JP7452884B2 - Dnaが編集された植物細胞を製造する方法、及びそれに用いるためのキット - Google Patents

Dnaが編集された植物細胞を製造する方法、及びそれに用いるためのキット Download PDF

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Description

本発明は、DNAが編集された植物細胞を製造する方法、及びそれに用いるためのキットに関する。
DNAの編集技術としては、放射線やDNA損傷薬剤を利用し、遺伝子に変異を導入する突然変異育種技術の開発が100年近く前から進められてきている。しかしながら、この方法によって標的とする遺伝子に特異的に変異を導入することは、現在の技術では困難である。したがって、例えば、作物育種の場合、突然変異処理を施した大量のサンプルを準備し、それらを個別に調査していくことで、目的の形質を示す系統を選抜する必要がある。
また、DNAの編集技術としては、他に、鋳型となる外来DNAを用いて標的DNAの配列を書き換える標的組換え(ジーンターゲッティング)がある。標的組換えは、標的DNAに対して、塩基レベルから遺伝子レベルまでの欠失・挿入・置換等の様々な改変が可能な技術である。例えば、酵素活性を制御する領域にアミノ酸置換を導入し、酵素活性を改変することも可能である。特に、2種類の選抜マーカーを利用したポジティブ・ネガティブ選抜法は汎用的であり、理論上は、標的塩基配列に制限はない。また、ポジティブ・ネガティブ選抜法と足跡を残さないマーカー除去法とを組み合わせることにより、標的DNAの配列にどのような種類の塩基置換でも導入することが可能である(特許文献1:特開2015-177788号公報、特許文献2:特開2015-171358号公報)。しかしながら、植物においては、一般に、標的組換えの効率が低い傾向にある。
また、DNAの編集技術としては、さらに、制限酵素によって標的DNAを切断し、それが修復される際の修復機構を利用する標的変異技術がある。標的変異技術としては、20塩基前後の配列を特異的に認識するメガヌクレアーゼ(MNs)の認識配列をタンパク質工学等の手法によって改良した改変型MNs、既存のDNA結合モチーフとDNA切断モチーフとを組み合わせた酵素ZFNsやTALENs、原核生物の獲得免疫システムを応用したCRISPR-Cas9システム等が開発されている(非特許文献1:Kim and Kim(2014)Nature Rev.Genet.)。
特に、2012年にCRISPR-Cas9システムが制限酵素として利用可能であることが報告されて以来、CRISPR-Cas9システムは、植物を含む様々な生物種において機能することが明らかとなり、世界中の研究者が利用する汎用的な遺伝子改変ツールとなっている。しかしながら、現在の技術では、この方法によって生じさせることができる変異は主に数塩基程度の欠失や挿入であるため、その多くがフレームシフトによる遺伝子破壊をもたらす。そのため、例えば、アミノ酸置換による酵素タンパク質の機能改変や新機能付与など、塩基の置換を要する高精度なDNA編集には不向きである。
また、Cas9タンパク質と塩基の脱アミノ化酵素とを組み合わせることにより、標的DNAの目的の塩基を置換できることが知られており、これまでに、cytidine deaminaseを利用することでCからT(GからA)への置換を、adenosine deaminaseを利用することでAからG(TからC)への置換を、それぞれ誘導できることが報告されている(非特許文献2:Kim(2018)Nat.Plants)。しかしながら、CからT(GからA)、又はAからG(TからC)以外の塩基置換導入技術は未だ確立されておらず、また、置換できる塩基の位置も限られている。さらに、現在の技術では、脱アミノ化酵素が作用する塩基を厳密に決定することができないこと、Cas9タンパク質が必ずしも任意の配列を認識できないこと、等により、導入できる塩基置換の場所や置換の種類が限られている。
また、標的変異技術としては、塩基の脱塩基反応を触媒する脱塩基酵素や校正機能が低下したDNA polymeraseを利用することにより、ランダムな位置に様々な塩基置換を導入する技術も開発されている(非特許文献3:Halperin et al.(2018)Nature)。しかしながら、この方法によって置換を導入する塩基の位置や導入できる塩基置換の種類を制御することは、現在の技術では困難である。
また、制限酵素を利用し、DNA修復機構の一部を改変することによって変異導入効率を向上させ、導入される変異の種類を改変できる(欠失長を長くできる等)ことが報告されている。例えば、DNA修復経路の一つである非相同末端結合(NHEJ)を抑制することにより、TALENsによる標的変異効率を高められることが報告されている(非特許文献4:Nishizawa-Yokoi et al.(2016)Plant Physiol.)。しかしながら、SpCas9タンパク質を利用した場合、切断部位には1~数塩基程度の欠失や挿入が導入されるが、切断部位でどのような修復機構が働くか、また、その結果としてどのような変異が導入されるかは、標的DNAの配列や細胞の状態にも依存するため、高頻度で1塩基を挿入するといった、高精度なDNA編集が可能な技術は未だ開発されていない。
また、CRISPR-Cas9システムは、これまでに様々な目的での利用が検討されており、例えば、特表2017-502683号公報(特許文献3)には、細胞内のゲノム遺伝子座の1つ又は複数の対立遺伝子を修飾する(例えば、変異導入する)方法として、ヌクレアーゼ相互作用RNAセグメントにスプライシングされた、転写されたエクソンを含む、キメラスプライシングRNA分子を生成することを伴う方法が記載されており、同文献には、キメラスプライシングRNAが、DNA修飾酵素(例えば、ヌクレアーゼ)を細胞におけるゲノム遺伝子座にガイドし、その結果、該遺伝子座の修飾をもたらすことが記載され、前記ヌクレアーゼとしてCRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼが挙げられている。
さらに、例えば、特表2017-538425号公報(特許文献4)には、糸状真菌細胞のゲノム中における標的部位でのゲノム改変用の組成物及び方法において、標的部位を改変するための又は変更するためのガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムが記載されており、特表2017-538424号公報(特許文献5)には、真菌宿主細胞(例えば糸状真菌宿主細胞)中での遺伝子変更を促進するためにヘルパー株システムを用いる組成物及び方法において、Cas/ガイドRNA複合体を異核共存体に導入することが記載されている。
さらに、例えば、特表2017-537647号公報(特許文献6)及び特表2018-504895号公報(特許文献7)には、真菌細胞や糸状真菌細胞のゲノム中の標的部位でのゲノム改変用の組成物及び方法において、真菌宿主細胞や糸状真菌細胞ゲノム中の標的部位でのドナーDNAの挿入を促進するためのガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムが記載されている。
特開2015-177788号公報 特開2015-171358号公報 特表2017-502683号公報 特表2017-538425号公報 特表2017-538424号公報 特表2017-537647号公報 特表2018-504895号公報
Kim and Kim(2014)Nature Rev.Genet. Kim(2018)Nat.Plants Halperin et al.(2018)Nature Nishizawa-Yokoi et al.(2016)Plant Physiol.
