以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
[第1の実施形態]
先ず、本実施形態で用いる画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」と称する)について、図1の模式図を用いて説明する。プリンタ10は、その筐体内に記録ヘッド100を備える。記録ヘッド100は、いわゆるフルラインタイプの記録ヘッドであり、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インク色に対応した4つのノズル列101~104を有する。各ノズル列にはインクを吐出するノズルが、一定の間隔でX方向(ノズルの並び方向)に配列されている。以下の説明において、各ノズル列のノズル解像度は1200dpiとする。例えば、X方向におけるノズル列の長さが10インチである場合は、約12000個のノズルがX方向に並んでいることになる。このとき、Y方向(X方向と直交する方向で、印刷時における用紙の搬送方向)におけるノズル位置は、同一である必要はなく、互い違いにずれていてもよい。なお、各ノズル列はそれぞれ別々な記録ヘッドとして用意され、Y方向に並行して配置する構成であってもよい。
記録媒体としての用紙106は、搬送ローラ105(及び他の不図示のローラ)がモータ(不図示)の駆動力によって回転することにより、Y方向に搬送される。そして、用紙106が搬送される間に、ノズル列101~104それぞれの各ノズルが記録用データに応じてインクを吐出することで、用紙106の紙面上に画像が形成される。以下の説明において、Y方向の記録解像度は1200dpiとする。
また、Y方向において記録ヘッド100よりも下流の位置には、インラインセンサ107が備えられている。インラインセンサ107は、X方向に一定の間隔で配列した光学読取素子によって、用紙106(印刷済み)上の画像の色を光学的に読み取り、該読み取った色をRGB色空間で表現した読取画像を出力する。以下の説明において、光学読取素子の解像度を1200dpi、用紙搬送方向の読取解像度を1200dpiとする。
次に、このようなプリンタ10を含む画像形成システムのハードウェア構成例について、図2のブロック図を用いて説明する。図2に示す如く、本実施形態に係る画像形成システムは、上記のプリンタ10と、該プリンタ10における各ノズルの記録特性を取得する画像処理装置の一例であるホストPC(パーソナルコンピュータ)20と、を有する。
先ず、ホストPC20について説明する。
CPU201は、RAM202に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて各種の処理を実行する。これによりCPU201は、ホストPC20全体の動作制御を行うとともに、ホストPC20が行うものとして説明する各処理を実行もしくは制御する。
RAM202は、HDD(ハードディスクドライブ)203からロードされたコンピュータプログラムやデータ、データ転送I/F204を介してプリンタ10から受信したデータ、等を格納するためのエリアを有する。さらにRAM202は、CPU201が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアを有する。このようにRAM202は、各種のエリアを適宜提供することができる。
HDD203には、OS(オペレーティングシステム)や、ホストPC20が行うものとして説明する各種の処理をCPU201に実行もしくは制御させるためのコンピュープログラムやデータが保存されている。HDD203に保存されているコンピュータプログラムやデータは、CPU201による制御に従って適宜RAM202にロードされ、CPU201による処理対象となる。
データ転送I/F204は、プリンタ10との間のデータ通信を行うための通信インターフェースである。このデータ通信の接続方式としては、例えば、USBやLANが用いられる。
キーボード・マウスI/F205は、キーボードやマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するためのインターフェースである。ディスプレイI/F206は、液晶モニタやタッチパネル画面等のディスプレイ(不図示)の表示を制御するためのインターフェースである。
次に、プリンタ10について説明する。CPU211は、RAM212やROM213に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて各種の処理を実行する。これによりCPU211は、プリンタ10全体の動作制御を行うとともに、プリンタ10が行うものとして説明する各処理を実行もしくは制御する。
RAM212は、ROM213からロードされたコンピュータプログラムやデータ、データ転送I/F214を介してホストPC20から受信したデータ、を格納するためのエリアを有する。さらにRAM212は、センサコントローラ217による制御に従ってインラインセンサ107から出力されたデータを格納するためのエリアを有する。さらにRAM212は、CPU211が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアを有する。このようにRAM212は、各種のエリアを適宜提供することができる。
ROM213には、プリンタ10の設定データ、プリンタ10の起動に係るコンピュータプログラムやデータ、プリンタ10の基本動作に係るコンピュータプログラムやデータ、等が格納されている。
データ転送I/F214は、ホストPC20との間のデータ通信を行うための通信インターフェースである。ヘッドコントローラ215は、RAM212に格納された、例えば二値に量子化されたハーフトーン画像に基づいて、記録ヘッド100の各ノズル列におけるインク吐出動作を制御する。
プリント処理回路216は、画像処理に特化したデジタル回路で、色変換、色分解、HS、ガンマ補正、量子化といったプリント関連の画像処理を実行する。センサコントローラ217は、インラインセンサ107の個々の光学読取素子を制御する。
なお、本実施形態では、プリントやHS処理に必要となる各種パラメータやテストパターンを作成する処理はホストPC20側で行い、色変換処理や量子化処理を含むプリント時に実行する処理はプリンタ10側のプリント処理回路216にて行うものとする。ただし、プリント関連の画像処理の全部または一部をホストPC20側で行ってもよいし、あるいはプリンタ10のCPU211で実行しても構わない。このように、処理の主体については特定の形態に限らない。
次に、プリンタ10が有するプリント処理回路216の機能構成例について、図3のブロック図を用いて説明する。図3に示した各機能部はハードウェアで実装されているものとして説明するが、一部をソフトウェアにて実装し、該ソフトウェアをCPU211等が実行することで対応する機能部の機能を実現させてもよい。
色変換部301はホストPC20から入力された印刷対象の「RGB色空間で表現された画像(入力RGB画像)」を、三次元ルックアップテーブル(3D-LUT)を用いて「プリンタ10の色再現域に対応したRGB画像」(色変換後のRGB画像)に変換する。
