以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
(用語の定義)
本明細書中、方位とは、対象となる方向を光学素子の出射側の基板面上に射影したときの方向を意味し、基準となる方位との間のなす角度(方位角)で表現される。ここで、基準となる方位(0°)は、上記第一状態における上記第一基板側の液晶分子の配向方向を光学素子の出射側の基板面上に射影したときの方向に設定される。すなわち、第一状態における第一基板側の液晶分子の配向方向の方位角が0°に設定される。方位角は、基準となる方位から反時計回りを正の角度、基準となる方位から時計回りを負の角度とする。反時計回り及び時計回りは、いずれも、光学素子を出射側から見たときの回転方向を表す。また、方位角は、光学素子を出射側から平面視した状態で測定された値を表す。
本明細書中、2つの直線(軸、方向及び方位を含む)が互いに直交するとは、光学素子を出射側から平面視した状態で直交することを意味する。また、2つの直線の一方の直線が他方の直線に対して斜めに設けられるとは、光学素子を出射側から平面視した状態で一方の直線が他方の直線に対して斜めに設けられることを意味する。また、2つの直線のなす角度とは、光学素子を出射側から平面視した状態における一方の直線と他方の直線とのなす角度を意味する。
本明細書中、2つの直線(軸、方向及び方位を含む)が直交するとは、両者のなす角度が90°±3°であることを意味し、好ましくは90°±1°、より好ましくは90°±0.5°、特に好ましくは90°(完全に直交)であることを意味する。2つの直線が平行であるとは、両者のなす角度が0°±3°であることを意味し、好ましくは0°±1°、より好ましくは0°±0.5°、特に好ましくは0°(完全に平行)であることを意味する。
本明細書中、面内方向のリタデーション(面内位相差)Rpは、Rp=(ns-nf)dで定義される。また、厚さ方向のリタデーションRthは、Rth=(nz-(nx+ny)/2)dで定義される。nsはnx、nyのうち大きい方を、nfは小さい方を指す。また、nx及びnyは、複屈折層(位相差フィルムと液晶層を含む)の面内方向の主屈折率を示し、nzは、面外方向、すなわち、複屈折層の面に対して垂直方向の主屈折率を示し、dは、複屈折層の厚みを示す。
なお、本明細書中で主屈折率、位相差等の光学パラメータの測定波長は、特に断りのない限り550nmとする。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光学素子の断面模式図である。図2は、実施形態1に係る光学素子が備える液晶セルの斜視模式図である。図3は、実施形態1に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。図4は、実施形態1に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における偏光状態について説明する模式図である。図5は、実施形態1に係る光学素子の軸方位の一例を示す図である。
図1~図5に示すように、本実施形態の光学素子10は、第一基板100、液晶層300、及び、第二基板200を備える液晶セル11と、上記1/4波長フィルムとしての第一の1/4波長フィルム12とを備え、液晶層300は、第一基板100と第二基板200との間でツイスト配向する液晶分子310を含有する。液晶セル11は、第一基板100及び第二基板200の少なくとも一方に、液晶層300への電圧印加用の電極11Eを有する。電極11Eは、第一基板100側の液晶分子311が第一の配向方向311Aに配列する第一状態と、第一基板100側の液晶分子311が、平面視において第一の配向方向311Aに対して直交する第二の配向方向311Bに配列する第二状態と、を液晶層300への電圧印加により切り替え可能に配置されている。上記第一状態と上記第二状態との切り替えは、液晶セル11に入射する光の偏光状態を制御するものであり、液晶セル11に円偏光が入射した場合、上記第一状態では、上記円偏光が第一の直線偏光に変換され、上記第二状態では、上記円偏光が、平面視において上記第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光に変換され、液晶セル11に直線偏光が入射した場合、上記第一状態では、上記直線偏光が第一の円偏光に変換され、上記第二状態では、上記直線偏光が、上記第一の円偏光の回転方向と逆方向に回転する第二の円偏光に変換される。このような態様とすることにより、光学素子10の厚さを抑えつつ、光学素子10に入射した円偏光を変調させずに出射する状態と、光学素子10に入射した円偏光を変調させて出射する状態とを、広帯域でスイッチングすることが可能となる。すなわち、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替え可能であり、かつ、薄型化が可能な光学素子10を実現することができる。
上記第一状態において、第一基板100側の液晶分子311は第一の配向方向311Aに配列し、上記第二状態において、第一基板100側の液晶分子311は、平面視において第一の配向方向311Aに対して直交する第二の配向方向311Bに配列する。ここで、第一基板側の液晶分子の配向方向とは、第一基板近傍において水平配向している液晶分子の配向方向である。より具体的には、第一基板の液晶層側に設けられた配向膜が水平配向膜である場合、第一基板側の液晶分子の配向方向とは、液晶層の第一基板側の界面に位置する液晶分子の配向方向をいう。第一基板の液晶層側に設けられた配向膜が垂直配向膜である場合、液晶層の第一基板側の界面に位置する液晶分子は垂直配向しているため、第一基板側の液晶分子の配向方向とは、第一基板側の界面より液晶層の内側に位置する、水平配向状態にある液晶分子の配向方向をいう。
同様に、第二基板側の液晶分子の配向方向とは、第二基板近傍において水平配向している液晶分子の配向方向である。より具体的には、第二基板の液晶層側に設けられた配向膜が水平配向膜である場合、第二基板側の液晶分子の配向方向とは、液晶層の第二基板側の界面に位置する液晶分子の配向方向をいう。第二基板の液晶層側に設けられた配向膜が垂直配向膜である場合、液晶層の第二基板側の界面に位置する液晶分子は垂直配向しているため、第二基板側の液晶分子の配向方向とは、第二基板側の界面より液晶層の内側に位置する、水平配向状態にある液晶分子の配向方向をいう。
ここで、第一基板側の液晶分子の配向方向及び第二基板側の液晶分子の配向方向は、Axoscan(オプトサイエンス社製)で液晶セルを測定し、出力されるミューラーマトリックスから測定することができる。具体的には、ポジ型の液晶分子が充填されている場合は電圧無印加時、ネガ型の液晶分子が充填されている場合は電圧印加時(例えば5V)で測定する。また、Axoscan内で液晶のセル厚やツイスト角をフィッティングするソフトによっても、第一基板側の液晶分子の配向方向及び第二基板側の液晶分子の配向方向を求めることができる。
上記第一状態と上記第二状態との切り替えは、液晶セル11に入射する光の偏光状態を制御するものである。液晶セル11に円偏光が入射した場合、上記第一状態では、上記円偏光が第一の直線偏光に変換され、上記第二状態では、上記円偏光が、平面視において上記第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光に変換される。液晶セル11に直線偏光が入射した場合、上記第一状態では、上記直線偏光が第一の円偏光に変換され、上記第二状態では、上記直線偏光が、上記第一の円偏光の回転方向と逆方向に回転する第二の円偏光に変換される。
ここで、液晶セル11に円偏光が入射した場合、第一状態では、当該円偏光が概ね第一の直線偏光に変換されていればよい。例えば、第一状態では、波長550nm付近(具体的には波長530nm以上、570nm)において第一の直線偏光であり、その他の波長において楕円偏光となっていてもよい。また、第二状態では、当該円偏光が概ね第二の直線偏光に変換されていればよい。例えば、第二状態では、波長550nm付近(具体的には波長530nm以上、570nm)において第二の直線偏光であり、その他の波長において楕円偏光となっていてもよい。
また、液晶セル11に直線偏光が入射した場合、第一状態では、当該直線偏光が概ね第一の円偏光に変換されていればよい。例えば、第一状態では、波長550nm付近(具体的には波長530nm以上、570nm)において第一の円偏光であり、その他の波長において楕円偏光となっていてもよい。また、第二状態では、当該直線偏光が概ね第二の円偏光に変換されていればよい。例えば、第二状態では、波長550nm付近(具体的には波長530nm以上、570nm)において第二の円偏光であり、その他の波長において楕円偏光となっていてもよい。
本実施形態では、液晶セル11に円偏光が入射した場合について説明するが、液晶セル11に直線偏光が入射した場合についても同様の効果が得られる。
液晶セル11は、第一基板100と液晶層300と第二基板200とを順に備える。光学素子10では、第一基板100及び第二基板200の少なくとも一方の基板において、in-plane方向に2つの方向の電界を生じさせることにより、第一状態と第二状態とをスイッチングすることを可能にしている。
例えば、第一基板100と液晶層300との間、及び、第二基板200と液晶層300との間の少なくとも一方に、配向規制力を限りなく0に近づけた弱アンカリングの配向膜を配置することにより、第一状態と第二状態とをスイッチングすることができる。具体的には、スライド膜と呼ばれる液晶分子の配向を保持する配向膜を用いることや、方位角0°及び方位角90°の2方向に配向規制力を有する配向膜を用いることが挙げられる。以下に詳細を説明する。
図1に示すように、本実施形態の光学素子10は、更に、第一の1/4波長フィルム12の液晶セル11とは反対側に第二の1/4波長フィルム13を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。以下では、光学素子10が、入射側から出射側に向かって順に、液晶セル11、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を備える態様について説明する。
図2に示すように、液晶セル11は、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された、第一の弱アンカリングの水平配向膜411と、液晶層300と第二基板200との間に配置された、第二の弱アンカリングの水平配向膜421と、を有する。電極11Eは、第一基板100において、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第一の櫛歯電極120を有し、第二基板200において、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第二の櫛歯電極220を有する。平面視において、第一の櫛歯電極120の延伸方向120Aは、第二の櫛歯電極220の延伸方向220Aに対して斜めに設けられる。
このような態様とすることにより、第一の櫛歯電極120を電圧無印加状態に、第二の櫛歯電極220を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。更に、第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光とは偏光状態が異なる円偏光(例えば、左円偏光)に広帯域で変換される。このように、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現される。
また、第一の櫛歯電極120を電圧印加状態に、第二の櫛歯電極220を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。更に、第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光と偏光状態が同じである円偏光(例えば、右円偏光)のまま広帯域で出射される。このように、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。
なお、本実施形態では、入射側から出射側に向かって順に、液晶セル11と第一の1/4波長フィルム12と第二の1/4波長フィルム13とを備える態様について説明するが、これらの積層順は逆になっていてもよく、具体的には、入射側から出射側に向かって順に、第二の1/4波長フィルム13と第一の1/4波長フィルム12と液晶セル11とを備えていてもよい。この場合も、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現され、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。なお、積層順が逆になる場合には、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aと第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aとは適宜調整される。
液晶層300は、第一基板100と第二基板200との間でツイスト配向する液晶分子310を含有する。第一状態及び第二状態のそれぞれにおいて、液晶分子310は、第一基板100側から第二基板200側にかけて捩れ配向している。
液晶分子310の捩れ配向は、例えば、液晶材料にカイラル剤を添加することにより実現することができる。カイラル剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。カイラル剤としては、例えば、S-811(メルク社製)等を用いることができる。
平面視において、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向(第一の配向方向)311Aと、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aとのなす角度は、57°以上、82°以下であることが好ましく、63°以上、75°以下であることがより好ましく、66°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。以下では、平面視において、第一基板側の液晶分子の配向方向と、第二基板側の液晶分子の配向方向とのなす角度を、ツイスト角ともいう。
平面視において、第二状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向(第二の配向方向)311Bと、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bとのなす角度は、57°以上、82°以下であることが好ましく、63°以上、75°以下であることがより好ましく、66°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。第一状態におけるツイスト角と第二状態におけるツイスト角とは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
平面視において、延伸方向120Aと延伸方向220Aとのなす角度α(ただし、αは0°を超え、90°未満の実数)、及び、液晶層300に含まれる液晶分子310のツイスト角Aは、第一状態及び第二状態において、下記(式AX1)を満たすことが好ましく、下記(式AX2)を満たすことがより好ましく、下記(式AX3)を満たすことが更に好ましい。このような態様とすることにより、効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
85°-A≦α≦95°-A (式AX1)
88°-A≦α≦92°-A (式AX2)
α=90°-A (式AX3)
ツイスト角Aは、60°以上、80°以下であることが好ましく、64°以上、76°以下であることがより好ましく、68°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
延伸方向120Aの方位角が0°であり、延伸方向220Aの方位角が160°(すなわち、平面視において、延伸方向120Aと延伸方向220Aとのなす角度αが20°)であり、液晶分子310のツイスト角Aが70°であり、かつ、液晶層300がポジ型の液晶分子310を含有する場合、図3~図5に示すように、第一の櫛歯電極120が電圧無印加状態であり、第二の櫛歯電極220が電圧印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一の櫛歯電極120が電圧印加状態であり、第二の櫛歯電極220が電圧無印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
なお、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合は、第一の櫛歯電極120が電圧印加状態であり、第二の櫛歯電極220が電圧無印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一の櫛歯電極120が電圧無印加状態であり、第二の櫛歯電極220が電圧印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
図6は、実施形態1に係る光学素子の、第一状態における各層のストークスプロットを示す図である。図6は、第一状態における各層を透過してくときの偏光状態(各層の役割)を示している。実施形態1に係る光学素子10の偏光変調の原理を、図6のポアンカレ球を用いて詳細に説明する。
図6の(1)に示すように、右円偏光(S3=+1)が液晶セル11に入射する。
70°捩れの液晶セル11を通過後、一度、図6の(2)のプロットの偏光状態に変換される。各プロットの点は、380nm~780nmの波長違いのプロットを表している。波長550nm付近は直線偏光(ポアンカレ球上でいう赤道上)だが、それ以外の波長はポアンカレ球の北半球にプロットされ、楕円偏光になっている。
その後、第一の1/4波長フィルム12(具体的には、逆波長分散の1/4波長フィルム)を通過し、図6の(3)のプロットとなる。
更に、第二の1/4波長フィルム13(具体的には、フラット波長分散の1/4波長フィルム)を通過すると、図6の(4)のプロットに示すように、ほぼ全波長が左円偏光(ポアンカレ球上での南極位置)となって出射される。すなわち、右円偏光から左円偏光への変調がなされたことが分かる。
第二状態(非変調時)も同様に、70°捩れの液晶セル11を通過後一度直線偏光になる。ただし、液晶セル11の配向全体を90°回転させているため、第一状態(変調時)とは約90°角度の異なった直線偏光となっている。そして、その後、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過後に全波長が右円偏光になる。すなわち、右円偏光を右円偏光として出射でき、非変調となる。
このように、第一状態と第二状態とは、70°ツイストという液晶分子310の配向は同じであり、系全体が90°異なる関係にある。本実施形態の光学素子10を用いると、第一状態及び第二状態の2つの状態を可逆的にスイッチングすることができ、偏光非変調時も偏光変調時も広帯域な薄型の可変1/2波長板(sHWP:Switchable Half Wave Plate)素子を実現することができる。
ここで、sHWPを液晶層1層で実現しようとすると、図7に示すような、90°捩れのTN液晶層300R1を備える液晶セル11R1を用いた、比較形態1の光学素子10R1の構成が考えられる。より具体的には、比較形態1の光学素子10R1は、遅相軸の方位角が75°である1/4波長フィルム14Rと、遅相軸の方位角が15°である1/2波長フィルム15Rと、液晶セル11R1と、遅相軸の方位角が-75°である1/2波長フィルム16Rと、遅相軸の方位角が-15°である1/4波長フィルム17Rと、を順に備える。図7は、比較形態1に係る光学素子の断面模式図である。
また、sHWPを液晶層2層で実現しようとすると、図8に示すような、70°捩れのTN液晶層300R2と、-70°捩れのTN液晶層300R3とが積層された比較形態2の光学素子10R2の構成が考えられる。図8は、比較形態2に係る光学素子の断面模式図である。
図9は、実施形態1、比較形態1及び比較形態2に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散の一例を示すグラフである。図9は、右円偏光(ストークスパラメータS3=+1)を入射したときの、出射光の偏光状態の波長依存を表す。S3=-1に近いほど左円偏光に変換されたことを示す。広波長にわたって-1に近い方が、変調時が広帯域といえる。
比較形態1の光学素子10R1は、設計は容易であるが、90°捩れのTN液晶層300R1の波長分散等の影響により、図9に示すように広帯域化が困難である。また、比較形態2の光学素子10R2では広帯域化は可能であるが、薄型化が困難である。また、偏光変調時(右円偏光を左円偏光に変換する際)は広帯域であるが、縦電界で駆動するため、偏光非変調時(右円偏光をそのまま右円偏光で出射する際)は、電圧印加時に液晶分子全てが垂直配向にはならず、残留リタデーションの影響を受けて広帯域とはならない。一方、本実施形態の光学素子10では、広帯域で左右の円偏光をスイッチングすることができる。
上記特許文献1では、偏光変調特性が一切開示されていない。特許文献1には単層のTN液晶層の構成が開示されているが、当該構成では偏光変調時(特許文献1における非アクティブ時、電圧OFF時)において、特定の波長でしか適切に偏光変換されず、広帯域での偏光変換を実現することはできない。また、特許文献1には複数の液晶層を積層した構成が開示されているが、光学素子の製造が複雑化し、厚くなるという課題がある。
より具体的には、特許文献1で開示されている単層の構成では、偏光変調時において、液晶分子は90°ツイスト配向し、偏光非変調時において、液晶分子は縦電界が印加されて垂直配向する。偏光変調時は液晶分子が90°ツイスト配向するため、波長依存があり、偏光変調を広帯域で実現することができない。仮に、液晶分子のツイスト角度や液晶層のセル厚等を調整して広帯域で偏光変調を実現できたとしても、偏光非変調時には基板付近の液晶分子による残留リタデーションの影響を受けて広帯域で偏光非変調を実現することはできない。すなわち、広帯域での偏光変調と偏光非変調とを両立することはできない。
一方、本実施形態の光学素子10は、偏光変調時も偏光非変調時も液晶分子310が70°ツイスト状態を維持し、かつ、それら2つの状態は系全体を90°回転させたこと以外は同様に駆動する。その結果、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で実現することができる。
上記特許文献2では、sHWPとパンチャラトナムベリー(PB:Pancharatnam Berry)レンズとのセットを複数セット(例えば、6セット)組み合わせて、焦点深度にチューナビリティが付与された可変焦点素子が開示されている。そのため、sHWPが厚くなると、当該可変焦点素子全体が厚くなるという課題がある。上記比較形態2のような2層の液晶層(70°捩れのTN液晶層300R2及び-70°捩れのTN液晶層300R3)でsHWPを実現する構成では、6セットで12層もの液晶層が必要であり、可変焦点素子を薄型化することは困難である。そのため、sHWPである光学素子は、薄型であり、広帯域で偏光変調及び偏光非変調を実現できることが求められている。
第一基板100は、第一の支持基板110と第一の櫛歯電極120とを備える。第二基板200は、第二の支持基板210と第二の櫛歯電極220とを備える。
第一の支持基板110及び第二の支持基板210としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の絶縁基板が挙げられる。ガラス基板の材料としては、例えば、フロートガラス、ソーダガラス等のガラスが挙げられる。ブラスチック基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン等のプラスチックが挙げられる。
第一の櫛歯電極120は、櫛歯電極である第一の画素電極と櫛歯電極である第一の共通電極とを有する。第二の櫛歯電極220は、櫛歯電極である第二の画素電極と櫛歯電極である第二の共通電極とを有する。第一の画素電極及び第二の画素電極を、以下では単に画素電極ともいい、第一の共通電極及び第二の共通電極を、以下では単に共通電極ともいう。画素電極及び共通電極は、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の透明導電材料、又は、それらの合金を、スパッタリング法等により単層又は複数層で成膜して形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングを行うことで形成することができる。
第一の櫛歯電極120のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一基板100側の液晶分子311を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。同様に、第二の櫛歯電極220のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第二基板200側の液晶分子312を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。ここで、櫛歯電極は、線状電極部とスリット部とが交互に繰り返して配置される構造を有し、櫛歯電極のピッチは、一組の線状電極部及びスリット部の幅の合計を意味する。
本明細書では、一対の共通電極と画素電極との間に閾値以上の電圧が印加された電圧印加状態を、単に「電圧印加状態」又は「電圧印加時」とも言い、一対の共通電極と画素電極との間に電圧が印加されていない(閾値未満の電圧が印加されている場合も含む)電圧無印加状態を、単に「電圧無印加状態」又は「電圧無印加時」とも言う。
液晶層300は、液晶材料を含んでおり、液晶層300に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶材料中の液晶分子310の配向状態を変化させることにより、液晶層300を通過する光の偏光状態を変化させることができる。
液晶分子310は、下記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するポジ型の液晶分子であってもよく、負の値を有するネガ型の液晶分子であってもよいが、本実施形態ではポジ型の液晶分子を例に挙げて説明する。なお、液晶分子の長軸方向が遅相軸の方向となる。また、液晶分子は、電圧が印加されていない状態(電圧無印加状態)で、ホモジニアス配向するものであり、電圧無印加状態における液晶分子の長軸の方向は、液晶分子の初期配向の方向ともいう。
Δε=(液晶分子の長軸方向の誘電率)-(液晶分子の短軸方向の誘電率) (L)
液晶層300の、波長550nmにおける電圧無印加状態でのリタデーションΔndは、180nm以上、280nm以下であることが好ましく、200nm以上、260nm以下であることがより好ましく、220nm以上、240nm以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
液晶層300の屈折率異方性Δnは、0.12以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。このような態様とすることにより、液晶層300自身の波長分散を小さくすることが可能となり、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
液晶層300の厚さdは、2μm以上、4.2μm以下であることが好ましい。
第一の弱アンカリングの水平配向膜411及び第二の弱アンカリングの水平配向膜421について説明する。弱アンカリングの配向膜とは、液晶分子に対する配向規制力が弱い配向膜をいう。本実施形態における弱アンカリングの配向膜では、単純なアンカリングエネルギー(弾性)よりも、粘弾性が重要因子となる。弱アンカリングの配向膜は、例えば、潤滑界面であってもよい。本明細書において、潤滑界面とは、潤滑界面誘導領域によって誘導される界面である。潤滑界面誘導領域とは、液晶相よりも低秩序な領域をいう。
潤滑界面誘導領域は、潤滑界面誘導液体領域であってもよい。潤滑界面誘導液体領域とは、潤滑界面誘導領域のうち、液体相である領域をいう。潤滑界面誘導領域としては、潤滑界面誘導液体領域(液体相)に限らず、ゲル層を形成している領域、オーダーパラメーター(配向秩序度)が低い領域、透明点が低下している領域、一部無秩序領域を含む秩序領域、運動性が高い領域を含む領域などであってもよい。
潤滑界面誘導領域は、潤滑界面誘導剤を含むことが好ましい。潤滑界面誘導領域は、潤滑界面誘導剤のみを含むものであってもよく、潤滑界面誘導剤及び液晶成分を含むものであってもよい。また、潤滑界面誘導剤は、液晶層300中に含まれていてもよく、液晶層300とは別に導入されてもよく、あらかじめ支持基板に含まれていてもよく、あらかじめ化学修飾させて、支持基板と結合していてもよい。