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高頻度で1塩基を挿入することができ、高精度のDNA編集が可能な、DNAが編集された植物細胞を製造する方法、及びそれに用いるキットを提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、植物細胞の標的変異において、CRISPR-Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR associated proteins 9)システムのCas9タンパク質としてNeisseria meningitidis由来のNmCas9タンパク質を用いることにより、従来から利用されていたSpCas9タンパク質を用いた標的変異と比較して、1塩基挿入を高頻度に生じさせることができ、特に、T又はAを挿入しやすい傾向にあることを見出した。このような報告は他のCas9タンパク質ではこれまでになされていない。さらに、本発明者らは、このように高頻度で1塩基挿入を可能とするNmCas9タンパク質による標的変異を利用することで、標的DNA領域に目的どおりの複数個の塩基(例えば3塩基)を挿入したり、目的どおりの塩基を置換したりすることが可能であることも見出し、本発明を完成するに至った。
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
[1]
DNAが編集された植物細胞を製造する方法であり、植物細胞に、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを導入する工程を含み、かつ、前記Cas9タンパク質がNeisseria meningitidis由来である、方法。
[2]
植物細胞のDNAに連続するn個の塩基を挿入する方法であり、植物細胞に、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを導入する工程を含み、
前記Cas9タンパク質がNeisseria meningitidis由来であり、
前記ガイドRNAがn個のガイドRNAの組み合わせであり、
nが2以上の自然数であり、
1番目のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、n番目のガイドRNAが、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同な標的化塩基配列nを含むものである、
方法。
[3]
植物細胞のDNAの塩基を置換する方法であり、植物細胞に、Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、を導入する工程を含み、
前記Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、前記他のCas9タンパク質のガイドRNAが、標的塩基配列1に1個の塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含むものである、
方法。
[4]
前記植物細胞がイネ細胞である、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載の方法。
[5]
DNAが編集された植物細胞の製造に用いるためのキットであり、
以下の(A)及び(B):
(A)Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
(B)前記Cas9タンパク質のガイドRNA、該ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
を含む、キット。
[6]
前記ガイドRNAがn個のガイドRNAの組み合わせであり、
nが2以上の自然数であり、
1番目のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、n番目のガイドRNAが、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同な標的化塩基配列nを含むものである、
[5]に記載のキット。
[7]
以下の(C)及び(D):
(C)Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
(D)前記他のCas9タンパク質のガイドRNA、該ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
をさらに含み、
前記Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、前記他のCas9タンパク質のガイドRNAが、標的塩基配列1に1個の塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含むものである、
[5]に記載のキット。
[8]
前記植物細胞がイネ細胞である、[5]~[7]のうちのいずれか一項に記載のキット。
本発明によれば、高頻度で1塩基を挿入することができ、高精度のDNA編集が可能な、DNAが編集された植物細胞を製造する方法、及びそれに用いるキットを提供することが可能となる。
また、本発明によれば、特に1塩基欠失を起こしやすいCRISPR-Cas9システムを併用して、標的塩基配列への1塩基挿入後に、同標的塩基配列に存在した1塩基を欠失させることにより、効率よく塩基を置換することも可能となる。
本発明の連続塩基挿入方法の態様の一例を示す概略図である。 本発明の塩基置換方法の態様の一例を示す概略図である。 実施例1(NmCas9)及び比較例1(SpCas9)においてシークエンス解析を行って得られた配列及び塩基の挿入/欠失が起きた頻度を示す図である。 実施例2(NmCas9)及び比較例2(SpCas9)においてシークエンス解析を行って得られた配列及び塩基の挿入/欠失が起きた頻度を示す図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<DNAが編集された植物細胞を製造する方法>
本発明は、植物細胞に、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを導入する工程を含み、かつ、前記Cas9タンパク質がNeisseria meningitidis由来である、DNAが編集された植物細胞を製造する方法(以下、場合により、「DNA編集植物細胞製造方法」という)を提供する。
(植物細胞)
本発明においてDNAを編集する、すなわち、CRISPR-Cas9システムを導入する「植物細胞」としては、例えば、穀物類、油料作物、飼料作物、果物、野菜類の細胞が挙げられる。「植物細胞」には、例えば、植物の個体を構成している細胞、植物から分離した器官や組織を構成する細胞、植物の組織に由来する培養細胞が含まれる。植物の器官や組織としては、例えば、葉、茎、茎頂(生長点)、根、塊茎、塊根、種子、カルスが挙げられる。植物の例としては、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシ、バナナ、ピーナツ、ヒマワリ、トマト、アブラナ、タバコ、ジャガイモ、ダイズ、ワタ、カーネーションが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシ等のイネ科植物であり、特に好ましくは、イネである。
本発明によって編集されるDNA(標的DNA)としては、特に制限されず、下記のNmCas9タンパク質のPAM配列を含むものであればよい。なお、後述するように、Cas9タンパク質を改変すること(例えば、変異の導入)により、標的DNAの塩基配列に応じて、PAMの認識特異性を改変することも可能である。
(CRISPR-Cas9システム)
本発明に係るCRISPR-Cas9システムは、構成要素として、少なくともCas9タンパク質及びそのガイドRNAを含む。ガイドRNAは、標的塩基配列(例えば、欠損させる遺伝子上の配列であり、PAM配列を含む鎖(センス鎖)上にある配列)の相補配列(前記センス鎖のアンチセンス鎖上にある配列)に相補的な塩基配列(すなわち、前記標的塩基配列に対して相同な配列)を有するcrRNA(CRISPR RNA)とtracrRNA(trans-activating crRNA)とからなる。一般に、CRISPR-Cas9システムでは、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAを細胞内に導入することによって、ガイドRNAが、ゲノムDNAの標的塩基配列の相補配列に結合し、当該ガイドRNAと複合体を形成するCas9タンパク質による標的DNAの切断を誘導する。切断された標的DNAでは、その修復過程で当該塩基配列における塩基の欠失・挿入が引き起こされ、その結果、遺伝子を編集することが可能となる。
〔NmCas9タンパク質〕
