JP7461331B2 - 複合構造体、電池、飛行体、及び、電池の製造方法 - Google Patents

複合構造体、電池、飛行体、及び、電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複合構造体、電池、飛行体、及び、電池の製造方法に関する。
特許文献1には、固体電解質を含む全固体リチウムイオン二次電池が開示されている。特許文献2及び特許文献3には固体電解質ポリマーが開示されている。また、特許文献1及び特許文献4には、樹脂集電体を備える二次電池用の電極が開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2020-87922号公報
[特許文献2] 特開2020-84041号公報
[特許文献3] 特開2010-142108号公報
[特許文献4] 特開2021-93288号公報
本発明の第1の態様においては、複合構造体が提供される。上記の複合構造体は、例えば、一対の電極、及び、一対の電極の間に配されるセパレータを備える電池に用いられる。上記の複合構造体は、例えば、有機化合物を活物質として含む電極材料を備える。上記の複合構造体は、例えば、高分子固体電解質を含む固体電解質層を備える。
上記の複合構造体において、固体電解質層は、80質量%以上の真正高分子固体電解質を含んでよい。上記の複合構造体において、高分子固体電解質は、(i)0.1013MPa、25℃の条件下におけるN‐メチル-2‐ピロリドン(NMP)に対する溶解度が1[g/ml-NMP]以上の有機高分子化合物、(ii)0.1013MPa、20℃の条件下における水に対する溶解度が1[g/ml-水]以上の有機高分子化合物、及び、(iii)0.1013MPa、20℃の条件下におけるメタノールに対する溶解度が1[g/ml-メタノール]以上の有機高分子化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでよい。
上記の複合構造体において、高分子固体電解質のイオン伝導度は、60℃の条件下で1×10-4 [S/cm]以上であってよい。上記の複合構造体において、有機化合物のヤング率に対する高分子固体電解質のヤング率の割合は、0.7~1.3であってよい。
上記の複合構造体において、高分子固体電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物を含んでよい。高分子固体電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。固体電解質層は、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物からなる。
上記の複合構造体において、有機化合物は、(i)0.1013MPa、25℃の条件下におけるエチレンカーボネート(EC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l-EC]の有機化合物、及び、(ii)0.1013MPa、25℃の条件下におけるジエチルカーボネート(DEC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l-DEC]の有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでよい。
上記の複合構造体において、電極材料は、有機化合物を含む活物質層を有してよい。上記の複合構造体において、活物質層の体積に対する、活物質としての有機化合物の体積の割合は、60~80%であってよい。上記の複合構造体において、活物質としての有機化合物は、上記の割合が80%を超える場合に、活物質層の容量が活物質層の理論容量の50%未満となる化合物であってよい。上記の複合構造体において、活物質層は、有機化合物と、イオン伝導性材料とを含んでよい。
上記の複合構造体は、集電体を備えてよい。上記の複合構造体において、電極材料は、集電体と、固体電解質層との間に配されてよい。上記の複合構造体において、集電体は樹脂シートと、樹脂シートの少なくとも一方の面に配された導電層とを有してよい。
上記の複合構造体において、有機化合物は、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでよい。下記の化学式において、R及びR'は、それぞれ独立して、水素、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、又は、有機基を示す。
上記の複合構造体において、高分子固体電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでよい。上記の複合構造体において、有機化合物は、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでよい。下記の化学式において、R及びR'は、それぞれ独立して有機基を示す。
上記の複合構造体において、電極材料は、一対の電極の少なくとも一方又はその一部として機能してよい。上記の複合構造体において、固体電解質層は、セパレータとして機能してよい。
本発明の第2の態様においては、電池が提供される。上記の電池は、例えば、第1の態様に係る各種の複合構造体を備える。上記の電池は、例えば、負極を備える。上記の電池において、複合構造体の電極材料は、例えば、電池の正極又はその一部として機能する。上記の電池において、複合構造体の固体電解質層は、例えば、正極及び負極の間に配され、電池のセパレータとして機能する。
本発明の第3の態様においては、電池が提供される。上記の電池は、例えば、第1の態様に係る各種の複合構造体を備える。上記の電池は、例えば、正極を備える。上記の電池において、複合構造体の電極材料は、例えば、電池の負極又はその一部として機能する。上記の電池において、複合構造体の固体電解質層は、例えば、正極及び負極の間に配され、電池のセパレータとして機能する。
上記の第2の態様又は第3の態様において、電池は、(a)(i)支持電解質塩及び溶媒を含む電解液、及び、(ii)支持電解質塩、有機高分子化合物及び有機溶媒を含むゲル電解質の少なくとも一方を含まなくてよい。電池は、(b)活物質として用いられる有機化合物の質量に対する、電解液及びゲル電解質の質量の割合が、5%未満であってよい。
本発明の第4の態様においては、飛行体が提供される。上記の飛行体は、例えば、上記の第2の態様又は第3の態様に係る電池を備える。上記の飛行体は、例えば、電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置を備える。
本発明の第5の態様においては、一対の電極、及び、一対の電極の間に配されるセパレータを備える電池の製造方法が提供される。上記の製造方法は、例えば、一対の電極を準備する段階を有する。上記の製造方法は、例えば、セパレータを準備する段階を有する。上記の製造方法は、例えば、一対の電極及びセパレータを用いて二次電池を組み立てる段階を有する。上記の製造方法において、一対の電極の少なくとも一方は、例えば、活物質として機能する有機化合物の層を含む。上記の製造方法において、セパレータは、例えば、高分子固体電解質を含む。上記の製造方法において、例えば、一対の電極を準備する段階、及び、電池を組み立てる段階において、一対の電極のうち有機化合物を含む電極に加えられる圧力の最大値は、上記の層の体積に対する、活物質として機能する有機化合物の体積の割合が80%以下となるように調整される。
上記の製造方法において、一対の電極を準備する段階は、有機化合物及び溶媒を混合して、スラリーを生成する段階を含んでよい。一対の電極を準備する段階は、集電体にスラリーを塗布する段階を含んでよい。一対の電極を準備する段階は、スラリーを乾燥させる段階を含んでよい。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。 蓄電セル112の一例を概略的に示す。 集電体300の一例を概略的に示す。 蓄電セル112の他の例を概略的に示す。 蓄電セル112の製造方法の一例を概略的に示す。 参考例1の二次電池の電池容量の確認試験の結果を示す。 実施例1の二次電池の充放電サイクル試験の結果(充放電曲線)を示す。 実施例1の二次電池の充放電サイクル試験の結果(サイクル特性)を示す。 比較例1の二次電池の充放電サイクル試験の結果(充放電曲線)を示す。
本明細書において例示される実施形態によれば、電池(特に、二次電池である。)に用いられる構造体(複合構造体と称される場合がある。)が、有機化合物を活物質として含む電極材料と、高分子固体電解質を含む固体電解質層とを備える。複合構造体の電極材料は、複合構造体が電池に組み込まれた場合に、当該電池の正極又は負極として機能し得る。一実施形態において、電極材料が正極活物質として機能する有機化合物を含む場合、電極材料は、電池の正極又はその一部として機能する。他の実施形態において、電極材料が負極活物質として機能する有機化合物を含む場合、電極材料は、電池の負極又はその一部として機能する。
本実施形態に係る複合構造体が電池に組み込まれた場合、複合構造体の固体電解質層は、正極及び負極の接触による内部短絡を防止するためのセパレータとして機能し得る。これにより、例えば、支持電解質塩及び溶媒(例えば、非プロトン系有機溶媒である。)を含む溶液(電解液と称される場合がある。)又はゲル(ゲル電解質と称される場合がある)を実質的に含まない電池(全固体電池と称される場合がある。)が作製され得る。
一般的に、電池の活物質として利用可能な有機化合物(有機活物質と称される場合がある。)は、電池の活物質として利用可能な無機化合物(無機活物質と称される場合がある。)と比較して軽量である。本実施形態によれば、複合構造体の電極材料が有機活物質を含む。そのため、本実施形態に係る複合構造体が電池に組み込まれた場合、当該電池のエネルギー密度が向上する。特に、電池の活物質として、分子量が比較的小さく、多電子授受能を有する有機分子が使用されることで、当該電池のエネルギー密度が大きく向上し得る。特に、電池の質量エネルギー密度[Wh/kg]が大きく向上する。
一方、有機活物質は、一般的に、無機活物質と比較して、上記の電解液又はゲル電解質に含まれる溶媒に対する溶解度が大きい。そのため、有機活物質を用いて寿命の長い電池を作製することは難しい。
上記の課題に対する解決手段としては、電池の活物質として、当該電池の電解液又はゲル電解質に含まれる溶媒に対する溶解度の比較的小さな有機活物質を用いることが考えられる。例えば、ナフタザリン二量体は、上記の溶媒に対する溶解度が比較的小さく、且つ、容量も大きい。
上記の課題に対する他の解決手段としては、電池の電解液又はゲル電解質に含まれる溶媒の量を減少させることが考えられる。本実施形態によれば、複合構造体が固体電解質層を備えることにより、電解液若しくはゲル電解質を含まない電池、又は、電解液若しくはゲル電解質を実質的に含まない電池が作製され得る。これにより、有機活物質を用いて、比較的寿命の長い電池が作製され得る。
例えば、本実施形態に係る複合構造体が電極及びセパレータとして利用された全固体電池の寿命は、電解液又はゲル電解質と、電解液又はゲル電解質に含まれる溶媒に比較的溶解しやすい有機活物質とを含む電池の寿命よりも長くなり得る。また、本実施形態によれば、分子量が比較的小さく、多電子授受能を有する任意の有機分子を、有機活物質として使用することができる。なお、本実施形態においては、溶媒に対する溶解度が比較的小さい有機分子だけでなく、溶媒に対する溶解度が比較的小さい有機分子も、有機活物質として使用され得る。
加えて、本実施形態によれば、複合構造体の固体電解質層は、高分子固体電解質を含む。これにより、複合構造体の電極材料が有機活物質を含むことで電池のエネルギー密度が大きく向上するという効果が、さらに顕著となり得る。本発明者らは、上記の有機活物質及び高分子固体電解質の相乗効果を発見し、有機化合物を活物質として含む電極材料と、高分子固体電解質を含む固体電解質層とを備える複合構造体が、電池の用途への使用に適することを見出した。
例えば、特許文献1においては、活物質として導電性高分子が利用可能であることが開示されているにすぎず、固体電解質膜の材料として高分子固体電解質を利用することは開示されていない。特許文献1には、実施例として、正極活物質としてのLiSと、固体電解質としてのLiPSと、負極活物質としてのリチウム金属とを用いて、全固体リチウムイオン二次電池を作製したことが開示されているに過ぎない。特許文献1においては、固体電解質膜として硫化物系のLiPSが使用されているので、固体電解質膜及び正極合材を接合するために、1 ton/cm という高圧でのプレスが必要とされている。また、固体電解質膜及びリチウム金属箔を接合するために、1 ton/cm という高圧でのプレスが必要とされている。
本発明者らは、固体電解質のセパレータと、正極及び/又は負極とを高圧で圧着させて電池を作製した場合に、当該電池の容量が理論容量を大きく下回ることがあることを見出した。このような現象は、活物質として有機化合物を用いた場合に特に顕著であった。この理由は定かではないが、プレス工程における高圧により活物質層中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスが切断されるためと推測される。
つまり、プレス工程前の活物質層においては、複数の活物質粒子の間に空隙が存在する。上記の空隙の間に、電解質、導電助剤などが配されることで、イオン伝導パス、電子伝導パスなどが形成され得る。一実施形態によれば、活物質粒子の空隙の間に、電解質が溶媒に溶解した電解液が入り込んむことで、活物質粒子の空隙の間に電解質が配される。他の実施形態によれば、活物質及び固体電解質を含む活物質層が作製されることで、活物質粒子の空隙の間に固体電解質が配される。
