JP7434704B2 - 位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、該位相差フィルムを用いた表示パネル及び画像表示装置 - Google Patents

位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、該位相差フィルムを用いた表示パネル及び画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、該位相差フィルムを用いた表示パネル及び画像表示装置に関する。
近年、液晶表示装置及び有機EL表示装置等の画像表示装置として、画面を曲面にしたもの、画面が折り畳み可能なもの等のフレキシブルな画像表示装置が提案されている。特に、有機EL表示装置ではガラス基板の使用を不要とできるため、フレキシブルに対応させやすい。
フレキシブルな画像表示装置に用いられる光学フィルムとしては、フレキシブル性に優れたポリイミドを基材とした光学フィルムが提案されている。
また、画像表示装置に用いられる光学フィルムは、光学フィルム自体の位相差が画像の視認性に影響を与えることが知られている。例えば、光学フィルム用のポリイミドフィルムとして、特許文献1及び2が提案されている。
特許文献1及び2のポリイミドフィルムは、いわゆる光学補償フィルムとして用いられるものであり、なるべく薄い厚みで所定の位相差値を得るために、複屈折を高くすることを特徴としたものである。
しかし、特許文献1及び2のような所定の位相差を有する光学フィルムは、特定の画像表示装置に対しては視認性を改善し得るものの、その他の画像表示装置では却って視認性を低下する場合があった。これは、画像表示装置を構成する表示素子ごとに光の波長分布及び偏光特性等の光学特性が異なるためである。
いかなるタイプの画像表示装置にも適用し得る光学フィルムとしては、位相差が小さいものが考えられる。特許文献3では、光学フィルム用の厚み方向の位相差が小さいポリイミドフィルムが提案されている。
特開2010-180350号公報 特開2015-209487号公報 特開2016-204569号公報
しかし、特許文献3のポリイミドフィルムは、実施例1の厚み方向の位相差値が101nmにとどまり、位相差が十分に低いとはいえないものであった。
本発明は、位相差が小さいポリイミド系の位相差フィルムを簡易に製造し得る方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ポリイミド系の位相差フィルム、並びに、これを用いた表示パネル及び画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1]下記(1)~(2)の工程を有する、位相差フィルムの製造方法。
(1)基材上に、ガラス転移温度180~300℃のポリイミドを溶剤に溶解した位相差層形成用塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成する工程。
(2)塗膜をポリイミドのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程。
[2]位相差フィルムであって、前記位相差フィルムはポリイミドを含み、前記ポリイミドのガラス転移温度が180~300℃であり、前記位相差フィルムの波長589nmにおける面内位相差をRe(589)、前記位相差フィルムの波長589nmにおける厚み方向の位相差をRth(589)とした際に、Re(589)及びRth(589)が何れも100nm以下である、位相差フィルム。
[3]表示素子の光出射面側の面上に、上記[2]に記載の位相差フィルムが配置されてなる表示パネル。
[4]上記[3]に記載の前記表示パネルを備えてなる、画像表示装置。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、位相差値が十分に小さいポリイミド系の位相差フィルムを簡易に製造することができる。また、本発明の位相差フィルム、表示パネル及び画像表示装置は、表示素子の種類に関わらず、安定した視認性を付与することができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
[位相差フィルムの製造方法]
本発明の位相差フィルムの製造方法は、下記(1)~(2)の工程を有するものである。
(1)基材上に、ガラス転移温度180~300℃のポリイミドを溶剤に溶解した位相差層形成用塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成する工程。
(2)塗膜をポリイミドのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程。
<工程(1)>
工程(1)は、基材上に、ガラス転移温度180~300℃のポリイミドを溶剤に溶解した位相差層形成用塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成する工程である。
<<基材>>
基材としては、各種のプラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルム自体が位相差を有するものであっても、該プラスチックフィルムが離型性を有するものであれば、工程(1)又は工程(2)の後にプラスチックフィルムから塗膜を剥離することにより、位相差の小さい位相差フィルムを得ることができる。
また、プラスチックフィルムとして、トリアセチルセルロースフィルム等の位相差が小さいプラスチックフィルムを用いれば、プラスチックフィルム上に位相差層を有してなる、位相差が小さい位相差フィルムを得ることができる。
また、基材としては、表面を平滑にしたドラム(キャスティングドラム)、ステンレス製の平滑ベルト等の製造装置に付属した基材も挙げられる。
このような製造装置に付属した基材を用いた場合、後述する工程(3)のように、工程(1)又は工程(2)の後に、基材から塗膜を剥離することが前提となる。
基材は表面が平滑であるものが好ましい。具体的には、基材表面は、カットオフ値0.8mmにおけるJIS B0601:2001の算術平均粗さRaが0.05μm以下であることが好ましく、0.03μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることがさらに好ましい。
工程(1)の後に基材から塗膜を剥離する場合、剥離した塗膜はシート状のままにしてもよいし、ロール状に巻き取ってもよい。
<<溶剤>>
溶剤は、ポリイミドを溶解し、かつ、工程(2)の開始時の塗膜に所定量残留するものであれば特に制限されることなく使用できる。