上記潤滑界面誘導剤は、極性基を有する化合物 、重合性化合物 、高分子化合物又はイオン液体であることが好ましい。上記高分子化合物は、鎖長の異なる2種又は3種以上のアルキル基、メソゲン基、光異性化可能な基の少なくとも1種を有することが好ましい。
液晶層300及び上記潤滑界面誘導剤が相分離構造を発現して、液晶層300が液晶相を形成し、潤滑界面誘導剤が潤滑界面誘導領域において液体相を形成していることが好ましい。潤滑界面誘導剤が潤滑界面誘導領域において液晶相より低秩序なゲル層を形成していてもよい。
弱アンカリングの配向膜は、例えば、液晶層300と上記潤滑界面誘導領域との界面に設けられるスリッパリー界面であることが好ましい。
第一の弱アンカリングの水平配向膜411及び第二の弱アンカリングの水平配向膜421は、スリッパリー界面(スリッパリー膜)であることが好ましい。例えば、液晶層300中にドデシルアクリレートを混合した材料により、液晶層300と第一基板100との間、及び、液晶層300と第二基板200との間に、ドデシルアクリレートの液体相(等方相)が潤滑界面誘導領域を形成し、液晶層300と潤滑界面誘導領域との界面がスリッパリー膜を形成する。
このような界面を有することで、電場によって液晶分子の配向方向を任意の方向に向け、その状態を維持することができる。スリッパリー膜の中でも、このような配向をメモリーする膜をスライド膜と呼ぶことがある。一度ある方向に配向されたあと、別の方向の電場を加えれば、液晶分子の配向方向を別の方向に向けることができる。すなわち、電場によって複数の安定状態を作り出すことができる。本実施形態では、第一状態と第二状態とを作り出すことができる。上記に例示した材料以外にも、特開2006-084536号公報や、国際公開第2017/034023号などに記載の材料も用いることができる。
弱アンカリングの配向膜は、例えば、方位角アンカリングエネルギーが、1×10-4J/m2未満である配向膜であってもよい。方位角アンカリングエネルギーは、例えば、トルクバランス法、ネールウオール法、電場応答閾値からの算出、回転磁場からの算出等、各種公知の方法で算出することができる。なお、本明細書に記載された方位角アンカリングエネルギーは、電場応答閾値からの算出法を用いて算出されたものである。弱アンカリングの配向膜の方位角アンカリングエネルギーの下限値は特に限定されないが、弱アンカリングの配向膜の方位角アンカリングエネルギーは、例えば、1×10-10J/m2以上である。
第一の弱アンカリングの水平配向膜411の方位角アンカリングエネルギーは、1×10-10J/m2以上、1×10-4J/m2未満であることが好ましく、1×10-10J/m2以上、1×10-5J/m2以下であることがより好ましく、1×10-10J/m2以上、1×10-6J/m2以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、効果的に偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
第二の弱アンカリングの水平配向膜421の方位角アンカリングエネルギーは、1×10-10J/m2以上、1×10-4J/m2未満であることが好ましく、1×10-10J/m2以上、1×10-5J/m2以下であることがより好ましく、1×10-10J/m2以上、1×10-6J/m2以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、効果的に偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
弱アンカリングの配向膜は配向処理を行うことにより形成される他、配向処理を行わなくとも形成することができる。具体的には、弱アンカリングの配向膜は、ラビング配向膜であってもよいし、光配向膜であってもよいし、配向処理が施されていない未処理の配向膜であってもよい。
ラビング配向膜は、例えば、ラビング配向膜用ポリマーを含む配向膜材料を基板上に成膜し、レーヨンや綿等からなる布を巻いたローラを、回転数及びローラと基板との距離を一定に保った状態で回転させ、ラビング配向膜用ポリマーを含む膜の表面を所定の方向に擦る(ラビング法)ことにより得られる。ラビング処理の条件を変更することにより、配向膜の方位角アンカリングエネルギーを調整し、弱アンカリングの配向膜を形成することができる。
ラビング配向膜用ポリマーとしては、例えば、ポリイミド等が挙げられる。ラビング配向膜に含まれるラビング配向膜用ポリマーは、一種であっても、二種以上であってもよい。
光配向膜は、例えば、光官能基を有する光配向性ポリマーを含む配向膜材料を基板上に成膜し、偏光紫外線を照射して光配向性ポリマーを含む膜の表面に異方性を発生させる(光配向法)ことにより得られる。光配向処理の条件や材料構造を変更することにより、配向膜の方位角アンカリングエネルギーを調整し、弱アンカリングの配向膜を形成することができる。
上記光配向性ポリマーとしては、例えば、シクロブタン基、アゾベンゼン基、カルコン基、シンナメート基、クマリン基、スチルベン基、フェノールエステル基及びフェニルベンゾエート基から選択される少なくとも一種の光官能基を有する光配向性ポリマー等が挙げられる。光配向膜に含まれる光配向性ポリマーは、一種であっても、二種以上であってもよい。光配向性ポリマーが有する光官能基は、ポリマーの主鎖に存在してもよいし、ポリマーの側鎖に存在してもよいし、ポリマーの主鎖及び側鎖の両方に存在してもよい。
上記光配向性ポリマーの光反応の型も特に限定されないが、光分解型ポリマー、光転位型ポリマー(好ましくは光フリース転位型ポリマー)、光異性化型ポリマー、光二量化型ポリマー及び光架橋型ポリマーを好適な例として挙げることができる。これらは何れかを単独で用いることもでき、二種以上を併用することもできる。なかでも、配向安定性の観点からは、254nm付近を反応波長(主感度波長)とする光分解型ポリマー、及び、254nm付近を反応波長(主感度波長)とする光転位型ポリマーが特に好ましい。側鎖に光官能基を有する光異性化型ポリマー及び光二量化型ポリマーもまた好ましい。
上記光配向性ポリマーの主鎖構造は特に限定されないが、ポリアミック酸構造、ポリイミド構造、ポリ(メタ)アクリル酸構造及びポリシロキサン構造、ポリエチレン構造、ポリスチレン構造、ポリビニル構造を好適な例として挙げることができる。
未処理の配向膜は、例えば、基板上に配向膜ポリマーを含む配向膜材料を成膜することにより得られる。上記配向膜ポリマーとしては、例えば、ポリイミド、ポリへキシルメタクリレート等が挙げられる。未処理の配向膜に含まれる配向膜ポリマーは、一種であっても、二種以上であってもよい。
また、未処理の配向膜に含まれる上記配向膜ポリマーとしては、ポリイミド及びポリへキシルメタクリレート以外に、国際公開2017/034023号に記載されているポリマーも挙げられ、なかでもポリエチレングリコール、ポリプロポレングリコール等のポリアルキレンオキサイドが好ましい。
水平配向膜は、電圧無印加時に、液晶層中の液晶分子を当該水平配向膜の表面に対して水平方向に配向させる機能を有する。ここで、液晶分子が水平配向膜の表面に対して水平方向に配向するとは、液晶分子のプレチルト角が、水平配向膜の表面に対して0°以上、5°以下であることを意味し、好ましくは0°以上、2°以下、より好ましくは0°以上、1°以下であることを意味する。液晶分子のプレチルト角は、液晶層への電圧無印加時に、液晶分子の長軸が配向膜の主面に対して傾斜する角度を意味する。
本明細書では、第一基板100と液晶層300との間に設けられる配向膜を第一の配向膜410ともいい、第二基板200と液晶層300との間に設けられる配向膜を第二の配向膜420ともいう。
1/4波長フィルム(具体的には、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13)は、少なくとも波長550nmの光に対して、20nm以上、240nm以下の面内位相差を付与するものであればよい。
1/4波長フィルムの材料としては、例えば、光重合性液晶材料等が挙げられる。光重合性液晶材料の構造としては、例えば、液晶分子の骨格の末端に、アクリレート基、メタクリレート基等の光重合性基を有する構造が挙げられる。
1/4波長フィルムは、例えば、下記の方法によって形成可能である。まず、光重合性液晶材料を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等の有機溶媒に溶かす。次に、得られた溶液を、基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の表面上に塗布し、溶液の塗膜を形成する。その後、この溶液の塗膜に対して、仮焼成、光照射(例えば、紫外線照射)、及び、本焼成を順に行うことによって、1/4波長フィルムが形成される。
また、上記光重合性液晶材料にカイラル剤を添加し、70°捩れた状態でポリマー化した液晶ポリマーを1/4波長フィルムとして用いてもよい。
1/4波長フィルムとしては、例えば、延伸処理された高分子フィルムも使用可能である。高分子フィルムの材料としては、例えば、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ノルボルネン、トリアセチルセルロース、ジアチルセルロース等が挙げられる。
第一の1/4波長フィルム12は、逆波長分散特性を有することが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。ここで、本明細書中、「位相差フィルムの波長分散性」とは、位相差フィルムが付与する位相差の絶対値と入射光の波長との相関関係を指す。可視光域において、入射光の波長が変化しても位相差フィルムが付与する位相差の絶対値が変化しない性質を「フラット波長分散特性」という。また、可視光域において、入射光の波長が大きくなるにつれて位相差フィルムが付与する位相差の絶対値が小さくなる性質を「正波長分散特性」といい、可視光域において、入射光の波長が大きくなるにつれて位相差フィルムが付与する位相差の絶対値が大きくなる性質を「逆波長分散特性」という。
第一の1/4波長フィルム12の、波長550nmの面内位相差に対する波長450nmの面内位相差は、0.7倍以上、1倍以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一の1/4波長フィルム12の、波長550nmの面内位相差に対する波長650nmの面内位相差は、1倍以上、1.3倍以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一の1/4波長フィルム12の波長550nmの面内位相差は、30nm以上、230nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側から遠い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本実施形態では第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は、48°以上、66°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第二の1/4波長フィルム13は、フラット波長分散特性を有することが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第二の1/4波長フィルム13の波長550nmの面内位相差は、110nm以上、175nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側に近い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本実施形態では第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は、3°以上、22°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aと、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aとのなす角度は、40°以上、50°以下であることが好ましく、42°以上、48°以下であることがより好ましく、44°以上、46°以下であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
液晶層300がポジ型の液晶分子310を含有する本実施形態では、平面視において、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、第一の櫛歯電極120の延伸方向120Aに一致する。そのため、第一状態での第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、例えば、図5に示すように、延伸方向120Aの方位角は0°に、延伸方向220Aの方位角は160°に、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角は57.2°に、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの方位角は12.2°に設定することができる。
光学素子10に入射する光は、円偏光であることが好ましい。このような態様とすることにより、円偏光の偏光状態をスイッチング可能な光学素子10を実現することができる。
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、液晶セル11の構成が異なることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図10は、実施形態2に係る光学素子が備える液晶セルの断面模式図である。図11は、実施形態2に係る光学素子が備える液晶セルの斜視模式図である。図12は、実施形態2に係る光学素子に印加される電界の方向を示す平面模式図である。図13は、実施形態2に係る光学素子の軸方位の一例を示す図である。
本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、図10及び図11に示すように、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された、弱アンカリングの水平配向膜412と、液晶層300と第二基板200との間に配置された垂直配向膜422と、を有する。電極11Eは、第一基板100において、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第一の櫛歯電極121、及び、絶縁層140を介して第一の櫛歯電極121に重畳し、かつ、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第二の櫛歯電極122を有する。平面視において、第一の櫛歯電極121の延伸方向121Aは、第二の櫛歯電極122の延伸方向122Aに対して直交する。
このような態様とすることにより、図12及び図13に示すように、第一の櫛歯電極121を電圧無印加状態に、第二の櫛歯電極122を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。更に、第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光とは偏光状態が異なる円偏光(例えば、左円偏光)に広帯域で変換される。このように、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現される。
また、第一の櫛歯電極121を電圧印加状態に、第二の櫛歯電極122を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。更に、第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光と偏光状態が同じである円偏光(例えば、右円偏光)のまま広帯域で出射される。このように、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。
図10に示すように、本実施形態の液晶セル11は、捩れHAN(Hybrid Aligned Nematic)セルであり、入射側から出射側に向かって順に、第一基板100、スリッパリー膜である弱アンカリングの水平配向膜412、カイラル剤入りの液晶層300、垂直配向膜422、及び、第二基板200を備えている。液晶層300に含まれる液晶分子310は、ネガ型の液晶分子であっても、ポジ型の液晶分子であってもよいが、実施形態では、液晶層300にポジ型の液晶分子310が含まれる場合を例に挙げて説明する。
図11に示すように、第一基板100は、第一の支持基板110と、第二の櫛歯電極122と、絶縁層140と、第一の櫛歯電極121と、を順に備える。第二基板200は、第二の支持基板210を備える。
絶縁層140は、第一の櫛歯電極121と第二の櫛歯電極122とを絶縁する機能を有する。絶縁層140としては、無機絶縁膜、有機絶縁膜、又は、上記有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層体を用いることができる。無機絶縁膜としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiO2)等の無機膜(比誘電率ε=5~7)や、それらの積層膜を用いることができる。有機絶縁膜としては、例えば、感光性アクリル樹脂等の比誘電率の小さい有機膜(比誘電率ε=2~5)や、それらの積層膜を用いることができる。有機絶縁膜としては、より具体的には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。
第一の櫛歯電極121は、櫛歯電極である第一の画素電極と櫛歯電極である第一の共通電極とを有する。第二の櫛歯電極122は、櫛歯電極である第二の画素電極と櫛歯電極である第二の共通電極とを有する。
第一の櫛歯電極121のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一基板100側の液晶分子311を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。同様に、第二の櫛歯電極122のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一基板100側の液晶分子311を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。
図12に示すように、第二の櫛歯電極122に電圧が印加され、第一の櫛歯電極121に電圧が印加されない場合、第一の電界方向120E1に電界が発生し(第一状態)、第二の櫛歯電極122に電圧が印加されず、第一の櫛歯電極121に電圧が印加される場合、第二の電界方向120E2に電界が発生する(第二状態)。このように、実施形態2の光学素子10は、第一基板100側の液晶分子311の配向方向の方位角を電界で90°回転させることができるものである。
垂直配向膜422は、電圧無印加時に、液晶層中の液晶分子を当該垂直配向膜の表面に対して垂直方向に配向させる機能を有する。ここで、液晶分子が垂直配向膜の表面に対して垂直方向に配向するとは、液晶分子のプレチルト角が、垂直配向膜の表面に対して86°以上、90°以下であることを意味し、好ましくは87°以上、89°以下、より好ましくは87.5°以上、89°以下であることを意味する。
垂直配向膜422は、強アンカリングの垂直配向膜であることが好ましい。強アンカリングの配向膜とは、液晶分子に対する配向規制力が強い配向膜をいい、例えば、方位角アンカリングエネルギーが、1×10-4J/m2以上である配向膜をいう。強アンカリングの配向膜の方位角アンカリングエネルギーの上限値は特に限定されないが、強アンカリングの配向膜の方位角アンカリングエネルギーは、例えば、1×10-1J/m2以下である。
垂直配向膜422の方位角アンカリングエネルギーは、1×10-4J/m2以上、1×10-1J/m2以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
弱アンカリングの水平配向膜412は、スリッパリー膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
上記実施形態1では両側の配向膜が弱アンカリングであるため、配向乱れ及び応答速度について改善の余地がある。片側を垂直配向(HAN構造)とした本実施形態では、片側は垂直配向膜422の強アンカリングのため、配向が安定しやすくなり、信頼性に優れた光学素子10とすることができる。HAN構造の場合は、弱アンカリングの水平配向膜412の方位角アンカリングエネルギーだけでなく、極角アンカリングエネルギーも重要である。HAN配向のため、弱アンカリングの水平配向膜412の極角アンカリングエネルギーが小さいと、第二基板200側の強アンカリングの配向膜(垂直配向膜422)の影響を受け、理想的なHAN配向から崩れやすくなる。
そのため、弱アンカリングの水平配向膜412の極角アンカリングエネルギーは、1×10-5J/m2以上であることが好ましく、1×10-4J/m2以上であることがより好ましく、1×10-3J/m2以上であることが更に好ましい。弱アンカリングの水平配向膜412の極角アンカリングエネルギーの上限値は特に限定されず、弱アンカリングの水平配向膜412の極角アンカリングエネルギーは、例えば、1×10-1J/m2以下である。極角アンカリングエネルギーは、方位角アンカリングエネルギーと同様の方法により測定することができる。また、配向膜の極角アンカリングエネルギーは、方位角アンカリングエネルギーと同様の方法により調整することができる。
弱アンカリングの水平配向膜412の極角アンカリングエネルギーは、1×10-5J/m2以上、1×10-1J/m2以下であることが好ましく、1×10-4J/m2以上、1×10-1J/m2以下であることがより好ましく、1×10-3J/m2以上、1×10-1J/m2以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、理想的なHAN配向が得られ易くなる。
液晶層300がポジ型の液晶分子310を含有する本実施形態では、平面視において、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、第一の櫛歯電極121の延伸方向121Aに一致する。そのため、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、例えば、図13に示すように、延伸方向121Aの方位角は0°に、延伸方向122Aの方位角は90°に、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの方位角は4°に、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角は49°に設定することができる。
(実施形態3)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~2と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、液晶セル11の構成が異なることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図14は、実施形態3に係る光学素子が備える液晶セルの斜視模式図である。図15は、実施形態3に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。
本実施形態の光学素子10が備える電極11Eは、図14及び図15に示すように、第一基板100において、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第一の櫛歯電極121、及び、第一の絶縁層141を介して第一の櫛歯電極121に重畳し、かつ、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第二の櫛歯電極122を有し、第二基板200において、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第三の櫛歯電極221、及び、第二の絶縁層241を介して第三の櫛歯電極221に重畳し、かつ、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第四の櫛歯電極222を有する。平面視において、第一の櫛歯電極121の延伸方向121Aは、第二の櫛歯電極122の延伸方向122Aに対して直交し、第三の櫛歯電極221の延伸方向221Aは、第四の櫛歯電極222の延伸方向222Aに対して直交し、第一の櫛歯電極121の延伸方向121Aは、第三の櫛歯電極221の延伸方向221Aに対して斜めに設けられる。
このような態様とすることにより、図15に示すように、第一の櫛歯電極121を電圧無印加状態に、第二の櫛歯電極122を電圧印加状態に、第三の櫛歯電極221を電圧印加状態に、第四の櫛歯電極222を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。更に、第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光とは偏光状態が異なる円偏光(例えば、左円偏光)に広帯域で変換される。このように、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現される。
また、第一の櫛歯電極121を電圧印加状態に、第二の櫛歯電極122を電圧無印加状態に、第三の櫛歯電極221を電圧無印加状態に、第四の櫛歯電極222を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。更に、第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光と偏光状態が同じである円偏光(例えば、右円偏光)のまま広帯域で出射される。このように、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。
このように、本実施形態の光学素子10では、第一基板100及び第二基板200の両基板に電圧を印加し、その後電圧を下げることで第一状態及び第二状態を実現することができる。第一状態と第二状態とでは、どちらの基板も電界の方向が90°異なる。本実施形態では、第一基板100と第二基板200の両方の配向を電圧で規定できるため、応答速度を高めることができる。
図14に示すように、第一基板100は、第一の支持基板110と、第二の櫛歯電極122と、第一の絶縁層141と、第一の櫛歯電極121と、を順に備える。第二基板200は、第二の支持基板210と、第三の櫛歯電極221と、第二の絶縁層241と、第四の櫛歯電極222と、を順に備える。
第一の絶縁層141は、第一の櫛歯電極121と第二の櫛歯電極122とを絶縁する機能を有する。第二の絶縁層241は、第三の櫛歯電極221と第四の櫛歯電極222とを絶縁する機能を有する。第一の絶縁層141及び第二の絶縁層241としては、絶縁層140と同様のものを用いることができる。
第一の櫛歯電極121は、櫛歯電極である第一の画素電極と櫛歯電極である第一の共通電極とを有する。第二の櫛歯電極122は、櫛歯電極である第二の画素電極と櫛歯電極である第二の共通電極とを有する。第三の櫛歯電極221は、櫛歯電極である第三の画素電極と櫛歯電極である第三の共通電極とを有する。第四の櫛歯電極222は、櫛歯電極である第四の画素電極と櫛歯電極である第四の共通電極とを有する。
第一の櫛歯電極121のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一基板100側の液晶分子311を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。同様に、第二の櫛歯電極122のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一基板100側の液晶分子311を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。
第三の櫛歯電極221のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第二基板200側の液晶分子312を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。同様に、第四の櫛歯電極222のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第二基板200側の液晶分子312を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。
平面視において、延伸方向121Aと延伸方向221Aとのなす角度β(ただし、βは0°を超え、90°未満の実数)、及び、液晶層300に含まれる液晶分子310のツイスト角Bは、第一状態及び第二状態において、下記(式BX1)を満たすことが好ましく、下記(式BX2)を満たすことがより好ましく、下記(式BX3)を満たすことが更に好ましい。このような態様とすることにより、効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
