JP7475241B2 - 円偏光板の製造方法 - Google Patents

円偏光板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7475241B2
JP7475241B2 JP2020141619A JP2020141619A JP7475241B2 JP 7475241 B2 JP7475241 B2 JP 7475241B2 JP 2020141619 A JP2020141619 A JP 2020141619A JP 2020141619 A JP2020141619 A JP 2020141619A JP 7475241 B2 JP7475241 B2 JP 7475241B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polarizing plate
humidification
layer
polarizer
treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020141619A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022037468A (ja
Inventor
一稀 池田
浩 角村
亮 嶋津
卓哉 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitto Denko Corp filed Critical Nitto Denko Corp
Priority to JP2020141619A priority Critical patent/JP7475241B2/ja
Publication of JP2022037468A publication Critical patent/JP2022037468A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7475241B2 publication Critical patent/JP7475241B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polarising Elements (AREA)

Description

本発明は、円偏光板の製造方法に関する。
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板とを一体化した位相差層付偏光板(円偏光板)が広く用いられている(例えば、特許文献1)。近年、画像表示装置の湾曲、屈曲、折り畳み、巻き取りの可能性が検討されている。このような画像表示装置は、ガラス基板の代わりに樹脂(例えば、ポリイミド)基板を用いる場合が多く、その結果、このような画像表示装置に円偏光板を適用すると経時的に反りが発生しやすいという問題がある。このような問題を解決するために、円偏光板に用いられる偏光板を加湿するという技術が検討されている。しかし、このような技術は、生産性が不十分である、および/または、得られる円偏光板(最終的には、画像表示装置)に外観不良が生じるという問題がある。
特許第3325560号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、優れた外観を有し、かつ、経時的な反りが抑制された画像表示装置を実現し得る円偏光板の簡便かつ効率的な製造方法を提供することにある。
本発明の実施形態による円偏光板の製造方法は、偏光子と該偏光子の少なくとも一方に保護層とを含む偏光板と、位相差層と、を有する円偏光板の製造方法である。当該製造方法は、該偏光板または該円偏光板に対して、加湿処理とエージングとを3回以上繰り返すことを含み、該加湿処理の積算加湿量は300以上である。ここで、積算加湿量は、下記式で表される:
積算加湿量=加湿時の飽和水蒸気量(g/m)×湿度(%)×積算加湿時間(分)。
1つの実施形態においては、上記加湿処理における温度は40℃以下であり、1回の加湿時間が10分以下である。
1つの実施形態においては、上記エージングにおける温度は30℃以下であり、1回のエージング時間が1時間以上である。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みと上記保護層の合計厚みとの比は1:5以下である。1つの実施形態においては、上記偏光板は上記偏光子の両側に保護層を含む。1つの実施形態においては、上記保護層はそれぞれ、トリアセチルセルロースフィルムで構成されている。
1つの実施形態においては、上記位相差層は液晶化合物の配向固化層である。
1つの実施形態においては、上記製造方法により得られる円偏光板は、当該円偏光板をポリイミドフィルムに貼り合わせた積層体を、23℃、55%RHの条件下で72時間放置した際の反り量の絶対値が2mm以下である。
1つの実施形態においては、上記製造方法により得られる円偏光板は、吸光度が0.046以上である。
本発明の実施形態によれば、円偏光板の製造方法において、加湿処理とエージングとを3回以上繰り返し、かつ、加湿処理の積算加湿量を所定量以上とすることにより、優れた外観を有し、かつ、経時的な反りが抑制された画像表示装置を実現し得る円偏光板の簡便かつ効率的な製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態による製造方法で得られる円偏光板の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
A.本発明の実施形態の製造方法により得られる円偏光板の構成の概略
図1は、本発明の実施形態による製造方法で得られる円偏光板の一例を示す概略断面図である。図示例の円偏光板100は、偏光板10と位相差層20とを代表的には視認側からこの順に有する。偏光板10は、代表的には、偏光子11と偏光子11の少なくとも一方(図示例では視認側)に保護層12とを含む。偏光板10は、好ましくは図示例のように、偏光子11の両側に保護層12および13を含む。このような構成であれば、本発明の実施形態による効果が顕著であり得る。実用的には、位相差層20の偏光板10と反対側に(すなわち、視認側と反対側の最外層として)粘着剤層30が設けられ、円偏光板は画像表示セルに貼り付け可能とされている。さらに、粘着剤層30の表面には、円偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルム(図示せず)が仮着されていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、円偏光板のロール形成が可能となる。
位相差層20は、代表的には、円偏光機能または楕円偏光機能を有する。したがって、本明細書において「円偏光板」は、円偏光板のみならず楕円偏光板も包含する。位相差層20は、目的に応じて任意の適切な構成が採用され得る。位相差層20は、単一層であってもよく、2層以上の積層構造を有していてもよい。
位相差層20は、樹脂フィルムの延伸フィルム(位相差フィルム)であってもよく、液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)であってもよい。位相差層20は、好ましくは、液晶配向固化層である。このような構成であれば、本発明の実施形態による効果が顕著であり得る。さらに、液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、円偏光板の顕著な薄型化を実現することができる。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。位相差層20においては、代表的には、棒状の液晶化合物が位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