このような溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、オルト-ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ノルマル-ブチル、酢酸ノルマル-プロピル、酢酸ノルマル-ペンチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1,4-ジオキサン、テトラクロルエチレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル-ノルマル-ブチルケトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ノルマル-ブチル、N,N-ジメチルアセトアミド及びこれらの混合溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
位相差層形成用塗布液中の溶剤の含有量は、基材への塗布適性、乾燥した塗膜の表面の平滑性及び乾燥時間の低減の観点から、該塗布液の全量基準で50~91質量%であることが好ましく、75~85質量%であることがより好ましい。
<<乾燥条件>>
乾燥温度及び乾燥時間は、使用する溶媒の種類及び塗膜厚みを考慮して、剥離した塗膜中の残留溶剤の割合が適切な範囲となるように、適宜調整することが好ましい。また、位相差フィルムの表面形状が荒れること、及び、位相差フィルムの場所ごとで物性差が生じることなどを抑制するため、塗布液は急速に乾燥させないことが好ましい。
乾燥温度は常圧下では80~150℃であることが好ましく、減圧下では10~100℃であることが好ましい。乾燥時間は常圧下では2~60分、減圧下では1~60分であることが好ましい。
なお、溶剤の乾燥は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
<<ポリイミド>>
位相差層形成用塗布液には、樹脂成分としてポリイミドを含む。樹脂成分としてポリイミドを含まない場合、位相差フィルムの耐屈曲性を良好にすることができない。
樹脂成分は、本発明の効果を阻害しない範囲でポリイミド以外の樹脂を含有していてもよいが、ポリイミドの含有量は、位相差層の全樹脂の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることがもっとも好ましい。
ポリイミドは、テトラカルボン酸とジアミンとの反応生成物であることが好ましい。すなわち、ポリイミドは、テトラカルボン酸の残基及びジアミンの残基を含むことが好ましい。なお、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
工程(1)で使用するポリイミドは、ガラス転移温度が180~300℃であることを要する。
ポリイミドのガラス転移温度が180℃未満の場合、位相差フィルムの耐熱性を良好にすることができない。また、ポリイミドのガラス転移温度が300℃を超える場合、厚み方向の位相差を小さくすることができない(この現象の理由は工程(2)において述べる。)。また、ポリイミドのガラス転移温度が300℃を超える場合、工程(2)の加熱温度が高くなり、位相差フィルムの平面性が低下したり、黄色度(YI)が増加したりする傾向がある。
工程(1)で用いるポリイミドは、ガラス転移温度が185~250℃であることが好ましい。
<<<テトラカルボン酸>>>
ポリイミドの原料であるテトラカルボン酸としては、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物、脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
<<<ジアミン>>>
ポリイミドの原料であるジアミンとしては、芳香族環を有するジアミン、脂肪族環を有するジアミン、環構造を有さないジアミン等の各種のジアミンが挙げられる。
これら各種のジアミンの中でも、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが好ましい。すなわち、ポリイミドは、ジアミンの残基として、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含むことが好ましい。
ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含むことにより、位相差フィルムの耐屈曲性をより良好にしやすくできる。また、ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含むことにより、ポリイミドのガラス転移温度を下げて上述した範囲にしやすくできる。
主鎖にケイ素原子を有するジアミンは、下記一般式(i)、(ii)で示すもの等が挙げられる。下記一般式(i)及び(ii)のジアミンは、ポリイミド固有の複屈折を低減しやすく、ひいては位相差フィルムの位相差を小さくしやすい点でも好ましい。

[式(i)中、nは1~5の整数を示す。また、式(i)中、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキレン基を示す。また、式(i)中、R~Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル基を示す。]
式(i)において、nは1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
また、式(i)において、R及びRは、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素数2~3のアルキレン基であることがよりさらに好ましい。また、R及びRは同一であることが好ましい。
また、式(i)において、R~Rは、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがよりさらに好ましい。また、R~Rは同一であることが好ましい。

[式(ii)中、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキレン基を示す。また、式(ii)中、R及びR10は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル基を示す。]
また、式(ii)において、R及びRは、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素数2~3のアルキレン基であることがよりさらに好ましい。また、R及びRは同一であることが好ましい。
また、式(ii)において、R及びR10は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがよりさらに好ましい。また、R及びR10は同一であることが好ましい。
また、ポリイミドの原料であるジアミンとして主鎖にケイ素原子を有するジアミンを用いる場合、さらに、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンを用いることが好ましい。すなわち、ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含む場合、ポリイミドは、さらに、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基を含むことが好ましい。
ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基に加えて、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基を含むことにより、上述した主鎖にケイ素原子を有するジアミンによる効果を保持しつつ、位相差フィルムの耐熱性を良好にしやすくできる。
ポリイミド中における、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基に対する、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基のモル比(主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基/芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基)は、0.05~1.50であることが好ましく、0.08~1.20であることがより好ましく、0.10~1.00であることがさらに好ましい。
該比を0.10以上とすることにより、位相差フィルムの耐屈曲性を良好にしやすくできるとともに、ポリイミドのガラス転移温度を下げて上述した範囲にしやすくできる。また、ジアミンの残基が芳香族環を有する場合、ポリイミドが剛直となり位相差が発現しやすくなる傾向がある。このため、該比を0.05以上とすることにより、ポリイミドの剛直化を抑制し、位相差フィルムの位相差を低くしやすくできる。
また、該比を1.50以下とすることにより、位相差フィルムの強度が低下することを抑制しやすくできる。
芳香族環を有するジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン等が挙げられる。
芳香族環を有するジアミンは、位相差フィルムの耐熱性をより良好にできる点で好適である。また、分子中に芳香族環を有するジアミンの中でも、透明性の観点から、さらに、分子中にフッ素原子を有するもの、及び、芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結してなるものが好ましい。
脂肪族環を有するジアミンとしては、trans-シクロヘキサンジアミン、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
脂肪族環を有するジアミンは、位相差フィルムの透明性を良好にし得る点で好適である。
位相差フィルムの透明性を良好にする観点から、テトラカルボン酸の残基、及び/又は、ジアミンの残基中にはフッ素原子を含むことが好ましい。
残基にフッ素原子を含ませることができるテトラカルボン酸としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物が挙げられる。
残基にフッ素原子を含ませることができるジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。ここに例示した、残基にフッ素原子を含ませることができるジアミンは、何れも分子中に芳香族環を有するものである。
残基に、芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結してなる構造を含ませることができるジアミンとしては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン及びビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
位相差層形成用塗布液中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、無機微粒子、紫外線吸収剤及び光安定剤等のその他の材料を含んでいてもよい。無機微粒子は、シリカ及びアルミナ等の弾性率向上剤、ジルコニア及び酸化チタン等の屈折率調整剤が挙げられる。また、無機微粒子はヘイズの上昇を抑制するため、平均粒子径が200nm以下であることが好ましい。また、その他の材料は、面内位相差及び厚み方向の位相差を発現しないものが好ましい。
<<<ポリイミドの製造>>>
ポリイミドは、例えば、下記(A1)~(A2)の工程で製造できる。
(A1)ポリイミド前駆体組成物の調製
(A2)イミド化工程
工程(A1)において、ポリイミド前駆体組成物は、テトラカルボン酸とジアミンとを溶剤中で反応させることにより得ることができる。テトラカルボン酸とジアミンとのモル比は略1:1とすることが好ましい。
溶剤は、汎用の溶剤の中から、テトラカルボン酸及びジアミンを溶解できるものを選択して用いればよい。溶剤の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、100~1900質量部であることが好ましい。溶剤の含有量を100~1900質量部とすることにより、分子量を向上しやすくできる。
ポリイミド前駆体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量は、位相差フィルムの強度の観点から、ポリスチレン換算で10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。一方、重量平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
工程(A2)は、ポリイミド前駆体をイミド化する工程である。イミド化の手段としては、化学イミド化及び熱イミド化が挙げられる。これらの中でも、位相差フィルムの黄色度(YI)を低くしやすい化学イミド化が好ましい。すなわち、工程(1)で用いるポリイミドは化学イミド化したポリイミドが好ましい。
化学イミド化は、無水酢酸とピリジンとの混合物等の脱水試薬で処理する方法である。熱イミド化法は、200~350℃で加熱処理する方法である。何れの手法も、ポリイミド前駆体を溶剤に溶解した状態、すなわち、ポリイミド前駆体組成物の状態で、ポリイミド前駆体をイミド化することができる。
<工程(2)>
工程(2)は、塗膜をポリイミドのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程である。
工程(2)において、塗膜をポリイミドのガラス転移温度以上の温度で加熱することにより、ポリイミド分子が塗膜中で動きやすくなり、塗膜中における厚み方向の向きが概ね水平方向であったポリイミド分子の厚み方向の向きがランダムに乱れ、厚み方向の位相差を十分に小さくすることができる。但し、ポリイミドのガラス転移温度が300℃を超える場合、塗膜をポリイミドのガラス転移温度以上の温度で加熱してもポリイミド分子が塗膜中で動きにくいため、厚み方向の位相差を小さくすることができない(実施例の実験例4-2~4-4参照)。すなわち、本発明では、耐熱性のレベルをあえて抑えることで、厚み方向の位相差が十分に小さい位相差フィルムの製造を可能としたものである。
