成されやすいと考えられる。
20℃における比誘電率が3以下の溶剤の例は、以下の通りである。カッコ内は比誘電率の値である。
ヘプタン(1.9)、シクロヘキサン(2.0)、ベンゼン(2.3)、トルエン(2.4)。
20℃における比誘電率に関しては、公知の文献(たとえば、日本化学会編「化学便覧基礎編」、改訂4版、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、II-498~II-503ページ)に記載の値、およびその他の技術情報を参照できる。20℃における比誘電率の測定方法としては、たとえば、JISC 2101:1999の23に準拠し、かつ測定温度を20℃として実施される比誘電率試験等が挙げられる。
また、本発明で用いる疎水性溶剤は、炭素数5~7の炭化水素化合物であってもよい。炭素数5~7の炭化水素化合物は、重合工程時に前駆体粒子中に容易に内包され、かつ除去工程時に前駆体粒子中から容易に除去することができる。中でも、疎水性溶剤は、炭素数6の炭化水素化合物であることが好ましい。
疎水性溶剤の使用量は、単量体(A)の総量100質量部に対し、好ましくは100~900質量部であり、より好ましくは150~750質量部であり、さらに好ましくは200~600質量部である。疎水性溶剤の使用量を調整することにより、得られる中空粒子の空隙率を制御することができるものであり、疎水性溶剤の使用量を上記範囲とすることにより、中空粒子の機械的特性を損なうことなく、中空粒子の空隙率を好適に制御することができる。
また、本発明においては、上記した疎水性溶剤に加えて、親水性溶剤を用いることが好ましく、親水性溶剤としては、10℃における水100gに対する溶解度(すなわち、親水性溶剤を溶解させた後の温度が10℃となるように、水100gに対して溶解させた際の溶解度)が1g/100g超、100g/100g未満のものであることが好ましい。
親水性溶剤の、10℃における水100gに対する溶解度は、好ましくは1g/100g超、100g/100g未満、より好ましくは100~80g/100g、さらに好ましくは70~50g/100gである。親水性溶剤の、10℃における水100gに対する溶解度を上記範囲とすることにより、前駆体粒子における貫通孔を適切に形成することができる。
親水性溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、メチルエチルケトン等のケトン類;イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、ブチルセロソルブ、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン等のエーテル類;等が挙げられる。
親水性溶剤の使用量は、単量体(A)の総量100質量部に対し、好ましくは0.5~40質量部であり、より好ましくは0.5~30質量部であり、さらに好ましくは1.0~25質量部である。親水性溶剤の使用量を上記範囲とすることにより、単量体(A)を重合し、有機溶剤(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、前駆体粒子に形成される貫通孔の孔径を、有機溶剤(C)の除去により適したものとすることができ、これにより、有機溶剤(C)の除去をより容易なものとすることができる。また、重合時安定性により優れるものとなり、適切に中空粒子を得ることができる。
(懸濁安定剤(D))
懸濁安定剤(D)は、後述する懸濁重合法における懸濁液中の懸濁状態を安定化させる作用を奏する。本発明においては、懸濁安定剤(D)としては、ノニオニックアニオン系界面活性剤を含むものとすることが好ましく、このような懸濁安定剤(D)の作用により、後述する懸濁重合法において、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、および、有機溶剤(C)を内包するミセルを形成することができる。懸濁安定剤(D)として、ノニオニックアニオン系界面活性剤を用いることにより、単量体(A)を重合し、有機溶媒(C)を内包する前駆体粒子を得た際に、得られる前駆体粒子に形成される貫通孔を、有機溶剤(C)の除去により適したものとすることができ、これにより、得られる中空粒子における、中空中の溶剤の残存量をより効果的に低減することができる。
ノニオニックアニオン系界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(すなわち、水溶液中でイオン解離してアニオン部分が界面活性を示す物質)であって、その分子主鎖中に、非イオン性の界面活性剤として作用するセグメント、たとえば、ポリアルキレンオキサイド鎖を有するものであればよく、特に限定されない。
このようなノニオニックアニオン系界面活性剤としては、たとえば、下記一般式(1)で表される化合物などが挙げられる。
-O-(CRCR-SOM (1)
(上記一般式(1)中、Rは、炭素数6~16のアルキル基、または炭素数1~25のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、R~Rは、水素およびメチル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれる基、Mは、アルカリ金属原子またはアンモニウムイオン、nは3~40である。)