しかし、電池の製造過程において、活物質層に高圧が印加されると、ヤング率の小さな活物質粒子が変形したり、活物質粒子同士が密着したりすることで、活物質層の体積に対する活物質の体積の割合が増加する。例えば、活物質層の作製過程において500MPa程度の高圧が印加されていない場合、当該活物質層の体積に対する、活物質として機能する有機化合物の体積の割合は、60~80%程度である。一方、活物質層に500MPa程度の高圧が印加されると、活物質層の体積に対する、活物質として機能する有機化合物の体積の割合が、例えば、80%を超える。
活物質層の体積に対する活物質の体積の割合が大きくなるにつれて、活物質粒子の間に配されていた電解質及び/又は導電助剤が、活物質層の外部に押し出される。これにより、活物質層中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスが切断される。活物質層中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスが切断されると、活物質層及び/又は電池の容量が著しく減少し得る。
これに対して、セパレータの材料として高分子固体電解質を利用した場合、高圧のプレス工程を経ることなく、セパレータと、正極及び/又は負極とを接合することができる。その結果、有機活物質を用いて電池を作製した場合であっても、当該電池の容量がその理論容量を大きく下回るという現象が抑制され得る。
また、本実施形態によれば、上記の複合構造体を含む電池、及び、当該電池を含む飛行体が提供される。これにより、活物質の単位質量あたりの容量[mAh/g-活物質]の大きな蓄電セルが作製され得る。その結果、例えば、単位質量あたりのエネルギー密度が350[Wh/kg-蓄電セル]以上の蓄電セルが提供され得る。また、本実施形態に係る蓄電セルを備えた電池は、単位質量あたりのエネルギー密度が大きいので、飛行体の用途に特に適している。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。また、「置換又は非置換」とは、「任意の置換基で置換されている、又は、置換基で置換されていない」ことを意味する。上記の置換基の種類は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。また、上記の置換基の個数は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。
(飛行体100の概要)
図1は、飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110と、電力制御回路120と、1又は複数の電動機130と、1又は複数のプロペラ140と、1又は複数のセンサ150と、制御装置160とを備える。本実施形態において、蓄電池110は、1又は複数の蓄電セル112を有する。
本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110に蓄積された電気エネルギーを利用して飛行する。飛行体100としては、飛行機、飛行船又は風船、気球、ヘリコプター、ドローンなどが例示される。
本実施形態において、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、外部の充電装置(図示されていない。)から電気エネルギーを受領し、当該電気エネルギーを1以上の蓄電セル112に蓄積する。また、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、1以上の蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを電動機130に供給する。
本実施形態において、蓄電セル112は、電気エネルギーを蓄積する(蓄電セル112の充電と称される場合がる)。また、蓄電セル112は、蓄積された電気エネルギーを放出する(蓄電セル112の放電と称される場合がある)。蓄電セル112は、二次電池であってよい。
蓄電セル112は、全固体電池であってよい。蓄電セル112は、全固体二次電池であってよい。全固体二次電池は、上述された電解液又はゲル電解質を実質的に含まない二次電池であり、例えば、一対の電極と、当該一対の電極の間に配される固体電解質層とを備える。
二次電池が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないとは、二次電池が電解液又はゲル電解質を含まない場合だけでなく、二次電池が少量の電解液又はゲル電解質を含む場合をも意味する。二次電池の構成材料が電解液又はゲル電解質に含まれる溶媒に溶解する場合であっても、二次電池に含まれる溶媒の量が少なければ、二次電池の構成材料が溶媒に溶解することの電池性能に対する影響が無視し得るからである。
一実施形態において、蓄電セル112は、(i)支持電解質塩及び溶媒を含む電解液、及び、(ii)支持電解質塩、有機高分子化合物及び有機溶媒を含むゲル電解質の少なくとも一方を含まない。他の実施形態において、活物質として用いられる有機化合物の質量[kg]に対する、電解液及びゲル電解質の質量[kg]の割合は、5%未満である。
二次電池のキャリアイオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。二次電池としては、ナトリウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム金属二次電池、リチウム空気二次電池、リチウム硫黄二次電池、マグネシウムイオン二次電池などが例示される。
例えば、車両に搭載される二次電池用の活物質としては、単位体積あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料が選択されることが多い。一方、本実施形態において、蓄電セル112は飛行体100に搭載される。そのため、蓄電セル112に用いられる活物質は、単位質量あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料であることが好ましい。
蓄電セル112の質量エネルギー密度は、350[Wh/kg‐蓄電セル]以上であることが好ましく、400Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、500Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、600Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、700[Wh/g‐蓄電セル]以上であることがさらに好ましい。これにより、飛行体の電源の用途に特に適した蓄電セルが得られる。
蓄電セル112の体積エネルギー密度は、300[Wh/m‐蓄電セル]以上1200[Wh/m‐蓄電セル]以下であってもよく、400[Wh/m‐蓄電セル]以上1000[Wh/m‐蓄電セル]以下であってもよい。蓄電セル112が飛行体100の電源の一部として飛行体100に搭載される場合、蓄電セル112の体積エネルギー密度は、600[Wh/m‐蓄電セル]以下であってもよく、800[Wh/m‐蓄電セル]以下であってもよい。
蓄電セル112は、上記の数値範囲内の質量エネルギー密度と、上記の数値範囲内の体積エネルギー密度を有してもよい。これにより、車両の電源に用いることが比較的困難な蓄電セルを、飛行体の電源として利用することができる。蓄電セル112の詳細は後述される。
本実施形態において、電力制御回路120は、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御する。電力制御回路120は、制御装置160からの命令に基づいて、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御してよい。電力制御回路120は、例えば、制御装置160からの制御信号に基づいて動作する複数のスイッチング素子を含む。
本実施形態において、電動機130は、電力制御回路120を介して、蓄電池110から電気エネルギーを受領する。電動機130は、蓄電池110から受領した電気エネルギーを利用して、プロペラ140を回転させる。これにより、電動機130は、蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを利用して、飛行体100の推進力を発生させることができる。
本実施形態において、センサ150は、飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定する。飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、GPS信号受信機、加速度センサ、角加速度センサ、ジャイロセンサなどが例示される。センサ150は、蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定してよい。蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、温度センサ、電流センサ、電圧センサなどが例示される。
本実施形態において、制御装置160は、飛行体100を制御する。制御装置160は、電力制御回路120を制御することで、蓄電池110の電力の入出力を制御してよい。例えば、制御装置160は、蓄電池110の出力電流、出力電圧、入力電流、入力電圧などを制御する。これにより、制御装置160は、飛行体100の位置及び姿勢を制御することができる。制御装置160は、センサ150からの出力に基づいて電力制御回路120を制御することで、飛行体100の位置及び姿勢を制御してよい。
蓄電池110は、二次電池の一例であってよい。蓄電セル112は、二次電池の一例であってよい。電動機130は、推進力発生装置の一例であってよい。二次電池は、電池の一例であってよい。
(蓄電セル112の概要)
図2は、蓄電セル112の一例を概略的に示す。本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型の全固体二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。しかしながら、蓄電セル112はコイン型の全固体二次電池に限定されないことに留意されたい。
(蓄電セル)
本実施形態において、蓄電セル112は、正極ケース212と、負極ケース214と、封止剤216と、金属バネ218とを備える。また、蓄電セル112は、正極220と、セパレータ230と、負極240とを備える。本実施形態において、正極220は、正極集電体222と、正極活物質層224とを有する。本実施形態において、負極240は、負極集電体242と、負極活物質層244とを有する。
本実施形態において、蓄電セル112は、正極活物質層224と、セパレータ230とを有する構造体252を備える。同様に、蓄電セル112は、負極活物質層244と、セパレータ230とを有する構造体254を備える。
一実施形態において、蓄電セル112は、構造体252と、負極240とを備える。また、構造体252の正極活物質層224は、正極220の一部として機能する。構造体252のセパレータ230は、正極220及び負極240の間に配される。
他の実施形態において、蓄電セル112は、構造体254と、正極220とを備える。また、構造体254の負極活物質層244は、負極240の一部として機能する。構造体254のセパレータ230は、正極220及び負極240の間に配される。
本実施形態において、蓄電セル112は、電解液又はゲル電解質を実質的に含まない。これにより、溶媒に比較的溶解しやすい有機化合物が、活物質として利用され得る。
本実施形態において、正極ケース212及び負極ケース214を組み立てることで、正極ケース212及び負極ケース214の内部に空間が形成される。正極ケース212及び負極ケース214により形成された空間の内部には、金属バネ218、正極220、セパレータ230及び負極240が収容される。正極220、セパレータ230及び負極240は、金属バネ218の反発力により、正極ケース212及び負極ケース214の内部に固定される。
正極ケース212及び負極ケース214は、例えば、円盤状の薄板形状を有する導電性の材料により構成される。本実施形態において、封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214の間に形成される隙間を封止する。封止剤216は、絶縁性材料を含む。封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214を絶縁する。
(正極)
本実施形態において、正極集電体222は、正極活物質層224を保持する。正極集電体222の材料としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金などが例示される。
正極集電体222の少なくとも一部は、樹脂により形成されてよい。これにより、蓄電セル112が軽量化され得る。特に、固体電解質を主成分とするセパレータ230が用いられる場合、固体電解質の種類によっては、セパレータ230の質量が比較的大きくなる。このような場合であっても、正極集電体222の少なくとも一部が樹脂により形成されることにより、蓄電セル112の全体の質量の増加が抑制される。その結果、蓄電セル112の質量当たりの容量、及び、蓄電セル112のエネルギー密度が向上する。
