JP7470833B2 - 需要調整システム、需要調整方法及びプログラム - Google Patents
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Description
自身の発電能力を、電気の供給契約を結んでいる需要家の総需要が超える場合、小売電気事業者は、電気を市場から調達して需要家に提供する。市場での電気の取引価格は、需給関係によって決まる。例えば需要が多くなる夕方などの時間帯の取引価格が高くなる。一方で、需要が減少する深夜の取引価格は安くなる。
請求項2に記載の発明は、機器に応じた稼働スケジュールの調整を通知する画面を前記需要家に提示する提示手段を更に有する、請求項1に記載の需要調整システムである。
請求項3に記載の発明は、調整後の稼働スケジュールにより、対応する機器の動作を個別に制御する制御手段を更に有する、請求項1に記載の需要調整システムである。
請求項4に記載の発明は、コンピュータに、需要家の総需要を分析して機器毎の需要を推定する処理と、前記需要家の分散型電源が電力を逆潮する時間帯と機器毎の需要の時間変化との関係に基づいて、当該需要家が小売電気事業者に支払う電気料金が実質的に低減されるように、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯とは別の時間帯に稼働する機器を、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯に稼働するように、機器の稼働スケジュールを調整する処理とを実行させる需要調整方法である。
請求項5に記載の発明は、コンピュータに、需要家の総需要を分析して機器毎の需要を推定する機能と、前記需要家の分散型電源が電力を逆潮する時間帯と機器毎の需要の時間変化との関係に基づいて、当該需要家が小売電気事業者に支払う電気料金が実質的に低減されるように、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯とは別の時間帯に稼働する機器を、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯に稼働するように、機器の稼働スケジュールを調整する機能とを実現させるためのプログラムである。
請求項2記載の発明によれば、需要家に対して調整の内容を知らせることができる。
請求項3記載の発明によれば、機器の稼働スケジュールの調整をサービスとして提供できる。
請求項4記載の発明によれば、逆潮する時間帯に合わせて稼働スケジュールを調整しない場合に比して、需要家の利益を効率的に増やすことができる。
請求項5記載の発明によれば、逆潮する時間帯に合わせて稼働スケジュールを調整しない場合に比して、需要家の利益を効率的に増やすことができる。
<ネットワークシステムの説明>
図1は、実施の形態1で想定するネットワークシステム1の概要を説明する図である。
図1に示すネットワークシステム1は、電力系統10を通じて受電する需要家システム20と、電気の取引価格に応じて需要家システム20を構成する機器23の稼働スケジュールを調整するサービスを提供する稼働スケジュール調整システム30と、通信網としてのインターネット40とで構成されている。
詳細については後述するが、稼働スケジュール調整システム30は、市場からの調達価格が高い時間帯に稼働される機器23を調達価格がより低い時間帯に稼働させることにより、調達費用の低減を実現する。なお、稼働スケジュールの調整には、需要家の活動と機器23の役割との関係が考慮される。
稼働スケジュール調整システム30は、需要調整システムの一例である。
本実施の形態の場合、機器23の稼働スケジュールは、稼働スケジュール調整システム30から指示される。
本実施の形態における機器23は、モーター等の動力機器である。もっとも、機器23は動力機器に限定されない。例えばルータ24も機器23の一形態である。なお、図中のNは2以上の自然数である。
なお、機器制御端末25は、後述するコンピュータとしてのハードウェア構成を有している。ここでの機器制御端末25には、通知された稼働スケジュールに基づいて、対応する機器23の動作を個別に制御するためのプログラムがインストールされている。本実施の形態における稼働スケジュールの調整には、需要の増減を伴う場合、動作モードの変更も含む。例えば需要が大きい高速動作モードを需要が小さい低速動作モードに変更することも、本実施の形態における稼働スケジュールの調整に含まれる。