なお、プリント処理回路216で扱われる画像の解像度は全て、前述のノズル解像度1200dpi及び用紙搬送方向の記録解像度1200dpiに対応する1200×1200dpiであるものとする。また、入力RGB画像や色変換後のRGB画像を含め、以降、プリント処理回路216で扱われる画像の各色成分のビット深度は、量子化部305が出力するハーフトーン画像を除き、全て16ビットであるものとする。
色分解部302は、「色変換後のRGB画像」を、3D-LUTを用いて「プリンタ10で使用される各インク色に対応したインク値画像」に変換する。プリンタ10が、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクを使用する場合、色分解部302は、「色変換後のRGB画像」を、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4チャンネルからなるインク値画像に変換する。
HS部303は、色分解部302が出力する色版毎のインク値画像に対して、各ノズルの記録特性に応じたHS処理を行う。HS部303におけるHS処理の詳細については後述する。
ガンマ補正部304は、HS部303によりHS処理が施された色版毎のインク値画像に対し、一次元ルックアップテーブル(1D-LUT)を用いて、紙面上に形成されることになるドットの数を調整する。具体的には、ガンマ補正部304は、各ノズルが吐出するインク滴によって形成されるドットの数と、該数のドットによって実現される輝度と、の関係が略線形になるように、HS処理後のインク値画像の画素値を変更する。これによりガンマ補正部304は、色版毎にガンマ補正後のインク値画像を生成することができる。
量子化部305は、ガンマ補正部304による色版毎のガンマ補正後のインク値画像に対し、ディザ法や誤差拡散法といった公知の量子化処理を適用して、ドットのオンまたはオフを二値で表したハーフトーン画像を生成する。そして量子化部305は、このハーフトーン画像をRAM212に格納する。RAM212に格納されたハーフトーン画像はヘッドコントローラ215によって読み出され、ヘッドコントローラ215は、該読みだしたハーフトーン画像に基づいて、記録ヘッド100の各ノズル列におけるインク吐出動作を制御する。
なお、各ノズルが吐出するインク滴のサイズ(ドットサイズ)を制御可能なプリンタの場合は、ドットサイズの種類に対応した階調数(ビット深度)に量子化する処理を行ってハーフトーン画像を生成すればよい。この場合、ヘッドコントローラ215は、4値や16値といった多値のハーフトーン画像に基づいて各ノズルのインク吐出動作を制御することになる。
次に、HS処理のためにホストPC20およびプリンタ10が行う処理について、図4のフローチャートに従って説明する。ステップS401では、色変換部301は、ホストPC20から入力された入力RGB画像を3D-LUTを用いて変換する。色分解部302は、色変換部301によって変換されたRGB画像を3D-LUTを用いて色版毎のインク値画像に変換し、該色版毎のインク値画像をHS部303に対して出力する。そしてHS部303は、色分解部302が出力した色版毎のインク値画像を入力画像として取得する。
ステップS402では、インラインセンサ107が「記録ヘッド100によってテストパターンが印刷された印刷物」を読み取ることで得られる読取画像から、記録ヘッド100における各ノズルの測定曲線(記録特性)を取得する。ステップS402における処理の詳細については後述する。
ここで、測定曲線について、図5(a)を用いて説明する。図5のグラフにおいて横軸は入力画素値を示しており、縦軸は読取画像の画素値を示している。点線501は入力画素値の上限値を示している。曲線502は、読取画像において着目ノズルにより記録された部分の画素値および補間処理によって得られた測定曲線である。本実施形態では、補間処理には、区分線形補間を用いるが、補間処理にはスプライン曲線を用いた補間処理等の様々な補間処理があり、どのような補間処理を適用しても構わない。例えば、吐出量がより大きいノズルでは、測定曲線はより下方向(暗い方向)にシフトする。
ステップS403では、HS部303は、入力画像においてこれから補正する画素(注目画素)に対応するノズルの測定曲線に対応する目標特性を取得する。図5(a)には、曲線502に対応する目標特性504を示している。本実施形態では、図5(a)に示すように、階調に対して線形となる測定値を目標特性とする。
ステップS404では、HS部303は、注目画素に対応するノズルの測定曲線と、ステップS403で取得した目標特性と、を用いて、注目画素の補正後の画素値(補正後入力値)を取得する。ここで、図5(b)を用いて、補正後入力値の取得方法について説明する。図5(b)において、注目画素の画素値505に対応する目標特性504の値を目標値506として取得し、該目標値506に対応する曲線502の値(階調値)507を「注目画素の補正後入力値」として取得する。そして注目画素の画素値を補正後入力値に置き換える。入力画像における各画素を注目画素としてステップS403およびステップS404の処理を行うことで、該入力画像に対するHS処理を実施することができる。
次に、上記のステップS402における処理の詳細について、図6のフローチャートに従って説明する。ステップS601では、ホストPC20のCPU201はテストパターンを取得する。テストパターンの取得方法は特定の取得方法に限らない。例えばCPU201は、ユーザがキーボードやマウスを用いて作成したテストパターンを取得してもよいし、外部装置から送信されたテストパターンを受信することで取得してもよいし、HDD203に予め保存されているテストパターンを取得してもよい。テストパターンはインク値画像を示す多値のテストパターンである。テストパターンの詳細については後述する。
ステップS602では、CPU201は、ステップS601で取得した多値のテストパターンを二値化して二値テストパターンを生成する。そしてCPU201は、該二値テストパターンと、該二値テストパターンを単一のインク色のみで印刷させるための印刷設定と、を含む印刷指示をプリンタ10に出力する。
この印刷指示を受けたプリンタ10におけるプリント処理回路216では、色変換部301、色分解部302、HS部303の各処理をスキップし、ホストPC20から受けた印刷指示に含まれる二値テストパターンをガンマ補正部304に入力する。そして該二値テストパターンに対するガンマ補正部304および量子化部305による処理によって得られるハーフトーン画像が記録ヘッド100において単一色のインクに対応するノズル列によって用紙上に印刷される。以下では、単一色のインクに対応するノズル列が「ノズル列(ブラック)101」であるケースを例にとり説明する。この印刷により、テストパターンが印刷された印刷物が得られる。
ステップS603では、インラインセンサ107は、該印刷物を読み取って該印刷物の読取画像を生成する。CPU211は、読取画像をRGBの3チャンネルで取得した後、インラインセンサ107の色特性に合わせて、事前に用意された色変換テーブルにより1チャンネルの読取画像に変換する。本実施形態では、CIEXYZ色空間のYに対して線形な16bit値に変換する色変換テーブルを用いる。なお、読取画像の色空間は任意であり、CIELab*のL*や、濃度でもよい。また、テストパターンがC、M、Y等のカラーインクで記録されている場合には、明るさに相当する値ではなく彩度に相当する値を用いることもできる。例えば、C、M、Yそれぞれの補色に対応する値として、R、G、Bチャンネルの値を用いてもよい。