一実施形態において、正極集電体222は、樹脂材料と、導電性材料とを含む。例えば、正極集電体222は、樹脂シートと、当該樹脂シートの少なくとも一方の面に配された導電層とを有する。導電層は、樹脂シートの両面に配されてもよい。導電層は、金属薄膜であってよい。金属薄膜の材料としては、金、銀、銅、鉛、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金が例示される。導電率及び比重を考慮して、金属薄膜の材料は、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金であってもよい。
上記の樹脂シートには、複数の貫通孔が形成されていてもよい。貫通孔の大きさは、円相当径として、15~150μmであってよい。樹脂シートの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどが例示される。樹脂シートの厚さは特に限定されるものではなく、樹脂シートは、導電層の破損を防止することができる程度の厚さを有していればよい。樹脂シートの厚さは、20μm以下であってよく、10μm以下であってよく、5μm以下であってもよい。
導電層の厚さは、片面当たり20μm以下であってもよく、片面当たり5μm以下であってもよく、片面当たり1μm以下であってもよい。導電層の厚さは、片面当たり0.5μm以下であってもよい。導電層の厚さの下限は、片面当たり0.05μmであってもよく、片面当たり0.1μmであってもよい。
導電層の厚さが片面当たり20μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が向上する。導電層の厚さが片面当たり1μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が大きく向上する。一方、導電層の厚さが片面当たり0.1μm未満になると、導電層が破損しやすくなる。しかしながら、本実施形態によれば、導電層が樹脂シートにより支持されている。そのため、導電層の厚さが片面当たり0.1μm程度の場合であっても、導電層の破損が抑制される。
導電層の厚さは、0.1μm以上20μm以下であってもよく、0.5μm以上5μm以下であってもよい。導電層の厚さが上記の数値範囲の範囲内に含まれる場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度の向上と、導電層の破損の抑制とが、高いレベルで達成され得る。
他の実施形態において、正極集電体222は、導電性を有する樹脂材料を含む。上記の樹脂材料の導電性は、例えば、当該樹脂材料の電子抵抗により評価される。上記の導電性を有する樹脂材料は、例えば、200Ω以下の電子抵抗を有する。上記の導電性を有する樹脂材料の電子抵抗は、20Ω以下であってもよい。樹脂材料の電子抵抗の大きさは、例えば、樹脂シートから切り取られた2cm×10cmのサンプルの貫通抵抗の値を、電気抵抗測定器及び抵抗計を用いて測定することで得られる。
導電性を有する樹脂材料としては、導電性高分子及び導電性フィラーの少なくとも一方を含む樹脂などが例示される。導電性高分子としては、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸及びポリアニリンなどが例示される。
導電性フィラーとしては、各種の炭素系材料、各種の金属系材料などが例示される。炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。金属系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、チタン、ニッケルなどが例示される。
正極集電体222の形状としては、箔形状(板形状、フィルム形状、シート形状などと称される場合がある)、メッシュ形状、穴あき板形状などが例示される。正極集電体222の厚さは、特に限定されるものではないが、1~200μmであることが好ましい。正極集電体222の厚さは、6~20μmであってもよく、4~10μmであってもよい。
本実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一方の面に形成される。正極活物質層224の厚さは、正極集電体222の片面あたり1~100μmであってもよく、5~50μmであってもよい。
正極活物質層224は、例えば、正極活物質と、結着材料(バインダーと称される場合がある。)とを含む。正極活物質層224は、導電性材料及びイオン伝導性材料の少なくとも一方をさらに含んでよい。正極活物質層224は、正極活物質と、イオン伝導性材料とを含んでもよい。これにより、正極活物質層224の内部に形成されるイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制され得る。
一実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一方の面の上に、正極活物質層224を構成する材料及び溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで形成される。上記の溶媒としては、各種の溶媒物質又はその混合物が例示される。上記の溶媒物質の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒物質としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水などが例示される。
他の実施形態において、正極活物質層224は、正極活物質層224を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を正極集電体222の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。正極活物質として有機化合物が用いられる場合、上記の圧着工程において正極活物質層224に過度の圧力が印加されないように、正極集電体222及び正極活物質層224が圧着される。
例えば、コーターを用いて、正極集電体222の上に正極活物質層224の前駆材料が塗工されるときに、正極活物質層224の前駆材料に印加される圧力が調整される。例えば、コーターによる塗工ギャップが180μm以上となるように設定される。上記の塗工ギャップは200μm以上に設定されてもよい。これにより、正極活物質層224中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制される。
正極活物質として有機化合物が用いられる場合、正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合(活物質体積割合と称される場合がある。)は、60%以上であってよい。正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合は、60~80%であることが好ましく、65~75%であることがより好ましい。
正極活物質層224が高圧でプレスされると、正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が80%を超える。上記の割合が80%を超えると、イオン伝導パスが細くなったり、イオン伝導パスが切断されたりする。その結果、正極活物質層224の容量が小さくなる。上記の高圧は、50MPa以上を意味してもよく、100MPa以上を意味してもよく、500MPa以上を意味してもよい。
一方、正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が60%未満になると、キャリアイオンの伝導性は良好になるものの、正極活物質の密度が小さくなったり、正極活物質層224に含まれる正極活物質の質量が少なくなったりする。その結果、正極活物質層224の容量が小さくなる。
正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合は、例えば、三次元SEM(Scanning Electron Microscopy)を用いた観察結果に基づいて決定される。例えば、一般財団法人材料科学技術振興財団により提唱されている「三次元SEMによる活物質体積の数値評価(C0316)」(https://www.mst.or.jp/casestudy/tabid/1318/pdid/87/Default.aspx)によれば、SEM観察を繰り返し、数十枚の連続画像を取得することで、一定体積中の各物質の存在比率、平均体積などの情報が取得され得る。
正極活物質層224における活物質体積割合は、例えば、蓄電セル112の製造工程において正極活物質層224に加えられる圧力の大きさにより決定される。蓄電セル112の製造工程において正極活物質層224に印加される圧力が大きくなると、正極活物質層224における活物質体積割合は大きくなる。正極活物質層224に印加される圧力の大きさと、正極活物質層224における活物質体積割合の増加の度合いとの関係は、例えば、有機活物質の種類によって異なる。
そこで、例えば、正極活物質として有機化合物が用いられる場合、作製された蓄電セル112に含まれる正極活物質層224における活物質体積割合が80%以下となるように、蓄電セル112の製造工程中に正極活物質層224に印加される圧力の最大値が調整又は管理される。これにより、正極及び又は電池の実容量が、正極及び又は電池の理論容量と比較して大きく減少するという現象の発生が抑制される。
また、正極活物質層224のヤング率が小さいほど、正極活物質層224に高圧が印加された場合における活物質体積割合の増加の度合いが大きくなり得る。そこで、正極活物質が有機化合物である場合、正極活物質層224のヤング率が、セパレータ230のヤング率と同程度に調整されてよい。例えば、セパレータ230が主として高分子固体電解質により構成され、且つ、正極活物質が有機化合物である場合、正極活物質のヤング率に対する高分子固体電解質のヤング率の割合が、0.7~1.3となるように、正極活物質層224の材料及び/又は製造条件が決定される。
上記のヤング率は、例えば、JIS K7171に規定される曲げ試験により測定される。上記の曲げ試験においては、歪み速度が約1%/分となるように設定される。
なお、正極活物質層224のヤング率は、特に限定されない。例えば、蓄電セル112の製造工程において正極活物質層224に印加される圧力が比較的小さい場合、正極活物質層224の材料は、正極活物質層224のヤング率を考慮することなく、任意に決定され得る。
(正極活物質)
正極活物質層224に含まれる正極活物質としては、蓄電セル112のキャリアイオンを吸蔵及び放出することができる各種の物質が用いられる。正極活物質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。これらの正極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の正極活物質が組み合せられてもよい。
正極活物質として用いられる無機化合物(無機正極活物質と称される場合がある。)としては、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属ホウ酸塩などが例示される。上記の金属としては、V、Mn、Ni、Coなどの遷移金属が例示される。
正極活物質として用いられる有機化合物(有機正極活物質と称される場合がある。)としては、各種の酸化還元活性な化合物が有機正極活物質として用いられる。有機正極活物質としては、共役系高分子、ジスルフィド、キノン、局在型ラジカル、非局在型ラジカルなどが例示される。
有機正極活物質は、芳香族炭化水素、芳香族複素環化合物、1以上のシアノ基により置換されたアルケン、ジスルフィド、及び、その誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。有機正極活物質が上記の構造単位を含む化合物である場合、その重合度は100以下であってよい。上記の誘導体は、1以上の水素が、ケトン基、OH基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基などにより置換された化合物であってよい。
有機正極活物質は、ベンゼン環に少なくとも2個の酸素原子が結合した構造を含む化合物、ベンゼン環に少なくとも2個の水酸基が結合した構造を含む化合物、ベンゼン環の少なくとも2個の炭素原子が窒素原子に置換された構造を含む化合物、炭素の二重結合に少なくとも2個のシアノ基が結合した構造を含む化合物、ジスルフィド結合を含む化合物、及び、その誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。有機正極活物質が上記の構造単位を含む化合物である場合、その重合度は100以下であってよい。上記の誘導体は、1以上の水素が、ケトン基、OH基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基などにより置換された化合物であってよい。
特定の化合物に由来する構造を含む化合物は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基又は構造を含む化合物であってよい。特定の化合物に由来する構造を含む化合物は、当該化合物の単量体であってもよく、二量体又は多量体であってもよい。例えば、芳香族炭化水素の誘導体の一例であるベンゾキノンに由来する構造を含む化合物としては、ナフトキノン、アントラキノン、フェナントレンキノンなどの多環芳香族炭化水素の誘導体が例示される。
