JP7455072B2 - 立毛調人工皮革 - Google Patents

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Description

本発明は、衣料,靴,家具,カーシート,雑貨製品等の表面素材として好ましく用いられる立毛調人工皮革に関する。
従来、スエード調人工皮革やヌバック調人工皮革のような立毛調人工皮革が知られている。立毛調人工皮革は、高分子弾性体を含浸付与された不織布等の繊維絡合体を含む繊維基材の表面を起毛処理することにより毛羽立たせた立毛面を有する。このような立毛調人工皮革には、耐摩耗性が求められる。
立毛調人工皮革の耐摩耗性に関し、例えば、下記特許文献1は、極細繊維と高分子弾性体からなる皮革用シート状物において、高分子弾性体の付与後に混合繊維の一成分を抽出した後、再び高分子弾性体を付与して得られるスエード調人工皮革の製造方法を開示する。また、下記特許文献2は、表面繊維層として単繊維繊度0.5デニール以下の極細繊維からなる繊維層を含む不織シート状物に、強制乳化された非イオン性エマルジョンで、エマルジョン粒子の平均粒径が0.1~2.0μmである水系ポリウレタンエマルジョンに無機塩類を溶解、混合した処理液を付与し、加熱乾燥する、柔軟で耐摩耗性良好な人工皮革の製造方法を開示する。また、下記特許文献3は、人工皮革基体を作成後、高分子弾性体を溶剤膨潤させた後、圧縮し、極細繊維と高分子弾性体を接着させる人工皮革の製造方法を開示する。
特開昭51-75178号公報 特開平06-316877号公報 特開2001-81677号公報
特許文献1に開示された技術によれば、耐摩耗性の改善に一定の効果は認められるが、高分子弾性体が極細繊維を直接把持するため、風合いが硬化するという問題があった。また、特許文献2に開示された技術によれば、ポリウレタンエマルジョンを付与して耐摩耗性を向上させるためには多量のポリウレタンエマルジョンを付与する必要があり、その場合には、風合いが硬くなるという問題があった。さらに、特許文献3に開示された技術によれば、高分子弾性体が極細繊維を直接把持するために、充分に耐摩耗性を向上させようとすると、風合いが硬くなるという問題があった。
本発明は、上述した問題を解決した、高い耐摩耗性としなやかな風合いとを兼ね備えた立毛調人工皮革を提供することを目的とする。
本発明者らは、立毛調人工皮革において、不織布等の繊維絡合体に付与される高分子弾性体の割合を高くすれば、耐摩耗性は高くなるが、風合いが硬くなるという問題を解決するために鋭意検討した。そして、繊維絡合体に発泡タイプの高分子弾性体を含浸させ、発泡タイプの高分子弾性体の発泡状態を制御することにより、高い耐摩耗性としなやかな風合いとを兼ね備えた立毛調人工皮革を得ることができるという知見を得、本発明に想到するに至った。
すなわち、本発明の一局面は、繊維絡合体と発泡ポリウレタンとを含む、立毛調人工皮革であって、発泡ポリウレタンは、ジメチルホルムアミドを含む溶剤に溶解させたポリウレタン溶液から湿式凝固された、隔壁で仕切られた発泡構造を有する発泡ポリウレタンであり、発泡ポリウレタンの平均発泡径A(μm)と発泡率B(%)とが、B≧9.3×A-10.8、(但し、平均発泡径Aが0.1~20μmであり、発泡率Bが10~60%である)、の関係式を満たす立毛調人工皮革である。このような立毛調人工皮革によれば、高い耐摩耗性としなやかな風合いとを兼ね備えた立毛調人工皮革が得られる。


上述のような構成によれば、JIS L 1096(6.17.5E法 マーチンデール法)に準じた、押圧荷重12kPa、摩耗回数5万回の摩耗減量が50mg以下であり、且つ、ソフトネステスターで測定されるソフトネスが3.5mm以上であるような高い耐摩耗性としなやかな風合いとを兼ね備えた立毛調人工皮革が得られる。
本発明によれば、高い耐摩耗性としなやかな風合いとを兼ね備えた立毛調人工皮革を提供できる。
図1は、立毛調人工皮革の厚さ方向に平行な断面の表層300μmの部分をSEMを用いて倍率300倍で撮影した画像の一例である。 図2(a)は、図1の画像に基づいたポリウレタンの存在する全領域を黒塗りした部分の画像、図2(b)は、図1の画像に基づいたポリウレタンの発泡部位を黒塗りした模様の画像を示す。 実施例1~4及び比較例1~5で得られた立毛調人工皮革の発泡高分子弾性体の平均発泡径Aと発泡高分子弾性体の発泡率Bとの関係をプロットしたグラフである。
本実施形態の立毛調人工皮革は、繊維を絡合させた繊維絡合体と発泡高分子弾性体とを含む、立毛面を有する立毛調人工皮革であって、発泡高分子弾性体の平均発泡径A(μm)と発泡率B(%)とが、B≧9.3×A-10.8、の関係式を満たす立毛調人工皮革である。以下、本実施形態の立毛調人工皮革について、その製造方法に沿って詳しく説明する。
繊維を絡合させた繊維絡合体としては、不織布,織布,編物,またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。
