JP7496271B2 - 防曇性積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、防曇性積層体及びその製造方法に関する。
近年、プラスチック等の有機材料から形成される基材、又は、ガラス等の無機材料から形成される基材に対し、曇りにくい性質(防曇性)が求められる場合がある。
例えば、特許文献1には、防曇性を有する積層体(即ち、防曇性積層体)を製造するための方法として、基材に対し、(メタ)アクリル系モノマーを含む硬化性組成物を塗布して塗布物層を形成し、形成された塗布物層を硬化させて硬化物層に変換することにより、基材と硬化物層とを含む防曇性積層体を製造する方法が開示されている。
国際公開第2019/221268号
しかしながら、特許文献1に記載の防曇性積層体は、耐擦傷性の点で改善の余地があった。
上記事情に鑑み、本開示の一態様の目的は、耐擦傷性に優れる防曇性積層体及びその製造方法を提供することである。
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材上に、光硬化性組成物を塗布して塗布物層を形成する工程と、
前記塗布物層上に光透過性フィルムを配置する工程と、
前記塗布物層に対し、前記光透過性フィルムを介して光を照射することにより、前記塗布物層を硬化させて硬化物層を得る工程と、
を有する、防曇性積層体の製造方法。
<2> 前記光透過性フィルムを配置する工程は、前記光透過性フィルムと前記塗布物層との間に介在する気体を除去する工程を含む、<1>に記載の防曇性積層体の製造方法。
<3> 前記光透過性フィルムは、200nm~500nmの波長領域における平均透過率が40%以上である、<1>又は<2>に記載の防曇性積層体の製造方法。
<4> 前記光硬化性組成物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、界面活性剤と、を含有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の防曇性積層体の製造方法。
<5> 基材と、
前記基材上に配置された硬化物層と、
を備え、
前記硬化物層側から測定した微小押込み硬さが0.080GPa以上である、防曇性積層体。
本開示の一態様によれば、耐擦傷性に優れる防曇性積層体及びその製造方法が提供される。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物に含有される各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「光」は、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線を包含する概念である。
本開示において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味する。
〔防曇性積層体の製造方法〕
本開示の防曇性積層体の製造方法は、
基材上に、光硬化性組成物を塗布して塗布物層を形成する工程(以下、「塗布物層形成工程」ともいう)と、
塗布物層上に光透過性フィルムを配置する工程(以下、「光透過性フィルム配置工程」ともいう)と、
塗布物層に対し、光透過性フィルムを介して光を照射することにより、塗布物層を硬化させて硬化物層を得る工程(以下、「硬化工程」ともいう)と、
を有する。
本開示の防曇性積層体の製造方法は、必要に応じ、その他の工程を有していてもよい。
本開示の防曇性積層体の製造方法によれば、耐擦傷性に優れる防曇性積層体を製造できる。
かかる効果が奏される理由は、光硬化性組成物を用いて形成された塗布物層に対し、光透過性フィルムを介して光を照射して硬化させることにより、酸素による重合阻害が抑制され、その結果、基材上に、硬度(即ち、耐擦傷性)に優れた硬化物層が形成されるためと考えられる。形成された硬化物層が防曇性も有し、その結果、耐擦傷性に優れる防曇性積層体が製造されると考えられる。
以下、本開示の防曇性積層体の製造方法に含まれ得る各工程について説明する。
<塗布物層形成工程>
塗布物層形成工程は、基材上に、光硬化性組成物を塗布して塗布物層を形成する工程である。
(基材)
基材としては特に制限はない。
基材としては、例えば;
ガラス、シリカ、金属、金属酸化物等の無機材料からなる無機基材;
ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリアリルカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセチルセルロース(TAC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、紙、パルプ等の有機材料からなる有機基材;
不飽和ポリエステル樹脂と無機充填材(例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム等)とを複合した有機無機複合材料(例えば、SMC(Sheet Molding Compound)、BMC(Bulk Molding Compound))からなる有機無機複合基材;
等が挙げられる。
基材の形状にも特に制限はなく、板形状、レンズ形状等であってもよい。
本開示では、板形状の基材を「基板」ともいう。
基材としては、複数の部材が組み合わされてなる基材も挙げられる。
複数の部材が組み合わされてなる基材としては、例えば;
複数の基板が積層されてなる積層基板;
基板上に、被膜(例えば下塗り層)が設けられてなる被膜付き基板;
これらの両方を満足する基板(即ち、被膜付き積層基板);
等が挙げられる。
下塗り層としては、プライマー層、アンダーコート層、アンカーコート層、等が挙げられる。
下塗り層は、コート剤を用いて形成できる。
コート剤としては、例えば、樹脂を主成分とする公知のコート剤を用いることができる。
樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、
ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、等)、セルロース系樹脂、等が挙げられる。
下塗り層の厚さは、例えば0.5μm~10μmである。
基材の表面には、必要に応じ、活性化処理が施されていてもよい。
活性化処理としては、例えば、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等による酸化処理、火炎処理、等が挙げられる。
本開示の防曇性積層体の製造方法は、塗布物層形成工程の前に、更に、上述した基材(例えば、被膜付き積層基板等)を準備する基材準備工程を有していてもよい。
(光硬化性組成物)
光硬化性組成物としては、公知の光硬化性組成物を用いることができる。
光硬化性組成物は、
2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー(以下、「多官能モノマー(a1)」ともいう)と、
無機粒子(以下、「無機粒子(a2)」ともいう)と、
界面活性剤(以下、「界面活性剤(a3)」ともいう)と、
を含有することが好ましい。
好ましい態様の光硬化性組成物を用いて硬化物層を形成した場合には、硬化物層中に界面活性剤が貯蔵されつつ、この界面活性剤が硬化物層の表面に除々に滲出し、その結果、硬化物層の防曇性が発揮される。
-多官能モノマー(a1)-
光硬化性組成物は、多官能モノマー(a1)(即ち、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー)を少なくとも1種含有することが好ましい。
多官能モノマー(a1)は、光硬化性組成物に光が照射された際に重合し、硬化物層の基本骨格となるネットワーク構造を形成する。これにより、塗布物層が硬化し、硬化物層に変換される。得られた硬化物層中には、上記ネットワーク構造の隙間として、界面活性剤が貯蔵される空間が形成される。
多官能モノマー(a1)は、好ましくは、2以上の(メタ)アクリロイル基と、これら2以上の(メタ)アクリロイル基を一分子内に固定するリンカー部分と、からなる。
多官能モノマー(a1)は、好ましくは、(メタ)アクリル酸と、2以上の水酸基を有する多価アルコールと、のエステルである。
ここで、「2以上の水酸基を有する多価アルコール」としては、例えば;
アルカンジオール、アルカントリオールなどのアルカンポリオール;
ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、アルカンポリオールにポリアルキレングリコールを付加してなる化合物、等のポリオキシアルキレン構造を含む化合物;
等が挙げられる。
「2以上の水酸基を有する多価アルコール」は、芳香環及び/又は脂肪族環を含んでいてもよい。芳香族環を含む「2以上の水酸基を有する多価アルコール」の例としては、ビスフェノールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
「2以上の水酸基を有する多価アルコール」としては、ポリオキシアルキレン構造を含む化合物が好ましく、ポリオキシエチレン構造を含むジオールがより好ましい。
多官能モノマー(a1)の具体例として、下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
多官能モノマー(a1)は、下記式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
式(1)中、nは、1~30の整数を示す。
式(2)中、l及びmは、l+mが2~40の整数となる数を示す。
多官能モノマー(a1)の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、及び、2,2-ビス-[4-(アクリロキシ-ポリエトキシ)フェニル]-プロパンが挙げられる。
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリコサエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
光硬化性組成物に含有され得る多官能モノマー(a1)は、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
光硬化性組成物中における多官能モノマー(a1)の含有量は、光硬化性組成物の総乾燥質量に対し、好ましくは30質量%~70質量%、より好ましくは35質量%~60質量%である。
本開示において、組成物の「総乾燥質量」とは、組成物中における、溶媒以外の全成分の合計質量を意味する。
光硬化性組成物中における多官能モノマー(a1)の含有量は、光硬化性組成物の全量に対し、好ましくは10質量%~50質量%、より好ましくは15質量%~35質量%である。
-無機粒子(a2)-
光硬化性組成物は、無機粒子(a2)を少なくとも1種含有することが好ましい。
無機粒子(a2)は、硬化物層に、適度な硬度及び強度を与える役割を果たす。
無機粒子(a2)としては、無機物質を含む粒子が好ましく、実質的に無機物質からなる粒子がより好ましい。
無機物質としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、チタニアなどの金属酸化物、並びに、ナノダイヤモンド等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂への分散性、硬度、耐光性等の観点から、シリカ又はジルコニアが特に好ましい。
無機粒子(a2)の粒径としては、5nm~50nmが好ましく、10nm~30nmがより好ましい。
無機粒子(a2)の粒径が5nm以上である場合には、硬化膜の硬度、及び、硬化膜中における分散性の観点からみて有利である。
無機粒子(a2)の粒径が50nm以下である場合には、硬化膜の透明性の観点からみて有利である。
ここで無機粒子(a2)の粒径は、レーザー光による動的散乱法によって求めた値を意味する。