例えば、1,4-ナフトキノン、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、及び、9,10-アントラキノンは、ベンゾキノンに由来する構造を含む。5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(ナフタザリンと称される場合がある。)は、1,4-ナフトキノンに由来する構造を含む化合物の一例であってよい。また、9,10-アントラキノンは、1,4-ナフトキノンに由来する構造を含む化合物の一例であってよい。
同様に、特定の化合物に由来する構造単位を含む化合物は、当該特定の化合物、又は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基若しくは構造を、繰り返し単位として含むポリマー又はオリゴマーが例示される。上述されたとおり、特定の化合物に由来する構造単位を含む化合物は、重合度が100以下のオリゴマーであることが好ましい。これにより、質量エネルギー密度の大きな電池が作製され得る。
有機正極活物質は、正極活物質層224における活物質体積割合が80%を超える場合に、正極活物質層224の容量が正極活物質層224の理論容量の50%未満となるような化合物であってよい。有機正極活物質は、正極活物質層224における活物質体積割合が80%を超える場合に、正極活物質層224の容量が正極活物質層224の理論容量の50%未満となり、且つ、正極活物質層224における活物質体積割合が65~75%の場合に、正極活物質層224の容量が正極活物質層224の理論容量の50%以上(より好ましくは、70%以上である。)となるような化合物であってよい。上述されたとおり、本実施形態によれば、このような有機化合物が電池の正極活物質として用いられた場合であっても、高容量の電池が作製され得る。
このような有機化合物としては、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子が例示される。上記の有機分子が低分子化合物である場合、当該有機分子の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機分子の分子量は、200以下であってもよい。上記の有機分子がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機分子の分子量は、例えば、5000以下である。上記の有機分子の分子量は、3000以下であってもよい。
有機正極活物質は、0.1013MPa、25℃の条件下におけるエチレンカーボネート(EC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l‐EC]の有機化合物、及び、0.1013MPa、25℃の条件下におけるジエチルカーボネート(DEC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l‐DEC]の有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。上記の溶解度に関する数値範囲の上限は、10[mmol/l‐溶媒]であることが好ましい。上述されたとおり、本実施形態によれば、このような有機化合物が電池の正極活物質として用いられた場合であっても、比較的寿命の長い電池が作製され得る。
このような有機化合物としては、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子が例示される。上記の有機分子が低分子化合物である場合、当該有機分子の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機分子の分子量は、200以下であってもよい。上記の有機分子がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機分子の分子量は、例えば、5000以下である。上記の有機分子の分子量は、3000以下であってもよい。
上述されたとおり、蓄電セル112の有機活物質が電解液又はゲル電解質の溶媒に溶解しやすいほど、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないことの効果が大きくなる。エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)は、電解液又はゲル電解質の溶媒として広く用いられている非プロトン性有機溶媒である。そのため、正極活物質層224が上記のような溶解度を有する有機化合物を含む場合、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないことの効果が大きくなり得る。
有機正極活物質の具体例としては、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。上述されたとおり、特定の化合物に由来する構造を含む化合物は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基又は構造を含む化合物であってよい。同様に、特定の化合物に由来する構造単位を含む化合物は、当該特定の化合物、又は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基若しくは構造を、繰り返し単位として含むポリマー又はオリゴマーが例示される。
上記の誘導体は、1以上の水素が、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ハロゲン、各種の有機基などにより置換された化合物であってよい。上記の群から選択される少なくとも1種の化合物の分子量は、例えば500以下である。上記の群から選択される少なくとも1種の化合物の分子量は、200以下であってもよい。上記の構造単位を含む化合物は、重合度が100以下のオリゴマーであることが好ましい。
上記の化学式において、R及びR'は、それぞれ独立して、水素、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、又は、有機基を示す。上記の有機基としては、各種の1価の基が例示される。上記の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、ケトン基、カルボキシル基、カルボニル基、アリール基、シアノ基、ヘテロ環を含む基などが例示される。R及びR'は、それぞれ独立して、水素、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ケトン基、シアノ基、カルボニル基、及び、ヘテロ環を含む基から選択される1つであってよい。
上記の有機基は、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物又はその誘導体に由来する構造を有する1価の基であってよい。
上記の化学式のそれぞれにより表される化合物に由来する構造を有する1価の基は、上記の化学式のそれぞれにおいて、芳香環に結合する水素のうちの1つが除かれてできる基であってよい。上記の化学式のそれぞれにより表される化合物の誘導体は、上記の化学式において、1以上の水素が、重水素、ハロゲン、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、有機基などにより置換された化合物であってよい。上記の誘導体に由来する構造を有する1価の基は、当該誘導体の芳香環に結合する水素のうちの1つが除かれてできる基であってよい。
例えば、セパレータ230が、主に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物を含む固体電解質層により構成される場合、正極活物質層224は、有機正極活物質として、上記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。これにより、上述された有機正極活物質の容量の低下が抑制される。
上記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体は、分子量が小さく、且つ、多電子授受能を有する。そのため、これらが蓄電セル112の活物質として用いられることで、蓄電セル112のエネルギー密度及び/又は容量が向上する。特に、本実施形態によれば、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まない。また、正極活物質層224が20%以上のポロシティを有する。これにより、蓄電セル112のエネルギー密度及び/又は容量がさらに向上する。
上記の化学式のうち、p-ベンゾキノンに由来する構造を含む化合物としては、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(ナフタザリンと称される場合がある)、ナフタザリン二量体などが例示される。同様に、p-ベンゼンジオールに由来する構造を含む化合物としては、ナフタザリン、ナフタザリン二量体などが例示される。これらの化合物が正極活物質として用いられることで、エネルギー密度の大きな電池が作製され得る。
p-ベンゾキノンに由来する構造を含む化合物は、2,4-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノンであってもよい。また、上記の化学式のうち、o-ベンゾキノンに由来する構造を含む化合物としては、4-ニトロ-1,2-ベンゾキノンなどが例示される。これらの化合物が正極活物質として用いられることで、エネルギー密度の大きな電池が作製され得る。
(正極活物質以外の材料)
正極活物質層224に含まれる結着材料は、正極活物質層224を構成する材料を結着し、正極220の電極形状を保持する。結着材料としては、例えば、各種の高分子材料が用いられる。上記の高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体などが例示される。
結着材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
正極活物質層224に含まれる導電性材料は、正極活物質層224の導電率を向上させる。これにより、正極220の抵抗が小さくなる。導電性材料は、電子伝導性を有する材料であれば特に限定されない。導電性材料としては、炭素系材料、金属系材料、導電性高分子材料などが例示される。これらの導電性材料は、単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。金属系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、チタン、ニッケルなどが例示される。導電性高分子材料としては、ポリフェニレン誘導体などが例示される。
導電性材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する導電性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
正極活物質層224に含まれる伝導性材料は、正極活物質層224におけるキャリアイオンの伝導性を向上させる。伝導性材料としては、例えば、各種の固体電解質が用いられる。固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質などが例示される。伝導性材料として、高分子固体電解質が用いられてよい。高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。
後述されるとおり、本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を含む。伝導性材料として用いられる高分子固体電解質の種類は、セパレータ230に含まれる高分子固体電解質の種類と同一であってもよく、異なってもよい。
伝導性材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する伝導性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
(セパレータ)
本実施形態において、セパレータ230は、正極220及び負極240の間に配され、正極220及び負極240を隔離する。また、セパレータ230は、正極220及び負極240の間におけるキャリアイオンの伝導性を確保する。セパレータ230の厚さは、特に限定されるものではないが、10~50μmであることが好ましい。
本実施形態において、セパレータ230は、層状(板状、フィルム状、シート状などと称される場合がある。)の固体電解質(固体電解質層と称される場合がある。)を備える。これにより、固体電解質層が、蓄電セル112のセパレータとして機能する。
一実施形態において、セパレータ230として、固体電解質層が用いられる。固体電解質層は、単一の固体電解質層により構成されてもよく、複数の固体電解質層により構成されてもよい。他の実施形態において、セパレータ230として、1又は複数の固体電解質層と、固体電解質以外の材料を含む他の層との積層体が用いられる。他の層は、イオン伝導性を有してよい。他の層としては、複数の貫通孔が形成された樹脂と、当該貫通孔の内部に充填されたイオン伝導性材料とを備える複合材料が例示される。
これにより、電解液又はゲル電解質を含まない二次電池が作製され得る。その結果、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244が、主な活物質として有機活物質を含む場合であっても、有機活物質が電解液又はゲル電解質の溶媒に溶解することによる電池寿命の減少が抑制され得る。