1つの実施形態においては、円偏光板は、粘着剤層30を介してポリイミドフィルムに貼り合わせ、23℃、55%RHの条件下で72時間放置した際の反り量の絶対値が、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下である。反り量の絶対値は小さいほど好ましく、その下限は例えば0.2mmであり得る。ポリイミドフィルムの厚みは、例えば30μm~100μmであり、好ましくは40μm~80μmである。本発明の実施形態の製造方法(後述)によれば、このような円偏光板を実現することができる。このような円偏光板は、湾曲した画像表示装置、あるいは、屈曲、折り畳み、または巻き取り可能な画像表示装置に適用した場合に、反りを顕著に抑制することができる。このような画像表示装置は、代表的には、基板として樹脂(例えば、ポリイミド)基板が採用されている。反り量は、以下の式で表される。
反り量=(反り量1-反り量2)
ここで、「反り量1」は円偏光板とポリイミドフィルムの積層体の貼り合わせ直後の反り量であり、「反り量2」は当該積層体の72時間放置後の反り量である。なお、本明細書においては、反りが画像表示セル側に凸である場合を「正(+)」、反りが視認側に凸である場合を「負(-)」で表す。
1つの実施形態においては、円偏光板は、吸光度が好ましくは0.046以上であり、より好ましくは0.047以上であり、さらに好ましくは0.048以上である。吸光度は、代表的には、円偏光板における偏光子の水分率に対応し得る。すなわち、本発明の実施形態の製造方法により得られる円偏光板は、水分率が大きい偏光子を含む。これは、加湿処理とエージングとを複数回繰り返すことにより、偏光子に水分が効率的に導入され得ることを示している。吸光度の上限は、実質的には偏光子の飽和水分率に対応し得る。1つの実施形態においては、吸光度の上限は、例えば0.050であり得る。吸光度の上限は、製造効率とのバランス、得られる円偏光板の外観等に応じて設定され得る。吸光度は、例えば、IR水分率計を用いて測定され得る。より詳細には、吸光度は、IRにおける水の吸収を示す1.95μmのスペクトルとベースラインである1.85μmのスペクトルとの差から算出され得る。
円偏光板は、その他の光学機能層をさらに含んでいてもよい。円偏光板に設けられ得る光学機能層の種類、特性、数、組み合わせ、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、円偏光板は、導電層または導電層付等方性基材をさらに有していてもよい(いずれも図示せず)。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層20の外側(偏光板10と反対側)に設けられる。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、必要に応じて設けられる任意の層であり、省略されてもよい。なお、導電層または導電層付等方性基材が設けられる場合、円偏光板は、画像表示セル(例えば、有機ELセル)と偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。また例えば、円偏光板は、その他の位相差層をさらに含んでいてもよい。その他の位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。後述するように、本発明の実施形態の製造方法の効果は、偏光板10または円偏光板(偏光板10と位相差層20との積層体)を所定の加湿処理およびエージングに供することにより実現され得るので、その他の光学機能層の有無は本発明の実施形態に対して実質的な影響を与える要因とはならない。
以下、本発明の実施形態による上記のような円偏光板の製造方法を説明し、次いで、円偏光板の構成要素を説明する。
B.円偏光板の製造方法
本発明の実施形態による円偏光板の製造方法は、偏光板または円偏光板に対して、加湿処理とエージングとを3回以上繰り返すことを含む。さらに、加湿処理の積算加湿量は300以上である。ここで、積算加湿量は、下記式で表される:
積算加湿量=加湿時の飽和水蒸気量(g/m)×湿度(%)×積算加湿時間(分)。
以下、円偏光板の製造方法における各工程を順に説明する。
B-1.偏光板の作製
偏光板は、任意の適切な方法で作製され得る。具体的には、偏光板は、単層の樹脂フィルムから作製した偏光子を含んでいてもよく、二層以上の積層体を用いて作製した偏光子を含んでいてもよい。
B-1-1.単層の樹脂フィルムから得られた偏光子を用いた偏光板の作製
単層の樹脂フィルムからの偏光子の製造方法は、代表的には、樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理と延伸処理とを施すことを含む。樹脂フィルムとしては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが挙げられる。当該方法は、不溶化処理、膨潤処理、架橋処理等をさらに含んでいてもよい。得られた偏光子の少なくとも一方に保護層(保護フィルム)を積層することにより、偏光板が得られ得る。このような製造方法は、当業界で周知慣用であるので、詳細な説明は省略する。
B-1-2.積層体から得られた偏光子を用いた偏光板の作製
偏光子の製造に積層体を用いる場合、当該積層体は、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体であってもよく、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体であってもよい。一例として、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いる偏光子の製造方法を説明する。当該製造方法は、代表的には、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;を含む。このような製造方法においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体をそのまま偏光板としてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体の偏光子表面に保護層をさらに積層して偏光板としてもよい。あるいは、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して偏光板としてもよく、保護層/偏光子の積層体の偏光子表面に保護層をさらに積層して偏光板としてもよい。このような偏光板の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
B-2.円偏光板の作製
得られた偏光板に位相差層を積層することにより、円偏光板が得られ得る。位相差層が樹脂フィルムの延伸フィルムである場合には、積層は、任意の適切な方式により行われ得る。位相差層が液晶配向固化層である場合には、積層は、代表的には、基材に形成された液晶配向固化層を転写することにより行われ得る。位相差層が積層構造を有する場合には、それぞれの位相差層を偏光板に順次積層してもよく、位相差層の積層体を偏光板に積層してもよい。以下、液晶配向固化層の形成方法について簡単に説明する。