無機粒子(a2)は、無機物質又は無機粒子(a2)の物性に影響を与えない程度の微量の有機物質を含んでいてもよい。
例えば、無機粒子(a2)としては、(メタ)アクリロイル基を含む官能基によって修飾されている無機粒子(以下、無機粒子(a2-1)ともいう)であってもよい。
光硬化性組成物が無機粒子(a2-1)を含む場合、光硬化性組成物が硬化する際、無機粒子(a2-1)中の(メタ)アクリロイル基と、多官能モノマー(a1)中の(メタ)アクリロイル基と、が反応し得る。その結果、無機粒子(a2-1)と、多官能モノマー(a1)によって形成されるネットワーク構造と、が一体化される。これにより、硬化膜の耐擦傷性及び防曇性がより向上する。
無機粒子(a2-1)として、特に好ましくは、(メタ)アクリロイル基を含む官能基で修飾されたシリカ粒子、又は、(メタ)アクリロイル基を含む官能基で修飾されたジルコニア粒子である。
光硬化性組成物が無機粒子(a2-1)を含有する場合、光硬化性組成物に含有される無機粒子(a2)の全量中に占める無機粒子(a2-1)の割合は、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、更に好ましくは70質量%~100質量%である。
無機粒子(a2-1)は、市販品としても入手可能である。
(メタ)アクリロイル基を含む官能基で修飾されたシリカ粒子の市販品の例として、日産化学工業製オルガノシリカゾルPGM-AC-2140Y等が挙げられる。
光硬化性組成物に含有され得る無機粒子(a2)は、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
光硬化性組成物中における無機粒子(a2)の含有量は、光硬化性組成物の総乾燥質量に対し、好ましくは30質量%~70質量%、より好ましくは40質量%~60質量%である。
光硬化性組成物中における無機粒子(a2)の含有量は、光硬化性組成物の全量に対し、好ましくは10質量%~50質量%、より好ましくは20質量%~40質量%である。
光硬化性組成物中における、多官能モノマー(a1)に対する無機粒子(a2)の含有質量比(即ち、含有質量比〔無機粒子(a2)/多官能モノマー(a1)〕)は、好ましくは0.6~2.0であり、より好ましくは0.8~1.6であり、更に好ましくは1.0~1.4である。
-界面活性剤(a3)-
光硬化性組成物は、界面活性剤(a3)を少なくとも1種含有することが好ましい。
界面活性剤(a3)は、硬化膜に貯蔵されつつ、硬化膜の表面に除々に進出することにより、硬化膜に防曇性を付与する役割を果たす。
界面活性剤(a3)としては、このような役割を果たしうる限りにおいて、特に限定はないが、ポリオキシアルキレン構造を有することが好ましい。
界面活性剤(a3)がポリオキシアルキレン構造を有する場合、界面活性剤(a3)は、(メタ)アクリルポリマー構造を有さないことが好ましい。
即ち、界面活性剤(a3)は、下記式(AC1)で表される構造及び下記式(AC2)で表される構造のいずれも有さないことが好ましい:
式(AC1)及び式(AC2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2以上の整数を表す。
界面活性剤(a3)は、不飽和結合を含まないことも好ましい。
界面活性剤(a3)として、より具体的には、炭化水素基とポリオキシアルキレン構造とを含む界面活性剤が好ましい。
炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
ポリオキシアルキレン構造としては、オキシアルキレン基が繰り返された構造が挙げられる。オキシアルキレン基としては、-O-CHCH-、-O-CHCHCH-、又は-O-CHCHCHCH-が好ましく、-O-CHCH-がより好ましい。
界面活性剤(a3)中に含まれるオキシアルキレン基の数は、好ましくは1~30である。
界面活性剤(a3)は、更に、アニオン性親水基を含むことが好ましい。
アニオン性親水基の例として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、O-硫酸基(-O-SO )、およびN-硫酸基(-NH-SO )などが挙げられる。これらアニオン性親水基の中でも、リン酸基、O-硫酸基(-O-SO )が好ましい。
これらアニオン性親水基は、遊離酸の形態でも、塩の形態であってもよい。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、又は、アンモニウム塩が好ましい。
好適な界面活性剤(a3)の例として、下記式(SS1)で表される化合物が挙げられる。
式(SS1)中、Rは、炭素数10~20のアルキル基又は炭素数10~20のアルケニル基を表し、Lは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、nは、1~30の整数を表し、Xは、水酸基、スルホ基、ホスホノ基、カルボキシ基、リン酸基、O-硫酸基、N-硫酸基、スルホ基の塩、ホスホノ基の塩、カルボキシ基の塩、リン酸基の塩、O-硫酸基の塩、又は、N-硫酸基の塩を表す。
式(SS1)中、「-O-L-」の例としては、-O-CHCH-、-O-CHCHCH-、-O-CHCHCHCH-等が挙げられ、これらの中でも、-O-CHCH-が好ましい。
式(SS1)中、Xとしては、リン酸基、O-硫酸基、リン酸基の塩、又は、O-硫酸基の塩がより好ましい。
Xにおける「塩」としては、ナトリウム塩、カリウム塩、又は、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
界面活性剤(a3)のうち、アニオン性親水基を有する界面活性剤の例として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、及び、これらの混合物が挙げられる。
アニオン性親水基を有する界面活性剤の例として、より具体的には、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩が挙げられる。