電解液又はゲル電解質の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2-ジメトキシメタン、1,3-ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び、これらの混合物が例示される。特に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及び、エチルメチルカーボネート(EMC)は、電解液又はゲル電解質の溶媒として広く用いられている。
特に、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子は、上記の溶媒に対する溶解度が比較的大きく、電解液又はゲル電解質を含む二次電池の活物質として利用することが難しかった。これに対して、本実施形態によれば、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まない。これにより、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子が有機活物質として用いられた場合であっても、比較的寿命の長い二次電池が作製され得る。
なお、(i)セパレータ230が、固体電解質層を含む複数の層により構成され、(ii)負極活物質が、電解液又はゲル電解質の溶媒に対する溶解度の小さな物質(例えば、金属又は無機化合物である。)であり、且つ、(iii)正極活物質が有機活物質である場合、当該固体電解質層は、セパレータ230の2つの面のうち、正極220と接する側の面の表面に配される。また、この場合、負極側の電解質は、固体電解質に限定されない。負極側の電解質は、電解液であってもよく、ゲル電解質であってもよい。
同様に、(i)セパレータ230が、固体電解質層を含む複数の層により構成され、(ii)正極活物質が、電解液又はゲル電解質の溶媒に対する溶解度の小さな物質(例えば、金属又は無機化合物である。)であり、且つ、(iii)負極活物質が有機活物質である場合、当該固体電解質層は、セパレータ230の2つの面のうち、負極240と接する側の面の表面に配される。また、この場合、正極側の電解質は、固体電解質に限定されない。正極側の電解質は、電解液であってもよく、ゲル電解質であってもよい。
(固体電解質層)
本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を主な構成材料として含む固体電解質層を備える。固体電解質層は、例えば、80質量%以上の真正高分子固体電解質を含む。セパレータ230が高分子固体電解質を主な構成材料として含む場合、高圧のプレス工程を経ることなく、セパレータ230と、正極220及び/又は負極240とが接合され得る。
その結果、例えば、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244が有機活物質を含む場合であっても、20%以上のポロシティを有する正極活物質層224及び/又は負極活物質層244が得られる。上述されたとおり、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244のポロシティが20%以上である場合、理論容量に対する、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244の容量の割合が大きな蓄電セル112が得られる。理論容量に対する、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244の容量の割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
固体電解質層は、例えば、平滑な支持板の上に、固体電解質層を構成する材料及び溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで作製される。上記の溶媒としては、各種の溶媒又はその混合物が例示される。上記の溶媒の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水、メタノールなどが例示される。
固体電解質層を構成する高分子固体電解質としては、0.1013MPa、25℃の条件下におけるN‐メチル-2‐ピロリドン(NMP)に対する溶解度が1[g/ml-NMP]以上の有機高分子化合物、0.1013MPa、20℃の条件下における水に対する溶解度が1[g/ml-水]以上の有機高分子化合物、及び、0.1013MPa、20℃の条件下におけるメタノールに対する溶解度が1[g/ml-メタノール]以上の有機高分子化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。これにより、固体電解質層が、高圧のプロセスを含まない上記の手順により作製され得る。
固体電解質層を構成する高分子固体電解質としては、例えば、60℃の条件下で1×10-4 [S/cm]以上のイオン伝導度を有する高分子材料が用いられる。蓄電セル112の正極活物質及び/又は負極活物質として有機化合物が用いられる場合、当該有機化合物のヤング率に対する上記の高分子材料のヤング率の割合が0.7~1.3となるように、高分子材料の種類、組成及び分子量の少なくとも1つが決定されてよい。
これにより、蓄電セル112の製造過程又は使用過程における、活物質のポロシティの低下がさらに抑制される。なお、固体電解質層が主として高分子固体電解質により構成される場合、蓄電セル112の使用過程における蓄電セル112の内部の圧力は、通常、0.1~0.2[MPa]程度である。一方、固体電解質層が主として無機系の固体電解質により構成される場合、蓄電セルの使用過程における蓄電セルの内部の圧力は、通常、500[MPa]程度まで加圧される。
固体電解質層を構成する高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。固体電解質層は、実質的に単一高分子固体電解質により構成されてもよく、2以上の種類の高分子固体電解質を含んでよい。
(負極)
本実施形態において、負極集電体242は、負極活物質層244を保持する。負極集電体242の材料としては、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金などが例示される。
負極集電体242の少なくとも一部は、樹脂により形成されてよい。これにより、蓄電セル112が軽量化され得る。特に、固体電解質を主成分とするセパレータ230が用いられる場合、固体電解質の種類によっては、セパレータ230の質量が比較的大きくなる。このような場合であっても、負極集電体242の少なくとも一部が樹脂により形成されることにより、蓄電セル112の全体の質量の増加が抑制される。その結果、蓄電セル112の質量当たりの容量、及び、蓄電セル112のエネルギー密度が向上する。
一実施形態において、負極集電体242は、樹脂材料と、導電性材料とを含む。例えば、負極集電体242は、樹脂シートと、当該樹脂シートの少なくとも一方の面に配された導電層とを有する。導電層は、樹脂シートの両面に配されてもよい。導電層は、金属薄膜であってよい。金属薄膜の材料としては、金、銀、銅、鉛、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金が例示される。導電率及び比重を考慮して、金属薄膜の材料は、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金であってもよい。
上記の樹脂シートには、複数の貫通孔が形成されていてもよい。貫通孔の大きさは、円相当径として、15~150μmであってよい。樹脂シートの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどが例示される。樹脂シートの厚さは特に限定されるものではなく、樹脂シートは、導電層の破損を防止することができる程度の厚さを有していればよい。樹脂シートの厚さは、20μm以下であってよく、10μm以下であってよく、5μm以下であってもよい。
導電層の厚さは、片面当たり20μm以下であってもよく、片面当たり5μm以下であってもよく、片面当たり1μm以下であってもよい。導電層の厚さは、片面当たり0.5μm以下であってもよい。導電層の厚さの下限は、片面当たり0.05μmであってもよく、片面当たり0.1μmであってもよい。
導電層の厚さが片面当たり20μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が向上する。導電層の厚さが片面当たり1μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が大きく向上する。一方、導電層の厚さが片面当たり0.1μm未満になると、導電層が破損しやすくなる。しかしながら、本実施形態によれば、導電層が樹脂シートにより支持されている。そのため、導電層の厚さが片面当たり0.1μm程度の場合であっても、導電層の破損が抑制される。
導電層の厚さは、0.1μm以上20μm以下であってもよく、0.5μm以上5μm以下であってもよい。導電層の厚さが上記の数値範囲の範囲内に含まれる場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度の向上と、導電層の破損の抑制とが、高いレベルで達成され得る。
他の実施形態において、負極集電体242は、導電性を有する樹脂材料を含む。上記の樹脂材料の導電性は、例えば、当該樹脂材料の電子抵抗により評価される。上記の導電性を有する樹脂材料は、例えば、200Ω以下の電子抵抗を有する。上記の導電性を有する樹脂材料の電子抵抗は、20Ω以下であってもよい。樹脂材料の電子抵抗の大きさは、例えば、樹脂シートから切り取られた2cm×10cmのサンプルの貫通抵抗の値を、電気抵抗測定器及び抵抗計を用いて測定することで得られる。導電性を有する樹脂材料は、正極集電体222に関連して説明された樹脂材料と同様の特徴を有してよい。
負極活物質としてキャリア金属が用いられる場合、当該キャリア金属が集電体の役割を兼ね得る。例えば、蓄電セル112のキャリア金属がリチウムであり、負極活物質がリチウム金属である場合、リチウム金属が集電体として用いられる。この場合、蓄電セル112は、負極集電体242を備えなくてもよい。
負極集電体242の形状としては、箔形状(板形状、フィルム形状などと称される場合がある)、メッシュ形状、穴あき板形状などが例示される。負極集電体242の厚さは、特に限定されるものではないが、1~200μmであってよい。負極集電体242の厚さは、6~20μmであってもよく、4~10μmであってもよい。
本実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面に形成される。負極活物質層244の厚さは、負極集電体242の片面あたり、0超200μm以下であってもよく、1~100μmであってもよい。
負極活物質層244は、例えば、負極活物質と、結着材料(バインダーと称される場合がある。)とを含む。負極活物質層244は、導電性材料及びイオン伝導性材料の少なくとも一方をさらに含んでよい。負極活物質層244は、負極活物質と、イオン伝導性材料とを含んでもよい。これにより、負極活物質層244の内部に形成されるイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制され得る。
一実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面の上に、負極活物質層244を構成する材料及び有機溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで作製される。上記の溶媒としては、各種の溶媒物質又はその混合物が例示される。上記の溶媒物質の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒物質としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水などが例示される。
他の実施形態において、負極活物質層244は、負極活物質層244を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を負極集電体242の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。負極活物質として有機化合物が用いられる場合、上記の圧着工程において負極活物質層244に過度の圧力が印加されないように、負極集電体242及び負極活物質層244が圧着される。
例えば、コーターを用いて、負極集電体242の上に負極活物質層244の前駆材料が塗工されるときに、負極活物質層244の前駆材料に印加される圧力が調整される。例えば、コーターによる塗工ギャップが180μm以上となるように設定される。上記の塗工ギャップは200μm以上に設定されてもよい。これにより、負極活物質層244中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制される。
負極活物質として有機化合物が用いられる場合、負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合(活物質体積割合と称される場合がある。)は、60%以上であってよい。負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合は、60~80%であることが好ましく、65~75%であることがより好ましい。