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸塩などのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルエーテル硫酸塩などのポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩;などが挙げられる。
ノニオニックアニオン系界面活性剤の中でも、ポリオキシアルキレン構造を有するノニオニックアニオン系界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン構造を有するノニオニックアニオン系界面活性剤がより好ましい。ノニオニックアニオン系界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、懸濁安定剤(D)として、ノニオニックアニオン系界面活性剤以外の界面活性剤、難水溶性無機化合物、水溶性高分子等を用いてもよい。ノニオニックアニオン系界面活性剤以外の界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえば、ノニオニックアニオン系界面活性剤以外の陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができる。ノニオニックアニオン系界面活性剤、ノニオニックアニオン系界面活性剤以外の界面活性剤、難水溶性無機化合物、水溶性高分子等は、それらを組み合わせて用いることもできる。なお、懸濁安定剤(D)としては、ノニオニックアニオン系界面活性剤以外を用いないことが好ましい。
懸濁安定剤(D)の使用量は、油相を構成する全成分100質量部に対して、好ましくは0.015~3.0質量部、より好ましくは0.03~2.5質量部、さらに好ましくは0.045~2.5質量部である。懸濁安定剤(D)の使用量を上記範囲とすることにより、得られる中空粒子の安定性を向上することができる。
(水系媒体(E))
水系媒体(E)としては、通常、水が用いられるが、水に加えて、10℃における水100gに対する溶解度が、100g/100g以上の溶媒を併用してもよい。
懸濁工程においては、まず、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、有機溶剤(C)、懸濁安定剤(D)、ならびに、水系媒体(E)を単に混合し、適宜攪拌等をすることで、混合液を得る。この混合液中においては、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、ならびに有機溶剤(C)を含む油相が、水系媒体(E)中において、通常、数mm程度の粒子径で分散した状態となる。混合液におけるこれら材料の分散状態は、材料の種類によっては、肉眼でも観察が可能である。
なお、混合液を調製する際には、油相を構成する単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、および有機溶剤(C)を含む油相混合液と、水相を構成する懸濁安定剤(D)および水系媒体(E)を含む水相混合液とを、予め、それぞれ別々に調製し、調製した油相混合液と水相混合液とを混合することにより、混合液を得てもよい。このように油相混合液と水相混合液とを予め別に調製した上で、これらを混合することにより、組成が均一な中空粒子を製造することができ、かつ、油相を、確実に親水性溶剤を含むものとすることにより、適切に貫通孔を有する中空粒子を製造することができる。
そして、懸濁工程においては、上記のようにして調製された混合液について、懸濁処理を行うことにより、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、および有機溶剤(C)を含むモノマー液滴が、水系媒体(E)中に微分散した懸濁液を調製する。混合液について、懸濁処理を行う方法としては、特に限定されないが、強攪拌することで懸濁させる処理が好適である。
懸濁工程においては、懸濁させる処理により、単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、ならびに、有機溶剤(C)を含む油相を、好ましくは1.0~2.0μmの粒子径を持つモノマー液滴として、水系媒体中に均一に分散したものとする。懸濁工程において形成する、モノマー液滴の粒子径は、好ましくは2.0~15μm、より好ましくは2.0~12μmである。モノマー液滴の粒子径は、得ようとする中空粒子の粒子径に応じたものとすればよく、モノマー液滴の粒子径は、たとえば、懸濁処理に用いる装置や、懸濁処理の条件等により調整することができる。形成されるモノマー液滴は、通常は、肉眼では観察が難しく、たとえば光学顕微鏡等の公知の観察機器により観察できる。
ここで、本発明に係る製造方法においては、乳化重合法ではなく、油溶性重合開始剤を用いた懸濁重合法を採用するものである。以下、油溶性重合開始剤を用いた懸濁重合法について、乳化重合法と対比しながら説明する。
