JP7459411B1 - セルロースナノファイバー、およびそれを含む水系分散組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、粘度の発現を抑えることができ、さらに塗料、フィルム等の製膜用途において優れた物性を得ることができるセルロースナノファイバーを提供することを課題とする。本発明は、(A)セルロースナノファイバーの絶乾質量に対してカルボキシル基が0.8~1.10mmol/gの範囲にあること、及び(B)アスペクト比が、20以上50未満であることを満たすセルロースナノファイバー、およびそれを含む水系分散組成物を提供する。

Description

本発明はセルロースナノファイバー、およびそれを含む水系分散組成物に関する。
直径が1~100nm程度の天然繊維または合成繊維は一般に、ナノファイバーと呼ばれることがある。ナノファイバーの一つであるセルロースナノファイバーは、食品や化粧品、塗料やコンポジット材料の補強材料などの様々な用途への展開が期待されている。
セルロースナノファイバーを得る方法としては、セルロース繊維を水中でN-オキシル化合物等の存在下で酸化し、不純物を除去し、分散力を加える方法が知られている(特許文献1)。
特開2008-001728号公報
一方でセルロースナノファイバーの様々な用途への展開に伴い、多様な特性を有するセルロースナノファイバーの開発が望まれている。例えば、平均繊維長と平均繊維径から算出されるアスペクト比が小さいセルロースナノファイバーもその一つである。アスペクト比が小さいことで、繊維径に対する相対的な繊維長が短いセルロースナノファイバーが得られるため、このようなセルロースナノファイバーの用途の例としては、セルロースナノファイバー分散液を基材に塗布して基材上にフィルムを形成させることや、セルロースナノファイバー分散液を顔料やバインダーなどを含む塗料に混ぜることが考えられる。
セルロースナノファイバー分散液を基材に塗布して基材上にフィルムを形成させる場合の問題としては、以下が挙げられる。まず、分散液の粘度が高すぎると均質に塗布することが困難である。一方、均質に塗布するために、セルロースナノファイバー分散液を希釈して用いると、所望のフィルム厚みが達成されるまで何度も塗布と乾燥とを繰り返し実施しなくてはならず効率が悪い。また、セルロースナノファイバー分散液を顔料及びバインダーを含む塗料と混ぜる場合、分散液の粘度が高すぎると塗料中に均一に混合させることができない。
以上を鑑み、本発明においては粘度の発現を抑えることができ、塗料、フィルム等の成膜用途において優れた物性を得ることができるセルロースナノファイバーを提供することを目的とする。
すなわち本発明は、以下(1)~(4)である。
(1)下記条件(A)~(B)を満たすセルロースナノファイバー。
(A)セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有し、かつ、セルロースナノファイバーの絶乾質量に対するカルボキシル基量が0.8~1.10mmol/gの範囲にあること。
(B)アスペクト比が、20以上50未満であること。
(2)下記条件(C)をさらに満たす、(1)に記載のセルロースナノファイバー。
(C)平均繊維径が、500nm以下であること。
(3)(1)又は(2)に記載のセルロースナノファイバーを含む、水系分散組成物。
(4)フィルム用である、(3)に記載の組成物。
本発明においては、粘度の発現を抑えることができ、さらに塗料、フィルム等の成膜用途において、塗工性、透明性、濡れ性等の優れた物性を発揮できるセルロースナノファイバーを提供することができる。
〔1.セルロースナノファイバー〕
本明細書において、セルロースナノファイバーは、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロース、又はナノセルロースクリスタルと称されることもある。
本発明のセルロースナノファイバー(以下、CNFと言うことがある)は、(A)カルボキシル基を有し、セルロースナノファイバーの絶乾質量に対してカルボキシル基量が0.80~1.10mmol/gであり、かつ、(B)アスペクト比が、20以上50未満である。
(カルボキシル基量(条件(A)))
セルロースナノファイバーは、カルボキシル基を含有するセルロースナノファイバーであり、いわゆる酸化セルロースナノファイバー(以下、酸化CNFと言うことがある)である。カルボキシル基の量は、酸化セルロースの絶乾質量に対して、0.80以上、好ましくは0.85以上、より好ましくは0.90以上である。これにより、解繊に要するエネルギーを低く抑えることができ、また基材に塗工した際に透明な膜を形成できる。上限は、1.10以下である。これによりフィルムなど製膜材料の物性への悪影響を抑制できる。従って、酸化セルロースのカルボキシル基の量は、0.80~1.10mmol/gであり、より好ましくは0.85~1.10mmol/g、さらに好ましくは0.90~1.10mmol/g程度である。なお、本明細書中、変性度を示す場合においては、カルボキシル基の量は、カルボキシル基(-COOH)の量、及びカルボキシレート基(-COO)の量の合計量を示す。酸化セルロースナノファイバーにおけるカルボキシル基の量は、酸化セルロースの変性度を示す指標である。カルボキシル基の量は、後段で説明する製造時における酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件により調整できる。
カルボキシル基の量は、解繊前の酸化パルプ(酸化セルロース)を用いて下記条件で測定できる。すなわち、酸化パルプの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量〔mmol/gパルプ〕=a〔ml〕×0.05/酸化パルプ質量〔g〕。
なお、セルロースナノファイバーを調製する際の解繊処理では、原則変性度は変化しないため、酸化セルロース(未解繊)の変性度は解繊したセルロースナノファイバーの変性度とみなすことができる。
(平均繊維径(条件(C)))
本発明のセルロースナノファイバーの平均繊維径は、500nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。下限は、特に制限はないが、例えば3nm以上である。従って、平均繊維径は、3nm以上又は500nm以下であることが好ましく、3nm以上又は50nm以下であることがより好ましく、3nm以上又は20nm以下であることがさらに好ましい。平均繊維径及び平均繊維長の測定は、例えば、セルロースナノファイバーの0.001質量%水分散液を調製し、この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の断面高さを計測することにより、数平均繊維径あるいは繊維長として算出することができる。
(アスペクト比(条件(B)))
酸化CNFのアスペクト比は、20以上、好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。これにより、粘度の低下を抑制し、基材へ塗工したときにハジキの発生を抑制でき、均一な膜を形成することができる。上限は、50未満、好ましくは45以下である。これにより、塗工時のハンドリング性が良好となり、均一な膜を形成できる。また、塗工時の泡抜けを容易に行うことができる。従って、アスペクト比は、20以上50未満、好ましくは、25~45、さらに好ましくは30~45の範囲内である。アスペクト比が本範囲であることで、粘性を適切な範囲に調整することができる。