繊維絡合体を形成する繊維を形成する樹脂の種類は特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PETやカチオン染料可染性変性PET等の変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン10,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン6-12等のナイロン;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等の繊維が挙げられる。なお、変性PETは、未変性PETのエステル形成性のジカルボン酸系単量体単位、または、ジオール系単量体単位の少なくとも一部を置換可能な単量体単位で置き換えたPETである。ジカルボン酸系単量体単位を置換する変性単量体単位の具体例としては、例えば、テレフタル酸単位を置換するイソフタル酸,ナトリウムスルホイソフタル酸,ナトリウムスルホナフタレンジカルボン酸,アジピン酸等に由来する単位が挙げられる。また、ジオール系単量体単位を置換する変性単量体単位の具体例としては、例えば、エチレングリコール単位を置換するブタンジオール,ヘキサンジオール等のジオールに由来する単位が挙げられる。
繊維絡合体を形成する繊維の繊度は特に限定されないが、平均繊度0.01~1dtex、さらには0.1~0.5dtexである極細繊維であることが、繊維の剛性が低くなり、とくにしなやかな風合いが得られやすい点から好ましい。なお、平均繊度は、立毛調人工皮革の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を3000倍で撮影し、繊維の断面をランダムに10個選んで断面積を測定し、その断面積の平均値を算出し、各樹脂の密度から換算して算出される。以下、繊維絡合体として、極細繊維を絡合させた不織布の製造方法を、代表例として詳しく説明する。
極細繊維を絡合させた不織布の製造方法としては、例えば、海島型(マトリクス-ドメイン型)複合繊維のような極細繊維発生型繊維を溶融紡糸してウェブを製造し、ウェブを絡合処理した後、極細繊維発生型繊維から極細繊維を形成する方法や、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸して絡合処理する方法が挙げられる。本実施形態においては、海島型複合繊維を絡合処理し、海島型複合繊維から海成分を選択的に除去して極細繊維化処理することにより得られる極細繊維の不織布を用いる場合について詳しく説明する。
海島型複合繊維を形成する島成分の樹脂としては、上述した繊維絡合体を形成する繊維を形成する樹脂が挙げられる。また、海島型複合繊維を形成する海成分の樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,エチレンプロピレン共重合体,エチレン酢酸ビニル共重合体,スチレンエチレン共重合体,スチレンアクリル共重合体などが挙げられる。
海島型複合繊維のウェブを製造する方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した長繊維の海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維のウェブを形成する方法や、長繊維をステープルにカットして短繊維のウェブを形成する方法等が挙げられる。これらの中では、絡合状態を調整しやすく、高い充実感が得られる点から長繊維のウェブを用いることがとくに好ましい。また、形成されたウェブには、その形態安定性を付与するために融着処理が施されてもよい。また、海島型複合繊維の海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、水蒸気あるいは熱水あるいは乾熱による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施して海島型複合繊維を緻密化させてもよい。
なお、長繊維とは、紡糸後に意図的にカットされた短繊維ではない、連続的な繊維であることを意味する。さらに具体的には、例えば、繊維長が3~80mm程度になるように意図的に切断された短繊維ではない、フィラメントまたは連続繊維を意味する。極細繊維化する前の海島型複合繊維の繊維長は100mm以上であることが好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、製造工程において不可避的に切断されない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。なお、絡合時のニードルパンチや、表面のバフィングにより、製造工程において不可避的に長繊維の一部が切断されて短繊維になることもある。