液晶配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
B-3.加湿処理およびエージング
本発明の実施形態においては、上記のとおり、偏光板または円偏光板に対して、加湿処理とエージングとが3回以上繰り返される。すなわち、偏光板に加湿処理およびエージングを施した後で位相差層を積層してもよく、位相差層を積層して円偏光板を作製した後に加湿処理およびエージングを施してもよい。
本発明者らは、加湿処理とエージングとを3回以上繰り返すことにより、積算加湿量が同じであっても、加湿処理とエージングとを1回のみ行う場合に比べて、偏光子の水分率(指標として、例えば吸光度)を顕著に増大させることができ、その結果、円偏光板を画像表示装置(特に、基板が樹脂基板である画像表示装置)に適用した場合に経時的な反りを顕著に抑制できることを見出した。これは、以下のように推定され得る。ただし、本発明は当該推定に拘束されるものではない。ここでは、理解を容易にするために、加湿条件(代表的には、加湿時の温度および湿度)が同一であるとして説明する。偏光板または円偏光板に対して加湿処理を行う場合、加湿処理により付与される水分は、偏光子の外側に位置する保護層に吸収され、次いで、その一部が偏光子に移行する。保護層が吸収し得る水分量には限界があるので、1回のみの加湿処理で積算加湿量を大きくしても(例えば、加湿時間を長くしても)、保護層は当該加湿処理により付与される水分をすべて吸収することができない。一方、3回以上の加湿処理で同じ積算加湿量とする場合、それぞれの加湿処理において付与される水分量は上記1回のみの加湿処理の場合に比べて小さくなる。例えば、3回の加湿処理で同じ積算加湿量とする場合、それぞれの加湿処理において付与される水分量は上記1回のみの加湿処理の場合に比べて3分の1となる。その結果、保護層は、上記1回のみの加湿処理の場合に比べて、加湿処理により付与される水分を効率的に吸収することができる。さらに、それぞれの加湿処理の後にエージングを行うことにより、加湿処理により保護層に付与された水分を、偏光子に良好に移行させることができる。この移行により、保護層内の水分は減少するので、次の加湿処理の際に保護層は水分を吸収するキャパシティを再び有する状態となっている。このように、加湿処理とエージングとを3回以上繰り返すことにより(すなわち、加湿処理を3回以上行い、かつ、これらの加湿処理の後にエージングを行うことにより)、偏光子の水分率を顕著に増大させることができ、結果として、円偏光板を画像表示装置(特に、基板が樹脂基板である画像表示装置)に適用した場合に経時的な反りを顕著に抑制することができる。
加湿処理は、代表的には室温近傍で行われ得る。加湿処理における温度は、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは20℃~35℃であり、さらに好ましくは23℃~30℃である。加湿温度が高すぎると、得られる偏光板または円偏光板の外観に問題が生じる場合がある。加湿温度が低すぎると、所望の積算加湿量に到達するための加湿時間が長くなりすぎる場合がある。
複数の加湿処理における1回の加湿処理の時間は、好ましくは10分以下であり、より好ましくは9分以下であり、さらに好ましくは8分以下である。本発明の実施形態によれば、加湿処理とエージングとを3回以上繰り返すことにより、1回の加湿時間を比較的短くすることができる。結果として、上記の加湿温度による効果との相乗的な効果により、優れた外観を有する偏光板および円偏光板を高い製造効率で得ることができる。加湿時間の下限は、例えば4分であり得る。加湿時間が短すぎると加湿処理の回数を多くしなければならず、したがって、エージング回数を多くしなければならない。その結果、製造効率が不十分となる場合がある。
エージングは、代表的には室温近傍で行われ得る。エージングにおける温度は、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは20℃~30℃であり、さらに好ましくは23℃~27℃である。エージング温度が高すぎると、保護層に吸収された水分が外部に蒸発してしまい、偏光子に良好に移行しない場合がある。
複数のエージングにおける1回のエージングの時間は、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは1時間~12時間である。このようなエージング時間であれば、低温で長時間(1回のみ)加湿する場合に比べて、トータルの所要時間を短くすることができ、優れた製造効率を確保することができる。エージング時間は、加湿処理およびエージングの回数、積算加湿量、製造効率等を考慮して適切に設定され得る。
加湿処理(およびエージング)の回数は、上記のとおり3回以上であり、より好ましくは3回~4回である。加湿処理を3回以上繰り返すことにより、加湿処理を複数回行う効果が顕著なものとなる。加湿回数の上限は、加湿温度、加湿回数、積算加湿量、製造効率等を考慮して適切に設定され得る。
加湿処理の積算加湿量は、上記のとおり、好ましくは300以上であり、より好ましくは350以上であり、さらに好ましくは380以上である。積算加湿量は、例えば850以下であり得る。積算加湿量が小さすぎると、偏光子の水分量が不十分となり、結果として、円偏光板を画像表示装置に適用した場合に経時的な反りを充分に抑制できない場合がある。積算加湿量が大きすぎる場合は、代表的には加湿温度が高すぎる場合に対応し得る。したがって、このような場合には、得られる偏光板または円偏光板の外観に問題が生じる場合がある。なお、積算加湿量は、下記式で表される:
積算加湿量=加湿時の飽和水蒸気量(g/m)×湿度(%)×積算加湿時間(分)
ここで、飽和水蒸気量は加湿温度に対応し得る。上記式から明らかなとおり、積算加湿量は加湿度合の相対的な指標であり、無単位である。
C.偏光板
C-1.偏光子
上記の製造方法から明らかなとおり、偏光子11は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含む樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、上記のとおり、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが挙げられる。
偏光子の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~12μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、偏光子の厚みと保護層の合計厚みとの比を所望の範囲とすることが容易である。
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
C-2.保護層
保護層12および保護層13は、それぞれ、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。好ましくは、保護層12および保護層13は、それぞれTACで構成され得る。このような構成であれば、本発明の実施形態による効果が顕著であり得る。
本発明の実施形態の製造方法により得られる円偏光板は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、その視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、円偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