85°-B≦β≦95°-B (式BX1)
88°-B≦β≦92°-B (式BX2)
β=90°-B (式BX3)
ツイスト角Bは、60°以上、80°以下であることが好ましく、64°以上、76°以下であることがより好ましく、68°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
延伸方向121Aの方位角が0°であり、延伸方向221Aの方位角を160°(すなわち、平面視において、延伸方向121Aと延伸方向221Aとのなす角度βが20°)であり、液晶分子310のツイスト角Bが70°であり、かつ、液晶層300がポジ型の液晶分子310を含有する場合、図15に示すように、第一の櫛歯電極121が電圧無印加状態であり、第二の櫛歯電極220が電圧印加状態であり、第三の櫛歯電極221が電圧印加状態であり、第四の櫛歯電極222が電圧無印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一の櫛歯電極120が電圧印加状態であり、第二の櫛歯電極220が電圧無印加状態であり、第三の櫛歯電極221が電圧無印加状態であり、第四の櫛歯電極222が電圧印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
なお、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合は、第一の櫛歯電極121が電圧印加状態であり、第二の櫛歯電極122が電圧無印加状態であり、第三の櫛歯電極221が電圧無印加状態であり、第四の櫛歯電極222が電圧印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一の櫛歯電極121が電圧無印加状態であり、第二の櫛歯電極122が電圧印加状態であり、第三の櫛歯電極221が電圧印加状態であり、第四の櫛歯電極222が電圧無印加状態である場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
液晶層300がポジ型の液晶分子310を含有する本実施形態では、平面視において、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、第一の櫛歯電極121に設けられた櫛歯電極の延伸方向121Aに一致する。そのため、第一状態での第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、例えば、延伸方向121Aの方位角は0°に、延伸方向122A及び延伸方向222Aの方位角は90°に、延伸方向221Aの方位角は160°に、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角は57.2°に、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの方位角は12.2°に設定することができる。
上記実施形態1及び実施形態2と同様に、本実施形態の光学素子10は、第一基板100と液晶層300との間に配置された第一の弱アンカリングの水平配向膜と、液晶層300と第二基板200との間に配置された第二の弱アンカリングの水平配向膜と、を有することが好ましい。このような態様とすることにより、水平配向は維持したまま界面付近の液晶分子も均一に一様配向させることができる。
(実施形態4)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~3と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、第一の弱アンカリングの水平配向膜411に代えて双安定配向膜を用いることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図16は、実施形態4に係る光学素子が備える液晶セルの斜視模式図である。本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、図16に示すように、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された、2方向に配向安定方向を有する双安定配向膜413を有する。電極11Eは、第一基板100において、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第一の櫛歯電極120を有し、第二基板200において、櫛歯状の画素電極と共通電極とが互いの櫛歯が嵌合し合うように設けられた第二の櫛歯電極220を有する。平面視において、第一の櫛歯電極120の延伸方向120Aは、第二の櫛歯電極220の延伸方向220Aに対して斜めに設けられる。
このような態様とすることにより、第一の櫛歯電極120を電圧無印加状態に、第二の櫛歯電極220を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。更に、第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光とは偏光状態が異なる円偏光(例えば、左円偏光)に広帯域で変換される。このように、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現される。
また、第一の櫛歯電極121を電圧印加状態に、第二の櫛歯電極122を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。更に、第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光と偏光状態が同じである円偏光(例えば、右円偏光)のまま広帯域で出射される。このように、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。
双安定配向膜413は、2方向(第一の方向413A及び第二の方向413B)に配向安定方向を有する配向膜である。平面視において、第一の方向413A及び第二の方向413Bの方位は互いに直交し、かつ、第一の方向413Aは、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aと平行であることが好ましい。第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角は、第一状態では0°であり、第二状態では90°であるため、平面視において、第一の方向413A及び第二の方向413Bの方位が互いに直交し、かつ、第一の方向413Aが、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aと平行であることにより、第一状態及び第二状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向を双安定配向膜413によりエネルギー的に安定化することが可能となる。その結果、電圧のみで液晶分子310の配向方向を規定している実施形態1よりも、配向安定性に優れた光学素子10を実現することができる。
双安定配向膜413は、光照射によって、または、凹凸基板とラビング処理によって形成することができる。
光照射を利用する場合、例えば、光官能波長が互いに異なる2つのポリマーを混合した材料を用いて双安定配向膜413を形成することができる。光官能波長が互いに異なる2つのポリマーを混合した溶液を基板上に塗布した後、例えば、ある波長の偏光紫外線を照射後、それとは別の波長と方向の偏光紫外線を照射することで、一つ目の方向と二つ目の方向の2方向に配向安定方向を持つ双安定配向膜413を形成することができる。
凹凸基板とラビング処理を利用する場合、例えば、基板にポリマーで特定の方向に溝を有する構造物を形成し、その溝方向とは異なる方向にラビング処理を実施する。液晶分子は、溝方向に並ぼうとする力と、ラビング方向に並ぼうとする力の2つが存在し、2方向に配向安定方向を持つ双安定配向膜413を形成することができる。
本実施形態の光学素子10は、第二基板200と液晶層300との間に第二の配向膜420を備えてもよい。第二の配向膜420は、例えば、弱アンカリングの水平配向膜423である。弱アンカリングの水平配向膜423は、スリッパリー膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第二の配向膜420は、例えば、垂直配向膜であってもよい。当該垂直配向膜としては、垂直配向膜422と同様のものを用いることができる。
(実施形態5)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~4と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、液晶セル11の構成が異なることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図17は、実施形態5に係る光学素子が備える液晶セルの断面模式図である。図18は、実施形態5に係る光学素子が備える液晶セルの斜視模式図である。図19は、実施形態5に係る光学素子の軸方位の一例を示す図である。基板の界面付近の液晶分子の配向は垂直であり方位の規定ができないため、図19では、液晶分子の配向方位を電極方向で規定する。
図17~図19に示すように、本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された、第一の垂直配向膜414と、液晶層300と第二基板200との間に配置された、第二の垂直配向膜424と、を有する。電極11Eは、第一基板100において、面状の第一電極131、及び、第一の絶縁層141を介して第一電極131に重畳し、かつ、スリット部132Sが設けられた第二電極132を有し、第二基板200において、面状の第三電極231、及び、第二の絶縁層241を介して第三電極231に重畳し、かつ、スリット部232Sが設けられた第四電極232を有する。平面視において、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aは、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aに対して斜めに配置される。
このような態様とすることにより、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。更に、第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光とは偏光状態が異なる円偏光(例えば、左円偏光)に広帯域で変換される。このように、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現される。
また、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。更に、第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光と偏光状態が同じである円偏光(例えば、右円偏光)のまま広帯域で出射される。このように、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。
なお、第一電極131及び第二電極132の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。第三電極231及び第四電極232の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。図18では、第一基板100及び第二基板200共に、液晶層300側に向かって順に、面状の電極及びスリット部が設けられた電極を備えるが、面状の電極とスリット部が設けられた電極との配置はこれに限定されず、液晶層300側に向かって順に、スリット部が設けられた電極及び面状の電極を備えていてもよい。
平面視において、延伸方向132Aと延伸方向232Aとのなす角度γ(ただし、γは0°を超え、90°未満の実数)、及び、液晶層300に含まれる液晶分子310のツイスト角Cは、第一状態及び第二状態において、下記(式CX1)を満たすことが好ましく、下記(式CX2)を満たすことがより好ましく、下記(式CX3)を満たすことが更に好ましい。このような態様とすることにより、効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
85°-C≦γ≦95°-C (式CX1)
88°-C≦γ≦92°-C (式CX2)
γ=90°-C (式CX3)
ツイスト角Cは、60°以上、80°以下であることが好ましく、64°以上、76°以下であることがより好ましく、68°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
延伸方向132Aの方位角が0°であり、延伸方向232Aの方位角が160°(すなわち、平面視において、延伸方向132Aと延伸方向232Aとのなす角度γが20°)であり、液晶分子310のツイスト角Cが70°であり、かつ、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合に、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
なお、液晶層300がポジ型の液晶分子310を含有する場合は、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
第一基板100は、第一の支持基板110と、面状の第一電極131と、第一の絶縁層141と、第二電極132と、を順に有する。第二基板200は、第二の支持基板210と、面状の第三電極231と、第二の絶縁層241と、スリット部232Sが設けられた第四電極232と、を順に有する。
スリット部132Sが設けられた第二電極132のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一基板100側の液晶分子311を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。また、スリット部232Sが設けられた第四電極232のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第二基板200側の液晶分子312を効率的に回転させることが可能となり、均一な捩れ配向を得やすくなる。ここで、スリット部が設けられた電極は、線状電極部とスリット部とが交互に繰り返して配置される構造を有し、スリット部が設けられた電極のピッチは、一組の線状電極部及びスリット部の幅の合計を意味する。
液晶分子310は、ネガ型の液晶分子であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一基板100及び第二基板200間で大きな縦電圧を印加することにより、ネガ型の液晶分子310を倒して水平配向化させることができる。第一状態及び第二状態において、第一電極131と第三電極231との間の電圧差は、1V以上であることが好ましく、3V以上であることがより好ましく、5V以上であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131と第三電極231との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131と第三電極231との間の電圧差は、例えば、20V以下である。第一電極131と第三電極231との間の電圧差は、1V以上、20V以下であることが好ましく、3V以上、20V以下であることがより好ましく、5V以上、20V以下であることが更に好ましい。
更に、第一電極131及び第二電極132間、及び、第三電極231及び第四電極232間のそれぞれにおいて、画素電極及び共通電極間に弱い電圧を印加して液晶分子310の面内配向方位を制御することができる。液晶分子310がネガ型の液晶分子である場合、面内ではスリット部132S、232Sの延伸方向(電界とは直交する方向)に液晶分子310は配向する。このとき、強い横電界を印加すると、カイラルの力による液晶の配向捩れを妨害するので、横電界は弱いことが好ましい。
例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、3V以下であることが好ましく、1V以下であることがより好ましく、0.5V以下であることが更に好ましい。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電位差は3V以下であることが好ましく、1V以下であることがより好ましく、0.5V以下であることが更に好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、3V以下であることが好ましく、0.05V以上、1V以下であることがより好ましい。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電位差は0.01V以上、3V以下であることが好ましく、0.05V以上、1V以下であることがより好ましい。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424はとしては、垂直配向膜422と同様のものを用いることができる。本実施形態の光学素子10では、両基板側に垂直配向膜が配置されているため、水平配向膜が配置される場合よりも、生産性に優れた光学素子10を実現することができる。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424は、液晶分子に対して微小なチルト角を付与するものであってもよい。具体的には、第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424は、液晶分子310に対して85°以上、90°以下のプレチルト角を付与するものであってもよい。
図20は、実施形態5に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。図20に示すように、また、第一基板100及び第二基板200の極めて近傍では、液晶分子310は垂直配向しているが、液晶層300内では、水平配向の略70°の捩れ配向が実現されている。
液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する本実施形態では、平面視において、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aに一致する。そのため、第一状態での第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、例えば、延伸方向132Aの方位角は0°に、延伸方向232Aの方位角は160°に、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角は57.2°に、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの方位角は12.2°に設定することができる。
本実施形態の光学素子10についても、他の実施形態と同様に、液晶層300のリタデーションΔndやツイスト角の設計により、適宜変調特性及び非変調特性をチューニングすることができる。
(実施形態6)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~5と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、第二の1/4波長フィルム13を備えないことを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図21は、実施形態6に係る光学素子の断面模式図である。図22は、実施形態6に係る光学素子が備える液晶セルの斜視模式図である。図23は、実施形態6に係る光学素子の軸方位の一例を示す図である。
図21~図23に示すように、本実施形態の光学素子10は、実施形態1と同様の液晶セル11と、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムとを備えている。このような態様によっても、光学素子10の厚さを抑えつつ、光学素子10に入射した円偏光を変調させずに出射する状態と、光学素子10に入射した円偏光を変調させて出射する状態とを、広帯域でスイッチングすることが可能となる。すなわち、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替え可能であり、かつ、薄型化が可能な光学素子10を実現することができる。
本実施形態のように、液晶セル11の出射側に第一の1/4波長フィルム12が配置される場合、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角は、3°以上、22°以下であることが好ましい。また、液晶セル11の入射側に第一の1/4波長フィルム12が配置される場合、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角は、48°以上、67°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
ここまで、液晶分子がポジ型の液晶分子、又は、ネガ型の液晶分子である場合について説明したが、液晶分子として二周波駆動液晶を用いてもよい。二周波駆動液晶とは、低周波でΔεが正のポジ型の液晶分子の、高周波でΔεが負のネガ型の液晶分子の挙動をとる液晶分子である。二周波液晶を使うと、上下基板(第一基板100及び第二基板200)のそれぞれに角度の異なる櫛歯電極を設けなくても、一つの櫛歯電極に対して、低周波駆動をすれば、電極延伸方向に垂直な方向に液晶分子が配向し、高周波駆動をすれば電極延伸方向に液晶分子が配向するため、電極構成を簡易にすることができる。
(実施形態7)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~6と重複する内容については説明を省略する。本実施形態では、上記実施形態1~6の光学素子(sHWP)を備える可変焦点素子について説明する。図24は、実施形態7に係る可変焦点素子の断面模式図である。図24に示す本実施形態の可変焦点素子30は、光学素子10とパンチャラトナムベリー(PB:Pancharatnam Berry)レンズ20とを備える。
上述の通り、実施形態1~6の光学素子10は、円偏光の変調ができる。また、PBレンズ20は、右円偏光と左円偏光とで焦点距離が異なるため、光学素子10とPBレンズ20とを組み合わせることにより、可変焦点素子30を実現することができる。
PBレンズ20は、円偏光を集光及び発散させる機能を有する。PBレンズ20は、例えば、国際公開第2019/189818号に記載の方法で作製することができる。
図25は、実施形態7に係る可変焦点素子が備えるPBレンズの断面模式図の一例である。PBレンズ20は、図25に示すように、光学異方性層320Aを備える。PBレンズ20は、一例として、円偏光を対象として、入射光を所定の方向に屈折して透過させる。なお、図25では、入射光を左円偏光としている。
図25に示す部分において、光学異方性層320Aは、図25中左側から3つの領域R0、R1、R2を有し、各領域で1周期の長さΛが異なっている。具体的には、1周期の長さΛは、領域R0、R1、R2の順に短くなっている。また、領域R1及びR2は、光学軸が光学異方性層の厚さ方向で捩れて回転した構造(以下、捩れ構造ともいう)を有している。領域R1の厚さ方向の捩れ角は、領域R2の厚さ方向の捩れ角よりも小さい。なお、領域R0は捩れ構造を有していない領域である(すなわち、捩れ角が0°である)。なお、捩れ角は、厚さ方向全体での捩れ角とする。
光学素子10において、左円偏光LC1が光学異方性層320Aの面内の領域R1に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に、すなわち、液晶分子320の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している一方向に所定角度、屈折されて透過する。同様に左円偏光LC2が光学異方性層320Aの面内の領域R2に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、屈折されて透過する。同様に左円偏光LC0が光学異方性層320Aの面内の領域R0に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、屈折されて透過する。
ここで、光学異方性層320Aによる屈折の角度は、領域R1の液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも、領域R2の液晶配向パターンの1周期ΛR2が短いため、図25に示すように、入射光に対する屈折の角度は、領域R2の透過光の角度θR2の方が領域R1の透過光の角度θR1よりも大きくなる。また、領域R1の液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも、領域R0の液晶配向パターンの1周期ΛR0が長いため、図25に示すように、入射光に対する屈折の角度は、領域R0の透過光の角度θR0の方が領域R1の透過光の角度θR1よりも小さくなる。
ここで、面内で液晶分子の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する光学異方性層による光の回折では、回折角度が大きくなると回折効率が低下する、すなわち回折光の強度が弱くなるという問題がある。そのため、光学異方性層を、液晶分子の光学軸の向きが面内で180°回転する1周期の長さが異なる領域を有する構成とした場合には、光の入射位置によって回折角度が異なるため、面内の入射位置によって回折光の光量に差が生じる。すなわち、面内の入射位置によって、透過、回折した光が暗くなる領域が生じる。
これに対して、本実施形態のPBレンズ20は、光学異方性層が厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有する。図25に示す例では、光学異方性層320Aの領域R2の厚さ方向の捩れ角φR2は領域R1の厚さ方向の捩れ角φR1よりも大きい。また、領域R0は厚さ方向の捩れ構造を有していない。これにより、屈折された光の回折効率の低下を抑制することができる。
図25に示す例では、回折角度が領域R0よりも大きい領域R1及びR2に捩れ構造を付与することで、領域R1、R2で屈折された光の光量の低下を抑制することができる。また、領域R1よりも回折角度が大きい領域R2の捩れ構造の捩れ角を、領域R1よりも大きくすることで、領域R2で屈折された光の光量の低下を抑制することができる。これによって、面内の入射位置によって、透過した光の光量が均一になるようにすることができる。
このように、本実施形態のPBレンズ20では、光学異方性層による屈折が大きい面内の領域では、入射光は厚さ方向の捩れ角が大きい層内を透過し、屈折される。これに対して、光学異方性層による屈折が小さい面内の領域は、入射光は厚さ方向の捩れ角が小さい層内を透過して屈折される。すなわち、PBレンズ20では、光学異方性層による屈折の大きさに応じて、面内における厚さ方向の捩れ角を設定することで、入射光に対する透過光を明るくすることができる。そのため、PBレンズ20によれば、面内における透過光量の屈折角度依存性を小さくすることができる。
光学異方性層320Aの面内における屈折の光の角度は、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど大きい。また、光学異方性層320Aの面内における厚さ方向の捩れ角は、液晶配向パターンにおいて矢印X方向に沿って光軸の向きが180°回転する1周期Λの短い領域の方が1周期Λの大きい領域よりも、大きい領域を有する。PBレンズ20では、一例として、図25にも示すように、光学異方性層320Aの領域R2における液晶配向パターンの1周期ΛR2が、領域R1における液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも短く、厚さ方向に捩れ角φR2は大きい。すなわち、光入射側の光学異方性層320Aの領域R2方が、大きく光を屈折させる。
したがって、対象とする液晶配向パターンの1周期Λに対して、面内における厚さ方向の捩れ角φを設定することで、好適に、面内の異なる領域において異なる角度に屈折した透過光を明るくすることができる。
PBレンズ20においては、前述のように、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど屈折の角度が大きいため、液晶配向パターンの1周期Λが短い領域ほど厚さ方向の捩れ角を大きくすることで透過光を明るくすることを可能にしている。そのため、PBレンズ20においては、液晶配向パターンの1周期の長さが異なる領域において、1周期の長さの順列と厚さ方向の捩れ角の大きさの順列が異なる領域を有することが好ましい。
以上より、PBレンズ20は、液晶分子320を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層320Aを備え、光学異方性層320Aは、上記液晶分子由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有し、かつ、上記光学軸が光学異方性層320Aの厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有することが好ましい。