調達価格データベース33には、市場で取引される電気の時間帯別の調達価格が蓄積されている。市場とは、例えば前日スポット市場、1時間前市場である。
売電価格データベース34には、需要家と小売電気事業者との契約内容によって定まる時間帯ごとの電気料金の情報が蓄積されている。
もっとも、複数の小売電気事業者から委託を受けて稼働スケジュールの調整サービスを提供する場合、各データベースには、小売電気事業者が異なる需要家の情報が混在する。
稼働スケジュール調整サーバ31は、コンピュータとしての構成を有している。すなわち、稼働スケジュール調整サーバ31は、プログラム(基本ソフトウェアを含む)の実行を通じて装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)と、BIOS(Basic Input Output System)等を記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラムの実行領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、不揮発性の記憶装置等を有している。不揮発性の記憶装置には、例えば半導体メモリ、ハードディスク装置を使用する。
図2の場合、稼働スケジュール調整サーバ31は、各需要家の総需要から需要家システム20(図1参照)内に設けられた機器23(図1参照)毎の需要に分解するディスアグリゲーション部311と、過去の実績値、直前の需要の状況、需要地に関する天気予報等に基づいて機器23別の需要を予測する需要予測部312と、小売電気事業者が市場から電力を調達する場合の価格(調達価格)を調達価格データベース33から取得する調達価格取得部313と、小売電気事業者が需要家に販売する電力の価格(売電価格)を売電価格データベース34から取得する売電価格取得部314と、機器毎に予測された需要と調達価格と売電価格との関係に基づいて機器23の稼働スケジュールを個別に調整する稼働スケジュール調整部315と、稼働スケジュールの調整に協力した需要家に対し、予め定めた規則によって特定されるポイントを付与するポイント付与部316としての機能を実行する。
本実施の形態では、個々の機器に分解した後に、需要の変動パターンが類似するグループ毎に分類している。ここでの分類には、例えば需要の変動パターンと機器の稼働タイミングとの関係を機械学習したモデルを使用してもよい。
なお、稼働のタイミングがコントロール可能であることは、稼働のタイミングの自由度が高いことを意味する。
なお、電力計21(図1参照)からほぼリアルタイムで総需要が通知され、各機器における直前(例えば数時間前からの現在時刻まで)の需要の情報も利用可能である場合には、直前の変化パターンに基づいて現在時刻以降に発生する需要の変化を予測してもよい。
同様に、当日の生産計画、活動予定等が分かれば、工場設備の需要も高い精度で予測できる。
なお、ディスアグリゲーション部311の機能は、需要予測部312の機能とは別の事業者が実行してもよく、処理結果だけを需要予測部312が取得してもよい。
売電価格取得部314は、売電価格データベース34から需要家別の売電価格を取得する。売電価格は、需要家が契約した小売電気事業者のサービスによって定まり、季節や時間帯によっても変動する。売電価格取得部314は、第2の取得手段の一例である。
このため、稼働スケジュール調整部315は、小売電気事業者の損失を低減する又は利益を増加させる時間帯を特定する機能を有している。
そこで、本実施の形態における稼働スケジュール調整部315は、調達価格がピークの時間帯を、小売電気事業者の損失を低減する又は利益を増加させる時間帯の一例として特定する。因みに、調達価格がピークの時間帯とは、他の時間帯に比べて電力の価格が高い時間帯のことであり、例えばオフィス需要が高まる7時から10時の時間帯と電灯需要が高まる17時から21時の時間帯が該当する。このようにピークとは最大の意味ではなく、極大の意味である。従って、ピークは1日の間に複数存在し得る。
そこで、本実施の形態における稼働スケジュール調整部315は、市場からの調達価格が需要家に対する売電価格よりも高い時間帯を、小売電気事業者の損失を低減する又は利益を増加させる時間帯の一例として特定する。なお、市場からの調達価格が需要家に対する売電価格よりも高い時間帯のうち、他の時間帯に比して売電価格との差がより大きい時間帯を優先してもよい。この時間帯は、小売電気事業者の調達負担がより大きい時間帯だからである。