保護層12の厚みは、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは15μm~35μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層12の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
保護層13は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。保護層13の厚みは、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは10μm~30μmである。
偏光板10における偏光子11の厚みと保護層の合計厚みとの比は、好ましくは1:5以下であり、より好ましくは1:4.8以下である。このような構成であれば、本発明の実施形態による効果が顕著であり得る。当該比が大きすぎるということは、保護層の合計厚みが大きいことを意味する。このような場合には、保護層の水分を吸収するキャパシティが大きいので、1回のみの加湿処理で偏光子の所望の水分率を達成し得る場合がある。ただし、そのような厚すぎる保護層は実用的ではない。
D.位相差層
位相差層20は、上記のとおり、円偏光機能または楕円偏光機能を有する。位相差層20は、円偏光機能または楕円偏光機能を有する限りにおいて、単一層であってもよく2層以上の積層構造を有していてもよい。
位相差層20が単一層である場合、位相差層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、位相差層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。位相差層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。位相差層が液晶配向固化層である場合には、その厚みは例えば1.0μm~2.5μmであり得る。本実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°である。この実施形態においては、円偏光板は、位相差層20と粘着剤層30との間にnz>nx=nyの屈折率特性を示す位相差層(図示せず)をさらに有していてもよい。位相差層が単一層である場合、位相差層は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。
位相差層20が積層構造を有する場合、位相差層は、代表的には偏光板側から順にH層とQ層との2層構造を有する(図示せず)。H層は、代表的にはλ/2板として機能し得、Q層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、H層のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは250nm~280nmであり;Q層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。H層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。H層が液晶配向固化層である場合には、その厚みは例えば2.0μm~4.0μmであり得る。Q層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。Q層が液晶配向固化層である場合には、その厚みは例えば1.0μm~2.5μmであり得る。本実施形態においては、H層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは14°~16°であり;Q層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは74°~76°である。なお、H層およびQ層の配置順序は逆であってもよく、H層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度およびQ層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は逆であってもよい。位相差層が積層構造を有する場合、それぞれの層(例えば、H層およびQ層)は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
位相差層(積層構造を有する場合にはそれぞれの層)は、代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。なお、「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。
位相差層は、上記のとおり、樹脂フィルムの延伸フィルムであってもよく、液晶配向固化層であってもよい。樹脂フィルムを構成する樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。第1の位相差層が逆分散波長特性を示す樹脂フィルムで構成される場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)が好適に用いられ得る。
液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚み
10μm以下の厚みは、干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)外観
実施例および比較例で用いた偏光板について、加湿処理およびエージング後の外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
良好:反り(カール)、しわ、波打ちのいずれも認められなかった
不良:反り(カール)、しわ、波打ちの1つ以上が認められた
(3)吸光度
実施例および比較例で用いた偏光板について、加湿処理およびエージング後の吸光度を、IR水分率計(クラボウ社製、製品名「RX-200」)を用いて測定した。
(4)反り
実施例および比較例で得られた円偏光板を140mm×70mmサイズに切り出した。このとき、偏光子の吸収軸方向が長辺方向となるように切り出した。一方、基材としてポリイミドフィルム(デュポン・東レ社製「カプトン(登録商標)」、厚み50μm)を140mm×70mmサイズに切り出した。切り出した円偏光板およびポリイミドフィルムを、23℃、55%RHの条件下に1日以上置いて調湿した。調湿した円偏光板およびポリイミドフィルムを、円偏光板の粘着剤層を介して貼り合わせ、試験サンプルとした。試験サンプルを、23℃、55%RHの条件下に72時間放置した。放置前後の試験サンプルの反り(カール)量を測定した。試験サンプルを平面上に静置した時に、当該平面から最も高い部分の高さを反り量とした。また、反りがポリイミドフィルム側に凸である場合を「正(+)」、反りが円偏光板側に凸である場合を「負(-)」で表す。放置前(貼り合わせ直後)の反り量を「反り量1」、72時間放置後の反り量を「反り量2」として、以下の式から反り量を求め、その絶対値を評価の指標とした。
反り量=(反り量1-反り量2)
具体的には、反り量の絶対値から以下の基準で評価した。
良好:反り量の絶対値が2mm以下
不良:反り量の絶対値が2mmを超える