PBレンズ20は、液晶分子320由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる領域を有することが好ましい。
光学異方性層320Aは、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる複数の領域が、上記1周期の長さの順に配列しており、かつ、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる複数の領域が、上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順に配列しており、上記1周期の長さの順列の方向と上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順列の方向とが異なる領域を有することが好ましい。
光学異方性層320Aは、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが10°~360°である領域を有することが好ましい。
光学異方性層320Aは、上記液晶配向パターンにおける上記液晶分子320由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向に向かって、上記液晶配向パターンの上記1周期が、漸次、短くなることが好ましい。
光学異方性層320Aの上記液晶配向パターンは、上記液晶分子320由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向を、内側から外側に向かう同心円状のパターンであることが好ましい。
図25に示すPBレンズ20は、捩れ角が面内で変化するPBレンズであり、回折角が大きい場合においても回折効率が高い素子であるが、PBレンズ20は、捩れ角が面内で変化しないPBレンズであってもよい。具体的には、PBレンズ20は、厚み方向の捩れがない、又は、面内で一定の捩れ角であるPBレンズであってもよく、例えば、特表2008-532085号公報に記載の偏光回折格子を用いることができる。
PBレンズ20は、光学異方性層320Aを、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層320Aの厚さ方向で捩れ角の向きが互いに異なる光学異方性層320Aを有することが好ましい。
PBレンズ20は、光学異方性層320Aを、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層320Aの厚さ方向で捩れ角の大きさが互いに異なる光学異方性層320Aを有することが好ましい。
PBレンズ20は、光学異方性層320Aを、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層320Aは、上記液晶分子320由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転する方向が互いに同一である液晶配向パターンを有することが好ましい。
上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さは、50μm以下であることが好ましい。
可変焦点素子30は、光学素子10とPBレンズ20とからなる積層体を1組備える2値の可変焦点素子30Aであってもよく、光学素子10とPBレンズ20とからなる積層体を2組以上備える多段階の可変焦点素子30Bであってもよい。このように、光学素子10とPBレンズ20とのセットを複数枚組み合わせることにより、多段階のチューナビリティが付与された可変焦点素子30Bを実現することができる。
可変焦点素子30は、例えば、国際公開第2019/189818号に記載の方法で作製したPBレンズ20を、光学素子10に貼り付けることにより作製することができる。
(実施形態7の変形例1)
本変形例では、上記実施形態7におけるPBレンズ20が光学素子10内に配置され、インセル化された可変焦点素子30について説明する。図26は、実施形態7の変形例1に係る可変焦点素子の断面模式図である。図27は、実施形態7の変形例1に係る可変焦点素子の拡大断面模式図である。
本変形例の可変焦点素子30は、図26に示すように、光学素子10とPBレンズ20とからなる積層体を2組以上備える多段階の可変焦点素子30Bである。
本変形例の可変焦点素子30が備えるPBレンズ20は、図27に示すように、光学素子10内に配置される。このようにPBレンズ20をインセル化することにより、PBレンズ20を外付けする必要がないため、製造コストを大きく下げることができる。また、可変焦点素子30の厚みを抑えることが可能になる。なお、図26では、便宜上、光学素子10とPBレンズ20とを別々に図示している。
本変形例の可変焦点素子30は、より具体的には、入射側から出射側に向かって順に、第二の1/4波長フィルム13と、第一の1/4波長フィルム12と、第一基板100と、液晶層300と、PBレンズ20と、第二基板200と、を備える。可変焦点素子30は、第一基板100と液晶層300との間に第一の配向膜410を備えていてもよい。また、可変焦点素子30は、第二基板200と液晶層300との間に第二の配向膜420を備えていてもよい。
ここで、上記実施形態1~7のように、液晶セル11の出射側に第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13が配置される場合、第一状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、液晶セル11に入射して第一の直線偏光に変換され、当該第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して円偏光(例えば左円偏光)に変換される。また、第二状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、液晶セル11に入射して第二の直線偏光に変換され、当該第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して円偏光(例えば右円偏光)に変換される。
一方、本変形例のように、液晶セル11の入射側に第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13が配置される場合、第一状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して直線偏光に変換され、当該直線偏光は、液晶セル11へ入射して第一の円偏光(例えば左円偏光)に変換される。また、第二状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して直線偏光に変換され、当該直線偏光は、液晶セル11へ入射して第二の円偏光(例えば右円偏光)に変換される。
第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側に近い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本変形例では第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は、3°以上、22°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側から遠い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本変形例では第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は、48°以上、66°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
インセル化されたPBレンズ20(PBレンズ層)は、言い換えると、遅相軸方向が面内で回転するようにパターニングされたインセル位相差層である。
PBレンズのインセル化は、例えば、以下のようにして行うことができる。第二基板200に、下記一般式(PB-1)で表されるポリマーを含むインセルPBレンズ形成用の光感光性材料を塗布し、PBレンズ形成用膜を成膜した後、当該PBレンズ形成用膜に対して配向処理を行うことによりPBレンズ20のインセル化を行うことができる。
(上記式中、Vはスペーサ基を表し、Wは光官能基を有する二価の有機基を表し、R
5は一価の基を表し、pは1以上の整数を表す。)
上記一般式(PB-1)におけるVは、スペーサ基を表す。Vは、-(CH2)n-(ただし、nは2以上の整数)で表される炭素数が2以上のアルキレン基を有することが好ましい。このような態様とすることにより、良好な位相差を発現させることができる。上記アルキレン基は、直鎖状であることが好ましい。
上記一般式(PB-1)におけるWは、光官能基を有する二価の有機基を表す。光官能基を有する二価の有機基としては、光二量化、光異性化、光フリース転位、光分解等の反応が生じる光官能基(光反応部位)を含有する二価の有機基が挙げられる。光二量化及び光異性化が可能な光官能基としては、例えば、シンナメート基、カルコン基、クマリン基、スチルベン基等が挙げられる。光異性化が可能な光官能基としては、例えば、アゾベンゼン基等が挙げられる。光フリース転位が可能な光官能基としては、例えば、フェノールエステル基等が挙げられる。光分解が可能な光官能基としては、例えば、シクロブタン環等が挙げられる。
上記一般式(PB-1)におけるR5は、一価の基を表す。R5は、水素原子又は1価の炭化水素基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
PBレンズ形成用膜に対する配向処理は、複数の配向処理により行われ、上記複数の配向処理で照射される偏光の方向は、互いに異なる。PBレンズ形成用膜に対する配向処理は、例えば、方位角0°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第一の配向処理と、方位角45°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第二の配向処理と、方位角90°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第三の配向処理と、方位角135°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第四の配向処理と、を備える。
図28は、実施形態7の変形例1に係る可変焦点素子が備えるPBレンズの配向パターンを示した平面模式図である。図28に示すように、PBレンズ20の配向パターンは、例えば、中心部から外周に行くに従い、配向方向が連続的に回転している。また、平面視において、半径Rの位置の液晶分子310の配向方向はすべて同じである。言い換えると、中心からの距離に応じて所定の角度分布を有している。配向パターンの周期P1と回折角度θは、P1=2×λ/sinθで表され、配向パターンの周期が短いほどより大きく光を回折させることができる。したがって焦点を結ぶレンズ効果を得たい場合には、光学素子の中心ほどピッチは広く(回折角度は小さく)、外周に行くほどピッチを短く(回折角度を大きく)することで実現される。
後述する、ディオプトリDの異なるPBレンズ20は、この配向パターン周期の設計をかえることで、作製することができる。また、配向パターンについては、国際公開第2020/186123号、特表2008-532085号等に基づいて設定することもできる。
本実施形態では、配向処理を4回の露光で行う場合について説明したが、露光分割回数が増えるほど回折効率のよい可変焦点素子30を得ることができる。光配向装置を応用したマルチ光配向処理による作製は、既存の液晶工場との相性がよく、高い生産性で製造することができる。本実施形態ではマルチ光配向処理によるPBレンズ20の作製について説明したが、光干渉法やレーザー直接描画など既存の手法によって配向パターンを作製してもよい。
インセル化されたPBレンズ20(PBレンズ層)の位相差は、100nm以上、500nm以下であることが好ましく、200nm以上、350nm以下であることがより好ましく、λ/2(すなわち、275nm)であることが特に好ましい。回折効率は下記(式1)で表されるため、Δnd=λ/2の場合に、最大値をとる。
本変形例の可変焦点素子30、すなわち、光学素子10と、光学素子10にインセル化されたPBレンズ20との積層体を複数組み合わせた多段階の可変焦点素子30は、例えば、以下のような特性を有する。
図29は、実施形態7の変形例1に係る可変焦点素子の詳細な構成を説明する断面模式図である。図29に示すように、可変焦点素子30は、入射側から出射側に向かって順に、光学素子10と、第一のPBレンズ20A1と、光学素子10と、第一のPBレンズ20A1と、光学素子10と、第二のPBレンズ20A2と、光学素子10と、第二のPBレンズ20A2と、光学素子10と、第三のPBレンズ20A3と、光学素子10と、第三のPBレンズ20A3と、を備えている。
第一のPBレンズ20A1は、ディオプトリD=±0.25であり、第二のPBレンズ20A2は、ディオプトリD=±0.5、第三のPBレンズ20A3は、ディオプトリD=±1のレンズ特性を有する。右円偏光が入射した場合は+(集光)し、左円偏光が入射した場合は-(発散)する特性をもつ。
下記表1は、実施形態7の変形例1に係る可変焦点素子30の、各モードにおける光学素子10及びPBレンズ20A1、20A2及び20A3の状態について説明する表である。
上記表1を用いて、F0のモードを説明する。このモードでは、すべての光学素子10が第二状態(非変調)としてある。右円偏光が入射すると、最初の光学素子10で変調されずそのまま最初の第一のPBレンズ20A1に入射する。ここで0.25Dの集光を受ける。その際出射光は左円偏光になる。ここで、PBレンズ20を通過しても円偏光の向きが変わるのは、PBレンズ20の特性である。光学素子10は非変調のため、左円偏光のまま2つ目の光学素子10を通過する。2つの目の第一のPBレンズ20A1では、-0.25Dの発散が生じる。結果として入射側からの最初の4枚(光学素子10、第一のPBレンズ20A1、光学素子10及び第一のPBレンズ20A1)では、入射光がそのまま通過することになる。以降同様に第二のPBレンズ20A2及びPBレンズ20A3も通過し、出射光としても、入射光のまま、0Dでそのまま出射される。
上記表1を用いて、F1のモードを説明する。このモードでは、入射側から4番目の光学素子10だけ、第一状態としてある。この状態では、最初の第二のPBレンズ20A2を通過後は、F0のモードと同様、左円偏光で0.5Dが付与された状態にある。続いて第一状態となった光学素子で右円偏光に変換される。続いて2番目の第二のPBレンズ20A2で、+0.5Dが付与され、合計1Dが付与された左円偏光となって出射する。その後は、そのまま1Dの左円偏光のまま出射する。2番目の第二のPBレンズ20A2通過後に左円偏光となっているため、第三のPBレンズ20A3での符号がF0の時とは逆になる。
上記表1及び図30を用いて、F-2.5のモードを説明する。図30は、実施形態7の変形例1に係る可変焦点素子の、F-2.5のモードにおける偏光状態について説明する図である。表1及び図30に示すように、F-2.5のモードでは、入射側からの最初の4枚(光学素子10、第一のPBレンズ20A1、光学素子10及び第一のPBレンズ20A1)で-0.5Dが付与された右円偏光になり、出射側の最後の4枚(光学素子10、第三のPBレンズ20A3、光学素子10及び第三のPBレンズ20A3)で-2Dが付与され、合計-2.5Dの右円偏光として出射される。
その他、同様の原理で、どの光学素子10を変調状態の第一状態とするかに応じて、多段階の焦点距離を実現できる。本変形例では抜粋して3つの条件だけを示している。
上記実施形態7及び上記実施形態7の変形例1では、フィルム状(インセルポリマー状)のPBレンズを備えた態様について述べたが、PBレンズ自体を液晶層で形成してもよい。本変形例では、液晶層で形成されたPBレンズについて説明する。
上記実施形態7及び上記実施形態7の変形例1のように、ポリマー状になったPBレンズは、それ自体は電圧で可変できないことからパッシブPBレンズと呼ばれる。一方、流動性のある液晶層で形成されたPBレンズは電圧で駆動できることからアクティブPBレンズと呼ばれる。
アクティブPBレンズは、以下の手順で作製することができる。まず、一対の基板のうち、片側の基板の配向膜にPBレンズパターンの配向処理を行う。もう片側の基板の配向膜は、弱アンカリング配向膜(スリッパリー界面)とする。なおどちらの基板にも透明電極が設けられている。この1対の基板を、液晶層を挟持して貼り合わせると、配向処理を施したパターンにそって液晶分子が配向し、液晶層もPBレンズパターンの配向をとる。これによりアクティブPBレンズが実現できる。より好ましくは、その後、PSA(Polymer sustained alignment)処理を施し、液晶分子の界面の配向を安定化させることで、より配向安定性と信頼性の高いアクティブPBレンズとすることができる。
アクティブPBレンズは、電圧OFF状態では、PBレンズパターンを有しているため、入射偏光状態に応じて、集光または発散する。電圧ON状態では、液晶分子が垂直配向となるため、集光も発散もせずそのまま透過する。
実施形態7のようなsHWPとパッシブPBレンズとを組み合わせた可変焦点素子では、集光・発散の2値切り替えであるのに対し、本変形例のようなsHWPとアクティブPBレンズとを組み合わせた可変焦点素子では、集光・発散・透過と3値の切り替えをすることができる。その結果、より滑らかな焦点制御ができる。あるいは、同じ段階数の焦点距離を実現するための、電圧駆動素子の積層数を少なくすることができる。
(実施形態8)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~7及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態では、可変焦点素子30を備えるヘッドマウントディスプレイについて説明する。図31は、実施形態8に係るヘッドマウントディスプレイの断面模式図である。図32は、実施形態8に係るヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。
図31及び図32に示すように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、画像を表示する表示パネル1Pと、位相差板40と、可変焦点素子30と、を備える。ヘッドマウントディスプレイ1を用いることにより、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示パネル1Pから出射された光は、位相差板40を経て円偏光となり、それが可変焦点素子30を通過し、ユーザUに視覚される。
(実施形態9)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~8及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、液晶セル11の構成が異なることを除いて、実施形態5と実質的に同じである。
図64は、実施形態9に係る光学素子の断面模式図である。図65は、実施形態9に係る光学素子が備える液晶セルの断面模式図である。図66は、実施形態9に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。基板の界面付近の液晶分子の配向は垂直であり方位の規定ができないため、図66では、液晶分子の配向方位を電極方向で規定する。
なお、上記実施形態1~7、実施形態7の変形例1、実施形態8、及び、本実施形態では、基準となる方位(0°)は、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aを光学素子10の出射側の基板面上に射影したときの方向に設定され、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、光学素子10を出射側から見たときの、液晶セル11の画面の水平右方向に一致する。
図64~図66に示す本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された第一の垂直配向膜414と、液晶層300と第二基板200との間に配置された第二の垂直配向膜424と、を有する。液晶層300は、負の誘電率異方性を有する液晶分子310を含有する。第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424の少なくとも一方は、電圧無印加状態における液晶分子310のチルト方向を制御する。
電極11Eは、第一基板100及び第二基板200の少なくとも一方において、面状の電極、及び、絶縁層を介して上記面状の電極に重畳し、かつ、スリット部が設けられた電極を有することが好ましい。面状の電極と、絶縁層を介して上記面状の電極に重畳し、かつ、スリット部が設けられた電極とから構成される一対の電極を、FFS電極ともいう。
より具体的には、図64~図66に示す本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された第一の垂直配向膜414と、液晶層300と第二基板200との間に配置された第二の垂直配向膜424と、を有する。液晶層300は、負の誘電率異方性を有する液晶分子310を含有する。電極11Eは、第一基板100において、面状の第一電極131、及び、第一の絶縁層141を介して第一電極131に重畳し、かつ、スリット部132Sが設けられた第二電極132を有し、第二基板200において、ベタ状電極240を有する。平面視において、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aは、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xと直交する。
このような態様とすることにより、図66に示すように、第一電極131と第二電極132との間に閾値未満の電圧を印加し、かつ、第一電極131及び第二電極132の少なくとも一方とベタ状電極240との間に閾値以上の電圧を印加した際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。
また、図66に示すように、第一電極131と第二電極132との間に閾値以上の電圧を印加し、かつ、第一電極131及び第二電極132の少なくとも一方とベタ状電極240との間に閾値以上の電圧を印加した際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。
なお、第一電極131及び第二電極132の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。図65では、第一基板100は、液晶層300側に向かって順に面状の電極及びスリット部が設けられた電極を備えるが、面状の電極とスリット部が設けられた電極との配置はこれに限定されず、液晶層300側に向かって順に、スリット部が設けられた電極及び面状の電極を備えていてもよい。
本実施形態では、第一基板100側及び第二基板200側の配向膜を垂直配向膜とする。また、少なくとも一方の基板(本実施形態では第一基板100)にFFS電極を設け、当該FFS電極を設けた基板に対向する対向基板(本実施形態では第二基板200)とFFS基板との電圧によって液晶分子310を駆動させる。液晶分子310にはネガ型の液晶分子310を用い、カイラル剤を添加することで液晶分子310が70°ほどねじれながら配向するように調整する。この時、配向膜に与えるチルトの方向やFFS電極を構成する画素電極及び共通電極間に加える電圧を調整することにより、系全体の配向を90°回転させた第一状態の配向と第二状態の配向とを実現する。
本明細書においてチルト方向とは、電圧無印加状態における液晶分子の配向方向の方位であり、チルト方位ともいう。また、チルト角とは、上記プレチルト角と同様である。また、チルトを有するとは、チルト角が89.9°未満(より具体的には、0°以上、89.9°未満)であることを意味し、チルトを有さないとは、チルト角が89.9°以上(より具体的には、89.9°以上、90°以下)であることを意味する。
第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の少なくとも一方は、チルトを有することが好ましい。例えば、第一基板100側の液晶分子311がチルトを有する場合、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位と、FFS電極の延伸方向の方位とは直交することが好ましい。より具体的には、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位と、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位とは直交することが好ましい。この時、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位は略0°(例えば、-10°以上、+10°以下)であることが望ましく、第二基板200側の液晶分子312はチルトを有さないことが好ましい。
また、第二基板200側の液晶分子312がチルト有する場合、第二基板200側の液晶分子312のチルト方位は略70°(例えば、60°以上、80°以下)であることが望ましく、第一基板100側の液晶分子311はチルトを有さないことが好ましい。
また、第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の両者がチルトを有していてもよい。
延伸方向132Aの方位角が90°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xが0°であり、液晶分子310のツイスト角が70°であり、かつ、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合、図64~図66に示すように、第一電極131と第二電極132との間に閾値未満の電圧を印加し、かつ、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間に閾値以上の電圧を印加した場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一電極131と第二電極132との間に閾値以上の電圧を印加し、かつ、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間に閾値以上の電圧を印加した場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
液晶層300の波長550nmにおける電圧無印加状態でのリタデーションΔndは、180nm以上、280nm以下であることが好ましい。液晶層300の屈折率異方性Δnは、0.12以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。
本実施形態では、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側から遠い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本実施形態では第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は、58°以上、78°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
本実施形態では、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側に近い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本実施形態では第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は、13°以上、33°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aと、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aとのなす角度は、40°以上、50°以下であることが好ましく、42°以上、48°以下であることがより好ましく、44°以上、46°以下であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