ステップS604では、HS部303は、ステップS603で得られた読取画像に含まれている複数の階調パッチのうち未選択の階調パッチを1つ注目階調パッチとして選択する。本実施形態では、最も明るい階調パッチから順に選択するものとするが、選択順は特定の順番に限らない。
ステップS605では、HS部303は、注目階調パッチの上端領域(一方側の端部領域)に埋め込まれた位置合わせ用の基準マーク群および注目階調パッチの下端領域(他方側の端部領域)に埋め込まれた位置合わせ用の基準マーク群を検出する。階調パッチ内の基準マークについては後述するが、例えば、基準マークが、図9に示すような、計16個の個々のノズルに対応するライン状のマーク(Y方向に沿うライン)であるとする。この場合には、基準マーク毎に、基準マークを含むように注目領域(901をはじめとする点線で囲った領域)を割り当て、各注目領域内において、基準マークの重心位置を算出することで基準マークの位置を検出する。
ステップS606では、HS部303は、注目階調パッチの上端領域に埋め込まれた基準マーク群と、注目階調パッチの下端領域に埋め込まれた基準マーク群と、で対応する基準マークのペアごとに、該ペアにおける一方の基準マークの位置と該ペアにおける他方の基準マークの位置と、を通るラインを設定する。各ペアのラインの上端は注目階調パッチの上端であり、下端は注目階調パッチの下端である。つまり、注目ペアについて注目階調パッチ内のラインを設定することは、該注目ペアに対応するノズルの該注目階調パッチ内における記録位置を特定することである。
そしてHS部303は、ペアごとに、該ペアのライン上の画素の画素値の平均値(平均画素値)を求める。ノズル列101において左端(一端)のノズルから順にノズル1、ノズル2、ノズル3、…と称する場合、左端のペアのラインは、ノズル1が記録したドット列、左端から2番目のペアのラインは、ノズル2が記録したドット列、左端からN(Nは3以上の整数)のペアのラインは、ノズルNが記録したドット列、ということになる。つまり、注目ペアについて求めた平均画素値は、該注目ペアに対応するノズルに対応する平均画素値でもある。
ステップS607では、HS部303は、読取画像に含まれている全ての階調パッチを注目階調パッチとして選択したか否かを判断する。この判断の結果、読取画像に含まれている全ての階調パッチを注目階調パッチとして選択した場合には、処理はステップS608に進む。一方。読取画像に含まれている階調パッチのうち未だ注目階調パッチとして選択していない階調パッチが残っている場合には、処理はステップS604に進む。
ステップS608では、HS部303は、ノズルごとに測定曲線を求める。以下に、注目ノズルの測定曲線を求める方法について説明する。読取画像に含まれているそれぞれの階調パッチを階調パッチ1、階調パッチ2、…、階調パッチN(Nは2以上の整数)と称する。この場合、図5(a)の座標系における座標位置(階調パッチ1の背景の画素値、階調パッチ1で注目ノズルについて求めた平均画素値)、座標位置(階調パッチ2の背景の画素値、階調パッチ2で注目ノズルについて求めた平均画素値)、…、座標位置(階調パッチNの背景の画素値、階調パッチNで注目ノズルについて求めた平均画素値)、…を通る曲線を「注目ノズルの測定曲線」として求める。この曲線を求める際に、上記の補間技術を用いる。
次に、本実施形態に係るテストパターン(ステップS601で取得する、インク値画像を示す多値のテストパターン)について説明する。テストパターンの一例を図7に示す。ここでは、説明を簡単にするため、ノズル数256の記録ヘッドにおいて、ブラックインク用の4階調分のテストパターンについて説明する。テストパターンの階調数は、4階調に限らず、所定のテスト用紙内のサイズを考慮し、例えば、9、17、33等の任意の階調数とすることができる。また、ノズル数についても、記録ヘッドのノズル数に応じて、X方向のテストパターンのサイズを決めればよい。
図7に示す如く、テストパターンには階調パッチ701~704がY方向(用紙の搬送方向)に並んでいる。階調パッチ701は最も明るい階調の階調パッチ、階調パッチ702は2番目に明るい階調の階調パッチ、階調パッチ703は3番目に明るい階調の階調パッチ、階調パッチ704は4番目に明るい階調の階調パッチ、である。階調パッチ701~704は何れも、階調値が均一な領域を背景領域とし、該背景領域の上端領域および下端領域に位置合わせ用の基準マークが重畳されている。
階調パッチ701は、均一の階調値Aを有する背景の領域701bと、階調値Aを有する背景に位置合わせ用の基準マークを重畳させた基準マーク領域701a、701cと、を有する。基準マーク領域701aは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ701の上端に設けられている。基準マーク領域701cは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ701の下端に設けられている。
階調パッチ702は、均一の階調値B(階調値Aよりも暗い階調値)を有する背景の領域702bと、階調値Bを有する背景に位置合わせ用の基準マークを重畳させた基準マーク領域702a、702cと、を有する。基準マーク領域702aは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ702の上端に設けられている。基準マーク領域702cは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ702の下端に設けられている。
階調パッチ703は、均一の階調値C(階調値Bよりも暗い階調値)を有する背景の領域703bと、階調値Cを有する背景に位置合わせ用の基準マークを重畳させた基準マーク領域703a、703cと、を有する。基準マーク領域703aは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ703の上端に設けられている。基準マーク領域703cは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ703の下端に設けられている。
階調パッチ704は、均一の階調値D(階調値Cよりも暗い階調値)を有する背景の領域704bと、階調値Cを有する背景に位置合わせ用の基準マークを重畳させた基準マーク領域704a、704cと、を有する。基準マーク領域704aは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ704の上端に設けられている。基準マーク領域704cは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ704の下端に設けられている。
従来のHS処理では、領域701b、702b、703b、704bのような階調値が均一な領域のみから各ノズルの記録特性を取得していた。一方、本実施形態では、階調値が均一な領域に加えて基準マーク領域も含めた、階調パッチ内の全領域を用いてHS処理を行う。つまり、本実施形態では、階調パッチ701、702、703、704のそれぞれの全領域を使ってHS処理を行う。基準マーク領域を含めても各ノズルの記録特性、すなわちスジムラを取得できる理由については後述する。