また、工程(2)の加熱を行うことで、工程(1)の際に塗膜内に生じたひずみを開放し、位相差フィルムの熱収縮を抑制することができる。具体的には、工程(2)の加熱を行うことで、25℃からポリイミドのガラス転移温度までの温度領域において、何れの温度で加熱しても、位相差フィルムの熱収縮を生じないようにすることができる。
ポリイミドのガラス転移温度をA(℃)とした場合、工程(2)の加熱温度は、A+10℃以上であることが好ましく、A+20℃以上であることがより好ましい。
また、ポリイミド分子の厚み方向の向きをランダムにしやすくする観点から、工程(2)の加熱温度は230℃以上であることが好ましく、240℃以上であることがより好ましい。
なお、工程(2)において、加熱温度を高くし過ぎると、位相差フィルムの平面性が低下したり、JIS K7373:2006の黄色度(YI)が増加したりする場合がある。このため、工程(2)の加熱温度はA+50℃以下であることが好ましい。同様の観点から、工程(2)の加熱温度は370℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましく、330℃以下であることがさらに好ましく、300℃以下であることがよりさらに好ましい。
工程(2)は、減圧下で行っても良いし、常圧下で行っても良い。
また、工程(2)の加熱時間は、1~40分であることが好ましく、5~35分であることがより好ましく、10~30分であることがさらに好ましい。
また、工程(2)の加熱は、大気中で行っても良いし、不活性雰囲気下で行っても良い。
工程(2)の開始時の塗膜の総質量をW、工程(2)の開始時の塗膜中に含まれる残留溶剤の質量をW1とした際に、W1/Wが0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましく、0.005以下であることがさらに好ましい。
W1/Wを0.02以下とすることにより、工程(1)と工程(2)との間の溶剤の揮発量が抑制されるため、塗膜のカール及び収縮を抑制しやすくできる。
工程(2)の終了時には、塗膜は溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、工程(2)の終了時の塗膜の全量を基準として0.1質量%以下であり、好ましくは0.02質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
工程(1)において、基材から塗膜を剥離した後の塗膜をロール状に巻き取った場合、工程(2)では、塗膜の収縮を抑制するため、ロールから塗膜を巻き出しながら行うことが好ましい。
工程(2)は、塗膜の収縮を抑制するため、塗膜の4方向を固定して行うことが好ましい。例えば、ロール状に巻き取った塗膜を巻き出しながら工程(2)を行う場合には、巻きだし装置によって固定されている流れ方向の両端部に加えて、幅方向の両端部をクリップ等で固定することが好ましい。特に、工程(1)の後であって、工程(2)の前に後述する工程(3)を行う場合には、塗膜が熱収縮しやすい状態となっているため、上記のように、塗膜の4方向を固定して工程(2)を行うことが重要となる。
また、工程(1)において、金属枠等の枠内に位相差層形成用塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成し、引き続き工程(2)を行う場合には、該枠によって塗膜の4方向を固定することができる。
工程(2)が終了した後は、塗膜を冷却することが好ましい。塗膜を冷却することにより、ポリイミド分子が固定化されて動き難くなり、工程(2)の加熱工程により得られた効果を維持しやすくできる。
塗膜の冷却条件は特に限定されないが、例えば、温度15~40℃で時間を1~40分とすることが好ましい。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、さらに、下記工程(3)を有することが好ましい。工程(3)を行うことにより、位相差フィルムが基材レスとなり、位相差フィルムの厚みを薄くすることができる。
<工程(3)>
(3)工程(1)又は工程(2)の後に、基材から塗膜を剥離する工程。
工程(2)の終了後に、上述した塗膜の冷却工程、及び、工程(3)を行う場合には、作業性の観点から、工程(3)よりも先に塗膜の冷却工程を行うことが好ましい。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の工程を有していてもよい。なお、面内位相差を極力生じさせないようにするため、本発明の位相差フィルムの製造方法は、延伸工程を行わないことが好ましい。
本発明の製造方法により得られた位相差フィルムの厚みは特に限定されないが、取り扱い性及び機械的強度を良好にする観点から、15~300μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましく、25~100μmであることがさらに好ましい。
位相差フィルムの厚みは、例えば、マイクロメーター(商品名:Digimatic Micrometer、ミツトヨ社製)により測定できる。
<大きさ、形状等>
本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは枚葉状であってもよいしロール状であってもよい。
また、枚葉の大きさは特に限定されないが、一般的には、大きさは対角で2~500インチ程度である。ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500~3000mm、長さは500~5000m程度である。
また、枚葉の形状も特に限定されず、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形等)や円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。
<諸物性>
本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは、諸物性(面内位相差、厚み方向の位相差、黄色度(YI)、ヘイズ、全光線透過率、マンドレルの直径、熱収縮)が後述する本発明の位相差フィルムの範囲であることが好ましい。
<用途>
本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは位相差を小さくできることから、各種の光学用途に好適に用いることができ、特に、画像表示装置用の光学フィルムの基材、画像表示装置用のタッチパネルの基材等の画像表示装置用として好適に用いることができる。
また、該位相差フィルムは、ポリイミドを含むため耐屈曲性に優れる。このため、該位相差フィルムは、折り曲げ可能な画像表示装置に適用することが好ましい。折り曲げ可能な画像表示装置としては、有機EL表示装置が挙げられる。
また、該位相差フィルムは、ポリイミドを含み耐熱性に優れるため、熱に晒される部材として好適に用いることができる。熱に晒される部材としては、画像表示装置(特に有機EL表示装置)の部材、透明導電性フィルムの基材が挙げられる。特に、透明導電性フィルムの基材は極めて高い温度に晒されるため、該位相差フィルムが好適に用いられる。