本実施形態では、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角を、58°以上、78°以下に設定し、かつ、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの方位角を13°以上、33°以下に設定することにより、第一状態において、上記第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)とは偏光状態が異なる円偏光(例えば、左円偏光)に広帯域で変換される。このように、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現される。また、上記第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光と偏光状態が同じである円偏光(例えば、右円偏光)のまま広帯域で出射される。このように、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。
図67は、実施形態9に係る光学素子の、第一状態における各層のストークスプロットを示す図である。図68は、実施形態9に係る光学素子の、第一状態における偏光状態について説明する模式図である。図67は、第一状態における各層を透過してくときの偏光状態(各層の役割)を示している。実施形態9に係る光学素子10の偏光変調の原理を、図67のポアンカレ球及び図68を用いて詳細に説明する。
図67の(1)に示すように、右円偏光(S3=+1)が液晶セル11に入射する。
70°捩れの液晶セル11を通過後、一度、図67の(2)のプロットの偏光状態に変換される。各プロットの点は、380nm~780nmの波長違いのプロットを表している。波長550nm付近は直線偏光(ポアンカレ球上でいう赤道上)だが、それ以外の波長はポアンカレ球の北半球にプロットされ、楕円偏光になっている。
その後、第一の1/4波長フィルム12(具体的には、逆波長分散の1/4波長フィルム)を通過し、図67の(3)のプロットとなる。
更に、第二の1/4波長フィルム13(具体的には、フラット波長分散の1/4波長フィルム)を通過すると、図67の(4)のプロットに示すように、ほぼ全波長が左円偏光(ポアンカレ球上での南極位置)となって出射される。すなわち、図68に示すように、右円偏光から左円偏光への変調がなされたことが分かる。
第二状態(非変調時)も同様に、70°捩れの液晶セル11を通過後一度直線偏光になる。ただし、液晶セル11の配向全体を90°回転させているため、第一状態(変調時)とは約90°角度の異なった直線偏光となっている。そして、その後、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過後に全波長が右円偏光になる。すなわち、右円偏光を右円偏光として出射でき、非変調となる。
このように、第一状態と第二状態とは、70°ツイストという液晶分子310の配向は同じであり、系全体が90°異なる関係にある。本実施形態の光学素子10を用いると、第一状態及び第二状態の2つの状態を可逆的にスイッチングすることができ、偏光非変調時も偏光変調時も広帯域な薄型の可変1/2波長板(sHWP:Switchable Half Wave Plate)素子を実現することができる。
第二の1/4波長フィルム13(具体的には、フラット波長分散の1/4波長フィルム)は、例えば、ポジティブAプレート、又は、ネガティブAプレートである。第二の1/4波長フィルム13(具体的には、フラット波長分散の1/4波長フィルム)は、ネガティブAプレートであることが好ましい。このような態様とすることにより、非変調時の視野角特性を向上させることができる。
スリット部132Sが設けられた第二電極132のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このようにピッチを小さくすることにより、より均一に液晶分子310の配向が変化し、変調特性を優れたものとすることができる。
ベタ状電極240とは、少なくとも平面視において絵素の光学的開口部と重畳する領域に、スリットや開口が設けられていない電極をいう。ベタ状電極240は、画素電極及び共通電極は、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の透明導電材料、又は、それらの合金を、スパッタリング法等により単層又は複数層で成膜して形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングを行うことで形成することができる。
本実施形態の液晶分子310はネガ型の液晶分子310である。このような態様とすることにより、第一基板100及び第二基板200間で大きな縦電圧を印加することにより、ネガ型の液晶分子310を倒して水平配向化させることができる。第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差は、1V以上であることが好ましく、3V以上であることがより好ましく、4V以上であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差は、例えば、7V以下である。第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差は、1V以上、7V以下であることが好ましく、3V以上、7V以下であることがより好ましく、4V以上、7V以下であることが更に好ましい。
更に、第一電極131及び第二電極132間において、画素電極及び共通電極間に弱い電圧を印加して液晶分子310の面内配向方位を制御することができる。液晶分子310がネガ型の液晶分子である場合、面内ではスリット部132Sの延伸方向(電界とは直交する方向)に液晶分子310は配向する。このとき、強い横電界を印加すると、カイラルの力による液晶の配向捩れを妨害するので、横電界は弱いことが好ましい。
第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差が7V以下である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.6V以下であることが好ましい。また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電位差は2V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.6V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、0.6V以下であることが好ましい。また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電位差は0.6V以上、2V以下であることが好ましい。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424としては、実施形態5と同様のものを用いることができる。本実施形態では、両基板側に垂直配向膜が配置されているため、水平配向膜が配置される場合よりも、生産性に優れた光学素子10を実現することができる。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424の少なくとも一方は、弱アンカリングの垂直配向膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域かつ低電圧で切り替えることができる。ここで、上記弱アンカリングの垂直配向膜は、極角及び方位角の少なくとも一方において弱アンカリングであればよい。
光学素子10に入射する光は、円偏光であることが好ましい。このような態様とすることにより、円偏光の偏光状態をスイッチング可能な光学素子10を実現することができる。
(実施形態9の変形例)
上記実施形態9において、第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差は、8V以上であることも好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差は、例えば、20V以下である。第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差は、8V以上、20V以下であることが好ましい。
第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間の電圧差が8V以上である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電位差は3V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、1.1V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、2V以下であることが好ましい。また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電位差は1.1V以上、3V以下であることが好ましい。
本変形例のように電圧を印加することにより、界面近傍の液晶分子310まで倒れるため、視野角の広いsHWPを実現することができる。この際、適宜、セル厚やねじれピッチ、位相差フィルムの角度を変更することができる。
(実施形態10)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~9及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、液晶セル11の構成、及び、電極に印加される好ましい電圧が異なることを除いて、実施形態9と実質的に同じである。
図69は、実施形態10に係る光学素子の断面模式図である。図70は、実施形態10に係る光学素子が備える液晶セルの断面模式図である。図71は、実施形態10に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。基板の界面付近の液晶分子の配向は垂直であり方位の規定ができないため、図71では、液晶分子の配向方位を電極方向で規定する。
なお、本実施形態では、基準となる方位(0°)は、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aを光学素子10の出射側の基板面上に射影したときの方向に設定され、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、光学素子10を出射側から見たときの、液晶セル11の画面の水平右方向に一致する。
図69~図71に示す本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された第一の垂直配向膜414と、液晶層300と第二基板200との間に配置された第二の垂直配向膜424と、を有する。液晶層300は、負の誘電率異方性を有する液晶分子310を含有する。電極11Eは、第一基板100において、面状の第一電極131、及び、第一の絶縁層141を介して第一電極131に重畳し、かつ、スリット部が設けられた第二電極132を有し、第二基板200において、面状の第三電極231、及び、第二の絶縁層241を介して第三電極231に重畳し、かつ、スリット部232Sが設けられた第四電極232を有する。平面視において、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aは、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aに対して斜めに配置され、かつ、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xと平行であり、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aは、電圧無印加状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Xと平行である。
このような態様とすることにより、図71に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。
また、図71に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。
なお、第一電極131及び第二電極132の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。第三電極231及び第四電極232の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。図70では、第一基板100及び第二基板200共に、液晶層300側に向かって順に、面状の電極及びスリット部が設けられた電極を備えるが、面状の電極とスリット部が設けられた電極との配置はこれに限定されず、液晶層300側に向かって順に、スリット部が設けられた電極及び面状の電極を備えていてもよい。
第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の少なくとも一方は、チルトを有することが好ましい。例えば、第一基板100側の液晶分子311がチルトを有する場合、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位と、第一基板100側のFFS電極の延伸方向の方位とは平行であることが好ましい。より具体的には、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位と、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位とは平行であることが好ましい。この時、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位は略0°(例えば、-10°以上、+10°以下)であることが望ましく、第二基板200側の液晶分子312はチルトを有さないことが好ましい。
また、第二基板200側の液晶分子312がチルトを有する場合、第二基板200側の液晶分子312のチルト方位と、第二基板200側のFFS電極の延伸方向の方位とは平行であることが好ましい。より具体的には、電圧無印加状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Xの方位と、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aの方位とは平行であることが好ましい。この時、第二基板200側の液晶分子312のチルト方位は略160°(例えば、150°以上、170°以下)であることが望ましく、第一基板100側の液晶分子311はチルトを有さないことが好ましい。
また、第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の両者がチルトを有していてもよい。
平面視において、延伸方向132Aと延伸方向232Aとのなす角度γ(ただし、γは0°を超え、90°未満の実数)、及び、液晶層300に含まれる液晶分子310のツイスト角Cは、第一状態及び第二状態において、上記(式CX1)を満たすことが好ましく、上記(式CX2)を満たすことがより好ましく、上記(式CX3)を満たすことが更に好ましい。このような態様とすることにより、効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
ツイスト角Cは、60°以上、80°以下であることが好ましく、64°以上、76°以下であることがより好ましく、68°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
延伸方向132Aの方位角が0°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xが0°であり、延伸方向232Aの方位角が160°であり、電圧無印加状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Xが160°であり、液晶分子310のツイスト角が70°であり、かつ、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合、図69~図71に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
スリット部132Sが設けられた第二電極132のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このようにピッチを小さくすることにより、より均一に液晶分子310の配向が変化し、変調特性を優れたものとすることができる。また、スリット部232Sが設けられた第四電極232のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より均一に液晶分子310の配向が変化し、変調特性を優れたものとすることができる。
本実施形態の液晶分子310はネガ型の液晶分子310である。このような態様とすることにより、第一基板100及び第二基板200間で大きな縦電圧を印加することにより、ネガ型の液晶分子310を倒して水平配向化させることができる。第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、1V以上であることが好ましく、3V以上であることがより好ましく、4V以上であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、例えば、7V以下である。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、1V以上、7V以下であることが好ましく、3V以上、7V以下であることがより好ましく、4V以上、7V以下であることが更に好ましい。
更に、第一電極131及び第二電極132間、及び、第三電極231及び第四電極232間のそれぞれにおいて、画素電極及び共通電極間に弱い電圧を印加して液晶分子310の面内配向方位を制御することができる。液晶分子310がネガ型の液晶分子である場合、面内ではスリット部132S、232Sの延伸方向(電界とは直交する方向)に液晶分子310は配向する。このとき、強い横電界を印加すると、カイラルの力による液晶の配向捩れを妨害するので、横電界は弱いことが好ましい。
第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差が7V以下である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.6V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.7V以上である。また、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.7V以上、2V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.01V以上、0.6V以下であることが好ましい。
また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.6V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.7V以上である。
第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、0.6V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.7V以上、2V以下であることが好ましい。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424としては、実施形態5と同様のものを用いることができる。本実施形態では、両基板側に垂直配向膜が配置されているため、水平配向膜が配置される場合よりも、生産性に優れた光学素子10を実現することができる。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424の少なくとも一方は、弱アンカリングの垂直配向膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域かつ低電圧で切り替えることができる。ここで、上記弱アンカリングの垂直配向膜は、極角及び方位角の少なくとも一方において弱アンカリングであればよい。
(実施形態10の変形例)
上記実施形態10において、第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、8V以上であることも好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、例えば、20V以下である。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、8V以上、20V以下であることが好ましい。
第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差が8V以上である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、3V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、1.1V以上である。また、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、1.1V以上、3V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.01V以上、2V以下であることが好ましい。
また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、3V以下であることが好ましい。第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、1.1V以上である。
第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、2V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、1.1V以上、3V以下であることが好ましい。
本変形例のように電圧を印加することにより、界面近傍の液晶分子310まで倒れるため、視野角の広いsHWPを実現することができる。この際、適宜、セル厚やねじれピッチ、位相差フィルムの角度を変更することができる。
(実施形態11)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~10及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、液晶セル11の構成、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A及び第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの好ましい方位角、並びに、電極に印加される好ましい電圧が異なることを除いて、実施形態9と実質的に同じである。
図72は、実施形態11に係る光学素子の断面模式図である。図73は、実施形態11に係る光学素子が備える液晶セルの断面模式図である。図74は、実施形態11に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。基板の界面付近の液晶分子の配向は垂直であり方位の規定ができないため、図74では、液晶分子の配向方位を電極方向で規定する。
なお、本実施形態では、基準となる方位(0°)は、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aを光学素子10の出射側の基板面上に射影したときの方向に設定され、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、光学素子10を出射側から見たときの、液晶セル11の画面の水平右方向に一致する。
図72~図74に示す本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された第一の垂直配向膜414と、液晶層300と第二基板200との間に配置された第二の垂直配向膜424と、を有する。液晶層300は、負の誘電率異方性を有する液晶分子310を含有する。電極11Eは、第一基板100において、面状の第一電極131、及び、第一の絶縁層141を介して第一電極131に重畳し、かつ、スリット部が設けられた第二電極132を有し、第二基板200において、面状の第三電極231、及び、第二の絶縁層241を介して第三電極231に重畳し、かつ、スリット部232Sが設けられた第四電極232を有する。平面視において、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xは、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aと第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aとの間に配置され、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aと直交し、かつ、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aに対して斜めに配置される。
このような態様とすることにより、図74に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。
また、図74に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。
なお、第一電極131及び第二電極132の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。第三電極231及び第四電極232の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。図73では、第一基板100及び第二基板200共に、液晶層300側に向かって順に、面状の電極及びスリット部が設けられた電極を備えるが、面状の電極とスリット部が設けられた電極との配置はこれに限定されず、液晶層300側に向かって順に、スリット部が設けられた電極及び面状の電極を備えていてもよい。
第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の少なくとも一方は、チルトを有することが好ましい。例えば、第一基板100側の液晶分子311がチルトを有する場合、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位と、第一基板100側のFFS電極の延伸方向の方位とは直交することが好ましい。より具体的には、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位と、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位とは直交することが好ましい。この時、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位は略-45°(例えば、-55°以上、-35°以下)であることが望ましく、第二基板200側の液晶分子312はチルトを有さないことが好ましい。また、第二基板200側の液晶分子312がチルトを有し、第一基板100側の液晶分子311はチルトを有さなくてもよい。また、第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の両者がチルトを有していてもよい。
平面視において、配向方向311Xと延伸方向232Aとのなす角度δ(ただし、δは0°を超え、90°未満の実数)、及び、液晶層300に含まれる液晶分子310のツイスト角D1は、第一状態及び第二状態において、下記(式DX1)を満たすことが好ましい。このような態様とすることにより、効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
80°-D1≦δ≦100°-D1 (式DX1)
ツイスト角D1は、60°以上、80°以下であることが好ましく、64°以上、76°以下であることがより好ましく、68°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
延伸方向132Aの方位角が90°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xが0°であり、延伸方向232Aの方位角が160°であり、液晶分子310のツイスト角が70°であり、かつ、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合、図72~図74に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側から遠い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本実施形態では第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は、58°以上、78°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側に近い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本実施形態では第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は、13°以上、33°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aと、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aとのなす角度は、40°以上、50°以下であることが好ましく、42°以上、48°以下であることがより好ましく、44°以上、46°以下であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