乳化重合法においては、通常、重合開始剤として、水溶性重合開始剤を用いる。乳化重合法においては、まず、水系媒体中に、ミセル、ミセル前駆体、溶媒中に溶出した単量体、および水溶性重合開始剤を分散させる(乳化)。ミセルは、油溶性の単量体組成物の周囲を、界面活性剤が取り囲むことにより構成される。単量体組成物中には、重合体の原料となる単量体等が含まれるが、重合開始剤は含まれない。
一方、ミセル前駆体は、界面活性剤の集合体ではあるものの、その内部に十分な量の単量体組成物を含んでいない。ミセル前駆体は、溶媒中に溶出した単量体を内部に取り込んだり、他のミセル等から単量体組成物の一部を調達したりすることにより、ミセルへと成長する。水溶性重合開始剤は、水系媒体中を拡散しつつ、ミセルやミセル前駆体の内部に侵入し、これらの内部の油滴の成長を促す。したがって、乳化重合法においては、各ミセルは水系媒体中に単分散しているものの、ミセルの粒子径は数百nmまで成長することが予測される。したがって、乳化重合法を用いた場合、得られる中空粒子前駆体は、粒子径の均一性に劣るものとなり、目的とする粒子径以外の粒子径を有する中空粒子が多く得られてしまう可能性がある。
これに対し、油溶性重合開始剤を用いた懸濁重合法においては、まず、水系媒体中に、ミセルおよび水系媒体中に分散した単量体を分散させる。ミセルは、油溶性の単量体組成物の周囲を、界面活性剤が取り囲むことにより構成される。単量体組成物中には油溶性重合開始剤、ならびに、単量体および有機溶剤が含まれる。
本発明に係る懸濁工程においては、ミセルの内部に単量体組成物を含む微小油滴を予め形成した上で、油溶性重合開始剤により、重合開始ラジカルが微小油滴中で発生する。したがって、微小油滴を成長させ過ぎることなく、目的とする粒子径の中空粒子前駆体を製造することができる。
また、懸濁重合と、乳化重合との比較からも明らかなように、懸濁重合においては、油溶性重合開始剤が、水系媒体中に分散した単量体と接触する機会は存在しない。したがって、油溶性重合開始剤を使用することにより、目的としている中空粒子の他に、余分なポリマー粒子が生成することを防止できる。
懸濁工程において、混合液を強攪拌して、モノマー液滴を形成する方法としては、特に限定されないが、たとえば、(インライン型)乳化分散機(商品名「マイルダー」、大平洋機工社製)、高速乳化分散機(商品名「T.K.ホモミクサー MARK II型」、プライミクス株式会社製)等の強攪拌が可能な装置を用いて行うことができる。特に、本発明に係る懸濁工程においては、モノマー液滴中に相分離が生じるため、極性の低い有機溶剤(C)がモノマー液滴の内部に集まりやすくなる。その結果、得られるモノマー液滴は、その内部に有機溶剤(C)が局在化するとともに、その周縁に有機溶剤(C)以外の材料が分布することとなる。
〔重合工程〕
重合工程は、上述した懸濁工程において得られた懸濁液を重合させることにより、有機溶剤(C)を内包した前駆体粒子を含む前駆体分散液を調製する工程である。ここで、前駆体粒子とは、単量体(A)を重合させることにより形成される粒子である。
本発明においては、単量体(A)中における、モノビニル単量体と、架橋性単量体との含有割合を特定の範囲とし、かつ、モノビニル単量体として、特定量の親水性基含有単量体と、特定量のカルボン酸エステル単量体とを用いるものであるため、重合工程における安定性、すなわち、重合時安定性に優れたものとすることができ、これにより、凝集物の発生を好適に抑制することができる。
さらに、本発明においては、単量体(A)中における、モノビニル単量体と、架橋性単量体との含有割合を特定の範囲とし、かつ、モノビニル単量体として、特定量の親水性基含有単量体と、特定量のカルボン酸エステル単量体とを用いることで、重合により得られる前駆体粒子を、孔径が比較的大きな貫通孔を有するものとすることができるものである。なお、この際に形成される貫通孔の孔径の大きさは、使用する単量体(A)の種類や組成比を調整することにより調整することができるが、後述する除去工程において、有機溶剤(C)をより適切に除去することができるという観点より、貫通孔の孔径の大きさは、好ましくは30nm超、より好ましくは50nm超、さらに好ましくは80nm以上である。また、前駆体粒子が有する貫通孔の孔径の上限は、特に限定されないが、断熱性向上効果などの中空構造とすることによる効果を十分なものとするという観点より、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下である。
重合方式としては、特に限定されないが、たとえば、回分式(バッチ式)、半連続式、連続式等を採用することができる。重合温度は、好ましくは40~80℃であり、さらに好ましくは50~70℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1~20時間であり、さらに好ましくは2~15時間である。本発明においては、得られる前駆体分散液においては、重合により得られた前駆体粒子が、単量体(A)の重合によりシェルを形成するとともに、このシェルの内部に、有機溶剤(C)を内包したものとなる。
〔除去工程〕