なお、インラインセンサの読み取り時に、テストパターンの周辺部では、読み取り値(階調値)が明るくなる、いわゆる、白かぶりの影響を受ける場合もある。そのような場合には、白かぶりの影響を受ける範囲のノズルについては、HS処理を適用しなくてよい。あるいは、記録ヘッドが通常使用するノズル列の両端外部に予備のノズルを有する場合は、それらのノズルを用いて、通常使用するノズル列のHS処理に影響がでないように、テストパターンの周辺部に、白かぶりの影響を緩和するパターンを設けてもよい。
次に、階調パッチにおける基準マーク領域について、図8を用いて説明する。先ず、図7の階調パッチ701における基準マーク領域701a、701cについて、図8(a)を用いて説明する。
基準マーク領域701aにおいて、ライン701a-0~701a-3はそれぞれ、ノズル列において左端のノズル、左端から2番目のノズル、左端から3番目のノズル、左端から4番目のノズルに対応する基準マークである。このように、基準マーク領域701aには、X方向に256個分の各ノズルにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
基準マーク領域701cにおいて、ライン701c-0~701c-3はそれぞれ、ノズル列において左端のノズル、左端から2番目のノズル、左端から3番目のノズル、左端から4番目のノズルに対応する基準マークである。このように、基準マーク領域701cには、X方向に256個分の各ノズルにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
よって、ライン701a-0とライン701c-0とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ701の上端および下端)は、ノズル列において左端のノズルに対応するラインとなる。
ライン701a-1とライン701c-1とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ701の上端および下端)は、ノズル列において左端から2番目のノズルに対応するラインとなる。
ライン701a-2とライン701c-2とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ701の上端および下端)は、ノズル列において左端から3番目のノズルに対応するラインとなる。
ライン701a-3とライン701c-3とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ701の上端および下端)は、ノズル列において左端から4番目のノズルに対応するラインとなる。
ここで、階調パッチ701において、基準マーク(黒線)以外の背景(701back)の画素値は、全て、同一の階調値である。また、基準マーク領域701aと基準マーク領域701cの基準マーク(ライン)の画素値(黒)と、背景の画素値(グレイ)は、位置合わせ用の基準マークが識別できるようにするため、階調値のコントラストが大きくなっている。
次に、図7の階調パッチ704における基準マーク領域704a、704cについて、図8(b)を用いて説明する。基準マーク領域704aにおいて、ライン704a-0~704a-3はそれぞれ、ノズル列において左端のノズル、左端から2番目のノズル、左端から3番目のノズル、左端から4番目のノズルに対応する基準マークである。このように、基準マーク領域704aには、X方向に256個分の各ノズルにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
基準マーク領域704cにおいて、ライン704c-0~704c-3はそれぞれ、ノズル列において左端のノズル、左端から2番目のノズル、左端から3番目のノズル、左端から4番目のノズルに対応する基準マークである。このように、基準マーク領域704cには、X方向に256個分の各ノズルにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
よって、ライン704a-0とライン704c-0とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ704の上端および下端)は、ノズル列において左端のノズルに対応するラインとなる。
ライン704a-1とライン704c-1とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ704の上端および下端)は、ノズル列において左端から2番目のノズルに対応するラインとなる。
ライン704a-2とライン704c-2とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ704の上端および下端)は、ノズル列において左端から3番目のノズルに対応するラインとなる。
ライン704a-3とライン704c-3とを通るライン(該ラインの上端および下端はそれぞれ階調パッチ704の上端および下端)は、ノズル列において左端から4番目のノズルに対応するラインとなる。
ここで、図8(a)と図8(c)との違いは、基準マーク領域704aと基準マーク領域704cの基準マークのラインの画素値と、背景の画素値が、位置合わせ用の基準マークが識別できるようにするため、反転している点である。ここでは、図8(a)と図8(b)の2階調分を例として説明したが、各階調パッチに埋め込まれた位置合わせ用の基準マークが識別できるように、階調パッチの画素値と、基準マークの画素値とがコントラストがつくように、適宜階調値が設定される。
次に、本実施形態に係るテストパターンの特徴について、図10を用いて説明する。図10において横軸はノズル列各ノズルの位置(X方向の位置)、縦軸は平均画素値(Y方向平均画素値)を示す。
図10(a)において線分1001aは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ701内のラインにおいて基準マーク領域701a/701cの区間における平均画素値を表している。図10(a)において線分1001bは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ701内のラインにおける平均画素値を表している。図10(a)において線分1001cは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ701内のラインにおいて領域701bの区間における平均画素値を表している。以降、ここでの分布を階調値プロファイルと称する。
このとき、それぞれの階調値プロファイルは、Y方向平均画素値こそ異なるものの、X方向の位置に関わらずいずれも一定値となる。すなわち、階調パッチ内で記録されるノズル毎のドット数が等しい。特に、基準マークを埋め込んだ階調パッチ701の階調値プロファイルが一定となることが本実施形態の特徴であり、位置合わせ用の基準マークを埋め込んでも、各ノズルの記録特性を取得する際に、ノズル毎の記録量を一定に保つことができる。そのため、従来のHS処理で用いていた均一な階調パッチと同様に、位置合わせ用の基準マークを除外することなく、HS処理に本実施形態のテストパターン(テストチャート)を使用することができる。しかも、基準マーク領域の背景部分は、各階調パッチの階調値であるため、基準マーク領域からも記録特性を有効的に取得することが可能である。これにより、従来、テストパターンにおいて、基準マークが占有していた面積を削減し、階調パターンの面積及び階調数の増加によるスジムラ検出精度の向上が可能となる。