本実施形態では、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とし、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12Aの方位角を58°以上、78°以下に設定し、かつ、第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの方位角を、13°以上、33°以下に設定することにより、第一状態において、上記第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)とは偏光状態が異なる円偏光(例えば、左円偏光)に広帯域で変換される。このように、第一状態では、光学素子10に入射した円偏光が偏光状態の異なる円偏光に変換されて(例えば、右円偏光が左円偏光に変換されて)出射される偏光変調が広帯域で実現される。また、上記第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13を通過することにより、液晶セル11へ入射した円偏光と偏光状態が同じである円偏光(例えば、右円偏光)のまま広帯域で出射される。このように、第二状態では、光学素子10に入射した円偏光が同じ偏光状態のまま(例えば、右円偏光のまま)出射される偏光非変調が広帯域で実現される。
スリット部132Sが設けられた第二電極132のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このようにピッチを小さくすることにより、より均一に液晶分子310の配向が変化し、変調特性を優れたものとすることができる。また、スリット部232Sが設けられた第四電極232のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より均一に液晶分子310の配向が変化し、変調特性を優れたものとすることができる。
本実施形態の液晶分子310はネガ型の液晶分子310である。このような態様とすることにより、第一基板100及び第二基板200間で大きな縦電圧を印加することにより、ネガ型の液晶分子310を倒して水平配向化させることができる。第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、1V以上であることが好ましく、3V以上であることがより好ましく、4V以上であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、例えば、7V以下である。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、1V以上、7V以下であることが好ましく、3V以上、7V以下であることがより好ましく、4V以上、7V以下であることが更に好ましい。
更に、第一電極131及び第二電極132間、及び、第三電極231及び第四電極232間のそれぞれにおいて、画素電極及び共通電極間に弱い電圧を印加して液晶分子310の面内配向方位を制御することができる。液晶分子310がネガ型の液晶分子である場合、面内ではスリット部132S、232Sの延伸方向(電界とは直交する方向)に液晶分子310は配向する。このとき、強い横電界を印加すると、カイラルの力による液晶の配向捩れを妨害するので、横電界は弱いことが好ましい。
第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差が7V以下である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.6V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.7V以上である。また、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.7V以上、2V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.01V以上、0.6V以下であることが好ましい。
また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.6V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.7V以上である。
第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、0.6V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.7V以上、2V以下であることが好ましい。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424としては、実施形態5と同様のものを用いることができる。本実施形態では、両基板側に垂直配向膜が配置されているため、水平配向膜が配置される場合よりも、生産性に優れた光学素子10を実現することができる。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424の少なくとも一方は、弱アンカリングの垂直配向膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域かつ低電圧で切り替えることができる。ここで、上記弱アンカリングの垂直配向膜は、極角及び方位角の少なくとも一方において弱アンカリングであればよい。
(実施形態11の変形例)
上記実施形態11において、第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、8V以上であることも好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、例えば、20V以下である。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、8V以上、20V以下であることが好ましい。
第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差が8V以上である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、3V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、1.1V以上である。また、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、1.1V以上、3V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.01V以上、2V以下であることが好ましい。
また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、3V以下であることが好ましい。第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、1.1V以上である。
第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、2V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、1.1V以上、3V以下であることが好ましい。
本変形例のように電圧を印加することにより、界面近傍の液晶分子310まで倒れるため、視野角の広いsHWPを実現することができる。この際、適宜、セル厚やねじれピッチ、位相差フィルムの角度を変更することができる。
(実施形態12)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~11及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、液晶セル11の構成、及び、電極に印加される好ましい電圧が異なることを除いて、実施形態9と実質的に同じである。
図75は、実施形態12に係る光学素子の断面模式図である。図76は、実施形態12に係る光学素子が備える液晶セルの断面模式図である。図77は、実施形態12に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。基板の界面付近の液晶分子の配向は垂直であり方位の規定ができないため、図77では、液晶分子の配向方位を電極方向で規定する。
なお、本実施形態では、基準となる方位(0°)は、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aを光学素子10の出射側の基板面上に射影したときの方向に設定され、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、光学素子10を出射側から見たときの、液晶セル11の画面の水平右方向に一致する。
図75~図77に示す本実施形態の光学素子10が備える液晶セル11は、更に、第一基板100と液晶層300との間に配置された第一の垂直配向膜414と、液晶層300と第二基板200との間に配置された第二の垂直配向膜424と、を有する。液晶層300は、負の誘電率異方性を有する液晶分子310を含有する。電極11Eは、第一基板100において、面状の第一電極131、及び、第一の絶縁層141を介して第一電極131に重畳し、かつ、スリット部が設けられた第二電極132を有し、第二基板200において、面状の第三電極231、及び、第二の絶縁層241を介して第三電極231に重畳し、かつ、スリット部232Sが設けられた第四電極232を有する。平面視において、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xは、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aと第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aとの間に配置され、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aと直交し、かつ、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aに対して斜めに配置される。
このような態様とすることにより、図77に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過後に第一の直線偏光となる。すなわち、第一状態を実現することができる。
また、図77に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした際に、液晶セル11へ入射した円偏光(例えば、右円偏光)は液晶セル11通過に、平面視において第一の直線偏光の偏光方向に対して直交する偏光方向を有する第二の直線偏光となる。すなわち、第二状態を実現することができる。
なお、第一電極131及び第二電極132の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。第三電極231及び第四電極232の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。図77では、第一基板100及び第二基板200共に、液晶層300側に向かって順に、面状の電極及びスリット部が設けられた電極を備えるが、面状の電極とスリット部が設けられた電極との配置はこれに限定されず、液晶層300側に向かって順に、スリット部が設けられた電極及び面状の電極を備えていてもよい。
第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の少なくとも一方は、チルトを有することが好ましい。例えば、第一基板100側の液晶分子311がチルトを有する場合、本実施形態では、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位と、第一基板100側のFFS電極の延伸方向の方位とは直交することが好ましく、両者のなす角度が90°であることがより好ましい。より具体的には、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位と、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位とは直交することが好ましく、両者のなす角度が90°であることがより好ましい。この時、第一基板100側の液晶分子311のチルト方位は略0°(例えば、-10°以上、+10°以下)が望ましく、第二基板200側の液晶分子312はチルトを有さないことが好ましい。また、第二基板200側の液晶分子312はチルトを有し、第一基板100側の液晶分子311はチルトを有さなくてもよい。また、第一基板100側の液晶分子311及び第二基板200側の液晶分子312の両者がチルトを有していてもよい。
平面視において、配向方向311Xと延伸方向232Aとのなす角度δ(ただし、δは0°を超え、90°未満の実数)、及び、液晶層300に含まれる液晶分子310のツイスト角D1は、第一状態及び第二状態において、上記(式DX1)を満たすことが好ましい。このような態様とすることにより、効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
ツイスト角D1は、60°以上、80°以下であることが好ましく、64°以上、76°以下であることがより好ましく、68°以上、72°以下であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替えることができる。
延伸方向132Aの方位角が90°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xが0°であり、延伸方向232Aの方位角が160°であり、液晶分子310のツイスト角が70°であり、かつ、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合、図75~図77に示すように、第一電極131及び第二電極132間を電圧無印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧無印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一電極131及び第二電極132間を電圧印加状態に、第三電極231及び第四電極232間を電圧印加状態にした場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
スリット部132Sが設けられた第二電極132のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このようにピッチを小さくすることにより、より均一に液晶分子310の配向が変化し、変調特性を優れたものとすることができる。また、スリット部232Sが設けられた第四電極232のピッチは、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より均一に液晶分子310の配向が変化し、変調特性を優れたものとすることができる。
本実施形態の液晶分子310はネガ型の液晶分子310である。このような態様とすることにより、第一基板100及び第二基板200間で大きな縦電圧を印加することにより、ネガ型の液晶分子310を倒して水平配向化させることができる。第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、1V以上であることが好ましく、3V以上であることがより好ましく、4V以上であることが更に好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、例えば、7V以下である。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、1V以上、7V以下であることが好ましく、3V以上、7V以下であることがより好ましく、4V以上、7V以下であることが更に好ましい。
更に、第一電極131及び第二電極132間、及び、第三電極231及び第四電極232間のそれぞれにおいて、画素電極及び共通電極間に弱い電圧を印加して液晶分子310の面内配向方位を制御することができる。液晶分子310がネガ型の液晶分子である場合、面内ではスリット部132S、232Sの延伸方向(電界とは直交する方向)に液晶分子310は配向する。このとき、強い横電界を印加すると、カイラルの力による液晶の配向捩れを妨害するので、横電界は弱いことが好ましい。
第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差が7V以下である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.6V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.6V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、0.6V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.01V以上、0.6V以下であることが好ましい。
また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.7V以上である。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.7V以上である。
第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.7V以上、2V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.7V以上、2V以下であることが好ましい。
第一の垂直配向膜414及び第二の垂直配向膜424としては、実施形態5と同様のものを用いることができる。本実施形態では、両基板側に垂直配向膜が配置されているため、水平配向膜が配置される場合よりも、生産性に優れた光学素子10を実現することができる。
(実施形態12の変形例)
上記実施形態12において、第一状態及び第二状態において、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、8V以上であることも好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に液晶分子310を水平配向させることができる。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差の上限は特に限定されないが、第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、例えば、20V以下である。第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差は、8V以上、20V以下であることが好ましい。
第一電極131及び第二電極132と第三電極231及び第四電極232との間の電圧差が8V以上である場合、例えば、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、2V以下であることが好ましい。第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。また、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、0.01V以上である。
第一状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、0.01V以上、2V以下であることが好ましい。第一状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、0.01V以上、2V以下であることが好ましい。
また、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、3V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、3V以下であることが好ましい。第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、例えば、1.1V以上である。また、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差の下限値は特に限定されないが、第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、例えば、1.1V以上である。
第二状態における第一電極131と第二電極132との間の電圧差は、1.1V以上、3V以下であることが好ましい。第二状態における第三電極231と第四電極232との間の電圧差は、1.1V以上、3V以下であることが好ましい。
本変形例のように電圧を印加することにより、界面近傍の液晶分子310まで倒れるため、視野角の広いsHWPを実現することができる。この際、適宜、セル厚やねじれピッチ、位相差フィルムの角度を変更することができる。
(実施形態13)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~12及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態では、上記実施形態9~12及びその変形例の光学素子(sHWP)を備える可変焦点素子について説明する。
上記実施形態7と同様に、上記実施形態9~12及びその変形例の光学素子(sHWP)も、PBレンズ20と組み合わせることにより、可変焦点素子30を構成することができる。
(実施形態13の変形例)
上記実施形態7の変形例1と同様に、本変形例では、上記実施形態13におけるPBレンズ20が光学素子10内に配置され、インセル化された可変焦点素子30について説明する。本変形例では、上記実施形態7の変形例1と重複する内容については説明を省略する。
図78は、実施形態13の変形例に係る可変焦点素子の断面模式図である。図79は、実施形態13の変形例に係る可変焦点素子の拡大断面模式図である。図80は、実施形態13の変形例に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。基板の界面付近の液晶分子の配向は垂直であり方位の規定ができないため、図80では、液晶分子の配向方位を電極方向で規定する。
なお、本実施形態では、基準となる方位(0°)は、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aを光学素子10の出射側の基板面上に射影したときの方向に設定され、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aは、光学素子10を出射側から見たときの、液晶セル11の画面の水平右方向に一致する。
本変形例の可変焦点素子30は、図78に示すように、光学素子10とPBレンズ20とからなる積層体を2組以上備える多段階の可変焦点素子30Bである。
本変形例の可変焦点素子30が備えるPBレンズ20は、図79に示すように、光学素子10内に配置される。このようにPBレンズ20をインセル化することにより、PBレンズ20を外付けする必要がないため、製造コストを大きく下げることができる。また、可変焦点素子30の厚みを抑えることが可能になる。なお、図78では、便宜上、光学素子10とPBレンズ20とを別々に図示している。
本変形例の可変焦点素子30は、より具体的には、入射側から出射側に向かって順に、第二の1/4波長フィルム13と、第一の1/4波長フィルム12と、第一基板100と、液晶層300と、PBレンズ20と、第二基板200と、を備える。可変焦点素子30は、第一基板100と液晶層300との間に第一の垂直配向膜414を備えていてもよい。また、可変焦点素子30は、第二基板200と液晶層300との間に第二の垂直配向膜424を備えていてもよい。
ここで、上記実施形態9~12及びその変形例のように、液晶セル11の出射側に第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13が配置される場合、第一状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、液晶セル11に入射して第一の直線偏光に変換され、当該第一の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して円偏光(例えば左円偏光)に変換される。また、第二状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、液晶セル11に入射して第二の直線偏光に変換され、当該第二の直線偏光は、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して円偏光(例えば右円偏光)に変換される。
一方、本変形例のように、液晶セル11の入射側に第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13が配置される場合、第一状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して直線偏光に変換され、当該直線偏光は、液晶セル11へ入射して第一の円偏光(例えば左円偏光)に変換される。また、第二状態では、光学素子10へと入射した円偏光(例えば右円偏光)は、まず、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13へ入射して直線偏光に変換され、当該直線偏光は、液晶セル11へ入射して第二の円偏光(例えば右円偏光)に変換される。
本変形例では、光学素子10として上記実施形態9の光学素子を用いる場合を例に挙げて説明する。延伸方向132Aの方位角が90°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xが0°であり、液晶分子310のツイスト角が70°であり、かつ、液晶層300がネガ型の液晶分子310を含有する場合、図78~図80に示すように、第一電極131と第二電極132との間に閾値未満の電圧を印加し、かつ、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間に閾値以上の電圧を印加した場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角が0°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角が70°である第一状態を実現することができる。また、第一電極131と第二電極132との間に閾値以上の電圧を印加し、かつ、第一電極131及び第二電極132とベタ状電極240との間に閾値以上の電圧を印加した場合に、第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角が90°であり、第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角が160°である第二状態を実現することができる。
図80に示すように、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側に近い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本変形例では第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は、-2°以上、18°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
図80に示すように、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角を0°とするとき、第一の1/4波長フィルム12及び第二の1/4波長フィルム13のうち光線の出射側から遠い側の1/4波長フィルムの遅相軸(本変形例では第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は、38°以上、58°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