本発明においては、CRISPR-Cas9システムとして、少なくともCas9タンパク質がNeisseria meningitidis由来であるものを用いる。以下、Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質を「NmCas9タンパク質」という。
本発明に用いられる「NmCas9タンパク質」の典型的なアミノ酸配列(野生型NmCas9タンパク質のアミノ酸配列)を配列番号:1に、当該タンパク質をコードするDNAの塩基配列を配列番号:2に、それぞれ示す。また、下記の表1に、野生型NmCas9タンパク質(NmCas9)のサイズ(アミノ酸数)、PAM(proto-spacer adjacent motif)配列、及びDNAの切断末端(DNA末端)を示す。典型的なNmCas9タンパク質のPAM配列は、「5′-NNNNGATT」である。ただし、後述するように、Cas9タンパク質を改変すること(例えば、変異の導入)によって、PAMの認識特異性を改変することも可能である。
表1には、参照として、従来から制限酵素としてよく利用されているStreptococcus pyogenes由来のCas9タンパク質(SpCas9)、Francisella novicida由来のCpf1タンパク質(FnCpf1)、Staphylococcus aureus由来のCas9タンパク質(SaCas9)、Campylobacter jejuni由来のCas9タンパク質(CjCas9)についても、典型的な、サイズ(アミノ酸数)、PAM配列、DNAの切断末端(DNA末端)、及びある場合には参照文献名を併せて示す。
本発明に係る「NmCas9タンパク質」としては、ガイドRNAと複合体を形成して標的DNAを切断する活性(ヌクレアーゼ活性)を有している限り、上記の典型的NmCas9タンパク質のホモログ、変異体、又は部分ペプチドであってもよい。
ホモログとしては、例えば、NmCas9タンパク質の典型的なアミノ酸配列(例えば、配列番号:1のアミノ酸配列)と、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質が含まれる。配列の同一性は、BLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときの数値で評価することができる。
また、変異体としては、NmCas9タンパク質の典型的なアミノ酸配列(例えば、配列番号:1のアミノ酸配列)に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、ガイドRNAと複合体を形成して標的DNAを切断する活性を有するタンパク質が含まれる。ここで、「複数個」とは、例えば、2~150個、好ましくは2~100個、より好ましくは2~50個(例えば、2~30個、2~10個、2~5個、2~3個、2個)である。変異体の例としては、例えば、特定のアミノ酸残基に変異を導入することによりPAMの認識特異性を改変したNmCas9タンパク質が挙げられる。Cas9タンパク質におけるPAMの認識特異性を改変する技術は公知である(例えば、Benjamin,P.ら、Nature 523,481-485(2015)、Hirano,S.ら、Molecular Cell 61, 886-894(2016)等)。PAMの認識特異性を改変したNmCas9タンパク質を利用することにより、植物のゲノムDNA上に、より多くの標的DNA領域を設定することが可能となる。
本発明に係るNmCas9タンパク質としては、核移行シグナルを付加したものであることが好ましい。これにより、細胞内で核への局在が促進され、その結果、DNAの編集が効率的に行われる。
〔ガイドRNA〕
本発明に係るCRISPR-Cas9システムにおいて、「ガイドRNA」は、crRNA(CRISPR RNA)とtracrRNA(trans-activating crRNA)との組み合わせである。本発明に係るNmCas9タンパク質のガイドRNAは、crRNAに、標的DNA領域の塩基配列(標的塩基配列の相補配列)に対して相補的な塩基配列(以下、場合により「標的化塩基配列」という)を含む。すなわち、本発明に係るNmCas9タンパク質のガイドRNAは、標的塩基配列に対して相同な標的化塩基配列を含む。
なお、本発明において、第1の塩基配列に対して第2の塩基配列が「相同」とは、第1の塩基配列の相補配列に対して、第2の塩基配列が相補的であることをいい、第1の塩基配列及び第2の塩基配列がいずれもDNA又はRNAである場合には、それらの塩基配列は互いに同一の関係にあり、第1の塩基配列及び第2の塩基配列のいずれかがDNAであって他方がRNAである場合には、DNAにおいてチミン(T)である塩基がRNAにおいてウラシル(U)である以外、それらの塩基配列が互いに同一の関係にあることをいう。
ここで、「標的DNA領域」とは、植物細胞の標的DNA上、標的塩基配列及び目的の遺伝子改変(塩基の挿入・置換)を生じさせる部位を含む領域を意味する。標的DNA領域は、その3’側にてPAM配列と隣接する。crRNA中の標的化塩基配列は、通常、12~50塩基、好ましくは、17~30塩基、より好ましくは17~25塩基からなる塩基配列である。
前記crRNAは、さらに、tracrRNAと相互作用(ハイブリダイズ)が可能な塩基配列を3’側に含む。一方、tracrRNAは、crRNAの一部の塩基配列と相互作用(ハイブリダイズ)が可能な塩基配列を5’側に含むため、前記ガイドRNAは、これら塩基配列の相互作用により、NmCas9タンパク質と相互作用する二重鎖RNAを形成する。このため、本発明に係るNmCas9タンパク質のガイドRNAは、標的DNA領域の標的塩基配列の相補配列に結合し、NmCas9タンパク質と複合体を形成することで、NmCas9タンパク質を当該標的DNA領域に誘導し、誘導されたNmCas9タンパク質が、そのエンドヌクレアーゼ活性によって標的DNAを切断する。
標的DNA領域において、目的の遺伝子改変を生じさせる部位(すなわち、標的DNAの切断部位)は、前記標的塩基配列中に含まれていなくともよいが、当該標的塩基配列中に含まれていることが好ましい。典型的には、標的DNAの切断は、前記ガイドRNAと標的塩基配列の相補配列との間の塩基対形成の相補性と、その標的塩基配列の3’側に存在するPAM配列との両方によって決定される位置で生じる。NmCas9タンパク質は、一般に、標的DNA領域において、PAM配列の上流3塩基目と4塩基目との間を切断する。
本発明のCRISPR-Cas9システムのガイドRNAとしては、crRNA及びtracrRNAを含む一分子ガイドRNA(sgRNA)であっても、crRNA断片とtracrRNA断片とからなる二分子ガイドRNAであってもよい。
一般に、CRISPR-Cas9システムにおいては、Cas9タンパク質による標的DNAの切断が細胞内で修復されると、塩基の挿入や欠失が主に生じるが、本発明においては、植物細胞のDNA編集でCas9タンパク質としてNmCas9タンパク質を用いることにより、従来よりも驚くべき高頻度で1塩基挿入が生じる。例えば、本発明のDNA編集植物細胞製造方法によれば、イネの内在遺伝子の配列を標的DNAとした場合、一例として、1塩基挿入以外の変異が起こった頻度(全変異(塩基の挿入・欠失)の起こったサンプル数に対する1塩基挿入以外の変異が起こったサンプル数の割合)はおよそ1.1~25%と、CRISPR-Cas9システムのCas9タンパク質として従来から利用されているSpCas9タンパク質を同じ標的DNAに用いた場合と比べて、1/8.7~1/2.3にまで減少し、1塩基挿入頻度を著しく高くすることができた。特に、T又はAの1塩基挿入以外の変異が起こった頻度は、1/3.4~1/2.3にまで減少し、T又はAの1塩基挿入頻度を特に高くすることができた(実施例1~2、比較例1~2)。
(CRISPR-Cas9システムの植物細胞への導入)
本発明において、植物細胞に導入されるCRISPR-Cas9システムとしては、Cas9タンパク質(NmCas9タンパク質及び必要に応じてそれ以外の他のCas9タンパク質)が、タンパク質の形態であっても、当該タンパク質をコードするRNAやDNA(ポリヌクレオチド)の形態であっても、当該ポリヌクレオチドを発現するベクター(発現ベクター)の形態であってもよい。また、これと独立して、ガイドRNAが、RNAの形態であっても、当該RNAをコードするDNA(ポリヌクレオチド)の形態であっても、当該ポリヌクレオチドを発現するベクター(発現ベクター)の形態であってもよい。
発現ベクターの形態を採用する場合には、例えば、Cas9タンパク質を発現するベクターとそのガイドRNAを発現するベクターとをそれぞれ細胞内に導入してもよく、また、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAの双方を発現するベクターを細胞内に導入してもよい。また、複数のガイドRNAを利用する場合には、これらガイドRNAは、同一の発現ベクターに搭載されていても、別々の発現ベクターに搭載されていてもよい。さらに、NmCas9タンパク質に他のCas9タンパク質を組み合わせる場合には、NmCas9タンパク質と他のCas9タンパク質とは、同一の発現ベクターに搭載されていても、別々の発現ベクターに搭載されていてもよい。