絡合処理としては、例えば、ウェブをクロスラッパー等を用いて厚さ方向に複数層重ね合わせた後、その両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件でニードルパンチや高圧水流処理する方法が挙げられる。また、ニードルパンチのパンチ密度としては、1500~5500パンチ/cm、さらには、2000~5000パンチ/cm程度であることが、耐摩耗性にとくに優れた不織布が得られやすい点から好ましい。
また、海島型複合繊維の紡糸工程から絡合処理までのいずれかの段階において、ウェブに油剤や帯電防止剤を付与してもよい。さらに、必要に応じて、ウェブを70~150℃程度の温水に浸漬する収縮処理を行うことにより、ウェブの絡合状態を予め緻密にしておいてもよい。このようにして得られる絡合されたウェブの目付としては100~2000g/m2程度の範囲であることが好ましい。さらに、絡合されたウェブを必要に応じて熱収縮させることにより繊維密度および絡合度合を高める処理を施してもよい。また、熱収縮処理により緻密化された絡合されたウェブをさらに緻密化するとともに、ウェブの形態を固定化したり、表面を平滑化したりすること等を目的として、必要に応じて、熱プレス処理を行うことによりさらに、繊維密度を高めてもよい。
本実施形態の立毛調人工皮革の製造においては、不織布に形態安定性や充実感を付与するために、海島型複合繊維を絡合した不織布または海島型複合繊維から海成分ポリマーを除去して形成された極細繊維の不織布に、発泡タイプの高分子弾性体(発泡高分子弾性体)を付与する。不織布への発泡高分子弾性体の付与は、高分子弾性体溶液を不織布にディップニップしたり塗布したりすることにより含浸させ、発泡構造を形成するように凝固させることにより行われる。
立毛調人工皮革中の不織布に含浸付与される発泡ポリウレタンの含有割合は、20~50質量%であることにより、しなやかな風合いと耐摩耗性とのバランスに優れる。
高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン,アクリロニトリルエラストマー,オレフィンエラストマー,ポリエステルエラストマー,ポリアミドエラストマー,アクリルエラストマー等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンがしなやかな風合いと耐摩耗性とのバランスに優れた立毛調人工皮革が得られやすい点から用いられる。ポリウレタンの具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン,ポリエーテル系ポリウレタン,ポリエステル系ポリウレタン,ポリエーテルエステル系ポリウレタン,ポリエーテルカーボネート系ポリウレタン,ポリエステルカーボネート系ポリウレタンなどが挙げられる。発泡タイプのポリウレタン(発泡ポリウレタン)を形成するためには、ポリウレタンをジメチルホルムアミド(DMF)等の溶剤に溶解させたポリウレタン溶液を不織布に含浸させた後、ポリウレタンを湿式凝固させる方法が用いられる。
ポリウレタンの溶剤の具体例としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド,N-メチルピロリドン,トルエン,酢酸エチル,メチルエチルケトン,テトラヒドロフラン等の溶剤が用いられる。また、ポリウレタン溶液の固形分濃度は適宜選択されるが、10質量%以上、さらには、10~30質量%であることが、平均発泡径や発泡率を制御しやすい点から好ましい。ポリウレタン溶液の固形分濃度が高いほど発泡率は高くなる傾向にある。
不織布に発泡タイプのポリウレタンを付与する場合、不織布にポリウレタン溶液をディップニップしたり塗布したりすることにより含浸させ、発泡構造を形成するように凝固液に浸漬して湿式凝固させることが好ましい。このような方法によれば、ポリウレタン溶液を含浸された不織布を凝固液に浸漬することにより、ポリウレタン溶液中の溶剤が凝固液に徐々に置換されて相分離を起こして発泡構造を形成する。このようにポリウレタン溶液を湿式凝固させる場合、ポリウレタン溶液の固形分濃度や湿式凝固条件を選択することにより平均発泡径や発泡率を制御できる。
発泡タイプのポリウレタンを凝固させるための凝固液としては、例えば、DMF水溶液等のポリウレタンの溶剤と水との混合液や、水が挙げられる。溶剤と水との混合液である凝固液の場合、凝固液中の溶剤の質量割合としては、5~60質量%、さらには、10~50質量%であることが好ましい。凝固液中の溶剤の質量割合が高いほど、平均発泡径は小さくなる傾向がある。
また、凝固液の液温としては、10~60℃、さらには、20~55℃であることが好ましい。凝固液の液温が高いほど、平均発泡径は小さくなる傾向がある。
また、ポリウレタン溶液中には、平均発泡径や発泡率を調整するために添加剤を配合してもよい。このような添加剤の具体例としては、例えば高級アルコールなどのノニオン系界面活性剤等が挙げられる。添加量としてはポリウレタンに対して0.1~10質量%、さらには、1~5質量%であることが好ましい。このような添加剤を配合することにより、平均発泡径は小さくなり、発泡率は高くなる傾向がある。