界面活性剤(a3)は、ポリオキシアルキレン構造を有するノニオン系界面活性剤であってもよい。
ポリオキシアルキレン構造を有するノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、および、これらの混合物などが挙げられる。
ここで、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンドデシルエーテル(ポリオキシアルキレンラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルセチルエーテルが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)である。
界面活性剤(a3)としては、上述した界面活性剤以外にも、国際公開第2019/221268号の段落0062~段落0069に記載の界面活性剤を用いてもよい。
光硬化性組成物に含有され得る界面活性剤(a3)は、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
光硬化性組成物中における界面活性剤(a3)の含有量は、光硬化性組成物の総乾燥質量に対し、好ましくは1.0質量%~10質量%であり、より好ましくは2.0質量%~8.0質量%であり、更に好ましくは3.0質量%~7.0質量%である。
光硬化性組成物中における界面活性剤(a3)の含有量は、光硬化性組成物の全量に対し、好ましくは0.5質量%~6.0質量%であり、より好ましくは1.0質量%~5.0質量%である。
-光重合開始剤-
光硬化性組成物は、光重合開始剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
光重合開始剤として、好ましくは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤が使用可能である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、α-アシロキシムエステル系化合物、フェニルグリオキシレート系化合物、ベンジル系化合物、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、有機色素系化合物、鉄-フタロシアニン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、アントラキノン系化合物等が挙げられる。これらのうち、反応性等の観点から、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては市販品を用いることもできる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば;
Omnirad 127、同184、同1173、同500、同819、同TPO(以上、IGM resins B.V.社製);
エサキュアONE、同KIP100F、同KT37、同KTO46(以上、ランベルティー社製);
等が挙げられる。
光硬化性組成物に含有され得る光重合開始剤は、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
光硬化性組成物中における光重合開始剤の含有量は、光硬化性組成物の総乾燥質量に対し、好ましくは0.4質量%~10質量%であり、より好ましくは0.6質量%~6.0質量%であり、更に好ましくは1.0質量%~4.0質量%である。
光硬化性組成物中における界面活性剤(a3)の含有量は、光硬化性組成物の全量に対し、好ましくは0.2質量%~6.0質量%であり、より好ましくは0.4質量%~4.0質量%であり、更に好ましくは0.6質量%~3.0質量%である。
-溶媒-
光硬化性組成物は、溶媒を少なくとも1種含有することが好ましい。
溶媒として、例えば;
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチル-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-n-プロポキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール(別名:プロピレングリコールモノメチルエーテル)、1-エトキシ-2-プロパノール、1-n-プロポキシ-2-プロパノール、1-イソプロポキシ-2-プロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;
アセトニトリル等のニトリル類;
酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;
水;
等が挙げられる。
中でも、アルコール類、ケトン類、又は、アルコール類とケトン類の混合溶媒が好ましい。
光硬化性組成物中における溶媒の含有量は、光硬化性組成物の全量に対し、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは35質量%以上である。
光硬化性組成物の全量に対する溶媒の含有量の上限は、他の成分の量にもよるが、例えば80質量%であり、好ましくは70質量%であり、更に好ましくは60質量%である。
光硬化性組成物は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分については、国際公開第2019/221268号の段落0032~段落0163の記載を適宜参照できる。
(塗布方法等)
塗布物層形成工程では、基材上に、光硬化性組成物を塗布して塗布物層を形成する。
光硬化性組成物の塗布は、従来公知の方法により適宜行うことができる。
塗布方法の例として、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、流し塗り法、刷毛塗り法、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法などが挙げられる。