図10(b)において線分1002aは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ702内のラインにおいて基準マーク領域702a/702cの区間における平均画素値を表している。図10(b)において線分1002bは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ702内のラインにおける平均画素値を表している。図10(b)において線分1002cは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ702内のラインにおいて領域702bの区間における平均画素値を表している。
図10(c)において線分1003aは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ703内のラインにおいて領域703bの区間における平均画素値を表している。図10(c)において線分1003bは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ703内のラインにおける平均画素値を表している。図10(c)において線分1003cは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ703内のラインにおいて基準マーク領域703a/703cの区間における平均画素値を表している。
図10(d)において線分1004aは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ704内のラインにおいて領域704bの区間における平均画素値を表している。図10(d)において線分1004bは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ704内のラインにおける平均画素値を表している。図10(d)において線分1004cは、X方向における各ノズルの位置に対する、該位置のノズルの階調パッチ704内のラインにおいて基準マーク領域704a/704cの区間における平均画素値を表している。
次に、図10を用いて、ステップS403における目標特性の取得について説明する。従来のHS処理では、階調値が均一な階調パッチでスジムラを取得することが前提であった。そのため、ガンマ補正部304によって、入力階調値と出力階調値とが線形に設計されていれば、各階調パッチにおける階調値プロファイルの平均値そのものが目標特性に相当していた。本実施形態においては、位置合わせ用の基準マーク領域も含めた階調パッチ全体の平均値が目標特性に相当する。
よって、ステップS403では、階調パッチ全体の画素値の平均値と、該階調パッチのオリジナルの平均階調値と、の関係を目標特性として算出する。なお、位置合わせ用の基準マーク領域の階調値プロファイルの平均値を算出した後、階調値が均一な領域の階調値プロファイルの平均値から、位置合わせ用の基準マーク領域と階調値が均一な領域のY方向のサイズの相対的な関係(重み)を踏まえた上で、位置合わせ用の基準マーク領域の平均値分を差し引く(除去する)ことで、階調パッチ全体の平均値を算出することもできる。
次に、上記の二値テストパターンについて説明する。実際の画像形成装置では、多値のテストパターンを二値化してから記録するため、図11で示すような、ドットのオンまたはオフで表される二値テストパターンが記録される。図11に示した二値テストパターンは、図7で示した多値のテストパターンをディザ法により二値化したものである。1101~1104、1101a~1101c、1102a~1102c、1103a~1103c、1104a~1104cはそれぞれ、図7の701~704、701a~701c、702a~702c、703a~703c、704a~704cに対応する。
図11に示した二値テストパターンは、説明を簡単にするため比較的サイズの小さなテストパターンを例にして説明したため、基準マークが多少崩れた状態に見受けられる。しかし、実際のテストパターンでは、階調パッチのサイズや基準マークのサイズを必要な分だけ確保することで、このような状態は回避できる。
ただし、ハーフトーン処理の性能によっては、テストパターンを二値化する影響によって、図10で説明した階調値プロファイルを図11で示すような二値テストパターンで求めた場合に、階調値プロファイルの値が多少変動する場合もあり得る。例えば、位置合わせ用の基準マーク領域701a、701cの階調値プロファイルが、均一な階調値の領域701bの階調値プロファイルと比較して大きくがたつくような場合には、位置合わせ用の基準マーク領域701a、701cの階調値プロファイルが、均一な階調値の領域701bの階調値プロファイルとほぼ等しくなるように、位置合わせ用の基準マーク領域701a、701cの二値パターンを補正してもよい。あるいは、X方向の位置毎に、Y方向のドットの発数が略一定となるように、位置合わせ用の基準マーク領域701a及び701c、あるいは、領域701bの二値パターンを変更してもよい。以上の説明では明るい階調を例に説明したが、その他の階調でも同様に、二値パターンを補正できることは言うまでもない。
なお、階調値が均一な領域のY方向のサイズを大きくするほど、スジムラ検出の精度は高くなり、テストパターンのサイズとスジムラ検出の精度はトレードオフ関係にある。例えば、スジムラ検出の精度よりもテストパターンのサイズを小さくすることを優先する場合には、図12に示すように、階調値が均一な領域を極端に省略してもよい。その場合は、位置合わせ用の基準マークの上下の領域が接することになる。しかし、位置合わせ用の基準マークの背景の階調値が、均一な領域で設けるはずであった階調値と等しいため、階調値が均一な領域を設けなくとも、位置合わせ用の基準マーク領域のみで各ノズルの記録特性を検出することが可能である。
このように、本実施形態によれば、階調パッチ内の上下に、記録されるノズル毎のドット数が等しい、同一の位置合わせ用の基準マークを埋め込み、該基準マークに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する。これにより、テストパターンにおける基準マークが占有する面積を削減し、階調パターンの面積及び階調数を増加させることで、スジムラ検出精度を向上させることができる。
[第2の実施形態]
本実施形態を含む以下の各実施形態では、第1の実施形態との差分について説明し、以下で特に触れない限りは第1の実施形態と同様であるものとする。第1の実施形態では、階調パッチ内の上下に、記録されるノズル毎のドット数が等しい、同一の位置合わせ用の基準マークを埋め込み、該基準マークに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する態様を説明した。
本実施形態では、階調パッチ内の上下に、配置パターンが異なる位置合わせ用の基準マークを埋め込み、上下の基準マークの両方で記録されるノズル毎のドット数が等しいテストパターンの様態について説明する。階調パッチ内の上下で位置合わせ用の基準マークの配置パターンが異なっていても第1の実施形態と同様、上下の位置合わせ用の基準マークも含めてX方向のそれぞれの位置に対してY方向に画素値の平均値を取ると一定の階調値を有するテストパターンを用いる。