アスペクト比は下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
〔2.セルロースナノファイバーの製造方法〕
本発明のセルロースナノファイバーは、セルロース原料にカルボキシル基を導入して得られる酸化セルロースを解繊することによって得ることができる。
(セルロース原料)
セルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物を起源とするものを挙げることができ、いずれも使用することができる。好ましくは、植物又は微生物由来のセルロース原料であり、より好ましくは、植物由来のセルロース原料である。
(カルボキシル基の導入(酸化))
上記のセルロース原料を公知の方法で酸化(カルボキシル化)することにより、セルロース原料にカルボキシル基を導入することができる。
-TEMPO酸化-
酸化の一例として、セルロース原料を、N-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法がある。この酸化反応により、セルロース表面のピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化される。その結果、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(-COOH)又はカルボキシレート基(-COO)を有する酸化セルロースを得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下であることが好ましい。
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生し得る化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば、4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
N-オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol~10mmolが好ましく、0.01mmol~1mmolがより好ましく、0.02mmol~0.5mmol、0.05mmol~0.5mmolがさらに好ましい。また、その濃度は、反応系に対し、0.1mmol/L~4mmol/L程度が好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。
臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol~100mmolが好ましく、0.1mmol~10mmolがより好ましく、0.5mmol~5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物等がある。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol~500mmolが好ましく、0.5mmol~50mmolがより好ましく、1mmol~25mmolがさらに好ましい。また、例えば、N-オキシル化合物1molに対して1mol~40molが好ましい。
セルロースの酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。そのため、反応温度は4℃~40℃が好ましく、15℃~30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する。酸化反応を効率よく進行させるために、反応途中で水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8~12、好ましくは9~12程度に維持することが好ましい。さらに好ましくは10~12である。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じ難い等の理由で、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常、0.5時間~6時間である。
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段階目の反応終了後に濾別して得られたカルボキシル化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化することにより、1段階目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化することができる。
-オゾン酸化-
酸化の他の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法がある。この酸化反応により、ピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50g/m3~250g/m3であることが好ましく、50g/m3~220g/m3であることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1質量部~30質量部であることが好ましく、5質量部~30質量部であることがより好ましい。
オゾン処理温度は、0℃~50℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1分~360分程度であり、30分~360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸等が挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を調製し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
(短繊維化処理)
酸化の後解繊前に、短繊維化処理を行うことが好ましい。短繊維化処理を行うことにより、アスペクト比、平均繊維径等の、セルロースナノファイバーのサイズを調整でき、セルロースナノファイバーを含む分散組成物の粘度の上昇を抑制できる。
短繊維化処理としては、例えば、アルカリ性又は酸性条件下(好ましくはアルカリ性条件下)で酸化セルロースを加水分解する処理が挙げられる。反応pHは、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。これにより、加水分解による短繊維化を適度に進めることができる。上限は、14以下が好ましく、13以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。これにより、加水分解後の着色を抑制し、透明な酸化セルロースを得ることができる。従って、pHは、8~14が好ましく、9~13がより好ましく、10~12がさらに好ましい。pH値の調整に用いるアルカリは水溶性であればよく、製造コストの観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