高分子弾性体の100%モジュラスは特に限定されないが、1~20MPa、さらには、4~10MPaであることが、耐摩耗性としなやかな風合いとのバランスに優れる点から好ましい。
高分子弾性体には、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック等の顔料や染料などの着色剤,凝固調節剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,難燃剤,顔料,染料,蛍光剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,防黴剤,浸透剤,消泡剤,滑剤,撥水剤,撥油剤,増粘剤,増量剤,硬化促進剤,発泡剤,ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物,無機微粒子,導電剤などが配合されてもよい。
海島型複合繊維を絡合した不織布の海島型複合繊維から海成分ポリマーを除去することにより、極細繊維を絡合させた不織布が形成される。海島型複合繊維から海成分ポリマーを除去する方法としては、海成分ポリマーのみを選択的に除去しうる溶剤または分解剤で海島型複合繊維を絡合した不織布を処理するような、従来から知られた極細繊維の形成方法が特に限定なく用いられる。例えば、海成分ポリマーとして水溶性PVAを用いる場合、85~100℃の熱水中で100~600秒間処理することにより、水溶性PVAの除去率が95~100%程度になるまで抽出除去することが好ましい。なお、ディップニップ処理を繰り返すことにより、水溶性PVAは効率的に抽出除去される。
このようにして得られる不織布の目付は、140~3000g/m2、さらには200~2000g/m2であることが好ましい。
高分子弾性体を含浸付与された不織布は、厚み方向にスライスされて目的とする厚さの複数枚の人工皮革基体に仕上げられてもよい。そして、人工皮革基体の片面又は両面をバフィングすることにより、表層の繊維が立毛された立毛面を有する人工皮革基体が得られる。人工皮革基体は、好ましくは、120~600番手、さらに好ましくは320~600番手程度のサンドペーパーやエメリーペーパーを用いてバフィング処理することにより起毛される。このようにして、片面又は両面に立毛された繊維が存在する立毛面を有する人工皮革基体が得られる。
立毛面を有する人工皮革基体には、さらに風合いを調整するために柔軟性を付与する収縮加工処理や揉み柔軟化処理が施されたり、逆シールのブラッシング処理,防汚処理,親水化処理,滑剤処理,柔軟剤処理,酸化防止剤処理,紫外線吸収剤処理,蛍光剤処理,難燃処理等の仕上げ処理が施されたりしてもよい。
立毛面を有する人工皮革基体は染色されて、立毛調人工皮革に仕上げられる。染料は繊維の種類により適切なものが適宜選択される。例えば、繊維がポリエステル系樹脂から形成されている場合には分散染料やカチオン染料で染色することが好ましい。分散染料の具体例としては、例えば、モノアゾ,ジスアゾ等のベンゼンアゾ系染料;チアゾールアゾ,ベンゾチアゾールアゾ,キノリンアゾ,ピリジンアゾ,イミダゾールアゾ,チオフェンアゾ等の複素環アゾ系染料;アントラキノン系染料;キノフタリン,スチリル,クマリン等の縮合系染料等が挙げられる。これらは、例えば、「Disperse」の接頭辞を有する染料として市販されている。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、染色方法としては、高圧液流染色法,ジッガー染色法,サーモゾル連続染色機法,昇華プリント方式等による染色方法が特に限定なく用いられる。
立毛調人工皮革の見かけ密度は、0.3~0.7g/cm3、さらには0.4~0.6g/cm3であることがボキ折れしない充実感と柔軟な風合いとのバランスに優れた立毛調人工皮革が得られる点から好ましい。立毛調人工皮革の見かけ密度が低すぎる場合には、充実感が低いためにボキ折れしやすくなり、また、立毛面を摩擦することにより繊維が引きずり出されやすくなり低い外観品位になりやすくなる傾向がある。一方、立毛調人工皮革の見かけ密度が高すぎる場合には、しなやかな風合いが低下する傾向がある。
本実施形態の立毛調人工皮革の製造においては、上述のように、ポリウレタン溶液等の高分子弾性体溶液の種類や凝固条件を選択したり、凝固液に添加剤を付与したりすることにより、発泡高分子弾性体の平均発泡径A(μm)と発泡率B(%)とが、B≧9.3×A-10.8、の関係式を満たすように調整されている。