以上のことから、該位相差フィルムは、画像表示装置に組み込まれたタッチパネル用透明導電性フィルムの基材として有用であり、中でも有機EL表示装置に組み込まれたタッチパネル用透明導電性フィルムの基材として極めて有用である。
[位相差フィルム]
本発明の位相差フィルムは、ポリイミドを含み、前記ポリイミドのガラス転移温度が180~300℃であり、前記位相差フィルムの波長589nmにおける面内位相差をRe(589)、前記位相差フィルムの波長589nmにおける厚み方向の位相差をRth(589)とした際に、Re(589)及びRth(589)が何れも100nm以下であるものである。
<ポリイミド>
ポリイミドはガラス転移温度が180~300℃である。
ポリイミドのガラス転移温度が180℃未満の場合、位相差フィルムの耐熱性を良好にすることができない。また、ポリイミドのガラス転移温度が300℃を超える場合、位相差を小さくするためのガラス転移温度以上での加熱工程を行ったとしても、厚み方向の位相差を小さくすることができない。また、ポリイミドのガラス転移温度が300℃を超える場合、位相差を小さくするための加熱時に高熱がかかり、位相差フィルムの平面性が低下したり、黄色度(YI)が増加したりしやすくなる。
すなわち、本発明では、ポリイミドのガラス転移温度を180~300℃として必要以上に高くせず、耐熱性のレベルをあえて抑えることにより、位相差フィルムの位相差を小さくするとともに、位相差フィルムの諸物性を良好にしやすくできる。
ポリイミドはガラス転移温度が185~250℃であることが好ましい。
位相差フィルムに含まれるポリイミドの実施の形態は、上述した本発明の位相差フィルムの製造方法で用いるポリイミドの実施の形態と同じである。
本発明の位相差フィルムは、波長589nmにおける面内位相差をRe(589)、波長589nmにおける厚み方向の位相差をRth(589)とした際に、Re(589)及びRth(589)が何れも100nm以下であることを要する。
Re(589)及びRth(589)が100nmを超える場合、表示素子の種類に関わらず安定した視認性を付与することができない。
Re(589)及びRth(589)は75nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
本明細書において、Re(589)及びRth(589)は、位相差フィルムの面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率を「N」、面内において遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率を「N」、位相差フィルムの厚み方向の屈折率を「N」、位相差フィルムの厚みを「d(nm)」とした際に、下記式で表すことができる。
面内位相差(Re)=(N-N)×d
厚さ方向の位相差(Rth)=((N+N)/2-N)×d
位相差フィルムは、位相差フィルムの一方の面又は両面に一又は二以上の機能層を積層してなる機能層付きの位相差フィルムとして用いてもよい。機能層としては、ハードコート層、透明導電層、接着剤層、光学粘着剤層(OCA)及び帯電防止層等が挙げられる。
これらの機能層が、面内位相差及び厚み方向の位相差を実質的に有さない場合には、位相差フィルム上に機能層が積層された状態でRe(589)及びRth(589)を測定してもよい。面内位相差及び厚み方向の位相差を実質的に有さないとは、位相差が1nm以下のことをいう。
また、位相差フィルムの一方の面又は両面に一又は二以上の機能層が積層されてなる場合、機能層を取り除いたり、機能層の膜厚をなるべく薄くする前処理をしたりした後に、位相差フィルムのRe(589)及びRth(589)を測定してもよい。但し、該前処理の際に位相差フィルムの膜厚に影響を与えないことが重要である。すなわち、位相差フィルムが既に明確に見えて、機能層が極めて薄膜と推測できる場合はそのままでも測定可能なので、無理に全てを剥離しない方がよい。
例えば、位相差フィルム上にパターン化された透明導電層を有してなる導電性フィルムがタッチパネルのセンサーとして使用されている場合には、導電性フィルム上には、粘着剤層を介してカバーフィルムやカバーガラスが存在する。このため、まず、端にカッターの刃を入れてカバーフィルムまたはカバーガラスを剥離する。容易に剥離しない場合は、無理に剥離せずに、次工程に移る。次いで、40℃の温水に10秒浸し取り出すことを3回繰り返す。その後にカッターなどで粘着剤層の剥がれ具合を確認し、場合によっては、40℃の温水に10秒浸し、取り出すことを更に3回繰り返す。その後、透明導電層を傷つけないようなツール(例えば、薄く平らだが刃のないもの)で粘着剤層を剥いでいく。なお、粘着剤層を全面剥離できなくとも、測定したい部位で剥離できればよい。このようにすることで、タッチパネルから、位相差フィルム上にパターン化された透明導電層を有してなる導電性フィルムを取り出すことができる。そして、透明導電層は通常は位相差を有さないため、位相差フィルムの位相差を測定できる。
<諸物性>
位相差フィルムは、JIS K7373:2006の黄色度を示すYIが5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましく、2.3以下であることがよりさらに好ましい。
位相差フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが1.0%以下であることが好ましく、0.9%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましい。
位相差フィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
上記のYI、ヘイズ及び全光線透過率の範囲は、原則として位相差フィルム単層の範囲である。ただし、機能層が、YI、ヘイズ及び全光線透過率の値に実質的な影響を与えない場合には、位相差フィルム上に機能層が積層された状態でYI、ヘイズ及び全光線透過率を測定してもよい。
本明細書において、Re(589)、Rth(589)、YI、ヘイズ及び全光線透過率は、16箇所の測定値の平均値を意味する。16の測定箇所は、測定サンプルの外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域に関して、縦方向及び横方向を5等分する線を引いた際の、交点の16箇所を測定の中心とすることが好ましい。測定サンプルが四角形の場合には、四角形の外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域を縦方向及び横方向に5等分した線の交点の16箇所を中心として測定を行い、その平均値を算出することが好ましい。なお、測定サンプルが円形、楕円形、三角形、五角形等の四角形以外の形状の場合、これらの形状に内接する最大面積の四角形を書き、該四角形に関して、上記手法により16箇所の測定を行うことが好ましい。なお、測定サンプルの大きさと、測定スポットの大きさとの関係によっては、測定領域が部分的に重複する場合があるが、その場合は重複して測定すればよい。