本実施形態に係るテストパターン(インク値画像を示す多値のテストパターン)の一例について図13を用いて説明する。本実施形態でも第1の実施形態と同様、説明を簡単にするため、ノズル数256の記録ヘッドにおいて、ブラックインク用の4階調分のテストパターンを用いて説明する点は共通である。
図13に示す如く、テストパターンには階調パッチ1301~1304がY方向(用紙の搬送方向)に並んでいる。階調パッチ1301は最も明るい階調の階調パッチ、階調パッチ1302は2番目に明るい階調の階調パッチ、階調パッチ1303は3番目に明るい階調の階調パッチ、階調パッチ1304は4番目に明るい階調の階調パッチ、である。階調パッチ1301~1304は何れも、階調値が均一な領域を背景領域とし、該背景領域の上端領域および下端領域に位置合わせ用の基準マークが重畳されている。
本実施形態では、各階調パッチにおいて、上端の基準マーク領域と下端の基準マーク領域とで互いに異なる配置パターンの基準マークが設けられている。図13の例では、階調パッチ1301では、基準マーク領域1301aと基準マーク領域1301cとで互いに異なる配置パターンの基準マークが設けられている。また、階調パッチ1302では、基準マーク領域1302aと基準マーク領域1302cとで互いに異なる配置パターンの基準マークが設けられている。また、階調パッチ1303では、基準マーク領域1303aと基準マーク領域1303cとで互いに異なる配置パターンの基準マークが設けられている。また、階調パッチ1304では、基準マーク領域1304aと基準マーク領域1304cとで互いに異なる配置パターンの基準マークが設けられている。
次に、階調パッチにおける基準マーク領域について、図14を用いて説明する。先ず、図13の階調パッチ1301における基準マーク領域1301a、1301cについて、図14(a)を用いて説明する。
基準マーク領域1301aにおいて、ライン1301a-0、1301a-2はそれぞれ、ノズル列において左端から(N×4)番目のノズル、左端から(N×4+2)番目のノズルに対応している(Nは0以上の整数で、左端は0番目に相当する)。このように、基準マーク領域1301aには、X方向に対して、256個の各ノズル位置において、偶数番目(0スタート)のノズル(偶数ノズル)に対応するようにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
基準マーク領域1301cにおいて、ライン1301c-1、1301c-3はそれぞれ、ノズル列において左端から(N×4+1)番目のノズル、左端から(N×4+3)番目のノズルに対応している(Nは0以上の整数で、左端は0番目に相当する)。このように、基準マーク領域1301cには、X方向に対して、256個の各ノズル位置において、奇数番目(0スタート)のノズル(奇数ノズル)に対応するようにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
すなわち、位置合わせ用の基準マーク領域1301aと基準マーク領域1301cの両方を、Y方向にたどった時に、256個の各ノズル位置に対して、1本ずつの基準マークが割り当てられるように基準マーク領域が作成される。より具体的には、基準マーク領域1301aと基準マーク領域1301cのパターンを比較すると、X方向に対して両者の基準マークが、位相が異なるようにパターンが形成されている。
なお、基準マーク(黒線)以外の背景(1301back)の画素値については、第1の実施形態と同様、全て、同一の階調値(明色)で、基準マーク領域1301aと基準マーク領域1301cの基準マークのラインの画素値(黒)と、背景の画素値(グレイ)についても、位置合わせ用の基準マーク領域が識別できるようにするため、階調値のコントラストが大きくなっている。
次に、図13の階調パッチ1304における基準マーク領域1304a、1304cについて、図14(b)を用いて説明する。基準マーク領域1304aにおいて、ライン1304a-0、1304a-2はそれぞれ、ノズル列において左端から(N×4)番目のノズル、左端から(N×4+2)番目のノズルに対応している(Nは0以上の整数で、左端は0番目に相当する)。このように、基準マーク領域1304aには、X方向に対して、256個の各ノズル位置において、偶数番目(0スタート)のノズル(偶数ノズル)に対応するようにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
基準マーク領域1304cにおいて、ライン1304-1、1304c-3はそれぞれ、ノズル列において左端から(N×4+1)番目のノズル、左端から(N×4+3)番目のノズルに対応している(Nは0以上の整数で、左端は0番目に相当する)。このように、基準マーク領域1304cには、X方向に対して、256個の各ノズル位置において、奇数番目(0スタート)のノズル(奇数ノズル)に対応するようにライン状の基準マーク(黒線)が1本ずつ対応するように基準マークが設けられている。
すなわち、位置合わせ用の基準マーク領域1304aと基準マーク領域1304cの両方を、Y方向にたどった時に、256個の各ノズル位置に対して、1本ずつの基準マークが割り当てられるように基準マーク領域が作成される。より具体的には、基準マーク領域1304aと基準マーク領域1304cのパターンを比較すると、X方向に対して両者の基準マークが、位相が異なるようにパターンが形成されている。なお、第1の実施形態と同様、暗部の階調パッチにおいては、位置合わせ用の基準マークは、階調値のコントラストが大きくなるように、白、または明色となっている。
次に、本実施形態に係るテストパターンの特徴について説明する。本実施形態に係るテストパターンは、階調パッチ内の上下に、配置パターンが異なる位置合わせ用の基準マークが埋め込まれ、上下の基準マークの両方でノズル毎のドット数が等しいテストパターンである。そのため、第1の実施形態と同様、位置合わせ用の基準マークを埋め込んでも、いずれの階調パッチにおいても、X方向のそれぞれの位置に対して、Y方向に画素値の平均値を取ると、一定の階調値を有することが特徴となる。本実施形態に係るテストパターンは、このような特徴を有するため、前述のように、各階調パッチで、スジムラを取得する際に、位置合わせ用の基準マーク領域も含めて、注目階調パッチ内の全領域の読み取り値を用いてノズルの記録特性を取得することができる。これにより、位置合わせ用の基準マーク領域も含めて、スジムラを取得することができるため、本実施形態においても、テストパターンにおける基準マークが占有する面積を削減し、階調パターンの面積及び階調数を増加させることで、スジムラ検出精度を向上することができる。
なお、第1の実施形態では、各階調パッチ内において、Y方向に対して、ノズル位置毎に2本ずつの基準マークが割り当てられる様態であったが、本実施形態では、各ノズルに対して1本ずつのみが設けられる。そのため、基準マーク領域のY方向のサイズを第1の実施形態よりもコンパクトにすることができる。ただし、基準マーク領域のY方向のサイズが小さくなる分、基準マーク領域の背景から算出される記録特性、すなわちスジムラの検出精度がその分低下する場合もあり得る。そのような場合には、各基準マークのY方向の長さを長くして、基準マーク領域のY方向のサイズを確保することで、スジムラ成分の検出精度を改善することができる。それによって、基準マークのY方向の長さが長くなるため、位置合わせ精度が向上するという副次的な効果も得られる。