そこで、本実施の形態における稼働スケジュール調整部315は、市場からの調達価格が需要家に対する売電価格よりも低い時間帯のうち、他の時間帯に比して売電価格との差がより小さい時間帯を、小売電気事業者の損失を低減する又は利益を増加させる時間帯の一例として特定する。調達価格と売電価格との差が小さい時間帯の需要を差がより大きい時間帯に移動できれば、小売電気事業者の利益がより大きくなるためである。
機器23の特定には、機器23の稼働の状況、稼働スケジュールの自由度の高さ、需要地の気象又は環境、需要家の活動の内容、需要の大きさ等が参照される。
ここでの特定には、例えば需要地で使用される機器23の稼働スケジュールと需要の関係を機械学習したモデルを使用してもよい。
本実施の形態における稼働スケジュール調整部315は、調整済みの稼働スケジュールを需要家に通知する機能も有している。この意味で、稼働スケジュール調整部315は、提示手段の一例でもある。
ポイント付与部316は、機器の稼働スケジュールが調整された需要家に対してポイントを付与する。ポイント付与部316は、付与手段の一例である。
図3は、実施の形態1で使用する稼働スケジュール調整サーバ31(図1参照)による制御例を説明するフローチャートである。なお、図中の記号Sはステップを表している。
図3に示す処理手順は、需要調整方法の一例である。
まず、稼働スケジュール調整サーバ31は、需要家の総需要を取得する(ステップ1)。総需要は、電力計21(図1参照)で計測される実績値であり、総需要データベース32(図1参照)から取得される。
図4は、ディスアグリゲーションを説明する図である。(A)はディスアグリゲーション前の総需要の時間変化を示し、(B)はディスアグリゲーション後の機器別の需要の時間変化を示す。ここでの横軸は時間であり、縦軸は需要である。図4の場合、横軸は1日のうちのある時間帯を表している。
一方、図4(B)に示すディスアグリゲーション後の波形からは、総需要の時間変化を示す波形だけでなく、需要地で用いられている機器毎の需要の時間変化も把握できる。
例えば需要地の天気予報、需要家の活動予定等を用いて機器毎に需要を予測する。空調機器の需要は、予測の対象とする日の気温や湿度の影響を受けて変動し易い特徴がある。
また例えば受注量に応じて稼働の状態が変動する工場設備の需要は、予測の対象とする日の生産スケジュールの影響を受けて変動し易い特徴がある。
機器毎の需要にディスアグリゲーションされていることで、機器毎の需要は高い精度での予測が可能である。
なお、調達価格と売電価格の取得のタイミングは、図3に示すタイミングに限らない。ステップ6の処理が開始されるまでに取得されていればよい。
次に、稼働スケジュール調整サーバ31は、小売電気事業者の損失を低減する又は利益を増加させる時間帯を特定する(ステップ6)。例えば調達価格がピークの時間帯が特定される。また例えば小売電気事業者の損失が大きい時間帯又は利益が小さい時間帯が特定される。これらの時間帯は、調達価格と売電価格の比較により特定される。
図5は、需要と電気の取引価格の関係を説明する図である。(A)は需要家の総需要と機器毎の需要の関係を示し、(B)は市場からの調達価格と需要家に対する売電価格の関係を示す。
図5(A)の横軸は時間であり、縦軸は需要である。一方、図5(B)の横軸は時間であり、縦軸は価格(例えば円)である。
図5の場合、横軸は1日であり、時間軸の左端が0時、右端が24時である。従って、時間軸の中央は12時である。
図5(A)に示す総需要は午前と午後に2つのピークを有している。図5(A)に示す総需要は、待機電力と、空調機器の需要と、稼働が必須の工場設備の需要と、稼働のタイミングをコントロール可能な工場設備の需要とで構成されている。空調機器の需要は午前よりも午後に増加することが分かる。稼働のタイミングをコントロール可能な工場設備の需要も同じである。
図5の場合、需要家に対する売電価格に比して調達価格が高い午後の時間帯に総需要が増加しており、その原因が、空調機器の需要、稼働が必須の工場設備の需要、稼働のタイミングがコントロール可能な工場設備の需要であることが分かる。
理想的には、売電価格より高い時間帯に稼働している全ての機器23を、調達価格が売電価格よりも低い時間帯の稼働に切り替えることが望ましい。
もっとも、現実には様々な制約により、そのような調整は困難である。例えば外気温が35℃以上の場合に空調機器を止めることは困難である。また、生産能力の観点からも、必要な生産量を確保できない可能性がある。