また、発現ベクターの形態を採用する場合、前記Cas9タンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば、植物細胞用に、適宜コドン最適化されたものであってもよい。
さらに、発現ベクターの形態を採用する場合、当該発現ベクターとしては、発現させるべきポリヌクレオチドに作動可能に結合している1つ以上の調節エレメントを含むことが好ましい。ここで、「作動可能に結合している」とは、調節エレメントに上記ポリヌクレオチドが発現可能に結合していることを意味する。「調節エレメント」としては、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム進入部位(IRES)、及び他の発現制御エレメント(例えば、転写終結シグナル(ポリアデニル化シグナル、ポリU配列等))が挙げられる。また、当該発現ベクターとしては、宿主ゲノムに組み込まれることなく、コードするタンパク質を安定して発現することができるものであることが好ましい。
CRISPR-Cas9システムの植物細胞への導入は、例えば、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、細胞膜透過性ペプチドを利用する方法、プラズマ法等の公知の方法を適宜選択して行うことができる。
本発明のDNA編集植物細胞製造方法においては、植物細胞に、NmCas9タンパク質を構成要素とするCRISPR-Cas9システムを導入することにより、高頻度で1塩基の挿入が起こるため、上記の標的DNA領域に1塩基が挿入される編集がなされた植物細胞を得ることができる。また、本発明のDNA編集植物細胞製造方法においては、前記CRISPR-Cas9システムが導入された植物細胞から植物体を再生させることにより、DNAが編集された植物を生産することができる。組織培養により植物の組織を再分化させて個体を得る方法としては、本技術分野において確立された方法を利用することができる(例えば、形質転換プロトコール[植物編] 田部井豊・編 化学同人 pp.340-347(2012))。こうして一旦、植物体が得られれば、該植物体から有性生殖又は無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫又はクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、株、カルス、プロトプラスト)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
<植物細胞のDNAに連続するn個の塩基を挿入する方法>
本発明のDNA編集植物細胞製造方法によれば、NmCas9タンパク質を利用するCRISPR-Cas9システムにより、従来よりも高頻度で、植物細胞の標的塩基配列に1塩基を挿入することができる。そのため、本発明に係るCRISPR-Cas9システムにおいて、複数のガイドRNAの組み合わせを用いることにより、植物細胞の標的塩基配列に連続する複数の塩基を挿入することも可能である。
したがって、本発明は、DNA編集植物細胞製造方法を利用した方法として、植物細胞に、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを導入する工程を含み、
前記Cas9タンパク質がNeisseria meningitidis由来であり、
前記ガイドRNAがn個のガイドRNAの組み合わせであり、
nが2以上の自然数であり、
1番目のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、n番目のガイドRNAが、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同な標的化塩基配列nを含むものである、
植物細胞のDNAに連続するn個の塩基を挿入する方法(以下、場合により、「連続塩基挿入方法」という)も提供する。
本発明の連続塩基挿入方法において、植物細胞、NmCas9タンパク質、そのガイドRNA、及びCRISPR-Cas9システム、並びに、植物細胞へのCRISPR-Cas9システムの導入としては、それぞれ独立に、それらの好ましい態様も含めて、DNA編集植物細胞製造方法において述べたとおりである。
本発明の連続塩基挿入方法においては、NmCas9タンパク質のガイドRNAとして、n個のガイドRNAの組み合わせを用いる。nは、2以上の自然数であり、アミノ酸に対応するコドン単位での塩基挿入を行う場合には、3の倍数である。
図1に、本発明の連続塩基挿入方法の態様の一例の概略図を示す。例えば、図1に示す態様においては、3個のNmCas9タンパク質のガイドRNA(sgRNA1、sgRNA2、sgRNA3)を、NmCas9タンパク質(NmCas9)と同一の発現ベクター(図1の(a))によって植物細胞に導入する。
本発明の連続塩基挿入方法においては、1番目のガイドRNA(sgRNA1)が、塩基を挿入する標的塩基配列1(target sequence)に対して相同(すなわち、標的塩基配列1の相補配列に対して相補的)な標的化塩基配列1を含む。つまり、本発明の連続塩基挿入方法において、1番目のガイドRNAの標的化塩基配列1は、塩基を挿入する目的の部位(すなわち、標的DNAの切断部位)を含む塩基配列(標的塩基配列1)に対して相同な塩基配列である。1番目のガイドRNAとNmCas9タンパク質とを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを植物細胞に導入することにより、DNA編集植物細胞製造方法において述べたように、標的塩基配列1のNmCas9タンパク質による切断箇所に高頻度で1塩基が挿入されるため、標的塩基配列1に1塩基が挿入された標的塩基配列2を得ることができる。例えば、図1の(b)では、標的DNA(配列番号:7、図1の(b)の一段目)上のPAM配列の上流3塩基目と4塩基目の間が切断され、当該切断箇所に1塩基、特にT又はAが高頻度で挿入されるため、標的塩基配列1の3’末から3塩基目と4塩基目との間にTが挿入された標的塩基配列2(配列番号:8)を得ることができる(図1の(b)の二段目)。
さらに、本発明の連続塩基挿入方法において、2番目のガイドRNAは、標的塩基配列1に1塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含む。そのため、1番目のガイドRNAによって上記の標的塩基配列2が得られた場合、2番目のガイドRNA(sgRNA2)は、標的塩基配列2の相補配列に結合し、かつ、NmCas9タンパク質と複合体を形成することで、NmCas9タンパク質を標的塩基配列2に誘導し、誘導されたNmCas9タンパク質が、そのエンドヌクレアーゼ活性によって標的塩基配列2を切断し、当該切断箇所に高頻度で1塩基が挿入される。その結果、標的塩基配列2に1塩基が挿入された標的塩基配列3(すなわち、標的塩基配列1に2塩基が挿入された標的塩基配列3)を得ることができる。例えば、図1では、PAM配列の上流3塩基目と4塩基目との間が切断され、当該切断箇所に1塩基、特にT又はAが高頻度で挿入されるため、標的塩基配列2の3’末から3塩基目と4塩基目との間にAが挿入された標的塩基配列3(配列番号:9)を得ることができる(図1の(b)の三段目)。
さらに、本発明の連続塩基挿入方法において、3番目のガイドRNAは、標的塩基配列2に1塩基が挿入された標的塩基配列3に対して相同な標的化塩基配列3を含む。そのため、2番目のガイドRNAによって上記の標的塩基配列3が得られた場合、3番目のガイドRNA(sgRNA3)は、標的塩基配列3の相補配列に結合し、かつ、NmCas9タンパク質と複合体を形成することで、NmCas9タンパク質を標的塩基配列3に誘導し、誘導されたNmCas9タンパク質が、そのエンドヌクレアーゼ活性によって標的塩基配列3を切断し、当該切断箇所に高頻度で1塩基が挿入される。その結果、標的塩基配列3に1塩基が挿入された塩基配列(すなわち、標的塩基配列1に3塩基が挿入された塩基配列)を得ることができる。例えば、図1では、PAM配列の上流3塩基目と4塩基目との間が切断され、当該切断箇所に1塩基、特にT又はAが高頻度で挿入されるため、標的塩基配列3の3’末から3塩基目と4塩基目との間にAが挿入された塩基配列(配列番号:10)を得ることができ、結果として、終始コドンであるTAAを効率的に標的DNAに挿入することができる(図1の(b)の四段目)。
このように、本発明の連続塩基挿入方法においては、NmCas9タンパク質のガイドRNAとして、n個のガイドRNAの組み合わせを用い、n番目のガイドRNAが、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同(すなわち、標的塩基配列nの相補配列に対して相補的)な標的化塩基配列nを含むことにより、上記の1塩基挿入をn回連続させることで、植物細胞の標的DNA領域に、連続するn個の塩基を挿入することが可能となる。特に、本発明に係るNmCas9タンパク質を構成要素とするCRISPR-Cas9システムを植物細胞に導入した場合には、T又はAの1塩基挿入頻度が高いため、終始コドンであるTAAを挿入することが容易となる。