次に、本実施形態に係るテストパターンからノズルごとの測定曲線を求める方法について説明する。例えば、階調パッチの上側の基準マーク領域において左端からm番目の基準マーク(X方向の位置x1)と、左端から(m+1)番目の基準マーク(X方向の位置x2)と、の中間位置に仮想基準マークAを設定する。そして、該階調パッチの下側の基準マーク領域においてX方向の位置がx1~x2の間にある基準マークと、該仮想基準マークAと、でペアを構成する。同様に、階調パッチの下側の基準マーク領域において左端からm番目の基準マーク(X方向の位置x3)と、左端から(m+1)番目の基準マーク(X方向の位置x4)と、の中間位置に仮想基準マークBを設定する。そして、該階調パッチの上側の基準マーク領域においてX方向の位置がx3~x4の間にある基準マークと、該仮想基準マークBと、でペアを構成する。このように構成したそれぞれのペアは、ノズル列における各ノズルに対応しているので、あとは第1の実施形態と同様にして、ペアごとに平均画素値を求め、階調パッチごとの平均画素値に基づいて測定曲線を求める。
このように、本実施形態によれば、階調パッチ内の上下に配置パターンが異なる位置合わせ用の基準マークを埋め込み、それらに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する。これにより、テストパターンにおける基準マークが占有する面積を、さらに削減し、階調パターンの面積及び階調数を増加させることで、スジムラ検出精度を向上させることができる。
[第3の実施形態]
第1,2の実施形態では、階調パッチ内の上下に、記録されるノズル毎のドット数が等しい、同一または異なる位置合わせ用の基準マークを埋め込み、それらに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する態様を説明した。
本実施形態では、階調パッチ内の一か所、例えば、上側のみに位置合わせ用の基準マークを埋め込み、記録されるノズル毎のドット数が等しいテストパターンの様態について説明する。第1,2の実施形態と同様、位置合わせ用の基準マークも含めて、X方向のそれぞれの位置に対して、Y方向に画素値の平均値を取ると、一定の階調値を有するような基準マークが、階調パッチ内の1か所のみに埋め込まれていることを特徴とする。
本実施形態に係るテストパターン(インク値画像を示す多値のテストパターン)の一例について、図15を用いて説明する。本実施形態でも第1,2の実施形態と同様、説明を簡単にするため、ノズル数256の記録ヘッドにおいて、ブラックインク用の4階調分のテストパターンを用いて説明する点は共通である。
図15に示す如く、テストパターンには階調パッチ1501~1504がY方向(用紙の搬送方向)に並んでいる。階調パッチ1501は最も明るい階調の階調パッチ、階調パッチ1502は2番目に明るい階調の階調パッチ、階調パッチ1503は3番目に明るい階調の階調パッチ、階調パッチ1504は4番目に明るい階調の階調パッチ、である。階調パッチ1501~1504は何れも、階調値が均一な領域を背景領域とし、該背景領域の上端領域のみに位置合わせ用の基準マークが重畳されている。
階調パッチ1501は、階調パッチ701から基準マーク領域701cを省いたものである。階調パッチ1502は、階調パッチ702から基準マーク領域702cを省いたものである。階調パッチ1503は、階調パッチ703から基準マーク領域703cを省いたものである。階調パッチ1504は、階調パッチ704から基準マーク領域704cを省いたものである。
次に、本実施形態に係るテストパターンの特徴について説明する。図15から分かるように、本実施形態に係るテストパターンにおいても、位置合わせ用の基準マークも含めて、X方向のそれぞれの位置に対して、Y方向に画素値の平均値を取ると、一定の階調値を有するようにテストパターンが作成される。
次に、本実施形態に係るテストパターンからノズルごとの測定曲線を求める方法について説明する。本実施形態では、第1,2の実施形態とは異なり、階調パッチ内に基準マークは一か所のみしか埋め込まれていない。そのため、基準マークからノズルの記録位置を特定する際には、隣接する階調パッチの基準マークを利用する。
例えば、図15の階調パッチ1502内におけるノズルの記録位置は次のようにして特定する。階調パッチ1502内の基準マーク領域702aを第1領域、階調パッチ1503内の基準マーク領域703aあるいは階調パッチ1501内の基準マーク領域701aを第2領域とする。そして第1領域における基準マーク群と第2領域における基準マーク群とで対応する基準マークのペアごとに、該ペアにおける一方の基準マークの位置と該ペアにおける他方の基準マークの位置と、を通るラインを設定する。ここで、各ペアのラインの上端は階調パッチ1502の上端であり、下端は階調パッチ1502の下端である。あとは第1の実施形態と同様にして、ペアごとに平均画素値を求め、階調パッチごとの平均画素値に基づいて測定曲線を求める。
本実施形態では、基準マーク領域を一か所とするため、第1,2の実施形態よりもテストパターンの大きさを小さくすることができる。基準マークの領域を小さくする分、基準マークの領域の背景から得ていたスジムラの信号成分が少なくなるため、スジムラ検出精度を維持するため、階調値が均一な領域(図15の領域701b、702b、703b、704b)のY方向サイズを長くしてもよい。
このように、本実施形態によれば、階調パッチ内の一か所のみに基準マークを埋め込み、それらに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する。これにより、テストパターンにおける基準マークが占有する面積を削減し、階調パターンの面積及び階調数を増加させることで、スジムラ検出精度を向上させることができる。
[第4の実施形態]
第1~3の実施形態では、階調パッチ内の上下または一か所のみに、記録されるノズル毎のドット数が等しい、同一または異なる位置合わせ用の基準マークを埋め込み、それらに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する態様を説明した。
本実施形態では、階調パッチ内の上下に、階調パッチ内の領域の階調値に対して、画素値がキャンセルし合うように設計された位置合わせ用の基準マークを埋め込み、ノズル毎のドット数が等しいテストパターンの様態について説明する。
本実施形態に係るテストパターン(インク値画像を示す多値のテストパターン)の一例について、図16を用いて説明する。本実施形態でも第1~3の実施形態と同様、説明を簡単にするため、ノズル数256の記録ヘッドにおけるブラックインク用のテストパターンとし、以下では一例として、該テストパターンにおける明部の1階調分のみの階調パッチについて説明する。同様の説明は他の階調パッチについても同様に適用可能である。
階調パッチ1601は、均一の階調値Aを有する領域1601bと、階調値Aを有する背景に位置合わせ用の基準マークを重畳させた基準マーク領域1601a、1601cと、を有する。基準マーク領域1601aは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ1601の上端に設けられている。基準マーク領域1601cは用紙搬送方向(Y方向)において階調パッチ1601の下端に設けられている。