そこで、本実施の形態の場合には、稼働のタイミングをコントロール可能な工場設備に限り、午後の稼働を午前中に前倒ししている。
図6(A)の横軸は時間であり、縦軸は需要である。一方、図6(B)の横軸は時間であり、縦軸は価格(例えば円)である。図6の場合も、横軸は1日であり、時間軸の左端が0時、右端が24時である。
図3の説明に戻る。本実施の形態の場合、稼働スケジュール調整サーバ31は、調整後の稼働スケジュールを需要家に通知する(ステップ9)。もっとも、稼働スケジュールの自動調整の了解が事前に得られている場合には、この通知は不要である。
図7は、需要家側の機器制御端末25に表示される通知画面260の一例を示す図である。
図7に示す通知画面260は、タイトル261と、説明文262と、許可用のボタン(図中の「はい」)263と、不許可用のボタン264(図中の「いいえ」)とで構成されている。
説明文262には、協力をお願いする内容、協力頂ける場合に付与する対価の内容、需要家に求める作業の内容が記載されている。具体的には、「稼働スケジュールの調整へのご協力をお願いいたします。調整にご協力いただいた場合、××ポイントを付与させていただきます。ご協力いただけますか?」との文が記載されている。
図7の場合、稼働スケジュールを調整する機器や調整後の稼働スケジュールの内容が示されていないが、示されることが望ましい。
付与される価値の大きさは、固定値でもよいし、小売電気事業者が受ける利益に連動して増減してもよい。
図3の説明に戻る。稼働スケジュール調整サーバ31は、調整が許可されたか否かを判定する(ステップ10)。
一方、ステップ10で否定結果が得られた場合(図7でボタン264が操作された場合)、稼働スケジュール調整サーバ31は、ポイントを付与することなく、稼働スケジュールの調整をキャンセルする(ステップ12)。この場合、需要家の機器制御端末25は、通知された調整後の稼働スケジュールを実行しない。
一方、稼働スケジュールの調整に協力した需要家においても、ポイント等の価値を受け取ることができる。ポイントを付与する主体は、本実施の形態に係るサービスを提供する事業者でもよいし、小売電気事業者でもよい。
また、本実施の形態に係るサービスの普及により、電力の需給関係が緩和され、市場における取引価格の低減も期待される。
前述の実施の形態1の場合には、小売電気事業者側の都合により機器毎の稼働スケジュールを調整しているが、本実施の形態の場合には、需要家側の都合により機器毎の稼働スケジュールを調整する。
図8に示すネットワークシステム1Aは、電力系統10を通じて受電する需要家システム20Aと、需要家システム20Aに設けられている分散型電源26から電力を買い取る場合の価格(買取価格)と小売電気事業者が需要家に販売する電気の価格(売電価格)との関係に応じて需要家システム20Aを構成する機器23の稼働スケジュールを調整するサービスを提供する稼働スケジュール調整システム30Aと、通信網としてのインターネット40とで構成されている。
ここでの稼働スケジュール調整システム30Aは、需要調整システムの一例である。
本実施の形態では、分散型電源26で発電された電力のうち余剰電力が電力系統10に逆潮される。このため、電力計21は、逆潮される電力量も計測する機能を備えている。逆潮された電力は、小売電気事業者によって買い取られる。なお、単位電力量当たりの買電価格は、予め定められている。
詳細については後述するが、稼働スケジュール調整システム30Aは、電力系統10に逆潮される電力(逆潮電力)が発生する時間帯に他の時間帯の需要の一部を移動させることにより、需要家が小売電気事業者に支払う電気料金の低減を実現する。なお、売電価格が買電価格よりも高いことが前提である。本実施の形態の場合も、稼働スケジュールの調整には、需要家の活動と機器の役割との関係が考慮される。
ここでの稼働スケジュール調整システム30Aも、需要調整システムの一例である。
また、稼働スケジュール調整サーバ31Aは、稼働スケジュールの調整のために参照する情報が実施の形態1と異なっている。稼働スケジュールの調整手法の詳細については後述する。
図9に示す稼働スケジュール調整サーバ31Aは、各需要家の総需要から需要家システム20A(図8参照)内に設けられた機器23(図8参照)毎の需要に分解するディスアグリゲーション部311と、過去の実績値、直前の需要の状況、需要地に関する天気予報等に基づいて機器23別の需要を予測する需要予測部312と、小売電気事業者が需要家に販売する電力の価格(売電価格)を売電価格データベース34から取得する売電価格取得部314と、需要家が小売電気事業者に販売する電力の価格(買電価格)を買電価格データベース36から取得する買電価格取得部317と、需要家が小売電気事業者に販売した電力の履歴を買電履歴データベース37から取得する買電履歴取得部318と、機器毎に予測された需要と買電価格と売電価格との関係に基づいて機器23の稼働スケジュールを個別に調整する稼働スケジュール調整部315Aとしての機能を実行する。