なお、図1において、nは3であり、3個のガイドRNAは、いずれもsgRNAとして、NmCas9タンパク質と同一の発現ベクター(図1の(a))により植物細胞に導入されるが、本発明の連続塩基挿入方法の態様はこれに限定されるものではなく、例えば、n個のガイドRNAはそれぞれ別々に順次植物細胞に導入されてもよく、このときの導入と導入との間にはクローニング工程等を含んでいてもよい。ただし、本発明によれば、標的塩基配列1に対して高頻度で1塩基の挿入が起き、高頻度でn-1個の塩基(特に、T又はA)が挿入された標的塩基配列nを得ることができるため、これに合わせて設計したn個のガイドRNAを同時に植物細胞に導入することによって、1回の導入操作で容易に、連続するn個の塩基を挿入することが可能である。
<植物細胞のDNAの塩基を置換する方法>
本発明のDNA編集植物細胞製造方法は、他のCRISPR-Cas9システムと組み合わせてもよい。例えば、本発明に係るNmCas9タンパク質を用いたCRISPR-Cas9システムは、それ以外の他のCas9タンパク質(例えば、他の細菌に由来するCas9タンパク質等)を用いたCRISPR-Cas9システムと組み合わせて用いてもよい。
したがって、本発明は、DNA編集植物細胞製造方法を利用した方法として、NmCas9タンパク質を用いたCRISPR-Cas9システムに、他のCRISPR-Cas9システムを併用することにより、植物細胞のDNAの塩基を置換する方法、例えば、
植物細胞に、NmCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、NmCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、を導入する工程を含み、
NmCas9タンパク質のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、前記他のCas9タンパク質のガイドRNAが、標的塩基配列1に1個の塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含むものである、
植物細胞のDNAの塩基を置換する方法(以下、場合により、「塩基置換方法」という)も提供する。
NmCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムとしては、1塩基欠失を起こしやすいCRISPR-Cas9システムであることが好ましく、このようなCRISPR-Cas9システムの構成要素としての他のCas9タンパク質としては、例えば、上記表1に示すSpCas9タンパク質、SaCas9タンパク質等が挙げられ、SpCas9タンパク質が好ましいが、これらに限定されるものではない。
本発明の塩基置換方法において、植物細胞、NmCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システム、並びに、その植物細胞への導入としては、それぞれ独立に、それらの好ましい態様も含めて、DNA編集植物細胞製造方法において述べたとおりである。
また、本発明の塩基置換方法において、前記他のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システム、並びに、その植物細胞への導入としては、本発明に係るNmCas9タンパク質を用いたCRISPR-Cas9システムにおいて、上記の典型的なNmCas9タンパク質を、前記他のCas9タンパク質、例えば、典型的なアミノ酸配列がUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号:Q99ZW2.1で示されるStreptococcus pyogenes由来のCas9タンパク質(SpCas9)に置き換え、これに対応するガイドRNAを用いること以外は、NmCas9タンパク質及びガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと同様であり、公知の技術によって適宜実施可能である。
図2に、本発明の塩基置換方法の態様の一例の概略図を示す。例えば、図2に示す態様においては、NmCas9タンパク質(NmCas9)及びそのガイドRNA(sgRNA for NmCas9)と、SpCas9タンパク質(SpCas9)及びそのガイドRNA(sgRNA for SpCas9)と、を各発現ベクター(図2の(a))によってそれぞれ植物細胞に導入する。
本発明の塩基置換方法においては、NmCas9タンパク質のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1(target sequence)に対して相同(すなわち、標的塩基配列1の相補配列に対して相補的)な標的化塩基配列1を含む。つまり、本発明の塩基置換方法において、NmCas9タンパク質のガイドRNAの標的化塩基配列1は、塩基を挿入する目的の部位(すなわち、標的DNAの切断部位)を含む塩基配列(標的塩基配列1)に対して相同な塩基配列である。かかるガイドRNAとNmCas9タンパク質とを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを植物細胞に導入することにより、DNA編集植物細胞製造方法において述べたように、標的塩基配列1のNmCas9タンパク質による切断箇所に高頻度で1塩基が挿入されるため、標的塩基配列1に1塩基が挿入された標的塩基配列2を得ることができる。例えば、図2の(b)では、標的DNA(配列番号:11、図2の(b)の一段目)上の、NmCas9タンパク質のPAM配列の上流3塩基目と4塩基目との間が切断され、当該切断箇所に1塩基、特にT又はAが高頻度で挿入されるため、標的塩基配列1の3’末から3塩基目と4塩基目との間にAが挿入された標的塩基配列2(配列番号:12)を得ることができる(図2の(b)の二段目)。
さらに、本発明の塩基置換方法においては、他のCas9タンパク質(図2では、SpCas9タンパク質)のガイドRNAが、標的塩基配列1に1塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同(すなわち、標的塩基配列2の相補配列に対して相補的)な標的化塩基配列2を含む。そのため、NmCas9タンパク質とそのガイドRNAとによって上記の標的塩基配列2が得られた場合、SpCas9タンパク質のガイドRNAは、標的塩基配列2の相補配列に結合し、かつ、SpCas9タンパク質と複合体を形成することで、SpCas9タンパク質を標的塩基配列2に誘導し、誘導されたSpCas9タンパク質が、そのエンドヌクレアーゼ活性によって標的塩基配列2を切断し、当該切断箇所では比較的高頻度で1塩基が欠失する。その結果、標的塩基配列2から1塩基が欠失した塩基配列(すなわち、標的塩基配列1の1塩基が置換された塩基配列)を得ることができる。例えば、図2では、SpCas9タンパク質のPAM配列の上流3塩基目と4塩基目との間が切断され、当該切断箇所において1塩基の欠失が高頻度で起こるため、標的塩基配列2の3’末から3塩基目のCが欠失した塩基配列(配列番号:13)を得ることができ、結果として、標的塩基配列1の3’末から3塩基目の塩基をCからAに置換することができる(図2の(b)の三段目)。
このように、本発明の塩基置換方法においては、NmCas9タンパク質を用いたCRISPR-Cas9システムに、特に1塩基欠失を起こしやすいCRISPR-Cas9システムを組み合わせることにより、標的塩基配列への1塩基挿入後に、同標的塩基配列に存在した1塩基を欠失させることができ、効率よく塩基を置換することが可能となる。特に、本発明に係るNmCas9タンパク質を用いたCRISPR-Cas9システムを植物細胞に導入した場合には、T又はAの1塩基挿入頻度が高いため、標的塩基配列へのT又はAの1塩基挿入後に、同標的塩基配列に存在した1塩基を欠失させることにより、A/C/GからTへ、又は、C/G/TからAへ、効率よく塩基を置換することが可能となる。
なお、図2において、各ガイドRNAは、いずれもsgRNAとして、各Cas9タンパク質とそれぞれ同一の発現ベクター(図2の(a))により植物細胞に導入されるが、本発明の塩基置換方法の態様はこれに限定されるものではなく、例えば、これらは全て同一の発現ベクターにより植物細胞に導入されても、NmCas9タンパク質及びそのガイドRNAを植物細胞に導入した後、SpCas9タンパク質及びそのガイドRNAを当該植物細胞に導入してもよく、このときの導入と導入との間にはクローニング工程等を含んでいてもよい。ただし、本発明によれば、標的塩基配列1に対して高頻度で1塩基(特に、T又はA)が挿入された標的塩基配列2を得ることができるため、これらを同時に植物細胞に導入することによって、1回の導入操作で容易に、塩基を置換することが可能である。