塗布物層形成工程では、基材上に、光硬化性組成物を塗布し、塗布された光硬化性組成物を乾燥(例えば加熱乾燥)させて塗布物層を形成してもよい。
<光透過性フィルム配置工程>
光透過性フィルム配置工程は、塗布物層上に光透過性フィルムを配置する工程である。
後述の硬化工程では、塗布物層に対し、光透過性フィルムを介して光を照射する。照射された光により、塗布物層が硬化して硬化物層が得られる。
本開示の防曇性積層体の製造方法では、塗布物層に対し光透過性フィルムを介して光を照射するので、塗布物層に対し光透過性フィルムを介さずに直接的に光を照射する場合と比較して、酸素によるラジカル重合阻害が抑制され、その結果、硬度に優れた硬化物層が得られる。
光透過性フィルムとしては、光透過性を有するフィルムであれば特に制限はない。
ここで、光透過性を有するとは、200nm~500nmの波長領域における平均透過率が10%以上である性質を意味する。
光透過性フィルムの200nm~500nmの波長領域における平均透過率は、好ましくは40%以上である。
光透過性フィルムの厚さは、好ましくは1μm~100μmであり、より好ましくは5μm~80μmであり、更に好ましくは10μm~60μmである。
光透過性フィルムとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリスチレン(PS)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ナイロンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-メタクリル酸共重合体フィルム、エチレン- ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、セロファン等が挙げられる。
光透過性フィルムとしては、PETフィルムが特に好ましい。
光透過性フィルム配置工程は、光透過性フィルムと塗布物層との間に介在する気体を除去する工程を含んでいてもよい。これにより、酸素によるラジカル重合阻害がより抑制され、その結果、硬度により優れた硬化物層が得られる。
光透過性フィルムと塗布物層との間に介在する気体を除去する方法としては公知の方法を適用できる。
上記方法としては、例えば、塗布物層上に光透過性フィルムを配置した状態で、基材及び光透過性フィルムの少なくとも一方の側に、ローラー等によって圧を加えながら、光透過性フィルムと塗布物層との間に介在する気体を除去する方法を適用できる。
<硬化工程>
硬化工程は、塗布物層に対し、光透過性フィルムを介して光を照射することにより、塗布物層を硬化させて硬化物層を得る工程である。
照射される光の波長範囲は、例えば0.0001nm~800nmの範囲である。
照射される光として、より具体的には、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線、可視光等が挙げられるが、紫外線が好ましい。
紫外線のピーク波長は、好ましくは200nm~450nm、より好ましくは230nm~445nm、さらに好ましくは240nm~430nm、更に好ましくは250nm~400nmである。
光の照射エネルギーは、好ましくは10mJ/cm~1000mJ/cmであり、より好ましくは50mJ/cm~500mJ/cmである。
<剥離工程>
本開示の防曇性積層体の製造方法は、硬化工程の後に、更に、硬化物層から光透過性フィルムを剥離する剥離工程を有していてもよい。
剥離工程により、硬化物層の表面が露出する。露出した硬化物層の表面において、防曇性及び耐擦傷性の硬化が発揮される。
本開示の防曇性積層体の製造方法は、剥離工程を有していなくてもよい。
この場合においても、本開示の防曇性積層体の製造方法により、光透過性フィルム付きの防曇性積層体を製造することができる。光透過性フィルム付きの防曇性積層体は、必要に応じ、使用直前に、光透過性フィルムを硬化物層から剥離して使用することができる。
〔防曇性積層体〕
本開示の防曇性積層体は、
基材と、
基材上に配置された硬化物層と、
を備え、
硬化物層側から測定した微小押込み硬さが0.080GPa以上である、防曇性積層体である。
本開示の防曇性積層体は、必要に応じ、その他の要素を備えていてもよい。
本開示の防曇性積層体は、好ましくは、前述した本開示の防曇性積層体の製造方法によって製造される。
硬化物層として、好ましくは、光硬化性組成物の塗布物層に対して光を照射して形成された層である。
<微小押し込み硬さ>
本開示の防曇性積層体は、硬化物層側から測定した微小押込み硬さが0.080GPa以上である。
このため、本開示の防曇性積層体は、耐擦傷性に優れる。また、本開示の防曇積層体は、防曇性(特に、蒸気に対する防曇性)にも優れる。
前述したとおり、光透過性フィルム配置工程及び硬化工程を含む本開示の防曇性積層体の製造方法によれば、硬度に優れた硬化物層を形成できるので、上記微小押込み硬さを有する防曇性積層体をより製造し易い。
また、上記製造方法に加え、例えば;
無機粒子の量を増やす;
硬化物の架橋性を向上させる(例えば、(メタ)アクリロイル基の数が多い多官能モノマーを用いる、1つの(メタ)アクリロイル基あたりの分子量を小さくする、等);
等の方法により、微小押し込み硬さの数値(GPa)が高くなるよう調整することができる。
微小押込み硬さが0.080GPa以上であることにより、耐擦傷性に優れ、さらに防曇性(特に、蒸気に対する防曇性)にも優れる理由は以下のとおりであると推測される。
微小押込み硬さが0.080GPa以上であることにより、硬化物層が密な構造となり、外部から衝撃を受けた際に、その構造を維持しやすくなり、耐擦傷性が向上する。さらに、密な構造となることで、その構造中の親水性基(例えば、界面活性剤に由来するもの)の徐放性が向上し、特に上記に対する防曇持続性が向上すると考えられる。
微小押込み硬さは、好ましくは0.080GPa~0.50GPaであり、より好ましくは0.080GPa~0.15GPaである。