なお、参考例1については、基材としてポリイミドフィルムの代わりにガラス板(厚み0.4mm)に円偏光板を貼り合わせて試験サンプルとした。
[実施例1]
1.偏光板の作製
厚み30μmのPVA系樹脂フィルムの長尺ロールを、ロール延伸機により総延伸倍率が6.0倍になるようにして長尺方向に一軸延伸しながら、同時に膨潤、染色、架橋および洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。得られた偏光子の一方の面に、PVA系接着剤を介してHC-TACフィルムを視認側保護層として貼り合わせた。なお、HC-TACフィルムは、TACフィルム(厚み25μm)にハードコート(HC)層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。さらに、偏光子のもう一方の面に、PVA系接着剤を介してTACフィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、保護層(HC-TACフィルム)/偏光子/保護層(TACフィルム)の構成を有する偏光板を得た。
2.加湿処理およびエージング
得られた偏光板を23℃、80%RHで8分間の加湿処理に供した後、1時間エージングした。エージングは、室温(23℃、55%RH)で行った。この加湿処理およびエージングを3回繰り返した。この加湿処理における積算加湿量は395[=飽和水蒸気量20.6(g/m)×湿度80(%)×積算加湿時間24(分)]であった。加湿処理およびエージング後の偏光板を上記(2)および(3)の評価に供した。
3.円偏光板の作製
3-1.位相差層の作製
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
Figure 0007475241000001
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cmの光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層Aを形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2.5μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。液晶配向固化層AをH層として用いた。
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層Bを形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1.5μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。液晶配向固化層BをQ層として用いた。
3-2.円偏光板の作製
上記2.で加湿処理およびエージングに供された偏光板のTACフィルム表面に、上記3-1.で得られた液晶配向固化層A(H層)および液晶配向固化層B(Q層)をこの順に転写した。このとき、偏光子の吸収軸と配向固化層Aの遅相軸とのなす角度が15°、偏光子の吸収軸と配向固化層Bの遅相軸とのなす角度が75°になるようにして転写(貼り合わせ)を行った。なお、それぞれの転写(貼り合わせ)は、紫外線硬化型接着剤(厚み1.0μm)を介して行った。最後に、配向固化層B(Q層)の表面にアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を配置した。このようにして、保護層/接着剤/偏光子/接着剤層/位相差層(H層)/接着剤層/位相差層(Q層)/粘着剤層の構成を有する円偏光板を得た。得られた円偏光板を上記(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同様にして得られた偏光板を23℃、80%RHで12分間の加湿処理に供したこと、ならびに、当該加湿処理および実施例1と同様のエージングを2回繰り返したこと以外は実施例1と同様にして、円偏光板を得た。加湿処理における積算加湿量は395[=飽和水蒸気量20.6(g/m)×湿度80(%)×積算加湿時間24(分)]であった。得られた偏光板および円偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1と同様にして得られた偏光板を23℃、80%RHで24分間の加湿処理に供したこと、ならびに、当該加湿処理および実施例1と同様のエージングを1回のみ行ったこと以外は実施例1と同様にして、円偏光板を得た。加湿処理における積算加湿量は395[=飽和水蒸気量20.6(g/m)×湿度80(%)×積算加湿時間24(分)]であった。得られた偏光板および円偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例3]
加湿処理およびエージングを行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、円偏光板を得た。得られた偏光板および円偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1と同様にして得られた偏光板を65℃、95%RHで8分間の加湿処理に供したこと、ならびに、当該加湿処理および実施例1と同様のエージングを1回のみ行ったこと以外は実施例1と同様にして、円偏光板を得た。加湿処理における積算加湿量は1221[=飽和水蒸気量160.7(g/m)×湿度95(%)×積算加湿時間8(分)]であった。加湿処理後の偏光板の外観が不良であったため、反りの評価は行わなかった。結果を表1に示す。
[参考例1]
加湿処理およびエージングを行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、円偏光板を得た。得られた円偏光板をガラス板(厚み0.4mm)に貼り合わせて試験サンプルを作製したこと以外は実施例1と同様にして、反りの評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007475241000002
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例により得られた円偏光板は、優れた外観を有し、かつ、経時的な反りが抑制された画像表示装置を実現し得ることがわかる。さらに、実施例1と比較例1および2との比較から、積算加湿量が同じであっても、加湿処理とエージングの繰り返し回数が少なければ、所望の吸光度(偏光子の水分率)が得られず、結果として、反りを十分に抑制できないことがわかる。加えて、比較例4から、加湿温度を高温にすれば短時間で積算加湿量を大きくすることができるが、外観不良が生じることがわかる。加えて、本発明の実施例によれば、複雑な操作も特別な装置も高価な試薬も必要とせず、かつ、加湿時間も短いので、円偏光板を簡便かつ効率的に製造することができる。
本発明の実施形態の製造方法により得られる円偏光板は、画像表示装置用の円偏光板として用いられ、特に、湾曲した、あるいは、屈曲、折り畳み、または巻き取り可能な画像表示装置(このような画像表示装置は、代表的には基板として樹脂基板が用いられる)に好適に用いられ得る。画像表示装置としては、代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置が挙げられる。
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
13 保護層
20 位相差層
30 粘着剤層
100 円偏光板