<キット>
また、本発明は、上記本発明の方法に用いるためのキットを提供する。本発明のキットは、(A)NmCas9タンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、及び(B)NmCas9タンパク質のガイドRNA、該ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクターを含む。前記ベクター(A)と(B)とは、互いに別のベクターであっても、同一のベクターであってもよい。
植物細胞のDNAに連続するn個の塩基を挿入する目的においては、NmCas9タンパク質のガイドRNAとして、n個のガイドRNAの組み合わせを用いる。ここで、nは2以上の自然数であり、1番目のガイドRNAは、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、n番目のガイドRNAは、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同な標的化塩基配列nを含むものである。
植物細胞のDNAの塩基を置換する目的において、本発明のキットは、(C)NmCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質(例えば、SpCas9タンパク質)、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、及び(D)前記他のCas9タンパク質(例えば、SpCas9タンパク質)のガイドRNA、該ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクターをさらに含むことが好ましい。ここで、前記NmCas9タンパク質のガイドRNAは、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、前記他のCas9タンパク質のガイドRNAは、標的塩基配列1に1個の塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含むものである。前記ベクター(C)と(D)とは、互いに別のベクターであっても、同一のベクターであってもよい。さらに、前記ベクター(C)及び/又は(D)としては、前記ベクター(A)及び/又は(B)と同一のベクターであってもよい。
また、本発明のキットは、一つ又は複数の追加の試薬をさらに含んでいてもよい。このような追加の試薬としては、例えば、希釈緩衝液、再構成溶液、洗浄緩衝液、核酸導入試薬、タンパク質導入試薬、対照試薬(例えば、対照のガイドRNA)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。また、当該キットは、本発明の方法を実施するための使用説明書をさらに含んでいてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[プラスミド構築]
先ず、GeneArt Gene Synthesis(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、シロイヌナズナのコドンに最適化し、N末端側にFLAGタグ及びSimian Virus40(SV40)由来核移行シグナルを付加したNmCas9タンパク質遺伝子のDNA(配列番号:3に記載のアミノ酸配列をコードする、配列番号:4に記載の塩基配列)を合成した。次いで、バイナリーベクターpRI-SpCas9(Kaya et al.(2016)Sci.Rep.6:26871)をバックボーンとして、NmCas9タンパク質(NmCas9)の発現ベクターの構築を行った。すなわち、pRI-SpCas9内のカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターとシロイヌナズナのアルコール脱水素酵素遺伝子の5’-UTR部分とを、パセリのユビキチン4-2遺伝子のプロモーター(PcUBI)とイネのアルコール脱水素酵素遺伝子の5’-UTRとに、それぞれ置き換えた。また、pRI-SpCas9内のカナマイシン耐性遺伝子発現カセット(アグロバクテリウムのNOS遺伝子のプロモーターとネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子発現カセット(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターとハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子)と置換して、pRI-PcUBI-pro::SpCas9ベクターを構築した。次いで、pRI-PcUBI-pro::SpCas9ベクターをSmaIとSacIとで切断し、ベクター内のSpCas9タンパク質遺伝子のDNAを上記で合成したNmCas9タンパク質遺伝子のDNAに置き換え、NmCas9発現ベクターを構築した。
また、GeneArt Gene Synthesis(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、NmCas9タンパク質のPAM配列(5′-NNNNGATT)及びSpCas9タンパク質のPAM配列(5′-NGG)をいずれも含むイネ内在遺伝子配列(配列番号:5に記載の塩基配列を含む配列、遺伝子ID(「RAP-DB」、https://rapdb.dna.affrc.go.jp/):Os01g0899200(イネ標的DNA_A))における、NmCas9タンパク質のPAM配列の上流の22ヌクレオチドの標的塩基配列A(target sequenceA corresponding to sgRNA of NmCas9)に対して相同な塩基配列(標的化塩基配列)を含むガイドRNA(sgRNA)を合成し、pOsU6-sgRNA_SaCas9(Kaya et al.(2016)Sci.Rep.6:26871)内のSaCas9タンパク質のガイドRNAと置換して、ガイドRNA発現カセットを構築した。次いで、ガイドRNA発現カセットをBbsIで切断してクローニングした。PacIとAscIとを利用して、クローニングしたガイドRNA発現カセットを上記のNmCas9発現ベクターに組み込み、sgRNA-NmCas9発現ベクターを構築した。
[イネカルスへの形質転換]
上記のsgRNA-NmCas9発現ベクターを用いて、土岐らの方法(Toki(1997)Plant Mol.Biol.Rep.15:16-21、Toki et al.(2006)Plant J 47:969-976)に従い、アグロバクテリウムによるイネカルスの形質転換を行った。先ず、sgRNA-NmCas9発現ベクターをアグロバクテリウム(菌株:EHA105)に導入し、また、胚盤由来のイネカルス(イネ:Oryza sativa L. 品種:日本晴)を1か月間培養した。次いで、これらアグロバクテリウム及びイネカルスを3日間共存培養した後、25mg/L meropenem(富士フイルム和光純薬株式会社製)溶液でカルスを洗い、50mg/L hygromycin Bと25mg/L meropenemとを含む培地で4~5週間培養した。
[CAPS解析]
形質転換後、4~5週間培養したイネカルス、24個のサンプルについて、簡易DNA抽出法(Kasajima et al.(2004)Plant Mol.Biol.Rep.22:49-52)によりゲノムDNAを抽出した。KOD-FX neo DNA polymerase(東洋紡株式会社製)を用いて、標的塩基配列(target sequenceA corresponding to sgRNA of NmCas9)をPCR法により増幅した。得られたPCR産物を、SacIによる制限酵素処理で一晩切断し、MCE-202 MultiNA with a DNA-500 kit(株式会社島津製作所製)を用いて、CAPS(Cleaved Amplified Polymorphic Sequences)法により、前記標的塩基配列に変異が導入されているかを調べた。
[シークエンス解析]
CAPS解析で変異導入が確認された系統について、上記のCAPS解析と同様にして得られた標的塩基配列A(target sequenceA corresponding to sgRNA of NmCas9)のPCR産物をpCR-bluntII-TOPO(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にクローニングした。このプラスミドはBigDye Terminator v3.1 cycle sequencing kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を利用して塩基配列を解読した。シークエンスデータはSnapGene software(GSL Biotech LLC社製)を用いて解析した。