本開示の防曇性積層体における微小押込み硬さが0.50GPa以下である場合には、割れに対する耐性及び初期防曇特性がより向上する。
本開示において、微小押し込み硬さは、ISO14577に準拠して行う。具体的には、以下のようにして測定する。
測定圧子としてバーコビッチ圧子を用い、最大荷重(Pmax):10mN、最大押込み深さ:1000nm、荷重速度800~12000μN/秒、荷重時間:1秒(最大荷重に達した後の荷重保持時間)、及び、クリープ時間:0.5秒の条件にて、防曇性積層体における硬化物層側から荷重を印加し、荷重変位曲線を得る。
得られた荷重変位曲線から、接触剛性(S)及び最大変異(hmax)を算出する。さらに、接触深さ(hc)を下記の数式(1)から算出し、接触投影面積(Ac)を下記の数式(2)から算出し、下記の数式(3)から微小押込み硬さ(H)を算出する。
微小押込み硬さの測定装置は、例えば、Bruker社製のHYSITRON TI PREMIERを用いることができる。
S:接触剛性
max:最大荷重
max:最大変異
:接触深さ
ε:圧子形状に関する定数(バーコビッチ圧子は0.75)
:接触投影面積
H:微小押込み硬さ
<基材>
本開示の防曇性積層体は、基材を備える。
基材の具体例及び好ましい態様は、「防曇性積層体の製造方法」の項を適宜参照できる。
<硬化物層>
硬化物層は、防曇性の観点から、好ましくは、樹脂、無機粒子、及び界面活性剤を含有する。
硬化物層に含有され得る無機粒子及び界面活性剤の好ましい態様は、それぞれ、防曇性積層体の製造方法」の項(無機粒子(a2)及び界面活性剤(a3)についての記載)を適宜参照できる。
硬化物層の全量に対する無機粒子の含有量の好ましい範囲は、光硬化性組成物の総乾燥質量に対する無機粒子(a2)の含有量の好ましい範囲と同様であり、
硬化物層の全量に対する界面活性剤の含有量の好ましい範囲は、光硬化性組成物の総乾燥質量に対する界面活性剤(a3)の含有量の好ましい範囲と同様である。
硬化物層に含有され得る樹脂は、好ましくはネットワーク構造を有する(メタ)アクリル樹脂であり、より好ましくは2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーである。
2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーの好ましい態様は、防曇性積層体の製造方法」の項(多官能モノマー(a1)についての記載)を適宜参照できる。
硬化物層の全量に対する樹脂の含有量の好ましい範囲は、光硬化性組成物の総乾燥質量に対する多官能モノマー(a1)の含有量の好ましい範囲と同様である。
(硬化物層の厚さ)
硬化物層の厚さは、好ましくは4μm以上であり、より好ましくは6μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。
硬化物層の厚さが4μm以上である場合には、防曇性積層体の防曇性及び防曇耐久性により優れる。この場合、例えば、防曇性積層体を水洗した後においても優れた防曇性が発揮される。
硬化物層の厚さの上限には特に制限はない。
硬化物層の製造し易さ(例えば塗工性)及び外観の観点から、硬化物層は、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは25μm以下である。
(水の接触角)
硬化物層の表面における水の接触角(1秒後)は、30°以下であることが好ましく、25°以下であることがより好ましく、23°以下であることが更に好ましい。
硬化物層の表面における水の接触角(1秒後)の下限には特に制限はないが、下限としては、5.0°、10.0°、15.0°等が挙げられる。
ここで、水の接触角(1秒後)とは、体積1.0μLの純水の水滴が硬化物層の表面に着滴してから1秒後の接触角を意味する。
硬化物層の表面における水の接触角(22秒後)は、14.0°以下であることが好ましく、13.5°以下であることがより好ましい。
硬化物層の表面における水の接触角(22秒後)の下限には特に制限はないが、下限としては、5.0°、10.0°等が挙げられる。
ここで、水の接触角(22秒後)とは、体積1.0μLの純水の水滴が硬化物層の表面に着滴してから22秒後の接触角を意味する。
<その他の要素>
本開示の防曇性積層体は、硬化物層上に、光透過性フィルムを備えていてもよい。
光透過性フィルムを備える態様の防曇性積層体は、例えば、硬化物層による防曇性の効果を得ようとする直前に、硬化物層から光透過性フィルムを剥離(除去)して使用される。
また、本開示の防曇性積層体は、基材からみて、硬化物層が配置されている側とは反対側に、粘着層を備えていてもよい。
粘着層を備える態様の防曇性積層体は、例えば、様々な対象物に貼り付けられ、対象物に対して防曇性を付与するために使用される
対象物としては特に制限なないが、例えば;
車両又は建物における外壁;
車両又は建物における窓ガラス;
浴室等の鏡;
パソコン用ディスプレイ、携帯電話用ディスプレイ、テレビ、等の表示素子の表面;
看板、広告、案内板等の情報板;
鉄道、道路等の標識;
等が挙げられる。
粘着層は、粘着剤を含む。
粘着剤としては特に制限はなく、公知の粘着剤を用いることができる。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテルポリマー系粘着剤、およびシリコーン粘着剤等が挙げられる。
粘着層の厚さは、好ましくは2μm~50μm、より好ましくは5~30μmである。
<用途>
本開示の防曇用積層体は、防曇材料、防汚材料、速乾燥性材料、結露防止材料、帯電防止材料等として好適に使用できる。
本開示の防曇用積層体は、例えば;
光学フィルム、光ディスク、光学レンズ、眼鏡レンズ、メガネ、サングラス、ゴーグル、ヘルメットシールド、ヘッドランプ、テールランプ、窓ガラス(例えば、車両や建物の窓ガラス等)、等の光学物品;
これら光学部品の材料;
等、種々の用途に適用することができる。