Claims (9)

  1. 偏光子と該偏光子の少なくとも一方に保護層とを含む偏光板と、位相差層と、を有する円偏光板の製造方法であって、
    該偏光板または該円偏光板に対して、加湿処理とエージングとを3回~4回繰り返すことを含み、
    該加湿処理の積算加湿量が300~850である、円偏光板の製造方法:
    ここで、積算加湿量は、下記式で表される:
    積算加湿量=加湿時の飽和水蒸気量(g/m)×湿度(%)×積算加湿時間(分)。
  2. 前記加湿処理における温度が20℃~40℃であり、1回の加湿時間が4分~10分である、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
  3. 前記エージングにおける温度が20℃~30℃であり、1回のエージング時間が1時間~12時間である、請求項1または2に記載の円偏光板の製造方法。
  4. 前記偏光子の厚みと前記保護層の合計厚みとの比が1:5以下である、請求項1から3のいずれかに記載の円偏光板の製造方法。
  5. 前記偏光板が前記偏光子の両側に保護層を含む、請求項4に記載の円偏光板の製造方法。
  6. 前記保護層がそれぞれ、トリアセチルセルロースフィルムで構成されている、請求項5に記載の円偏光板の製造方法。
  7. 前記位相差層が液晶化合物の配向固化層である、請求項1から6のいずれかに記載の円偏光板の製造方法。
  8. 得られた円偏光板をポリイミドフィルムに貼り合わせた積層体を、23℃、55%RHの条件下で72時間放置した際の反り量の絶対値が0.2mm~2mmである、請求項1から7のいずれかに記載の円偏光板の製造方法。
  9. 得られる円偏光板の吸光度が0.046~0.050である、請求項1から8のいずれかに記載の円偏光板の製造方法。
JP2020141619A 2020-08-25 2020-08-25 円偏光板の製造方法 Active JP7475241B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020141619A JP7475241B2 (ja) 2020-08-25 2020-08-25 円偏光板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020141619A JP7475241B2 (ja) 2020-08-25 2020-08-25 円偏光板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022037468A JP2022037468A (ja) 2022-03-09
JP7475241B2 true JP7475241B2 (ja) 2024-04-26