除去工程は、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)を除去することにより、貫通孔を有する中空粒子を得る工程である。
本発明の製造方法においては、単量体(A)中における、モノビニル単量体と、架橋性単量体との含有割合を特定の範囲とし、かつ、モノビニル単量体として、特定量の親水性基含有単量体と、特定量のカルボン酸エステル単量体とを用いることにより、上述した重合工程で得られる前駆体粒子を、孔径が比較的大きな貫通孔を有するものとすることができるものであるため、このような孔径が比較的大きな貫通孔の作用により、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)を、容易に除去することができるものである。
特に、本発明においては、得られる中空粒子を、断熱性により優れたものとすることができるという観点より、空隙率が70~98%であり、個数平均粒子径が、好ましくは1~12μmであるものとすることが好ましい。すなわち、空隙率が高く、粒子径が大きいものとすることが好ましく、本発明によれば、得られる中空粒子を空隙率が高く、粒子径が大きいものとした場合でも、有機溶剤(C)を、効果的に除去できるものである。特に、空隙率が高く、粒子径が大きい中空粒子を製造する際には、中空中に内包される溶剤の量も多くなるため、除去工程における溶剤の除去が容易ではないという課題があった。これに対し、本発明によれば、単量体(A)中における、モノビニル単量体と、架橋性単量体との含有割合を特定の範囲とし、かつ、モノビニル単量体として、特定量の親水性基含有単量体と、特定量のカルボン酸エステル単量体とを用いることにより、上述した重合工程で得られる前駆体粒子を、孔径が比較的大きな貫通孔を有するものとすることができ、これにより、除去工程において、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)、特に、疎水性溶剤を、容易に除去することができるものである。そして、その結果として、得られる中空粒子の空隙率を高く、粒子径を大きくした場合であっても、中空中の溶剤の残存量を効果的に低減することができるものである。
得られる中空粒子の空隙率は、好ましくは70~98%、より好ましくは75~98%、さらに好ましくは80~98%である。中空粒子の空隙率を上記範囲とすることにより、中空粒子の断熱性を、より高めることができる。中空粒子の空隙率は、たとえば、中空粒子を製造する際の、使用する疎水性溶剤の体積および使用する単量体の体積から、以下の式を用いて算出することができる。
空隙率(%)=[使用する疎水性溶剤の体積(ml)/{使用する単量体の体積(ml)+使用する疎水性溶剤の体積(ml)}]×100
なお、中空粒子の空隙率は、たとえば、疎水性溶剤の使用量を調整すること等により、調製することができる。
また、得られる中空粒子の個数平均粒子径は、好ましくは1~13μmであり、より好ましくは1.0~11μm、さらに好ましくは1~10μm、よりさらに好ましくは1.5~10μm、特に好ましくは2.0~10μmである。中空粒子の個数平均粒子径を上記範囲とすることにより、得られる中空粒子を、断熱性により優れたものとすることができる。中空粒子の個数平均粒子径は、たとえば、レーザー回折式粒度分布測定装置により、粒度分布を測定し、その個数平均を算出することにより求めることができる。なお、中空粒子の個数平均粒子径は、たとえば、単量体(A)の使用量を調整することや、懸濁工程における、懸濁条件を調整すること等により、調整することができる。
除去工程においては、たとえば、重合工程により得られた前駆体分散液から、前駆体粒子に内包される炭化水素系溶剤(C)を除去し、その後、水系媒体(E)を含む液体分を除去する方法や、水系媒体(E)を含む液体分と、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)とを、同時に除去する方法等を採用することができる。有機溶剤(C)の沸点は、水系媒体(E)の沸点より低いことが多く、そのため、有機溶剤(C)は水系媒体(E)より容易に除去できるという観点から、重合工程により得られた前駆体分散液から、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)を除去し、その後、水系媒体(E)を含む液体分を除去する方法を採用することが好ましい。なお、水系媒体(E)を含む液体分を除去し、その後、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)を除去する方法を採用する際に、有機溶剤(C)として、疎水性溶剤と親水性溶剤とを含むものを用いた場合、重合工程により得られた前駆体分散液から、水系媒体(E)を含む液体分を除去する際に、水系媒体(E)とともに、有機溶剤(C)に含まれる親水性溶剤が除去されてもよい。この場合、前駆体分散液から、水系媒体(E)および親水性溶剤を含む液体分を除去し、その後、前駆体粒子に内包される疎水性溶剤を除去すればよい。
除去工程において、重合工程により得られた前駆体分散液から、水系媒体(E)を含む液体分を除去する方法としては、たとえば、前駆体分散液を固液分離することにより前駆体粒子を得る方法等が挙げられる。