(比較例1)
賀屋らの方法(Kaya et al.(2016)Sci.Rep.6:26871)に従い、sgRNA-SpCas9発現ベクターを構築した。sgRNAにおいて、標的化塩基配列は、イネ標的DNA_Aにおける、SpCas9タンパク質のPAM配列の上流の20ヌクレオチドの標的塩基配列A(target sequenceA corresponding to sgRNA of SpCas9)に対して相同な塩基配列を含む配列とした。また、かかるsgRNA-SpCas9発現ベクターを用いたこと以外は実施例1と同様にしてイネカルスへの形質転換を行い、24個のサンプルについて、CAPS解析及びシークエンス解析を行った。
(実施例2)
ガイドRNA(sgRNA)の標的化塩基配列を、NmCas9タンパク質のPAM配列及びSpCas9タンパク質のPAM配列を含むイネ内在遺伝子配列(配列番号:6に記載の塩基配列を含む配列、遺伝子ID(「RAP-DB」、https://rapdb.dna.affrc.go.jp/):Os07g0583800のプロモーター配列(イネ標的DNA_B))における、NmCas9タンパク質のPAM配列の上流の22ヌクレオチドの標的塩基配列B(target sequenceB corresponding to sgRNA of NmCas9)に対して相同な塩基配列としたこと以外は実施例1と同様にして、sgRNA-NmCas9発現ベクターを構築した。
また、かかるsgRNA-NmCas9発現ベクターを用いたこと以外は実施例1と同様にしてイネカルスへの形質転換を行い、24個のサンプルについて、CAPS解析及びシークエンス解析を行った。なお、CAPS解析において、イネ標的DNA_Bの切断には、SacIに代えてXhoIを用いた。
(比較例2)
ガイドRNA(sgRNA)の標的化塩基配列を、イネ標的DNA_Bにおける、SpCas9タンパク質のPAM配列の上流の20ヌクレオチドの標的塩基配列B(target sequenceB corresponding to sgRNA of SpCas9)に対して相同な塩基配列としたこと以外は比較例1と同様にして、sgRNA-SpCas9発現ベクターを構築した。また、かかるsgRNA-SpCas9発現ベクターを用いたこと以外は実施例2と同様にしてイネカルスへの形質転換を行い、24個のサンプルについて、CAPS解析及びシークエンス解析を行った。
実施例1~2及び比較例1~2においてCAPS解析を行った結果、イネ標的DNA_A及びイネ標的DNA_Bのいずれにおいても、SpCas9タンパク質とNmCas9タンパク質とでは、変異導入効率には大きな差は見られなかった。
他方、シークエンス解析を行った結果を図3~4に示す。図3~4に示すように、イネ標的DNA_A及びイネ標的DNA_Bのいずれにおいても、SpCas9タンパク質を導入した場合(比較例1、2)と比較して、NmCas9タンパク質を導入した場合(実施例1、2)では、1塩基、特に、A又はTの挿入が高頻度で生じたことが確認された。
図3~4には、それぞれ、イネ標的DNA_Aの配列の一部(図3のWT、配列番号:5)又はイネ標的DNA_Bの一部(図4のWT、配列番号:6)の配列と、当該WTの配列に塩基の挿入/欠失(indel)が起きた配列とをそれぞれ示し、また、かかる塩基の挿入/欠失が起きた頻度(当該変異の起きたサンプル数*100/全サンプル数(%))をそれぞれ示す。なお、図3~4中、太字で示す塩基配列は、それぞれ、各標的塩基配列(target sequenceA corresponding to sgRNA of NmCas9、target sequenceA corresponding to sgRNA of SpCas9、target sequenceB corresponding to sgRNA of NmCas9、又はtarget sequenceB corresponding to sgRNA of SpCas9(target sequence))を示し、下線で示す塩基配列は、それぞれ、各Cas9タンパク質(NmCas9タンパク質又はSpCas9タンパク質)のPAM配列を示し、小文字で示す塩基は、挿入のあった塩基を示す。
(実施例3 3塩基挿入による終止コドンの挿入)
ガイドRNA(sgRNA)の標的化塩基配列を、NmCas9タンパク質のPAM配列を含むイネ内在遺伝子配列(配列番号:7に記載の塩基配列を含む配列、遺伝子ID(「RAP-DB」、https://rapdb.dna.affrc.go.jp/):Os12g0224000のイントロン(イネ標的DNA_C))における、NmCas9タンパク質のPAM配列の上流の22ヌクレオチドの標的塩基配列1(target sequence1 corresponding to sgRNA1 of NmCas9)に対して相同な塩基配列としたこと以外は実施例1と同様にして、ガイドRNA1(sgRNA1)発現カセットを構築した。また、ガイドRNAの標的化塩基配列を、標的塩基配列1の2~22ヌクレオチドの配列の3’末から3塩基目と4塩基目との間にTが挿入された標的塩基配列2(配列番号:8に記載の塩基配列)に対して相同な塩基配列としたこと以外は実施例1と同様にして、ガイドRNA2(sgRNA2)発現カセットを構築した。さらに、ガイドRNAの標的化塩基配列を、標的塩基配列2の2~22ヌクレオチドの配列の3’末から3塩基目と4塩基目との間にAが挿入された標的塩基配列3(配列番号:9に記載の塩基配列)に対して相同な塩基配列としたこと以外は実施例1と同様にして、ガイドRNA3(sgRNA3)発現カセットを構築した。次いで、これらをいずれも用いたこと以外は実施例1と同様にして、sgRNA1-sgRNA2-sgRNA3-NmCas9発現ベクターを構築した。
また、上記のsgRNA1-sgRNA2-sgRNA3-NmCas9発現ベクターを用いたこと以外は実施例1と同様にしてイネカルスへの形質転換を行い、344個のサンプルについて、CAPS解析及びシークエンス解析を行った。なお、CAPS解析において、イネ標的DNA_Cの切断には、SacIに代えてHpaIを用いた。
シークエンス解析を行った結果を下記の表2に示す。表2には、イネ標的DNA_C(WT、変異なし)の配列に塩基の挿入/欠失(indel)が起きた頻度(当該変異の起きたサンプル数*100/全サンプル数(%))もそれぞれ示す。表2に示すように、3塩基が導入された頻度は合計で26.2%であり、また、それらのうち、目的の3塩基(TAA又はTAT)が導入された頻度は88.9%と、高いものであった。そのため、NmCas9タンパク質と、標的塩基配列を1塩基ずつずらした3種類のガイドRNAとを組み合わせて用いることにより、図1に示した系によって高精度で3塩基の導入ができ、終止コドンを導入できることが確認された。
(実施例4 1塩基の挿入と隣接する1塩基の欠失による塩基置換)
[プラスミド構築]
・NmCas9発現ベクター:実施例1で構築したsgRNA-NmCas9発現ベクター[sgRNA for NmCas9(標的化塩基配列:イネ標的DNA_Aにおける標的塩基配列A(図2では標的塩基配列1)に対して相同な塩基配列)+NmCas9]を用いた。
・SpCas9発現ベクター:先ず、pZH_MMCas9(Mikami et al.(2015)Plant Mol.Biol.88-561)をバックボーンとして、トウモロコシのユビキチン遺伝子のプロモーターでSpCas9を発現させ、植物の選抜用抗生物質マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子発現カセット(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターとネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子)を有するバイナリーベクターを構築した。また、ガイドRNAの標的化塩基配列を、イネ標的DNA_Aにおける、SpCas9タンパク質のPAM配列の上流の19ヌクレオチドの3’末から3塩基目と4塩基目との間にAが挿入された、20ヌクレオチドの標的塩基配列2(配列番号:12に記載の塩基配列)に対して相同な塩基配列としたこと以外は実施例1と同様にして、ガイドRNA(sgRNA for SpCas9)発現カセットを構築した。これを鋳型として、F-プライマー(配列番号:14に記載の塩基配列)及びR-プライマー(配列番号:15に記載の塩基配列)を用いて、PCRにより、前記ガイドRNA発現カセットを増幅した。上記で構築したバイナリーベクターをAscIで切断後、In-Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社)を用いて前記ガイドRNA発現カセットのPCR産物をクローニングし、SpCas9発現ベクターを構築した。
[イネカルスへの形質転換]