Family

ID=80494651

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020141619A Active JP7475241B2 (ja) 2020-08-25 2020-08-25 円偏光板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7475241B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2024061258A (ja) * 2022-10-21 2024-05-07 日東電工株式会社 光学フィルムの製造方法

Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000241328A (ja) 1999-02-19 2000-09-08 Toray Ind Inc 水分計の校正方法および繊維シートの水分率測定方法
JP2003276079A (ja) 2002-03-26 2003-09-30 Sumitomo Metal Mining Co Ltd フィルム基材の反り矯正装置
JP2006251224A (ja) 2005-03-09 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 偏光板の製造方法
JP2007160764A (ja) 2005-12-15 2007-06-28 Sekisui Chem Co Ltd 表面保護粘着フィルムまたはシート
JP2008015145A (ja) 2006-07-05 2008-01-24 Seiko Epson Corp 偏光素子の製造方法、偏光素子、およびプロジェクタ
JP2010197991A (ja) 2009-01-30 2010-09-09 Nitto Denko Corp 積層フィルムの製造方法
JP2010204502A (ja) 2009-03-05 2010-09-16 Nitto Denko Corp 積層光学フィルム、液晶パネル、および液晶表示装置
JP2015210459A (ja) 2014-04-30 2015-11-24 日東電工株式会社 有機el表示装置用円偏光板および有機el表示装置
US20160115355A1 (en) 2014-10-24 2016-04-28 Samsung Sdi Co., Ltd. Adhesive film for polarizing plate, polarizing plate including the same and optical display including the same
JP2019091030A (ja) 2017-11-10 2019-06-13 住友化学株式会社 複合位相差板、光学積層体、及び画像表示装置
JP2020012098A (ja) 2018-07-10 2020-01-23 三菱ケミカル株式会社 粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置