前駆体分散液を固液分離する方法としては、特に限定されず、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)が実質的に除去されることなく、前駆体粒子を含む固形分と、水系媒体(E)を含む液体分を分離する方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。固液分離の方法としては、たとえば、遠心分離法、ろ過法、静置分離等が挙げられ、この中でも、遠心分離法、ろ過法のいずれであってもよいが、操作の簡便性の観点から遠心分離法を採用することが好ましい。
また、固液分離後、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)を除去する前に、予備乾燥工程等の任意の工程を実施してもよい。予備乾燥工程としては、たとえば、固液分離後に得られた固形分を、乾燥機等の乾燥装置や、ハンドドライヤー等の乾燥器具により予備乾燥する工程が挙げられる。
前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)を除去する方法としては、特に限定されず、気中において行ってもよいし、あるいは、液中において行ってもよい。以下においては、気中において有機溶剤(C)の除去を行う方法を例示して、説明を行う。なお、除去工程における「気中」とは、前駆体粒子の外部に液体分が全く存在しない環境下、あるいは、前駆体粒子の外部に、有機溶剤(C)の除去に影響しない程度のごく微量の液体分しか存在しない環境下を意味する。「気中」とは、前駆体粒子がスラリー中に存在しない状態と言い替えることもできるし、前駆体粒子が乾燥粉末中に存在する状態と言い替えることもできる。
前駆体粒子中の有機溶剤(C)を気中にて除去する方法は、特に限定されず、公知の方法が採用できる。当該方法としては、たとえば、減圧乾燥法、加熱乾燥法、気流乾燥法またはこれらの方法の併用が挙げられる。特に、加熱乾燥法を用いる場合には、加熱温度は有機溶剤の沸点以上、かつ中空粒子のシェル構造が崩れない最高温度以下とする必要がある。したがって、前駆体粒子中のシェルの組成と有機溶剤(C)の種類によるが、たとえば、加熱温度を50~150℃としてもよく、60~130℃としてもよく、70~100℃としてもよい。気中における乾燥操作によって、前駆体粒子内部の有機溶剤(C)が、外部の気体により置換される結果、中空部分を気体が占める中空粒子が得られる。
乾燥雰囲気は特に限定されず、中空粒子の用途によって適宜選択することができる。乾燥雰囲気としては、たとえば、空気、酸素、窒素、アルゴン等が考えられる。また、一度、気体により中空粒子内部を満たした後、減圧乾燥することにより、一時的に内部が真空である中空粒子も得られる。
水系媒体(E)を含む液体分と、前駆体粒子に内包される有機溶剤(C)とを、同時に除去する方法としては、たとえば、減圧乾燥法、加熱乾燥法、気流乾燥法またはこれらの方法の併用を挙げることができる。
そして、このようにして得られる中空粒子は、貫通孔を有するものとなる。貫通孔の孔径は、通常、上述した重合工程で得られた前駆体粒子の貫通孔と同様であり、好ましくは30nm超、より好ましくは50nm超、さらに好ましくは80nm以上である。また、断熱性向上効果などの中空構造とすることによる効果を十分なものとするという観点より、貫通孔の孔径の上限は、特に限定されないが、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下である。なお、前駆体粒子が有する貫通孔の孔径は、得られる中空粒子が有する貫通孔の孔径とほぼ同じであると考えられる。そのため、前駆体粒子が有する貫通孔の孔径は、得られる中空粒子が有する貫通孔の孔径を測定することにより、求めることができる。中空粒子の貫通孔の孔径は、たとえば、走査型電子顕微鏡により、無作為に選択された100個の中空粒子を観察し、それぞれの中空粒子における最大の貫通孔の孔径を測定し、それぞれの中空粒子における、最大の貫通孔の孔径の個数平均を算出することにより、求めることができる。前駆体粒子が有する貫通孔の孔径は、たとえば、単量体(A)の種類や組成比を調整すること等により、調整することができる。
なお、重合工程の後、除去工程の前に、重合工程により得られた前駆体分散液について、pH調整を行ってもよい。たとえば、重合工程により得られた前駆体分散液に塩基を添加することにより、前駆体分散液のpHを、たとえば6.0以上とする。その一方で、本発明の製造方法によれば、pH調整をせずとも、所望の中空粒子を得ることができるため、製造工程の簡略化の観点より、本発明の製造方法においては、このようなpH調整は、行わないことが好ましい。
中空粒子の形状は、貫通孔を有し、かつ、内部に中空部が形成されていれば特に限定されず、たとえば、球形、楕円球形、不定形等が挙げられる。これらの中でも、製造の容易さから球形が好ましい。
中空粒子内部は、1または2以上の中空部を有していてもよく、多孔質状となっていてもよい。粒子内部は、中空粒子の高い空隙率と、中空粒子の機械強度との良好なバランスを維持するために、中空部を1つのみ有するものが好ましい。