短繊維化処理の際には、酸化剤、還元剤等の助剤を用いることが好ましい。これにより、加水分解(中でも、アルカリ条件における加水分解)におけるβ脱離の際の二重結合生成、及びこれに起因する酸化セルロースの着色を抑制できる。酸化剤としては、例えば、酸素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられ、ラジカルを発生し難い観点から、酸素、過酸化水素、次亜塩素酸塩が好ましく、過酸化水素がより好ましい。還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ハイドロサルファイト、亜硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。助剤の使用量は、反応効率の観点から、絶乾セルロースに対し0.1~10質量%が好ましく、0.3~5質量%がより好ましく、0.5~3質量%がさらに好ましい。
短繊維化処理の反応温度は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。これにより、加水分解を適度に進め、短繊維化を十分に進めることができる。上限は、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。これにより加水分解後の酸化セルロースの着色を抑制できる。従って、反応効率の観点から、40~120℃が好ましく、50~100℃がより好ましく、60~90℃がさらに好ましい。加水分解の反応時間は、0.5時間~24時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましく、2時間~6時間がさらに好ましい。短繊維化処理は、例えば、酸化セルロースをアルカリ性溶液(好ましくは、アルカリ性水溶液)に添加して行うことができる。アルカリ性溶液中の酸化セルロースの濃度は、1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましく、4%~10質量%がさらに好ましい。
(解繊)
解繊に用いる装置は特に限定されないが例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、セルロース原料又は酸化セルロース(通常は分散液)に強力なせん断力を印加できることが好ましい。装置が印加できる圧力は、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は、セルロース原料又は酸化セルロース(通常は分散液)に上記圧力を印加でき、かつ強力なせん断力を印加できる、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。解繊装置での処理(パス)回数は、1回でもよいし2回以上でもよく、2回以上が好ましい。
〔3.分散組成物〕
上述のセルロースナノファイバーは、分散組成物として利用できる。分散組成物は、セルロースナノファイバーと溶媒とを少なくとも含む組成物であり、分散媒中にセルロースナノファイバーが分散している。
分散組成物は、分散処理により製造できる。分散処理においては通常、溶媒に酸化セルロースを少なくとも含む成分を分散する。溶媒は、酸化セルロースを分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等の親水性の有機溶媒)、それらの混合溶媒が挙げられる。セルロース原料が親水性であることから、溶媒は水であることが好ましい。本明細書において、溶媒として水を含む分散組成物を、水系分散組成物と言う。
分散体中の酸化セルロースの固形分濃度は、通常は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、セルロース繊維原料の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
セルロースナノファイバーの製造における解繊処理と、分散組成物調製の際の分散処理の順序は、特に限定されず、どちらを先に行ってもよいし同時に行ってもよいが、分散処理後に解繊処理を行うことが好ましい。各処理の組み合わせを少なくとも1回行えばよく、2回以上繰り返してもよい。また、分散処理、解繊処理を行った後に、分散組成物の固形分濃度を調整してもよい。
解繊処理又は分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
分散組成物は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、保存料等の公知の任意成分が挙げられる。
〔3.セルロースナノファイバー、水系分散組成物の用途〕
上述のセルロースナノファイバー、水系分散組成物は、食品、化粧品分野等の各種産業分野で利用できる。用途としては、例えば、樹脂、ゴム等の補強材料、製膜用途が挙げられ、中でもフィルム等の製膜用途に適している。基材の材料は特に限定されず、各種樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン)、金属(例えば、アルミニウム)が挙げられる。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、これら製造例、実施例及び比較例は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。
(実施例1)
漂白済み針葉樹由来溶解クラフトパルプ(バッカイ社製DKP)5g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)19.5mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)とを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液8mlを添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、3.0N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応させた後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することでカルボキシル化セルロースを得た。得られたカルボキシル化セルロースのカルボキシル基量は、0.94mmol/gであった。その後、酸化セルロースの5%(w/v)スラリーに過酸化水素を酸化セルロースに対して2%(w/v)添加し、1M水酸化ナトリウムでpHを12に調整した。このスラリーを80℃で、2時間加水分解処理した。これを水で4.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で5回処理し、セルロースナノファイバーAを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーAのカルボキシル基量は0.94mmol/gであり、平均繊維径は6.9nm、平均繊維長は235nm、アスペクト比は34であった。
(実施例2)
反応系に添加する2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を7.5mlにしたこと、且つ加水分解した酸化セルロース繊維を超高圧ホモジェナイザー(20℃、140MPa)で10回処理に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーBを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーBのカルボキシル基量は0.87mmol/g、平均繊維径は7.3nm、平均繊維長は208nm、アスペクト比は28であった。