図81は、実施形態13の変形例に係る可変焦点素子の詳細な構成を説明する断面模式図である。図81に示すように、可変焦点素子30は、入射側から出射側に向かって順に、光学素子10と、第一のPBレンズ20A1と、光学素子10と、第一のPBレンズ20A1と、光学素子10と、第二のPBレンズ20A2と、光学素子10と、第二のPBレンズ20A2と、光学素子10と、第三のPBレンズ20A3と、光学素子10と、第三のPBレンズ20A3と、を備えている。
第一のPBレンズ20A1は、ディオプトリD=±0.25であり、第二のPBレンズ20A2は、ディオプトリD=±0.5、第三のPBレンズ20A3は、ディオプトリD=±1のレンズ特性を有する。右円偏光が入射した場合は+(集光)し、左円偏光が入射した場合は-(発散)する特性をもつ。
下記表2は、実施形態13の変形例に係る可変焦点素子30の、各モードにおける光学素子10及びPBレンズ20A1、20A2及び20A3の状態について説明する表である。
上記表2を用いて、F0のモードを説明する。このモードでは、すべての光学素子10が第二状態(非変調)としてある。右円偏光が入射すると、最初の光学素子10で変調されずそのまま最初の第一のPBレンズ20A1に入射する。ここで0.25Dの集光を受ける。その際出射光は左円偏光になる。ここで、PBレンズ20を通過しても円偏光の向きが変わるのは、PBレンズ20の特性である。光学素子10は非変調のため、左円偏光のまま2つ目の光学素子10を通過する。2つの目の第一のPBレンズ20A1では、-0.25Dの発散が生じる。結果として入射側からの最初の4枚(光学素子10、第一のPBレンズ20A1、光学素子10及び第一のPBレンズ20A1)では、入射光がそのまま通過することになる。以降同様に第二のPBレンズ20A2及びPBレンズ20A3も通過し、出射光としても、入射光のまま、0Dでそのまま出射される。
上記表2を用いて、F1のモードを説明する。このモードでは、入射側から4番目の光学素子10だけ、第一状態としてある。この状態では、最初の第二のPBレンズ20A2を通過後は、F0のモードと同様、左円偏光で0.5Dが付与された状態にある。続いて第一状態となった光学素子で右円偏光に変換される。続いて2番目の第二のPBレンズ20A2で、+0.5Dが付与され、合計1Dが付与された左円偏光となって出射する。その後は、そのまま1Dの左円偏光のまま出射する。2番目の第二のPBレンズ20A2通過後に左円偏光となっているため、第三のPBレンズ20A3での符号がF0の時とは逆になる。
上記表2及び図82を用いて、F-2.5のモードを説明する。図82は、実施形態13の変形例に係る可変焦点素子の、F-2.5のモードにおける偏光状態について説明する図である。表2及び図82に示すように、F-2.5のモードでは、入射側からの最初の4枚(光学素子10、第一のPBレンズ20A1、光学素子10及び第一のPBレンズ20A1)で-0.5Dが付与された右円偏光になり、出射側の最後の4枚(光学素子10、第三のPBレンズ20A3、光学素子10及び第三のPBレンズ20A3)で-2Dが付与され、合計-2.5Dの右円偏光として出射される。
その他、同様の原理で、どの光学素子10を変調状態の第一状態とするかに応じて、多段階の焦点距離を実現できる。本変形例では抜粋して3つの条件だけを示している。
上記実施形態13及び本変形例では、フィルム状(インセルポリマー状)のPBレンズを備えた態様について述べたが、上記実施形態7の変形例1のように、PBレンズ自体を液晶層で形成してもよい。
(実施形態14)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1~13及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態では、上記実施形態13及びその変形例の可変焦点素子30を備えるヘッドマウントディスプレイについて説明する。
上記実施形態8と同様に、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、画像を表示する表示パネル1Pと、位相差板40と、可変焦点素子30と、を備える。ヘッドマウントディスプレイ1を用いることにより、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示パネル1Pから出射された光は、位相差板40を経て円偏光となり、それが可変焦点素子30を通過し、ユーザUに視覚される。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(実施例1)
上記実施形態1と同様の構成を有する実施例1の光学素子10を作製した。実施例1の光学素子10は、入射側から出射側に向かって順に、液晶セル11と、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムと、第二の1/4波長フィルム13としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムと、を備えていた。逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は57.2°であり、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は12.2であった。実施例1の光学素子10を具体的には次のように作製した。
第一の櫛歯電極120を備える第一基板100と第二の櫛歯電極220を備える第二基板200とを用意した。第一基板100の電極方向(第一の櫛歯電極120の延伸方向120A)と、第二基板200の電極方向(第二の櫛歯電極220の延伸方向220A)とは、貼り合わせた際に、図5に示す角度の関係になるように形成した。また、第二基板200には、高さ3.6μmのフォトスペーサを配置した。
次いで、第一の櫛歯電極120を備える第一基板100及び第二の櫛歯電極220を備える第二基板200の両者にPMMA(ポリメチルメタクリレート)を製膜した。続いて、第二基板200にシール材を描画し、第一基板100と第二基板200とを、液晶材料を挟み込んで貼り合わせて液晶セル11を作製した。
ここで、上記液晶材料としては、誘電異方性が正のポジ型の液晶分子液晶(Δn=0.066)に、ドデシルアクリレート(C12A)を5wt%とカイラル剤S-811とを混合した混合物を用いた。なお、カイラル剤は、液晶セルでの上下基板間のツイスト角が70°となるように濃度設定した。
この液晶セル11を等方相状態に加熱した後、第一基板100に電圧を印加しながら室温に降温し、第一の弱アンカリングの水平配向膜411と第二の弱アンカリングの水平配向膜421とを備える、一様水平配向の液晶セル11を得た。さらに上記で得られた液晶セル11に逆波長分散の1/4波長フィルム(第一の1/4波長フィルム12)と、フラット波長分散の1/4波長フィルム(第二の1/4波長フィルム13)とを貼り付け、実施例1の光学素子(sHWP素子)10を得た。
図33は、実施例1に係る光学素子に印加する電圧について説明するグラフである。図33に示すように、実施例1の光学素子10に対して、第二基板200に電圧を印加すると、図3及び図4に示すように、第二基板200側の横電界により、第二基板200側の液晶分子312が70°方向に配向した。その後、第二基板200の電圧を弱めると(ゼロではない)、第二基板200側の液晶分子312は電界方向に沿って70°方向に並んだまま、第一基板100側の液晶分子311は、液晶材料に添加されたカイラルのねじり力によってスライドし、0°方向に配向した。これが第一状態であった。なお、この後、電圧を切っても、この第一状態の配向状態が維持された。
上記とは逆の要領で、第一基板100に電圧を印加し、その後弱めると、図3及び図4に示すように、第一基板100側の液晶分子311は90°方向(方位角90°)を向き、第二基板200側の液晶分子312はカイラルの力によって160°方向(方位角160°)を向いた状態が得られた。これが第二状態であった。このように、実施例1の光学素子10は、第一基板100への電圧印加、又は、第二基板200への電圧印加によって、第二状態と第一状態とをスイッチングすることができた。
図5に示すように、第一状態と第二状態とは、第一基板100側の液晶分子311と第二基板200側の液晶分子312との間で70°捩れていることは同じであったが、系全体が90°回転した関係にあった。
好適な液晶セルの設計を検討するために、実施例1の光学素子10についてシンテック社製LCD-MASTER 1Dを用いて光学計算を行った。以下では、シミュレーションにより得られた結果より、450nm~630nmで90%以上の変調(非変調時も含め)を実現することができる範囲を、好ましい範囲と判断した。また、以下で示すグラフでは、簡略化のため、450nmと630nmの波長のみ図示した。
まず、液晶層300の波長550nmにおける電圧無印加状態でのリタデーションΔndの好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える液晶層300の、電圧無印加状態におけるリタデーションに対する、非変調時及び変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図34は、実施例1に係る光学素子が備える液晶層のリタデーションに対する、非変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図35は、実施例1に係る光学素子が備える液晶層のリタデーションに対する、変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。
図34及び図35に示すように、液晶層300の波長550nmにおける電圧無印加状態でのリタデーションΔndは、180nm以上、280nm以下が好適であることが分かった。
液晶層300のツイスト角の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える液晶層300のツイスト角に対する、非変調時及び変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図36は、実施例1に係る光学素子が備える液晶層のツイスト角に対する、非変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図37は、実施例1に係る光学素子が備える液晶層のツイスト角に対する、変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図36及び図37に示すように、第一状態及び第二状態のいずれにおいても、液晶層300のツイスト角は、57°以上、82°以下が好適であることが分かった。
逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時及び変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図38は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図39は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図38及び図39に示すように、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角は、48°以上、66°以下が好適であることが分かった。
逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時及び変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図40は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図41は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図40及び。図41に示すように、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差は、30nm以上、230nm以下が好適であることが分かった。
フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時及び変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図42は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図43は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図42及び図43に示すように、第二の1/4波長フィルム13としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角は、3°以上、22°以下が好適であることが分かった。
フラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時及び変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図44は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図45は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、変調時におけるストークスパラメータS3を示すグラフである。図44及び図45に示すように、第二の1/4波長フィルム13としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差は、110nm以上、175nm以下であることが好適であることが分かった。
(比較例1)
図46は、比較例1に係る光学素子の断面模式図である。図46示す比較例1の光学素子10R1を作製した。比較例1の光学素子10R1は、上記比較形態1の光学素子に対応する光学素子であった。比較例1の光学素子10R1は、入射側から出射側に向かって順に、遅相軸の方位角が75°である1/4波長フィルム14R、遅相軸の方位角が15°である1/2波長フィルム15R、90°捩れのTN液晶層300R1を備える液晶セル11R1、遅相軸の方位角が-75°である1/2波長フィルム16R、及び、遅相軸の方位角が-15°である1/4波長フィルム17Rを備えていた。
(比較例2)
図47は、比較例2に係る光学素子の断面模式図である。図47に示す比較例2の光学素子10R2を作製した。比較例2の光学素子10R2は、上記比較形態2の光学素子に対応する光学素子であった。比較例2の光学素子10R2は、入射側から出射側に向かって順に、70°捩れのTN液晶層300R2と、-70°捩れのTN液晶層300R3とを積層した構造を有していた。
(実施例1、比較例1及び比較例2の評価)
実施例1、比較例1及び比較例2の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3の波長分散を図48及び図49に示す。図48は、実施例1、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。図49は、実施例1、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。
図48に示すように、実施例1の変調時(第一状態の時)は、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=-1に近いことが分かった。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。
また、図49に示すように、実施例1の非変調時(第二状態の時)には、出射光が広い波長帯にわたって、S3=+1に近いことが分かった。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
一方、比較例1(TN1層)の場合には、非変調時は極めて優れた特性を有するが、変調時は大きな波長依存があり、ごく狭い範囲しか適切に変調されていないことが分かった。また、比較例2(TN2層)の場合には、比較例1よりは広帯域変調に改善するが、非変調時は逆に悪化することが分かった。
(実施例2)
上記実施形態2と同様の構成を有する実施例2の光学素子10を作製した。具体的には、液晶セル11の構成が異なることを除いて、実施例1と同様にして実施例2の光学素子10を作製した。実施例2の光学素子10は、具体的には次のように作製した。
第一基板100として、2つの異なった方向に横電界を印加できる基板を用意した。より具体的には、第一の櫛歯電極121及び第二の櫛歯電極122を備える第一基板100を用意した。第一の櫛歯電極121の延伸方向121Aは、第二の櫛歯電極122の延伸方向122Aに対して直交するよう配置した。第一基板100には、高さ7.6μmのフォトスペーサを配置した。
第一基板100上にPHMA(ポリヘキシルメタクリレート)を成膜し、弱アンカリングの水平配向膜412を形成した。第二基板200上に、垂直配向膜422を製膜した。続いて、第二基板200にシール材を描画し、第一基板100と第二基板200とを、液晶材料を挟み込んで貼り合わせて液晶セル11を作製した。
ここで、上記液晶材料としては、誘電異方性が正のポジ型液晶(Δn=0.066)にカイラル剤S-811を混合した混合物を用いた。なお、カイラル剤は、液晶セルでの上下基板間のツイスト角が106°となるように濃度設定した。
この液晶セル11を等方相状態に加熱した後、第一基板100の上記第一の電界方向に電圧を印加しながら室温に降温し、一様水平配向の液晶セル11を得た。更に、上記で得られた液晶セル11に、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムと、第二の1/4波長フィルム13としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムとを、軸方位が図13に示される方位となるように貼り付け、実施例2の光学素子(sHWP素子)10を得た。第一の電界方向に電圧を印加すると第一状態(変調状態)が得られ、第二の電界方向に電圧を印加すると第二状態(非変調状態)が得られた。
(実施例1、実施例2及び比較例1の評価)
実施例1、実施例2及び比較例1の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3の波長分散を図50及び図51に示す。図50は、実施例1、実施例2及び比較例1に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。図51は、実施例1、実施例2及び比較例1に係る光学素子の、非変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。
図50に示すように、実施例2の変調時(第一状態の時)は実施例1と同様に、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=-1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。
また、図51に示すように、実施例2の非変調時(第二状態の時)には実施例1と同様に、出射光が広い波長帯にわたって、S3=+1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
(実施例3)
上記実施形態3に対応する実施例3の光学素子10を作製した。具体的には、第一の櫛歯電極121及び第二の櫛歯電極122を備える第一基板100と、第三の櫛歯電極221及び第四の櫛歯電極222を備える第二基板200と、を用いること以外は、実施例1と同様にして実施例3の光学素子10を作製した。
実施例3の光学素子は、変調時(第一状態の時)において、実施例1と同様に、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。非変調時(第二状態の時)には、実施例1と同様に、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
実施例3の光学素子10は、第一基板100及び第二基板200の両基板にオン電圧をかけ、その後電圧を下げることで、2状態を作ることができた。実施例3では、第一基板100と第二基板200の両方の配向を電圧で規定できるため、応答速度を高めることができた。
(実施例4-1及び実施例4-2)
上記実施形態4に対応する実施例4-1及び実施例4-2の光学素子10を作製した。具体的には、第一基板100と液晶層300との間に設けられた第一の配向膜410、及び、第二基板200と液晶層300との間に設けられた第二の配向膜420の構成が異なること以外は、実施例1と同様にして実施例4-1及び実施例4-2の光学素子10を作製した。図52は、実施例4-1に係る光学素子が備える双安定配向膜の配向方向について説明する図である。図53は、実施例4-2に係る光学素子が備える双安定配向膜の配向方向について説明する図である。実施例4-1及び実施例4-2の光学素子10は、第二基板200側に、第二の配向膜420として弱アンカリングの水平配向膜(スリッパリー膜ともいう)423を備え、第一基板100側に、第一の配向膜410として双安定配向膜413を備えていた。
実施例4-1及び実施例4-2の光学素子10が備える弱アンカリングの水平配向膜(スリッパリー膜)423としてPEG膜を用いた。PEG膜は以下の手順で形成した。メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート5wt%、ポリエチレングリコールジアクリレート5wt%、Irgacure2959(0.1wt%)、シクロペンタノン(89.9wt%)を調合した。これを第二基板200上に塗布し、254nmの紫外線を2J/cm2照射し、その後130℃で90分焼成処理を行った。これにより、弱アンカリングの水平配向膜423が得られた。
実施例4-1の光学素子10が備える双安定配向膜413には、光配向によるものを用いた。具体的には、図52に示すように、光官能波長が互いに異なる2つのポリマー(第一の光配向ポリマー及び第二の光配向ポリマー)を混合した材料を用いて双安定配向膜413を形成した。光官能波長が互いに異なる2つのポリマーを混合した溶液を基板上に塗布した後、特定の波長の偏光紫外線を照射後、それとは別の波長と方向の偏光紫外線を照射することで、第一の光配向ポリマーにより配向が規制される第一の方向413Aと、第二の光配向ポリマーにより配向が規制される第二の方向413Bの2方向に配向安定方向を持つ双安定配向膜413を形成した。
実施例4-2の光学素子10が備える双安定配向膜413には、凹凸基板とラビング処理によるものを用いた。具体的には、図53に示すように、第一基板100にポリマーで特定の方向(第一の方向413A)に溝を有する構造物を形成し、その溝方向とは異なる方向(第二の方向413B)にラビング処理を実施した。液晶分子310は、溝方向に並ぼうとする力と、ラビング方向に並ぼうとする力の2つが存在し、2方向に配向安定方向を持つ双安定配向膜413を形成することができた。
実施例4-1及び4-2の光学素子は、変調時(第一状態の時)において、実施例1と同様に、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。非変調時(第二状態の時)には、実施例1と同様に、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
(実施例5)
上記実施形態5に対応する実施例5の光学素子10を作製した。具体的には、液晶セル11の構成が異なること以外は、実施例1と同様にして実施例5の光学素子10を作製した。実施例5の光学素子10が備える液晶セル11は、第一電極131及び第二電極132を有する第一基板100と、第一の垂直配向膜414と、液晶分子310を含有する液晶層300と、第二の垂直配向膜424と、第三電極231及び第四電極232を有する第二基板200と、を順に備えていた。図19に示すように、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位角は0°であり、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aの方位角は160°であった。
図54は、実施例5に係る光学素子の、第一状態における印加電圧について説明するグラフである。図54に示すように、実施例5の光学素子10において、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に+/-1Vを、画素電極に-/+1Vを印加し、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232の両者に+/-5Vを印加することにより、第一状態を実現することができた。また、実施例5の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に+/-1Vを、画素電極に-/+1Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132の両者に+/-5Vを印加することにより、第二状態を実現することができた。
図55は、実施例1、実施例2、実施例5、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。図56は、実施例1、実施例2、実施例5、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。実施例5の光学素子10について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3の波長分散を図55及び図56に示す。
実施例5でも、波長450nm~650nmにわたって、|S3|>0.9が得られており、良好な特性が得られた。すなわち、図55に示すように、実施例5の変調時(第一状態の時)は、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=-1に近いことが分かった。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。また、図56に示すように、実施例5の非変調時(第二状態の時)には、出射光が広い波長帯にわたって、S3=+1に近いことが分かった。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
本実施例でも、他の実施例同様、液晶層のΔndやツイスト角の設計によって、適宜変調特性・非変調特性をチューニングすることができる。
(実施例6)
上記実施形態6と同様の構成を有する実施例6の光学素子10を作製した。具体的には、実施例6の光学素子10は、入射側から出射側に向かって順に、液晶セル11と、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムとを備えていた。逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は12.2°であり、第一の櫛歯電極120の延伸方向120Aの方位角は0°であり、第二の櫛歯電極220の延伸方向220Aの方位角は220°であった。実施例6の光学素子10を具体的には次のように作製した。
第一の櫛歯電極120を備える第一基板100と、第二の櫛歯電極220を備える第二基板200とを用意した。第一基板100の電極方向(第一の櫛歯電極120の延伸方向120A)と、第二基板200の電極方向(第二の櫛歯電極220の延伸方向220A)は、貼り合わせた際に、図23に示す角度の関係になるように形成した。また、第二基板200には、高さ3.4μmのスペーサを配置した。
次いで、第一基板100及び第二基板200の両者にPMMA(ポリメチルメタクリレート)を製膜した。続いて、第二基板200にシール材を描画し、第一基板100と第二基板200とを、液晶材料を挟み込んで貼り合わせて液晶セル11を作製した。
ここで、上記液晶材料としては、誘電異方性が正のポジ型の液晶分子(Δn=0.066)に、ドデシルアクリレート(C12A)を5wt%とカイラル剤S-811とを混合した混合物を用いた。なお、カイラル剤は、液晶セルでの上下基板間のツイスト角が64°となるように濃度設定した。
この液晶セル11を等方相状態に加熱した後、第一基板100に電圧を印加しながら室温に降温し、第一の弱アンカリングの水平配向膜411と第二の弱アンカリングの水平配向膜421とを備える、一様水平配向の液晶セル11を得た。さらに上記で得られた液晶セル11に逆波長分散の1/4波長フィルム(第一の1/4波長フィルム12)を貼り付け、実施例6の光学素子(sHWP素子)10を得た。
図57は、実施例1、実施例2、実施例5、実施例6、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。図58は、実施例1、実施例2、実施例5、実施例6、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。実施例6の光学素子10について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3の波長分散を図57及び図58に示す。