本発明の製造方法によれば、空隙率が高く、粒径の大きなものとした場合でも、溶剤の残留量が効果的に低減された中空粒子を得ることができ、かつ、重合時の安定性に優れるものである。また、中空粒子を、空隙率が高く、粒径の大きなものとすることにより、優れた断熱性を備えるものとすることができるものであり、そのため、このような本発明の製造方法により得られる中空粒子は、優れた断熱性が要求される用途、たとえば、感熱紙のアンダーコート剤等の用途に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の「部」は、特に断りのない限り、質量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定した。
〔中空粒子の空隙率〕
中空粒子の空隙率は、中空粒子を製造する際の、使用する疎水性溶剤の体積および使用する単量体の体積から、以下の式を用いて算出した。
空隙率(%)=[使用する疎水性溶剤の体積(ml)/{使用する単量体の体積(ml)+使用する疎水性溶剤の体積(ml)}]×100
(疎水性溶剤として使用したシクロヘキサンの体積は、シクロヘキサンの比重を0.779g/mlとして計算し、使用した単量体の体積は、単量体の比重を1.0g/mlとして計算した。)
〔中空粒子の個数平均粒子径〕
レーザー回析式粒度分布測定器(商品名「SALD-2000」、島津製作所社製)を用いて各中空粒子の粒子径を測定し、その個数平均をそれぞれ算出し、得られた値をその中空粒子の個数平均粒子径とした。
〔中空粒子のシェル厚〕
中空粒子のシェル厚は、上記にて算出した中空粒子の空隙率と、個数平均粒子径とから算出した。
〔中空粒子の貫通孔の孔径〕
貫通孔の孔径は、以下のようにして求めた。すなわち、まず、走査型電子顕微鏡により、無作為に選択された100個の中空粒子を観察し、それぞれの中空粒子における最大の貫通孔の孔径を測定した。そして、それぞれの中空粒子における、最大の貫通孔の孔径の個数平均を算出し、得られた値を、中空粒子の貫通孔の孔径とした。
〔中空粒子内の残留溶剤量〕
以下の式により、中空粒子内の残留溶剤量を算出した。残留溶剤量が少ないほど、中空粒子の中空中の溶剤の残存量が効果的に低減されたものと判断できる。
残留溶剤量(%)=100×(全固形分量-理論固形分量)/全固形分量
(全固形分量は、中空粒子を105℃で2時間加熱した後の固形分の全量の実測値(g)であり、理論固形分量は、溶剤を含まない中空粒子の質量の理論値(g)である。)
〔中空粒子の重合時安定性〕
中空粒子の重合時安定性は、重合後の前駆体分散液を、200メッシュの金網により濾過し、濾過残渣として得られる凝集物の質量を測定した。そして、前駆体の質量と、凝集物の質量とから、以下の式を用いて凝集物量を算出した。凝集物量が少ないほど、重合時安定性に優れていると判断できる。
凝集物量(%)=100×凝集物の質量(g)/前駆体の質量(g)
〔中空粒子の潰れ割合〕
中空粒子の潰れ割合は、中空粒子を、走査型電子顕微鏡で100個の中空粒子を観察し、観察した中空粒子中における、潰れた中空粒子および割れた中空粒子の個数の割合を算出することにより求めた。
〔実施例1〕
(懸濁工程)
まず、メタクリル酸5部、メタクリル酸メチル0.5部、エチレングリコールジメタクリレート94.5部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(油溶性重合開始剤、商品名「V-65」、和光純薬社製)3.33部、メチルエチルケトン10部、およびシクロヘキサン556.7部を混合し、これを油相とした。
次いで、イオン交換水1300部に、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム(ノニオニックアニオン系界面活性剤、商品名「ラテムルE-118B」、花王社製)0.10部(油相100部に対して0.015部)を混合し、これを水相とした。
そして、水相と油相とを混合することにより、混合液を調製した。
調製した混合液を、インライン型乳化分散機(商品名「マイルダー」、大平洋機工社製)により、回転数15,000rpmの条件下で5分間攪拌して懸濁させ、シクロヘキサンを含むモノマー液滴が水中に分散した懸濁液を得た。
(重合工程)
懸濁工程にて得られた懸濁液を、65℃に昇温した後、65℃の温度条件を3時間維持し、重合反応を行った。この重合反応により、シクロヘキサンを内包した前駆体粒子を含む前駆体分散液を得た。得られた前駆体分散液について、重合時安定性を評価した。結果を表1に示す。
(除去工程)
まず、重合工程で得られた前駆体分散液につき、冷却高速遠心機(商品名「H-9R」、コクサン社製)により、ローターMN1、回転数3,000rpm、遠心分離時間20分間の条件で遠心分離を行い、固形分を脱水した(固液分離)。脱水後の固形分を乾燥機にて40℃の温度で乾燥させ、シクロヘキサンを内包した前駆体粒子を得た。