上記のように測定した16箇所の測定値のうち、Re(589)及びRth(589)のバラツキは、平均値に対して±10nm以内であることが好ましく、±5nm以内であることがより好ましく、±3nm以内であることがさらに好ましく、±1nm以内であることがよりさらに好ましい。また、上記のように測定した16箇所の測定値のうち、YI、ヘイズ及び全光線透過率のバラツキは、平均値に対して±15%以内であることが好ましく、±10%以内であることがより好ましく、±7%以内であることがさらに好ましく、±5%以内であることがよりさらに好ましい。
位相差フィルムは、25℃からポリイミドのガラス転移温度までの温度領域(25℃以上ポリイミドのガラス転移温度以下の温度領域)において、何れの温度で加熱しても熱収縮を生じないことが好ましい。位相差フィルムが該構成を有することにより、熱収縮により経時的に位相差が増加することを抑制できる。なお、下限の25℃は平均的な室温を規定したものである。
位相差フィルムは、JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、位相差フィルムに割れが生じたマンドレルの直径が3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。
マンドレルの直径を3mm以下とすることにより、耐屈曲性をより良好にすることができる。
[表示パネル]
本発明の表示パネルは、表示素子の光出射面側の面上に、上述した本発明の位相差フィルムが配置されてなるものである。
表示素子上に配置する位相差フィルムは、位相差フィルムの一方の面又は両面に一又は二以上の機能層が積層されたものであってもよい。機能層としては、ハードコート層、透明導電層、接着剤層、光学粘着剤層(OCA)及び帯電防止層等が挙げられる。
<表示素子>
表示素子としては、液晶表示素子、有機EL表示素子、無機EL表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー表示素子、LED表示素子(マイクロLEDなど)、量子ドットを用いた表示素子等が挙げられる。なお、液晶表示素子は、タッチパネル機能を素子内に備えたインセルタッチパネル液晶表示素子であってもよい。
これらの表示素子の中でも、有機EL表示素子は、本発明の効果を有効に発揮し得る点で好ましい。
また、本発明の表示パネルはタッチパネルを有していてもよい。タッチパネルは、例えば、表示素子と位相差フィルムとの間に配置される。また、上述した本発明の位相差フィルムをタッチパネルの構成部材として用いてもよい(例えば、タッチパネルの透明導電性フィルムの基材として本発明の位相差フィルムを用いてもよい)。
タッチパネルとしては、抵抗膜式タッチパネル、静電容量式タッチパネル、光学式タッチパネル、超音波式タッチパネル及び電磁誘導式タッチパネル等が挙げられる。なお、これらタッチパネルは圧力検知機能を備えたものであってもよい。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の表示パネルを備えるものであれば特に限定されないが、本発明の表示パネルと、該表示パネルに電気的に接続された駆動制御部と、これらを収容する筐体とを備えることが好ましい。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
1.測定、評価
各実験例で得られた位相差フィルムについて、下記の測定、評価を行った。結果を表1に示す。なお、各測定及び評価時の雰囲気は、温度は23℃±5℃、湿度40~65%とした。また、測定及び評価の前に、前記雰囲気にサンプルを30分以上晒した。結果を表1に示す。
1-1.位相差の測定
各実験例で得られた位相差フィルムを縦50mm×横50mmの大きさに切断した測定用サンプルを作製した。大塚電子社製の商品名「RETS-100(測定スポット:直径5mm)」を用いて、該測定用サンプルのRe(589)及びRth(589)を測定した。測定箇所は、明細書本文で規定した16箇所として、16箇所の値の平均値を、各実験例のRe(589)及びRth(589)とした。
1-2.YIの測定
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社、商品名「V-7100」)を用い、JIS K7373:2006に準拠して、上記1-1で作製したサンプルのYIを測定した。具体的には、前記紫外可視近赤外分光光度計を用い、JIS Z8720に規定する分光測色方法により透過率を測定し、該透過率をもとにYIを算出した。測定箇所は、明細書本文で規定した16箇所として、16箇所の値の平均値を、各実験例のYIとした。
1-3.全光線透過率及びヘイズの測定
ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社、商品名「HM150」)を用い、JIS K7361-1:1997及びJIS K7136:2000に準拠して、上記1-1で作製したサンプルの全光線透過率及びヘイズを測定した。測定箇所は、明細書本文で規定した16箇所として、16箇所の値の平均値を、各実験例の全光線透過率及びヘイズとした。
1-4.耐屈曲性(マンドレル直径)
各実験例の位相差フィルムに関して、JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験を行った。マンドレルの直径を徐々に小さくし、位相差フィルムに最初に割れが生じたマンドレルの直径を表1に示す。
1-5.熱収縮
熱機械分析装置(島津製作所社製、商品名「TMA-60」)を用いて、10℃/分の昇温条件で、各実験例の位相差フィルムを25℃からガラス転移温度まで加熱した際の温度ごとのサンプルの寸法を測定した。25℃からガラス転移温度まで連続して昇温した際に、サンプルの寸法が収縮する温度領域が存在しなかったものを「A」、サンプルの寸法が収縮する温度領域が存在したものを「C」とした。
1-6.ガラス転移温度(Tg)
動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製、商品名「RSA-G2」)を用いて、各実験例で用いたポリイミドのガラス転移温度(Tg)を測定した。測定条件は、測定範囲を-150℃以上490℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求めた。装置の測定条件は以下のように設定した。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とした。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析した。