実施例6でも、波長450nm~650nmにわたって、|S3|>0.9が得られており、良好な特性が得られた。すなわち、図57に示すように、実施例5の変調時(第一状態の時)は、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=-1に近いことが分かった。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。また、図58に示すように、実施例5の非変調時(第二状態の時)には、出射光が広い波長帯にわたって、S3=+1に近いことが分かった。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
本実施例でも、他の実施例同様、液晶層のΔndやツイスト角の設計によって、適宜変調特性・非変調特性をチューニングすることができる。
(実施例7)
図59は、実施例7に係る可変焦点素子が備える光学素子の軸方位を示す図である。上記実施形態7の変形例1に対応する実施例7の可変焦点素子30を作製した。実施例7の可変焦点素子30は、入射側から出射側に向かって順に、第二の1/4波長フィルム13としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムと、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムと、第一基板100と、第一の配向膜410と、液晶層300と、第二の配向膜420と、PBレンズ20と、第二基板200と、を備えていた。液晶セル11を構成する第一基板100、第一の配向膜410(具体的には、第一の弱アンカリングの水平配向膜411)、液晶層300、第二の配向膜420(具体的には、第二の弱アンカリングの水平配向膜421)及び第二基板200は、実施例1と同様の構成を有していた。
図59に示すように、逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は12.2°であり、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は57.2°であった。また、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角は0°であり、第二状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角は90°であった。第一状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角は70°であり、第二状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角は160°であった。
実施例7の可変焦点素子30は、具体的には次のようにして作製した。第二基板200に、上記一般式(PB-1)で表されるポリマーを含むインセルPBレンズ形成用の光感光性材料を塗布し、PBレンズ形成用膜を成膜した。
図60は、実施例7に係る可変焦点素子の製造工程における第一の配向処理について説明する模式図である。図61は、実施例7に係る可変焦点素子の製造工程における第二の配向処理について説明する模式図である。図62は、実施例7に係る可変焦点素子の製造工程における第三の配向処理について説明する模式図である。図63は、実施例7に係る可変焦点素子の製造工程における第四の配向処理について説明する模式図である。
次に、第二基板200上に設けられたPBレンズ形成用膜に配向処理を行った。具体的には、図60に示すように、第一のフォトマスク510を用いて方位角0°の偏光にてPBレンズ形成用膜600に配向処理を行った。続いて、図61に示すように、第二のフォトマスク520を用いて、方位角45°の偏光にてPBレンズ形成用膜600に配向処理を行った。続いて、図62に示すように、第三のフォトマスク530を用いて、方位角90°の偏光にてPBレンズ形成用膜600に配向処理を行った。最後に、図63に示すように、第四のフォトマスク540を用いて、方位角135°の偏光にてPBレンズ形成用膜600に配向処理を行った。その後、アニール処理を行い、PBレンズ20を第二基板200上に形成することができた。
当該第二基板200及びPBレンズ20の積層体を用いて、実施例1と同様にして液晶セル11を作製した。水平配向の液晶セル11を得た後、第一の1/4波長フィルム12として逆波長分散の1/4波長フィルムを貼付し、第二の1/4波長フィルム13としてフラット波長分散の1/4波長フィルムを貼付し、実施例7の可変焦点素子30を得た。
ここで、本実施例では、入射光がPBレンズ20よりも先に第二の1/4波長フィルム13、第一の1/4波長フィルム12及び液晶層300へ入射して右円偏光及び左円偏光をスイッチングし、当該偏光状態に応じてPBレンズ20で集光又は発散を行うため、第二の1/4波長フィルム13及び第一の1/4波長フィルム12は液晶層300よりも入射側に配置した。そのため、第二の1/4波長フィルム13及び第一の1/4波長フィルム12の配置及び軸方位は、実施例1とは異なっていた。
実施例7の可変焦点素子30は、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替え可能であり、かつ、薄型化が可能であった。
(実施例8)
上記実施形態9と同様の構成を有する実施例8の光学素子10を作製した。具体的には、液晶セル11の構成、逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角、及び、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角が異なること以外は、実施例5と同様にして実施例8の光学素子10を作製した。
図66に示すように、実施例8の光学素子10が備える液晶セル11は、第一電極131及び第二電極132を有する第一基板100(FFS基板)と、弱アンカリングの第一の垂直配向膜414と、液晶分子310を含有する液晶層300と、第二の垂直配向膜424と、ベタ状電極240を有する第二基板200と、を順に備えていた。液晶層300は、カイラル剤を含有するネガ型の液晶分子310を含み、屈折率異方性Δnは0.104であった。液晶層300のカイラルピッチは11μmであり、液晶層300の厚さ(セル厚)dは2.75μmであった。
第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位角は90°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位角は0°であった。逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は68.7°であり、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は23.7°であった。フラット波長分散の1/4波長フィルム(第二の1/4波長フィルム13)はポジティブAプレートであった。
図83は、実施例8に係る光学素子の、第一状態における印加電圧について説明するグラフである。図84は、実施例8に係る光学素子の、第二状態における印加電圧について説明するグラフである。図83に示すように、実施例8の光学素子10において、第二基板200側のベタ状電極240に+/-5Vを、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-0.4Vを印加することにより第一状態を実現することができた。また、図84に示すように、実施例8の光学素子10において、第二基板200側のベタ状電極240に+/-5Vを、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1Vを印加することにより第二状態を実現することができた。
本実施例では、大きな縦電界をかけることで、ネガ型の液晶分子310を倒し、水平配向化させ、かつ、第一電極131と第二電極132(FFS基板の共通電極-画素電極)間に弱い電圧をかけて液晶分子310の面内配向方向を決めた。液晶層300に含まれる液晶分子310はネガ型の液晶分子310であるため、面内ではスリット延伸方向(電界方向とは直交する方向)に液晶分子310は配向した。この時強い横電界をかけるとカイラルの力による液晶分子310の配向ねじれを妨害するので、横方向の電圧は弱い電圧であるところもポイントである。垂直配向膜を用いているため、基板極近傍は垂直配向であるが、液晶層300のバルク内で水平配向の略70度ねじれを実現させることができた。ここでのねじれ角は液晶分子310のチルト角が45°以内の回転角を示す。
(比較例3)
図85は、比較例3に係る光学素子の断面模式図である。図85示す比較例3の光学素子10R1を作製した。
(比較例4)
図86は、比較例4に係る光学素子の断面模式図である。図86示す比較例4の光学素子10R1を作製した。
図87は、実施例8、比較例3及び比較例4に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。図88は、実施例8、比較例3及び比較例4に係る光学素子の、非変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。実施例8、比較例3及び比較例4の光学素子について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3の波長分散を図87及び図88に示す。
図87に示すように、実施例8の変調時(第一状態)では、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=-1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。また、図88に示すように、非変調時(第二状態)では、出射光が広い波長帯にわたって、S3=+1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
一方、比較例3(TN液晶層1層)の場合には、非変調時は極めて優れた特性を有するが、変調時は大きな波長依存があり、ごく狭い範囲しか適切に変調されていないことが分かった。比較例4(TN液晶層2層)の場合には、比較例1よりは広帯域変調に改善するが、非変調時は逆に悪化することが分かった。
(実施例9)
上記実施形態10と同様の構成を有する実施例9の光学素子10を作製した。具体的には、液晶セル11の構成が異なること以外は、実施例8と同様にして実施例9の光学素子10を作製した。
図71に示すように、実施例9の光学素子10が備える液晶セル11は、第一電極131及び第二電極132を有する第一基板100(FFS基板)と、第一の垂直配向膜414と、液晶分子310を含有する液晶層300と、第二の垂直配向膜424と、第三電極231及び第四電極232を有する第二基板200(FFS基板)と、を順に備えていた。液晶層300は、カイラル剤を含有するネガ型の液晶分子310を含み、屈折率異方性Δnは0.104であった。液晶層300のカイラルピッチは11μmであり、液晶層300の厚さ(セル厚)dは3μmであった。
第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位角は0°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位角は0°であり、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aの方位角は160°であり、電圧無印加状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角は160°であった。逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は68.7°であり、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は23.7°であった。フラット波長分散の1/4波長フィルム(第二の1/4波長フィルム13)はポジティブAプレートであった。また、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角は0°であり、第二状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角は90°であった。第一状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角は70°であり、第二状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角は160°であった。
図89は、実施例9に係る光学素子の、第一状態における印加電圧について説明するグラフである。図90は、実施例9に係る光学素子の、第二状態における印加電圧について説明するグラフである。図89に示すように、実施例9の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に+/-5.4Vを、画素電極に+/-5Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1Vを印加することにより第一状態を実現することができた。また、図90に示すように、実施例9の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に+/-5.4Vを、画素電極に+/-5Vを印加することにより第二状態を実現することができた。
図91は、実施例8、実施例9及び比較例3に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。図92は、実施例8、実施例9及び比較例3に係る光学素子の、非変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。実施例8、実施例9及び比較例3の光学素子について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3の波長分散を図91及び図92に示す。
図91に示すように、実施例8と同様に、実施例9においても、変調時(第一状態)では、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=-1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。また、図92に示すように、実施例8と同様に、実施例9においても、非変調時(第二状態)では、出射光が広い波長帯にわたって、S3=+1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
また、実施例9は両側に強アンカリングの垂直配向膜を用いたため、実施例8に対して応答速度や信頼性、量産性に優位であった。ただ、駆動には少し大きな電圧が必要なため、実施例8と比較すると光学特性は少し劣った。しかし、比較例3と比較すると、変調時において優れた特性を有することが分かった。
(実施例10)
上記実施形態11と同様の構成を有する実施例9の光学素子10を作製した。具体的には、液晶セル11の構成、並びに、第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A及び第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aが異なること以外は、実施例8と同様にして実施例10の光学素子10を作製した。
図74に示すように、実施例10の光学素子10が備える液晶セル11は、第一電極131及び第二電極132を有する第一基板100(FFS基板)と、第一の垂直配向膜414と、液晶分子310を含有する液晶層300と、第二の垂直配向膜424と、第三電極231及び第四電極232を有する第二基板200(FFS基板)と、を順に備えていた。液晶層300は、カイラル剤を含有するネガ型の液晶分子310を含み、屈折率異方性Δnは0.104であった。液晶層300のカイラルピッチは11μmであり、液晶層300の厚さ(セル厚)dは3μmであった。
第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位角は45°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位角は-45°であり、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aの方位角は-65°であった。逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は68.7°であり、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は23.7°であった。フラット波長分散の1/4波長フィルム(第二の1/4波長フィルム13)はポジティブAプレートであった。
図93は、実施例10に係る光学素子の、第一状態における印加電圧について説明するグラフである。図94は、実施例10に係る光学素子の、第二状態における印加電圧について説明するグラフである。図93に示すように、実施例10の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に+/-5.4Vを、画素電極に+/-5Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1Vを印加することにより第一状態を実現することができた。また、図94に示すように、実施例10の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に+/-5.4Vを、画素電極に+/-5Vを印加することにより第二状態を実現することができた。
図95は、実施例8~実施例10及び比較例3に係る光学素子の、変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。図96は、実施例8~実施例10及び比較例3に係る光学素子の、非変調時におけるストークスパラメータS3の波長分散を示すグラフである。実施例8~実施例10、比較例3及び比較例4の光学素子について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3の波長分散を図95及び図96に示す。
図95に示すように、実施例8及び実施例9と同様に、実施例10においても、変調時(第一状態)では、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=-1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。また、図96に示すように、実施例8及び実施例9と同様に、実施例10においても、非変調時(第二状態)では、出射光が広い波長帯にわたって、S3=+1に近いことが分かる。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。すなわち、実施例8及び実施例9と同様に、実施例10においても、波長450nm~650nmの範囲で|S3|≧0.9を達成することができた。
(実施例11)
上記実施形態12と同様の構成を有する実施例9の光学素子10を作製した。具体的には、液晶セル11の構成が異なること以外は、実施例8と同様にして実施例11の光学素子10を作製した。
図77に示すように、実施例11の光学素子10が備える液晶セル11は、第一電極131及び第二電極132を有する第一基板100(FFS基板)と、第一の垂直配向膜414と、液晶分子310を含有する液晶層300と、第二の垂直配向膜424と、第三電極231及び第四電極232を有する第二基板200(FFS基板)と、を順に備えていた。液晶層300は、カイラル剤を含有するネガ型の液晶分子310を含み、屈折率異方性Δnは0.104であった。液晶層300のカイラルピッチは11μmであり、液晶層300の厚さ(セル厚)dは3μmであった。
第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位角は90°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位角は0°であり、第四電極232に設けられたスリット部232Sの延伸方向232Aの方位角は160°であった。逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は68.7°であり、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は23.7°であった。フラット波長分散の1/4波長フィルム(第二の1/4波長フィルム13)はポジティブAプレートであった。
図97は、実施例11に係る光学素子の、第一状態における印加電圧について説明するグラフである。図98は、実施例11に係る光学素子の、第二状態における印加電圧について説明するグラフである。図97に示すように、実施例11の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に+/-5.4Vを、画素電極に+/-5Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-0.4Vを印加することにより第一状態を実現することができた。また、図98に示すように、実施例11の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に+/-6Vを、画素電極に+/-5Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1Vを印加することにより第二状態を実現することができた。
本実施例の液晶セル11は、実施例10の液晶セルと同様の構成を有するが、実施例10とは電圧のかけ方が異なっていた。本実施例でも、実施例10と同様の性能が得られた。具体的には、実施例10と同様に、実施例11においても、変調時(第一状態)では、出射光が広い波長帯にわたって、S3=-1に近かった。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。また、実施例10と同様に、実施例11においても、非変調時(第二状態)では、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=+1に近かった。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
(実施例12)
上記実施例9の光学素子10と同様の構成を有する光学素子10に対して、実施例9よりも高電圧を印加した。具体的には、上記実施形態10の変形例1に対応する電圧を印加した。
図99は、実施例12に係る光学素子の、第一状態における印加電圧について説明するグラフである。図100は、実施例12に係る光学素子の、第二状態における印加電圧について説明するグラフである。図99に示すように、実施例12の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に+/-11Vを、画素電極に+/-10Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1.1Vを印加することにより第一状態を実現することができた。また、図100に示すように、実施例12の光学素子10において、第二基板200側の第三電極231及び第四電極232のうち共通電極に0Vを、画素電極に+/-1.1Vを印加し、第一基板100側の第一電極131及び第二電極132のうち共通電極に+/-11Vを、画素電極に+/-10Vを印加することにより第二状態を実現することができた。
本実施例の液晶セル11は、実施例9の液晶セルと同様の構成を有するが、実施例9とは電圧のかけ方が異なっていた。本実施例でも、実施例9と同様の性能が得られた。具体的には、実施例9と同様に、実施例12においても、変調時(第一状態)では、出射光が広い波長帯にわたって、S3=-1に近かった。すなわち、S3=+1から、S3=-1に(言い換えると右円偏光から左円偏光に)変調することができた。また、実施例9と同様に、実施例12においても、非変調時(第二状態)では、出射光が幅広い波長帯にわたって、S3=+1に近かった。すなわち、S3=+1をS3=+1で(言い換えると右円偏光をそのまま右円偏光で)非変調状態のまま出射することができた。
(実施例9、実施例12及び比較例3の視野角特性の評価)
実施例9、実施例12及び比較例3の光学素子について、視野角特性をシミュレーションにより評価した。結果を図101~図106に示す。図101は、比較例3の光学素子の非変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。図102は、比較例3の光学素子の変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。図103は、実施例9の光学素子の非変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。図104は、実施例9の光学素子の変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。図105は、実施例12の光学素子の非変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。図106は、実施例12の光学素子の変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。
図101~図106の非変調におけるグラフでは濃い領域が広いほど特性が良く、変調におけるグラフでは薄い領域が広いほど特性が良い。図101~図106に示すように、実施例9及び実施例12では、波長450nm~650nmの範囲において、非変調及び変調共に視野角が良いことが分かった。また、実施例12は実施例9に比べて、波長450nm~650nmの範囲で非変調、変調共に視野角がより広いことが分かった。
(実施例13)
フラット波長分散の1/4波長フィルム(第二の1/4波長フィルム13)をネガティブAプレートに変更したこと以外は、実施例12と同様の構成を有する実施例13の光学素子10について、実施例12と同様に電圧を印加した。
(実施例12及び実施例13の視野角特性の評価)
実施例12及び実施例13の光学素子について、視野角特性をシミュレーションにより評価した。結果を図105~図108に示す。図107は、実施例13の光学素子の非変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。図108は、実施例13の光学素子の変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。
図105~図108の非変調におけるグラフでは濃い領域が広いほど特性が良く、変調におけるグラフでは薄い領域が広いほど特性が良い。図105~図108に示すように、実施例12及び実施例13では、波長450nm~650nmの範囲において、非変調及び変調共に視野角が良いことが分かった。また、実施例13は実施例12に比べて、非変調時の特性が良化していた。
(実施例14)
上記実施形態13の変形例に対応する実施例14の可変焦点素子30を作製した。実施例14の可変焦点素子30は、入射側から出射側に向かって順に、第二の1/4波長フィルム13としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムと、第一の1/4波長フィルム12としての逆波長分散の1/4波長フィルムと、第一基板100と、弱アンカリングの第一の垂直配向膜414と、液晶層300と、第二の垂直配向膜424と、PBレンズ20と、第二基板200と、を備えていた。液晶セル11を構成する第一基板100、弱アンカリングの第一の垂直配向膜414、液晶層300、第二の垂直配向膜424及び第二基板200は、軸方位を除いて、実施例8と同様の構成を有していた。PBレンズ20のインセル化は、実施例7と同様に行った。
図80に示すように、第二電極132に設けられたスリット部132Sの延伸方向132Aの方位角は90°であり、電圧無印加状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Xの方位角は0°であった。逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第一の1/4波長フィルム12の遅相軸12A)の方位角は8.1°であり、フラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸(第二の1/4波長フィルム13の遅相軸13A)の方位角は53.1°であった。また、第一状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Aの方位角は0°であり、第二状態における第一基板100側の液晶分子311の配向方向311Bの方位角は90°であった。第一状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Aの方位角は70°であり、第二状態における第二基板200側の液晶分子312の配向方向312Bの方位角は160°であった。
実施例14の可変焦点素子30は、偏光変調及び偏光非変調を広帯域で切り替え可能であり、かつ、薄型化が可能であった。