ここで、平均発泡径Aは、次のようにして求められる。立毛調人工皮革の厚さ方向に平行な断面の表層300μmの部分を走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率300倍で平均的な箇所を3枚撮影し、それぞれの画像をA4サイズの用紙に印刷する。そして、印刷された用紙をOHP(Overhead projector)シート等の透明シートに重ね、透明シートに発泡部位を黒塗りして転写する。このとき、繊維を含む空隙は海島型複合繊維から海成分を除去したときに形成された空隙であるとして、発泡部位として含めず、繊維を含まない独立した空隙のみを発泡高分子弾性体の発泡部位とする。そして、発泡部位を黒塗りした透明シートの模様をスキャナーで取り込んで画像を形成する。そして画像処理装置で、得られた画像から面積10ドット以下のノイズを除去した後の黒塗り部分のみを発泡部位として抽出させ、各発泡部位の径を測定し、平均径を算出する。なお、各発泡部位の径は、発泡部位の外周の2点を結び、かつ重心を通る径を2度刻みに測定した平均値により算出される。また、平均径は、すべての発泡部位の径の算術平均である。
また、発泡率Bは、次のようにして求められる。平均発泡径Aの測定に用いた印刷された用紙を透明シートに重ね、透明シートに発泡部位を含む発泡高分子弾性体(発泡ポリウレタン)の存在する全領域を黒塗りして転写する。そして、発泡部位を含む発泡高分子弾性体の存在する全領域を黒塗りした透明シートをスキャナーで取り込んで画像を形成する。そして画像処理装置で、得られた画像から発泡高分子弾性体の存在する全領域の黒塗り部分の総面積を求める。また、平均発泡径Aの測定の際に抽出した黒塗り部分の発泡部位の総面積を測定する。そして、発泡高分子弾性体の存在する全領域の黒塗り部分の総面積と、平均発泡径Aの測定の際に抽出した黒塗り部分の発泡部位の総面積から、
式:発泡率B(%)=黒塗り部分の発泡部位の総面積/発泡高分子弾性体の存在する全領域の黒塗り部分の総面積×100、により算出する。
画像処理装置は、コンピュータに画像処理ソフトをインストールして構成されるものが用いられる。画像処理ソフトの具体例としては、例えば、Media Cybernetics社のimage-pro plusが挙げられる。
そして、図3に示すように、平均発泡径A(μm)と発泡率B(%)とが、B≧9.3×A-10.8の関係式を満たす場合には、高い発泡率で且つ微細な発泡構造を形成することにより、繊維を取り囲む高分子弾性体(ポリウレタン)の連続構造体の隔壁が均質に厚くなることにより、発泡構造体としての機械的強度が高くなる。その結果、高分子弾性体の含有割合や高分子弾性体のモジュラスが低い場合であっても、高い耐摩耗性が得られる。平均発泡径A(μm)は0.1~20μmであり、さらには、0.1~10μmであることが好ましい。また、発泡率B(%)は10~60%であり、さらには、20~50%であることが好ましい。
本実施形態の立毛調人工皮革によれば、高い耐摩耗性としなやかさとを兼ね備えた立毛調人工皮革が得られる。具体的には、例えば、JIS L 1096(6.17.5E法マーチンデール法)に準じた、押圧荷重12kPa、摩耗回数5万回の摩耗減量が50mg以下、さらには40mg以下であることと、ソフトネステスターで測定されるソフトネスが3.5mm以上、さらには、3.7mm以上のしなやかさを兼ね備えた立毛調人工皮革が得られる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
はじめに、本実施例で用いた評価方法を以下にまとめて説明する。
(発泡高分子弾性体の平均発泡径A)
立毛調人工皮革の厚さ方向に平行な断面の表層300μmの部分をSEMで倍率300倍で平均的な箇所を3枚撮影し、それぞれの画像をA4サイズの用紙に印刷した。そして、印刷された用紙をOHPシートに重ね、OHPシートに発泡高分子弾性体である発泡ポリウレタンの発泡部位を黒塗りして転写した。このとき、繊維を含む空隙は海島型複合繊維から海成分を除去したときに形成された空隙であるとして、発泡部位として認めず、繊維を含まない独立した空隙のみを発泡部位とした。そして、発泡部位を黒塗りしたOHPシートの模様をスキャナーで取り込んで画像を形成した。そして、パーソナルコンピュータに画像処理ソフト(image-pro plus)をインストールして構成された画像処理装置で、得られた画像から面積10ドット以下のノイズを除去した後の黒塗り部分のみを発泡部位として抽出させた。そして、各発泡部位の平均直径を計測した後、各発泡部位の平均直径の算術平均を計算して平均発泡径A(μm)を得た。
(発泡高分子弾性体の発泡率B)
発泡高分子弾性体である発泡ポリウレタンの平均発泡径Aの測定に用いた印刷された用紙をOHPシートに重ね、OHPシートに発泡部位を含むポリウレタンの存在する全領域を黒塗りして転写した。そして、発泡部位を含む発泡ポリウレタンの存在する全領域を黒塗りしたOHPシートをスキャナーで取り込んで画像を形成した。そして画像処理装置で、得られた画像から発泡ポリウレタンの存在する全領域の黒塗り部分の総面積を求めた。また、平均発泡径Aの測定の際に抽出した発泡部位の黒塗り部分の総面積を測定した。そして、発泡ポリウレタンの存在する全領域の黒塗り部分の総面積と、平均発泡径Aの測定の際に抽出した黒塗り部分の発泡部位の総面積から、