負極活物質層244が高圧でプレスされると、負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が80%を超える。上記の割合が80%を超えると、イオン伝導パスが細くなったり、イオン伝導パスが切断されたりする。その結果、負極活物質層244の容量が小さくなる。上記の高圧は、50MPa以上を意味してもよく、100MPa以上を意味してもよく、500MPa以上を意味してもよい。
一方、負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が60%未満になると、キャリアイオンの伝導性は良好になるものの、負極活物質の密度が小さくなったり、負極活物質層244に含まれる正極活物質の質量が少なくなったりする。その結果、負極活物質層244の容量が小さくなる。
負極活物質層244における活物質体積割合は、正極活物質層224における活物質体積割合と同様の手順により導出される。例えば、負極活物質層244における活物質体積割合は、三次元SEM(Scanning Electron Microscopy)を用いた観察結果に基づいて決定される。
負極活物質層244における活物質体積割合は、例えば、蓄電セル112の製造工程において負極活物質層244に加えられる圧力の大きさにより決定される。蓄電セル112の製造工程において負極活物質層244に加えられる圧力が大きくなると、負極活物質層244における活物質体積割合は大きくなる。負極活物質層244に印加される圧力の大きさと、負極活物質層244における活物質体積割合の増加の度合いとの関係は、例えば、有機活物質の種類によって異なる。
そこで、例えば、負極活物質として有機化合物が用いられる場合、作製された蓄電セル112に含まれる負極活物質層244における活物質体積割合が80%以下となるように、蓄電セル112の製造工程中に負極活物質層244に印加される圧力の最大値が調整又は管理される。これにより、負極及び又は電池の実容量が、負極及び又は電池の理論容量と比較して大きく減少するという現象の発生が抑制される。
また、負極活物質層244のヤング率が小さいほど、負極活物質層244に高圧が印加された場合における活物質体積割合の増加の度合いが大きくなり得る。そこで、負極活物質が有機化合物である場合、負極活物質層244のヤング率が、セパレータ230のヤング率と同程度に調整されてよい。例えば、セパレータ230が主として高分子固体電解質により構成され、且つ、負極活物質が有機化合物である場合、負極活物質のヤング率に対する高分子固体電解質のヤング率の割合が、0.7~1.3となるように、負極活物質層244の材料及び/又は製造条件が決定される。
上記のヤング率は、例えば、JIS K7171に規定される曲げ試験により測定される。上記の曲げ試験においては、歪み速度が約1%/分となるように設定される。
なお、負極活物質層244のヤング率は、特に限定されない。例えば、蓄電セル112の製造工程において負極活物質層244に印加される圧力が比較的小さい場合、負極活物質層244の材料は、負極活物質層244のヤング率を考慮することなく、任意に決定され得る。
また、後述されるとおり、負極活物質層として、リチウム金属などのキャリア金属の箔が用いられる場合がある。この場合、負極活物質層の材料は、負極活物質層のヤング率を考慮することなく決定され得る。
(負極活物質)
負極活物質層244に含まれる負極活物質としては、蓄電セル112のキャリアイオンを吸蔵及び放出することができる各種の物質が用いられる。負極活物質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。これらの負極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の負極活物質が組み合せられてもよい。例えば、蓄電セル112のキャリアイオンを放出可能な金属箔が、負極活物質層244として用いられる。これにより、蓄電セル112の質量エネルギー密度が向上する。
負極活物質として用いられる無機化合物(無機負極活物質と称される場合がある。)としては、(i)キャリア金属及びこれを含む合金、(ii)スズ、シリコン及びこれらを含む合金、(iii)珪素酸化物、(iv)チタン酸化物などが例示される。例えば、蓄電セル112がリチウム二次電池である場合、負極活物質として、金属リチウム、リチウム・チタン酸化物(LTO)などが用いられる。キャリア金属を含まない材料が負極活物質として用いられる場合、当該材料にキャリア金属がプレドープされてよい。
負極活物質として用いられる有機化合物(有機負極活物質と称される場合がある。)としては、芳香族複素環化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。有機負極活物質が上記の構造単位を含む化合物である場合、その重合度は100以下であってよい。上記の誘導体は、1以上の水素が、ケトン基、OH基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基などにより置換された化合物であってよい。
有機負極活物質は、負極活物質層244における活物質体積割合が80%を超える場合に、負極活物質層244の容量が負極活物質層244の理論容量の50%未満となるような化合物であってよい。有機負極活物質は、負極活物質層244における活物質体積割合が80%を超える場合に、負極活物質層244の容量が負極活物質層244の理論容量の50%未満となり、且つ、負極活物質層244における活物質体積割合が65~75%の場合に、負極活物質層244の容量が負極活物質層244の理論容量の50%以上(より好ましくは、70%以上である。)となるような化合物であってよい。上述されたとおり、本実施形態によれば、このような有機化合物が電池の負極活物質として用いられた場合であっても、高容量の電池が作製され得る。
このような有機化合物としては、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子が例示される。上記の有機分子が低分子化合物である場合、当該有機分子の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機分子の分子量は、200以下であってもよい。上記の有機分子がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機分子の分子量は、例えば、5000以下である。上記の有機分子の分子量は、3000以下であってもよい。
有機負極活物質は、0.1013MPa、25℃の条件下におけるエチレンカーボネート(EC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l‐EC]の有機化合物、及び、0.1013MPa、25℃の条件下におけるジエチルカーボネート(DEC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l‐DEC]の有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。上記の溶解度に関する数値範囲の上限は、10[mmol/l‐溶媒]であることが好ましい。上述されたとおり、本実施形態によれば、このような有機化合物が電池の負極活物質として用いられた場合であっても、比較的寿命の長い電池が作製され得る。
このような有機化合物としては、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子が例示される。上記の有機分子が低分子化合物である場合、当該有機分子の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機分子の分子量は、200以下であってもよい。上記の有機分子がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機分子の分子量は、例えば、5000以下である。上記の有機分子の分子量は、3000以下であってもよい。
上述されたとおり、蓄電セル112の有機活物質が電解液又はゲル電解質の溶媒に溶解しやすいほど、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないことの効果が大きくなる。エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)は、電解液又はゲル電解質の溶媒として広く用いられている非プロトン性有機溶媒である。そのため、負極活物質層244が上記のような溶解度を有する有機化合物を含む場合、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないことの効果が大きくなり得る。
有機負極活物質の具体例としては、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。上述されたとおり、特定の化合物に由来する構造を含む化合物は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基又は構造を含む化合物であってよい。同様に、特定の化合物に由来する構造単位を含む化合物は、当該特定の化合物、又は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基若しくは構造を、繰り返し単位として含むポリマー又はオリゴマーが例示される。
上記の誘導体は、1以上の水素が、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ハロゲン、各種の有機基などにより置換された化合物であってよい。上記の群から選択される少なくとも1種の化合物の分子量は、例えば500以下である。上記の群から選択される少なくとも1種の化合物の分子量は、200以下であってもよい。上記の構造単位を含む化合物は、重合度が100以下のオリゴマーであることが好ましい。
例えば、セパレータ230が、主に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物を含む固体電解質層により構成される場合、負極活物質層244は、有機負極活物質として、上記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。これにより、上述された有機負極活物質の容量の低下が抑制される。
上述されたとおり、負極活物質層244は、箔状のキャリア金属を含んでよい。例えば、負極活物質層244は、リチウム金属箔を含む。これにより、蓄電セル112にキャリア金属が供給される。金属箔の厚さは、1~200μmであってよく、10~100μmであってよく、20~50μmであってよい。金属箔の厚さ及び/又は質量は、正極活物質層224における正極活物質の含有量に応じて決定されてよい。
(負極活物質以外の材料)
負極活物質層244に含まれる結着材料は、負極活物質層244を構成する材料を結着し、負極240の電極形状を保持する。結着材料としては、例えば、各種の高分子材料が用いられる。上記の高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体などが例示される。
結着材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
負極活物質層244に含まれる導電性材料は、負極活物質層244の導電率を向上させる。これにより、負極240の抵抗が小さくなる。導電性材料は、電子伝導性を有する材料であれば特に限定されない。導電性材料としては、炭素系材料、金属系材料、導電性高分子材料などが例示される。これらの導電性材料は、単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。金属系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、チタン、ニッケルなどが例示される。導電性高分子材料としては、ポリフェニレン誘導体などが例示される。
導電性材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
負極活物質層244に含まれる伝導性材料は、負極活物質層244におけるキャリアイオンの伝導性を向上させる。伝導性材料としては、例えば、各種の固体電解質が用いられる。固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質などが例示される。伝導性材料として、高分子固体電解質が用いられてよい。高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。
上述されたとおり、本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を含む。伝導性材料として用いられる高分子固体電解質の種類は、セパレータ230に含まれる高分子固体電解質の種類と同一であってもよく、異なってもよい。
伝導性材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する伝導性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