(実施例3)
反応系に添加する2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を8.5mlにしたこと以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーCを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーCのカルボキシル基量は1.06mmol/g、平均繊維径は7.2nm、平均繊維長は352nm、アスペクト比は49であった。
(比較例1)
反応系に添加する2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を14mlにしたこと以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーDを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーDのカルボキシル基量は1.87mmol/gであり、平均繊維径は5.7nm、平均繊維長は230nm、アスペクト比は40であった。
(比較例2)
漂白済み針葉樹由来クラフトパルプ(白色度85%)5g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)19.5mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液11ml添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応させた後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化セルロースを得た。得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で3回処理して、セルロースナノファイバーEを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーEのカルボキシル基量は1.6mmol/gであり、平均繊維径は3.0nm、平均繊維長は753nm、アスペクト比は251であった。
(比較例3)
酸化セルロースの5%(W/V)スラリーに添加する過酸化水素の量を酸化セルロースに対し10%(W/V)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーFを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーFのカルボキシル基量は0.92mmol/gであり、平均繊維径は6.5nm、平均繊維長は126nm、アスペクト比は19であった。
(比較例4)
酸化セルロースの5%(W/V)スラリーに添加する過酸化水素の量を酸化セルロースに対し0.5%(W/V)に変更し、且つ加水分解した酸化セルロース繊維を超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で4回処理に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーGを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーGのカルボキシル基量は0.95mmol/gであり、平均繊維径は7.2nm、平均繊維長は370nm、アスペクト比は51であった。
(比較例5)
反応系に添加する2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.5mlにしたこと以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーHを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーHのカルボキシル基量は0.71mmol/gであり、平均繊維径は8.2nm、平均繊維長は268nm、アスペクト比は33であった。
(比較例6)
反応系に添加する2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を10mlにしたこと以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーIを含む水分散体を得た。セルロースナノファイバーIのカルボキシル基量は1.18mmol/gであり、平均繊維径は5.3nm、平均繊維長は241nm、アスペクト比は45であった。
(評価)
各実施例で得られたセルロースナノファイバーA~Gを含む水分散体の濃度を3%に調整した。一方、水平な台上に、基材としてのPETフィルムを載置し、その表面に塗工バーを用いて、上記3%水分散体を780g/mとなるよう塗工した。塗工バーはガラス棒の両端にテープを巻き、0.7mmの高さとなるように調整したものを使用した。35℃で1日乾燥し、塗膜を形成し、以下の評価を行った。
-塗工性-
塗工バーを用いて塗工した際のハンドリング性と塗膜の表面の様子を目視で評価した。塗工後の塗膜表面の様子が均一な場合塗工性が良好、凹凸が確認され不均一な場合塗工性が不良、塗膜が形成されずハジキが発生した場合塗工性が不良と評価した。尚、アスペクト比が大きい場合、粘度が高くハンドリング性が悪化する懸念があり、塗膜中に泡が入り込む、不均一な塗膜表面となるおそれがある。またアスペクト比が小さい場合、塗膜が形成されないか、又は、ハジキが発生することがある。
-濡れ性-
塗膜表面に5μlの水を滴下し、滴下後1秒後の水の接触角を、接触角測定器(商品名:DAT1122、メーカー:Fibro社)を用いて、温度23℃、湿度(相対湿度)50%の条件で測定した。接触角が28°以下の場合ぬれ性が良好、30°未満の場合やや不良、30°以上の場合不良と評価した。
-透明性-
UV-VIS分光光度計 UV-1800(島津製作所社製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて波長660nmの光の透過率を測定した(ブランク:PETフィルム)。光透過率が96%以上の場合、透明性が良好、90%以上の場合やや不良、90%未満の場合、不良と判定した。
Figure 0007459411000001
本発明のセルロースナノファイバーは、アスペクト比とカルボキシル基量が適度な範囲に調整されるため、食品や化粧品、製膜材料やコンポジット材料の補強材料などの様々な用途に適しているが、特にフィルム、塗料等の成膜用途において良好な物性を示すことができ、このような用途がより適している。

Claims (4)

  1. 下記条件(A)~(B)を満たすセルロースナノファイバー。
    (A)セルロースナノファイバーがカルボキシル基を有し、かつ、セルロースナノファイバーの絶乾質量に対するカルボキシル基量が0.8~1.10mmol/gの範囲にあること。
    (B)アスペクト比が、20以上50未満であること。
  2. 下記条件(C)をさらに満たす、請求項1に記載のセルロースナノファイバー。
    (C)平均繊維径が、500nm以下であること
  3. 請求項1又は2に記載のセルロースナノファイバーを含む、水系分散組成物。
  4. フィルム用である、請求項3に記載の組成物。
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