ここで、領域1601bにおける階調値A(画素値)=64である。また、基準マーク領域1601aにおけるライン1603の画素値は0である。また、基準マーク領域1601cにおけるライン1604の画素値は128である。ライン1603とライン1604とは同じノズルに対応するラインである。
このような階調パッチ1601において、Y方向に画素値の平均値を求めると、階調値が均一な領域1601bの画素値である64と等しくなる。すなわち、基準マーク領域1601aのラインの画素値「0」と基準マーク領域1601cのラインの画素値「128」との平均値が、階調値が均一な領域1601bの画素値「64」と等しくなり、結果的に画素値がキャンセルされる。
このように、位置合わせ用の基準マーク領域における画素値同士がキャンセルされるように設定することで、階調値が均一な領域1601bの画素値そのものが階調パッチの目標特性になる。そのため、複数の階調パッチを設ける際に、階調間で均等な目標特性を有するテストパターンを設計できるという利点がある。
なお、図16の説明では、1階調のみ説明したが、その他の階調値を有する階調パッチにおいても同様に、位置合わせ用の基準マーク同士の画素値がキャンセルし合うように設定すればよい。
また、基準マークのドット比率(ドットがONとなる比率)を階調パッチのドット比率となるように生成すれば(例えば、ドットONの長さとドットOFFの長さを調整する等)、基準マークを埋め込んでも濃度は変化しない。このような基準マークであれば、階調パッチの読み取り値への影響を最小化できるので、テストパターン上の任意の位置に必要数分だけ埋め込むことが容易となる。
このように、本実施形態によれば、階調パッチ内の上下に、階調パッチ内の領域の階調値に対して、画素値がキャンセルし合うように設計された位置合わせ用の基準マークを埋め込み、それらに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する。これにより、テストパターンにおける基準マークが占有する面積を削減し、階調パターンの面積及び階調数を増加させることで、スジムラ検出精度を向上させることができる。
[第5の実施形態]
第1~4の実施形態では、基準マークがライン状のマークである形態について説明した。本実施形態では、基準マークとしてライン状のマーク以外のマークを用いたテストパターンの例について説明する。第1~4の実施形態で説明したように、位置合わせ用の基準マークも含めて、X方向のそれぞれの位置に対して、Y方向に画素値の平均値を取ると、一定の階調値を有するような基準マークであれば、任意の形状のパターンとすることができる。本実施形態に係るテストパターン(インク値画像を示す多値のテストパターン)の一例について、図17を用いて説明する。
図17(a)は、X方向に配列されたノズルの数が16個の記録ヘッド1701における、明部側の階調パッチに含まれる位置合わせ用の基準マークの一例を示している。各ノズルが記録するY方向のドットの画素値を参照した時に、いずれのノズルにおいても、基準マークを構成する黒画素(規定画素値を有する画素)が5つ(端部のノズルは除く)、と等しく存在する。
また、図17(b)は、暗部側の階調パッチに含まれる位置合わせ用の基準マークの一例を示している。図17(a)と同様に、各ノズルが記録するY方向のドットの画素値を参照した時に、いずれのノズルにおいても、基準マークを構成する白画素(規定画素値を有する画素)が5つ(端部のノズルは除く)、と等しく存在する。
このようにライン状の基準マーク以外であっても第1~4の実施形態で説明したライン状の基準マークの場合と同様、位置合わせ用の基準マークも含めてX方向のそれぞれの位置に対してY方向に画素値の平均値を取ると一定の階調値を有するという特徴がある。
基準マークは、上記特徴を満たすものであれば、任意のマークとすることができる。より具体的には、X方向の各位置において、Y方向からみたときに、所定個数分の位置を決定し、それらの位置に対して、基準マークを畳み込む(貼り付ける)ことで、基準マーク領域を作成することができる。その際、隣接する基準マークが重ならないように、基準マーク間で任意の距離を設ければよい。
なお、中間調の階調パッチの場合、基準マークと背景とで階調値のコントラストの差を付けにくく、検出が難しくなる場合が起こり得る。そのような場合には、均一な背景との境界をはっきりとさせるために、基準マークの周辺を均一な背景の階調値とは異なる階調値とした基準マークでもよい。その場合であっても、位置合わせ用の基準マークも含めて、X方向のそれぞれの位置に対して、Y方向に画素値の平均値を取ると、一定の階調値を有するような基準マークであればよい。
また、位置合わせ用の基準マークも含めて、X方向のそれぞれの位置に対して、Y方向に画素値の平均値を取ると、一定の階調値を有するという特徴を満たしさえすれば、X方向の各位置において、基準マークの形状が異なっていてもよい。
このように、本実施形態によれば、X方向のそれぞれの位置に対して、Y方向に画素値の平均値を取ると、一定の階調値を有するような任意の形状の基準マークを、階調パッチ内に埋め込み、それらに基づいて各ノズルの記録位置を特定し、位置合わせ用の基準マークも含む階調パッチ内の読み取り値を用いて各ノズルの記録特性を取得する。これにより、テストパターンにおける基準マークが占有する面積を削減し、階調パターンの面積及び階調数を増加させることで、スジムラ検出精度を向上させることができる。
<変形例>
第1~5の実施形態では、画像形成装置としてインクジェットプリンタを用いたが、画像形成装置は、フルラインタイプのインクジェットプリンタに限らない。例えば、画像形成装置は、記録ヘッドを用紙の搬送方向と交差する方向に走査して画像を形成するいわゆるシリアルタイプのインクジェットプリンタでもよい。また、各ノズル列におけるノズルの間隔及び用紙搬送方向の記録解像度は1200dpiに限定されない。同様に、インラインセンサ107の光学読取素子の解像度、及び、用紙搬送方向の読取解像度も1200dpiに限定されない。
また、画像形成を行う方式もインクジェット方式に限定されるものではなく、画像形成装置は、記録素子としてLEDや発熱体を使用するプリンタであってもよい。具体的には、画像形成装置は、露光のための光源としてLEDアレイを用いた電子写真プリンタや、固形インクを気化させるための熱源として微小な発熱体が並んだサーマルヘッドを用いた昇華型プリンタであってもよい。
また、第1~5の実施形態で説明した基準マークは、テストパターン中の全ての階調に適用しなくてもよく、用紙の搬送等による位置ズレの特性等から、ノズル位置のトレースに必要な位置に形成される階調パッチのみに適用する等の変形も可能である。
上記の説明において使用した数値、処理タイミング、処理順、などは、具体的な説明を行うために一例として挙げたものであり、この一例に限定することを意図したものではない。
また、以上説明した各実施形態の一部若しくは全部を適宜組み合わせて使用しても構わない。また、以上説明した各実施形態の一部若しくは全部を選択的に使用しても構わない。
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。