正極220及び負極240は、一対の電極の一例であってよい。セパレータ230は、固体電解質層又はセパレータの一例であってよい。正極220は、電極材料の一例であってよい。正極活物質層224は、電極材料又は活物質層の一例であってよい。正極活物質層224は、一対の電極の少なくとも一方又はその一部の一例であってよい。負極240は、電極材料の一例であってよい。負極活物質層244は、電極材料又は活物質層の一例であってよい。負極活物質層244は、一対の電極の少なくとも一方又はその一部の一例であってよい。構造体252は、複合構造体の一例であってよい。構造体254は、複合構造体の一例であってよい。有機活物質は、有機化合物の一例であってよい。有機正極活物質は、有機化合物の一例であってよい。有機負極活物質は、有機化合物の一例であってよい。
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の種類、構造などは、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、蓄電セル112は、正極、セパレータ及び負極が渦巻状に巻回した巻回電極体を備える円筒型電池であってもよい。さらに他の実施形態において、蓄電セル112は、正極及び負極がセパレータを挟んで交互に積層した積層電極体が、ラミネートで封止されたラミネート型電池であってもよい。
本実施形態においては、負極240が、負極集電体242及び負極活物質層244を有する場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の負極は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、箔状のキャリア金属が、負極集電体242及び負極活物質層244として機能する。例えば、蓄電セル112がリチウム金属二次電池である場合、金属リチウムが負極として使用され得る。
本実施形態においては、正極活物質が、有機正極活物質及び無機正極活物質の少なくとも一方を含み、負極活物質が、有機負極活物質及び無機負極活物質の少なくとも一方を含む場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、正極活物質が主として有機正極活物質を含み、負極活物質が主として無機負極活物質(例えば、金属リチウムである。)を含む。さらに他の実施形態において、正極活物質が主として無機正極活物質を含み、負極活物質が主として有機負極活物質を含む。
図3は、集電体300の一例を概略的に示す。集電体300は、例えば、正極集電体222及び負極集電体242の少なくとも一方として用いられる。
本実施形態において、集電体300は、樹脂シート320と、導電性薄膜342と、導電性薄膜344とを備える。本実施形態において、導電性薄膜342は、樹脂シート320の一方の面の側に形成されており、導電性薄膜344は、樹脂シート320の他方の面の側に形成されている。本実施形態において、樹脂シート320には、複数の貫通孔322が形成されており、複数の貫通孔322の少なくとも一部の内部には、導電性材料346が充填されている。複数の貫通孔322の少なくとも一部は空洞であってよい。
図2に関連して説明されたとおり、樹脂シート320の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどが例示される。導電性薄膜342、導電性薄膜344及び導電性材料346を構成する物質としては、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金が例示される。導電性薄膜342、導電性薄膜344及び導電性材料346を構成する物質は、導電性を有する樹脂材料であってもよい。上述されたとおり、導電性を有する樹脂材料としては、導電性高分子及び導電性フィラーの少なくとも一方を含む樹脂などが例示される。
本実施形態によれば、集電体300が樹脂シート320を含むので、集電体300が軽量化され得る。また、樹脂シート320に形成された複数の貫通孔の少なくとも一部が空洞である場合、集電体300がさらに軽量化され得る。
図4は、蓄電セル112の他の例を概略的に示す。図4に記載された蓄電セル112は、負極240と、セパレータ230との間に、表面処理層446が形成されている点で、図2に関連して説明された蓄電セル112と相違する。上記の相違点を除き、図4に記載された蓄電セル112は、図2に関連して説明された蓄電セル112と同様の構成を有してよい。図2に関連して説明されたとおり、負極240は、金属リチウムなどの金属負極であってよい。
本実施形態において、表面処理層446は、負極活物質層244に含まれる負極活物質と、セパレータ230に含まれる固体電解質との副反応を抑制する。上記の副反応としては、固体電解質の分解反応が例示される。表面処理層446を構成する材料としては、セパレータ230に含まれる固体電解質と比較して、キャリア金属と反応して分解しにくい物質が用いられる。
表面処理層446としては、無機酸化物、無機塩などの層が例示される。無機酸化物としては、Alなどのアルミ酸化物、SiOなどの珪素酸化物などが例示される。無機塩としては、金属リン酸塩、金属フッ化物塩などが例示される。蓄電セル112がリチウム二次電池である場合、無機塩としては、LiPO、LiFなどが例示される。
表面処理層446の厚さは、特に限定されるものではないが、5nm~100μmであることが好ましい。表面処理層446の製造方法は特に限定されるものではないが、蒸着、スパッタリングなどが例示される。
図5は、蓄電セル112の製造方法の一例を概略的に示す。図5においては、正極220が有機正極活物質を含む場合を例として、蓄電セル112の製造方法の一例が説明される。本実施形態によれば、まず、ステップ512、ステップ514、ステップ516及びステップ520(ステップがSと省略される場合がある。)により、一対の電極が準備される。具体的には、S512、S514及びS516により、正極220が作製される。
例えば、S512において、正極活物質層224を構成する材料と、溶媒とが混合され、スラリー(正極スラリーと称される場合がある。)が生成される。上述されたとおり、正極活物質層224を構成する材料は、例えば、有機正極活物質と、結着材料とを含む。正極活物質層224を構成する材料は、有機正極活物質と、結着材料と、導電性材料及びイオン伝導性材料の少なくとも一方とを含んでもよい。
次に、S514において、正極集電体222の一方の面に、正極スラリーが塗布される。正極スラリーは、例えば、コーターを用いて塗工される。コーターの塗工ギャップは、例えば、180μm以上に設定される。これにより、正極活物質層224に過度の圧力が印加されることが抑制される。また、S516において、正極スラリーの乾燥工程が実施される。
次に、S520において、負極240が準備される。例えば、負極240として、リチウム金属箔が準備される。
また、S530において、セパレータ230を主に構成する固体電解質が準備される。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物を含む固体電解質層が作製される。
次に、S540において、正極220、セパレータ230及び負極240を用いて、蓄電セル112が組み立てられる。S540においては、正極活物質層224における活物質体積割合が80%以下となるように、正極活物質層224に加えられる圧力の最大値が調整又は管理された状態で、蓄電セル112が組み立てられる。これにより、80%以下の活物質体積割合を有する正極活物質層224を備えた蓄電セル112が作製される。
本実施形態によれば、セパレータ230が、主に高分子固体電解質により構成されているので、特許文献1に記載されているような高圧のプレス工程を経ることなく、正極220と、セパレータ230とを接合することができる。これにより、例えば、80%以下の活物質体積割合を有する正極活物質層224、又は、80%未満の活物質体積割合を有する正極活物質層224を備えた蓄電セル112が得られる。その結果、有機化合物が正極活物質として用いられた場合であっても、正極活物質層224の容量が、正極活物質層224の理論容量の50%以上となり得る。
また、本実施形態によれば、セパレータ230が、主に高分子固体電解質により構成されているので、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まない。これにより、分子量が小さく、有機溶媒に溶解しやすい有機化合物が正極活物質として用いられた場合であっても、正極活物質層224の容量が正極活物質層224の理論容量の50%以上となり得る。
有機正極活物質は、有機化合物の一例であってよい。正極スラリーは、スラリーの一例であってよい。正極スラリーの乾燥工程は、スラリーを乾燥させる段階の一例であってよい。
(合成例1)
Yao, M., Taguchi, N., Ando, H. et al. "Improved gravimetric energy density and cycle life in organic lithium-ion batteries with naphthazarin-based electrode materials.", Commun Mater 1, 70 (2020).に記載された手順に従って、下記の化学式で表されるナフタザリン二量体を合成した。反応条件の詳細は、上記の文献に準拠して決定した。また、合成に用いられた各種試薬には、市販されている試薬を用いた。
具体的には、まず、出発物質として、2,3-ジクロロナフタザリンを準備した。次に、無水酢酸を用いた還流操作により、2,3-ジクロロナフタザリンの水酸基をアセチル基で保護した。次に、トリエチルアミン(TEA)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下、50℃の条件で、ルベアン酸を用いた二量体化反応を行った。これにより、ジベンゾ[b,i]チアントレン骨格を有する化合物を得た。その後、テトラヒドロフランの存在下、70℃の条件で加水分解を行った。また、水酸化リチウムを用いて中和した。これにより、上記のナフタザリン二量体が得られた。
(参考例1)
合成例1で合成されたナフタザリン二量体を正極活物質として用いて、電解液を含むR2032コイン型電池を作製した。電解液を含むR2032コイン型電池は、下記の手順で作製した。
まず、正極活物質としてのナフタザリン二量体と、導電性材料としてのアセチレンブラック(デンカ株式会社製)及びカーボンナノチューブ(JiangSu Cnano Technology Ltd.製)と、結着材料としてのPVdF(株式会社クレハ製)と、有機溶媒としてのNMPとを混合して、スラリー組成物を作製した。正極活物質、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及び結着剤は、正極活物質:アセチレンブラック:カーボンナノチューブ:結着剤=100:14:3:4(質量比)の割合で混合した。また、スラリー組成物における、正極活物質、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びPVdFの割合は、83質量%であった。
次に、上記のスラリー組成物を、表面粗化処理を施したアルミニウム箔(宝泉株式会社、厚さ:20μm)に塗布した。スラリー組成物を乾燥させた後、14mmφに打ち抜いて正極を作製した。正極の厚さは、134μmであった。ナフタザリン二量体の塗布量は、4.3mg/cmであった。
次に、厚さ0.5mmの金属リチウム箔(本城金属株式会社製、純度99.8%以上)から、直径13mmの円形の部材を切り出した。上記のリチウム箔から切り出された上記の部材を、直径が15.5mmで厚さが0.5mmのステンレススチール板(宝泉株式会社製)の上に圧着することで、負極を作製した。
また、セパレータとして、直径が16mmで、厚さが0.4mmのガラスろ紙(株式会社Advantech製)を準備した。ナフタザリン二量体がほとんど溶解しない電解液として、LiTFSI及びスルホラン(SL)を含む非水電解液(キシダ化学株式会社製)を準備した。R2032コイン型電池の規格に準拠した電池ケースの内部に、上記の正極、セパレータ、負極及び電解液を配置して、試験用コイン型電池を作製した。
試験用コイン型電池に含まれるナフタザリン二量体の質量は、3mgであった。また、試験用コイン型電池の質量は、3.2gであった。作製された試験用コイン型電池について、30℃の雰囲気下、20mA/gの電流密度で、4.5‐1.2V(vs.Li/Li)の電位範囲で定電流充放電試験を行った。平均電圧は2.6Vであった。充電レート及び放電レートは0.05Cであった。
図6に、参考例1の二次電池の電池容量の確認試験の結果を示す。図6において、曲線620は、定電流充放電試験における充放電曲線を示す。図6に示されるとおり、初期放電容量は、416[mAh/g‐正極活物質]であった。試験用コイン型電池のエネルギー密度は、1.1[Wh/g‐正極活物質]であった。
(実施例1)
合成例1で合成されたナフタザリン二量体を正極活物質として用いて、電解液を含まないR2032コイン型電池を作製した。電解液を含まないR2032コイン型電池は、下記の手順で作製した。
まず、イオン伝導性材料としてのPEOを含むNMP溶液と、結着材料としてのPVdFを含むNMP溶液とを所定の割合で混合した。次に、上記の混合液に、所定量のナフタザリン二量体及び導電性材料を混合し、NMPで濃度を調整することで、スラリー組成物を作製した。導電性材料としては、アセチレンブラックを用いた。正極活物質、PEO、アセチレンブラック及びPVdFは、正極活物質:PEO:アセチレンブラック:PVdF=100:35:5:3(質量比)の割合で混合した。