Patent Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000241328A (ja) 1999-02-19 2000-09-08 Toray Ind Inc 水分計の校正方法および繊維シートの水分率測定方法
JP2003276079A (ja) 2002-03-26 2003-09-30 Sumitomo Metal Mining Co Ltd フィルム基材の反り矯正装置
JP2006251224A (ja) 2005-03-09 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 偏光板の製造方法
JP2007160764A (ja) 2005-12-15 2007-06-28 Sekisui Chem Co Ltd 表面保護粘着フィルムまたはシート
JP2008015145A (ja) 2006-07-05 2008-01-24 Seiko Epson Corp 偏光素子の製造方法、偏光素子、およびプロジェクタ
JP2010197991A (ja) 2009-01-30 2010-09-09 Nitto Denko Corp 積層フィルムの製造方法
JP2010204502A (ja) 2009-03-05 2010-09-16 Nitto Denko Corp 積層光学フィルム、液晶パネル、および液晶表示装置
JP2015210459A (ja) 2014-04-30 2015-11-24 日東電工株式会社 有機el表示装置用円偏光板および有機el表示装置
US20160115355A1 (en) 2014-10-24 2016-04-28 Samsung Sdi Co., Ltd. Adhesive film for polarizing plate, polarizing plate including the same and optical display including the same
JP2019091030A (ja) 2017-11-10 2019-06-13 住友化学株式会社 複合位相差板、光学積層体、及び画像表示装置
JP2020012098A (ja) 2018-07-10 2020-01-23 三菱ケミカル株式会社 粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2022037468A (ja) 2022-03-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7475241B2 (ja) 円偏光板の製造方法
TW202107128A (zh) 附相位差層之偏光板及使用其之圖像顯示裝置
TW202237382A (zh) 偏光板及偏光板的製造方法
JP7385380B2 (ja) 位相差層およびハードコート層付偏光板の製造方法
TWI777075B (zh) 附相位差層之偏光板及使用其之影像顯示裝置
JP6804168B2 (ja) 位相差層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置
WO2022102166A1 (ja) 位相差層付偏光板の製造方法
WO2022049847A1 (ja) 位相差層付偏光板の製造方法
WO2022074872A1 (ja) 位相差層付偏光板の製造方法
JP7288465B2 (ja) 偏光板およびその製造方法、ならびに該偏光板を用いた画像表示装置
WO2022209791A1 (ja) 位相差層付偏光板の製造方法および位相差層付偏光板の保管方法
CN113785228B (zh) 带相位差层及硬涂层的偏振片的制造方法
JP7223874B2 (ja) 偏光板、位相差層付偏光板、および、該偏光板または該位相差層付偏光板を用いた画像表示装置
TWI844562B (zh) 帶相位差層的偏光板及使用了該帶相位差層的偏光板的影像顯示裝置
WO2022181188A1 (ja) 積層体および画像表示パネルの製造方法
WO2023047748A1 (ja) 位相差層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置、ならびに、位相差層付偏光板の評価方法
JP2022106205A (ja) 積層体および位相差層付偏光板の製造方法
JP2023075748A (ja) 位相差層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置
JP2022074936A (ja) 位相差層付偏光板の製造方法および位相差層付偏光板の保管方法
JP2023075790A (ja) 位相差層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置
KR20240115165A (ko) 광학 적층체 및 해당 광학 적층체를 이용한 화상 표시 장치
JP2024101531A (ja) 光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
CN116661046A (zh) 相位差板、带伪支撑体的相位差板、圆偏振片及显示装置
KR20230056787A (ko) 위상차층 부착 편광판 및 화상 표시 장치

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230612

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240109

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240301

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240416

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7475241

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150