本発明は、工作機械等の産業機械で使用されるリニアモータに関する。
工作機械等の産業機械では、高速化、または、高精度化を実現するための手段としてリニアモータが使用されている。特に、長ストロークの機械においては、高価な永久磁石を可動子側に配置することで、永久磁石の使用量を少なくして、モータの低コスト化を実現したリニアモータが使用されることが多い。
図6は、従来のリニアモータを示す図である。図6において、固定子12は、例えば、電磁鋼板を積層して形成され、表面には、固定子磁気ヨーク21より突出するように、ピッチPの間隔で突極10が配置されている。可動子11も、固定子12と同様に、例えば電磁鋼板を積層して形成され、可動子磁気ヨーク20と、U,V,W相のティース13,14,15と、を持つ。ティース13,14,15は、それぞれが突極10に対して、X軸方向に相対的に電気角で120度に相当するP/3だけずらして配置されている。ティース13,14,15には、それぞれU,V,W相の3相交流巻線16,17,18が巻回されている。また、複数あるティース13,14,15の各ティースは、ピッチP/2で配列されており、各ティースの間には永久磁石19が配置されている。永久磁石19は、隣り合う永久磁石19と磁化方向が逆向きとなるように配置されている。図6において矢印は、永久磁石19の磁化方向を示している。
このようなリニアモータにおいて、長ストロークの可動範囲を実現する場合には、安価な電磁鋼板を積層して形成した簡単な構造の固定子ブロックを繰り返し並べて配置するだけで実現できる。さらに、高価な永久磁石19を可動子側に配置し、永久磁石の使用量を減らすことができるため、リニアモータの製作コストを低く抑えることができる。
また、上述したリニアモータの応答性向上や高速度領域の推力向上を目的に、可動子11に非磁性体からなる磁束障壁22を設け、巻線のインダクタンスを低減したリニアモータが知られている。かかるリニアモータを図7、図8、図9に示す。なお、図7、図8、図9は、可動子11の1相分の構成図であり、固定子12を省略し、可動子11の1相分のみを示している。
図7において、磁束障壁22は、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15との間に配置され、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15とを分離している。
図8において、磁束障壁22は、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15との間に配置され、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15とが磁束障壁22のX軸方向端部の2か所でつながっている。
図9において、磁束障壁22は、永久磁石19を挿入するための磁石挿入穴とつながるように配置されている。
しかし、上述した従来のリニアモータは、それぞれ以下に説明するような課題があった。
図7に示すリニアモータでは、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15が分離され別部品となるため、リニアモータの製作コスト増大や、組立精度悪化による推力リップル増大が課題となる。
また、図7、図8に示すリニアモータでは、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15との間に磁束障壁22を配置するため、可動子11のY軸方向の寸法増加を防止するには、磁束障壁22のY軸方向の寸法と同じだけ永久磁石19のY軸方向の寸法を小さくする必要があり、リニアモータ体積当たりの推力が低下してしまう。
また、図9に示すリニアモータでは、永久磁石19と磁束障壁22が接する部分において、磁束障壁22が永久磁石19から出入りする有効磁束を妨げるため、永久磁石19の磁束を有効に利用できず、リニアモータ体積当たりの推力が低下してしまう。
本明細書で開示するリニアモータは、規定の移動方向に一定間隔で配列される複数の突極を有する固定子と、前記移動方向に移動可能であって、前記移動方向と直交する対向方向において前記固定子と対向する可動子と、を備え、前記可動子は、前記移動方向に並ぶ複数のティースと、前記ティースに巻回される三相交流巻線と、複数の前記ティースを繋ぐ可動子磁気ヨークと、互いに同相の前記ティースの間の間隙に配置される永久磁石と、複数の前記ティースそれぞれの根元近傍に埋め込まれる磁束障壁であって、前記ティースの前記移動方向の幅内に完全に収まり、前記永久磁石から前記移動方向に離間して配置された磁束障壁と、を有する、ことを特徴とする。
この場合、前記磁束障壁は、前記可動子磁気ヨークと前記ティースを跨ぐように配置されてもよい。
また、前記磁束障壁の前記対向方向の寸法は、前記磁束障壁の前記可動子の前記移動方向の寸法よりも大きくてもよい。
また、前記磁束障壁は、前記ティースの前記移動方向の中心に配置されていてもよい。
本明細書で開示するリニアモータによれば、リニアモータ体積当たりの推力の向上を図ることができる。
リニアモータの概略構成を示す図である。
リニアモータの磁束を示す図である。
他のリニアモータの概略構成を示す図である。
他のリニアモータの概略構成を示す図である。
他のリニアモータの概略構成を示す図である。
従来のリニアモータの概略構成を示す図である。
従来のリニアモータの可動子1相分の構成を示す図である。
従来のリニアモータの可動子1相分の構成を示す図である。
従来のリニアモータの可動子1相分の構成を示す図である。