本実施の形態における稼働スケジュール調整部315Aは、分散型電源26(図8参照)が電力系統10に電力を逆潮する時間帯を予測する機能を有している。電力系統10への逆潮が発生する時間帯は、需要家が設置する分散型電源26の種類や需要家の需要のパターンによっても異なる。
機器23の特定の手法は、実施の形態1で説明した稼働スケジュール調整部315(図2参照)と同じである。
図10に示す処理手順は、需要調整方法の一例である。
本実施の形態における稼働スケジュール調整サーバ31Aは、ステップ1~ステップ3(図3参照)の実行後に、需要家からの買電価格を取得する(ステップ21)。
この後、稼働スケジュール調整サーバ31Aは、需要家に対する売電価格を取得する(ステップ5)。
発電される時間帯と発電量が分かれば、機器別の需要の大小関係により逆潮が発生する時間帯を予測することが可能である。言うまでもなく、発電された電力を機器23で優先的に消費する設定であり、かつ、分散型電源26の発電量よりも機器23の総需要の方が大きい場合には逆潮が発生しない。逆潮が発生しない場合、以下の処理はスキップされる。
図11(A)の横軸は時間であり、縦軸は需要である。図11(A)の場合、横軸は1日であり、時間軸の左端が0時、右端が24時である。従って、時間軸の中央は12時である。
図11(A)に示す需要の波形は、図5に示す需要の波形と同じである。また、ディスアグリゲーション後の機器毎の需要も同じである。
図11(B)の場合、逆潮電力の発生を示す波形は、12時付近に現れている。なお、需要家が小売電気事業者から購入する電気の価格(買電価格)は1日を通して25円/kWhであるのに対し、需要家が小売電気事業者に販売する電気の価格(売電価格)は10円/kWhである。勿論、具体的な数値は一例である。いずれにしても、売電価格が買電価格より低いので、需要家は売電するよりも自身で消費した方が小売電気事業者に支払う電気料金が安く済む。なお、売電に対して受け取る金額も減るが、それ以上に小売電気事業者に支払う電気料金が減る。
図12には、図11との対応部分に対応する符号を付して示している。
図12(A)の横軸は時間であり、縦軸は需要である。図12(B)の横軸は時間である。なお、縦軸は逆潮電力である。図12の場合も横軸は1日であり、時間軸の左端が0時、右端が24時である。従って、時間軸の中央は12時である。
図12(A)では、稼働スケジュールの調整に伴う需要の変化を矢印で表している。12時付近の矢印は需要の増加を表し、午後の矢印は需要の低下を表している。このことは、逆潮電力が発生する時間帯の需要が増加し、逆潮電力が発生しない時間帯の需要が低下することを意味する。このため、需要が低下した時間帯に需要家が小売電気事業者に支払う電気料金は稼働スケジュールを調整する前に比して低下する。
また、図12(B)では、逆潮電力のピーク値が低下している。このことは、自家消費分の増加により需要家が小売電気事業者に販売する逆潮電力が減ることを意味している。一方で、前述したように、午後の時間帯では、需要家が小売電気事業者から購入する電力が、逆潮電力と同量だけ低減している。
ここで、電気料金が実質的に低減されるとは、需要家が、受電の対価として小売電気事業者に支払う電気料金から売電の対価として小売電気事業者から受け取る金額を差し引いた金額が低減することをいう。
図13は、需要家側の機器制御端末25に表示される通知画面260Aの一例を示す図である。
図13に示す通知画面260Aは、タイトル261Aと、説明文262Aと、許可用のボタン(図中の「はい」)263Aと、不許可用のボタン264A(図中の「いいえ」)とで構成されている。
ここでの実質利益とは、前述したように、需要家が電気料金として小売電気事業者に支払う金額から売電に対する対価として需要家が小売電気事業者から受け取る金額を差し引いた金額が、調整前から減少する金額のことである。
本実施の形態の場合、対価は、需要家の実質的な利益を表しているが、予め定めた固定値でもよい。
図10の説明に戻る。稼働スケジュール調整サーバ31Aは、調整が許可されたか否かを判定する(ステップ10)。