そして、得られた前駆体粒子を、真空乾燥機にて、気中で80℃、15時間加熱処理することで、中空粒子(1)を得た。得られた中空粒子(1)について、上記方法にしたがって、空隙率、粒子径、シェル厚、貫通孔の孔径、残留溶剤量、潰れ割合の測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られた中空粒子(1)は、走査型電子顕微鏡の観察結果から、これらの粒子が球状であり、かつ中空部を1つのみ有するものであることが確認された。中空粒子(1)を走査型電子顕微鏡により観察して得た画像を、図1に示す。また、中空粒子(1)の樹脂部を構成する単量体の割合は、仕込み量とほぼ同じであった(後述する実施例2,3、比較例1~5においても同様。)。
〔実施例2〕
メタクリル酸メチルの使用量を、0.5部から10部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を、94.5部から85部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空粒子(2)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
メタクリル酸の使用量を、5部から3部に、メタクリル酸メチルの使用量を、0.5部から17部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を、94.5部から80部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空粒子(3)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
メタクリル酸メチルの使用量を、0.5部から0.1部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を、94.5部から94.9部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空粒子(4)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
メタクリル酸メチルの使用量を、0.5部から25部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を、94.5部から70部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空粒子(5)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。また、中空粒子(5)を走査型電子顕微鏡により観察して得た画像を、図2に示す。
〔比較例3〕
(懸濁工程)
まず、メタクリル酸41部、エチレングリコールジメタクリレート59部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(油溶性重合開始剤、商品名「V-65」、和光純薬社製)3.33部、リノール酸3部、およびシクロヘキサン556.7部を混合し、これを油相とした。
次いで、イオン交換水1300部に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名「ネオペレックスG-15」、花王社製)8.25部(油相100部に対し1.25部)を混合し、これを水相とした。
そして、水相と油相とを混合することにより、混合液を調製した。
調製した混合液を、インライン型乳化分散機(商品名「マイルダー」、大平洋機工社製)により、回転数15,000rpmの条件下で5分間攪拌して懸濁させ、シクロヘキサンを含むモノマー液滴が水中に分散した懸濁液を得た。
(重合工程)
懸濁工程にて得られた懸濁液を、65℃に昇温した後、65℃の温度条件を3時間維持し、重合反応を行った。この重合反応により、シクロヘキサンを内包した前駆体粒子を含む前駆体分散液を得た。得られた前駆体分散液について、重合時安定性を評価した。結果を表1に示す。
(pH調整工程)
重合工程にて得られた、冷却後の前駆体分散液に、10%の水酸化ナトリウム水溶液を、反応容器中の混合物のpHが7.0となるまで反応容器に添加した。なお、水酸化ナトリウム水溶液の添加は、前駆体分散液をインライン型乳化分散機により攪拌しながら行った。
(除去工程)
塩基添加工程を経た前駆体分散液100部に対し、さらに消泡剤を0.1~0.5質量部の範囲内で添加し、窒素を流速6min/Lで吹きこみながら、70℃で6時間維持し、前駆体粒子からシクロヘキサンを除去することにより、中空粒子(6)を得た。そして、得られた中空粒子(6)について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
メタクリル酸メチルの使用量を、0.5部から36部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を、94.5部から59部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空粒子(7)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例5〕
メタクリル酸の使用量を、5部から26部に、メタクリル酸メチルの使用量を、0.5部から15部に、エチレングリコールジメタクリレートの使用量を、94.5部から59部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、中空粒子(8)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007501077000001