式:発泡率B(%)=黒塗り部分の発泡部位の総面積/発泡ポリウレタンの存在する全領域の黒塗り部分の総面積×100、により算出した。
(立毛調人工皮革の摩耗減量)
立毛調人工皮革の立毛面の摩耗減量を、JIS L 1096(6.17.5E法 マーチンデール法)に準じ、押圧荷重12kPa、摩耗回数5万回でマーチンデール摩耗試験機を用いて摩耗試験を行い、摩耗減量を測定した。
(ソフトネス)
ソフトネステスター(皮革ソフトネス計測装置ST300:英国、MSAエンジニアリングシステム社製)を用いてソフトネスを測定した。具体的には、直径25mmの所定のリングを装置の下部ホルダーにセットした後、下部ホルダーに立毛調人工皮革をセットした。そして、上部レバーに固定された金属製のピン(直径5mm)を立毛調人工皮革に向けて押し下げた。そして、上部レバーを押し下げて上部レバーがロックしたときの数値を読み取った。なお、数値は侵入深さを表し、数値が大きいほどしなやかであることを表す。
(高分子弾性体の100%モジュラスの測定)
高分子弾性体であるポリウレタンのフィルムを作成し、2.5cm幅に切り出したものをオートグラフで強伸度測定した。得られたSSカーブの伸度100%の強力を読み取り、フィルム厚みと2.5cm幅から得られた断面積で割り、100%モジュラスを算出した。
(高分子弾性体の含有率の測定)
はじめに、立毛調人工皮革の重量を測定した。そして、立毛調人工皮革をジメチルスルホキシドに12時間浸漬した後プレス処理を行い、その後さらにジメチルスルホキシドに5分間浸漬後プレス処理を行う動作を5回繰り返し、高分子弾性体であるポリウレタンを溶剤抽出した。そして、抽出後の不織布を乾燥し、抽出された不織布の重量を測定した。
そして、(抽出前の立毛調人工皮革の重量-抽出された不織布の重量)/抽出前の立毛調人工皮革の重量×100から高分子弾性体の含有率(質量%)を算出した。
[実施例1]
ポリエチレン(PE;海成分)と、変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(PET;島成分)とを、海成分/島成分が35/65(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より単孔吐出量1.5g/minで吐出した。そして、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度4.5デシテックスの長繊維をネット上に捕集して、スパンボンドシート(繊維ウェブ)を得た。
得られた繊維ウェブを総目付が550g/m2になるように、クロスラッピングして重ねて積重体を得、針折れ防止油剤をスプレーした。次に、バーブ数1個でニードル番手42番のニードル針、及びバーブ数6個でニードル番手42番のニードル針を用いて積重体を4189パンチ/cmでニードルパンチ処理して絡合させることによりウェブ絡合シートを得た。ウェブ絡合シートの目付は755g/m2、層間剥離力は10.4kg/2.5cmであった。
次に、ウェブ絡合シートを90℃の熱水中で収縮させた。そして、90~110℃のオーブン中で乾燥させた後、冷却したロールでプレスすることにより、目付1015g/m、比重0.44g/cm、厚み2.30mmの熱収縮処理されたウェブ絡合シートを得た。
次に、熱収縮処理されたウェブ絡合シートに、ポリカーボネート系黄変樹脂であり100%モジュラス93kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタンIのDMF溶液(固形分18.5%、添加剤としてノニオン系界面活性剤を7質量%添加)を高分子弾性体の含有率が30質量%程度になるように含浸させた。その後、凝固液である40℃のDMF30%水溶液へ浸漬させて凝固させた。次に、ポリカーボネート系ポリウレタンIが付与されたウェブ絡合シートを、ニップ処理、及び浸漬処理しながら90℃のトルエン中に180分間浸漬することによりPEを溶解除去し、さらに、乾燥することにより、単繊維繊度0.2dtex、目付887g/m、比重0.478g/cm、厚み1.85mmである、ポリカーボネート系ポリウレタンIと極細繊維の長繊維の絡合体である不織布との複合体である繊維基材を得た。
次に、繊維基材を半裁した後、裏面を♯120ペーパーで、表側面を♯240、♯320、♯600ペーパーで、速度3.0m/min、回転数650rpmの条件で両面を研削することにより、両面に立毛面を有する人工皮革基体を得た。その後、人工皮革基体を分散染料を用いて120℃で高圧染色することにより染色して、目付389g/m、比重0.485g/cm、厚み0.80mmであるスエード調の立毛調人工皮革を得た。そして、立毛調人工皮革の表側の面を上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIの平均発泡径Aが3.1μmで、発泡率Bが28%であった。また、ソフトネスが3.9mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が32.3mgであった。結果を表1に示す。