その後、参考例1と同様の手順により、正極を作製した。上記の正極用のスラリー組成物に由来する層の体積に対する、ナフタザリン二量体の体積の割合は、77%であった。また、参考例1と同様の手順により、負極を準備した。また、セパレータとして、厚さが70μmのPEDOTを準備した。R2032コイン型電池の規格に準拠した電池ケースの内部に、上記の正極、セパレータ及び負極を配置して、電解液を含まない試験用コイン型電池を作製した。
参考例1と同様の手順により、作製された試験用コイン型電池の充放電試験を行った。図7に、実施例1の二次電池の充放電サイクル試験の結果(充放電曲線)を示す。図7において、曲線722は定電流充放電試験における充放電曲線を示す。図8に、実施例1の二次電池の充放電サイクル試験の結果(サイクル特性)を示す。図8において、円形の凡例822は、充電容量[mAh/g-正極活物質]を示し、三角形の凡例824は、放電容量[mAh/g-正極活物質]を示す。 図7及び図8に示されるとおり、初期放電容量は、230[mAh/g-正極活物質]であった。また、試験用コイン型電池のエネルギー密度は、596[Wh/g-正極活物質]であった。なお、試験用コイン型電池の理論容量は、1040[mAh/g-正極活物質]である。
(比較例1)
(i)セパレータとして、硫化物系固体電解質の一種であるLGPS系電解質を用いた点、及び、(ii)R2032コイン型電池の規格に準拠した電池ケースの内部に、上記の正極、セパレータ及び負極を配置する前に、正極、セパレータ及び負極を500MPaの圧力でプレスして、正極、セパレータ及び負極を接合した点を除いて、実施例1と同様の手順により、電解液を含まない試験用コイン型電池を作製した。
参考例1と同様の手順により、作製された試験用コイン型電池の充放電試験を行った。図9に、比較例1の二次電池の充放電サイクル試験の結果(充放電曲線)を示す。図9において、曲線920は、定電流充放電試験における充放電曲線を示す。図9に示されるとおり、初期放電容量は、38[mAh/g-正極活物質]であった。試験用コイン型電池のエネルギー密度は、37[Wh/kg-正極活物質]であった。
以上のとおり、実施例1においては、セパレータとして固体電解質の一種であるPEDOTが用いられたことにより、電解液及びゲル電解質を含まない試験用コイン型電池が作製された。また、実施例1においては、セパレータとして高分子固体電解質の一種であるPEDOTが用いられたことにより、正極活物質として有機化合物を含む正極と、セパレータとの密着性が向上した。これにより、セパレータとして無機固体電解質を用いた場合のような高圧の圧着工程を経ることなく、正極及びセパレータが固着された。その結果、正極の活物質層における活物質体積割合が60~80%の範囲内となった。
実施例1及び比較例1を参照することにより、活物質として有機化合物が用いられ、且つ、固体電解質として高分子固体電解質が用いられることにより、(i)理論容量の50%以上の容量を有し、(ii)電解液又はゲル電解質を実質的に含まない電池が提供されることがわかる。また、単に、電解液又はゲル電解質を実質的に含まない電池を作製するために、セパレータとしてヤング率の大きな無機固体高分子を用いた場合には、当該電池の容量が理論容量に対して大幅に減少することがわかる。
実施例1において正極活物質として用いられたナフタザリン二量体は、実施例1において用いられた電解液の溶媒に対する溶解度の小さな有機化合物である。しかしながら、上記の実施例及び比較例の記載に接した当業者であれば、電解液又はゲル電解質に用いられる溶媒に対する溶解度の大きな有機化合物が、正極活物質として用いられた場合であっても、セパレータとして高分子固体電解質が用いられることにより、実施例1と同様の効果をすることを理解することができる。
また、実施例1の電池は電解液又はゲル電解質を実質的に含まない。そのため、上記の実施例及び比較例の記載に接した当業者であれば、電解液又はゲル電解質に用いられる溶媒に対する溶解度の大きな有機化合物が正極活物質として用いられた場合であっても、実施例1と同様の効果をすることを理解することができる。
例えば、当業者であれば、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びフェナントレンキノン、並びに、これらの誘導体が正極活物質として用いられた場合であっても、実施例1と同様の効果をすることを理解することができる。また、当業者であれば、1,4-ナフトキノン、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2,4-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノン、及び、4-ニトロ-1,2-ベンゾキノン、並びに、これらの誘導体が正極活物質として用いられた場合であっても、実施例1と同様の効果をすることを理解することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
100 飛行体
110 蓄電池
112 蓄電セル
120 電力制御回路
130 電動機
140 プロペラ
150 センサ
160 制御装置
212 正極ケース
214 負極ケース
216 封止剤
218 金属バネ
220 正極
222 正極集電体
224 正極活物質層
230 セパレータ
240 負極
242 負極集電体
244 負極活物質層
252 構造体
254 構造体
300 集電体
320 樹脂シート
322 貫通孔
342 導電性薄膜
344 導電性薄膜
346 導電性材料
446 表面処理層
620 曲線
722 曲線
920 曲線

Claims (17)

  1. 一対の電極、及び、前記一対の電極の間に配されるセパレータを備える電池に用いられる複合構造体であって、
    有機化合物を活物質として含む活物質層(ただし、活物質層に含まれる正極活物質及び/又は導電助剤の表面の一部が導電性高分子で被覆されているものを除く。)であって、前記活物質層の体積に対する前記活物質としての前記有機化合物の体積の割合は60~80%である、活物質層を有する電極材料と、
    前記活物質層の上に配され、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含む高分子固体電解質を含む固体電解質層と、
    を備える、複合構造体。
  2. 一対の電極、及び、前記一対の電極の間に配されるセパレータを備える電池に用いられる複合構造体であって、
    有機化合物を活物質として含む活物質層を有する電極材料と、
    高分子固体電解質を含む固体電解質層と、
    を備え、
    前記有機化合物は、分子量が200以下の化合物又は当該化合物の二量体若しくは多量体であり、
    前記活物質層の体積に対する、前記活物質としての前記有機化合物の体積の割合は、60~80%であり、
    前記有機化合物のヤング率に対する前記高分子固体電解質のヤング率の割合は、0.7~1.3である、
    複合構造体。
  3. 前記高分子固体電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物を含む、
    請求項2に記載の複合構造体。
  4. 前記活物質層は、前記有機化合物と、イオン伝導性材料とを含む、
    請求項2または3に記載の複合構造体。
  5. 前記固体電解質層は、80質量%以上の分子固体電解質を含む、
    請求項1から請求項までの何れか一項に記載の複合構造体。
  6. 前記高分子固体電解質は、
    0.1013MPa、25℃の条件下におけるN‐メチル-2‐ピロリドン(NMP)に対する溶解度が1[g/ml-NMP]以上の有機高分子化合物、
    0.1013MPa、20℃の条件下における水に対する溶解度が1[g/ml-水]以上の有機高分子化合物、及び、
    0.1013MPa、20℃の条件下におけるメタノールに対する溶解度が1[g/ml-メタノール]以上の有機高分子化合物、
    からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、
    請求項1から請求項までの何れか一項に記載の複合構造体。
  7. 前記高分子固体電解質のイオン伝導度は、60℃の条件下で1×10-4 [S/cm]以上であり、
    前記有機化合物のヤング率に対する前記高分子固体電解質のヤング率の割合は、0.7~1.3である、
    請求項1から請求項までの何れか一項に記載の複合構造体。
  8. 前記有機化合物は、
    0.1013MPa、25℃の条件下におけるエチレンカーボネート(EC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l-EC]の有機化合物、及び、
    0.1013MPa、25℃の条件下におけるジエチルカーボネート(DEC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l-DEC]の有機化合物、
    からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、
    請求項1から請求項7までの何れか一項に記載の複合構造体。
  9. 集電体をさらに備え、
    前記電極材料は、前記集電体と、前記固体電解質層との間に配され、
    前記集電体は、
    樹脂シートと、
    前記樹脂シートの少なくとも一方の面に配された導電層と、
    を有する、
    請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の複合構造体。
  10. 前記有機化合物は、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む(下記の化学式において、R及びR'は、それぞれ独立して、水素、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である)、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、又は、有機基を示す)、
    Figure 0007461331000009
    Figure 0007461331000010
    請求項1から請求項9までの何れか一項に記載の複合構造体。
  11. 前記電極材料は、前記一対の電極の少なくとも一方又はその一部として機能し、
    前記固体電解質層は、前記セパレータとして機能する、
    請求項1から請求項10までの何れか一項に記載の複合構造体。
  12. 請求項1から請求項10までの何れか一項に記載の複合構造体と、
    負極と、
    を備える電池であって、
    前記複合構造体の前記電極材料は、前記電池の正極又はその一部として機能し、
    前記複合構造体の前記固体電解質層は、前記正極及び前記負極の間に配され、前記電池の前記セパレータとして機能する、
    電池。
  13. 請求項1から請求項10までの何れか一項に記載の複合構造体と、
    正極と、
    を備える電池であって、
    前記複合構造体の前記電極材料は、前記電池の負極又はその一部として機能し、
    前記複合構造体の前記固体電解質層は、前記正極及び前記負極の間に配され、前記電池の前記セパレータとして機能する、
    電池。
  14. 前記電池は、
    (a)(i)支持電解質塩及び溶媒を含む電解液、及び、(ii)支持電解質塩、有機高分子化合物及び有機溶媒を含むゲル電解質の双方を含まない、又は、
    (b)前記活物質として用いられる前記有機化合物の質量に対する、前記電解液及び前記ゲル電解質の質量の割合が、5%未満である、
    請求項12又は請求項13に記載の電池。
  15. 請求項12から請求項14までの何れか一項に記載の電池と、
    前記電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置と、
    を備える、飛行体。
  16. 一対の電極、及び、前記一対の電極の間に配されるセパレータを備える電池の製造方法であって、
    前記一対の電極を準備する段階と、
    前記セパレータを準備する段階と、
    前記一対の電極及び前記セパレータを用いて前記電池を組み立てる段階と、
    を有し、
    前記一対の電極の少なくとも一方は、活物質として機能し、分子量が200以下の化合物又は当該化合物の二量体若しくは多量体である有機化合物の層を含み、
    前記セパレータは、前記有機化合物のヤング率に対するヤング率の割合が0.7~1.3である高分子固体電解質を含み、
    前記一対の電極を準備する段階、及び、前記電池を組み立てる段階において、前記一対の電極のうち前記有機化合物を含む電極に加えられる圧力の最大値は、50MPaを超えないように調整される、
    電池の製造方法。
  17. 前記一対の電極を準備する段階は、
    前記有機化合物及び溶媒を混合して、スラリーを生成する段階と、
    集電体に前記スラリーを塗布する段階と、
    前記スラリーを乾燥させる段階と、
    を含み、
    前記集電体に前記スラリーを塗布する段階は、塗工ギャップが180μm以上に設定されたコータを用いて、前記集電体に前記スラリーを塗布する段階を含む、
    請求項16に記載の電池の製造方法。
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