また、本開示の防曇用積層体は、例えば、近年、広く車両に搭載されるようになった、車載カメラによる画像認識システムにも適用できる。
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
〔実施例1〕
<光硬化性組成物の調製>
常温常圧環境下において、ガラス製スクリュー管瓶に、表1に記載の界面活性剤(a3)及び表1に記載の無機粒子(a2)を、表1に記載の含有質量となる量にてそれぞれ添加した。さらに、表1に記載の溶媒を添加し、マグネットスターラー及び撹拌子を用いて、上記界面活性剤が完全に溶解するまで撹拌した。
次に、撹拌後のガラス製スクリュー管瓶に、表1に記載の多官能モノマー(a1)を表1に記載の含有質量となる量にて添加し、相溶するまでよく撹拌した。そして、撹拌後のガラス製スクリュー管瓶に、表1に記載の光重合開始剤を表1に記載の含有質量となる量にて添加し、完全に溶解するまで撹拌し、液状の組成物である光硬化性組成物を得た。
<防曇性積層体の作製>
(基材の準備)
ポリカーボネート基板上にPETフィルム(東レ社製「ルミラー U483」)を貼り付けてなる積層基板を準備した。
上記積層基板におけるPETフィルム側の表面に、プライマー用組成物(タケラック(登録商標) WS-5100)をバーコーターによって塗布してプライマー層を形成し、プライマー層付き積層基板(層構成は、「プライマー層/PETフィルム/ポリカーボネート基板」)を得た。
(塗布物層形成工程)
基材としてのプライマー層付きの積層基板におけるプライマー層上に、上記光硬化性組成物をバーコーターによって塗布し、塗布物層を形成した(塗布物層形成工程)。
(光透過性フィルム配置工程)
塗布物層上に、光透過性フィルム(ポリエチレンテレフタレート、T-15(商品名)、厚さ37μm、200nm~500nmの平均透過率53.5%、三井化学東セロ株式会社製)を載せ、転圧ローラーを用い、光透過性フィルムと塗布物層との間に介在する気体を除去した。
(硬化工程)
次に、塗布物層に対し、光透過性フィルムを介して210mJ/cm-2の条件で紫外線(UVA)を照射することにより塗布物層を硬化させ、硬化物層に変換した。
次いで、硬化物層から光透過性フィルム(T-15)を剥離した。
以上により、基材(即ち、「プライマー層/PETフィルム/ポリカーボネート」で表される積層構造を有する基材)と、基材上に配置された硬化物層と、を備える防曇性積層体を得た。
防曇性積層体の積層構造は、「硬化物層/プライマー層/PETフィルム/ポリカーボネート基板」で表される積層構造である。
<評価>
上記防曇性積層体について、以下の評価を実施した。
結果を表1に示す。
(硬化物層の厚さ)
膜厚測定装置(ETA-ARC、OPTOTECH社製)を使用し、防曇性積層体における硬化物層の中央付近について分光反射率を測定し、得られた分光反射率から、フーリエ変換法により硬化物層の膜厚を算出した。
(防曇性積層体の耐擦傷性)
スチールウール#0000番を使用し、このスチールウールの上に防曇性積層体を、硬化物層がスチールウールに接触する配置で載せ、さらにこの防曇性積層体の真上に300g又は1kgの重りを載せて荷重を掛けた。この状態で、この防曇性積層体をスチールウール上で10回往復運動させた。この往復運動は、No.428 学振形摩耗試験機(摩擦試験機II形)(株式会社安田精機製作所製)を用いて行った。
上記往復運動後の防曇性積層体について、傷の有無、傷の状態(傷の深さ、数、等)、及び硬化物層の残り具合を目視で確認し、下記評価基準に基づき、防曇性積層体の耐擦傷性を評価した。
下記評価基準において、耐擦傷性に最も優れるランクは、ランク5である。
また、後述の表1において、「2.5」のように小数で表されているランクは、ランク2とランク3との間の評価を表す。
-防曇性積層体の耐擦傷性の評価基準-
5:硬化物層の表面に、視認できる傷がほとんど無い状態であり、かつ、硬化物層が全面的に残っている状態。
4:硬化物層の表面に、薄い傷が数本から十本入った状態であり、かつ、硬化物層が全面的に残っている状態。
3:硬化物層の表面に、太い傷が数本から十本入った状態であり、かつ、硬化物層が全面的に残っている状態。
2:硬化物層の表面において、スチールウールの幅全体に対応する領域に、深い傷が入っているが、硬化物層が一部残っている状態。
1:硬化物層の表面において、スチールウールの幅全体に対応する領域に、深い傷が入り、かつ、硬化物層が全面的に剥がれている状態。
(防曇性)
(呼気防曇性)
防曇性積層体の硬化物層に対し、呼気の吹きかけを数秒間行い、この際に、硬化物層の表面における曇りの有無を目視にて確認した。
観察した結果に基づき、下記評価基準に従い、呼気防曇性を評価した。
下記評価基準において、Aであれば、呼気防曇性に優れる。
-呼気防曇性の評価基準-
A:呼気の吹きかけを数秒間行った際、硬化物層の表面に曇りが生じなかった。
B:呼気の吹きかけを数秒間行った際、硬化物層の表面に曇りが生じた。
(50℃蒸気防曇性)
ビーカー内に純水を入れ、この純水を50℃に加温した。
ビーカー内の純水の温度が50℃に達した後、上記ビーカー上部に防曇性積層体を、硬化物層が水蒸気に接触する配置で載せ、この状態で1時間保持した。1時間の保持中、防曇性積層体を目視で観察して曇りの有無を確認し、下記評価基準に従い、50℃蒸気防曇性を評価した。
下記評価基準において、50℃蒸気防曇性に最も優れるランクは、Aである。
-50℃蒸気防曇性の評価基準-
A:1時間の保持の完了時点において、硬化物層の表面の曇りが生じていなかった。
B:1時間の保持の完了時点において、硬化物層の表面に曇りが生じていたが、0.5時間の保持の完了時点では、硬化物層の表面に曇りが生じていなかった。
C:0.5時間の保持の完了時点において、硬化物層の表面に曇りが生じていた。
(接触角)
接触角計(自動接触角計 CA-V型, 協和界面科学株式会社製)を用い、積層体の硬化物層の表面における純水の接触角を測定した。測定は、1サンプルについて3箇所行い、これらの値の平均値を接触角の値とした。