Figure 0007455072000001
[実施例2]
実施例1において、ポリカーボネート系黄変樹脂であり100%モジュラス93kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタンIのDMF溶液(固形分18.5%、添加剤としてノニオン系界面活性剤を7質量%添加)の代わりに、ポリカーボネート系黄変樹脂であり100%モジュラス27kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタンIIのDMF溶液(固形分18.5%、添加剤としてノニオン系界面活性剤を7質量%添加)を用い、凝固液としてDMF30%水溶液の代わりにDMF45%水溶液を用い、凝固液の温度を40℃の代わりに60℃に変更した以外は、実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIIの平均発泡径Aが3.1μmであり、発泡率Bが34%であった。また、ソフトネスが4.1mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が44.0mgであった。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、100%モジュラス93kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタンIのDMF溶液(固形分18.5%、添加剤としてノニオン系界面活性剤を7質量%添加)を高分子弾性体の含有率が30質量%程度になるように含浸させた代わりに、100%モジュラス27kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタンIIのDMF溶液(固形分25.1%、添加剤なし)を高分子弾性体の含有率が40質量%程度になるように含浸させた以外は、実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIIの平均発泡径Aが6.0μmであり、発泡率Bが45%であった。また、ソフトネスが4.0mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が34.7mgであった。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、表側の面を用いた代わりに、裏面を用いた以外は実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIの平均発泡径Aが3.1μmであり、発泡率Bが18%であった。また、ソフトネスが4.0mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が33.7mgであった。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、凝固液としてDMF30%水溶液の代わりにDMF15%水溶液を用いて高分子弾性体の含有率が25質量%程度になるように含浸させ、凝固液の温度を40℃の代わりに20℃に変更した以外は、実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIの平均発泡径Aが7.2μmであり、発泡率Bが32%であった。また、ソフトネスが3.8mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が76.3mgであった。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例2において、100%モジュラス27kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタンIIのDMF溶液(固形分18.5%、添加剤なし)を高分子弾性体の含有率が30質量%程度になるように含浸させ、凝固液としてDMF30%水溶液を用い、凝固液の温度を40℃に変更した以外は、実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIIの平均発泡径Aが3.2μmであり、発泡率Bが2%であった。また、ソフトネスが4.0mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が65.6mgであった。