<RSA-G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force :3.0g
Sensitivity :1.0g
Proportional force Mode:Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force :1.5%
Minimum axial force :2.0g
Programmed Extension Below :0Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust :20.0%
Minimum strain :0.01%
Maximum strain :3.0%
Minimum force :1.5g
Maximum force :200.0g
(Test parameters)
Sampling rate :10pts/s
Strain % :0.1%
周波数 :Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30~50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いた。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録した。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しなかった。ポリイミドフィルムの厚みは、前記膜厚測定法で測定した値を用いた。
1-7.工程(2)開始時の残留溶剤
工程(2)の開始時の塗膜の総質量をW、工程(2)の開始時の塗膜中に含まれる残留溶剤の質量をW1として、各実験例のW1/Wを算出し、W1/Wが0.02超のものを「C」、W1/Wが0.02以下のものを「A」とした。塗膜中の残留溶剤は、ガスクロマトグラフィー質量分析計により測定した。
1-8.画像表示装置の視認性
市販の画像表示装置(液晶表示装置及び有機EL表示装置をそれぞれ3機種)を準備して、様々な角度から観察した。また、前記画像表示装置上に各実験例の位相差フィルムを配置し、様々な角度から観察した。位相差フィルムの有無での画像の視認性に関して20人の成人が評価を行い、下記基準でランク付けした。
AA:いかなる機種でも、位相差フィルムの有無で画像の視認性が変化しないと感じる人が18人以上。
A:いかなる機種でも、位相差フィルムの有無で画像の視認性が変化しないと感じる人が16人以上17人以下。
B:いかなる機種でも、位相差フィルムの有無で画像の視認性が変化しないと感じる人が10人以上15人以下。
C:いかなる機種でも、位相差フィルムの有無で画像の視認性が変化しないと感じる人が10人以下。
2.ポリイミド前駆体組成物の調製
<ポリイミド前駆体組成物1>
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド100.0g、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)1.9g(7.6mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)1.7g(3.8mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS-M)29.8g(68.9mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)34.0g(76.5mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体組成物1(固形分40重量%)を得た。ポリイミド前駆体1に用いられたAprTMOSとBAPS-Mとのモル比は10:90であった。GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は230000であった。
<ポリイミド前駆体組成物2>
AprTMOSとBAPS-Mとのモル比を20:80に変更した以外は、ポリイミド前駆体組成物1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物2(固形分40重量%)を得た。GPCによって測定したポリイミド前駆体2の重量平均分子量は185000であった。
<ポリイミド前駆体組成物3>
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド187.7g、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)12.5g(50mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)11.1g(25mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)16.0g(50mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)33.3g(74.9mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体3が溶解したポリイミド前駆体組成物3(固形分28重量%)を得た。ポリイミド前駆体3に用いられたAprTMOSとTFMBとのモル比は50:50であった。GPCによって測定したポリイミド前駆体3の重量平均分子量は79000であった。
<ポリイミド前駆体組成物4>
AprTMOSとTFMBとのモル比を5:95に変更した以外は、ポリイミド前駆体組成物3と同様にして、ポリイミド前駆体組成物4(固形分28重量%)を得た。GPCによって測定したポリイミド前駆体4の重量平均分子量は200000であった。
3.イミド化(化学イミド化)
ポリイミド前駆体組成物1に、触媒であるピリジン0.4g(4.9mmol)と無水酢酸38.0g(372mmol)を加え24時間室温で攪拌し、ポリイミド1を得た。得られたポリイミド溶液250gを5Lのセパラブルフラスコに移し、DMAc500gを加えて均一になるまで攪拌した。次に2-イソプロパノールを、僅かに濁りが見られるまで徐々に加え、濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に2-イソプロパノール2kgを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、2-イソプロパノールで10回洗浄し、ポリイミド1を得た。
ポリイミド前駆体組成物2に、触媒であるピリジン0.7g(8.9mmol)と無水酢酸73.4g(719mmol)を加え24時間室温で攪拌し、ポリイミド2を得た。得られたポリイミド溶液300gを5Lのセパラブルフラスコに移し、DMAc840gを加えて均一になるまで攪拌した。次に2-イソプロパノールを、僅かに濁りが見られるまで徐々に加え、濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に2-イソプロパノール2kgを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、2-イソプロパノールで10回洗浄し、ポリイミド2を得た。