接触角としては、体積1.0μLの純水の水滴が着滴してから1秒後の接触角と、体積1.0μLの純水の水滴が着滴してから22秒後の接触角と、をそれぞれ測定した。接触角の値が小さい程、防曇性に優れている。
<微小押込み硬さ>
実施例1の光硬化性組成物について、後述の測定装置に取り付けるためにポリカーボネートでなく磁性ステンレス基板を用いた点以外は、前述の<防曇性積層体の作製>に記載された方法と同様の方法により、基材(即ち、「プライマー層/PETフィルム/磁性ステンレス基板」で表される積層構造を有する基材)と、基材上に配置された硬化物層と、を備える防曇性積層体を得た。
防曇性積層体の積層構造は、「硬化物層/プライマー層/PETフィルム/磁性ステンレス基板」で表される積層構造である。
得られた防曇性積層体について、前述の方法により微小押込み硬さの測定を行った。
測定装置はBruker社製、HYSITRON TI PREMIERを用い、測定圧子はバーコピッチャー圧子を用いた。
〔比較例1〕
光透過性フィルム配置工程を設けず、塗布物層に対して直接紫外線(UVA)を照射して硬化物層を形成したこと以外は実施例1と同様にして防曇性積層体を作製した。
得られた防曇性積層体について、実施例1と同様にして耐擦傷性の評価を実施した。
比較例1では、耐擦傷性が極めて悪かったため、防曇性の各評価及び微小押込み硬さの測定は省略した。
結果を表1に示す。
〔比較例2〕
光硬化性組成物の組成を表1に示すように変更したこと、
プライマー層を形成しなかったこと、
光硬化性組成物の塗布方法を下記条件のスピンコート法に変更したこと、及び、
光透過性フィルム配置工程を実施せず、塗布物層に対して直接紫外線(UVA)を照射して硬化物層を形成したこと
以外は実施例1と同様にして防曇性積層体を作製した。
得られた防曇性積層体について、実施例1と同様の評価を実施した。
なお、微小押込み硬さの測定に用いた防曇積層体において、ポリカーボネート基板の代わりに磁性ステンレス基板を用いた点も実施例1と同様である。
結果を表1に示す。
-スピンコート法の条件(比較例2)-
基材としての積層基板(即ち、PETフィルム/ポリカーボネート基板)を回転速度500rpm(revolutions per minute)にて10秒間回転させる間に、上記積層基板におけるPETフィルム側の表面に光硬化性組成物を滴下し、次いで、積層基板の回転速度を1000rpmに上げて10秒間回転させることにより光硬化性組成物を塗り広げ、塗布物層を形成した。
表1中、「組成物中の質量%」は、光硬化性組成物の全量に対する該当成分の含有量(質量%)を意味し、「乾燥質量%」とは、光硬化性組成物の総乾燥質量(即ち、溶媒以外の成分の総質量)に対する該当成分の含有量(質量%)を意味する。
表1における「-」は、該当する成分を含有しないことを意味する。
表1中、無機粒子(a2)の量につき「固形分量」とあるのは、無機粒子(a2)が対応するゾルの形態で用いられる場合において、そのゾルの質量のうちの含有溶媒以外の成分の質量を表す。
表1に記載の用語についての詳細は以下の通りである。
-多官能モノマー(a1)-
A-600 … ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(新中村化学工業製)。
-無機粒子(a2)-
PGM-AC-2140Y … オルガノシリカゾル(プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾルの表面改質グレード:シリカ粒子含有率42質量%;粒子径10~15nm;日産化学工業製)
-界面活性剤(a3)-
ノイゲンLP-100 … ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(第一工業製薬社製)。
-光重合開始剤-
Omnirad 127 … (2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン;IGM resins B.V.社製)
-溶媒-
DEGDME … ジエチレングリコールジメチルエーテル
PGME … プロピレングリコールモノメチルエーテル
表1に示すように、光透過性フィルム配置工程を実施した実施例1では、防曇性を有し、かつ、耐擦傷性に優れた防曇性積層体を製造することができた。
これに対し、光透過性フィルム配置工程を実施しなかった比較例1及び2では、防曇性積層体の耐擦傷性が低下した。

Claims (3)

  1. 基材上に、光硬化性組成物を塗布して塗布物層を形成する工程と、
    前記塗布物層上に光透過性フィルムを配置する工程と、
    前記塗布物層に対し、前記光透過性フィルムを介して光を照射することにより、前記塗布物層を硬化させて硬化物層を得る工程と、
    を有
    前記光硬化性組成物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、界面活性剤と、を含有し、
    前記界面活性剤が、下記式(SS1)で表される化合物を含む、防曇性積層体の製造方法。



    式(SS1)中、Rは、炭素数10~20のアルキル基を表し、Lは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、nは、1~30の整数を表し、Xは、水酸基、スルホ基、ホスホノ基、カルボキシ基、リン酸基、O-硫酸基、N-硫酸基、スルホ基の塩、ホスホノ基の塩、カルボキシ基の塩、リン酸基の塩、O-硫酸基の塩、又は、N-硫酸基の塩を表す。
  2. 前記光透過性フィルムを配置する工程は、前記光透過性フィルムと前記塗布物層との間に介在する気体を除去する工程を含む、請求項1に記載の防曇性積層体の製造方法。
  3. 前記光透過性フィルムは、200nm~500nmの波長領域における平均透過率が40%以上である、請求項1又は請求項2に記載の防曇性積層体の製造方法。
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