上記のNmCas9発現ベクター及びSpCas9発現ベクターを用い、カルス選抜のための培養を、35mg/L G418と25mg/L meropenemとを含む培地において2週間培養としたこと以外は実施例1と同様にして、イネカルスの形質転換を行った。
[シークエンス解析]
形質転換後、2週間培養したイネカルス24個のサンプルについて、実施例1と同様にして標的塩基配列をPCR法により増幅した。得られたPCR産物について、ダイレクトシークエンス法によって直接シークエンス解析を行った。
ダイレクトシークエンス解析で塩基置換が確認された系統について、シークエンス解析を行った結果を下記の表3に示す。表3に示すように、イネ標的DNA_A(WT、変異なし)の配列にA又はCの塩基の挿入が起きた頻度(当該変異の起きたサンプル数*100/全サンプル数(%))は、合計で44.2%であった。他方、目的とした、CからAへの塩基置換が起きた頻度は37.2%であった。このことから、NmCas9による1塩基挿入とSpCas9による1塩基欠失とを組み合わせることで目的とする塩基置換を高精度で導入できることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、高頻度で1塩基を挿入することができ、高精度のDNA編集が可能な、DNAが編集された植物細胞を製造する方法、及びそれに用いるキットを提供することが可能となる。
また、本発明によれば、特に1塩基欠失を起こしやすいCRISPR-Cas9システムを併用して、標的塩基配列への1塩基挿入後に、同標的塩基配列に存在した1塩基を欠失させることにより、効率よく塩基を置換することも可能となる。
本発明は、基礎から応用まで様々な研究で利用され得る。特に、3塩基の導入を制御可能な塩基置換技術は、従来の遺伝子を破壊する標的変異と比べて、遺伝子の破壊のみならず遺伝子機能を改変することが可能であり、ニーズが極めて高いと考えられる。よって、新しい形質を付与した農林水産物の開発や、遺伝子治療等、現在、DNAの編集技術が積極的に利用されている研究開発分野における新しい方法として広く利用することができる。
配列番号:3
<223> Neisseria meningitidis Cas9の改変配列
配列番号:4
<223> Neisseria meningitidis Cas9の改変配列
配列番号:5
<223> NmCas9タンパク質のガイドRNAに対応する標的塩基配列A
<223> SpCas9タンパク質のガイドRNAに対応する標的塩基配列A
配列番号:6
<223> NmCas9タンパク質のガイドRNAに対応する標的塩基配列B
<223> SpCas9タンパク質のガイドRNAに対応する標的塩基配列B
配列番号:7
<223> NmCas9タンパク質のガイドRNA1に対応する標的塩基配列1
配列番号:8
<223> NmCas9タンパク質のガイドRNA2に対応する標的塩基配列2
配列番号:9
<223> NmCas9タンパク質のガイドRNA3に対応する標的塩基配列3
配列番号:10
<223> TAAが挿入された標的DNA
配列番号:11
<223> NmCas9タンパク質のガイドRNAに対応する標的塩基配列1
配列番号:12
<223> SpCas9タンパク質のガイドRNAに対応する標的塩基配列2
配列番号:13
<223> CがAに置換された標的DNA
配列番号:14
<223> F-プライマー
配列番号:15
<224> R-プライマー

Claims (8)

  1. DNAに連続するn個の塩基が挿入された植物細胞を製造する方法であり、植物細胞に、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを導入する工程を含み
    記Cas9タンパク質がNeisseria meningitidis由来であり、
    前記ガイドRNAがn個のガイドRNAの組み合わせであり、
    nが2以上の自然数であり、
    1番目のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、n番目のガイドRNAが、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同な標的化塩基配列nを含むものである、
    方法。
  2. DNAの塩基が置換された植物細胞を製造する方法であり、植物細胞に、Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、を導入する工程を含み、
    前記Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、前記他のCas9タンパク質のガイドRNAが、標的塩基配列1に1個の塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含むものである、
    方法。
  3. 植物細胞のDNAに連続するn個の塩基を挿入する方法であり、植物細胞に、Cas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムを導入する工程を含み、
    前記Cas9タンパク質がNeisseria meningitidis由来であり、
    前記ガイドRNAがn個のガイドRNAの組み合わせであり、
    nが2以上の自然数であり、
    1番目のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、n番目のガイドRNAが、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同な標的化塩基配列nを含むものである、
    方法。
  4. 植物細胞のDNAの塩基を置換する方法であり、植物細胞に、Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質及びそのガイドRNAを構成要素とするCRISPR-Cas9システムと、を導入する工程を含み、
    前記Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、前記他のCas9タンパク質のガイドRNAが、標的塩基配列1に1個の塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含むものである、
    方法。
  5. 前記植物細胞がイネ細胞である、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の方法。
  6. DNAに連続するn個の塩基が挿入された植物細胞の製造に用いるためのキットであり、
    以下の(A)及び(B):
    (A)Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
    (B)前記Cas9タンパク質のガイドRNA、該ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
    を含み、
    前記ガイドRNAがn個のガイドRNAの組み合わせであり、
    nが2以上の自然数であり、
    1番目のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、n番目のガイドRNAが、標的塩基配列1にn-1個の塩基が挿入された標的塩基配列nに対して相同な標的化塩基配列nを含むものである
    キット。
  7. DNAの塩基が置換された植物細胞の製造に用いるためのキットであり、
    以下の(A)及び(B):
    (A)Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
    (B)前記Cas9タンパク質のガイドRNA、該ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
    を含み、
    以下の(C)及び(D):
    (C)Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質以外の他のCas9タンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
    (D)前記他のCas9タンパク質のガイドRNA、該ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを発現するベクター、
    をさらに含み、
    前記Neisseria meningitidis由来のCas9タンパク質のガイドRNAが、塩基を挿入する標的塩基配列1に対して相同な標的化塩基配列1を含むものであり、かつ、前記他のCas9タンパク質のガイドRNAが、標的塩基配列1に1個の塩基が挿入された標的塩基配列2に対して相同な標的化塩基配列2を含むものである、
    キット。
  8. 前記植物細胞がイネ細胞である、請求項6又は7に記載のキット。
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