図1は、リニアモータの概略構成を示す図である。なお、各図面において、X軸方向は、可動子11の移動方向を示し、Y軸方向は、移動方向と直交する方向を示す。固定子12は、例えば、電磁鋼板を積層して形成される。固定子12は、X軸方向に長尺な固定子磁気ヨーク21と、この固定子磁気ヨーク21のY軸方向端面から突出する複数の突極10と、を有する。複数の突極10は、ピッチPの間隔でX方向に並んでいる。
可動子11は、例えば、電磁鋼板を積層して形成され、Y軸方向において固定子12と対向している。可動子11は、可動子磁気ヨーク20と、U,V,W相のティース13,14,15と、を持つ。各相のティース13,14,15は、それぞれが突極10に対して、X軸方向に相対的に電気角で120度に相当するP/3だけずらして配置されている。各相のティース13,14,15には、それぞれU,V,W相の3相交流巻線16,17,18が巻回されている。また、同相のティースは、ピッチP/2で配列されており、同相のティースの間の間隙である磁石挿入孔には永久磁石19が配置されている。永久磁石19は、同相、かつ、隣接する永久磁石19と、その磁化方向が逆向きとなるように配置されている。図1において矢印は永久磁石19の磁化方向を示している。
また、複数のティース13,14,15それぞれの根元には、巻線のインダクタンスを低減するための非磁性体からなる磁束障壁22が配置されている。磁束障壁22は、ティース13,14,15それぞれのX軸方向幅内に完全に収まっており、ティース13,14,15のX軸方向中心付近に配置されている。また、図1から明らかなとおり、磁束障壁22は、隣接する永久磁石19からX軸方向に離間して配置されており、磁束障壁22と隣接する永久磁石19との間には、僅かな間隙が形成されている。
ここで、磁束障壁22の作用について、図2を用いて説明する。図2は、可動子11の1相分の構成図であり、固定子12を省略し、可動子11の1相分のみを示している。図2には、可動子11内に生じる磁束を示している。磁束51は、3相交流巻線16,17,18を通電した際に生成される磁束を示し、磁束52は、永久磁石19の端部においてN極からS極に短絡する磁束を示している。磁束障壁22は、これら磁束51および磁束52の通過を妨げるように配置されている。磁束51の通過が妨げられ磁束量が減少すると巻線インダクタンスが低減し、これによってリニアモータの応答性や、高速度領域の推力を向上できる。また、磁束52は、推力発生に作用しない無駄な磁束であるため、磁束52が減少した分だけ推力発生に有効に作用する磁束が増加し、リニアモータ体積当たりの推力を向上することができる。
ここで、本例によれば、磁束障壁22によって可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15が分離されないため、リニアモータの製作コストが増大したり、組立精度悪化による推力リップルが増大しない。
また、本例では、磁束障壁22が、ティース13,14,15のX軸方向幅内に完全に収まっているため、磁束障壁22が、永久磁石19のY軸方向寸法に影響を与えることがない。その結果、磁束障壁22を配置しても、永久磁石19の寸法が制限されないため、リニアモータ体積当たりの推力を向上できる。
また、永久磁石19と磁束障壁22が接さず、両者の間に間隙が存在するため、磁束障壁22を設けても、永久磁石から出入りする有効磁束の流れが阻害されない。結果として、永久磁石19の磁束を有効に推力発生に利用できるため、リニアモータ体積当たりの推力を向上できる。
なお、図1に示すように磁束障壁22を、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15を跨ぐように配置すると、磁束障壁22を可動子磁気ヨーク20に配置する場合と比較して、磁束障壁22が可動子磁気ヨーク20に占める面積を抑えることができる。磁束障壁22の可動子磁気ヨーク20に占める面積が大きいと、リニアモータの推力発生時に可動子磁気ヨーク20において磁気飽和が生じやすくなり、発生推力が低下しやすくなる。よって、磁束障壁22を、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15を跨ぐように配置することで、リニアモータ体積当たりの推力を向上できる。
また、磁束障壁22の可動子11移動方向と直交する方向の寸法は、磁束障壁22の可動子11移動方向の寸法より大きいことが望ましい。磁束障壁22の可動子11移動方向と直交する方向の寸法が大きい程、磁束51、磁束52に対する磁束障壁22の磁気抵抗が大きくなるため、磁束51、磁束52の通過がより妨げられることになる。これによって、リニアモータの応答性や、高速度領域の推力、リニアモータ体積当たりの推力をより向上することができる。
なお、ここまで説明した構成は、一例であり、ティースのX軸方向の幅内に完全に納まる磁束障壁22が、ティース13,14,15の根元近傍かつ永久磁石19からX軸方向に離間して配置されるのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、図3に示すように、一部の磁束障壁22aは、永久磁石19からX軸方向に離間しているのであれば、ティース13,14,15のX軸方向中心から偏って配置されてもよい。また、磁束障壁22は、ティース13,14,15の根元付近に配置されるのであれば、可動子磁気ヨーク20とティース13,14,15を跨がなくてもよい。したがって、磁束障壁22は、図4に示すように、そのY軸方向範囲が、完全に、ティース13,14,15のY軸方向範囲内に収まるのでもよい。また、磁束障壁22は、図5に示すように、完全に、ティース13,14,15のY軸方向外側に位置しており、ティース13,14,15内に磁束障壁22が、なくてもよい。
11 可動子、12 固定子、13,14,15 ティース、16,17,18 3相交流巻線、19 永久磁石、20 可動子磁気ヨーク、21 固定子磁気ヨーク、22 磁束障壁、51,52 磁束。