表1より、単量体、油溶性重合開始剤、および有機溶剤を含む油相を、水系媒体に懸濁させた状態で、単量体を重合する工程を経て、貫通孔を有する中空粒子を製造する際に、単量体として、親水性基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、および架橋性単量体を特定量含むものを用いる中空粒子の製造方法によって得られた中空粒子は、空隙率を87.9%と比較的高いものとし、個数平均粒子径を4μmと比較的大きいものとした場合でも、中空中の溶剤の残存量が効果的に低減され、溶剤の除去による粒子の潰れや割れの割合も低く、かつ、重合時の安定性に優れ、中空粒子を良好に製造することができるものであった(実施例1~3)。
一方、単量体として、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が少ないものを用いた場合は、実施例1~3と同様の空隙率および粒子径を有する中空粒子を製造しようとしても、重合時の安定性に劣るものであった(比較例1)。
また、単量体として、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が多いものを用いた場合は、貫通孔が適切に形成されず、有機溶剤(C)が多量に残存する結果となり、さらには、有機溶剤(C)を除去する際に、粒子の潰れが顕著に発生してしまい、良好な中空粒子を得ることができなかった(比較例2,4、図2)。
また、単量体として、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むものを使用せず、代わりに、リノール酸を用い、かつ、pH調整を行った場合には、貫通孔が形成されたものの、その孔径が小さく、有機溶剤(C)が、比較的多く残存する結果となり、さらには、有機溶剤(C)を除去する際に、粒子の潰れが多く発生してしまい、良好な中空粒子を得ることができなかった(比較例3)。
また、単量体として、親水性基含有単量体の含有量が多いものを用いた場合は、貫通孔が適切に形成されず、有機溶剤(C)が多量に残存する結果となり、さらには、有機溶剤(C)を除去する際に、粒子の潰れが顕著に発生してしまい、良好な中空粒子を得ることができなかった(比較例5)。

Claims (7)

  1. 貫通孔を有する中空粒子の製造方法であって、
    単量体(A)、油溶性重合開始剤(B)、有機溶剤(C)、懸濁安定剤(D)、および水系媒体(E)を含む混合液を懸濁させることにより、前記水系媒体(E)に、前記単量体(A)、前記油溶性重合開始剤(B)、および前記有機溶剤(C)を含む油相が分散した懸濁液を調製する懸濁工程と、
    前記懸濁液中の前記単量体(A)を重合することにより、前記有機溶剤(C)を内包するとともに、貫通孔を有する前駆体粒子を含む前駆体分散液を調製する重合工程と、
    前記前駆体分散液から前記有機溶剤(C)を除去することにより、貫通孔を有する中空粒子を得る除去工程と、を備え、
    前記単量体(A)として、モノビニル単量体0.8~40質量%、および架橋性単量体60~99.2質量%を含むものを用い、
    前記モノビニル単量体として、ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体と、ビニル基を1つ有するカルボン酸エステル単量体(ただし、前記ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体を除く)とを含むものを用い、
    前記単量体(A)中における、前記ビニル基を1つ有する親水性基含有単量体の使用量が、0.5~8.0質量%であり、前記ビニル基を1つ有するカルボン酸エステル単量体の使用量が、0.3~20質量%である中空粒子の製造方法。
  2. 前記有機溶剤(C)として、10℃における水100gに対する溶解度が1g/100g以下の疎水性溶剤と、10℃における水100gに対する溶解度が1g/100g超、100g/100g未満の親水性溶剤と、を含むものを用いる請求項1に記載の中空粒子の製造方法。
  3. 前記懸濁安定剤(D)として、ポリアルキレンオキサイド鎖を有するアニオン界面活性剤を含むものを用いる請求項1または2に記載の中空粒子の製造方法。
  4. 前記ポリアルキレンオキサイド鎖を有するアニオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いる請求項3に記載の中空粒子の製造方法。
  5. 前記単量体(A)が、前記親水性基含有単量体として、酸基含有単量体を含む請求項1~4のいずれかに記載の中空粒子の製造方法。
  6. 前記単量体(A)が、前記酸基含有単量体として、(メタ)アクリル酸単量体を含む請求項5に記載の中空粒子の製造方法。
  7. 前記中空粒子の個数平均粒子径が、1~14μmである請求項1~6のいずれかに記載の中空粒子の製造方法。
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