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例3において、ポリカーボネート系ポリウレタンIIのDMF溶液(固形分21.5%、さらに添加剤としてノニオン系界面活性剤を2質量%添加)を高分子弾性体の含有率が35質量%程度になるように含浸させた以外は、実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIの平均発泡径Aが6.4μmであり、発泡率Bが23%であった。また、ソフトネスが4.0mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が53.0mgであった。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、凝固液としてDMF30%水溶液の代わりにDMF15%水溶液を用いて高分子弾性体の含有率が30質量%程度になるように含浸させ、凝固液の温度を40℃の代わりに20℃に変更した以外は、実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIの平均発泡径Aが8.0μmであり、発泡率Bが44%であった。また、ソフトネスが3.8mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が102.5mgであった。結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、目付690g/m、比重0.30g/cm、厚み2.30mmに調整したウェブ絡合シートを製造した。そして、ウェブ絡合シートに、ポリカーボネート系ポリウレタンIのDMF溶液の代わりに、ポリカーボネート系黄変樹脂であり100%モジュラス23kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタンIIIのDMF溶液(固形分12.0%、添加剤なし)を高分子弾性体の含有率が30質量%程度になるように含浸させた。その後、凝固液である40℃のDMF30%水溶液の代わりに、凝固液である30℃のDMF30%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして上記評価方法に従って評価した。得られた立毛調人工皮革は、ポリカーボネート系ポリウレタンIIIの平均発泡径Aが4.3μmであり、発泡率Bが1%であった。また、ソフトネスが4.5mmであった。また、マーチンデール5万回測定後の摩耗減量が78.3mgであった。結果を表1に示す。
図1に立毛調人工皮革の厚さ方向に平行な断面の表層300μmの部分をSEMを用い、倍率300倍で撮影した画像の一例、図2(a)に図1の画像に基づいたポリウレタンの存在する全領域を黒塗りした部分の画像、図2(b)に図1の画像に基づいたポリウレタンの発泡部位を黒塗りした模様の画像を示す。また、実施例1~4及び比較例1~5で得られた立毛調人工皮革の発泡高分子弾性体の平均発泡径A(μm)と発泡率B(%)との関係をプロットしたグラフを図3に示す。図3に示すように、発泡高分子弾性体の平均発泡径A(μm)と発泡率B(%)との関係が、B≧9.3×A-10.8、の関係式を満たす実施例1~4で得られた立毛調人工皮革は表1に示すように、100%モジュラスや高分子弾性体の含有率が低い場合であっても、摩耗回数5万回の摩耗減量が50mg以下である高い耐摩耗性と、ソフトネステスターで測定されるソフトネスが3.5mm以上であるしなやかな風合いとを兼ね備えていた。一方、B<9.3×A-10.8、の関係式を満たす比較例1~5で得られた立毛調人工皮革は耐摩耗性が劣っていた。
本発明で得られる立毛調人工皮革は、衣料、靴、家具、カーシート、雑貨製品等の表皮素材として好ましく用いられる。

Claims (3)

  1. 繊維絡合体と発泡ポリウレタンとを含む、立毛面を有する立毛調人工皮革であって、
    前記発泡ポリウレタンは、ジメチルホルムアミドを含む溶剤に溶解させたポリウレタンの溶液から湿式凝固された、隔壁で仕切られた発泡構造を有する発泡ポリウレタンであり、
    前記立毛調人工皮革中の前記発泡ポリウレタンの含有割合が20~50質量%であり、
    前記発泡ポリウレタンの平均発泡径A(μm)と発泡率B(%)とが、
    B≧9.3×A-10.8、
    (但し、平均発泡径Aが0.1~20μmであり、発泡率Bが10~60%である)、
    の関係式を満たすことを特徴とする立毛調人工皮革。
  2. JIS L 1096(6.17.5E法 マーチンデール法)に準じた、押圧荷重12kPa、摩耗回数5万回の摩耗減量が50mg以下であり、且つ、ソフトネステスターで測定されるソフトネスが3.5mm以上である請求項1に記載の立毛調人工皮革。
  3. 前記発泡ポリウレタンの100%モジュラスが1~20MPaである請求項1または2に記載の立毛調人工皮革。
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