一方、ステップ10で否定結果が得られた場合(図13でボタン264Aが操作された場合)、稼働スケジュール調整サーバ31Aは、稼働スケジュールの調整をキャンセルする(ステップ12)。この場合、需要家の機器制御端末25は、通知された調整後の稼働スケジュールを実行しない。
本実施の形態では、小売電気事業者が需要家から買い取る電力の価格が、小売電気事業者が需要家に販売する電力の価格よりも常に安い。このため、需要家は、稼働スケジュールの調整による受電電力の低減により、利益を受けることが可能になる。
また、需要家での需要が大きい時間帯は、市場で取引される電力の価格が高いため、小売電気事業者にとっても供給する電力の低減によって調達費用を低減することが可能である。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、前述の実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
具体的には、売電気事業者が需要家に販売する電力の価格が、需要家から売電気事業者が買い取る電力の価格より高い時間帯における需要が他に比べて多い機器23から優先的に電力が逆潮される時間帯に稼働スケジュールを移動させるように制御を実行してもよい。この処理は、実施の形態2で説明した処理手順(図10参照)によって実現できる。
この場合、稼働スケジュール調整サーバ31等による制御は、特定の需要家だけを対象とする専用の制御となる。なお、稼働スケジュール調整サーバ31A等の機能は、分散型電源26の一部として実装されてもよい。
また、前述の実施の形態の場合には、需要家システム20を構成する機器23の一例として動力機器を例示しているが、機器23は動力機器に限らず事務機器や家庭用機器でもよい。
また、前述の実施の形態の場合には、稼働のタイミングをコントロール可能な工場設備の稼働スケジュールを1日の範囲で再スケジュールしているが、ある日の作業を別の日に割り当てる等、複数日にわたって再スケジュールしてもよい。
また、前述の実施の形態においては、稼働スケジュールの調整の内容を需要家に対して事前に通知しているが、需要家には事後的に通知してもよい。
Claims (5)
- 需要家の総需要を分析して機器毎の需要を推定する推定手段と、
前記需要家の分散型電源が電力を逆潮する時間帯と機器毎の需要の時間変化との関係に基づいて、当該需要家が小売電気事業者に支払う電気料金が実質的に低減されるように、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯とは別の時間帯に稼働する機器を、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯に稼働するように、機器の稼働スケジュールを調整する調整手段と
を有する需要調整システム。 - 機器に応じた稼働スケジュールの調整を通知する画面を前記需要家に提示する提示手段を更に有する、請求項1に記載の需要調整システム。
- 調整後の稼働スケジュールにより、対応する機器の動作を個別に制御する制御手段を更に有する、請求項1に記載の需要調整システム。
- コンピュータに、
需要家の総需要を分析して機器毎の需要を推定する処理と、
前記需要家の分散型電源が電力を逆潮する時間帯と機器毎の需要の時間変化との関係に基づいて、当該需要家が小売電気事業者に支払う電気料金が実質的に低減されるように、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯とは別の時間帯に稼働する機器を、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯に稼働するように、機器の稼働スケジュールを調整する処理と
を実行させる需要調整方法。 - コンピュータに、
需要家の総需要を分析して機器毎の需要を推定する機能と、
前記需要家の分散型電源が電力を逆潮する時間帯と機器毎の需要の時間変化との関係に基づいて、当該需要家が小売電気事業者に支払う電気料金が実質的に低減されるように、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯とは別の時間帯に稼働する機器を、前記分散型電源が電力を逆潮する時間帯に稼働するように、機器の稼働スケジュールを調整する機能と
を実現させるためのプログラム。
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