ポリイミド前駆体組成物3に、触媒であるピリジン0.4g(4.9mmol)と無水酢酸38.0g(372mmol)を加え24時間室温で攪拌し、ポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液280gを5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル400gを加えて均一になるまで攪拌した。次に2-イソプロパノールを、僅かに濁りが見られるまで徐々に加え、濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に2-イソプロパノール2kgを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、2-イソプロパノールで10回洗浄し、ポリイミド3を得た。
同様に、ポリイミド前駆体組成物4に、触媒であるピリジン0.4g(4.9mmol)と無水酢酸39.6g(388mmol)を加え24時間室温で攪拌し、ポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液300gを5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル430gを加えて均一になるまで攪拌した。次に2-イソプロパノールを、僅かに濁りが見られるまで徐々に加え、濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に2-イソプロパノール2kgを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、2-イソプロパノールで10回洗浄し、ポリイミド4を得た。
4.位相差層形成用塗布液の調製
<位相差フィルム形成用塗液1~4>
ポリイミド1をジクロロメタンに溶解し、固形分15.4質量%の位相差フィルム形成用塗液1を得た。
ポリイミド2をジクロロメタンに溶解し、固形分18.2質量%の位相差フィルム形成用塗液2を得た。
ポリイミド3をジクロロメタンに溶解し、固形分28.6質量%の位相差フィルム形成用塗液3を得た。
ポリイミド4をジクロロメタンに溶解し、固形分13.3質量%の位相差フィルム形成用塗液4を得た。
5.位相差フィルムの作製
[実験例1-4]
<位相差フィルムの作製>
厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に位相差層形成用塗液1を付着させ、室温で5分放置した後、130℃で30分乾燥して塗膜を形成した(工程(1))。
次いで、PETフィルムから塗膜(位相差層)を剥離し(工程(3))、金属枠(外寸150mm×200mm、内寸130mm×180mm)を2枚使用して、剥離した塗膜を挟持し固定治具で金属枠と塗膜とを固定した。固定した塗膜を循環オーブン中で、ガラス転移温度以上の温度(280℃)で20分加熱した(工程(2))。
次いで、金属枠から塗膜(位相差層)を外し、実験例1-4の位相差フィルムを得た。位相差フィルム(位相差層)の厚みは29μmであった。
[実験例1-2~1-3、2-2~2-4、3-2~3-4、4-1~4-4]
位相差層形成用塗布液、工程(2)の加熱温度、及び位相差フィルム(位相差層)の厚みを表1の条件とした以外は、実験例1-4と同様にして、実験例1-2~1-3、2-2~2-4、3-2~3-4及び4-1~4-4の位相差フィルムを得た。
[実験例1-1、2-1、3-1]
位相差層形成用塗布液及び位相差フィルム(位相差層)の厚みを表1の条件として、工程(2)を行わなかった以外は、実験例1-4と同様にして、実験例1-1、2-1及び3-1の位相差フィルムを得た。
表1の結果から、工程(1)及び(2)の条件を満たす実験例1-3、1-4、2-3、2-4、3-2~3-4の位相差フィルムの製造方法によれば、位相差値が十分に小さく、熱収縮を抑制し得る位相差フィルムを簡易に製造できることが確認できる。

Claims (8)

  1. 下記(1)~(2)の工程を有し、工程(2)の開始時の塗膜の総質量をW、工程(2)の開始時の塗膜中に含まれる残留溶剤の質量をW1とした際に、W1/Wが0.02以下である、位相差フィルムの製造方法。
    (1)基材上に、ガラス転移温度234~244℃のポリイミドを溶剤に溶解した位相差層形成用塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成し、前記ポリイミドが、テトラカルボン酸とジアミンの反応生成物であり、前記テトラカルボン酸が、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物であり、前記ジアミンが、主鎖にケイ素原子を有するジアミンである工程。
    (2)塗膜をポリイミドのガラス転移温度以上の温度で加熱する工程。
  2. 工程(1)で用いるポリイミドが化学イミド化したポリイミドである、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. さらに下記工程(3)を有する、請求項1又は2に記載の位相差フィルムの製造方法。
    (3)工程(1)又は工程(2)の後に、基材から塗膜を剥離する工程。
  4. 位相差フィルムであって、前記位相差フィルムはポリイミドを含み、前記ポリイミドが、テトラカルボン酸とジアミンの反応生成物であり、前記テトラカルボン酸が、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物であり、前記ジアミンが、主鎖にケイ素原子を有するジアミンであり、前記ポリイミドのガラス転移温度が234~244℃であり、前記位相差フィルムの波長589nmにおける面内位相差をRe(589)、前記位相差フィルムの波長589nmにおける厚み方向の位相差をRth(589)とした際に、Re(589)及びRth(589)が何れも100nm以下であり、JIS K7373:2006の黄色度を示すYIが5.0以下であり、JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、位相差フィルムに割れが生じたマンドレルの直径が3mm以下である、位相差フィルム。
  5. 25℃からポリイミドのガラス転移温度までの温度領域において、何れの温度で加熱しても熱収縮を生じない、請求項4に記載の位相差フィルム。
  6. 表示素子の光出射面側の面上に、請求項4又は5に記載の位相差フィルムが配置されてなる表示パネル。
  7. 前記表示素子が有機EL表示素子である、請求項6に記載の表示パネル。
  8. 請求項6又は7に記載の前記表示パネルを備えてなる、画像表示装置。
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